特許第5798746号(P5798746)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5798746冶金炉の冷却要素の個々の冷却要素流路を流動する冷却液の、温度、流量、または圧力などの物理量の少なくとも1つを計測する方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5798746
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】冶金炉の冷却要素の個々の冷却要素流路を流動する冷却液の、温度、流量、または圧力などの物理量の少なくとも1つを計測する方法および装置
(51)【国際特許分類】
   F27D 9/00 20060101AFI20151001BHJP
   G01K 13/02 20060101ALI20151001BHJP
   G01F 1/00 20060101ALI20151001BHJP
   G01L 7/00 20060101ALI20151001BHJP
   F27D 21/00 20060101ALI20151001BHJP
   G05D 7/06 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
   F27D9/00
   G01K13/02
   G01F1/00 T
   G01L7/00 D
   F27D21/00 Z
   F27D21/00 G
   F27D21/00 A
   G05D7/06 Z
【請求項の数】24
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2010-546372(P2010-546372)
(86)(22)【出願日】2009年2月4日
(65)【公表番号】特表2011-517756(P2011-517756A)
(43)【公表日】2011年6月16日
(86)【国際出願番号】FI2009050091
(87)【国際公開番号】WO2009101246
(87)【国際公開日】20090820
【審査請求日】2012年1月5日
(31)【優先権主張番号】20085120
(32)【優先日】2008年2月11日
(33)【優先権主張国】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】507221324
【氏名又は名称】オウトテック オサケイティオ ユルキネン
【氏名又は名称原語表記】OUTOTEC OYJ
(74)【代理人】
【識別番号】100079991
【弁理士】
【氏名又は名称】香取 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】サアリネン、 リスト
(72)【発明者】
【氏名】ペソネン、 ラウリ
【審査官】 市川 篤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−161419(JP,A)
【文献】 特開平06−117778(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 7/00−15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
−冷却液を分配して冷却要素の冷却要素流路に供給する供給母管に該冷却液を供給し、
−該供給母管から該冷却要素の冷却要素流路に冷却液を供給し、
−該冷却要素の冷却要素流路から、該冷却要素の冷却要素流路から供給される冷却液を回収して収容する回収母管で冷却液を受給する、冶金炉の冷却要素の個々の冷却要素流路を流れる冷却液の物理量、すなわち温度、流量、または圧力のうちの少なくとも1つを計測する方法において、該方法は、
−測量ラインを配設し、
−該測量ラインを前記回収母管と、バルブ機構によって複数の前記冷却要素流路とに接続して、該バルブ機構により前記冷却液該測量ラインを経由して回収母管に案内する流路と、前記冷却液を測量ラインを経由せずに回収母管へ案内する流路とで切り替えられるようにし、該測量ラインには、該測量ラインを流れる冷却液の前記物理量の少なくとも1つを計測する計測器が少なくとも1つ配設されていて、
個々の冷却要素流路からの前記冷却液を順々に前記測量ラインを経由して前記回収母管に案内し、
−該測量ラインを流れる冷却液の前記物理量の少なくとも1つを前記計測器で計測して値を得ることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項に記載の方法において、前記個々の冷却要素流路を流れる冷却液について、前記物理量のうちの少なくとも1つを前記測量ラインに配設された前記計測器で計測することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の方法において、
−前記供給母管に該供給母管を流れる前記冷却液の初期温度を計測する第2温度計を設け、前記測量ラインには該測量ラインを流れる冷却液の最終温度を計測する第1温度計が配設されていて、
−該供給母管における冷却液の初期温度を計測し、
−該測量ラインにおける冷却液の最終温度を計測し、
−前記供給母管で計測した冷却液の初期温度と該測量ラインで計測した冷却液の最終温度との差を計算し、前記冷却要素流路の温度差を得ることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項に記載の方法において
−前記測量ラインにおける冷却液の流量を計測し、
−前記冷却要素流路の熱応力を、前記求められた温度差と測定された冷却液の流量とから算出することを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1または2に記載の方法において、
−前記測量ラインには該測量ラインを流れる冷却液の温度を計測する第1温度計が配設されていて、
−該測量ラインにおける冷却液の最終温度を計測し、
−該測量ラインで計測された冷却液の温度を規定の最大温度値と比較し、
−該測量ラインにおける冷却液の温度が規定最大値を上回る場合、警報を発することを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1ないしのいずれかに記載の方法において、
−前記測量ラインには該測量ラインを流れる冷却液の圧力を計測する圧力指示器が設けられていて、
−該測量ラインで計測された冷却液の圧力を規定の最小圧力値と比較し、
−該測量ラインにおける冷却液の圧力が規定最小圧力値を下回る場合、警報を発することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1ないしのいずれかに記載の方法において、
−前記測量ラインには該測量ラインを流れる冷却液の流量を計測する第1流量計測器が配設されていて、
−該測量ラインにおける冷却液の流量を計測し、
−該測量ラインで計測した冷却液の流量を規定の最小流量値と比較し、
−該測量ラインにおける冷却液の流量が規定最小値を下回る場合、警報を発することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において
−前記供給母管に該供給母管を流れる冷却液の流量を計測する第2の流量計測器を設け、該測量ラインには、該測量ラインを流れる冷却液の流量を計測する第1流量計測器が配設されていて、
−前記供給母管における冷却液の流量を計測し、
−各冷却要素流路における冷却液の流量を計測し、
−各冷却要素流路について計測した冷却液の流量を合計することで、総戻り流量を求め、
−該総戻り流量と該供給母管に供給される流量との差を算出して流量損失を求めることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法において
−前記供給母管に該供給母管を流れる冷却液の流量を計測する第2流量計測器を設け、該測量ラインには前記測量ラインを流れる冷却液の流量を計測する第1流量計測器が配設されていて、
−前記供給母管における冷却液の流量を該供給母管に設けられた第2流量計測器で計測し、
−冷却液を各冷却要素流路から前記測量ラインを経由して前記回収母管に順次案内して、各冷却要素流路において該測量ラインに配設された第1流量計測器を用いて冷却液の流量を計測し、
−各冷却要素流路について計測した冷却液の流量を合計することで、総戻り流量を求め、
−該総戻り流量と前記供給母管に供給される流量との差を算出して流量損失を求めることを特徴とする方法。
【請求項10】
−冷却液を分配して、該冷却液を冷却要素の冷却要素流路に供給する供給母管と、
−該冷却要素の該冷却要素流路から供給される冷却液を回収して収容する回収母管とを含む、冶金炉の冷却要素の個々の冷却要素流路を流れる冷却液の物理量、すなわち温度、流量、または圧力のうちの少なくとも1つを計測する装置において、
−該装置は、バルブ機構によって複数の前記冷却要素流路と、前記回収母管とに流体接続される測量ラインを含み、該バルブ機構により前記冷却液を該測量ラインを経由して該回収母管に案内する流路と、前記冷却液を測量ラインを経由せずに回収母管へ案内する流路とで切り替え、
−該測量ラインは、該測量ラインを流れる冷却液の前記物理量のうちの少なくとも1つを計測する計測器を少なくとも1つ含み、
−前記計測器は、個々の冷却要素流路から順々に前記測量ラインに案内されて、該測量ラインを流れる冷却液の前記物理量の少なくとも1つを計測して値を得ることを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項10に記載の装置において、前記バルブ機構は前記冷却要素と前記回収母管との間に配設されることを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項10または11に記載の装置において、該装置は前記バルブ機構を調節する機構を含み、前記供給母管と前記回収母管との間に設けられた各冷却要素流路は所定の順序で前記測量ラインに接続され、該供給母管と該回収母管との間に設けられた該冷却要素流路の1つにおいて、前記冷却液は常時順々に前記測量ラインを介して前記回収母管に案内されることを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項10ないし12のいずれかに記載の装置において、前記供給母管と前記回収母管との間に設けられた少なくとも1つの冷却要素流路は、該冷却要素流路を流れる冷却液の流量を前記計測器によって計測した物理量に基づいて調整する調節弁を備えることを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項10ないし13のいずれかに記載の装置において、前記計測器は前記測量ラインを流れる冷却液の温度を計測する第1温度計を含むことを特徴とする装置。
【請求項15】
請求項14に記載の装置において、前記計測器はさらに、前記第1温度計が計測した温度を表示する温度表示器を含むことを特徴とする装置。
【請求項16】
請求項14または15に記載の装置において、
−該装置は、前記冷却要素流路より上流の冷却液の温度を計測する第2温度計を含み、
−また該装置は、第1温度計で計測した温度と第2温度計で計測した温度との温度差を計算する計算手段を含むことを特徴とする装置。
【請求項17】
請求項16に記載の装置において、該装置はさらに、前記温度差を表示する温度差表示器を含むことを特徴とする装置。
【請求項18】
請求項14ないし17のいずれかに記載の装置において、前記供給母管と前記回収母管との間に設けられた少なくとも1つの冷却要素流路は、該冷却要素流路を流れる冷却液の流量を、前記計測器の第1温度計によって計測した温度に基づいて調整する調節弁を備えることを特徴とする装置。
【請求項19】
請求項16または17に記載の装置において、
−前記計測器は前記測量ラインを流れる冷却液の流量を計測する第1流量計測器を含み、
−前記装置は、前記算出した温度差および計測した冷却液流量に基づいて熱応力を計算する計算手段を含むことを特徴とする装置。
【請求項20】
請求項10ないし19のいずれかに記載の装置において、前記計測器は、前記測量ラインを流れる冷却液の圧力を計測する圧力指示器を含むことを特徴とする装置。
【請求項21】
請求項20に記載の装置において、前記計測器はさらに、前記圧力指示器が計測した前記圧力を表示する圧力表示器を含むことを特徴とする装置。
【請求項22】
請求項20または21に記載の装置において、前記供給母管と前記回収母管との間に設けられた少なくとも1つの冷却要素流路は、該冷却要素流路を流れる冷却液の流量を前記計測器の前記圧力指示器で計測した圧力に基づいて調整する調節弁を備えることを特徴とする装置。
【請求項23】
請求項10ないし22のいずれかに記載の装置において、前記計測器は前記測量ラインを流れる冷却液の流量を計測する第1流量計測器を含むことを特徴とする装置。
【請求項24】
請求項23に記載の装置において、前記供給母管と前記回収母管との間に設けられた少なくとも1つの冷却要素流路は、該冷却要素流路を流れる冷却液の流量を前記計測器の前記第1流量計測器で計測した流量に基づいて調整する調節弁を備えることを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本発明は、請求項1の前段部に係る、冶金炉の冷却要素の個々の冷却要素流路を流動する冷却液の、温度、流量、または圧力などの物理量の少なくとも1つを計測する方法に関するものである。
【0002】
また本発明は、請求項11の前段部に係る、冶金炉の冷却要素の個々の冷却要素流路を流動する冷却液の、温度、流量、または圧力などの物理量の少なくとも1つを計測する装置に関するものである。
【0003】
本発明は、液体冶金処理における冷却に関係するものであり、これは懸濁溶鉱炉などの冶金炉、たとえば自溶炉で冷却システムによって行われるものであり、この冷却システムは、冷却水などの冷却液を冶金炉の冷却に使用される冷却要素の冷却要素流路に分配する複数の供給母管を含み、このシステムはまた、前述の冷却要素流路をまとめる回収母管も含む。1つの供給母管からは、通常、冷却液が10〜20の独立した冷却要素からなる冷却要素流路に供給される。1基の冶金炉に、このような供給母管および回収母管を含む母管部を、数十個備えることができる。
【0004】
液体冶金処理では、反応空間を取り囲む固定構造体中に、位置および時間のいずれによっても変化する熱応力が生じる。これら応力の複合効果により、耐火ライニング構造における温度分布が不均衡になるが、この現象はライニングの総体的な耐久性の面で好ましくない。炉の標準的な冷却方法は、炉の冶金反応による熱応力が高い領域に冷却力を集中させるというものである。たとえば自溶炉では、これらの領域は反応シャフトの下部ならびに沈殿槽壁および出湯口に存在する。冷却力の分散や分散範囲の調整は、理論計算、モデリング、および別の同様の炉で得られた経験に基づいて行う。設計段階後、ライニング冷却用に取り付けられる冷却要素は静的な冷却器であり、処理中に起きる変化に対して能動的に反応しない。
【0005】
冷却処理の時間依存均衡化は、冷却処理によって生じる熱応力の均衡化と併せて、熱エネルギーを運び去る冷却水の流量を調節することで達成される。熱応力は場所によって異なるため、流量を母管ごとに調整するのでは不十分であり、バランスのとれた冷却領域を確保するために、個々の要素流路、すなわち個々の冷却要素の冷却要素流路を操作する必要がある。流量を操作する前に、各冷却要素の熱損失を把握しておく必要があるが、従来は、各冷却要素流路が個別の計測器を備えていて、ケーブルも布線されていることから、計測は費用のかかるものであった。そのため、この原価項目は一般的に総投資対象から完全に除外され、母管の計測のみで十分であるとされてきた。
【0006】
各流路が冷却要素から伝達する熱損失を測定する場合、流量の他に流入する冷却水と流出する冷却水との流路ごとの温度差を把握する必要がある。しかし、すべての流路に温度計および流量計を追加する必要はない。なぜなら、各冷却要素の一時的な戻り温度および流量は処理調節の際それほど重要な情報とはならないからである。ただし、冷却要素の熱損失を正確に測定する必要はあり、値を1時間に数回求める場合や、給水調節弁の絞りの度合いが変わった場合には、これで十分事足りる。したがって、すべての流路を同時に計測する必要はなく、計測作業は一つずつ行えばよい。
【発明の簡単な説明】
【0007】
本発明は、上述の問題を解決する方法および装置を実現することを目的とする。
【0008】
本発明の目的は、独立請求項1に係る、冶金炉の冷却要素の個々の冷却要素流路を流れる冷却液の温度、流量、または圧力などの物理量のうち、少なくとも1つを計測する方法によって達成される。
【0009】
また、本発明は、独立請求項11に係る、冶金炉の冷却要素の個々の冷却要素流路を流れる冷却液の温度、流量、または圧力などの物理量のうち、少なくとも1つを計測する装置に関する。
【0010】
本発明の好適な実施例は、本願従属請求項に表す。
【0011】
本発明による装置は測量ラインを有し、この測量ラインは、三方弁などのバルブ機構を介して少なくとも1つの冷却要素流路に流体接続され、冷却液は、冷却要素流路の供給母管から回収母管へと、測量ラインを経由して回収母管に案内されるか、または測量ラインを経ずに回収母管に案内される。測量ラインは、冷却液の温度、圧力、または流量など、測量ラインを流れる冷却液の物理量を計測する、たとえば温度計、圧力計、または流量計などの計測装置を少なくとも1つ含む。
【0012】
前述の計測管はバルブ機構によって供給母管と回収母管との間に設けられたすべての冷却要素流路に接続され、各冷却要素流路はバルブ機構によって簡単に別々に計測管に接続されうる。ここでもたらされる利点は、各母管に必要な温度計、圧力計、および/または流量計は1つだけであり、この計測器ですべての流路を順番に計測することができることにある。実際には、この計測器で冷却要素ごとの熱損失を確定する費用効率の高い方法を実現することができる。また圧力計により、漏出がある場合にその発生を検出することができ、それに加えて計測管の流量抵抗の発生も検出することができる。想定される漏出を観測する別の方法として、流量計により個々の流路の流量と供給母管に流入する総流量とを比較する。
【0013】
本装置は自動化することができ、オートメーションシステムが各流路を一定の間隔で定期的に計測する。たとえば20流路備える回収母管において1分間隔で計測する場合、24時間で各流路から72の計測結果が得られる。自溶炉の場合、独立した流路の数は800とすることができ、その場合、24時間ごとの熱損失計測値の総データ量は、57600にのぼる。この計測精度の向上は、供給母管に流入する総流量と回収母管からの流出全体にかかる総体的な温度のみを計測していた従来の状況と比べて特筆すべきものである。
【0014】
要素流路の特定データは、処理工程で発生する局部的な熱応力を炉の領域ごとにグラフとして操作者用表示装置に表示するコンピュータプログラムに入力してもよい。また視覚化するだけでなく、プログラムを拡張して状況を分析し、均衡化のための流量変更を行うことも可能であり、これらをコマンドとして炉の冷却制御システムに転送する。流量変更は、供給母管の供給流路の自動能動調整弁によって実現することができる。
【0015】
総じて、このシステムの動的特質によって得られる利点は多い。
【0016】
冷却領域の均衡化は、冶金炉の内側面のさまざまな箇所に実現される。なぜなら、情報を冷却要素レベルで得るためである。
【0017】
情報を冷却要素レベルで得るため、冷却要素の摩耗を遅らせることができ、その損傷を抑制することができる。そしてこれらの位置において、つまり熱応力が大きい冷却要素において、冷却液の流量を増加させることで冷却を促進させることができる。情報が冷却要素レベルで得られるので、本発明による方式は、問題となる状況を予想するのを容易にし、冶金炉の運転および使用の安全性を高める。
【0018】
情報を冷却要素レベルで得るため、冷却をより必要とする冷却要素における冷却液の流量に焦点を当て、さらに/またはその量を増加させることで使用水量を最適化することができ、供給母管と回収母管との間のシステム全体の冷却液の流量を増加させなくてよい。
【0019】
本発明による方式を用いることで、別の利点も得られる。公知のように、冷却要素の温度が高いと冷却要素の冷却要素流路の冷却液が気化し、その結果、冷却要素の冷却要素流路に蒸気が発生し、この蒸気によって冷却液が冷却要素流路の冷却要素を流れるのが妨げられ、結果として冷却要素の冷却能力が失われる。冷却能力が失われると、最終的に問題とする冷却要素の破壊を招き、損傷した要素を交換するために冶金炉の全ての作業を中断しなければならない場合がある。本発明による方式では、このような能力の低下した冷却要素を早めに検出することができ、いわゆる蒸気閉塞の発生を防ぐために冷却液の流量を増加させることができる。
【0020】
技術的な利点の他に、本発明は費用効果も向上させる。冷却液の流量に関して適切な箇所により正確に焦点を合わせることが可能なため、冶金炉の耐熱内層構造の損耗が改善され、さらには補修のための中断の回数が減る。適切な箇所の冷却液の流量により正確に焦点を合わせることができるため、冶金炉における計測基準をより精密に設定することができる。すなわち、むだなサイジング許容差が出ないようにすることができる。また、適切な箇所の冷却液の流量により正確に焦点を合わせることができるため、本発明による方式では冷却液の消費量が少なく、その結果、熱くなった冷却液を冷却する必要性が低減する。
【0021】
本発明は、母管部を通って冷却する要素を有する、すべての水冷却式炉に適している。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明のいくつかの好適な実施例を、添付の図面を参照しながら以下に詳細に述べる。
図1】本発明に係る装置の第1の好適な実施例を示す図である。
図2】本発明に係る装置の他の好適な実施例を示す図である。
【発明の詳細な説明】
【0023】
各図は、冶金炉(図示せず)の冷却要素1の個々の冷却要素流路3を流れる冷却液の温度、流量、または圧力などの物理量の少なくとも1つを計測する装置を示す。
【0024】
本装置は、冷却要素1の冷却要素流路3に冷却液(図示せず)を分配送給する供給母管2を含む。冷却液は、たとえば水などである。
【0025】
また本装置は、冷却要素1の冷却要素流路3から冷却液を回収して収容する回収母管4も含む。
【0026】
さらに、本装置は測量ライン5を含み、測量ラインはバルブ機構6を介して少なくとも1つの冷却要素流路3に流体接続され、冷却液は測量ライン5を経由して回収母管4に案内されるか、または測量ライン5を経ずに回収母管4に案内される。バルブ機構6は、たとえば、図に示すように三方弁を含んでもよい。
【0027】
測量ライン5は、測量ライン5を流れる冷却液の温度、圧力、または流量など、測量ライン5を流れる冷却液の少なくとも1つの物理量を計測する計測装置7を少なくとも1つ含む。
【0028】
供給母管2と回収母管4との間に配された少なくとも1つの冷却要素流路3は、必須ではないが好ましくは、冷却要素流路3を流れる冷却液の流量を計測装置7で計測した物理量に基づいて調整する調節弁12を備える。
【0029】
バルブ機構6は、必須ではないが有利には、図示のように冷却要素1と回収母管4との間に配設する。
【0030】
図中では、供給母管2と回収母管4との間の各冷却要素流路3がバルブ機構6によって測量ライン5に接続されていて、各冷却要素流路3における冷却液は、測量ライン5を経由して回収母管4に案内されるか、または測量ライン5を経ずに回収母管4に案内される。なお本装置は、必須ではないが有利には、各冷却要素流路3を所定の順序で順番に測量ライン5に接続させる装置を含み、供給母管2と回収母管4との間の冷却要素流路3において、冷却液を常時順々に測量ライン5を介して回収母管4に案内する。
【0031】
好適な実施例において、計測装置7は測量ライン5を流れる冷却液の温度を計測する第1温度計8と、有利には、測量ライン5を流れる冷却液の温度を表示する温度表示装置(図示せず)とを含む。温度表示装置は、たとえば処理監視室(図示せず)に配設する。
【0032】
図2に示す好適な実施例で述べる第1温度計8に加え、本装置は、冷却要素流路3の上流における冷却液の温度を計測する第2温度計9と、第1温度計8で計測した温度と第2温度計9で計測した温度との冷却要素流路3における温度差を算出する算出手段10と、有利には、算出手段10により求めた冷却要素流路3における熱損失を表示する表示装置(図示せず)とを備える。この表示装置は、たとえば処理監視室(図示せず)に配設する。
【0033】
図2に示す好適な実施例では、計測装置7は上述の第1温度計8の他に、測量ライン5を流れる冷却液の流量を計測する第1流量計11を備える。第1流量計11は、たとえば測量ライン5を流れる冷却液の質量流量、体積流量、または流速を計測することができる。この好適な実施例では、本装置は冷却要素流路3の上流の冷却液の温度を計測する第2温度計9を含む。また第2温度計9は、冷却液が冷却システム、すなわち、たとえばいわゆる冶金炉(図示せず)の主ラインなどの母管部に流入する前の冷却液の温度を、冷却液が冶金炉の母管部に分配される前に計測するように配されてもよい。図2に示す好適な実施例において、本装置はまた算出手段10を含み、算出手段10は、まず第1温度計8で計測した温度と第2温度計9で計測した温度との温度差を算出し、次に算出した冷却要素流路3における温度差および流量に基づいて冷却要素流路3における熱損失を算出する。
【0034】
測量ライン5が測量ライン5を流れる冷却液の温度を計測する第1温度計8を含む場合、本装置は他の実施例として必須ではないが有利には、計測した温度を規定の最大値と比較する第1比較装置(図示せず)を含んでよい。なお、本装置は必須ではないが有利には、計測温度が規定最大値を上回る場合に警報を発する警報装置(図示せず)を含む。上述の第1比較装置は、必須ではないが有利には、冷却要素流路3における熱損失を、第1温度計8で計測した冷却液温度、および規定最大温度値または規定目標圧力値から求めるように構成される。
【0035】
供給母管2と回収母管4との間の少なくとも1つの冷却要素流路3は、必須ではないが有利には調整弁12を備え、調整弁12は冷却要素流路3を流れる冷却液の流量を計測装置7の第1温度計8で計測した温度に基づいて調整し、たとえば、第1温度計8で計測した冷却液温度が上昇した場合に流量を増加させて調整する。
【0036】
計測装置7は、必須ではないが有利には、測量ライン5を流れる冷却液の圧力を計測する圧力指示器13と、測量ライン5を流れる冷却液の圧力を表示する圧力表示装置(図示せず)とを含む。
【0037】
測量ライン5が測量ライン5を流れる冷却液の圧力を計測する圧力指示器13を含む場合、本装置は必須ではないが有利には、計測した圧力を規定の最小値と比較する第2比較装置(図示せず)を備える。なお、本装置は必須ではないが有利には、計測した圧力が規定最小値を下回る場合に警報を発する警報装置(図示せず)を備える。前述の第2比較装置は、必須ではないが有利には、圧力指示器13で計測した流量と、規定の最小値または規定の圧力目標値とから冷却要素流路3における圧力損失を算出するよう構成される。
【0038】
供給母管2と回収母管4との間に設けられた少なくとも1つの冷却要素流路3は、必須ではないが有利には調整弁12を備え、調整弁12は、冷却要素流路3を流れる冷却液の流量を計測装置7の圧力指示器13で計測した圧力に基づいて調整し、たとえば圧力指示器13で計測した冷却液の圧力が低下した場合、流量を増加させる。
【0039】
計測装置7は、必須ではないが有利には流量計11を含み、流量計11は測量ライン5を流れる冷却液の流量を計測する。
【0040】
測量ライン5が測量ライン5を流れる冷却液の流量を計測する第1流量計11を含む場合、本装置は必須ではないが有利には第3比較装置(図示せず)を備え、第3比較装置は計測した流量を規定の最小値と比較する。なお、本装置は必須ではないが有利には警報装置(図示せず)を備え、警報装置は測定した流量が規定最小値を下回るときに警報を発する。前述の第3比較装置は、必須でないが有利には、流量計11で計測した流量と、規定の最小流量値または規定の目標流量値とから冷却要素流路3における流量損失を計算するように構成される。
【0041】
供給母管2と回収母管4との間に配された少なくとも1つの冷却要素流路3は、必須ではないが有利には調整弁12を備え、調整弁12は、冷却要素流路3を流れる冷却液の流量を計測装置7の第1流量計11で計測した流量に基づいて調整し、たとえば第1流量計11で計測した冷却液の流量が減少した場合、流量を増加させる。
【0042】
また本発明は、冶金炉(図示せず)の冷却要素1の個々の冷却要素流路3を流れる冷却液の温度、流量、または圧力などの物理量の少なくとも1つを計測する方法に関する。
【0043】
本方法では、冷却液を、冷却液を分配して冷却要素1の冷却要素流路3に供給する供給母管2に供給する。
【0044】
本方法では、冷却液を供給母管2から冷却要素の冷却要素流路3に送る。
【0045】
本方法では、冷却液を冷却要素1の冷却要素流路3から回収して収容する回収母管4によって、冷却液を冷却要素1の冷却要素流路3から受給する。
【0046】
本方法では、測量ライン5を配設する。
【0047】
測量ライン5は、回収母管4に接続される。
【0048】
測量ライン5は、バルブ機構6によって少なくとも1つの冷却要素流路3に接続され、冷却液を測量ライン5を経由して回収母管4に案内するか、または測量ライン5を経ずに回収母管4に案内する。
【0049】
測量ライン5には、測量ライン5を流れる冷却液の温度、圧力、または流量などの物理量を少なくとも1つ計測する計測装置7を、少なくとも1つ配設する。
【0050】
冷却液は、測量ライン5を介して回収母管4に案内される。
【0051】
冷却液の少なくとも1つの物理量を測量ライン5で計測し、物理量の値を求め、その損失を推定する。
【0052】
測量ライン5は、必須ではないが有利には、バルブ機構6によって各冷却要素流路3に接続され、冷却液をそれぞれの冷却要素流路について測量ライン5を経由して回収母管4に案内するか、または測量ライン5を経ずに回収母管4に案内する。
【0053】
本方法の好適な実施例において、供給母管2には第2温度計9が設けられ、第2温度計9は供給母管2を流れる冷却液の初期温度を計測する。第2温度計は供給母管2に配設してよく、または供給母管より上流、すなわち、冷却液が冶金炉の母管部に分配される前の、たとえばいわゆる冶金炉の冷却システム(図示せず)の主ラインの母管部より上流に配設する。本実施例では、計測装置7を第1温度計8として測量ライン5に配設して測量ライン5を流れる冷却液の最終温度を計測する。本実施例では、冷却液の初期温度を供給母管2に設けた第2温度計9で計測し、冷却液の最終温度を測量ライン5において第1温度計8で計測する。本実施例では、供給母管2で計測した冷却液の初期温度と測量ライン5で計測した冷却液の最終温度との温度差を算出して、冷却要素流路3の温度差を求める。本方法の好適な実施例では、供給母管2に、必須ではないが有利には、供給母管2を流れる冷却液の流量を計測する第1流量計11を含む計測装置7を設け、測量ライン5の冷却液の流量を計測し、算出した冷却要素流路3の温度差と計測した流量とに基づいて熱応力を求める。
【0054】
本方法の好適な実施例において、測量ライン5には、測量ライン5を流れる冷却液の温度を計測する第1温度計8を含む計測装置7を配設して、測量ライン5の冷却液の最終温度を計測する。本実施例では、測量ライン5で計測された冷却液の温度を規定の最大値と比較して、必須ではないが有利には、測量ライン5の冷却液の温度が規定最大値を上回る場合に警報を発する。本実施例では、必須ではないが有利には、規定最大値または規定目標値、および第1温度計8で計測した測量ライン5を流れる冷却液の温度を基に、たとえば規定最大値または規定目標値と第1温度計8で計測した冷却液の温度との温度差を算出して、冷却要素流路3の熱損失を求める。
【0055】
本方法の好適な実施例において、測量ライン5に測量ライン5を流れる冷却液の圧力を計測する圧力指示器13を含む計測装置7を設け、測量ライン5の冷却液の圧力を計測する。本実施例では、測量ライン5の冷却液の圧力を規定最小値と比較して、必須ではないが有利には、測量ライン5の冷却液の圧力が規定最小値を下回る場合、警報を発する。本実施例では、必須ではないが有利には、規定最小値または規定目標値と、圧力指示器13で計測した測量ライン5を流れる冷却液とから、たとえば規定最小値もしくは規定目標値と圧力指示器13で計測した冷却液の圧力との差を算出して、冷却要素流路3の圧力損失を求める。
【0056】
本方法の好適な実施例において、測量ライン5には測量ライン5を流れる冷却液の流量を計測する第1流量計11を配設する。本実施例では、測量ライン5の冷却液の流量を計測して、測量ライン5の冷却液の流量を規定最小値と比較し、必須ではないが有利には、測量ライン5の冷却液の流量が規定最小値を下回る場合、警報を発する。本実施例では、必須ではないが有利には、規定最小値または規定目標値と、第1流量計11で計測した測量ライン5の冷却液の流量とを基に、たとえば規定最小値もしくは規定目標値と第1流量計11で計測した冷却液の流量との差を算出して、冷却要素流路3の流量損失を求める。
【0057】
本方法の好適な実施例において、供給母管2は供給母管を流れる冷却液の流量を計測する第2流量計14を備える。本実施例では、測量ライン5に測量ライン5を流れる冷却液の流量を計測する第1流量計11が配設されている。本実施例では、各冷却要素流路3の流量を計測し、各冷却要素流路3における冷却液の最終流量を合計することで総戻り流量を求め、また総戻り流量と供給母管2に供給される流量との流量差を算出し、流量損失を求める。流量損失はゼロでなくてはならない。なぜなら、流量損失がある場合システムに漏損があるということだからである。
【0058】
本方法の好適な実施例において、測量ライン5をバルブ機構6によって各冷却要素流路3に接続し、各冷却要素流路3の冷却液を、測量ライン5を経由して回収母管4に案内するか、または測量ライン5を経ずに回収母管4に案内することができる。この好適な実施例では、供給母管2は供給母管2を流れる冷却液の流量を計測する第2流量計14を備える。この好適な実施例では、測量ライン5を流れる冷却液の流量を計測する第1流量計11が配設されている。本好適な実施例では、供給母管2の冷却液の流量を、供給母管2に設けられた第2流量計14により計測する。本好適な実施例では、冷却液を各冷却要素流路3から測量ライン5を介して回収母管4に順次案内し、冷却液の流量を各冷却要素流路3において測量ライン5に配設された第1流量計11により計測する。この好適な実施例では、冷却要素流路3毎に計測した冷却液の流量を合計することで、総戻り流量を得る。この好適な実施例では、総戻り流量と供給母管2に供給される流量との差を計算して、流量損失を求める。流量損失はゼロでなくてはならない。なぜなら、流量損失がある場合、システムに漏損があるということだからである。
【0059】
当業者には明白なことであるが、技術の進歩に合わせて、本発明の基本概念を様々な方法で実現することができる。したがって、本発明およびその様々な実施例は上述の例に限定されるものではなく、本願特許請求の範囲内において変更可能である。
図1
図2