【実施例1】
【0021】
下記の実施例は、任意形状のフランジの全てに適用されるものであるが、任意形状のフランジの一例として円形状のフランジについて図面を参照しながら説明する。また、図示されている内
筒2は、フランジ1を構成する必須部材ではなく、前記フランジ1に設けた貫通孔2b内に挿通され、内
筒2の外壁面と貫通孔2bの内壁面を接合した状態を示しており、符号2cが指す部分が接合部である。
【0022】
図1は本発明であるフランジの平面図、
図2はフランジのA−A線断面図、
図3はフランジのB−B線断面図、
図4はフランジのC部同士の連結状態を示した断面拡大図、
図5はフランジのD部同士の連結状態を示した断面拡大図である。
【0023】
図1から
図5に示すように、本発明であるフランジ1は、任意の形状のフランジであって、中央部に貫通孔2bを形成し、表面に前記貫通孔2bを囲んで嵌入溝3を形成し、前記嵌入溝3内の貫通孔2b側の底部を高くして挟持部を形成し、前記嵌入溝3の挟持部外方に有底のノックピン孔4を設け、表面に前記嵌入溝3に連設し外周面まで到達する大溝2eを設け、表面に前記嵌入溝3に連設し前記貫通孔2bまで到達する小溝2fを設け、前記嵌入溝3の周囲(外側に)に表面から背面にかけて貫通する複数のボルト孔2d、2d、2d・・・を穿設したことを特徴とする。
【0024】
前記嵌入溝3は、貫通孔2bを囲んで形成されており、前記嵌入溝3の内径は、貫通孔2bの径よりも一回り大きい。そのため、貫通孔2bと嵌入溝3の内径は接していない。
【0025】
また、前記嵌入溝3内の貫通孔2b側の底部を高くして挟持部を形成するが、実施例1では前記挟持部を突条3aとし、前記突条3aの内側及び外側の底部の深さを等しくした。即ち、前記突条3aにより、嵌入溝3は外溝3dと内溝3eを形成している。
【0026】
前記ノックピン孔4は、第一孔4aと前記第一孔4aより径が小さく周面にネジ溝を形成し前記第一孔4aと連通した第二孔4bからなる。尚、実施例1では、
図1に示すように、ノックピン孔4を二カ所設けて前記貫通孔2bを挟み対峙させたが、ノックピン孔4の数及び配置は特に限定したものではない。また、ノックピン孔4の挿入口の径をやや大きく削り拡張部4cを設けたが、限定したものではなく、設けなくても構わない。
【0027】
前記大溝2eは、前記嵌入溝3の外溝3dに連設し外周面まで到達した、前記嵌入溝3よりもやや深い溝であり、
図1では、大溝2eを二つとし、前記貫通孔2bを挟み対峙させ且つ前記二つのノックピン孔4、4を結ぶ線に対して垂直の位置に設けた。
【0028】
前記小溝2fは、前記嵌入溝3の内溝3eに連設し前記貫通孔2bまで到達する溝で、前記嵌入溝3よりも遙かに浅い溝であり、
図1では、小溝2fを二つとし、前記貫通孔2bを挟み対峙させ且つ前記二つの大溝2e、2eを結んだ線上に設けた。
【0029】
前記二つの大溝2eと二つの小溝2fは全て延長線上に位置していることが好適で、前記二つの大溝2e及び二つの小溝2fと前記二つのノックピン孔4は垂直の位置であることが好適であるが、特に限定したものではなく、他の位置関係であっても構わない。
【0030】
前記ボルト孔2dは、前記嵌入溝3の周囲(外側に)に表面から背面にかけて貫通して複数穿設されている。
【0031】
図1から
図5に示すように、フランジ1には、前記嵌入溝3の前記突条3aより内側(内溝3e)の底部に1以上のガス抜き用凹部3bを形成している。
図1から分かるように、実施例1では前記ガス抜き用凹部3bをノックピン孔4、4を結ぶ線上と、小溝2f、2fを結ぶ延長線上に合計4カ所設けることが好適であるが、前記ガス抜き用凹部3bの位置は限定したものではない。
【0032】
次に
図4及び
図5を使用して、フランジ1の接合状態を説明する。本発明であるフランジ1は、接続する二つの管(又は二つの容器、若しくは管と容器)の各々の端部に接合して、前記フランジ1同士をボルト固定することにより、管同士(又は容器同士、若しくは管と容器)を固定する。このとき、フランジ1は、
図2のC部同士、及び
図3のD部同士の位置を合わせて固定する。尚、管(若しくは容器)の端部はフランジ1の貫通孔2bに挿通され、前記貫通孔2bの内壁面と管(若しくは容器)の端部外周面は接合されており、接合方法は特に限定しない。
【0033】
以上を踏まえ、先ず
図4でC部同士の接続を説明する。先ず、管(若しくは容器)の接続部2g側の端部を接合した一方のフランジ1に設けてあるノックピン孔4にノックピン5を挿入し、ノックピン5の螺合部5bとノックピン孔4の第二孔4bを螺合する。
【0034】
尚、前記ノックピン5はピン本体5aと前記ピン本体5aの一端に連設した螺合部5bからなり、前記ピン本体5の径は螺合部5bの径よりも大きい。また、前記螺合部5bの周面にはネジ山が形成されている。
【0035】
前述のようにノックピン5をノックピン孔4に螺合接続した状態では、前記螺合部5bと前記ピン本体5aの螺合部5b側の一部が一方のフランジ1のノックピン孔4内に位置し、ピン本体5aの他端側がノックピン孔4から突出した状態となっている。
【0036】
図1では、フランジ1にノックピン孔4が二つ設けてあるので、もう一つのノックピン孔4にもノックピン5を螺合して取付けておく。
【0037】
次に、ノックピン5を取り付けた方のフランジ1にガスケット6を取り付けるが、ガスケット6の外周に設けた位置決め凹部6a、6aに前記フランジ1から突出したピン本体5a、5aを嵌めた状態でガスケット6を嵌入溝3に嵌め込む。
【0038】
前記ガスケット6には厚みがあり、このガスケット6の厚みは前記突条3a(又は挟持部3c)の深さよりも厚みがある。そのため、前記ガスケット6を前述のように一方のフランジ1の嵌入溝3に嵌め込んでもガスケット6の一部は嵌入溝3から突出している。
【0039】
前述のように一方のフランジ1にノックピン5とガスケット6を取り付けた後、フランジ1から突出しているピン本体5aを他方の管に接合したフランジ1の第一孔4aに嵌入し、フランジ1から突出している前記ガスケット6の一部を他方のフランジ1の嵌入溝3に嵌入して、フランジ1同士を接続する。
【0040】
上記の状態でフランジ1同士をボルト7及びナット7aで締め合わせてゆくと、前記ガスケット6は各フランジ1、1の嵌入溝3に押し挟まれ、更に嵌入溝3内に設けた突条3a、3a部分は嵌入溝3の底部より突出しているため突条3a、3a同士の隙間が狭くなっており、そのためガスケット6はより強く圧迫された部分となっている。
【0041】
以上のように、管同士(又は容器同士、若しくは管と容器)の接続部分の外側にガスケットによる真空シール部分を作ることで、柔らかい金属からなる管同士(又は容器同士、若しくは管と容器)の接続部分を十分にシールすることができる。
【0042】
また、
図4の下図に示すように、前記ガスケット6は嵌入溝3、3でできた空間の大部分を埋め尽くすこととなるが、この構造により、嵌入溝3、3の内溝3e、3e同士でできた空間にはわずかな空気が残るという問題が発生するため、その空気の逃げ場として内溝3e底部にはガス抜き用凹部3b、3bを設けた。
【0043】
次に
図5を使用して、フランジ1のD部同士の接続を説明する。
図4で説明した手順でフランジ1、1同士を連結したときのD部同士の接続状態では、
図5の下図に示すように、ガスケット6は嵌入溝3、3に押し挟まれ、突条3a、3a部分でも同様に強く圧迫された状態となっている。
【0044】
しかし、D部には、前記嵌入溝3の内溝3eと貫通孔2bを結ぶ小溝2fが形成されているため小溝2f、2fのより僅かな間隙8が形成され、前記間隙8から空気を逃がすことができる。そのため、内溝3e、3eでできた僅かな隙間と前記ガス抜き用凹部3b内で空気溜まりを防ぐことができる。
【0045】
尚、前記小溝2fは、フランジ1を接合した管(若しくは容器)の端部の同位置にも設けることが好適であり、このようにすることでより効果的に内溝3e内の空気を逃がす事ができる。
【0046】
また、D部には前記嵌入溝3の外溝3dとフランジ1の外周を結ぶ大溝2eが形成されており、前記大溝2e、2eにより空間8aが形成されている。前記空間8aは、嵌入溝3、3の外溝3d側の空気を逃がすことができると共に接続後のフランジ1、1同士を外す際に引き離し具を挿入してフランジ1、1同士を容易に引き離すための空間でもある。
【実施例2】
【0047】
次に
図6から
図10を使用して、本発明であるフランジの第二実施例を説明することとする。
【0048】
図6は本発明であるフランジの第二実施例の平面図、
図7はフランジの第二実施例のE−E線断面図、
図8はフランジの第二実施例のF−F線断面図、
図9はフランジの第二実施例のG部同士の連結状態を示した断面拡大図、
図10はフランジの第二実施例のH部同士の連結状態を示した断面拡大図である。
【0049】
図6から
図10に示すように、本発明であるフランジ1aは、実施例1で示したフランジ1とほぼ同じ構造をしている。
【0050】
即ち、任意の形状のフランジであって、中央部に貫通孔2bを形成し、表面に前記貫通孔2bを囲んで嵌入溝3を形成し、前記嵌入溝3内の貫通孔2b側の底部を高くして挟持部を形成し、前記嵌入溝3の挟持部外方に有底のノックピン孔4を設け、表面に前記嵌入溝3に連設し外周面まで到達する大溝2eを設け、表面に前記嵌入溝3に連設し前記貫通孔2bまで到達する小溝2fを設け、前記嵌入溝3の周囲(外側に)に表面から背面にかけて貫通する複数のボルト孔2d、2d、2d・・・を穿設したことを特徴とする。
【0051】
実施例1の前記フランジ1と異なる部分は、前記挟持部3cの形状でフランジ1では突条3aとしたが、
図7の右図に示すように、フランジ1aでは嵌入溝3の内径側が嵌入溝3の底部より一段高くなった挟持部3cとし、ガス抜き用凹部3bを設けていない。
【0052】
従って、
図9の下図に示すように、ガスケット6を嵌入溝3、3で押し挟んだ場合、ガスケット6は前記挟持部3cで最も強く圧迫された状態となり、嵌入溝3、3の挟持部3c、3cでできた僅かな隙間に空気が押し込まれる。
【0053】
しかし、フランジ1aにおいても小溝2fは形成されているため、嵌入溝3、3の挟持部3c、3cでできた僅かな隙間に押し込まれた空気は、小溝2f、2fでできた間隙8から逃げることができる。
【0054】
尚、
図1から
図10に示したフランジ1、1aでは、前記嵌入溝3、挟持部3c(若しくは突条3a)、ノックピン孔4、大溝2e、小溝2fを、フランジ1、1aの一方の面だけに設けた図面としたが、これらを反対側の面にも設けて、フランジ1、1aの両面に設けてもよい。前記嵌入溝3、挟持部3c(若しくは突条3a)、ノックピン孔4、大溝2e、小溝2fを両面に設けたフランジは、フランジ同士の接合が3枚となった場合の中央に来るフランジとして利用する。
【実施例4】
【0059】
最後に、
図12から
図14を使用して、本発明であるフランジ1、1a及びガスケット6を使用した例を説明することとする。
【0060】
図12は本発明であるフランジの使用例を示す断面図、
図13はフランジの使用例を示す断面図のI部拡大簡略図、
図14はフランジの使用例を示す断面図のJ部拡大簡略図である。
【0061】
図12では、ニオブ材等の高純度の柔らかい材料からなる管をフランジ1(1a)で接続してビームパイプを形成し、前記ビームパイプを箱体9の中に設置し、箱体9内に液体ヘリウム9aを満たした例を示している。
【0062】
拡張部10aを有する管10の端部にはフランジ1bが接合され、管10bの端部にはフランジ1cが接合され、更に前記フランジ1bとフランジ1cが接続されている(I部)。また、前記管10bの他端にはフランジ1dが接合され、管10cの端部にはフランジ1fが接合されており、前記フランジ1dとフランジ1fはフランジ1eを介して接続されている(J部)。
【0063】
図13に示すように、I部では、ノックピン5をフランジ1b側のノックピン孔4に螺合し、ガスケット6を取り付けてからフランジ1cを接続している。
【0064】
ニオブ材等の高純度の柔らかい材料からなる管同士を直接接合することは難しく、
図13のように本発明であるフランジ1(1a)を介して接続するが、この場合、ビームパイプ内への液体ヘリウム9aの侵入防止は、フランジ1(1a)とガスケット6が大きな役割を果たす。
【0065】
しかし、前述の通りニオブ材からなる管を上記のようにフランジで接続する際に、管同士10、10bが接するようにフランジの管への取付位置をずらせば、フランジ同士を接続した場合にニオブ材からなる管同士10、10bは圧迫変形して密着するため、更にビームパイプの電気的特性が向上する。
【0066】
図14に示すように、J部では、ノックピン5をフランジ1d側のノックピン孔4に螺合し、ガスケット6を取り付けてフランジ1eを接続し、更にノックピン5をフランジ1f側のノックピン孔4に螺合し、ガスケット6を取り付けて、前記フランジ1eとフランジ1fを接続している。
【0067】
管10b、10c同士の距離を置いて、管を接合したフランジ同士1d、1fを接続する場合、何も接合されていないフランジ1eをフランジ1d、1fの間に介することで管10b、10cは互いに接触することなくビームパイプを構成することができる。
【0068】
前記フランジ1eは、両面に嵌入溝3、挟持部(突条3a)、ノックピン孔4、大溝2e、小溝2fを形成したフランジであり、両面から他のフランジを接続することができる。
【0069】
尚、フランジ同士を接続する際に、いずれのフランジのノックピン孔4にノックピン5を螺合しガスケット6を取り付けるかは、特に限定していない。