特許第5798680号(P5798680)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5798680-加圧式中空糸膜モジュール 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5798680
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】加圧式中空糸膜モジュール
(51)【国際特許分類】
   B01D 63/02 20060101AFI20151001BHJP
   B01D 63/00 20060101ALI20151001BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20151001BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20151001BHJP
   B01D 69/08 20060101ALI20151001BHJP
   B01D 71/26 20060101ALI20151001BHJP
   B01D 71/48 20060101ALI20151001BHJP
   B01D 71/56 20060101ALI20151001BHJP
   B01D 71/68 20060101ALI20151001BHJP
   B01D 71/34 20060101ALI20151001BHJP
   B01D 71/42 20060101ALI20151001BHJP
   B01D 71/64 20060101ALI20151001BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
   B01D63/02
   B01D63/00 500
   B01D69/10
   B01D69/12
   B01D69/08
   B01D71/26
   B01D71/48
   B01D71/56
   B01D71/68
   B01D71/34
   B01D71/42
   B01D71/64
   C02F1/44 A
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-511309(P2014-511309)
(86)(22)【出願日】2012年6月21日
(65)【公表番号】特表2014-514963(P2014-514963A)
(43)【公表日】2014年6月26日
(86)【国際出願番号】KR2012004897
(87)【国際公開番号】WO2012177058
(87)【国際公開日】20121227
【審査請求日】2013年11月15日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0059992
(32)【優先日】2011年6月21日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】314003797
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】リュ,ジェ−ヒ
(72)【発明者】
【氏名】シン,ヨン−チョル
(72)【発明者】
【氏名】イ,カン−ジン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ム−ソック
【審査官】 岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】 再公表特許第2009/142279(JP,A1)
【文献】 特開平09−173729(JP,A)
【文献】 特表2009−517199(JP,A)
【文献】 特表2009−517200(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0024631(US,A1)
【文献】 特開平04−227030(JP,A)
【文献】 特開2010−036183(JP,A)
【文献】 特開2009−297642(JP,A)
【文献】 特開2009−160582(JP,A)
【文献】 特開平02−213356(JP,A)
【文献】 特開2010−327840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 63/02
B01D 63/00
B01D 69/08
B01D 69/10
B01D 69/12
B01D 71/26
B01D 71/34
B01D 71/42
B01D 71/48
B01D 71/56
B01D 71/64
B01D 71/68
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水流入口及びろ過水排出口を有するモジュールケース;
該モジュールケース内に位置する複合中空糸膜束;
該複合中空糸膜束の一端がポッティングされており、前記モジュールケースの内面に接着・固定されている第1の固定部;及び
前記複合中空糸膜束の他端がポッティングされており、前記モジュールケースの内面に接着・固定されている第2の固定部;を含み、
前記複合中空糸膜束を構成する各複合中空糸膜のそれぞれは、8本ないし24本の原糸で織造された管状編物、及び該管状編物の外表面上の高分子樹脂フィルムを含み、
少なくとも1の前記各原糸は、1本ないし4本からなる繊度1〜120デニールの細繊度フィラメント及び1本ないし4本からなる繊度12〜600デニールの中繊度フィラメントを含み、
前記細繊度フィラメントは、0.01デニールないし0.4デニールの繊度を有する複数の第1のモノフィラメントを含み、
前記中繊度フィラメントは、0.4超過3未満のデニールの繊度を有する複数の第2のモノフィラメントを含み、
前記管状編物の外径に対する厚さの割合は15%ないし35%であることを特徴とする外圧式中空糸膜モジュール。
【請求項2】
前記管状編物は、1.2mmないし1.7mmの外径及び0.18mmないし0.59mmの厚さを有することを特徴とする、請求項1に記載の外圧式中空糸膜モジュール。
【請求項3】
前記複合中空糸膜束のパッキング密度は40%ないし70%であり、前記パッキング密度は、前記外圧式中空糸膜モジュールの断面のうち前記複合中空糸膜束が占める割合(%)であることを特徴とする、請求項1に記載の外圧式中空糸膜モジュール。
【請求項4】
前記細繊度フィラメント及び中繊度フィラメントは、ポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート又はナイロンを含み、
前記高分子樹脂フィルムは、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、スルホン化ポリスルホン樹脂、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)樹脂又はポリアクリロニトリル(PAN)樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂及びポリエステルイミド樹脂のうち少なくとも一つを含むことを特徴とする、請求項1に記載の外圧式中空糸膜モジュール。
【請求項5】
前記細繊度フィラメントは、100本ないし300本の前記第1のモノフィラメントを含み、
前記中繊度フィラメントは、30本ないし200本の前記第2のモノフィラメントを含むことを特徴とする、請求項1に記載の外圧式中空糸膜モジュール。
【請求項6】
前記各原糸の細繊度フィラメント及び中繊度フィラメントの和は3本以上であることを特徴とする、請求項5に記載の外圧式中空糸膜モジュール。
【請求項7】
前記各原糸は150デニールないし600デニールの繊度を有することを特徴する、請求項1に記載の外圧式中空糸膜モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧式中空糸膜モジュールに関し、より具体的には、高い透過流量、膜洗浄の容易性及び高い耐久性を同時に満足させる加圧式中空糸膜モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
流体処理のための分離方法としては、加熱又は相変化を用いる分離方法、及びろ過膜を用いる分離方法などがある。ろ過膜を用いる分離方法によると、ろ過膜の細孔サイズに応じて所望の水質を安定的に得られるので、工程の信頼度を高めることができる。また、ろ過膜を用いると、加熱などの操作が必要でないので、加熱などによって影響を受けられる微生物を使用する分離工程に広く用いることができる。
【0003】
ろ過膜を用いた分離方法のうち一つとしては、中空糸状の膜を束状に形成した中空糸膜モジュールを用いる方法がある。伝統的に、中空糸膜モジュールは、無菌水、飲用水、超純水の製造などの精密ろ過分野に広く使用されてきたが、最近は、下/廃水処理、浄化槽での固液分離、産業廃水での浮遊物質(SS:Suspended Solid)除去、河川水のろ過、工業用水のろ過、及びプール水のろ過などにその応用範囲が拡大されている。
【0004】
中空糸膜モジュールは、駆動方式に従って吸入式モジュールと加圧式モジュールに分類することができる。
【0005】
吸入式モジュールは、処理しようとする流体を収容している水槽にモジュールを浸漬させ、中空糸膜の内部に陰圧(negative pressure)を加え、流体のみを選択的に中空糸膜の内部(中空)に透過させることによって、流体に含有されている不純物又はスラッジなどの汚染物質を分離する方式を用いている。吸入式モジュールは、流体の循環のための設備を要求しないので、施設費や運転費の節減をもたらすという長所を有する一方、単位時間に得られる透過流量が制限的であるという短所を有する。
【0006】
その一方、処理すべき流体を中空糸膜の外部から内部に加圧・ろ過させる加圧式モジュールの場合は、流体循環のための別途の設備が必要ではあるが、単位時間に得られる透過流量が吸入式モジュールに比べて相対的に多いという長所を有する。
【0007】
加圧式モジュールでは、中空糸膜束が所定のサイズのモジュールケース内にポッティングされているので、中空糸膜束のパッキング密度が透過流量の観点で重要である。パッキング密度が高いほど、モジュールの膜面積が増加するが、ろ過すべき原水のための空間が減少し、膜汚染がより容易に生じるという問題も発生する。また、膜汚染を抑制するために強い散気洗浄が実施されるとき、中空糸膜が破損するという問題も発生し得る。
【0008】
したがって、加圧式ろ過モジュールは、高い透過流量を示すと共に、膜洗浄の容易性及び高い耐久性などの要求も同時に満足させなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明は、前記のような関連技術の制限及び短所に起因した問題を防止できる加圧式中空糸膜モジュールに関する。
【0010】
本発明の一側面は、高い透過流量、膜洗浄の容易性及び高い耐久性を同時に満足させる加圧式中空糸膜モジュールを提供する。
【0011】
本発明の他の特徴及び利点は、以下で記述しているが、部分的にはそのような記述から自明になるだろう。又は、本発明の実施を通して本発明の他の特徴及び利点が学習され得るだろう。本発明の各目的及び他の各利点は、添付の図面はもちろん、発明の詳細な説明及び特許請求の範囲で特定した構造によって実現されて達成されるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一側面として、原水流入口及びろ過水排出口を有するモジュールケース;該モジュールケース内に位置する複合中空糸膜束;該複合中空糸膜束の一端がポッティングされており、前記モジュールケースの内面に接着・固定されている第1の固定部;及び前記複合中空糸膜束の他端がポッティングされており、前記モジュールケースの内面に接着・固定されている第2の固定部;を含み、前記複合中空糸膜束を構成する複合中空糸膜のそれぞれは、各原糸で織造された管状編物、及び該管状編物の外表面上の高分子樹脂フィルムを含み、少なくとも1の前記各原糸は、細繊度フィラメント及び中繊度フィラメントを含み、前記細繊度フィラメントは、0.01デニールないし0.4デニールの繊度を有する第1のモノフィラメントを含み、前記中繊度フィラメントは、0.4超過3未満のデニールの繊度を有する第2のモノフィラメントを含み、前記管状編物の外径に対する厚さの割合は15%ないし35%である加圧式中空糸膜モジュールが提供される。
【0013】
前記のような一般的敍述及び以下の詳細な説明は、いずれも本発明を例示又は説明するためのものに過ぎなく、特許請求の範囲の発明に対するより詳細な説明を提供するためのものと理解しなければならない。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、外径に対する厚さの割合が15%ないし35%である管状編物を用いて複合中空糸膜を製造し、この複合中空糸膜を用いて加圧式中空糸膜モジュールを製造することによって、高い透過流量、膜洗浄の容易性及び向上した耐久性を有する加圧式中空糸膜モジュールを提供することができる。
【0015】
本発明の他の効果は、それと関連する技術的構成と共に、以下で詳細に記述されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施例に係る加圧式中空糸膜モジュールの断面図である。
図2】本発明の一実施例に係る中空糸膜の断面を概略的に示すSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の技術的思想及び範囲を逸脱しない範囲内で本発明の多様な変更及び変形が可能であるという点は、当業者にとって自明であろう。したがって、本発明は、特許請求の範囲に記載した発明及びその均等物の範囲内の変更及び変形を全て含む。
【0018】
以下、本発明に係る加圧式中空糸膜モジュールの一実施例を添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施例に係る加圧式モジュールの断面図である。
【0020】
本発明の加圧式モジュール100は、多数の中空糸膜110を含む。各中空糸膜110内には中空が形成されている。ろ過作業中に中空糸膜110の外表面側から内表面側にろ過水が透過する。前記多数の中空糸膜110は、長さ方向に均一に配列された束状を有する。
【0021】
各中空糸膜110の上端部は、第1の固定部120によってモジュールケース140内の上側に固定されている。各中空糸膜110の上端は開放された状態である。本発明の加圧式モジュール100は、多数の中空糸膜110がポッティングされている第1の固定部120とモジュールケース140の内面との間にシーリング剤をさらに含むことによって、中空糸膜110を透過して中空に流入し、中空糸膜110の開放された上端を介して排出されるろ過水が原水と混合されることを防止することができる。
【0022】
前記第1の固定部120は、熱硬化性樹脂、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコンゴムなどからなり得る。選択的に、これら熱硬化性樹脂にシリカ、カーボンブラック、フッ化カーボンなどの充填材を混入させることによって、第1の固定部120の強度向上及び硬化収縮減少を図ることもできる。
【0023】
一方、各中空糸膜110の下端は、前記第1の固定部120と同一又は異なる物質からなる第2の固定部130によってモジュールケース140内の下側に固定されている。各中空糸膜110の下端は前記第2の固定部130内に埋め込まれているので、流体は、前記下端を介して各中空糸膜110の中空に流入できず、前記中空から排出することもできない。
【0024】
ろ過処理すべき原水は、原水流入口141を介してモジュールケース140内に流入する。モジュールケース140内に流入した原水はポンプによって加圧され、その一部が中空糸膜110を透過して中空糸膜110の中空に流入する。中空糸膜110の中空に流入したろ過水は、第1の固定部120側の開放された末端から抜け出てモジュールケース140のろ過水排出口142を介して外部に排出される。ろ過水が抜け出ることにより、固形成分の汚染物質の濃度が高くなった原水(以下、"濃縮水"と称する)は濃縮水排出口143を介して外部に排出される。
【0025】
ろ過作業の遂行中又はろ過作業の中止後に、中空糸膜110の洗浄のための空気が空気流入口144を介してモジュールケース140の内部に流入する。空気流入口144を介してモジュールケース140の内部に流入した空気が中空糸膜110に伝達されるように、前記第2の固定部130には多数の貫通ホールHが形成されている。
【0026】
選択的に、ろ過処理すべき原水と中空糸膜110の洗浄のための空気は、一つの流入口144を介してモジュールケース140の内部に流入させることができる。この場合、原水及び空気は、いずれも第2の固定部130に形成された多数の貫通ホールHを通過する。
【0027】
一方、ろ過作業の終了後に、モジュールケース140内の原水は、第2の固定部130に形成された多数の貫通ホールHを通過し、排水路145を介してモジュールケース140の外部に排出される。
【0028】
以上で説明した加圧式モジュール100の場合、モジュールケース140内に存在する各中空糸膜110のパッキング密度が過度に高いと、モジュール100内で膜110以外の空間、すなわち、原水で充填される空間が非常に少なくなってろ過効率が減少し、膜110の洗浄の難しさによって膜汚染の危険が増加するという問題が発生する。したがって、加圧式モジュール100の中空糸膜110のパッキング密度は、ろ過効率及び洗浄の容易性を考慮して適正な水準に設定しなければならない。
【0029】
中空糸膜のパッキング密度が一定の値に設定されたと仮定する場合、加圧式モジュール100の透過流量は、各中空糸膜110の膜面積と深い関連を有する。すなわち、中空糸膜110束の膜面積が大きいほど、加圧式モジュール100の透過流量は増加する。中空糸膜110束のパッキング密度が一定な状態で中空糸膜110束の膜面積を増加させるためには、外径(中空糸膜の断面の外径、中空糸膜をその長さ方向と垂直な方向に切断したときの断面の外径)の小さい中空糸膜を使用することによって、単位空間内の各中空糸膜110の数を増加させなければならない。
【0030】
前記のような理由により、加圧式モジュールの製造には、管状編物上に高分子樹脂がコーティングされた複合膜形態の中空糸膜に比べて、小さい外径を有する単一膜形態の中空糸膜(補強無しの形態の中空糸膜)が使用されることが有利であり得る。しかし、単一膜は、相対的に脆弱な耐久性を有するので、散気による洗浄作業時に容易に破損するという問題を有する。より具体的に説明すると、中空糸膜束のパッキング密度が吸入式モジュールに比べて相対的に高い加圧式モジュールは、膜汚染に特に脆弱になるしかない。したがって、加圧式モジュールの場合、ろ過作業の遂行中に、吸入式モジュールに比べて強い散気洗浄が実施される必要がある。複合膜形態の中空糸膜に比べて相対的に低い耐久性を有する単一膜形態の中空糸膜を用いる場合、強い散気洗浄によって中空糸膜が破損するという問題がある。要約すると、加圧式モジュールにおいて、ろ過効率及び透過流量を考慮して単一膜形態の中空糸膜を採用する場合、単一膜の弱い強度によるモジュールの耐久性低下という問題が発生する。
【0031】
一方、通常の複合中空糸膜は、管状編物の存在のため単一膜に比べて大きい外径を有する。複合中空糸膜の大きい外径は、一定のパッキング密度条件下で膜面積の低下及びこれによる流量低下をもたらす。
【0032】
前記のような問題を解決するために、複合中空糸膜の外径を既存より小さくすることによって加圧式モジュールの中空糸膜パッティング密度を高める第1の方案と、単一膜自体の耐久性を向上させる第2の方案とを考慮することができる。
【0033】
ろ過膜は、その特性上、膜自体に多数の微細気孔を有するので、単一膜形態を維持しながらその耐久性を向上させるには限界がある。したがって、本発明は、透過流量の低下なく複合中空糸膜の外径を既存より小さくするのに重点を置いた。以下では、本発明の一実施例に係る複合膜形態の中空糸膜110をより具体的に説明する。
【0034】
図2は、本発明に係る中空糸膜の断面を概略的に示す。
【0035】
図2に示したように、本発明の中空糸膜は、補強材である管状編物111の表面に高分子樹脂フィルム112がコーティングされた複合中空糸膜110である。
【0036】
一定のサイズのパッキング密度を有する加圧式モジュール100において複合中空糸膜110束の膜面積を極大化するために、本発明の一実施例に係る管状編物111は、1.2mmないし1.7mmの外径を有する。管状編物111の外径が1.2mm未満である場合は、複合中空糸膜110の内径までも過度に小さくなり、モジュール100の既存の単一膜形態のモジュールに比べて低い透過流量をもたらす。その一方、管状編物111の外径が1.7mmを超えると、所定のパッキング密度下で複合中空糸膜110束の膜面積を有意的に増加させることができない。
【0037】
本発明の明細書で使用する用語である‘パッキング密度'は、加圧式中空糸膜モジュールの断面のうち複合中空糸膜束が占める割合(%)として定義される。加圧式モジュールの断面は、モジュールケース内の空間の断面を意味する。モジュール100の製作及び維持管理の便宜性及びろ過効率を考慮すると、本発明の加圧式モジュール100内の複合中空糸膜110束のパッキング密度は40%ないし70%であり得る。パッキング密度が40%未満であると、膜面積の減少によってろ過効率が低下する。その一方、パッキング密度が70%を超えると、モジュール100内のろ過すべき原水のための空間の減少によるろ過効率の低下が発生するだけでなく、膜汚染が深刻になる。
【0038】
一定のパッキング密度下で複合中空糸膜110束の膜面積を増加させるために管状編物111の外径を小さくすることも重要であるが、これに劣らず、管状編物111の厚さを薄くすることも重要である。これは、管状編物111の外径が小さくなりながら、これに比例してその内径も小さくなる場合、中空糸膜110の透過流量の増大を期待できないためである。したがって、本発明によると、管状編物111の外径に対する管状編物111の厚さの割合は15%ないし35%である。
【0039】
管状編物111の外径に対する管状編物111の厚さの割合が35%を超えると、すなわち、管状編物111の厚さがその外径に比べて過度に厚いと、管状編物111の内径が小さくなり、複合中空糸膜110の中空に沿って流れるろ過水の流れが小さくなるだけでなく、複合中空糸膜110の厚さも増加し、これによって膜を透過する流体の量自体も小さくなるという問題が発生する。
【0040】
その一方、管状編物111の外径に対する管状編物111の厚さの割合が15%未満であると、すなわち、管状編物111の厚さがその外径に比べて過度に薄いと、管状編物111の補強機能を担保できなくなる。
【0041】
本発明の一実施例によると、管状編物111は、1.2mmないし1.7mmの外径及び0.18mmないし0.59mmの厚さを有する。
【0042】
本発明における管状編物111の外径、内径及び厚さは、次のような方法によって測定される。
【0043】
管状編物111の形態を固定するために、管状編物111の外表面にパラフィンをコーティングする。管状編物111の形態を固定し得るものであればいずれの物質も前記コーティング物質として使用可能であるが、例えば、パラフィンの代わりに、複合中空糸膜の製造のための高分子樹脂を管状編物111上にコーティングすることもできる。その次に、FE―SEM断面切り取り用ミクロトーム(microtome)でパラフィンがコーティングされた管状編物111を任意の地点でその長さ方向に垂直に切って断面サンプルを得た後、FE―SEMで断面を分析する。外径及び内径のそれぞれの最長長さと最短長さとの間の偏差が20%以内である5つのサンプルを選択する。選択された各サンプルの外径は最長外径及び最短外径の平均値として決定され、内径は最長内径及び最短内径の平均値として決定される。5つのサンプルの外径及び内径をそれぞれ算術平均することによって、管状編物111の外径及び内径が最終的に求められる。管状編物111の厚さ(平均厚さを意味する)は外径と内径との差である。
【0044】
以上で説明した本発明の管状編物111を製造するために、細繊度フィラメント及び中繊度フィラメントで構成された混合糸が管状編物111の製造のための原糸として使用される。加えて、原糸、細繊度フィラメントのみで構成された原糸、中繊度フィラメントのみで構成された原糸が管状編物111を製造するために使用されてもよい。
【0045】
本発明の明細書で使用する用語である‘細繊度フィラメント'は、0.01デニールないし0.4デニールの繊度を有する各モノフィラメントからなるフィラメントとして定義され、‘中繊度フィラメント'は、0.4超過3未満のデニールの繊度を有する各モノフィラメントからなるフィラメントとして定義される。細繊度フィラメント及び中繊度フィラメントの他に、3デニール以上の繊度を有するモノフィラメントからなるフィラメントは一般に‘太繊度フィラメント'に分類される。
【0046】
明確に言うと、管状編物111を製造するのに使用される本発明の全ての原糸のそれぞれは、細繊度フィラメント及び/又は中繊度フィラメントのみを含み、太繊度フィラメントを有さない。
【0047】
本発明の原糸を構成する細繊度フィラメントのそれぞれは、100本ないし300本のモノフィラメントを含み、1デニールないし120デニールの繊度を有する。細繊度フィラメントは、ポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はナイロンを含むことができる。
【0048】
本発明の原糸を構成する中繊度フィラメントのそれぞれは、30本ないし200本のモノフィラメントを含み、12デニールないし600デニールの繊度を有する。中繊度フィラメントは、ポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はナイロンを含むことができる。
【0049】
本発明の管状編物111の製造に使用される原糸は、1本ないし4本の細繊度フィラメント及び1本ないし4本の中繊度フィラメントを含む。各原糸を構成する細繊度フィラメント及び中繊度フィラメントの和は3本以上であり、各原糸は150デニールないし600デニールの繊度を有する。
【0050】
本発明の一実施例によると、8本ないし24本の原糸を使用して管状編物111を製造する。
【0051】
本発明の管状編物111は、0.01デニールないし0.4デニールの繊度を有するモノフィラメントで構成された細繊度フィラメントを含むので、管状編物111と高分子樹脂フィルム112との接触面積がその分だけ大きくなる。管状編物111と高分子樹脂フィルム112の大きな接触面積は、本発明の複合中空糸膜110に優れた剥離強度を与える。すなわち、管状編物111にコーティングされた高分子樹脂フィルム112を剥がすためには大きな力が必要であるので、本発明の複合中空糸膜110は、強烈な散気洗浄にもかかわらず、管状編物111と高分子樹脂フィルム112とを分離せず長期間維持することができる。
【0052】
一方、管状編物111を製造するのに使用される全ての原糸のそれぞれが細繊度フィラメントのみで構成される場合、管状編物111の外径を1.7mm以下に製造しにくいという問題がある。
【0053】
これを解決するために、細繊度フィラメントと太繊度フィラメントとの混糸によって原糸を製造することを考慮できるが、細繊度フィラメントと太繊度フィラメントは、それぞれを構成する各モノフィラメントの繊度の差によって管状編物111の厚さ不均一度が高くなるという問題を有する。管状編物111の厚さ不均一度が高くなると、管状編物111上の高分子樹脂フィルム112のコーティングが不均一になり、その結果、高分子樹脂フィルム112の厚さが薄い膜110の領域で破損が発生する危険が大きくなる。
【0054】
したがって、本発明の望ましい実施例によると、細繊度フィラメントと中繊度フィラメントとの混糸によって原糸を製造し、この原糸を用いて管状編物111を製造することによって、1.2mmないし1.7mmの外径を有し、外径に対する厚さの割合が15%ないし35%の管状編物111を提供することができる。
【0055】
このように製造された管状編物111上にポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、スルホン化ポリスルホン樹脂、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)樹脂又はポリアクリロニトリル(PAN)樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂及びポリエステルイミド樹脂のうち少なくとも一つを含む高分子樹脂フィルム112をコーティングすることによって、1MPaないし5MPaの優れた剥離強度を有する複合中空糸膜110を提供することができる。
【0056】
前記高分子樹脂フィルム112は、緻密な構造のスキン層と、スポンジ構造の内層とを含んで構成することができる。前記スキン層には孔径が0.01μmないし1μmの各微細孔が形成されており、前記内層には孔径が10μm以下、より望ましくは孔径が5μm以下の各微細孔が形成されている。
【0057】
本発明は、高分子樹脂フィルム112の内層に10μmを超える欠損部位、すなわち、孔径が10μmを超える各微細孔が存在しない。内層に10μmを超える欠損部位が存在する場合は、ろ過信頼度が大きく減少し得る。スポンジ構造の内層に形成された微細孔の各孔径は、複合中空糸膜110の中心方向に行くほど漸次増大することがより望ましい。
【0058】
高分子樹脂フィルム112の厚さは0.2mm以下で、高分子樹脂フィルム112が管状編物111内に浸透する距離は管状編物111の厚さの30%未満であることが、機械的強度及び水透過性能を同時に向上させるのに望ましい。
【0059】
本発明の複合中空糸膜110は、2重管状ノズルの中央部に管状編物111を通過させると同時に、前記ノズルを介して高分子樹脂フィルム用紡糸ドープを管状編物111の表面に流入させ、これを管状編物111上にコーティングし、これをノズルの外部の空気中に吐出させた後、凝固液で凝固させて複合中空糸膜構造を形成し、水洗及び乾燥させる方法で製造することができる。
【0060】
管状編物111の表面に高分子樹脂フィルム112を一定の厚さで均一にコーティングするためには、管状編物111の進行速度とノズル内に流入する紡糸ドープ量の均衡が合わなければならなく、これを紡糸ドープ供給速度Qと管状編物の速度υで表現した関係式は次に示す通りである。
【0061】
[ここで、Qは、時間当たり供給される紡糸ドープの量、ρは、紡糸ドープの密度、υは、管状編物の進行速度、Dは、管状編物の外径、Tは、コーティングされる紡糸ドープの厚さである。]
前記の式から分かるように、高分子樹脂フィルム112の厚さは、紡糸ドープの供給量、紡糸ドープの密度、管状編物111の進行速度などを用いて調節することができる。
【0062】
高分子樹脂フィルム用紡糸ドープは、高分子樹脂、添加剤であるポリビニルピロリドン及び親水性化合物を有機溶媒に溶解して製造する。前記紡糸ドープは、10重量%ないし50重量%の高分子樹脂、1重量%ないし30重量%の添加剤(ポリビニルピロリドン及び/又は親水性化合物)、及び20重量%ないし89重量%の有機溶媒を含むことができる。
【0063】
前記高分子樹脂としては、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、スルホン化ポリスルホン樹脂、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)樹脂又はポリアクリロニトリル(PAN)樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂及びポリエステルイミド樹脂のうち少なくとも一つを使用することができ、有機溶媒としては、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド又はこれらの混合液を使用することができる。
【0064】
親水性化合物としては、水又はグリコール類化合物、より望ましくは、分子量2,000以下のポリエチレングリコールを使用する。親水性化合物である水又はグリコール類化合物は、紡糸ドープの安定性を低下させる役割をするので、高分子樹脂フィルム112にスポンジ型構造が発現される可能性を相対的に高くする。
【0065】
すなわち、紡糸ドープの安定性が高いほど、膜の内部に欠損部位(孔径が10μmを超える微細孔)が形成され、フィンガー型(Finger―like)構造になりやすいので、添加剤として水又はグリコール類化合物などの親水性化合物を添加することによって、紡糸ドープの安定性を低下させると同時に膜を親水化させ、複合中空糸膜110の水透過度を増加させることができる。
【0066】
以下、実施例及び比較実施例を通して、本発明をより具体的に説明する。
【0067】
実施例1
0.31デニールの繊度を有するPETモノフィラメント200本からなる細繊度フィラメント2本と、2デニールの繊度を有するPETモノフィラメント72本からなる中繊度フィラメント1本との合糸によって原糸を製造した。このような原糸20本を使用して1.4mmの外径及び0.4mmの厚さを有する管状編物を製造した。
【0068】
実施例2
0.31デニールの繊度を有するPETモノフィラメント100本からなる細繊度フィラメント2本と、2デニールの繊度を有するPETモノフィラメント36本からなる中繊度フィラメント1本との合糸によって原糸を製造した。このような原糸20本を使用して1.2mmの外径及び0.3mmの厚さを有する管状編物を製造した。
【0069】
比較実施例1
0.31デニールの繊度を有するPETモノフィラメント200本からなる細繊度フィラメント6本の合糸によって原糸を製造した。このような原糸20本を使用して1.9mmの外径及び0.6mmの厚さを有する管状編物を製造した。
【0070】
管状編物の外径、内径及び厚さ測定
実施例1及び2と比較実施例1によって製造された各管状編物の外径、内径及び厚さを次の方法によってそれぞれ求めた。
【0071】
管状編物の形態を固定するために、管状編物の外表面にパラフィンをコーティングした。その次に、FE―SEM断面切り取り用ミクロトームでパラフィンがコーティングされた管状編物を任意の地点でその長さ方向に垂直に切って断面サンプルを得た後、FE―SEMで断面を分析した。外径及び内径のそれぞれの最長長さと最短長さとの間の偏差が20%以内の5つのサンプルを選択した。選択された各サンプルの外径は最長外径及び最短外径の平均値として決定され、内径は最長内径及び最短内径の平均値として決定された。5つのサンプルの外径及び内径をそれぞれ算術平均することによって、管状編物111の外径及び内径が最終的に求められた。管状編物の外径から内径を引くことによって、管状編物の厚さ(平均厚さを意味する)が求められた。
【0072】
【表1】
【0073】
実施例3
ポリスルホン17重量%、ポリビニルピロリドン9重量%及びポリエチレングリコール10重量%を、64重量%のジメチルホルムアミド(有機溶媒)に撹拌しながら溶解させ、透明な紡糸ドープを製造した。その次に、前記紡糸ドープを直径が2.38mmφの2重管状ノズルに供給すると同時に、実施例1によって製造された管状編物を前記ノズルの中央部に通過させ、前記管状編物の表面に紡糸ドープをコーティングした後、これを空気中に吐出した。このとき、紡糸ドープの供給速度に対する管状編物の進行速度比kは750g/mにした。紡糸ドープがコーティングされた管状編物を10cmのエアギャップに通過させた後、35℃の凝固槽に通過させて凝固処理した。その次に、これを洗浄槽で洗浄した後、巻き取って複合中空糸膜を製造した。管状編物にコーティングされた高分子樹脂フィルムは0.1mmの厚さを有した。
【0074】
実施例4
実施例1によって製造された管状編物の代わりに、実施例2によって製造された管状編物を使用したことを除いては、実施例3と同一の方法で複合中空糸膜を製造した。
【0075】
比較実施例2
実施例1によって製造された管状編物の代わりに、比較実施例1によって製造された管状編物を使用したことを除いては、実施例3と同一の方法で複合中空糸膜を製造した。
【0076】
比較実施例3
35重量%のポリビニリデンフルオライド(PVDF)、45重量%のγ―ブチロラクトン(γ―butyrolactone:GBL)、5重量%のジメチルアセトアミド(DMAc)、5重量%のポリビニルピロリドン(PVP)、及び10重量%のジエチルグリコール(DEG)を混合し、約120℃で24時間撹拌して紡糸溶液を製造した。このように製造された紡糸溶液を、二重管で構成された紡糸口金を介して吐出して紡糸物を得た。前記紡糸溶液を吐出する工程時、前記紡糸物の中空の内部に20重量%のジメチルアセトアミド(dimethylacetamide:DMAc)及び80重量%のポリエチレングリコール(Polyethyleneglycol:PEG)からなる混合液を吐出した。前記紡糸物を30cmの長さを有するエアギャップに通過させた後、凝固槽内の凝固液に浸漬させた。前記凝固液は、80重量%のγ―ブチロラクトン(γ―butyrolactone:GBL)、及び20重量%の純水を用いて形成し、前記凝固液の温度は25℃に維持した。前記凝固槽で凝固して得た多孔性構造を25℃の純水で洗浄し、水及びグリセリンを含む80℃の後処理液を用いて熱水処理した後で乾燥することによって、単一膜形態の中空糸膜を得た。
【0077】
実施例3及び4と比較実施例2及び3によってそれぞれ製造された各中空糸膜の外径及び引張強度を次の方法によってそれぞれ求め、その結果を下記の表2に示した。
【0078】
中空糸膜の外径測定
実施例3及び4と比較実施例2及び3によってそれぞれ製造された各中空糸膜の外径を次の方法によってそれぞれ求めた。
【0079】
FE―SEM断面切り取り用ミクロトームで複合中空糸膜を任意の地点でその長さ方向に垂直に切って断面サンプルを得た後、FE―SEMで断面を分析した。外径の最長長さと最短長さとの間の偏差が20%以内の5つの断面サンプルを選択した。選択された各断面サンプルの外径は、最長外径及び最短外径の平均値として決定された。5つのサンプルの外径をそれぞれ算術平均することによって、複合中空糸膜の外径を最終的に求めた。
【0080】
引張強度の測定
100mmの膜長さを有する中空糸膜サンプルを準備した後、インストロン(Instron)4304と1Nセルを使用し、上部及び下部のアクショングリップ(action grip)にサンプルを固定した後、クロスヘッド速度(crosshead speed)を50.0mm/minにして引っ張る方法でサンプルの引張強度を測定した。
【0081】
【表2】
【0082】
本発明の望ましい各実施例を例示の目的で説明したが、当業者であれば、下記の請求項によって規定される発明の範囲及び思想を逸脱しない範囲で多様な変更、追加及び置換が可能であることを理解するだろう。
【符号の説明】
【0083】
100 加圧式モジュール
110 中空糸膜
120 第1の固定部
130 第2の固定部
140 モジュールケース
141 原水流入口
142 ろ過水排出口
143 濃縮水排出口
144 空気流入口
145 排水路
H 貫通ホール
図1
図2