(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5798775
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】コルゲートチューブ
(51)【国際特許分類】
H02G 3/04 20060101AFI20151001BHJP
B60R 16/02 20060101ALN20151001BHJP
【FI】
H02G3/04 068
!B60R16/02 623U
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-82520(P2011-82520)
(22)【出願日】2011年4月4日
(65)【公開番号】特開2012-222845(P2012-222845A)
(43)【公開日】2012年11月12日
【審査請求日】2014年3月18日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100060690
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 秀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100070002
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100110733
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥野 正司
(72)【発明者】
【氏名】杉山 篤史
【審査官】
神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−142100(JP,A)
【文献】
特開2000−287329(JP,A)
【文献】
特開平09−178049(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
山部と谷部とが長手方向に沿って交互に複数連続したチューブ本体と、前記チューブ本体に形成され、前記長手方向に沿ったスリットと、が設けられ、前記チューブ本体の前記スリットを挟んだ両端部のうち一方の山部が他方の山部に嵌合し、一方の谷部が他方の谷部に嵌合して、互いに重ねられたコルゲートチューブにおいて、
前記長手方向に沿って互いに隣り合う山部と山部又は谷部と谷部とは、異なる形状に設けられ、嵌合させる山部と谷部とが一つズレて、互いに隣り合う山部と山部又は谷部と谷部とを嵌合しようとすると、嵌合異常が発生する
ことを特徴とするコルゲートチューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コルゲートチューブに係り、特に、山部と谷部とが長手方向に沿って交互に複数連続したチューブ本体と、前記チューブ本体に形成され、前記長手方向に沿ったスリットと、が設けられ、前記チューブ本体の前記スリットを挟んだ両端部が互いに重ねられたコルゲートチューブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などに配索されるワイヤハーネスは、その配索部位における突起物などとの干渉による損害から内部の電線を保護するため、合成樹脂製のコルゲートチューブにより被覆されることが多い。
【0003】
上述したコルゲートチューブとして例えば
図10に示されたものが提案されている(特許文献1〜4)。同図に示すように、コルゲートチューブ1は、山部2aと谷部2bとが長手方向Y1に沿って交互に複数連続したチューブ本体2と、このチューブ本体2に形成され、長手方向に沿ったスリット3と、が設けられている。コルゲートチューブ1は、このスリット3から図示しないワイヤハーネスを収容し、ワイヤハーネス全体を被覆する。
【0004】
コルゲートチューブ1は、スリット3からワイヤハーネスを収容した後、
図10(B)に示すように、チューブ本体2のスリット3を挟んだ両端部が互いに重ねてスリット3が塞がれる。このとき、チューブ本体2のスリット3を挟んだ両端部は、互いに相対する山部2aと山部2a、谷部2bと谷部2b、が嵌合して重ねられる。
【0005】
しかしながら、上述したコルゲートチューブ1においては、スリット3を挟んだ両端部の嵌合作業時に、互いに相対する山部2aと山部2a、谷部2bと谷部2bを嵌合することが難しく、ズレて嵌合されることがある。即ち、山部2aと谷部2bとが一つずつズレて長手方向Y1に隣り合った山部2aと山部2a、谷部2bと谷部2bが嵌合されてしまうことがある。
【0006】
このように、ズレて嵌合されると、コルゲートチューブ1内部に配置されるスリット3の突き出しが大きくなり、収容されるワイヤハーネスの絶縁体を損傷させるリスクが高くなるなど品質低下につながる。このため、従来では、嵌合作業終了後、目視検査にてズレていないか確認し、ズレていた場合、嵌合作業をやり直しているため、嵌合作業に手間がかかる、という問題が発生していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2009−542180号公報
【特許文献2】特開2005−176561号公報
【特許文献3】特開2000−287329号公報
【特許文献4】特開平9−213141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、スリットを挟んだ両端部を重ねる際に簡単に互いに相対する山部と山部、谷部と谷部とを嵌合することができ、嵌合作業性の向上を図ったコルゲートチューブを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するための請求項
1記載の発明は、山部と谷部とが長手方向に沿って交互に複数連続したチューブ本体と、前記チューブ本体に形成され、前記長手方向に沿ったスリットと、が設けられ、前記チューブ本体の前記スリットを挟んだ両端部のうち一方の山部が他方の山部に嵌合し、一方の谷部が他方の谷部に嵌合して、互いに重ねられたコルゲートチューブにおいて、前記長手方向に沿って互いに隣り合う山部と山部又は谷部と谷部とは、異なる形状に設けられ、嵌合させる山部と谷部とが一つズレて、互いに隣り合う山部と山部又は谷部と谷部とを嵌合しようとすると、嵌合異常が発生することを特徴とするコルゲートチューブに存する。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように請求項
1記載の発明によれば、長手方向に沿って互いに隣り合う山部と山部又は谷部と谷部とは、異なる形状に設けられている。これにより、スリットを挟んだ両端部において、嵌合させる山部と谷部とが一つずつズレて、互いに隣り合う山部と山部、谷部と谷部を嵌合しようとすると、嵌合異常が発生する(嵌合できない)ので、嵌合させる前にズレていることが分かり嵌合をやり直す必要がなく、簡単に相対する山部と山部、谷部と谷部とを嵌合することができるため、嵌合作業性の工場を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1(A)は
参考例における本発明のコルゲートチューブを示す側面図であり、
図1(B)は
図1(A)に示すコルゲートチューブの正面図である。
【
図2】
図1に示すコルゲートチューブの部分斜視図である。
【
図3】
図3(A)は
図1に示すコルゲートチューブにおいて、スリットを挟んだ両端部を互いに重ねた状態を示す側面図であり、
図3(B)は
図3(A)のA−A線部分断面図であり、
図3(C)は
図3(A)に示すコルゲートチューブの正面図である。
【
図4】変形例における本発明のコルゲートチューブを示す側面図である。
【
図5】変形例における本発明のコルゲートチューブを示す側面図である。
【
図6】変形例における本発明のコルゲートチューブを示す側面図である。
【
図7】
図7(A)は
本実施形態におけるコルゲートチューブを示す側面図であり、
図7(B)は
図7(A)のB−B線部分断面図である。
【
図8】
図8(A)は相対する山部と山部、谷部と谷部が嵌合した状態を示す部分断面図であり、
図8(B)は山部と山部、谷部と谷部との嵌合にズレが発生した状態を示す部分断面図である。
【
図9】変形例における
図7(A)のB−B線断面図である。
【
図10】従来のコルゲートチューブの一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
参考例
以下、
参考例におけ
るコルゲートチューブを
図1〜
図3に基づいて説明する。
図1(A)は
参考例におけ
るコルゲートチューブを示す側面図であり、
図1(B)は
図1(A)に示すコルゲートチューブの正面図である。
図2は、
図1に示すコルゲートチューブの部分斜視図である。
図3(A)は
図1に示すコルゲートチューブにおいて、スリットを挟んだ両端部を互いに重ねた状態を示す側面図であり、
図3(B)は
図3(A)のA−A線部分断面図であり、
図3(C)は
図3(A)に示すコルゲートチューブの正面図である。
【0016】
このコルゲートチューブ1は、自動車などに配索されるワイヤハーネスを収容して、ワイヤハーネスを保護する。同図に示すように、コルゲートチューブ1は、山部2a及び谷部2bが長手方向Y1に沿って交互に連続したチューブ本体2と、チューブ本体2に形成され、長手方向Y1に沿ったスリット3と、が設けられている。
【0017】
上記チューブ本体2は、略円筒状に形成されていて、合成樹脂などの絶縁部材で構成されている。上記スリット3は、図示しないワイヤハーネスをチューブ本体2内に挿入するためにチューブ本体2の長手方向Y1の一端から他端に亘って設けられている。このスリット3からチューブ本体2内にワイヤハーネスを挿入した後、
図3に示すように、チューブ本体2のスリット3を挟んだ両端部を互いに重ねることにより、上記スリット3は塞がれる。このときスリット3を挟んだ両端部においては、
図3(B)に示すように、互いに相対する山部2aと山部2a、谷部2bと谷部2b、が嵌合して重ねられる。
【0018】
また、
図3(A)に示すように、上述したチューブ本体2に設けられた複数の山部2aの1つのみにおいて、そのスリット3を挟んだ両端部にそれぞれ目印4が設けられている。目印4は、山部2aの頂面に形成され、印刷、印字、塗装、色マジックなどによりチューブ本体2とは異なる色に着色されている。この目印4は、
図1(A)に示すように、チューブ本体2を長手方向Y1に均等に3分割したエリアA
1〜A
3のうち真ん中のエリアA
2内にある山部2aに設けられている。
本参考例では、目印4は、チューブ本体2の長手方向Y1の中央に設けられている。また、上記目印4の長さL
1(
図1)は、スリット3を挟んだ両端部におけるオーバーラップ部の長さL
2(
図3)よりも長く設けられている。
【0019】
次に、上述したコルゲートチューブ1のスリット3を挟んだ両端部の嵌合作業手順について説明する。まず、作業者は、スリット3から図示しないワイヤハーネスをチューブ本体2に挿入した後、スリット3を挟んだ両端部において目印4が付いている山部2a同士を嵌合させる。その後、作業者は目印4の付いている山部2aの長手方向Y1一方側に隣り合う谷部2bと谷部2bとの嵌合を行う。このとき作業者は両手を使って目印4の付いている山部2aの長手方向Y1他方側に隣り合う谷部2bと谷部2bとの嵌合も同時に行う。即ち、作業者は両手を使って谷部2bと谷部2bとの嵌合を2箇所同時に行う。そして、作業者は、目印4がついている山部2aから長手方向Y1両側に向かって2箇所つづ順番に谷部2bと谷部2bの嵌合、山部2aと山部2aの嵌合、を交互に進める。
【0020】
上述したコルゲートチューブ1によれば、スリット3を挟んだ両端部を重ねる際に目印4が付いている両端部の山部2a同士を嵌合させるだけでに簡単に相対する山部2aと山部2a、谷部2bと谷部2bとを嵌合することができるため、嵌合作業性の向上を図ることができる。
【0021】
また、上述したようにコルゲートチューブ1によれば、目印4の長さL
1をオーバーラップ部の長さL
2よりも長くすることにより、嵌合作業終了後に目印4が付けられた山部2aと山部2aとが嵌合していることを目視により確認することができる。
【0022】
また、上述したコルゲートチューブ1によれば、チューブ本体2を長手方向Y1に均等に3分割したエリアA
1〜A
3のうち真ん中のエリアA
2内にある山部2aに目印4を設けることにより、上述したように目印4がついている山部2aから長手方向Y1両側に向かって2箇所つづ順番に谷部2bと谷部2bの嵌合、山部2aと山部2aの嵌合、を交互に進めることができ、作業時間の短縮を図ることができる。
【0023】
なお、上述した
参考例によれば、目印4は、複数の山部2aの1つだけに設けられていたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、
図4に示すように、複数の谷部2bの1つのみに目印4を設けてもよい。
【0024】
また、上述した
参考例によれば、目印4は、複数の山部2aの1つのみに設けられていたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、
図5に示すように、複数の山部2aの2つに目印4を設けても良い。この2つの山部2aに設けられた目印4は、長手方向Y1に沿って1つの山部2a以上の間隔を空けて設けられている。即ち、目印4が付けられた山部2aと山部2aとが長手方向Y1に互いに隣り合うことがない。
図5に示す例では、目印4が設けられた山部2aと山部2aとの間には3つの山部2a分、間隔を空けて設けられている。
【0025】
図5に示す例では、複数の山部2aのうち2つに目印4を設けていたが、本発明はこれに限ったものではなく、目印4は2つ以上であればよい。ただし、目印4が付けられた山部2a同士は、互いに隣り合うことがないように長手方向Y1に沿って1つの山部2a以上の間隔を空けて設ける必要がある。
【0026】
また、複数の谷部2bに2つ以上の目印4を設けてもよい。この場合も、目印4が付けられた谷部2b同士は、互いに隣り合うことがないように長手方向Y1に沿って1つの谷部2b以上の間隔を空けて設ける必要がある。
【0027】
実施形態
次に、本発明
の実施形態について
図7及び
図8を参照して説明する。
図7(A)は
本実施形態におけるコルゲートチューブを示す側面図であり、
図7(B)は
図7(A)のB−B線断面図である。
図8(A)は相対する山部と山部、谷部と谷部が嵌合した状態を示す部分断面図であり、
図8(B)は山部と山部、谷部と谷部との嵌合にズレが発生した状態を示す部分断面図である。
【0028】
なお、
図7及び
図8においては、
図1〜
図3について上述した
参考例で既に説明したコルゲートチューブ1と同等の部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
参考例と
本実施形態とで大きく異なる点は、
本実施形態では、目印4が設けられていない。また、
参考例では、複数の山部2aは互いに同じ形状に設けられ、複数の谷部2bも互いに同じ形状に設けられていたが、
本実施形態では、
図7及び
図8に示すように、長手方向Y1に沿って互いに隣合う山部2aと山部2aとが異なる形状に設けられている。
【0029】
これにより、スリット3を挟んだ両端部において、相対する山部2aと山部2a、谷部2bと谷部2b、を嵌合させると、
図8(A)に示すように簡単に嵌合することができる。これに対して、嵌合させる山部2aと谷部2bとが一つずつズレて、
図8(B)に示すように、互いに隣り合う山部2aと山部2aを嵌合しようとすると、嵌合異常が発生する(嵌合できない)ので、嵌合させる前にズレていることが分かり嵌合をやり直す必要がなく、簡単に相対する山部2aと山部2a、谷部2bと谷部2bとを嵌合することができる。
【0030】
なお、上述した
本実施形態では、長手方向Y1に沿って互いに隣り合う山部2aと山部2aとが互いに異なる形状に設けられていたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、
図9に示すように、長手方向Y1に沿って互いに隣り合う谷部2bと谷部2bとが異なる形状に設けられていても良い。
【0031】
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 コルゲートチューブ
2 チューブ本体
2a 山部
2b 谷部
3 スリット
4 目印
Y1 長手方向