(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5798717
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】血中の糖、マロンジアルデヒド修飾LDL、ホモシステイン及び/又はC反応性タンパク質を低減するための組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/714 20060101AFI20151001BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20151001BHJP
A61K 31/07 20060101ALI20151001BHJP
A61K 31/197 20060101ALI20151001BHJP
A61K 31/355 20060101ALI20151001BHJP
A61K 31/375 20060101ALI20151001BHJP
A61K 31/385 20060101ALI20151001BHJP
A61K 31/4188 20060101ALI20151001BHJP
A61K 31/4415 20060101ALI20151001BHJP
A61K 31/455 20060101ALI20151001BHJP
A61K 31/51 20060101ALI20151001BHJP
A61K 31/525 20060101ALI20151001BHJP
A61K 31/593 20060101ALI20151001BHJP
A61K 31/661 20060101ALI20151001BHJP
A61K 31/702 20060101ALI20151001BHJP
A61K 33/00 20060101ALI20151001BHJP
A61K 33/04 20060101ALI20151001BHJP
A61K 33/06 20060101ALI20151001BHJP
A61K 33/24 20060101ALI20151001BHJP
A61K 33/30 20060101ALI20151001BHJP
A61K 33/42 20060101ALI20151001BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20151001BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20151001BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20151001BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20151001BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
A61K31/714
A61K9/10
A61K31/07
A61K31/197
A61K31/355
A61K31/375
A61K31/385
A61K31/4188
A61K31/4415
A61K31/455
A61K31/51
A61K31/525
A61K31/593
A61K31/661
A61K31/702
A61K33/00
A61K33/04
A61K33/06
A61K33/24
A61K33/30
A61K33/42
A61K45/00
A61P3/06
A61P3/10
A61P9/10 101
A61P9/12
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2009-538253(P2009-538253)
(86)(22)【出願日】2008年10月23日
(86)【国際出願番号】JP2008069244
(87)【国際公開番号】WO2009054458
(87)【国際公開日】20090430
【審査請求日】2011年8月24日
【審判番号】不服2014-3544(P2014-3544/J1)
【審判請求日】2014年2月26日
(31)【優先権主張番号】特願2007-277140(P2007-277140)
(32)【優先日】2007年10月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】500580677
【氏名又は名称】ニュートリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098121
【弁理士】
【氏名又は名称】間山 世津子
(74)【代理人】
【識別番号】100107870
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 健一
(72)【発明者】
【氏名】川口 晋
【合議体】
【審判長】
蔵野 雅昭
【審判官】
村上 騎見高
【審判官】
佐久 敬
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−217669号公報
【文献】
特表2003−504333号公報
【文献】
特開平06−192105号公報
【文献】
特開2002−348244号公報
【文献】
特表2003−509389号公報
【文献】
特表2006−513717号公報
【文献】
特表2003−530410号公報
【文献】
特開2006−306820号公報
【文献】
特表2002−504928号公報
【文献】
特表2005−524655号公報
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一投与単位あたり、ビタミンB12 10±2 μg、ビタミンB6 5±1 mg、葉酸800±160 μg、亜鉛10±2 mg、セレン50±10 μg、ビタミンC 500±100 mg、ビタミンE 20±4 mg、ビタミンB2 3±0.6 mg、ビタミンB1 3±0.6 mg、ナイアシン15±3 mg、パントテン酸10±2 mg、ビタミンA(レチノール当量)300±60 μg、ビタミンD3 5±1 μg及びビオチン50±10 μgを含み、一日一投与単位の投与量で投与されるように用いられる、血中の糖、マロンジアルデヒド修飾LDL、ホモシステイン及びC反応性タンパク質を低減するための組成物。
【請求項2】
さらに、α-リポ酸及び/又はクロムを含む請求項1記載の組成物。
【請求項3】
さらに、ガラクトオリゴ糖、カリウム、カルシウム、マグネシウム及びリンを含む請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
服用可能な液体に分散されている請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
一投与単位あたりの容量が125±25 mLである請求項4記載の組成物。
【請求項6】
生活習慣病を治療及び/又は予防するために用いられる請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
生活習慣病が糖尿病、動脈硬化又はメタボリック・シンドロームである請求項6記載の組成物。
【請求項8】
生活習慣病の有病者又は予備群に投与するための請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血中の糖、マロンジアルデヒド修飾LDL(MDA-LDL)、ホモシステイン及び/又はC反応性タンパク質(CRP)を低減するための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病、高脂血症、高血圧症などの疾患は、遺伝的要因、ストレスや病原体などの外部的要因に加え、不適切な食生活、運動不足、喫煙、過度の飲酒等の生活習慣が重なり合って発病すると考えられており、生活習慣病と呼ばれている(非特許文献1)。生活習慣の変化や高齢者の増加によって、生活習慣病の有病者・予備群が増加しており、総合的な生活習慣病対策の実施が必要である。厚生労働省では、生活習慣の改善を目標として、「1に運動、2に食事、しっかり禁煙、最後にクスリ」をスローガンとして、その取り組みを強化し始めている(非特許文献2)。生活習慣病に対する運動療法として、フィットネスクラブなどのスポーツ施設では、有酸素運動の効果が注目され、ウォーキング、スイミングなどを運動習慣として取り入れる人々が増えており、また、運動指導だけでなく、管理栄養士との連携により、栄養管理も行うことで、生活習慣病の予防・改善の大きな効果が出るのではないかと言われている。
【0003】
生活習慣病とは、「食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒等の生活習慣が、その発症・進行に関与する疾患群」と定義されていて、代表的な病気としては、虫歯、歯周病、骨粗鬆症、アルコール性肝疾患、肥満症、痛風(高尿酸血症)、高血圧症、糖尿病、高脂血症、心臓病、脳卒中、がんなどがある。生活習慣病に伴う病態として「動脈硬化」が知られている。
食後の高血糖の持続は、糖化蛋白の亢進・プロテインキナーゼCの活性化に伴い、酸化ストレスを惹起させ、この酸化ストレスにより血管障害が起こると推定されている。
【0004】
酸化ストレスは血管構成細胞や単球、血小板などの血球細胞の活性化を引き起こし、炎症性サイトカイン分泌や酸化LDL(MDA-LDL)、分泌を増進させて血管障害を進展、増悪させるものと考えられている。その際に起こる炎症により炎症マーカーであるCRP値も上昇する。これらの一連の反応が動脈硬化の発症・進展に繋がるものと思われる(非特許文献3)。
【0005】
ホモシステインは血液中に存在するアミノ酸である。ホモシステインは、近年、動脈硬化との関連が注目されている。アテローム性動脈硬化では、動脈の内皮細胞損傷によって分泌される走化性因子に反応して単球が内皮細胞に接着浸潤し、内膜中で単球がマクロファージに分化し、血中のコレステロールを取り込んで内膜が肥大化するとともに、マクロファージも壊れて粥状となると考えられている。血中にホモシステインが蓄積すると、ホモシステインが自己酸化を起こし、酸化過程で生じたラジカル酸素等によって内皮細胞が障害され、動脈硬化が起こりやすくなると考えられている(非特許文献4)。動脈硬化は、糖尿病の合併症としても知られており、動脈硬化と糖尿病とは密接な関係があると考えられている。
【0006】
【非特許文献1】生活習慣病予防と運動・栄養管理 石井恵子ほか 臨床栄養Vol.108 No.2 2006.2
【非特許文献2】生活習慣病に対する心身医学的アプローチ 山中隆夫ほか 日本心身医学会 Vol.46 No.4 2006.4
【非特許文献3】医学のあゆみ Vol.218 No1 2006.7.1 山岸昌一
【非特許文献4】医学のあゆみ, 202(10) : 789-793, 2002.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、血中の糖、マロンジアルデヒド修飾LDL、ホモシステイン及び/又はC反応性タンパク質を低減するための組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、生活習慣病の有病者及び予備群に、下記の(a)及び(b)の成分を含む組成物を摂取してもらい、その有用性を確認したところ、血中の糖、マロンジアルデヒド修飾LDL、ホモシステイン及びC反応性タンパク質の低減に有効であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
(a) ビタミンB
12、ビタミンB
6及び葉酸からなる群から選ばれる少なくとも一つの成分
(b) 亜鉛、セレン及び抗酸化ビタミンからなる群から選ばれる少なくとも一つの成分
本発明の要旨は以下の通りである。
【0009】
(1)下記の(a)及び(b)の成分を含む、血中の糖、マロンジアルデヒド修飾LDL、ホモシステイン及びC反応性タンパク質からなる群より選択される少なくとも1つを低減するための組成物。
(a)ビタミンB
12、ビタミンB
6及び葉酸からなる群から選ばれる少なくとも一つの成分
(b) 亜鉛、セレン及び抗酸化ビタミンからなる群から選ばれる少なくとも一つの成分
(2)さらに、α-リポ酸及び/又はクロムを含む(1)記載の組成物。
【0010】
(3)ビタミンB
12、ビタミンB
6、葉酸、亜鉛、セレン、ビタミンC,ビタミンE、α−リポ酸、クロム、ビタミンB
2、ビタミンB
1、ナイアシン、パントテン酸、ビタミンA、ビタミンD
3及びビオチンを含む(2)記載の組成物。
(4)一投与単位あたり、ビタミンB
12 10±2 μg、ビタミンB
6 5±1 mg、葉酸800±160 μg、亜鉛10±2 mg、セレン50±10 μg、ビタミンC 500±100 mg,ビタミンE 20±4 mg、α−リポ酸30±6 mg、クロム30±6 μg、ビタミンB
23±0.6 mg、ビタミンB
1 3±0.6 mg、ナイアシン15±3 mg、パントテン酸10±2 mg、ビタミンA(レチノール当量)300±60 μg、ビタミンD
3 5±1 μg及びビオチン50±10 μgを含み、エネルギーが46±9.2 kcalである(3)記載の組成物。
【0011】
(5)さらに、ガラクトオリゴ糖、カリウム、カルシウム、マグネシウム及びリンを含む(1)〜(4)のいずれかに記載の組成物。
(6)一投与単位あたり、ガラクトオリゴ糖2±0.4 g、カリウム40±8 mg、カルシウム80±16 mg、マグネシウム3±0.6 mg及びリン7.5±1.5 mgを含む(5)記載の組成物。
(7)服用可能な液体に分散されている(1)〜(6)のいずれかに記載の組成物。
【0012】
(8)一投与単位あたりの容量が125±25 mLである(7)記載の組成物。
(9)生活習慣病を治療及び/又は予防するために用いられる(1)〜(8)のいずれかに記載の組成物。
(10)生活習慣病が糖尿病、動脈硬化又はメタボリック・シンドロームである(9)記載の組成物。
(11)生活習慣病の有病者又は予備群に投与するための(1)〜(10)のいずれかに記載の組成物。
(12)血中の糖、マロンジアルデヒド修飾LDL、ホモシステイン及びC反応性タンパク質からなる群より選択される少なくとも1つの低減に有効な量の下記の(a)及び(b)の成分を被験者に投与することを含む、血中の糖、マロンジアルデヒド修飾LDL、ホモシステイン及びC反応性タンパク質からなる群より選択される少なくとも1つを低減する方法。
(a)ビタミンB
12、ビタミンB
6及び葉酸からなる群から選ばれる少なくとも一つの成分
(b) 亜鉛、セレン及び抗酸化ビタミンからなる群から選ばれる少なくとも一つの成分
(13)生活習慣病の治療及び/又は予防に有効な量の下記の(a)及び(b)の成分を被験者に投与することを含む、生活習慣病を治療及び/又は予防する方法。
(a)ビタミンB
12、ビタミンB
6及び葉酸からなる群から選ばれる少なくとも一つの成分
(b) 亜鉛、セレン及び抗酸化ビタミンからなる群から選ばれる少なくとも一つの成分
(14)生活習慣病が糖尿病、動脈硬化又はメタボリック・シンドロームである(13)記載の方法。
(15)血中の糖、マロンジアルデヒド修飾LDL、ホモシステイン及びC反応性タンパク質からなる群より選択される少なくとも1つを低減するための組成物を製造するための下記の(a)及び(b)の成分の使用。
(a)ビタミンB
12、ビタミンB
6及び葉酸からなる群から選ばれる少なくとも一つの成分
(b) 亜鉛、セレン及び抗酸化ビタミンからなる群から選ばれる少なくとも一つの成分
(16)生活習慣病を治療及び/又は予防するための組成物を製造するための下記の(a)及び(b)の成分の使用。
(a)ビタミンB
12、ビタミンB
6及び葉酸からなる群から選ばれる少なくとも一つの成分
(b) 亜鉛、セレン及び抗酸化ビタミンからなる群から選ばれる少なくとも一つの成分
(17)生活習慣病が糖尿病、動脈硬化又はメタボリック・シンドロームである(16)記載の使用。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、血中の糖、マロンジアルデヒド修飾LDL、ホモシステイン及び/又はC反応性タンパク質を低減するための組成物が提供された。
本明細書は、本願の優先権の基礎である日本国特許出願、特願2007‐277140の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、空腹時血糖値の結果を示す。丸印が投与群、三角印が非投与群の、それぞれ0ヶ月との差を各群で平均した値をグラフ化した。0ヶ月目との有意差検定(t検定)の結果、*はp<0.05で、**はp<0.01で有意差がみられたものを示す。投与群の3ヶ月目では、0ヶ月目に対し有意(p<0.01)の減少が見られた。
【
図2】
図2は、マロンジアルデヒド修飾LDLの結果を示す。丸印が投与群、三角印が非投与群の、それぞれ0ヶ月との差を各群で平均した値をグラフ化した。0ヶ月目との有意差検定(t検定)の結果、*はp<0.05で、**はp<0.01で有意差がみられたものを示す。投与群の2ヶ月目では、0ヶ月目に対し有意(p<0.01)の減少が見られた。
【
図3】
図3は、総ホモシステインの結果を示す。丸印が投与群、三角印が非投与群の、それぞれ0ヶ月との差を各群で平均した値をグラフ化した。0ヶ月目との有意差検定(t検定)の結果、*はp<0.05で、**はp<0.01で有意差がみられたものを示す。投与群の2ヶ月目および3ヶ月目では、0ヶ月目に対し有意(p<0.01)の減少が見られた。
【
図4】
図4は、C反応性タンパク質(CRP)の結果を示す。丸印が投与群、三角印が非投与群の、それぞれ0ヶ月との差を各群で平均した値をグラフ化した。0ヶ月目との有意差検定(t検定)の結果、*はp<0.05で、**はp<0.01で有意差がみられたものを示す。投与群の1ヶ月目および2ヶ月目で0ヶ月目に対し有意(p<0.05)、3ヶ月目では、0ヶ月目に対し有意(p<0.01)の減少が見られた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態についてより詳細に説明する。
本発明は、下記の(a)及び(b)の成分を含む、血中の糖、マロンジアルデヒド修飾LDL、ホモシステイン及びC反応性タンパク質からなる群より選択される少なくとも1つを低減するための組成物を提供する。
(a)ビタミンB
12、ビタミンB
6及び葉酸からなる群から選ばれる少なくとも一つの成分
(b) 亜鉛、セレン及び抗酸化ビタミンからなる群から選ばれる少なくとも一つの成分
【0016】
ビタミンB
12、ビタミンB
6及び葉酸は、ホモシステイン代謝に関与する成分である。これらホモシステイン代謝に関与する成分は、メチオニンからシステインに至る代謝過程を活性化し、血中のホモシステイン量低下に寄与すると考えられる。本発明の組成物は、ビタミンB
6、ビタミンB
12又は葉酸のいずれかを単独で含むこともできるが、好ましくは上記3成分の複数の成分、最も好ましくは上記3成分の全てを組み合わせて含む。
【0017】
本発明の組成物は、1投与単位あたり、例えば、ビタミンB
12は1.1〜50.0μg、好ましくは5.0〜15.0μg、ビタミンB
6は1.6mg〜60.0mg、好ましくは3.0〜8.0mg、葉酸は200μg〜1.1mg、好ましくは600〜1,000μgを含む。
【0018】
亜鉛、セレン及び抗酸化ビタミンは、活性酸素除去に関与する成分群である。活性酸素は、血管内皮障害に関与すると考えられており、活性酸素除去に関与する上記成分は、血管内皮障害の改善に重要な役割を果たす。セレンは、抗酸化酵素であるグルタチオンペルオキシダーゼの構成物質であり、亜鉛は、抗酸化酵素であるスーパーオキサイドジスムターゼの構成物質である。ビタミンEやビタミンCなどの抗酸化ビタミンは、還元型と酸化型の型を持ち、活性酸素がもつフリーラジカルを受け取ることで、自らが酸化され、活性酸素を除去する働きを示す。本発明の組成物は、亜鉛、セレン又は抗酸化ビタミンのいずれかを単独で含むこともできるが、好ましくは、上記成分の複数の成分を組み合わせて含む。抗酸化ビタミンの例としては、例えば、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンAを挙げることができるが、これらに限定されない。ビタミン群の摂取量は、食事内容により左右され、特に食事制限の必要な糖尿病患者やその予備群においては不足する傾向にある。そのため、本発明の組成物は複数の抗酸化ビタミンを組み合わせて含むことが望ましい。
【0019】
本発明の組成物は、1投与単位あたり、例えば、亜鉛を1.2〜30mg、好ましくは9〜12mg、セレンを10〜250μg、好ましくは30〜60μgを含む。また、抗酸化ビタミンとしてビタミンC、ビタミンE、ビタミンAを用いる場合、1投与単位あたり、例えば、ビタミンCを100mg〜2000mg、好ましくは300mg〜1000mg、ビタミンEを、3mg〜600mg、好ましくは5mg〜300mg、ビタミンA(レチノール当量)を、10μg〜3,000μg、好ましくは100〜550μgを含む。
【0020】
本発明の組成物は、さらに、α-リポ酸及び/又はクロムを含んでもよい。
α-リポ酸は、糖代謝の促進に関与している。細胞内に存在するグルコーストランスポーター(GLUT-4)の細胞膜への動員を刺激し、筋や筋細胞におけるインスリンによる糖の取り込みを大幅に増加させると考えられている。
α-リポ酸の含有量は、例えば、1投与単位あたり、20〜1,000mgが適当であり、25〜100mgが好ましい。
【0021】
クロムは、インスリンレセプター結合能を高め、インスリンレセプター数、インスリンレセプターキナーゼ活性を高めることでインスリン感受性を増加させる。
クロムの含有量は、例えば、1投与単位あたり、5〜50μgが適当であり、10〜40μgが好ましい。
【0022】
また本発明の組成物は、上記の成分以外にも他の成分を含むことができる。例えば、上記通常の食事では不足しやすいカルシウム、カルシウム吸収を促進するビタミンD(例えば、ビタミンD
3)等を含むことができる。また、上記ホモシステイン代謝に関与するビタミンや抗酸化ビタミンとして例示した以外のビタミン(例えば、ビタミンB
2、ビタミンB
1、ナイアシン、パントテン酸)も、本発明の組成物に好適に含まれる成分の例である。ビオチン、ガラクトオリゴ糖、カリウム、マグネシウム、リンについても含有させてよい。これらを含有させることにより、糖尿病食など制限を行う食事での欠乏成分を防止することも可能である。さらに、β−カロテン、鉄、コエンザイムQ10などを添加してもよい。β−カロテンは、ビタミンAの前駆物質である。消化管から吸収され必要な分だけビタミンAに変換されるため、ビタミンAの過量摂取の心配はない。作用はビタミンAと同様の働きを示す。鉄はヘモグロビンの構成成分でもあるため、不足すると貧血を招く恐れがある。鉄を配合することにより、貧血症状の予防、防止、改善効果が期待できる。コエンザイムQ10は強い抗酸化作用を有するため、酸化ストレスに起因する疾患の予防、防止効果が期待できる。また、ATP産生に関与する成分であるため、補充することで栄養素の代謝が円滑に行われる効果も期待できる。
【0023】
本発明の組成物において、例えば、一投与単位あたり、ビタミンB
2の含有量は、0.5〜20mgが適当であり、1〜10mgが好ましく、ビタミンB
1の含有量は、0.5〜10mgが適当であり、1.0〜5.0mgが好ましく、ナイアシンの含有量は、1〜100mgが適当であり、5〜50mgが好ましく、パントテン酸の含有量は、1〜100mgが適当であり、5〜50mgが好ましく、ビタミンD
3の含有量は、1〜10μgが適当であり、2〜8μgが好ましく、ビオチンの含有量は、1〜200μgが適当であり、10〜100μgが好ましく、β−カロテンの含有量は、0.1〜100mgが適当であり、1.0〜50mgが好ましく、鉄の含有量は、0.5〜50mgが適当であり、1.0〜30mgが好ましく、コエンザイムQ10の含有量は、1.0〜1,000mgが適当であり、2〜100mgが好ましい。
【0024】
また、本発明の組成物において、例えば、一投与単位あたり、ガラクトオリゴ糖の含有量は、0.1〜20gが適当であり、1〜10gが好ましく、カリウムの含有量は、10〜1,000mgが適当であり、15〜500mgが好ましく、カルシウムの含有量は、1〜2,300mgが適当であり、10〜600mgが好ましく、マグネシウムの含有量は、0.1〜10mgが適当であり、1〜5mgが好ましく、リンの含有量は、1〜3500mgが適当であり、5〜1050mgが好ましい。
【0025】
本発明の組成物のエネルギー量は、一投与単位あたり、5〜200kcalが適当であり、20〜150kcalが好ましい。また、一般成分については、例えば、一投与単位あたり、たんぱく質の含有量は0.4±0.08g程度又は0.7±0.14g程度、炭水化物の含有量は11.1±2.22g程度又は21.2±4.24g程度、ナトリウムの含有量は30±6mg程度とするとよい。
本発明の組成物は、当業者にとって周知の方法で調製することができる。例えば、上記各成分を混合し、粉末、顆粒、錠剤、液剤等の剤形で調製することができる。液剤は、経口摂取が困難な患者に対し、経管投与が可能であるため、より好ましい剤形である。
【0026】
本発明の組成物を液剤として調製する場合、組成物を分散または溶解する液体は、通常服用される液体であって各成分の生体への作用を減退させない限り、特に制限はなく、例えば、水、生理食塩水等を用いることができる。経口投与における味覚向上の目的で、果汁を用いてもよい。果汁としては、ブルーベリー果汁、ぶどう果汁、グレープフルーツ果汁、レモン果汁、みかん果汁、ニンジン汁、リンゴ果汁、パイナップル果汁を挙げることができ、ビタミンC、ビタミンB群の酸味、臭いを和らげることができるという点から、ブルーベリー果汁やぶどう果汁が好ましい。液剤の場合、一投与単位あたりの容量は、10〜250mlが適当であり、50〜200mlが好ましく、125±25 mLがより好ましい。また、液剤の場合の水分含量は、例えば、一投与単位あたり、116±23.2g程度又は110±22g程度とすることができる。
【0027】
本発明の組成物の成分表(125mL中)の例を下記の表1に示す。
【表1】
上記の様に調製した組成物による、血中の糖、マロンジアルデヒド修飾LDL、総ホモシステイン及び/又はC反応性タンパク質の低減効果は、生活習慣病(例えば、糖尿病、動脈硬化、メタボリックシンドローム等)の有病者や予備群、または生活習慣病の疾患モデル動物に該組成物を投与し、投与前後の血液を採取して血中の糖(例えば、空腹時血糖値)、マロンジアルデヒド修飾LDL、総ホモシステイン及び/又はC反応性タンパク質の値を測定し、投与前後の測定値の変化を観察することにより確認することができる。あるいは、該組成物を投与した群の測定値とプラセボ(例えば、市販の飲料)を投与した群(対照群)の測定値とを比較してもよい。
【0028】
血中の糖の値は、酵素法、すなわちグルコース脱水素酵素(GDH)を用い、グルコースをD-グルコース-δ-ラクトンに転換し、NAD+(P)→NAD(P)Hの変化を340nmで計測することにより測定することができる。
血中のマロンジアルデヒド修飾LDLの値は、マロンジアルデヒド修飾LDLモノクローナル抗体と抗アポBモノクローナル抗体を用いたサンドイッチELISA法にて測定することができる。
【0029】
血中の総ホモシステインの値は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法にて定量測定することができる。
血中のC反応性タンパク質の値は、抗CRP抗体を吸着させたラテックス粒子と検体を反応させ、抗原・抗体反応により凝集反応がおこるのでコレを572nmの吸光度変化を測定する、ラテックス免疫比濁法にて測定することができる。
【0030】
糖、マロンジアルデヒド修飾LDL、総ホモシステイン及びC反応性タンパク質は上述のとおり生活習慣病に関与しているので、血中の糖、マロンジアルデヒド修飾LDL、総ホモシステイン及びC反応性タンパク質の値は、生活習慣病の治療及び/又は予防効果の指標となりうる。例えば、空腹時血糖値の基準値は70〜109 mg/dlであり、空腹時血糖値が110mg/dlを超えた場合は、食後血糖値、75gOGTT2時間値、糖化タンパクなどの検査を追加し、糖尿病の判断を行う。また、マロンジアルデヒド修飾LDLの参考基準値は58.8±17.9U/Lであり、冠動脈疾患患者(113.4±49.1U/L)は、対照群(85.2±22.5U/L)に比べ高値であったという報告が得られている(参考1)。総ホモシステインの基準値は3.7〜13.5nmol/mlであり、血漿総ホモシステイン値が15nmol/ml以上では15nmol/ml未満の患者よりも冠動脈疾患による死亡率が高くなるという報告がある(参考2)。感染の有無を判断するC反応性タンパク質の基準値は0.30mg/dl以下である。CRPは通常は感染症などの炎症の指標として用いられているが、近年では、慢性的な動脈硬化性疾患の指標として、高感度CRPが開発され、0.1mg/dlが冠動脈疾患のカットオフ値とされている(参考3)。
【0031】
参考1:「MDA-LDL測定系の開発およびその臨床的評価」第13回生物試料分析科学回大会 実方和宏他
参考2:「Plasma homocysteine levels and mortality in patients with coronary artery disease.」N Engl J Med/337巻, 4号, 230-6, 1997 Nygard O et.
参考3:「高感度CRP(high sensitive C-reactive protein: hs-CRP)」Thrombosis and Circulation Vol.12 No.4 2004, 高橋伯夫
【0032】
従って、本発明の組成物は、生活習慣病の治療及び/又は予防に用いることができる。本発明の組成物を生活習慣病の有病者又は予備群に投与するとよい。本発明の組成物を一日に一投与単位あたりの投与量で生活習慣病の有病者又は予備群に投与するとよい。投与は経口又は経管で行うとよい。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。なお、これらの実施例は、本発明を説明するためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【0034】
〔調製例1〕組成物の調製
組成物として、ブルーベリー抽出液を含む果汁液に各種成分が含まれる組成物を調製した。該組成物1本(125ml)には、ビタミンA 300μg、ビタミンB
1 3.0mg、ビタミンB
2 3.0mg、ビタミンB
6 5.0mg、ビタミンB
12 10μg、ビタミンC 500mg、ナイアシン 15mg、葉酸 800μg、ビタミンD
3 5.0μg、ビタミンE 20mg、ビオチン50μg、パントテン酸 10mg、亜鉛 10mg、カルシウム 80mg、リン 7.5mg、ナトリウム 30mg、カリウム 40mg、セレン 50μg 、クロム30μg、αリポ酸30mg、ガラクトオリゴ糖2gが含まれる。
【0035】
〔実施例1〕組成物の有用性
目的:生活習慣病の有病者又は予備群であり、運動療法を行っている患者を対象とし、調製例1で調製した組成物を摂取してもらい、その有用性を確認する。
対象患者:茨城県内の病院に外来通院中の生活習慣病の有病者又は予備群であり、運動療法を行っている患者(年齢・性別は不問、但し、消化管通過障害のない患者)。本試験の実施に際しては、試験の内容を患者に十分に説明し、試験について患者本人の自由意志による同意を文書により取得した。
【0036】
試験方法:同意の得られた患者を対象として、調製例1で調製した組成物(125 mL/本)を1日1本飲用してもらい、投与開始時、1か月後、2か月後、3か月後に採血を行った。評価項目は、投与前後の身体計測のほか、血圧、血液生化学検査、栄養学的指標、活性酸素発現量、最大酸素摂取量、動脈硬化度(CAVI)、尿一般検査、自覚症状であった。試験期間中の薬剤の服用は通常通り行い、ビタミン、微量元素を多く含んだサプリメント製品の使用は避けてもらった。尚、食事は自由に摂取してもらった。
【0037】
群分け:調製例1で調製した組成物の摂取群(投与群)と非摂取群(非投与群)の2群とし、「封筒法」にてランダムに群分けを行った。非摂取群には、対照としてビタミンと微量栄養素を含まない、46kcal、125mlのブルーベリージュース(自社製:比較試験用)を摂取してもらった。
【0038】
投与前後の評価項目:
1)血液検査
アルブミン、赤血球数、血色素量、ヘマトクリット量、白血球量、リンパ球量、血小板数、総蛋白、空腹時血糖値、HbAlc、総コレステロール、HDLコレステロール、LDLコレステロール、トリグリセライド、総ビリルビン、直接ビリルビン、AST、ALT、γ-GTP、Al-P、LDH、コリンエステラーゼ、BUN、クレアチニン、尿酸、Na、K、Ca、Cl、CRP、アディポネクチン、ADMA、酸化LDL、総ホモシステイン
【0039】
2)特別検査
活性酸素発現量、最大酸素摂取量、動脈硬化度(CAVI)
3)尿一般検査
蛋白、糖、ウロビリノーゲン
4)身体検査
BMI(体重、身長)、体温、血圧、脈拍
5)自覚症状
食欲、腹部膨満感、嘔吐、下痢、便秘など
評価スケジュール:自覚症状、組成物服用状況については毎日確認し、日記で記録してもらった。採血、採尿を必要とするものについては前値、1か月毎の計4回行った。体重は採血日に測定した。
【0040】
安全性の確保:試験担当医師は、被験者の試験参加中、必要かつ適切な観察・検査を行い、被験者の安全性確保に留意した。また、倫理的・科学的観点から、本試験において有効性・安全性の情報を客観的に評価するために、倫理委員会にて審議を受けた。
症例数:各群20例(合計40例)
試験期間:平成18年7月〜平成19年8月
【0041】
終了基準:
1)完了:試験開始後3か月で終了とした。
2)中止:以下の場合は試験中止とした。試験の再開は主治医の判断に委ねた。
【0042】
(1)重篤な有害事象/有害反応が発現した場合
(2)患者又は家族による中止の希望があった場合
(3)その他、担当医師が試験を中止すべきであると判断した場合
結果:結果を
図1〜4に示す。空腹時血糖値、マロンジアルデヒド修飾LDL、総ホモシステイン及びC反応性タンパク質(CRP)について、組成物の摂取群と非摂取群との間に有意差が見られた。
他の評価項目については、組成物の摂取群と非摂取群との間に有意差が見られなかった。)
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の組成物は、血中の糖、マロンジアルデヒド修飾LDL、総ホモシステイン及び/又はC反応性タンパク質を低減するために用いることができ、生活習慣病の治療及び/又は予防に有用である。