(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5798699
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】電気音響変換装置
(51)【国際特許分類】
H04R 17/00 20060101AFI20151001BHJP
H01L 41/09 20060101ALI20151001BHJP
H01L 41/293 20130101ALI20151001BHJP
H01L 41/313 20130101ALI20151001BHJP
B06B 1/06 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
H04R17/00
H01L41/09
H01L41/293
H01L41/313
B06B1/06 Z
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-105778(P2015-105778)
(22)【出願日】2015年5月25日
【審査請求日】2015年6月5日
(31)【優先権主張番号】特願2014-217703(P2014-217703)
(32)【優先日】2014年10月24日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100195877
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻木 伸一郎
(72)【発明者】
【氏名】富田 隆
(72)【発明者】
【氏名】石井 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】浜田 浩
(72)【発明者】
【氏名】土信田 豊
【審査官】
菊池 充
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2013/021906(WO,A1)
【文献】
特許第5304252(JP,B2)
【文献】
特開2001−238291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 17/00−17/02
H01L 41/00−41/26
H02N 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電体層と電極層とが交互に積層され、極性が異なる少なくとも一対の電極層の間に前記圧電体層が配置された積層圧電素子と、
前記積層圧電素子が配置された振動板とを備え、
前記積層圧電素子は積層方向から見て多角形であり、
前記積層圧電素子が配置された前記振動板の面は円形であり、
前記少なくとも一対の電極層に挟まれる前記圧電体層のうち、積層方向から投影して前記少なくとも一対の電極層が重なる実効層の体積の合計(V)が下記の条件を満たすことを特徴とする電気音響変換装置。
0.2πR2×ts≦V≦2.0πR2×ts
(但し、πは円周率、Rは振動板の半径、tsは振動板の厚み)
【請求項2】
請求項1に記載の電気音響変換装置において、
前記少なくとも一対の電極層は、極性が異なる第1の電極層と第2の電極層とを含み、
前記第1の電極層は、前記積層圧電素子の一つの側面に形成された第1の側面電極に接続され、
前記第2の電極層は、前記第1の側面電極が形成された側面とは異なる側面に形成された第2の側面電極に接続されることを特徴とする電気音響変換装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電気音響変換装置において、
前記第1の電極層は、前記振動板と接する面とは反対側の前記積層圧電素子の表面に形成された電極層を含むことを特徴とする電気音響変換装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の電気音響変換装置において、前記積層圧電素子は積層方向から見て正方形であることを特徴とする電気音響変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多角形の積層圧電素子と円形の振動板とを備える電気音響変換装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
積層圧電素子と、前記積層圧電素子が配置される振動板とを備える電気音響変換装置はよく知られる。電気信号によって積層圧電素子が変形し、この変形によって振動板が振動し、電気音響変換装置は可聴波を発生する。
【0003】
積層圧電素子と振動板の組み合わせの多くは、両者円形又は両者矩形という相似形状である。相似形状は積層圧電素子と振動板の接触面積を大きくすることができるため、電気音響変換装置の音圧を高くすることができる。
【0004】
一方、振動板は円形が多い。矩形の振動板は振動の際の変形が不規則になり、音質が低下しやすいためである。他方、多角形の積層圧電素子は円形の積層圧電素子よりも材料収率に優れ、圧電材料が高価であるため、コスト的に有利である。しかし、多角形の積層圧電素子と円形の振動板との組み合わせはきわめて少ない。
【0005】
少ない従来技術の中から、
図15は特許文献1に記載される圧電音響部品61を示す。圧電音響部品61は、矩形の圧電板62と、圧電板62が配置される円板状の金属板63とを備える。圧電音響部品61は、内周側に同心円の段差を備えるリング状のケース64に嵌め込まれ、携帯電話やヘッドホンといった携帯音響機器等に組み込まれる。
【0006】
圧電板62としては積層圧電素子が用いられる。
図16は特許文献2に記載される積層圧電素子65の内部構造を示す。積層圧電素子65は圧電体層66と電極層67が交互に積層される。電極層67は、金属板63と接する面とは反対側の積層圧電素子65の第1の表面に形成された第1の表面電極層68と、第1の表面と反対側(金属板63と接する側)の第2の表面に形成された第2の表面電極層69を含む。第1の表面電極層68及び第2の表面電極層69を含む電極層67は、極性が異なる一対の接続電極70に一層おきに接続される。圧電体層66の層数は奇数であり、第1の表面電極層68と第2の表面電極層69は極性が異なる一対の接続電極70にそれぞれ接続される。接続電極70はスルーホールによって形成される。第1の表面電極層68にリード線71がハンダ付けされる。積層圧電素子65は第2の表面が接するように円板状の金属板63の上に配置され、第2の表面電極層69と金属板63は電気的に接続される。リード線71及び金属板63を介して電気信号が積層圧電素子65に印加される。積層圧電素子65が変形し、この変形によって振動板63が振動し、電気音響変換装置61は可聴波を発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−355892号公報
【特許文献2】特開2001−016691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
多角形の積層圧電素子を円形の振動板に配置すると、積層圧電素子と振動板の接触面積が相似形状の組み合わせと比較して小さくなる。積層圧電素子が振動板を振動させる力が小さくなるため、音圧が低下してしまう。
【0009】
本発明は、上記実情を鑑みてなされたもので、多角形の積層圧電素子を用いても円形の積層圧電素子と同等の音圧を得ることができる電気音響変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明の一態様は、
圧電体層と電極層とが交互に積層され、極性が異なる少なくとも一対の電極層の間に前記圧電体層が配置された積層圧電素子と、
前記積層圧電素子が配置された振動板とを備え、
前記積層圧電素子は積層方向から見て多角形であり、
前記積層圧電素子が配置される前記振動板の面は円形であり、
前記少なくとも一対の電極層に挟まれる前記圧電体層のうち、積層方向から投影して前記少なくとも一対の電極層が重なる実効層の体積の合計(V)が下記の条件を満たすことを特徴とする電気音響変換装置に関する。
0.2πR
2×ts≦V≦2.0πR
2×ts
(但し、πは円周率、Rは振動板の半径、tsは振動板の厚み)
【0011】
積層圧電素子は、極性が異なる一対の電極層に挟まれる圧電体層のうち、積層方向から投影して極性が異なる2つの電極層が重なる部分である、実効層が変形する。この変形が振動板に伝わり、電気音響変換装置は可聴波を発生する。本発明の一態様によれば、実効層の体積の合計(V)が上式を満たすことにより積層圧電素子が振動板を振動させる力が十分大きくなり、多角形の積層圧電素子を用いても円形の積層圧電素子と同等の音圧を得ることができる。
【0012】
(2)本発明の一態様では、
前記少なくとも一対の電極層は、極性が異なる第1の電極層と第2の電極層とを含み、
前記第1の電極層は、前記積層圧電素子の一つの側面に形成された第1の側面電極に接続され、
前記第2の電極層は、前記第1の側面電極が形成された側面とは異なる側面に形成された第2の側面電極に接続されることが好ましい。
【0013】
一次共振等によって円形の振動板は特定の領域、特に、振動板の中心から特定の距離にある同心円の領域で変形が大きくなる場合がある。この領域に電極層間の接続電極があると変形による応力が集中して破断するおそれがある。しかし、側面電極は円形の振動板の中心からの距離に幅があるため、特定の領域で側面電極が破壊されたとしても、他の領域での接続が維持される。したがって、安定した音圧、音質の維持が期待される。
【0014】
(3)本発明の一態様では、
前記第1の電極層は、前記振動板と接する面とは反対側の前記積層圧電素子の表面に形成された電極層を含むことが好ましい。
【0015】
電極層間の接続がスルーホールではなく、側面電極であるため、積層圧電素子に応力が残留しない。このため、リード線を振動板と接する面とは反対側の積層圧電素子の表面に形成された電極層にハンダ付けしても熱衝撃による積層圧電素子の破損を防ぐことができる。
【0016】
(4)本発明の一態様では、前記積層圧電素子は積層方向から見て正方形であることが好ましい。積層圧電素子の形状の対称性が円形に近づくため、音質が円形の積層圧電素子に近づく。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1の実施形態に係る電気音響変換装置の外観を示す。
【
図2】第1の実施形態に係る電気音響変換装置の内部構造を示す。
【
図3】第1の実施形態における積層圧電素子の積層及び外観を示す。
【
図4】第1の実施形態における側面電極の接続の安定性を示す。
【
図5】第1の実施形態における積層圧電素子の実効層を示す。
【
図6】第1の実施形態に係る電気音響変換装置の円形の振動板と多角形の積層圧電素子の寸法を示す。
【
図7】振動板の半径が4mmの場合において、振動板の厚みと積層圧電素子の実効層の厚みを変動させたときの振動板の中心部の変位量を示す。
【
図8】振動板の半径が8mmの場合において、振動板の厚みと積層圧電素子の実効層の厚みを変動させたときの振動板の中心部の変位量を示す。
【
図9】振動板の半径が4mmの場合において、振動板の厚みと積層圧電素子の実効層の厚みを変動させたときの振動板の中心部の相対変位量を示す。
【
図10】第1の実施形態に係る正方形の積層圧電素子を備える電気音響変換装置の音圧特性と円形の積層圧電素子を備える電気音響変換装置の音圧特性の比較を示す。
【
図11】第2の実施形態に係る電気音響変換装置の内部構造を示す。
【
図12】第3の実施形態に係る電気音響変換装置の内部構造を示す。
【
図13】第4の実施形態に係る電気音響変換装置の外観を示す。
【
図14】第5の実施形態に係る電気音響変換装置の外観を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0019】
本発明では、積層圧電素子及び振動板の形状は、それぞれ積層方向から見たときの積層圧電素子の形状及び積層圧電素子が配置される面の振動板の形状で表現する。例えば、「円形の積層圧電素子」は、実際の積層圧電素子の形状は円柱であるが、便宜上、積層方向から見たときの「円形」で表現する。「多角形の積層圧電素子」は、実際の積層圧電素子の形状は多角柱であるが、便宜上、積層方向から見たときの「多角形」で表現する。「円形の振動板」は、実際の振動板の形状は円柱であるが、便宜上、積層圧電素子が配置される面の「円形」で表現する。
【0020】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電気音響変換装置11の外観を示す。電気音響変換装置11は多角形の積層圧電素子12と、積層圧電素子12が配置される円形の振動板13とを備える。
図1に示される電気音響変換装置11は振動板13の片面に積層圧電素子12が配置されているが、振動板13の両面に積層圧電素子12が配置されてもよい。
【0021】
積層圧電素子12の形状は、四角、菱形、台形、正方形、長方形、六角形があげられる。ここで、正方形とは、直交する2辺の長さをa、bとすると、|a−b|÷a≦10%であることを意味する。この関係式を満たすと、音圧及び音質は実質的に低下しない。積層圧電素子の形状が正多角形(正方形や正六角形等)を除く多角形(例えば、長方形)の場合、積層圧電素子12の向きを判別することができる。振動板13への積層圧電素子12の配置や積層圧電素子12への電極の形成といった作業を確実に行うことができ、電気音響変換装置11間の音質のばらつきが小さくなる。
【0022】
積層圧電素子12の寸法(最大長)は5.4〜108mmがあげられる。小さすぎると生産が困難であり、大きくなると積層圧電素子12にクラックが発生しやすくなる。積層圧電素子の厚みは、0.03〜0.2mm(30〜0.200μm)があげられる。小さすぎると生産が困難であり、大きくなると積層圧電素子12の変形が阻害される。
【0023】
振動板13の半径は3〜60mmがあげられる。小さすぎると生産が困難であり、大きくなると配置する積層圧電素子12にクラックが発生しやすくなる。振動板13の厚みは0.05〜0.5mmが望ましく、さらに望ましくは0.05〜0.3mmである。薄すぎると強度が弱く、厚くなると振動が阻害される。振動板13としては、金属を用いることができる。金属としては、ステンレス鋼(SUS)、42アロイがあげられる。本態様では42アロイを用い、振動板13の半径は5.55mm、厚みは200μmとした。
【0024】
振動板13と接する面とは反対側の積層圧電素子12の第1の表面と、積層圧電素子12が配置される振動板13の面であって積層圧電素子12と接しない領域にリード線14がハンダ付けされる。積層圧電素子12が多角形であるため、積層圧電素子12と接しない振動板13の領域は積層圧電素子12が円形の場合よりも広い。このため、リード線14を振動板13にハンダ付けすることが容易である。振動板13は金属であるから、リード線14及び振動板13を介して積層圧電素子12に電気信号が印加される。積層圧電素子12が変形し、その変形によって振動板13が振動し、電気音響変換装置11は可聴波を発生する。
【0025】
図2は、第1の実施形態に係る電気音響変換装置11の内部構造を示す。積層圧電素子12は、圧電体層15と電極層16が交互に積層される。圧電体層15としては、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸バリウム、アルカリ含有ペロブスカイト、タングステンブロンズ等の強誘電材料が用いられる。電極層16としては、Ag/Pd、Pd等を用いることができる。電極層16の厚みは1〜5μmがあげられる。薄すぎると電極層16が不連続になりやすく、厚すぎると積層圧電素子12の変形が阻害される。本態様では圧電体層15としてPZT、電極層16としてAg/Pdを用い、電極層16は焼成後の厚みが2μmになるように形成した。
【0026】
電極層16は、振動板13と接する面とは反対側の積層圧電素子12の第1の表面に形成された第1の表面電極層17と、振動板13と接する側の積層圧電素子12の第2の表面に形成された第2の表面電極層18と、積層圧電素子12の内部に形成された内部電極層19とを含む。また、電極層16は極性が異なる2つの電極層からなり、それぞれ第1の電極層16aと第2の電極層16bという。第1の電極層16aと第2の電極層16bは一層おきに配置される。圧電体層15は第1の電極層16aと第2の電極層16bに挟まれる。
【0027】
圧電体層15の層数は2〜10層があげられるが、3層以上の奇数が電極層16を配置しやすい点で好ましい。第1及び第2の表面電極層17、18をそれぞれ第1及び第2の電極層16a、16bとして形成することができるからである。本態様では圧電体層15の層数は5層とした。
【0028】
電極層間の接続を
図3も参照しながら説明する。第1の電極層16a(第1の表面電極層17を含む)は積層圧電素子12の1つの側面に引き出される。第1の電極層16a(第1の表面電極層17を含む)は引き出された側面に形成された第1の側面電極20に接続される。第2の電極層16b(第2の表面電極層18を含む)は、第1の側面電極が形成された側面とは異なる側面、例えば、第1の側面電極が形成された側面とは反対側の側面に引き出される。第2の電極層16b(第2の表面電極層18を含む)は、引き出された側面に形成された第2の側面電極21に接続される。第1及び第2の側面電極20、21は公知の方法で形成される。例えば、ディップ法やスパッタリング法が用いられる。本態様ではスパッタリング法が用いられた。
【0029】
積層圧電素子12が振動板13に配置されると、第2の表面電極層18は振動板13と接触する。振動板13は金属であるから、両者は電気的に接続される。積層圧電素子12の固定には公知の方法を用いることができる。例えば、樹脂接着剤のような絶縁性接着剤を用いた場合でも、第2の表面電極層18は微細な凹凸を備えるため、振動板13に押しつけられることによって電気的に接続される。
【0030】
積層圧電素子12の第1の表面電極層17と、積層圧電素子12が配置される振動板13の面であって積層圧電素子12が接しない領域にリード線14がハンダ付けされる。電気信号はリード線14及び振動板13を介して積層圧電素子12に印加される。積層圧電素子12が変形し、その変形によって振動板13が振動し、電気音響変換装置11は可聴波を発生する。
【0031】
電極層16間の接続がスルーホールではなく、側面電極20、21であるため、積層圧電素子12の内部に応力が残留しない。このため、リード線14を第1の表面電極層17にハンダ付けしても熱衝撃による積層圧電素子12の破損を防ぐことができる。
【0032】
また、多角形の積層圧電素子12の変形は中央部が大きく、多角形の頂点に近づくにつれて変形は小さくなる。このため、円形の振動板13も中央部が大きく振幅し、外周部に近づくにつれて振幅が小さくなる。しかし、一次共振等によって円形の振動板13は特定の領域、例えば、
図4に破線で示すように、振動板13の中心Pから特定の距離にある同心円の領域22で振幅が大きくなる場合がある。この領域に電極層間の接続電極があると大きな振幅によって応力が集中し、破壊されるおそれがある。つまり、第1及び第2の側面電極20、21は振動板13の中心Pからの同心円の領域22と重なる領域23が破壊されるおそれがある。しかし、第1及び第2の側面電極20、21は円形の振動板13の中心Pからの距離に幅があるため、仮に領域23が破壊されても他の領域で接続は維持される。したがって、安定した音圧、音質が維持される。
【0033】
図5は、第1の実施形態において電気信号を印加したときに積層圧電素子12が変形する部分を示す。積層圧電素子12が変形するのは、極性が異なる2つの電極層(第1の電極層16a、第2の電極層16b)に挟まれる圧電体層15のうち、積層方向から投影して第1の電極層16a及び第2の電極層16bが重なる部分(
図5の斜線部)、即ち実効層24である。実効層24の変形が振動板を振動させ、電気音響変換装置は可聴波を発生する。
【0034】
積層圧電素子12は、実効層24の他、実効層24の周囲には幅約100μmのマージン部25(異なる極性の電極が重なっていない部分の圧電体層)及び電極層16を備えるが、実効層24と比較して体積が小さいため、実質的に音圧には影響しない。実効層24の体積の合計をVとすると、Vは積層圧電素子の寸法を測定することで概算できる。
【0035】
図6に示すように、円形の振動板13の半径をR、振動板13の厚みをtsとすると、本発明者は多角形の積層圧電素子12の実効層の体積の合計(V)が下記の条件式(式1)を満たすことによって、円形の積層圧電素子と同等の音圧を得ることができることを見出した。
0.2πR
2×ts≦V≦2.0πR
2×ts (式1)
(但し、πは円周率、Rは振動板の半径、tsは振動板の厚み)
【0036】
以下に、(式1)を導き出した過程を示す。
【0037】
円形の振動板13の半径をR、振動板13の厚みをts、多角形の積層圧電素子12の対角線の長さの1/2をαR、積層圧電素子12の実効層の厚みをteとすると、多角形の積層圧電素子12の実効層の体積の合計(V)は以下のようになる。
V=((2αR)/(2
0.5))
2×te (式2)
【0038】
αは0.9が好適である。αは大きい方が積層圧電素子12と振動板13の接触面積が増えて電気音響変換装置11の音圧は高くなるが、多角形の積層圧電素子12を円形の振動板13に配置するにはマージンも必要だからである。(式2)にα=0.9を入れると、以下のようになる。
V=1.6R
2×te (式3)
【0039】
ここで、解析条件を以下のようにして、振動板13の中心部Pの変位量を評価した。
・拘束部:円形の振動板13のエッジ側面
・印加電圧:積層圧電素子12の厚み方向に1VDC/10μm(電界強度一定)
【0040】
図7及び
図8は、それぞれ振動板13の半径(R)が4mm及び8mmの場合において、振動板13の厚み(ts)と積層圧電素子12の実効層の厚み(te)を変動させたときの振動板13の中心部Pの変位量を示す。振動板13の厚み(ts)を固定したとき(例えば、ts=100μm)、振動板13の中心部Pの変位量が最大になるのは、振動板13の大きさにかかわらず、積層圧電素子12の実効層の厚み(te)が振動板13の厚み(ts)と同等より若干大きめのときであることがわかる。
【0041】
振動板13の半径(R)が4mmの場合の
図7について、x軸を振動板13の厚み(ts)に対する積層圧電素子12の実効層の相対厚み(te/ts)に変換し、y軸を各振動板厚みにおける振動板中心部の最大変位量に対する振動板中心部の相対変位量に変換したものを
図9に示す。なお、振動板13の半径(R)が4mm以外の場合(例えば、R=8mmの
図8)について同様の変換をしても、
図9と同様の結果が得られる。
【0042】
図9より、0.4≦te/ts≦4.0を満たすとき、振動板13の相対変位量は0.6以上であり、音圧を十分確保できることがわかる。これを(式3)に入れると、0.2πR
2×ts≦V≦2.0πR
2×tsとなり、(式1)が導かれる。
【0043】
さらに
図9より、0.6≦te/ts≦2.5及び0.8≦te/ts≦2.0を満たすとき、振動板13の相対変位量はそれぞれ0.8以上及び0.9以上であり、音圧確保の点でより好ましいことがわかる。これらを(式3)に入れると、それぞれ以下のようになる。
0.3×πR
2×ts≦V≦1.3×πR
2×ts (式4)
0.4×πR
2×ts≦V≦1.0×πR
2×ts (式5)
【0044】
多角形の積層圧電素子の実効層の体積の合計(V)は0.7〜1830mm
3が好適である。本態様では、焼成後に積層圧電素子の実効層が対角線長10mm(長さ7.07mm、幅7.07mm)、高さ0.15mm(150μm)になるように作成した。実効層の体積の合計(V)は7.5mm
3である。
【0045】
振動板13の半径(R)は5.55mm、厚み(ts)は200μmであるから、(式1)の左辺、右辺に入れると以下のようになる。
0.2πR
2×ts((式1)の左辺)=3.9mm
3
2.0πR
2×ts((式1)の右辺)=38.7mm
3
実効層の体積の合計(V)は7.5mm
3であるから、(式1)を満たすことがわかる。
【0046】
本態様の正方形の積層圧電素子を備える電気音響変換装置の音圧特性27と円形の積層圧電素子(積層圧電素子の半径は0.9×R)を備える電気音響変換装置の音圧特性28の比較を
図10に示す。本態様の電気音響変換装置の音圧特性27は約1000Hzの第1のピークと約4500Hzの第2のピークでいずれも100dBを超えている。(式1)を満たす本態様の電気音響変換装置は、円形の積層圧電素子を備える電気音響変換装置と同等の音圧特性を示すことがわかる。
【0047】
(第2の実施形態)
図11は第2の実施形態に係る電気音響変換装置31の内部構造を示す。第2の実施形態は、第2の電極層32bに電気的に接続されるリード線33の接続方法が第1の実施形態と異なる。それ以外は第1の実施形態と同様であるから、異なる点について説明する。
【0048】
積層圧電素子34の第1の表面には、第1の表面電極層35と、これと離間させて第3の表面電極36が形成される。第3の表面電極36及び第2の電極層32b(振動板と接する側に形成された第2の表面電極層37を含む)は、第1の表面電極層35が引き出される側面と反対側の側面に引き出される。第3の表面電極36及び第2の電極層32b(第2の表面電極層37を含む)は引き出された側面に形成された第2の側面電極38に接続される。
【0049】
第2の電極層32b(第2の表面電極層37を含む)に電気的に接続されるリード線33は積層圧電素子34の第1の表面に形成された第3の表面電極36にハンダ付けされる。それ故、積層圧電素子34の第2の表面に形成された第2の表面電極層37は振動板39との導通が必須ではない。したがって、振動板39としては第1の実施形態で記載した金属以外に樹脂も用いることができる。樹脂としては、PET、ウレタンがあげられる。
【0050】
第2の実施形態の実効層40(
図11の斜線部)の体積の合計(V)は、7.5mm
3であり、(式1)を満たす。
【0051】
(第3の実施形態)
図12は第3の実施形態に係る電気音響変換装置41の内部構造を示す。第3の実施形態は、第2の電極層42bに電気的に接続されるリード線43の接続方法及び積層圧電素子44の第2の表面に第2の表面電極層が形成されないことが第1の実施形態と異なる。それ以外は第1の実施形態と同様であるから、異なる点について説明する。
【0052】
積層圧電素子44の第1の表面には、第1の表面電極層45と、これと離間させて第3の表面電極46が形成される。振動板と接する側の積層圧電素子44の第2の表面に第2の表面電極層は形成されない。第3の表面電極46及び第2の電極層42b(第2の表面電極層は形成されない)は、第1の表面電極層45が引き出される側面と反対側の側面に引き出される。第3の表面電極46及び第2の電極層42b(第2の表面電極層は形成されない)は引き出された側面に形成された第2の側面電極48に接続される。
【0053】
第2の電極層42b(第2の表面電極層は形成されない)に電気的に接続されるリード線43は積層圧電素子44の第1の表面に形成された第3の表面電極46にハンダ付けされる。それ故、第2の電極層42bは振動板49との導通が必須ではない。したがって、振動板49としては第1の実施形態で記載した金属以外に樹脂も用いることができる。樹脂としては、PET、ウレタンがあげられる。
【0054】
第3の実施形態の実効層50(
図12の斜線部)の体積の合計(V)は、6.0mm
3であり、(式1)を満たす。
【0055】
(第4の実施形態)
図13は第4の実施形態に係る電気音響変換装置51の外観を示す。本態様では多角形の積層圧電素子52の頂点のうちの少なくとも1つに切り欠き53が形成される。積層圧電素子52が矩形の場合、4つの頂点の少なくとも1つ、最大3つに切り欠き53を形成することができる。
【0056】
切り欠き53が積層圧電素子52の基準点になるため、側面電極を特定の位置に形成したり、積層圧電素子52を円形の振動板の特定の位置に配置する作業を確実に行うことができる。このため、電気音響変換装置の音質のばらつきが小さくなる。識別できれば切り欠き53の形状は問わない。本態様では三角形状である。
【0057】
(第5の実施形態)
図14は第5の実施形態に係る電気音響変換装置54の外観を示す。円形の振動板55は円周上に4つの多角形の切り欠き56を備える。隣り合わない一対の切り欠き56を結ぶ直線57は円形の振動板55の中心で交わる。直線の交わる角度は90°でも、それ以外の角度でもよい。積層圧電素子58の多角形の頂点は隣り合う2つの切り欠き56の間に配置される。切り欠き56が基準点になるため、積層圧電素子58の位置決めが容易になる。
【0058】
支持部材59は同心円の段差に4つの突起60を備える(2つの突起60は段差の陰に隠れて図示されない)。4つの突起60は4つの多角形の切り欠き56と嵌め合う位置に形成される。切り欠き56と突起60が嵌め合うことによって、電気音響変換装置54を支持部材59に固定することが容易になる。
【0059】
積層圧電素子が円形の場合、切り欠きに積層圧電素子がかからないようにするために積層圧電素子の半径を小さくしなければならない。本態様では、多角形の積層圧電素子58の頂点が切り欠き56にかからないように配置される。積層圧電素子58を小さくすることなく配置することができるため、音圧を維持することができる。なお、切り欠き56を備える振動板55の半径は、切り欠きがないものと見なした仮想円で算出する。また、円形の振動板の外周部に突起が形成されている場合は、突起がないものと見なした仮想円で振動板の半径を算出する。
【0060】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。
【0061】
例えば、
図14の電気音響変換装置54は切り欠き56の数を4つに特定したが、すくなくとも1つあれば、それを基準に電気音響変換装置54の位置を決めることは容易である。また、切り欠き56の形状も、突起と嵌め合えば、特に多角形に限定されない。切り欠き56の形状は、三角形、四角形、台形、正方形、長方形、五角形といった多角形の他、円弧、U字等があげられる。
【0062】
支持部材59の突起60についても、切り欠き56と嵌め合えば数と形状は特に限定されない。突起60の形状は、三角形、四角形、台形、正方形、長方形、五角形といった多角形の他、円弧、U字等があげられる。したがって、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
11、31、41、51、54、61 電気音響変換装置(圧電音響部品)
12、34、44、52、58、62、65 積層圧電素子(圧電板)
13、39、49、55、63 振動板(金属板)
14、33、43、71 リード線
15、66 圧電体層
16、67 電極層
16a 第1の電極層
16b、32b、42b 第2の電極層
17、35、45、68 第1の表面電極層
18、37、69 第2の表面電極層
19 内部電極層
20 第1の側面電極
21、38、48 第2の側面電極
22 振動板の変形が大きな領域
23 側面電極で破壊のおそれのある領域
24、40、50 実効層
25 マージン部
27 正方形の積層圧電素子を備える電気音響変換装置の音圧特性
28 円形の積層圧電素子を備える電気音響変換装置の音圧特性
36、46 第3の表面電極
53、56 切り欠き
57 隣り合わない一対の切り欠きを結ぶ直線
59、64 支持部材(ケース)
60 突起
70 接続電極(スルーホール)
【要約】
【課題】 多角形の積層圧電素子を用いても円形の積層圧電素子と同等の音圧を得ることができる電気音響変換装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 電気音響変換装置は圧電体層と電極層が交互に積層され、極性が異なる少なくとも一対の電極層の間に圧電体層が配置された積層圧電素子と、積層圧電素子が配置された振動板とを備える。
積層圧電素子は積層方向から見て多角形であり、積層圧電素子が配置された振動板の面は円形である。
少なくとも一対の電極層に挟まれる圧電体層のうち、積層方向から投影して少なくとも一対の電極層が重なる実効層の体積の合計(V)が下記の条件を満たす。
0.2πR
2×ts≦V≦2.0πR
2×ts
(但し、πは円周率、Rは振動板の半径、tsは振動板の厚み)
【選択図】
図6