(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
発振波長が連続的に単調増加する第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する第2の発振期間のうち少なくとも一方が繰り返し存在するように半導体レーザを動作させる発振手順と、
前記半導体レーザから放射されたレーザ光と測定対象からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する検出手順と、
この検出手順で得られた出力信号に含まれる前記干渉波形の数を、前記第1の発振期間と前記第2の発振期間の各々について数える信号抽出手順と、
この信号抽出手順の計数結果から前記測定対象の物理量を求める演算手順とを備え、
前記信号抽出手順は、前記検出手順で得られた出力信号を入力とし、前記第1の発振期間と前記第2の発振期間の各々を計数期間として、請求項8乃至13のいずれか1項に記載の計数方法を用いることを特徴とする物理量計測方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態に係る振動周波数計測装置の構成を示すブロック図である。
図1の振動周波数計測装置は、測定対象の物体10にレーザ光を放射する半導体レーザ1と、半導体レーザ1の光出力を電気信号に変換するフォトダイオード2と、半導体レーザ1からの光を集光して放射すると共に、物体10からの戻り光を集光して半導体レーザ1に入射させるレンズ3と、半導体レーザ1を駆動する発振波長変調手段となるレーザドライバ4と、フォトダイオード2の出力電流を電圧に変換して増幅する電流−電圧変換増幅部5と、電流−電圧変換増幅部5の出力電圧から搬送波を除去するフィルタ部6と、フィルタ部6の出力電圧に含まれる自己結合信号であるモードホップパルス(MHP)の数を数える計数装置7と、計数装置7の計数結果に基づいて物体10の振動周波数を求める演算装置8と、演算装置8の計測結果を表示する表示装置9とを有する。
【0025】
フォトダイオード2と電流−電圧変換増幅部5とは、検出手段を構成している。以下、説明容易にするために、半導体レーザ1には、モードホッピング現象を持たない型(VCSEL型、DFBレーザ型)のものが用いられているものと想定する。
【0026】
レーザドライバ4は、時間に関して一定の変化率で増減を繰り返す三角波駆動電流を注入電流として半導体レーザ1に供給する。これにより、半導体レーザ1は、注入電流の大きさに比例して発振波長が一定の変化率で連続的に増加する第1の発振期間P1と発振波長が一定の変化率で連続的に減少する第2の発振期間P2とを交互に繰り返すように駆動される。このときの半導体レーザ1の発振波長の時間変化は、
図33に示したとおりである。本実施の形態では、発振波長の最大値λb及び発振波長の最小値λaはそれぞれ常に一定になされており、それらの差λb−λaも常に一定になされている。
【0027】
半導体レーザ1から出射したレーザ光は、レンズ3によって集光され、物体10に入射する。物体10で反射された光は、レンズ3によって集光され、半導体レーザ1に入射する。ただし、レンズ3による集光は必須ではない。フォトダイオード2は、半導体レーザ1の内部又はその近傍に配置され、半導体レーザ1の光出力を電流に変換する。電流−電圧変換増幅部5は、フォトダイオード2の出力電流を電圧に変換して増幅する。
【0028】
フィルタ部6は、変調波から重畳信号を抽出する機能を有するものである。
図2(A)は電流−電圧変換増幅部5の出力電圧波形を模式的に示す図、
図2(B)はフィルタ部6の出力電圧波形を模式的に示す図である。これらの図は、フォトダイオード2の出力に相当する
図2(A)の波形(変調波)から、
図2の半導体レーザ1の発振波形(搬送波)を除去して、
図2(B)のMHP波形(干渉波形)を抽出する過程を表している。
【0029】
ここで、自己結合信号であるMHPについて説明する。
図3に示すように、ミラー層1013から物体10までの距離をL、レーザの発振波長をλとすると、以下の共振条件を満足するとき、物体10からの戻り光と半導体レーザ1の光共振器内のレーザ光は強め合い、レーザ出力がわずかに増加する。
L=qλ/2 ・・・(1)
式(1)において、qは整数である。この現象は、物体10からの散乱光が極めて微弱であっても、半導体レーザ1の共振器内の見かけの反射率が増加することにより、増幅作用が生じ、十分観測できる。
【0030】
図4は、半導体レーザ1の発振波長をある一定の割合で変化させたときの発振波長とフォトダイオード2の出力波形との関係を示す図である。式(1)に示したL=qλ/2を満足したときに、戻り光と光共振器内のレーザ光の位相差が0°(同位相)になって、戻り光と光共振器内のレーザ光とが最も強め合い、L=qλ/2+λ/4のときに、位相差が180°(逆位相)になって、戻り光と光共振器内のレーザ光とが最も弱め合う。そのため、半導体レーザ1の発振波長を変化させていくと、レーザ出力が強くなるところと弱くなるところとが交互に繰り返し現れ、このときのレーザ出力をフォトダイオード2で検出すると、
図4に示すように一定周期の階段状の波形が得られる。このような波形は一般的には干渉縞と呼ばれる。この階段状の波形、すなわち干渉縞の1つ1つがMHPである。ある一定時間において半導体レーザ1の発振波長を変化させた場合、測定距離に比例してMHPの数は変化する。
【0031】
次に、計数装置7と演算装置8の動作について説明する。
図5は計数装置7と演算装置8の動作を示すフローチャートである。
計数装置7は、フィルタ部6の出力電圧に含まれるMHPの数を第1の発振期間P1と第2の発振期間P2の各々について数える(
図5ステップS1)。
図6は計数装置7の構成の1例を示すブロック図である。計数装置7は、2値化部71と、論理積演算部(AND)72と、カウンタ73と、計数結果補正部74と、記憶部75とから構成される。電流−電圧変換増幅部5とフィルタ部6と計数装置7の2値化部71とAND72とカウンタ73とは、信号計数手段を構成している。
【0032】
図7は計数装置7の動作を示すフローチャート、
図8は計数結果補正部74の構成の1例を示すブロック図である。計数結果補正部74は、半周期測定部740と、度数分布作成部741と、代表値算出部742と、補正値算出部743とから構成される。
【0033】
図9(A)〜
図9(D)はカウンタ73の動作を説明するための図であり、
図9(A)はフィルタ部6の出力電圧の波形、すなわちMHPの波形を模式的に示す図、
図9(B)は
図9(A)に対応する2値化部71の出力を示す図、
図9(C)は計数装置7に入力されるゲート信号GSを示す図、
図9(D)は
図9(B)に対応するカウンタ73の計数結果を示す図である。
【0034】
まず、計数装置7の2値化部71は、
図9(A)に示すフィルタ部6の出力電圧がハイレベル(H)かローレベル(L)かを判定して、
図9(B)のような判定結果を出力する。このとき、2値化部71は、フィルタ部6の出力電圧が上昇してしきい値TH1以上になったときにハイレベルと判定し、フィルタ部6の出力電圧が下降してしきい値TH2(TH2<TH1)以下になったときにローレベルと判定することにより、フィルタ部6の出力を2値化する。
【0035】
AND72は、2値化部71の出力と
図9(C)のようなゲート信号GSとの論理積演算の結果を出力し、カウンタ73は、AND72の出力の立ち上がりと立ち下がりをカウントする(
図9(D))。ここで、ゲート信号GSは、計数期間(本実施の形態では第1の発振期間P1または第2の発振期間P2)の先頭で立ち上がり、計数期間の終わりで立ち下がる信号である。したがって、カウンタ73は、計数期間中のAND72の出力の立ち上がりエッジの数と立ち下がりエッジの数(すなわち、MHPの半周期の数)を数えることになる(
図7ステップS100)。
【0036】
図10は計数結果補正部74の半周期測定部740の動作を説明するための図である。半周期測定部740は、計数期間中のMHPの半周期を測定する(
図7ステップS101)。すなわち、半周期測定部740は、計数期間中のAND72の出力をしきい値TH3と比較することにより、AND72の出力の立ち上がりを検出すると共に、AND72の出力をしきい値TH4と比較することにより、AND72の出力の立ち下がりを検出する。そして、半周期測定部740は、AND72の出力の立ち上がりから次の立ち下がりまでの時間tudを測定し、またAND72の出力の立ち下がりから次の立ち上がりまでの時間tduを測定することにより、計数期間中のAND72の出力の半周期(すなわち、MHPの半周期)を測定する。このように、MHPの半周期とは、時間tudまたはtduのことである。半周期測定部740は、以上のような測定をAND72の出力の立ち上がりまたは立ち下がりのどちらかが検出される度に行う。
記憶部75は、カウンタ73の計数結果と半周期測定部740の測定結果を記憶する。
【0037】
ゲート信号GSが立ち下がり、計数期間が終了した後、計数結果補正部74の度数分布作成部741は、記憶部75に記憶された半周期測定部740の測定結果から計数期間中のMHPの半周期の度数分布を作成する(
図7ステップS102)。
【0038】
続いて、計数結果補正部74の代表値算出部742は、度数分布作成部741が作成した度数分布から、MHPの半周期の代表値T0を算出する(
図7ステップS103)。ここでは、MHPの半周期の最頻値や中央値、あるいは平均値を代表値T0とすればよい。また、代表値算出部742は、階級値と度数との積が最大となる階級値を代表値T0としてもよい。表1に、度数分布の数値例およびこの数値例における階級値と度数との積を示す。
【0040】
表1の例では、度数が最大である最頻値(階級値)は1である。これに対して、階級値と度数との積が最大となる階級値は6であり、最頻値とは異なる値になっている。階級値と度数との積が最大となる階級値を代表値T0とする理由については後述する。代表値算出部742が算出した代表値T0は、記憶部75に格納される。代表値算出部742は、このような代表値T0の算出を、度数分布作成部741によって度数分布が作成される度に行う。
【0041】
計数結果補正部74の補正値算出部743は、半周期測定部740の測定結果から、代表値T0の0.5倍未満である半周期の数の総和Nsと、代表値T0の2n倍以上(2n+2)倍未満(nは1以上n
max以下の自然数)である半周期の数の総和Nw
nとを求め、カウンタ73の計数結果を次式のように補正する(
図7ステップS104)。
【0043】
式(2)において、Nはカウンタ73の計数結果であるMHPの半周期の数、N’は補正後に得られるMHPの数、T
maxはMHPの半周期がとり得る最大値である。このカウンタ73の計数結果の補正原理については後述する。
計数装置7は、以上のような処理を第1の発振期間P1と第2の発振期間P2の各々について行う。
【0044】
なお、補正値算出部743が用いる代表値T0は、補正対象の計数期間よりも搬送波(三角波)の1周期分前の計数期間における半周期測定部740の測定結果から算出された値を用いてもよいし、補正対象の計数期間における半周期測定部740の測定結果から算出された値を用いてもよい。
図11は半導体レーザ1の発振波長の時間変化を示す図であり、代表値算出部742が代表値T0を算出する期間と補正対象の計数期間との関係を説明するための図である。
【0045】
補正対象の計数期間よりも搬送波の1周期分前の測定結果から算出された代表値T0を用いる場合、補正値算出部743は、例えば
図11に示す第1の発振期間P1−1で算出された代表値T0を用いて第1の発振期間P1−2の計数結果を補正し、第2の発振期間P2−1で算出された代表値T0を用いて第2の発振期間P2−2の計数結果を補正することになる。また、補正対象の計数期間の測定結果から算出された代表値T0を用いる場合、補正値算出部743は、例えば
図11に示す第1の発振期間P1−1で算出された代表値T0を用いて第1の発振期間P1−1の計数結果を補正し、第2の発振期間P2−1で算出された代表値T0を用いて第2の発振期間P2−1の計数結果を補正することになる。
【0046】
ただし、補正対象の計数期間よりも搬送波の1周期分前の測定結果から算出された代表値T0を用いる場合においても、最初の処理においては代表値T0の初期値が存在しないため、補正対象の計数期間における半周期測定部740の測定結果から代表値T0を求めて計数結果を補正することになる。
【0047】
次に、演算装置8は、計数装置7が数えたMHPの数に基づいて物体10の振動周波数を算出する。
図12は演算装置8の構成の1例を示すブロック図である。演算装置8は、計数装置7の計数結果等を記憶する記憶部80と、計数装置7の計数結果を2値化する2値化部81と、2値化部81から出力された2値化出力の周期を測定する周期測定部82と、2値化出力の周期の度数分布を作成する度数分布作成部83と、2値化出力の周期の分布の代表値である基準周期を算出する基準周期算出部84と、2値化出力のパルスの数を数える2値化出力計数手段となるカウンタ85と、カウンタ85の計数結果を補正する補正部86と、補正された計数結果に基づいて物体10の振動周波数を算出する周波数算出部87とから構成される。
【0048】
計数装置7の計数結果は、演算装置8の記憶部80に格納される。演算装置8の2値化部81は、記憶部80に格納された、計数装置7の計数結果を2値化する(
図5ステップS2)。
図13は2値化部81の動作を説明するための図であり、
図13(A)は半導体レーザ1の発振波長の時間変化を示す図、
図13(B)は計数装置7の計数結果の時間変化を示す図、
図13(C)は2値化部81の出力D(t)を示す図である。
図13(B)において、N’uは第1の発振期間P1の計数結果、N’dは第2の発振期間P2の計数結果である。
【0049】
2値化部81は、時間的に隣接する2つの発振期間P1,P2の計数結果N’uとN’dの大小を比較して、これらの計数結果を2値化する。2値化部81は、具体的には以下の式を実行する。
If N’u(t)≧N’d(t−1) then D(t)=1 ・・・(3)
If N’u(t)<N’d(t−1) then D(t)=0 ・・・(4)
If N’d(t)≦N’u(t−1) then D(t)=1 ・・・(5)
If N’d(t)>N’u(t−1) then D(t)=0 ・・・(6)
【0050】
式(3)〜式(6)において、(t)は現時刻tにおいて計測されたMHPの数であることを表し、(t−1)は現時刻tの1回前に計測されたMHPの数であることを表している。式(3)、式(4)は、現時刻tの計数結果が第1の発振期間P1の計数結果N’uで、1回前の計数結果が第2の発振期間P2の計数結果N’dの場合である。この場合、2値化部81は、現時刻tの計数結果N’u(t)が1回前の計数結果N’d(t−1)以上であれば、現時刻tの出力D(t)を「1」(ハイレベル)とし、現時刻tの計数結果N’u(t)が1回前の計数結果N’d(t−1)より小さい場合は、現時刻tの出力D(t)を「0」(ローレベル)とする。
【0051】
式(5)、式(6)は、現時刻tの計数結果が第2の発振期間P2の計数結果N’dで、1回前の計数結果が第1の発振期間P1の計数結果N’uの場合である。この場合、2値化部81は、現時刻tの計数結果N’d(t)が1回前の計数結果N’u(t−1)以下であれば、現時刻tの出力D(t)を「1」とし、現時刻tの計数結果N’d(t)が1回前の計数結果N’u(t−1)より大きい場合は、現時刻tの出力D(t)を「0」とする。
【0052】
こうして、計数装置7の計数結果は2値化される。2値化部81の出力D(t)は記憶部80に格納される。2値化部81は、以上のような2値化処理を、計数装置7によってMHPの数が測定される時刻毎(発振期間毎)に行う。
【0053】
計数装置7の計数結果を2値化することは、物体10の変位の方向を判別することを意味する。つまり、半導体レーザ1の発振波長が増加しているときの計数結果N’uが、発振波長が減少しているときの計数結果N’d以上の場合(D(t)=1)、物体10の移動方向は半導体レーザ1に接近する方向であり、計数結果N’uが計数結果N’dより小さい場合(D(t)=0)、物体10の移動方向は半導体レーザ1から遠ざかる方向である。したがって、基本的には
図13(C)に示した2値化出力の周期を求めることができれば、物体10の振動周波数を算出することができる。
【0054】
周期測定部82は、記憶部80に格納された2値化出力D(t)の周期を測定する(
図5ステップS3)。
図14は周期測定部82の動作を説明するための図である。
図14において、H1は2値化出力D(t)の立ち上がりを検出するためのしきい値、H2は2値化出力D(t)の立ち下がりを検出するためのしきい値である。
【0055】
周期測定部82は、記憶部80に格納された2値化出力D(t)をしきい値H1と比較することにより、2値化出力D(t)の立ち上がりを検出し、2値化出力D(t)の立ち上がりから次の立ち上がりまでの時間tuuを測定することにより、2値化出力D(t)の周期を測定する。周期測定部82は、このような測定を2値化出力D(t)に立ち上がりエッジが発生する度に行う。
【0056】
あるいは、周期測定部82は、記憶部80に格納された2値化出力D(t)をしきい値H2と比較することにより、2値化出力D(t)の立ち下がりを検出し、2値化出力D(t)の立ち下がりから次の立ち下がりまでの時間tddを測定することにより、2値化出力D(t)の周期を測定してもよい。周期測定部82は、このような測定を2値化出力D(t)に立ち下がりエッジが発生する度に行う。
【0057】
周期測定部82の測定結果は記憶部80に格納される。次に、度数分布作成部83は、周期測定部82の測定結果から、一定時間T(T>Ttであり、例えば100×Tt、すなわち三角波100個分の時間)における周期の度数分布を作成する(
図5ステップS4)。
図15は度数分布の1例を示す図である。度数分布作成部83が作成した度数分布は、記憶部80に格納される。度数分布作成部83は、このような度数分布の作成をT時間毎に行う。
【0058】
続いて、基準周期算出部84は、度数分布作成部83が作成した度数分布から、2値化出力D(t)の周期の代表値である基準周期Trを算出する(
図5ステップS5)。一般に、周期の代表値は最頻値や中央値であるが、本実施の形態においては、最頻値や中央値が周期の代表値として適していない。そこで、基準周期算出部84は、階級値と度数との積が最大となる階級値を基準周期Trとする。階級値と度数との積が最大となる階級値を基準周期Trとする理由については後述する。算出された基準周期Trの値は、記憶部80に格納される。基準周期算出部84は、このような基準周期Trの算出を、度数分布作成部83によって度数分布が作成される度に行う。
【0059】
一方、カウンタ85は、周期測定部82および度数分布作成部83と並行して動作し、度数分布作成部83が度数分布作成の対象とする期間と同じ一定時間Tの期間において、2値化出力D(t)の立ち上がりエッジの数Na(すなわち、2値化出力D(t)の「1」のパルスの数)を数える(
図5ステップS6)。カウンタ85の計数結果Naは、記憶部80に格納される。カウンタ85は、このような2値化出力D(t)の計数をT時間毎に行う。
【0060】
補正部86は、度数分布作成部83が作成した度数分布から、基準周期Trの0.5倍以下である階級の度数の総和Nsaと、基準周期Trの1.5倍以上である階級の度数の総和Nwaとを求め、カウンタ85の計数結果Naを次式のように補正する(
図5ステップS7)。
Na’=Na−Nsa+Nwa ・・・(7)
式(7)において、Na’は補正後の計数結果である。この補正後の計数結果Na’は、記憶部80に格納される。補正部86は、このような補正をT時間毎に行う。
【0061】
図16は度数の総和NsaとNwaを模式的に表す図である。
図16において、Tsは基準周期Trの0.5倍の階級値、Twは基準周期Trの1.5倍の階級値である。
図16における階級が、周期の代表値であることは言うまでもない。なお、
図16では記載を簡略化するため、基準周期TrとTsとの間、及び基準周期TrとTwとの間の度数分布を省略している。
【0062】
図17はカウンタ85の計数結果の補正原理を説明するための図であり、
図17(A)は2値化出力D(t)を示す図、
図17(B)は
図17(A)に対応するカウンタ85の計数結果を示す図である。
本来、2値化出力D(t)の周期は物体10の振動周波数によって異なるが、物体10の振動周波数が不変であれば、2値化出力D(t)のパルスは同じ周期で出現する。しかし、ノイズのために、MHPの波形には欠落が生じたり、信号として数えるべきでない波形が生じたりして、結果として2値化出力D(t)の波形にも欠落や信号として数えるべきでない波形が生じ、2値化出力D(t)のパルスの計数結果に誤差が生じる。
【0063】
信号の欠落が生じると、欠落が生じた箇所での2値化出力D(t)の周期Twは、本来の周期のおよそ2倍になる。つまり、2値化出力D(t)の周期が基準周期Trのおよそ2倍以上の場合には、信号に欠落が生じていると判断できる。そこで、周期Tw以上の階級の度数の総和Nwaを信号が欠落した回数と見なし、このNwaをカウンタ85の計数結果Naに加算することで、信号の欠落を補正することができる。
【0064】
また、スパイクノイズなどによって本来の信号が分割された箇所での2値化出力D(t)の周期Tsは、本来の周期と比較して0.5倍よりも短い信号と0.5倍よりも長い信号の2つになる。つまり、2値化出力D(t)の周期が基準周期Trのおよそ0.5倍以下の場合には、信号を過剰に数えていると判断できる。そこで、周期Ts以下の階級の度数の総和Nsaを信号を過剰に数えた回数と見なし、このNsaをカウンタ85の計数結果Naから減算することで、誤って数えたノイズを補正することができる。以上が、式(7)に示した計数結果の補正原理である。
【0065】
周波数算出部87は、補正部86が計算した補正後の計数結果Na’に基づいて、物体10の振動周波数fsigを次式のように算出する(
図5ステップS8)。
fsig=Na’/T ・・・(8)
表示装置9は、演算装置8が算出した振動周波数fsigの値を表示する。
【0066】
ここで、計数装置7のカウンタ73の計数結果の補正原理を説明する。式(2)に示した計数結果の補正の基本原理は、特許文献2に開示された計数結果の補正原理や、式(7)に示した計数結果の補正原理と同じである。しかしながら、特許文献2に開示された補正原理によると、計数装置に入力される信号にMHPよりも高周波のバーストノイズが混入した場合、カウンタ73の計数結果を正しく補正できない場合がある。特に、振動周波数計測におけるサンプリング数は振動周波数の数倍程度の時間しか取れない場合があり、わずかな計数誤差は大きな周波数誤差になる可能性がある。以下に、振動周波数計測を例にして従来の問題を説明する。
【0067】
図18(A)〜
図18(D)は特許文献2に開示された従来の計数装置の問題点を説明するための図であり、
図18(A)は物体10との距離の時間変化を示す図、
図18(B)は物体10の速度の時間変化を示す図、
図18(C)は計数装置の計数結果の時間変化を示す図、
図18(D)は計数装置の計数結果を2値化した2値化出力D(t)を示す図である。
図18(B)において,160は速度が小さい箇所を示し、161は物体10の移動方向が半導体レーザ1に接近する方向であることを示し、162は物体10の移動方向が半導体レーザ1から遠ざかる方向であることを示している。なお、
図18(A)〜
図18(D)は本実施の形態において物体10の振動の最大速度と物体10との距離の比が、半導体レーザ1の波長変化率よりも小さい場合を示しているが、従来の計数装置においても信号波形は同様であるので、
図18(A)〜
図18(D)を用いて従来の計数装置の問題点を説明する。
【0068】
図18(C)に示すように物体10の速度が小さい箇所163において、MHPよりも高周波のノイズが加わると、計数結果N’uとN’dの大小関係が本来の関係と反転する場合がある。その結果、
図18(D)に示すように、2値化出力D(t)の符号が切り替わる箇所164において、2値化出力D(t)の符号が本来の値と逆の値になることがある。
【0069】
MHPをあるしきい値で2値化する場合、MHPがしきい値に近い値をとるところで高周波のノイズのために符号が反転しやすく、このように符号が反転し易い箇所はMHPの1/2周期毎に存在するため、MHPの周期の度数分布は、
図19に示すように、MHPの本来の周期Taに度数の極大値を持つ分布170に加え、周期Taのおよそ半分の周期に度数の極大値を持つ分布171やノイズの短い周期172が現れる。そして、混入した高周波のノイズのためにこれらの度数の極大値はやや時間が短い方へとシフトする傾向にある。さらに、高周波のノイズは、連続で混入することがある。特許文献2に開示された従来の計数装置では、このような高周波の連続したノイズが混入すると、MHPの計数結果を十分に補正することができない。
【0070】
そこで、本実施の形態では、MHPの周期の代表値Taではなく、半周期の代表値T0を用いて計数結果を補正するようにした。MHPの半周期の度数分布の例を
図20に示す。
図20から明らかなように、MHPの半周期の度数分布を求めると、計数装置7に入力される信号に高周波のノイズが混入している場合であっても、0.5T0付近に度数の極大値が現れることがなくなる。つまり、代表値T0の0.5倍未満である半周期の数の総和Nsを求めるしきい値付近の度数の極大値が消えたことになるので、上記のNsを正しく求めることができ、補正の誤差を抑制することができる。以上が、式(2)に示した計数結果の補正原理である。なお、式(2)の右辺を1/2倍している理由は、MHPの半周期の数をMHPの数に変換するためである。
【0071】
以上のように、本実施の形態では、計数期間中のMHPの半周期の数をカウンタ73で数え、計数期間中のMHPの半周期を測定し、この測定結果から計数期間中のMHPの半周期の度数分布を作成し、度数分布からMHPの半周期の代表値T0を算出し、代表値T0の0.5倍未満である半周期の数の総和Nsと、代表値T0の2n倍以上(2n+2)倍未満である半周期の数の総和Nw
nとを求め、これらの度数NsとNw
nに基づいてカウンタ73の計数結果を補正することにより、計数装置に入力される信号にMHPよりも高周波のノイズが連続して発生している場合であっても、MHPの計数誤差を高精度に補正することができるので、物体10の振動周波数の計測精度を向上させることができる。
【0072】
さらに、本実施の形態では、時間的に隣接する第1、第2の発振期間P1,P2の計数結果の大小を比較してMHPの計数結果を2値化し、2値化出力D(t)の周期を測定して一定時間Tにおける周期の度数分布を作成し、周期の度数分布から2値化出力D(t)の周期の分布の代表値である基準周期Trを算出し、一定時間Tの期間において2値化出力D(t)のパルスの数を数え、度数分布から、基準周期Trの0.5倍以下である階級の度数の総和Nsaと基準周期Trの1.5倍以上である階級の度数の総和Nwaとを求め、これらの度数NsaとNwaに基づいて2値化出力D(t)のパルスの計数結果を補正することにより、2値化出力D(t)の計数誤差を補正することができるので、物体10の振動周波数の測定精度を向上させることができる。
【0073】
次に、基準周期算出部84が、階級値と度数との積が最大となる階級値を基準周期Trとする理由について説明する。
波長変調(本実施の形態では三角波変調)を用いた自己結合型のレーザ計測装置においては、各計数期間におけるMHPの数は、物体10との距離に比例したMHPの数と計数期間における物体10の変位(速度)に比例したMHPの数との和もしくは差になる。物体10の振動の最大速度と物体10との距離の比と、半導体レーザ1の波長変化率の大小関係によって、計測装置で得られる信号の状況を以下の2通りに分けることができる。
【0074】
まず、物体10の振動の最大速度と物体10との距離の比が、半導体レーザ1の波長変化率よりも小さい場合を
図18(A)〜
図18(D)を用いて説明する。物体10の振動の最大速度と物体10との距離の比が半導体レーザ1の波長変化率よりも小さい場合は、物体10との距離に比例したMHPの数が、計数期間における物体10の変位(速度)に比例したMHPの数よりも常に大きいため、半導体レーザ1の発振波長が増加しているときの計数結果N’uと発振波長が減少しているときの計数結果N’dとの差の絶対値が2つの計数期間(本実施の形態では発振期間P1とP2)における物体10の変位に常に比例することになる。この場合、N’u−N’dを時系列でプロットすると、半導体レーザ1への接近方向を正とした振動の速度を示す。そのため、N’u−N’dの符号が物体10の運動方向を示すことになり、この符号によって物体10の変位を2値化することができる。
【0075】
このとき、度数分布作成部83によって作成される周期の度数分布は、
図21のようになる。
図18(C)に示すように物体10の速度が小さい箇所163において、例えば外乱光などに起因するホワイトノイズが加わると、2値化出力D(t)の符号が切り替わる箇所164において、2値化出力D(t)の符号が本来の値と逆の値になることがある。また、例えば外乱光などに起因するスパイクノイズが加わると、
図18(D)に示すように箇所165において2値化出力D(t)の符号が局所的に反転する。
【0076】
その結果、度数分布作成部83によって作成される周期の度数分布は、
図21に示すように、基準周期Trを中心とした正規分布190と、スパイクノイズに起因する符号反転による度数191と、ホワイトノイズに起因する符号逆転による度数192との和になる。また、2値化を実施したときの信号の欠落の度数193は、大きな速度を持った低周波ノイズが混入しない限り生じないことが多い。
【0077】
次に、物体10の振動の最大速度と物体10との距離の比が、半導体レーザ1の波長変化率よりも大きい場合について説明する。
図22は、この場合に本実施の形態の振動周波数計測装置で得られる信号を説明するための図であり、
図22(A)は物体10との距離の時間変化を示す図、
図22(B)は物体10の速度の時間変化を示す図、
図22(C)は計数装置7の計数結果の時間変化を示す図、
図22(D)は2値化部81による2値化出力D(t)を示す図である。
図22(B)において,220は速度が小さい箇所を示し、221は物体10の移動方向が半導体レーザ1に接近する方向であることを示し、222は物体10の移動方向が半導体レーザ1から遠ざかる方向であることを示している。
【0078】
物体10の振動の最大速度と物体10との距離の比が、半導体レーザ1の波長変化率よりも大きい場合は、物体10の最大速度付近で、物体10との距離に比例したMHPの数が、計数期間における物体10の変位(速度)に比例したMHPの数よりも小さくなるため、半導体レーザ1の発振波長が増加しているときの計数結果N’uと発振波長が減少しているときの計数結果N’dとの差が2つの計数期間(本実施の形態では発振期間P1とP2)における物体10の変位に比例する期間と、計数結果N’uと計数結果N’dとの和が2つの計数期間における物体10の変位に比例する期間とが存在する。
【0079】
この場合、物体10の振動の速度は、
図22(B)のようにN’u−N’dとN’u+N’dを時系列でプロットしたグラフの合成で表現することができる。ただし、速度の方向は常にN’uとN’dとの大小関係と一致するため、N’u−N’dの符号が物体10の運動方向を示すことになり、この符号によって物体10の変位を2値化することができる。
【0080】
物体10の振動の最大速度と物体10との距離の比が、半導体レーザ1の波長変化率よりも小さい場合と同様に、物体10の速度が小さい箇所223において、例えば外乱光などに起因するホワイトノイズが加わると、2値化出力D(t)の符号が切り替わる箇所224において、2値化出力D(t)の符号が本来の値と逆の値になることがある。また、例えば外乱光などに起因するスパイクノイズが加わると、
図22(D)に示すように箇所225において2値化出力D(t)の符号が局所的に反転する。このとき、度数分布作成部83によって作成される周期の度数分布は、
図21と同様である。
【0081】
本実施の形態のように物体10の変位を2値化した2値化出力D(t)を補正する場合においては、高周波ノイズの補正が重要になる。高周波ノイズによる短い周期での符号の変化は物体10の本来の振動の周期の度数を上回ることがあり、周期の代表値として最頻値や中央値などを用いた場合、誤って振動周期よりも短いノイズの周期を基準として補正を掛けてしまう懸念がある。そのため、振動周波数を算出するための一定時間Tの期間において、ある階級の信号が占める割合、つまり階級値と度数との積が最も大きい階級値を基準周期Trとして、カウンタ85の計数結果の補正を実施する。以上が、階級値と度数との積が最大となる階級値を基準周期Trとする理由である。
代表値算出部742が、階級値と度数との積が最大となる階級値を代表値T0とする理由も同様である。つまり、代表値T0として最頻値や中央値を用いるよりも、計数期間において、ある階級の信号が占める割合が最も大きい階級値を代表値T0とした方が、高周波ノイズが存在する場合にはより好ましい。
【0082】
なお、本実施の形態の他の例として、カウンタ85の計数結果を補正する技術に、カウンタ73の計数結果を補正する技術を適用してもよい。
【0083】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
図23は本実施の形態の計数装置の構成の1例を示す図である。本実施の形態は、第1の実施の形態の計数装置7の代わりに計数装置7aを用いるものである。計数装置7aは、2値化部71と、AND72と、カウンタ73aと、計数結果補正部74aと、記憶部75とから構成される。
図24は本実施の形態の計数結果補正部74aの構成の1例を示すブロック図である。計数結果補正部74aは、半周期測定部740と、度数分布作成部741aと、代表値算出部742aと、補正値算出部743aと、信号結合部744とから構成される。
【0084】
図25は本実施の形態の計数装置7aの動作を示すフローチャートである。第1の実施の形態で説明したとおり、半周期測定部740は、計数期間中のMHPの半周期を測定する(
図25ステップS101)。
第1の実施の形態と同様に、度数分布作成部741aは、記憶部75に記憶された半周期測定部740の測定結果から計数期間中のMHPの半周期の度数分布を作成する(
図25ステップS102)。
【0085】
第1の実施の形態と同様に、代表値算出部742aは、度数分布作成部741aがステップS102で作成した度数分布から、MHPの半周期の代表値T0を算出する(
図25ステップS103)。第1の実施の形態と同様に、MHPの半周期の最頻値や中央値、あるいは平均値を代表値T0としてもよいし、階級値と度数との積が最大となる階級値を代表値T0としてもよい。代表値算出部742aが算出した代表値T0は、記憶部75に格納される。
【0086】
次に、信号結合部744は、半周期測定部740の測定結果について、代表値T0の0.5倍未満の長さの半周期とその直後に測定された半周期とを合わせた周期を結合後の半周期とし、周期を合わせた波形を1つのMHPの半周期分の波形とすることを、結合後の半周期が代表値T0の0.5倍以上になるまで行う(
図25ステップS105)。
図26(A)〜
図26(C)は信号結合部744の動作を説明するための図であり、
図26(A)はMHPの波形を模式的に示す図、
図26(B)は半周期測定部740の測定結果を示す図、
図26(C)は信号結合部744の処理結果を示す図である。
【0087】
半周期測定部740が
図26(A)に示すMHPの半周期を測定すると、
図26(B)に示すように半周期T1,T2,T3,T4,T5,T6,T7,T8,T9,T10,T11,T12,T13,T14,T15,T16という測定結果が得られる。このうち、半周期T2,T3,T6〜T9,T11〜T14は高周波ノイズ等の原因により生じたものである。この場合、半周期T2,T3,T6〜T14は代表値T0の0.5倍未満の長さであるため、第1の実施の形態の計数装置7においてはT10がMHPの半周期として認識されず、計数結果に誤差が生じる。
【0088】
これに対して、本実施の形態では、信号結合部744が上記のような信号の結合処理を行うことにより、
図26(C)に示すように半周期T1,T2,T3,T4,T5,T6という処理結果が得られる。例えば半周期T2〜T4を合わせた周期が結合後の半周期T2となり、T2〜T4の波形が1つのMHPの半周期分の波形として結合される。同様に、半周期T6〜T10を合わせた周期が結合後の半周期T4となり、T6〜T10の波形が1つのMHPの半周期分の波形として結合される。信号結合部744の処理結果は、記憶部75に格納される。
【0089】
次に、度数分布作成部741aは、記憶部75に記憶された信号結合部744の処理結果から計数期間中のMHPの半周期の度数分布を作成する(
図25ステップS106)。
続いて、代表値算出部742aは、度数分布作成部741aがステップS106で作成した度数分布から、MHPの半周期の代表値T0を算出する(
図25ステップS107)。これにより、記憶部75に格納されている代表値T0は、ステップS107で算出された最新の値に更新される。第1の実施の形態と同様に、MHPの半周期の最頻値や中央値、あるいは平均値を代表値T0としてもよいし、階級値と度数との積が最大となる階級値を代表値T0としてもよい。
【0090】
一方、カウンタ73aは、信号結合部744の処理後のMHPについて、MHPの半周期の数を数える(
図25ステップS108)。
最後に、補正値算出部743aは、信号結合部744の処理結果から、代表値T0の0.5倍未満である半周期の数の総和Nsと、代表値T0の2n倍以上(2n+2)倍未満(nは1以上n
max以下の自然数)である半周期の数の総和Nw
nとを求め、カウンタ73aの計数結果Nを式(2)のように補正する(
図25ステップS109)。
計数装置7aは、以上のような処理を第1の発振期間P1と第2の発振期間P2の各々について行う。
【0091】
その他の構成は、第1の実施の形態と同じである。第1の実施の形態では、MHPの信号強度低下と計数装置7に入力される信号へのバーストノイズの混入とが同時に発生した場合、MHPが少なく計数されることがあるが、本実施の形態によれば、このような計数誤差を少なくすることができる。
【0092】
なお、本実施の形態では、ステップS102において計数期間中のMHPの半周期の度数分布を作成し、ステップS103において度数分布からMHPの半周期の代表値T0を算出しているが、これに限るものではなく、ステップS102において度数分布を作成することなく、代表値算出部742aが、ステップS103において半周期測定部740の測定結果から計数期間中のMHPの半周期の平均値を代表値T0として算出してもよい。
【0093】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態においても、計数装置の構成および処理の流れは第2の実施の形態と同様であるので、
図23〜
図25の符号を用いて本実施の形態について説明する。
図25のステップS101〜S103の処理は、第2の実施の形態と同じである。
【0094】
次に、本実施の形態の信号結合部744は、半周期測定部740の測定結果について、代表値T0の0.5倍未満の長さの半周期が代表値T0の0.5倍以上の長さのm番目の半周期Tmと代表値T0の0.5倍以上の長さのp番目の半周期Tp(m,pは自然数)とに挟まれていたとき、(m+p)が偶数の場合は半周期Tmから半周期Tpまでを合わせた周期を結合後の半周期とし、(m+p)が奇数の場合は半周期Tmから半周期T
p-1までを合わせた周期を結合後の半周期とし、周期を合わせた波形をm番目の半周期分の波形とする(
図25ステップS105)。
【0095】
図27(A)〜
図27(C)は本実施の形態の信号結合部744の動作を説明するための図であり、
図27(A)はMHPの波形を模式的に示す図、
図27(B)は半周期測定部740の測定結果を示す図、
図27(C)は信号結合部744の処理結果を示す図である。
半周期測定部740が
図27(A)に示すMHPの半周期を測定すると、
図27(B)に示すように半周期T1〜T20という測定結果が得られる。この場合、半周期T2,T3,T6〜T14,T16〜T19は代表値T0の0.5倍未満の長さであるため、第1の実施の形態の計数装置7においてはT10がMHPの半周期として認識されず、計数結果に補正誤差が生じる。
【0096】
これに対して、本実施の形態では、信号結合部744が上記のような信号の結合処理を行うことにより、
図27(C)に示すように半周期T1,T2,T3,T4という処理結果が得られる。例えば半周期T2,T3は代表値T0の0.5倍以上の長さの半周期T1とT4に挟まれており、m+pは1+4=5で奇数である。したがって、T1〜T3の波形が1つのMHPの半周期分の波形として結合され、半周期T1〜T3を合わせた周期が結合後の半周期T1となる。
【0097】
同様に、半周期T6〜T14は代表値T0の0.5倍以上の長さの半周期T5とT15に挟まれており、m+pは5+15=20で偶数である。したがって、T5〜T15の波形が1つのMHPの半周期分の波形として結合され、半周期T5〜T15を合わせた周期が結合後の半周期T3となる。さらに、半周期T16〜T19は結合後の半周期T3と代表値T0の0.5倍以上の長さの半周期T20に挟まれており、m+pは3+20=23で奇数である。したがって、半周期T3,T16〜T19の波形が1つのMHPの半周期分の波形として結合され、半周期T3,T16〜T19を合わせた周期が結合後の半周期T3となる。信号結合部744の処理結果は、記憶部75に格納される。
【0098】
図25のステップS106〜S109の処理は、第2の実施の形態と同じである。第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態に比べて計数誤差を少なくすることができるが、計数装置7aに入力される信号にMHPの1/4周期以上のバーストノイズやポップコーンノイズが混入した場合、バーストノイズやポップコーンノイズが計数されてしまい、計数誤差が生じることがある。これに対して、本実施の形態では、このようなノイズの混入がある場合でも、計数誤差を少なくすることができる。
【0099】
なお、第2の実施の形態と同様に、ステップS102において度数分布を作成することなく、代表値算出部742aが、ステップS103において半周期測定部740の測定結果から計数期間中のMHPの半周期の平均値を代表値T0として算出してもよい。
【0100】
また、第2の実施の形態、第3の実施の形態において、ステップS106,S107の処理は必須の構成要件ではない。その理由は、結合前の代表値は度数分布を用いて精度良く求められているため、必ずしも再度代表値を求める必要はないからである。ステップS106,S107の処理を実行しない場合、補正値算出部743aは、ステップS103で算出された代表値T0を使用すればよい。ただし、ステップS103で算出する代表値T0の精度が低いと考えられる場合には、ステップS106,S107の処理を実行するようにしてもよい。
【0101】
[
参考例]
次に、本発明の
参考例について説明する。
図28は本
参考例の計数装置の構成の1例を示す図である。本
参考例は、第1の実施の形態の計数装置7の代わりに計数装置7bを用いるものである。計数装置7bは、2値化部71と、AND72と、カウンタ73bと、計数結果補正部74bと、記憶部75とから構成される。
図29は本
参考例の計数結果補正部74bの構成の1例を示すブロック図である。計数結果補正部74bは、周期測定部745と、度数分布作成部741bと、代表値算出部742bと、補正値算出部743bと、信号結合部744bとから構成される。
【0102】
図30は本
参考例の計数装置7bの動作を示すフローチャートである。周期測定部745は、計数期間中のMHPの周期を測定する(
図30ステップS201)。すなわち、周期測定部745は、AND72の出力の立ち上がりを検出すると共に、AND72の出力の立ち下がりを検出する。そして、周期測定部745は、AND72の出力の立ち上がりから次の立ち上がりまでの時間を測定することにより、計数期間中のAND72の出力の周期(すなわち、MHPの周期)を測定する。周期測定部745は、このような測定をAND72の出力に立ち上がりエッジが発生する度に行う。あるいは、周期測定部745は、AND72の出力の立ち下がりから次の立ち下がりまでの時間を測定することにより、MHPの周期を測定してもよい。記憶部75は、周期測定部745の測定結果を記憶する。
【0103】
ゲート信号GSが立ち下がり、計数期間が終了した後、度数分布作成部741bは、記憶部75に記憶された周期測定部745の測定結果から計数期間中のMHPの周期の度数分布を作成する(
図30ステップS202)。
【0104】
続いて、代表値算出部742bは、度数分布作成部741bが作成した度数分布から、MHPの周期の代表値T0を算出する(
図30ステップS203)。ここでは、MHPの周期の最頻値や中央値、あるいは平均値を代表値T0とすればよい。また、代表値算出部742bは、階級値と度数との積が最大となる階級値を代表値T0としてもよい。
【0105】
次に、信号結合部744bは、周期測定部745の測定結果について、代表値T0の0.5倍未満の長さの周期とその直後に測定された周期とを合わせた周期を結合後の周期とし、周期を合わせた波形を1つのMHPの1周期分の波形とすることを、結合後の周期が代表値T0の0.5倍以上になるまで行う(
図30ステップS204)。
図31(A)〜
図31(C)は信号結合部744bの動作を説明するための図であり、
図31(A)はMHPの波形を模式的に示す図、
図31(B)は周期測定部745の測定結果を示す図、
図31(C)は信号結合部744bの処理結果を示す図である。
【0106】
周期測定部745が
図31(A)に示すMHPの周期を測定すると、
図31(B)に示すように周期T1,T2,T3,T4,T5,T6,T7という測定結果が得られる。このうち、周期T1,T3,T4,T6,T7は高周波ノイズ等の原因により生じたものである。この場合、周期T1,T3〜T6は代表値T0の0.5倍未満の長さであるため、第1の実施の形態の計数装置7においてはT3〜T7の箇所で計数結果に誤差が生じる。
【0107】
これに対して、本
参考例では、信号結合部744bが上記のような信号の結合処理を行うことにより、
図31(C)に示すように周期T1,T2という処理結果が得られる。例えば周期T1,T2を合わせた周期が結合後の周期T1となり、T1,T2の波形が1つのMHPの1周期分の波形として結合される。ここでは、結合後の周期が代表値T0の0.5倍以上になるように結合される。同様に、
図31(B)の周期T3〜T7を合わせた周期が
図31(C)に示すように結合後の周期T2となり、T3〜T7の波形が1つのMHPの1周期分の波形として結合される。信号結合部744bの処理結果は、記憶部75に格納される。
【0108】
次に、度数分布作成部741bは、記憶部75に記憶された信号結合部744bの処理結果から計数期間中のMHPの周期の度数分布を作成する(
図30ステップS205)。
続いて、代表値算出部742bは、度数分布作成部741bがステップS205で作成した度数分布から、MHPの周期の代表値T0を算出する(
図30ステップS206)。これにより、記憶部75に格納されている代表値T0は、ステップS206で算出された最新の値に更新される。ステップS203と同様に、MHPの周期の最頻値や中央値、あるいは平均値を代表値T0としてもよいし、階級値と度数との積が最大となる階級値を代表値T0としてもよい。
【0109】
一方、カウンタ73bは、信号結合部744bの処理後のMHPについて、MHPの数を数える(
図30ステップS207)。第1の実施の形態のカウンタ73は、MHPの立ち上がりと立ち下がりの両方を数えたが、カウンタ73bは、MHPの立ち上がりと立ち下がりのうちどちらか一方のみを数えればよい。
【0110】
最後に、補正値算出部743bは、信号結合部744bの処理結果から、代表値T0の0.5倍未満である周期の数の総和Nsと、代表値T0の(n+0.5)倍以上(n+1.5)倍未満(nは1以上n
max以下の自然数)である周期の数の総和Nw
nとを求め、カウンタ73bの計数結果を次式のように補正する(
図30ステップS208)。
【0112】
式(9)において、Nはカウンタ73bの計数結果であるMHPの数、N’は補正後の計数結果、T
maxはMHPの周期がとり得る最大値である。
計数装置7bは、以上のような処理を第1の発振期間P1と第2の発振期間P2の各々について行う。
【0113】
その他の構成は、第1の実施の形態と同じである。本
参考例では、第1の実施の形態のように半周期の代表値を用いて計数結果を補正する効果を得ることはできないが、第2の実施の形態で説明したように、MHPの信号強度低下と計数装置7bに入力される信号へのバーストノイズの混入とが同時に発生した場合であっても、計数誤差を少なくすることができる。
【0114】
なお、本
参考例では、ステップS202において計数期間中のMHPの周期の度数分布を作成し、ステップS203において度数分布からMHPの周期の代表値T0を算出しているが、これに限るものではなく、ステップS202において度数分布を作成することなく、代表値算出部742bが、ステップS203において周期測定部745の測定結果から計数期間中のMHPの周期の平均値を代表値T0として算出してもよい。
【0115】
また、本
参考例において、ステップS205,S206の処理は必須の構成要件ではない。その理由は、結合前の代表値は度数分布を用いて精度良く求められているため、必ずしも再度代表値を求める必要はないからである。ステップS205,S206の処理を実行しない場合、補正値算出部743bは、ステップS203で算出された代表値T0を使用すればよい。ただし、ステップS203で算出する代表値T0の精度が低いと考えられる場合には、ステップS205,S206の処理を実行するようにしてもよい。
【0116】
なお、第1〜
第3の実施の形態および参考例において少なくとも計数装置7,7a,7bと演算装置8とは、例えばCPU、記憶装置およびインタフェースを備えたコンピュータとこれらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。このようなコンピュータを動作させるためのプログラムは、フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD−ROM、メモリカードなどの記録媒体に記録された状態で提供される。CPUは、読み込んだプログラムを記憶装置に書き込み、このプログラムに従って第1〜
第3の実施の形態および参考例で説明した処理を実行する。
【0117】
また、第1〜
第3の実施の形態および参考例では、本発明の計数装置を振動周波数計測装置に適用した場合について説明したが、これに限るものではなく、本発明の計数装置は他の分野にも適用することができる。本発明の計数装置が有効な場合は、計数の対象となる信号の数が特定の物理量(第1〜
第3の実施の形態および参考例の場合は半導体レーザ1と物体10との距離、および物体10の変位)と線形の関係を有し、特定の物理量が一定の場合は信号が略単一周波数となる場合である。
また、信号が単一周波数でなくても、特定の物理量が計数期間と比較して十分低い周波数で、例えば1/10以下の周波数で振動している対象物の速度のように周期分布の広がりが小さい場合も略単一周波数として本発明の計数装置は有効である。
【0118】
また、第1〜
第3の実施の形態および参考例では、物理量センサの例として振動周波数計測装置を挙げて説明したが、これに限るものではなく、本発明を他の物理量センサに適用してもよい。すなわち、計数装置の計数結果から物体の張力を算出してもよいし、特許文献1に開示されているように、計数装置の計数結果から物体との距離および物体の速度を算出するようにしてもよい。物理量センサが算出する物理量が様々なことから明らかなように、上記の特定の物理量と、物理量センサが算出する物理量とは同じ場合もあるが、異なる場合もある。