特許第5798757号(P5798757)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5798757外装部品付電線および該外装部品付電線を有するワイヤハーネス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5798757
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】外装部品付電線および該外装部品付電線を有するワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/32 20060101AFI20151001BHJP
   F16B 2/08 20060101ALI20151001BHJP
   B60R 16/02 20060101ALN20151001BHJP
【FI】
   H02G3/32
   F16B2/08 U
   !B60R16/02 623D
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-30753(P2011-30753)
(22)【出願日】2011年2月16日
(65)【公開番号】特開2012-170281(P2012-170281A)
(43)【公開日】2012年9月6日
【審査請求日】2014年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100060690
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 秀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100108017
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 貞男
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100166110
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】山本 聖享
(72)【発明者】
【氏名】上原 建彦
(72)【発明者】
【氏名】村上 好弘
(72)【発明者】
【氏名】空 正浩
【審査官】 岡北 有平
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−163560(JP,A)
【文献】 実開平06−001964(JP,U)
【文献】 特開2010−146790(JP,A)
【文献】 実開昭60−141621(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/22 − 3/40
F16B 2/08
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルの取付孔と係止可能に形成された係止部と、前記パネルに配索される電線束が載置される載置部と、を備えた外装部品と、
前記電線束に束ねられる電線に一体成形され該電線に固定された固定部と、が、
前記載置部の周縁部に設けられると共に前記固定部の一端に設けられる連結部を介して連設されており、
前記連結部が、前記固定部と前記載置部よりも容易に切断できる強度に形成されていることを特徴とする外装部品付電線。
【請求項2】
前記載置部と前記固定部とが前記連結部を介して平行状に連設され、かつ、
前記連結部が、前記載置部と前記固定部とに直交して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の外装部品付電線。
【請求項3】
前記載置部と前記固定部とが前記連結部を介して直線状に連設され、かつ、
前記連結部が、前記載置部と前記固定部とに平行して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の外装部品付電線。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の外装部品付電線と、パネルに配索される電線束と、を有することを特徴とするワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスが配索されるパネルの取付孔に係合する外装部品が電線に一体成形された外装部品付電線、および、前記外装部品付電線を有するワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車には、種々の電子機器と電装品とが搭載されている。これらの電子機器と電装品とにバッテリなどの電源等からの電力や制御装置からの制御信号などを伝達する手段として、ワイヤハーネスが用いられている。
【0003】
ワイヤハーネスは、自動車等の車体を構成するパネルに所要の配索形態で配索されている。ワイヤハーネスには、前記パネルに開孔された取付孔に係止される外装部品として、配線用クリップ、ワイヤハーネス用チューブ、ワイヤハーネス用プロテクタ等が設けられている。配線用クリップ、および、前記配線用クリップを有するワイヤハーネスが、種々提案されている(例えば、特許文献1〜特許文献3参照。)。
【0004】
特許文献1〜特許文献3に記載の配線用クリップには、前記パネルの前記取付孔と係止可能に形成された係止部が設けられている。前記係止部は、前記配線用クリップを有するワイヤハーネスが前記パネルから取り外される時に、前記係止部が破壊されるように構成されている。このため、前記配線用クリップを有するワイヤハーネスは、前記パネルに配索された前記ワイヤハーネスを引張ることで、前記係止部が破壊され、前記パネルから前記ワイヤハーネスが取り外される。従って、前記パネルあるいは前記ワイヤハーネスの修理やメンテナンス等が可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−315164号公報
【特許文献2】特開2005−26178号公報
【特許文献3】特開2006−14569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1〜特許文献3に記載の配線用クリップを有するワイヤハーネスは、前記配線用クリップが前記ワイヤハーネスを構成する電線に一体成形されているため、前記パネルから取り外されたワイヤハーネスに、係止部が破壊された配線用クリップが残留する。
【0007】
ワイヤハーネスに残留した配線用クリップは、作業員によってハサミやナイフなどの刃物で破壊され、前記ワイヤハーネスから取り除かれる。ワイヤハーネスには、多数の配線用クリップが設けられているため、作業員によって前記配線用クリップの一つ一つが取り除かれる。このため、修理やメンテナンス等における作業効率が著しく低下する。
【0008】
本発明は、電線に一体成形され該電線から分離可能に形成された外装部品を有する外装部品付電線、および、前記外装部品付電線を有するワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、パネルの取付孔と係止可能に形成された係止部と、前記パネルに配索される電線束が載置される載置部と、を備えた外装部品と、前記電線束に束ねられる電線に一体成形され該電線に固定された固定部と、が、前記載置部の周縁部に設けられると共に前記固定部の一端に設けられる連結部を介して連設されており、前記連結部が、前記固定部と前記載置部よりも容易に切断できる強度に形成されていることを特徴とする外装部品付電線である。
【0010】
請求項2に記載された発明は、前記載置部と前記固定部とが前記連結部を介して平行状に連設され、かつ、前記連結部が、前記載置部と前記固定部とに直交して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の外装部品付電線である。
【0011】
請求項3に記載された発明は、前記載置部と前記固定部とが前記連結部を介して直線状に連設され、かつ、前記連結部が、前記載置部と前記固定部とに平行して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の外装部品付電線である。
【0012】
請求項4に記載された発明は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の外装部品付電線と、パネルに配索される電線束と、を有することを特徴とするワイヤハーネスである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載された発明によれば、外装部品付電線は、電線に固定された固定部と外装部品の載置部とが、連結部を介して連設されると共に、前記連結部が前記載置部の周縁部と前記固定部の一端とに設けられている。このため、前記連結部を切断することで、前記電線と外装部品とを分離することができる。
【0014】
請求項2に記載された発明によれば、外装部品付電線は、電線に固定された固定部を作業員が手指等で押さえることによって、前記連結部が切断される時にかかる負荷が前記電線に伝達されるのを軽減できる。このため、前記固定部に固定された電線が断線したり、前記電線の絶縁被覆が傷ついたりすることが防止される。
【0015】
また、外装部品付電線は、電線に固定された固定部と電線束とをワイヤハーネス用テープ等で捲回したり、前記固定部と前記電線束とを結束バンド等で緊縛したりすることによって、前記連結部が切断される時にかかる負荷が前記電線に伝達されるのを軽減できる。このため、外装部品が除去された電線が断線したり、前記電線の絶縁被覆が傷ついたりすることが防止される。
【0016】
また、外装部品付電線は、連結部が前記載置部と前記固定部とに直交して設けられているため、前記電線に直交する方向に作用する伸縮力と、前記電線に直交する方向の振動とに対する耐性が発揮される。
【0017】
請求項3に記載された発明によれば、外装部品付電線は、電線に固定された固定部を作業員が手指等で押さえることによって、前記連結部が切断される時にかかる負荷が前記電線に伝達されるのを軽減できる。このため、前記固定部に固定された電線が断線したり、前記電線の絶縁被覆が傷ついたりすることが防止される。
【0018】
また、外装部品付電線は、電線に固定された固定部と電線束とをワイヤハーネス用テープ等で捲回したり、前記固定部と前記電線束とを結束バンド等で緊縛したりすることによって、前記連結部が切断される時にかかる負荷が前記電線に伝達されるのを軽減できる。このため、外装部品が除去された電線が断線したり、前記電線の絶縁被覆が傷ついたりすることが防止される。
【0019】
また、外装部品付電線は、連結部が前記載置部と前記固定部とに平行して設けられているため、前記電線に平行する方向に作用する伸縮力と、前記電線平行する方向の振動とに対する耐性が発揮される。
【0020】
請求項4に記載された発明よれば、ワイヤハーネスは、電線に固定された固定部と外装部品の載置部とに連設された連結部を切断することによって、前記電線と外装部品とに分離される。このため、メンテナンスや修理等でパネルから取り外されたワイヤハーネスは、ニッパ等の工具によって前記連結部が切断され、前記外装部品が前記ワイヤハーネスから取り除かれる。従って、ワイヤハーネスのメンテナンスや修理等におけるメンテナンス性や作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態にかかるワイヤハーネスの斜視図である。
図2図1に示すワイヤハーネスの配線用クリップ付電線の斜視図である。
図3図2に示す配線用クリップ付電線の配線用クリップの斜視図である。
図4図3に示す配線用クリップのX−X矢視図である。
図5図2に示す配線用クリップ付電線を成形する金型の要部断面図である。
図6図5に示す金型の下型の斜視図である。
図7図2に示す配線用クリップ付電線の電線と配線用クリップとが分離された状態を示す斜視図である。
図8】本発明の第2の実施形態にかかるワイヤハーネスの配線用クリップ付電線の斜視図である。
図9図8に示す配線用クリップ付電線の電線と配線用クリップとが分離された状態を示す斜視図である。
図10図8に示す配線用クリップ付電線の電線を上方に引き上げた状態の斜視図である。
図11図10に示す配線用クリップ付電線の連結部を切断した状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図1図11を参照して説明する。
【0023】
本発明の一実施形態にかかるワイヤハーネス1は、図1に示すように、電線束3と、外装部品付電線としての配線用クリップ付電線2とを有している。ワイヤハーネス1は、前記電線束3と前記配線用クリップ付電線2とがワイヤハーネス用テープ9によって捲回されて形成されている。
【0024】
電線束3は、図1に示すように、複数本の電線10が束ねられて形成されている。電線10は、図示しない導電性の芯線と、絶縁性の被覆部とを有している。芯線は、複数本の金属からなる導線が撚られて形成されている。被覆部は、前記芯線を被覆しており、ポリ塩化ビニル樹脂などの合成樹脂によって形成されている。なお、芯線は、一本の導線から構成されても良い。
【0025】
配線用クリップ付電線2は、図2に示すように、電線6と、外装部品としての配線用クリップ5とを有している。なお、外装部品は、ワイヤハーネス用プロテクタ、ワイヤハーネス用チューブ等でも良い。
【0026】
電線6は、導電性の芯線と、絶縁性の被覆部とを有している。芯線は、複数本の金属からなる導線が撚られて形成されている。被覆部は、前記芯線を被覆しており、ポリ塩化ビニル樹脂などの合成樹脂によって形成されている。このため、電線6の外表面は、前記被覆部の外表面となる。なお、芯線は、一本の導線から構成されても良い。
【0027】
配線用クリップ5は、図3に示すように、前記電線束3が載置される載置部10と、パネルの取付孔に係止可能に形成された係止部12とを備えている。配線用クリップ5は、可撓性を有するポリプロピレン樹脂などの合成樹脂で形成されている。
【0028】
載置部10は、楕円形状の薄板状に形成され、図3および図4に示すように、後述する押圧部20の外径よりも幅広に形成されている。このため、前記電線束3が前記押圧部20に接触するのを防止すると共に、前記パネルの表面に前記載置部10の縁端が接触するのを防止する。
【0029】
載置部10の上面には、前記電線6を案内すると共に前記電線束3を保持する保持部材21が設けられている。載置部10の周縁部10aには、前記載置部10から立設された連結部13が設けられている。連結部13には、前記電線6を固定する固定部11が設けられている。
【0030】
保持部材21は、前記載置部10上に形成された台状の台部22と、前記台部22から上方に延長された壁部23とを有している。台部22と壁部23とには、L字形状に形成された補強部材24が設けられている。このため、前記壁部23の強度が向上する。
【0031】
台部22は、前記載置部10の上面に前記電線6の長手方向に向かって長尺に形成されている。台部22には、前記電線6が案内される案内溝25が設けられている。案内溝25は、前記電線6の外形に沿って横断面半円形状に形成されている。
【0032】
壁部23は、前記載置部10の周縁部10a側であって、かつ、前記台部22の長手方向の一端側に設けられている。壁部23は、前記載置部10に電線束3が載置された時に、前記電線束3を構成する電線と電線との間に介挿される。
【0033】
固定部11は、前記電線6の外形に沿って形成されると共に、前記電線6の長手方向に沿って円筒状に形成されている。固定部11は、前記電線6の被覆部の外表面に一体成形されている。固定部11は、前記固定部11の長手方向の一端に前記連結部13が設けられている。固定部11と載置部10とは、連結部13を介して互いに平行状に連設されている。
【0034】
連結部13は、前記載置部10の上面の周縁部10aと、前記固定部11の一端とに連設されている。連結部13は、前記載置部10の周縁部10aから前記電線6の長手方向に直交する方向に立設されている。連結部13は、ニッパ等の工具によって切断可能に形成されている。なお、本発明でいう、連結部13が切断可能に形成されているとは、前記固定部11と前記載置部10よりも容易に切断できる強度に形成され、且つ、前記ワイヤハーネス1が前記パネルの前記取付孔から取り外された際には切断されない強度に形成されることをいう。従って、作業員が手指で連結部13を引き千切り可能に形成しても良い。
【0035】
載置部10の下面には、図4に示すように、前記係止部12と、前記係止部12が前記パネルの前記取付孔に係止されると該パネルを押圧する押圧部20とが設けられている。係止部12は、図4に示すように、前記載置部10の下面から立設した支柱15,16と、前記支柱15,16のそれぞれの先端に形成された係止片17,18とからなる。
【0036】
支柱15,16は、前記載置部10の下面に直交する方向に向かって延長されている。係止片17,18は、前記支柱15,16の先端から基端側へ延長されると共に、前記基端側に向かうに従って徐々に互いに離間するように傾斜されて形成されている。係止片17,18は、前記係止片17,18の揺動方向が、前記電線6の長手方向に平行となる向きに設けられている。このため、前記電線6の長手方向に作用する振動が抑制される。
【0037】
押圧部20は、図4に示すように、下方に向かって順次拡開されると共に、下方が開口された円錐形状に形成されている。押圧部36の縁端は、前記係止片17,18のそれぞれの自由端が形成されている位置よりも下方に設けられている。
【0038】
このため、係止部12が前記パネルの前記孔内に侵入すると、係止片17,18のそれぞれの自由端が互いに近接する方向に弾性変形する。その後、係止部12が前記取付孔を挿通すると、係止片17,18のそれぞれの自由端が弾性回復力によって互いに離間する方向に変位する。そして、係止片17,18のそれぞれの自由端が前記取付孔の周縁に当接し、前記係止部12が前記取付孔に係止する。このとき、押圧部20の縁端が前記パネルを押圧し、係止部12の係止力が向上し、前記係止部12と前記取付孔とが強固に係止される。
【0039】
配線用クリップ付電線2が成形される金型60は、図5に示すように、水平割金型であって、上型61と下型62とから構成されている。上型61と下型62とには、前記電線6の外形に沿って形成された線条キャビティ64と、前記電線6に固定された固定部11の外形に沿って形成された固定部用キャビティ65と、前記固定部11に連設する配線用クリップ5の外形に沿って形成されたクリップ用キャビティ63と、前記固定部11と前記配線用クリップ5とを連結する連結部13の外形に沿って形成された図示しない連結部用キャビティと、がそれぞれ設けられている。
【0040】
下型62は、図6に示すように、線条キャビティ64と、クリップ用キャビティ63とがそれぞれ前記下型62の平面上に形成されている。線条キャビティ64は、上型61と下型62との両端側から前記電線6を外部に導出させる導出口65,66がそれぞれ設けられている。なお、金型60は、垂直割金型でも良い。
【0041】
なお、金型60は、クリップ用キャビティ63が線条キャビティ64上に複数個設けられていても良い。この場合の金型60は、複数個のクリップ用キャビティ63が、電線束3に配線用クリップ付電線2を組み付けて形成されたワイヤハーネス1がパネルに取り付けられる時に、複数個の配線用クリップ5が前記パネルの前記取付孔に係止可能となる位置に配置される。即ち、複数個の配線用クリップ5は、電線6に対する相対的な位置が前記パネルの前記取付孔に係止可能となる位置に設けられる。
【0042】
本発明でいう、複数個の配線用クリップ5が、電線2に対する相対的な位置がパネルの取付孔に係止可能となる位置に設けられているとは、線条キャビティ64に対してワイヤハーネス1の設計時の相対的な位置に保たれたクリップ用キャビティ63内に溶融した樹脂を射出成形して得られた配線用クリップ付電線2において、複数個の配線用クリップ5の電線2に対する相対的な位置が、射出成形時に生じる誤差を除くと、設計時に定められた位置となっていることをいう。
【0043】
金型60によって成形された配線用クリップ付電線2は、布線板に設けられた結き具上に布線された電線束3の長手方向に沿って組み付けられ、図1に示すように、前記配線用クリップ付電線2の電線6と、前記電線6に固定された固定部11と、電線束3とがワイヤハーネス用テープ9で捲回されて固定される。そして、配線用クリップ付電線2を有するワイヤハーネス1が製造される。製造されたワイヤハーネス1は、所要の配索形態でパネルに取り付けられる。
【0044】
前記パネルなどのメンテナンスや修理の時、または、前記ワイヤハーネス1のメンテナンスや修理等の時、前記ワイヤハーネス1が前記パネルから取り外される。取り外された前記ワイヤハーネス1には、係止部が破壊された配線用クリップ5が残留する。残留した前記配線用クリップ5は、ニッパ等の工具によって連結部13が切断され、図7に示すように、図示しない電線束3にワイヤハーネス用テープ9で捲回された電線6と、配線用クリップ5とに分離され、前記ワイヤハーネス1から配線用クリップ5が取り除かれる。
【0045】
所定のメンテナンスや修理等の後、前記配線用クリップ5が取り除かれた前記ワイヤハーネス1には、市販品などの一般的な配線用クリップが取り付けられ、ワイヤハーネス用テープ9の捲回によって前記配線用クリップが固定される。一般的な配線用クリップが固定されたワイヤハーネスは、前記パネルに所要の配索形態で取り付けられ、メンテナンスや修理等が完了する。
【0046】
上述の一実施形態にかかるワイヤハーネス1は、配線用クリップ付電線2が、パネルの取付孔と係止可能に形成された係止部12と、前記パネルに配索される電線束3が載置される載置部10と、備えた配線用クリップ5と、前記電線束3に束ねられる電線6に一体成形され該電線6に固定された固定部11と、が、前記載置部10の周縁部10aに設けられると共に前記固定部11の一端に設けられる連結部13を介して連設されている。前記載置部10と前記固定部11とが前記連結部13を介して平行状に連設され、かつ、前記連結部13が、前記載置部10と前記固定部11とに直交して形成されている。
【0047】
このため、ワイヤハーネス1は、電線6に固定された固定部11と、配線用クリップ5の載置部10とを連結する連結部13が切断されることによって、前記電線6と前記配線用クリップ5とに分離される。このため、配線用クリップ付電線2の電線6と配線用クリップ5との分離が容易になされる。
【0048】
従って、ワイヤハーネス1は、ニッパ等の工具によって前記連結部13が切断されて、配線用クリップ5が取り除かれる。そして、ワイヤハーネス1のメンテナンスや修理等におけるメンテナンス性や作業性が向上する。
【0049】
また、電線6に固定された固定部11を作業員が手指で押さえることによって、前記連結部13が切断される時にかかる負荷が前記電線6に作用するのを抑えることができる。このため、配線用クリップ5が除去された電線6が断線したり、傷ついたりすることが防止される。また、電線6に固定された固定部11と電線束3とをワイヤハーネス用テープ9等で捲回することによって、前記連結部13が切断される時にかかる負荷が前記電線6に作用するのを抑えることができる。このため、配線用クリップ5が除去された電線6が断線したり、傷ついたりすることが防止される。
【0050】
また、連結部13が前記電線6に直交する方向に立設されているため、前記電線6に直交する方向に作用する伸縮力と、前記電線6に直交する方向の振動とに対しての強度が向上する。
【0051】
(第2の実施形態)
次に、本発明にかかるワイヤハーネスの第2の実施形態について、図8図11を参照して説明する。なお、前述した実施形態と同一部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0052】
本発明の第2の実施形態にかかるワイヤハーネスの配線用クリップ付電線2Aは、図8に示すように、電線6と、配線用クリップ5Aとを有している。
【0053】
配線用クリップ5は、図8に示すように、前記電線束3が載置される載置部10と、パネルの取付孔に係止可能に形成された係止部12とを備えている。配線用クリップ5は、可撓性を有するポリプロピレン樹脂などの合成樹脂で形成されている。
【0054】
載置部10の上面には、前記電線6を案内すると共に前記電線束3を保持する保持部材21と、前記電線6の外形に沿って形成された半円形状の案内溝31とが設けられている。載置部10の周縁部10aには、前記載置部10から延長された連結部14が設けられている。連結部14には、前記電線6を固定する固定部11が設けられている。
【0055】
固定部11は、前記電線6の外形に沿って形成されると共に、前記電線6の長手方向に沿って円筒状に形成されている。固定部11は、前記電線6の被覆部の外表面に一体成形されている。固定部11は、前記固定部11の長手方向の一端に前記連結部14が設けられている。固定部11と載置部10とは、前記連結部14を介して直線状に配置されている。
【0056】
連結部14は、前記載置部10の上面の周縁部10aと、前記固定部11の一端とに連設されている。連結部14は、前記載置部10と前記固定部11とに平行して形成されている。連結部14は、ニッパ等の工具、あるいは、作業員の手指によって切断可能に形成されている。
【0057】
載置部10の下面には、図8に示すように、前記係止部12と、前記係止部12が前記パネルの前記取付孔に係止されると該パネルを押圧する押圧部20とが設けられている。
【0058】
金型60によって成形された配線用クリップ付電線2は、布線板に設けられた結き具上に布線された電線束3の長手方向に沿って組み付けられ、前記配線用クリップ付電線2Aの電線6と、前記電線6に固定された固定部11と、電線束3とがワイヤハーネス用テープ9で捲回されて固定される。そして、配線用クリップ付電線2Aを有するワイヤハーネス1が製造される。製造されたワイヤハーネス1は、所要の配索形態でパネルに取り付けられる。
【0059】
前記パネルなどのメンテナンスや修理の時、または、前記ワイヤハーネス1のメンテナンスや修理等の時、前記ワイヤハーネス1が前記パネルから取り外される。取り外された前記ワイヤハーネス1には、係止部が破壊された配線用クリップ5Aが残留する。残留した前記配線用クリップ5Aは、ニッパ等の工具によって連結部14が切断され、図9に示すように、図示しない電線束3にワイヤハーネス用テープ9で捲回された電線6と、配線用クリップ5Aとに分離され、前記ワイヤハーネス1から配線用クリップ5Aが取り除かれる。
【0060】
所定のメンテナンスや修理等の後、前記配線用クリップ5Aが取り除かれた前記ワイヤハーネス1には、市販品などの一般的な配線用クリップが取り付けられ、ワイヤハーネス用テープ9の捲回によって前記配線用クリップが固定される。一般的な配線用クリップが固定されたワイヤハーネスは、前記パネルに所要の配索形態で取り付けられ、メンテナンスや修理等が完了する。
【0061】
なお、図10に示すように、電線6の一方を上方に引き上げて、前記電線6と前記連結部14との間に、ニッパ等の工具が浸入する空間を形成し、次いで、前記連結部14を前記工具によって切断し、図11に示すように、電線6と配線用クリップ5Aとに分離するように作業をしても良い。
【0062】
上述の一実施形態にかかるワイヤハーネス1は、配線用クリップ付電線2Aが、パネルの取付孔と係止可能に形成された係止部12と、前記パネルに配索される電線束3が載置される載置部10と、を備えた配線用クリップ5と、前記電線束3に束ねられる電線6に一体成形され該電線6に固定された固定部11と、が、前記載置部10の周縁部10aに設けられると共に前記固定部11の一端に設けられる連結部14を介して連設されている。前記載置部10と前記固定部11とが前記連結部14を介して直線状に連設され、かつ、前記連結部14が、前記載置部10と前記固定部11とに平行して形成されている。
【0063】
このため、ワイヤハーネス1は、電線6に固定された固定部11と、配線用クリップ5Aの載置部10とを連結する連結部14が切断されることによって、前記電線6と前記配線用クリップ5Aとに分離される。このため、配線用クリップ付電線2Aの電線6と配線用クリップ5Aとの分離が容易になされる。
【0064】
従って、ワイヤハーネス1は、ニッパ等の工具によって前記連結部14が切断されて、配線用クリップ5Aが取り除かれる。そして、ワイヤハーネス1のメンテナンスや修理等におけるメンテナンス性や作業性が向上する。
【0065】
また、電線6に固定された固定部11を作業員が手指で押さえることによって、前記連結部14が切断される時にかかる負荷が前記電線6に作用するのを抑えることができる。このため、配線用クリップ5Aが除去された電線6が断線したり、傷ついたりすることが防止される。また、電線6に固定された固定部11と電線束3とをワイヤハーネス用テープ9等で捲回することによって、前記連結部13が切断される時にかかる負荷が前記電線6に作用するのを抑えることができる。このため、配線用クリップ5Aが除去された電線6が断線したり、傷ついたりすることが防止される。
【0066】
また、連結部14が前記電線6に平行する方向に立設されているため、前記電線6に平行する方向に作用する伸縮力と、前記電線6に平行する方向の振動とに対しての強度が向上する。
【0067】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 ワイヤハーネス
2 配線用クリップ付電線(外装部品付電線)
3 電線束
5 配線用クリップ(外装部品)
10 載置部
11 固定部
12 係止部
13,14 連結部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11