(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第一剛性体と前記第二剛性体との間には、複数の前記脆弱部材が、前記第一及び第二係止部に係止されて配設されていることを特徴とする請求項1記載の入力判別装置。
前記複数の脆弱部材は、強度及び/又は長さが異なり、入力レベルに応じて、前記複数の脆弱部材の中の特定の脆弱部材が破損又は変形することを特徴とする請求項2記載の入力判別装置。
前記脆弱部材は、スタッドボルトの各端部を前記第一係止部の挿通孔と前記第二係止部の挿通孔に挿通し、該スタッドボルトの両端部にナットを螺合してなる請求項1乃至3のうち何れか1項記載の入力判別装置。
前記脆弱部材は、頭部を有するボルトを前記第一係止部の挿通孔と前記第二係止部の挿通孔に挿通し、該ボルトの先端部にナットを螺合してなる請求項1乃至3のうち何れか1項記載の入力判別装置。
前記脆弱部材は、頭部を有するボルトを前記第一係止部、前記第二係止部の何れか一方の挿通孔に挿通し、前記第一係止部、前記第二係止部の何れか他方のネジ穴に該ボルトを螺合してなる請求項1乃至3のうち何れか1項記載の入力判別装置。
前記脆弱部材は、リベットであり、該リベットは、前記第一係止部、前記第二係止部の何れか一方の挿通孔より挿入され、他方において、カシメられることを特徴とする請求項1乃至3のうち何れか1項記載の入力判別装置。
前記ボルトの頭部、前記リベットの頭部、前記ナット及び/又は前記結合部材の頭部は、略球面状凸座面を有し、該略球面状座面に対応して、前記第一係止部及び/又は前記第二係止部は、略球面状凹部を有することを特徴とする請求項4乃至8のうち何れか1項記載の入力判別装置。
前記脆弱部材は、波状可撓性部材であり、一端部が前記第一係止部で前記第一剛性体に係止され、他端部が前記第二係止部で前記第二剛性体に係止されることを特徴とする請求項1乃至3のうち何れか1項記載の入力判別装置。
前記脆弱部材は、ワイヤ状部材であり、一端部が前記第一係止部材に係止され、他端部が前記第二係止部材に係止されることを特徴とする請求項1乃至3のうち何れか1項記載の入力判別装置。
前記第一係止部は、前記第一剛性体に一体に固設され、前記第二係止部は、前記第二剛性体に一体に固設されていることを特徴とする請求項1乃至11のうち何れか1項記載の入力判別装置。
前記第一係止部は、前記第一剛性体に対して後付けで固設され、前記第二係止部は、前記第二剛性体に後付けで固設されていることを特徴とする請求項1乃至11のうち何れか1項記載の入力判別装置。
第一剛性体と該第一剛性体が固定される第一構造物との間又は第二剛性体と該第二剛性体が固定される第二構造部物との間には、摺滑部材が設けられていることを特徴とする請求項1乃至16のうち何れか1項記載の入力判別装置。
第一剛性体が上部構造物に固定される上沓であり、第二剛性体が下部構造物に固定される下沓であることを特徴とする請求項1乃至17のうち何れか1項記載の入力判別装置。
前記第一構造物と前記第二構造物との間には、複数の前記脆弱部材が、前記第一及び第二係止部に係止されて配設されていることを特徴とする請求項20記載の入力判別装置。
前記複数の脆弱部材は、強度及び/又は長さが異なり、入力レベルに応じて、前記複数の脆弱部材の中の特定の脆弱部材が破壊又は変形することを特徴とする請求項21記載の入力判別装置。
前記第一係止部は、前記第一構造物に対して後付けで固設され、前記第二係止部は、前記第二構造物に後付けで固設されていることを特徴とする請求項20乃至22のうち何れか1項記載の入力判別装置。
当該入力判別装置は、前記第一構造物と前記第二構造物との間に配設される支承装置の近傍に設けられることを特徴とする請求項20乃至24のうち何れか1項記載の入力判別装置。
【背景技術】
【0002】
元来、建築物や橋梁等の構造物の支承装置には、大別して、水平方向の荷重を支承する水平荷重支承機能、鉛直方向の荷重を支承する鉛直荷重支承機能、鉛直面内における回転荷重を支承する鉛直回転支承機能等が求められる。特に、橋梁用支承装置にあっては、平成7年の大震災以来、ゴムを主たる構成要素としたゴム支承装置が求められるようになっている。中でも鉛直荷重支持性能があって、水平力分散性能の高い積層ゴム支承装置は、広範に使用されるようになっている。
【0003】
この積層ゴム支承装置は、例えば特許文献1(特開2002−181129号公報)に記載されているように、ゴム板と鉄板を交互に積層し、これらが加硫接着によって相互に接着されて構成され、その上部が橋梁の橋桁等の上部構造物に固定され、その下部が橋脚等の下部構造物に固定されて設置されて使用されている。
【0004】
しかしながら、積層ゴム支承装置にあっては、構造上、積層構造を採るため、必然的に所要厚さが大きくなって嵩張る上、高荷重を支持させるには広面積化する必要があり、特に長大橋向けには大型化する欠点がある。従って、性能要求上、支承装置が大型化してしまった場合には、下部構造物である橋脚や橋台の上面の面積がより大きく要求されることになり、橋梁全体として高コスト化してしまうという欠点がある。
【0005】
また、大型の支承装置が求められる場合であって、新設でない場合には、既存の支承装置が設置されていることから設置スペースが限定されるために支承装置の大きさが特に問題となり、高さが低く面積が狭い小型の支承装置でなければ交換設置が出来ないという不具合があった。
【0006】
まして、近年、建築物や橋梁等の構造物の大型化や予想される地震規模の大型化に伴い、支承装置に求められる機能や性能も高度化してきており、積層ゴム支承で対応しようとした場合、大型化してしまうことは避けられない。
【0007】
この様な背景から先述のような鉛直高荷重支持性能の向上に伴う大型化という積層ゴム支承装置の問題の改善を図ったものとして、例えば特許文献2(特許第4377429号公報)に記載された機能分離型の固定支承としての弾性支承装置が提案されている。
【0008】
この弾性支承装置は、積層ゴム支承装置の持つ水平力分散機能は持たず、この機能を別の支承装置に持たせるようにし、鉛直荷重支持機能を高度化している。具体的に、この弾性支承装置は、下面に環状溝が形成された上板と、上面に環状溝が形成された下板とが互いの環状溝に隙間無く固着されて介在する弾性層を介して対向配置され、上板と下板の中央に設けられた貫通孔に剪断変形を拘束する芯状の突起が配設されている。
【0009】
このように構成される上述の如くの弾性支承装置は、弾性層が厚くなく、弾性層と交互に積層されるような鋼板層が存在せず、支承装置としても積層ゴム支承装置に比して高さが低く、全体としてコンパクトに設定され、支承装置の大型化問題に対する解決策として提案されている。
【0010】
また、特許文献3(特開2005−337002号公報)の弾性支承装置は、積層ゴム支承装置の持つ水平力分散機能は持たないものの、水平荷重支持機能を持たせながら鉛直荷重支持機能を高度化するものであって、上沓と下沓がそれぞれ互いに嵌合する同心円状の複数の円筒部と中心に位置する円柱部とからなる凸部と凹部とを有している。この弾性支承装置は、嵌合状態の直径鉛直断面視において、これら互いに嵌合する凸部と凹部がそれぞれ断面矩形状をなし、それらの隣接する側面同士と互いに対向する底面と頂面との間にゴム等の一様な弾性体が実質的に隙間無く充填され、連続するゴム層が挟持されて結合されている。
【0011】
このように構成される上述の如くの弾性支承装置は、互いに隣接する凸部の側面と凹部の側面とこれらの間のゴム層とで水平荷重支持部が構成され、凸部の頂面と凹部の底面とこれらの間のゴム層とで鉛直荷重支持部が構成されている。
【0012】
また、特許文献4(特開2009−46944号公報)に記載された支承装置も、特許文献3の弾性支承装置と同様に、上沓と下沓が互いに嵌合する多条の円筒状の構成となっている。従って、上沓と下沓における各凸部と凹部とを構成する円筒部や円柱部は、それぞれ鉛直断面形状における両側面間距離が端面をなす頂面に向かって接近して狭まり、両側面が傾斜してなる断面台形状に形成されて互いに嵌合される。そして、これらの凹部と凸部との間には、ゴム等の一様な弾性体が実質的に隙間無く充填されている。
【0013】
このような特許文献3及び特許文献4に記載された弾性支承装置では、支承装置の小型化や軽量化が図られ、鉛直荷重と水平荷重の支持性能の向上がなされる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明が適用された支承装置について図面を参照して説明する。なお、以下、支承装置について、以下の順に沿って説明する。
【0035】
1.概説
2.支承装置の説明
3.入力判別機構の説明
4.第一係止部及び第二係止部の変形例
5.脆弱部材の変形例
6.入力判別機構を複数設けた例
7.入力判別機構の後付けの例
8.波状可撓性部材を用いた入力判別機構
9.ワイヤ状部材を用いた入力判別機構
10.ワイヤ状部材を用いた入力判別機構の変形例
11.上部構造物と下部構造物との間に架設された入力判別機構
12.上部構造物と下部構造物との間に架設された入力判別機構の変形例1
13.上部構造物と下部構造物との間に架設された入力判別機構の変形例2
14.上部構造物と下部構造物との間に架設された入力判別機構の変形例3
15.可動支承装置(鋼製支承)と組み合わせた入力判別機構
16.建物の上部構造物と下部構造物との間に架設された入力判別機構
17.その他の変形例
【0036】
[1.概説]
図1に示すように、橋梁1では、一方の橋脚や橋台といった下部構造物2に固定支承装置3aを設け、他方の下部構造物2に可動支承装置3bを設け、固定−可動支持構造を採用し、橋桁等の上部構造物4を支承することがある。固定支承装置3aは、一般に、上部構造4の回転変形に対応して鉛直荷重を支持しつつ、水平・鉛直方向の変位を拘束して制限し、可動支承装置3bは、一般に、上部構造4の回転変形と水平変位に対応する。固定支承装置3aは、固定型ゴム支承であっても良いし、ピン支承等の鋼製支承であっても良い。また、可動支承装置3bは、可動型ゴム支承であっても良いし、ローラー支承等の鋼製支承であっても良い。固定支承装置3aは、可動支承装置3bと比べて、第一剛性体としての上沓と第二剛性体としての下沓との水平方向の相対的変位量は大きくないが、固定支承装置3a、可動支承装置3bの何れの支承装置であっても、地震動等の入力の大小に関わらず、入力があれば、上沓と下沓とは相対的に変位し、設計強度を超える入力があれば、上沓と下沓との相対的な変位量が許容値を超え、上沓や下沓といった強度部材が損傷することになる。
【0037】
また、
図2に示すように、支承装置には、下部構造物2に水平力分散支承装置5が設けられることもある。水平力分散支承装置5は、積層ゴム支承が用いられることが多い。この水平力分散支承装置5にあっても、同様に、入力があれば、上沓と下沓とが相対的に変位し、且つ、設計強度を超える入力があれば、上沓と下沓との相対的な変位量が許容値を超え、上沓や下沓といった強度部材が損傷する。なお、このような事情は他の免震ゴム支承装置についても、同様である。
【0038】
本発明が適用された支承装置では、上述のような支承装置に、入力判別機構を設けることによって、入力を判別出来るようにする。すなわち、設計強度を超える入力があったかどうかやどの程度の入力があったかを段階的に判別することが出来る。
【0039】
一般に、支承装置は、第一剛性体としての上沓と第二剛性体としての下沓との間に支承体が設けられた構造物であり、入力判別機構は、上沓と下沓との間に架設される。具体的に、入力判別機構は、第一剛性体に固設された第一係止部と第二剛性体に固設された第二係止部との間に脆弱部材が架設され、この脆弱部材が破損又は変形したかによって、例えば、 設計強度を超える入力があったかどうかを判別することが出来る。ここで、脆弱部材を複数設け、それぞれの脆弱部材の強度及び/又は長さを異なるように設定し、各脆弱部材の強度及び/又は長さを、入力レベルに対応付けることで、入力があったときの破損又は変形する脆弱部材を異なるように設定することで、入力レベルを事後的に確認することも出来る。
【0040】
なお、ここでは、橋梁用の支承装置を例に説明するが、建物の基礎となる下部構造物と建物といった上部構造物との間の免震層に配設される免震装置に用いられる支承装置であっても良い。
【0041】
[2.支承装置の説明]
本発明の支承装置10は、
図3に示すように、橋脚や橋台といった下部構造物2と橋桁等の上部構造4との間に装着して水平荷重や鉛直荷重、回転荷重等の各種の荷重を支えると共に、地震や風、動的又は静的交通荷重等による揺動や振動、応力を吸収、分散しつつ、支承する橋梁用支承装置である。この支承装置10は、鉛直荷重支持性能や水平荷重支持性能や鉛直回転性能を調整することによって、固定支承装置3aや可動支承装置3bや水平力分散支承装置5や免震支承装置として用いることが出来る。この支承装置10は、第一剛性体としての上沓11と第二剛性体としての下沓12との間に支承体13が介在されている。
【0042】
上沓11は、強度部材であり、金属やセラミックス、或いは硬質樹脂やFRPの如くの強化樹脂等の剛性素材によって構成することが好ましいが、必ずしも剛性素材に限定されるものではなく、弾性素材や剛性素材と弾性素材との組合せによって構成される材料によっても構成することが出来る。各種素材から構成される上沓11は、平面形状が略多角形、略円形、略長円径、略楕円形等の適宜の形状に設定することが出来るが、方形又は円形とすることが製造上、或いは施工上、交換上有利である。なお、上沓11は、外表面を全体的に弾性体等の被覆層で覆って、耐候性、防錆効果を得るように構成することも出来る。
【0043】
上部構造物4に対する上沓11の固定手段は、例えばボルト、ナット等の締結手段を用いて上沓を上部構造物に対して直接的に固定しても良いが、ここでは、上沓11よりも広面積の板状をなす上部プレート16を用いて上沓11を上部構造物4に対して間接的に固定している。上沓11の上部構造物4への固定方法は、これらの例に限定されるものではない。
【0044】
なお、可動支承装置として用いるとき等は、
図4に示すように、上沓11の上部、例えば上沓11と上部プレート16との間に摺滑部材14を配設して、上部構造物4と支承装置10とを相対変位可能に固定しても良い。この摺滑部材14としては、例えば、フッ化炭素樹脂の一種であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の如くの低摩擦係数の表面を有するプレート等を、上沓11の上面に固定したり、又は上部構造物4や上部構造物4に固定される取付手段側の下面に固定することによって構成することが可能である。
【0045】
下沓12は、
図3及び
図4に示すように、上沓11同様、強度部材であり、金属やセラミックス、或いは硬質樹脂やFRPの如くの強化樹脂等の剛性素材によって構成することが好ましいが、必ずしも剛性素材に限定されるものではなく、弾性素材や剛性素材と弾性素材との組合せによっても構成される材料によって構成することが出来る。各種素材から構成される下沓12は、平面形状が略多角形、略円形、略長円径、略楕円形等の適宜の形状に設定することが出来るが、方形又は円形とすることが製造上、又は施工上、交換上で有利である。下沓12の平面形状等は、必ずしも上沓11と一致させる必要はないが、各部のサイズと、凸部や凹部の形状や位置等は下沓12の設定と上沓11の設定を互いに整合させる必要がある。なお、下沓12は、外表面を全体的に弾性体等の被覆層で覆って、耐候性、防錆効果を得るように構成することも出来る。
【0046】
下部構造物に対する下沓12の固定手段は、例えばボルト、ナット等の締結手段を用いて下沓12を下部構造物2に対して直接的に固定してもよいが、ここでは、下沓12よりも広面積の板状をなす下部プレート17の如くの下部固定手段を用いて下沓12を下部構造物2に対して間接的に固定している。下沓12の下部構造物2への固定方法は、これらの例に限定されるものではない。
【0047】
なお、可動支承装置として用いるとき等は、下沓12の下部、例えば下部プレート17と下沓12との間に摺滑部材15を配設して、下部構造物2と支承装置10とを相対変位可能に固定しても好い。この摺滑部材15としては、例えば、PTFEの如くの低摩擦係数の表面を有するプレート等を、下沓12の下面に固定したり、又は下部構造物2や下部構造物2に固定される取付手段側の上面に固定することが可能である。
【0048】
尚、上沓11や下沓12の直接的又は間接的な固定は、着脱可能な方法とするのが好ましく、ボルト、ナット等による締結はその一例である。
【0049】
支承体13は、配設部位と配設量によって、鉛直荷重支持性能や水平荷重支持性能、並びに鉛直回転性能を調節することが出来る。ここでは、例えば、積層ゴムを使用し、弾性層13aには、天然ゴムや合成ゴム、熱可塑性エラストマや熱硬化性エラストマを用いることができ、これらの中でも天然ゴムを主成分として使用することが好ましい。具体的なエラストマ成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン−プロピレンゴム、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(臭素化、塩素化等)、アクリルゴム、ポリウレタン、シリコーンゴム、フッ化ゴム、多硫化ゴム、ハイパロン、エチレン酢酸ビニルゴム、エピクロルヒドリンゴム、エチレン−メチルアクリレート共重合体、スチレン系エラストマ、ウレタン系エラストマ、ポリオレフィン系エラストマ、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)、エポキシ化天然ゴム、trans−ポリイソプレン、ノルボルネン開環重合体(ポリノルボルネン)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ハイスチレン樹脂、イソプレンゴム等のゴムを一種単独、或いは二種以上を併用することが出来る。
【0050】
弾性層13aの間に介在される補強板13bは、例えば鉄板といった金属製の鋼板である。支承体13は、弾性層13aと補強板13bとを交互に積層し、これらを加硫接着によって相互に接着して構成される。支承体13は、鉛直荷重支持性能や水平荷重支持性能、並びに鉛直回転性能は、弾性層の面積や厚さ、数、補強板の面積や厚さ、数等によって調節することが出来る。
【0051】
なお、免震構造とするときには、支承体13を、鉛プラグ入りゴム支承としたり、高減衰ゴム支承のようにしても良い。
【0052】
[3.入力判別機構の説明]
図5に示すように、以上のような支承装置10には、入力判別機構20が設けられている。この入力判別機構20は、上沓11と下沓12との間に架設され、上沓11の外周部に一体的に固設された第一係止部21と下沓12の外周部に固設された第二係止部22とに脆弱部材20aが取り付けられている。脆弱部材20aは、上沓11や下沓12に比べて脆弱なスタッドボルト23の両端にナット24,25を螺着して構成されている。スタッドボルト23は、例えば一方の端部に第一ネジ部23aが設けられ、他方の端部に第二ネジ部23bが設けられている。第一ネジ部23aには、抜け止め部となる第一ナット24が螺合され、第二ネジ部23bには、抜け止め部となる第二ナット25が螺合される。第一ナット24及び第二ナット25は、それぞれ、座面が略球面状の球面状座面24a,25aで構成されている。
【0053】
一方、上沓11の外周面に固設された第一係止部21は、第一ボルト挿通孔21aが形成され、上側の面は、第一ボルト挿通孔21aが中心に位置するように、第一ナット24の第一球面状座面24aが圧接される略球面状の第一球面状凹部21bが形成されている。下沓12の外周面に固設された第二係止部22も、第二ボルト挿通孔22aが形成され、下側の面は、第二ボルト挿通孔22aが中心に位置するように、第二ナット25の第二球面状座面25aが圧接される略球面状の第二球面状凹部22bが形成されている。
【0054】
第一ボルト挿通孔21aと第二ボルト挿通孔22aとは、互いの中心軸線が一致するように形成されている。また、第一係止部21は、第二係止部22と対向する側に第一拡径部21cが設けられ、スタッドボルト23が中心軸線に対して傾くことが出来るように構成され、第二係止部22も、第一係止部21と対向する側に第二拡径部22cが設けられ、スタッドボルト23が中心軸線に対して傾くことが出来るように構成されている。なお、第一及び第二拡径部21c,22cを設ける代わりに、第一及び第二ボルト挿通孔21a,22aの直径をスタッドボルト23の直径より大きくして、がたつきを有するようにし、スタッドボルト23が傾くようにしても良い。
【0055】
スタッドボルト23は、少なくとも第一係止部21と第二係止部22との間に架設可能な長さを有している。
図5(B)に示すように、スタッドボルト23は、第一ボルト挿通孔21aと第二ボルト挿通孔22aとの中心軸線に対して傾けるようにして、第一係止部21の第一ボルト挿通孔21a、第二係止部22の第二ボルト挿通孔22aの何れかに挿通され、次いで、中心軸線と一致させて他方のボルト挿通孔に挿通される。この後、第一ネジ部23aには、第一ナット24が螺合され、第一ナット24の第一球面状座面24aは、第一球面状凹部21bに嵌合される。また、第二ネジ部23bには、第二ナット25が螺合され、第二ナット25の第二球面状座面25aは、第二球面状凹部22bに嵌合される。
【0056】
このような入力判別機構20は、支承装置10の外周部に、少なくとも一カ所に設ければ良い。また、複数設ける場合には、
図6に示すように、対称位置に設けることもできる。
図6の例では、入力判別機構20を六カ所に等間隔に設けている。勿論、入力判別機構20を設ける数は、特に限定されるものではない。
【0057】
このような支承装置10は、
図7に示すように、設計強度未満の水平方向の入力に対して支承体13が変位し、この際、第一ナット24の第一球面状座面24aは、第一球面状凹部21b内で摺動し、第二ナット25の第二球面状座面25aは、第二球面状凹部22b内で摺動し、スタッドボルト23の傾きを許容する。一方、設計強度を超える水平方向の入力があったときには、
図8に示すように、上沓11と下沓12の相対的変位量も大きくなり、スタッドボルト23や螺合している第一ナット24や第二ナット25が変形又は破損する。このような支承装置10にあっては、入力判別機構20が支承装置10の外周部に設けられていることから、スタッドボルト23や螺合している第一ナット24や第二ナット25の変形の程度や破損状況を見ることで、簡単に、支承装置10に対してどの程度の入力があったかを確認することが出来る。
【0058】
なお、この入力判別機構20は、上沓11と下沓12の相対的な変位量を判別するにあたって、可撓性を有しないスタッドボルト23を用いているため、水平方向の大きな変位に追従しにくい。このため、水平方向の大きな変位を許容する可動支承装置や水平力分散支承装置より水平方向の僅かな変位しか許容しない固定支承装置に好適である。
【0059】
入力判別機構20では、脆弱部材20aであるスタッドボルト23や第一ナット24や第二ナット25の強度の設定の仕方によって、その変形や破損の状況を確認して、事後的に支承装置10への入力の大きさを把握することが出来る。例えば、スタッドボルト23や螺合している第一ナット24や第二ナット25が破損しているときには、直ちに支承装置10を交換する必要があると定義し、スタッドボルト23や第一ナット24や第二ナット25が変形している程度のときは、支承装置10を直ちに交換する必要は無いと定義することが出来る。これにより、例えば、大規模な震災等があった際に、支承装置10の交換に、優先順位をつけることができ、橋梁1の復旧作業を効率的に行うことが出来る。また、この入力判別機構20では、入力に対して、脆弱部材21aとなるスタッドボルト23や第一ナット24や第二ナット25が変形や破損するだけであり、支承装置の強度部材に対して直接的に脆弱部材を設けることに比して、強度部材である上沓11や下沓12が損傷し、性能が低下することを防止することが出来る。
【0060】
なお、例えば、脆弱部材20aを構成するスタッドボルト23の長さは、少なくとも、第一係止部21と第二係止部22との間の間隔に略一致していれば良いが、更に、第一係止部21と第二係止部22との間の間隔より長くすることによって、上沓11と下沓12の変位量がより大きくなっても、スタッドボルト23や螺合している第一ナット24や第二ナット25が変形又は破損することを防止することが出来る。ここで説明する脆弱部材20a、すなわちスタッドボルト23や第一ナット24や第二ナット25は、その機械的な強度を調整することによって、どの程度の入力に対してどの程度変形又は破損するのかを設定することが出来る他、更に、スタッドボルト23の長さを可変する、例えば
図9に示すように、スタッドボルト23の長さを長くし、その長さを調整することによって、よりきめ細かな設定を行うことが出来る。スタッドボルト23を長くしたときには、第一及び第二ナット24,25と第一及び第二係止部21,22の互いの相対する面は、必ずしも球面状の凸部や凹部とする必要は無く、例えば平坦な面であっても良い。
【0061】
[4.第一係止部及び第二係止部の変形例]
上述の例(
図5参照)では、第一ナット24と第二ナット25が球面状座面24a,25aを有し、第一係止部21及び第二係止部22が球面状凹部21b,22bを有する場合を説明したが、これらは、
図10に示すように構成しても良い。
図10(A)の例では、第一係止部21の上面と第二係止部22の下面を平坦な面で形成し、それぞれに、スタッドボルト23ががたつきを有するように、スタッドボルト23の直径より大きい直径の第一ボルト挿通孔21aと第二ボルト挿通孔22aとを中心軸線を一致させて形成している。一方、第一ナット24と第二ナット25も座面が平坦に形成されている。このような構成によっても、水平方向の変位を許容する程度は小さくなるが、スタッドボルト23や螺合している第一ナット24や第二ナット25の変形又は破損の程度を確認することで、入力の大きさを事後的に確認することが出来る。更に、
図10(B)の例では、頭部26aを有するボルト26を用いるようにしている。この場合、上沓11の第一係止部21又は下沓12の第二係止部22の一方に、ボルト26のネジ部26bが螺合されるネジ穴26cを設けるようにする。更に、
図10(C)に示すように、ボルト27の頭部27aの座面を、球面状座面27bにし、下沓12の第二係止部22のボルト挿通孔27cの周囲を球面状凹部27dとしても良い。勿論、これとは逆に、上沓11の第一係止部21のボルト挿通孔27cの周囲を球面状凹部27dとしても良い。また、ボルト27のネジ部27hは、ネジ穴に螺合されても良いが、ここでは、上沓11の第一係止部21において、ナット27eが締め付けられる。更に、
図10(D)に示すように、ナット27eを球面状座面27fにし、ボルト挿通孔27cの周囲を球面状凹部27gとしても良い。
【0062】
[5.脆弱部材の変形例]
以上の例では、脆弱部材にボルトとナットを用いた例を説明したが、更に、脆弱部材は、次のように構成することも出来る。
図11(A)は、脆弱部材にリベット28を用いている。第一係止部21の第一ボルト挿通孔21a又は第二係止部22の第二ボルト挿通孔22aの何れかよりリベット28を挿通し、挿通後、カシメることで、第一係止部21と第二係止部22との間に架設することが出来る。この場合、
図10(A)に示すように、第一及び第二係止部21,22は、平坦な面で形成される。また、
図11(B)に示すように、リベット28は、頭部の座面を球面状座面28aとしても良い。この場合、
図10(D)に示すように、第一係止部21と第二係止部22の第一及び第二ボルト挿通孔27d,27cの周囲には、球面状凹部27b,27gが形成される。更に、リベット28の先端部は、第一係止部21又は第二係止部22に球面状凹部が形成されているとき、カシメられると、球面状凹部の形状に倣って、球面状座面28bを形成することも出来る。なお、
図11(B)の例において、リベット28の頭部の座面又はリベット28の先端部のカシメ後の座面の何れかが平坦な面であっても良い。更に、
図11(C)に示すように、脆弱部材を、第一係止部21と第二係止部22の長さの半分程度の結合部材29a,29bとし、一方を雄ネジ部29cとし、他方を雌ネジ部29dとしても良い。この場合、二つの結合部材29a,29bが、第一係止部21と第二係止部22との間で、締め付けられることになる。更に、
図11(D)に示すように、二つの結合部材29e,29eは、共に、雄ネジ部29fとし、ナット部材29gで互いを結合するようにしても良い。
【0063】
[6.入力判別機構を複数設けた例]
図12は、
図6に示した支承装置10の斜視図であり、入力判別機構20が等間隔に六つ設けられている。
図12では、六つの入力判別機構20に対して、「No.1」から「No.6」までの番号が付与されている。なお、ここで説明する入力判別機構20の構成は、
図5に示した構成と同様である。
【0064】
例えば、
図13に示すように、スタッドボルト23の直径をφ10mmとしたとき、「No.1」から「No.6」までの第一及び第二ボルト挿通孔21a,22aは、順に、φ11mm、φ12mm、φ13mm、φ14mm、φ15mm、φ16mmと、順に直径が大きくなっている。すなわち、入力判別機構20は、「No.1」から「No.6」になるに従って、スタッドボルト23のがたつきが大きくなっている。そして、「No.1」から「No.6」は、入力レベル「1」から「6」が対応づけられている。なお、入力レベルは、「No.1」から「No.6」になるに従って大きな入力と対応づけられている。すなわち、大きな入力に対応付いたナンバ(No.)の第一及び第二ボルト挿通孔21a,22a程、スタッドボルト23の直径より大きく、対応づけられた入力レベルも高くなり、上沓11と下沓12との相対的変位量が大きくなっても、入力判別機構20が変形又は破損しないようになっている。
【0065】
そうすると、「No.1」から「No.6」の入力判別機構20は、そのときの入力レベルに対応する入力判別機構20までが変形又は破損することになる。例えば、入力レベル「3」の入力があったときには、「No.1」から「No.3」までの入力判別機構20が破損又は変形する。従って、破損又は変形した入力判別機構20を確認することで、どの程度の入力があって、上沓11と下沓12とが相対的にどの程度変位したかを事後的に確認することが出来る。
【0066】
また、例えば、レベル「4」以上の入力があったとき、支承装置10の交換が必要になるとする。
ここで、
「レベル「4」は、支承装置の交換は必要であるが、緊急を要しない。」
「レベル「5」は、支承装置の交換は必要であるが、レベル「4」よりは交換に緊急を要する。」
「レベル「6」は、直ちに支承装置を交換する必要がある。」
と定義づける。これにより、どの入力判別機構20が破損又は変形したかを確認することで、どの支承装置を優先的に交換する必要があるのかを容易に判断することができ、支承装置の交換作業を円滑に行うことが出来る。また、レベル「3」以下の入力を確認したときには、支承装置の交換は不要であると確認することが出来る。そして、レベル「3」までの入力判別機構が損傷しただけで支承装置10の交換不要の際は、脆弱部材が損傷するだけで強度部材となる上沓11や下沓12が損傷していないので、支承装置の強度部材に脆弱部材を設けた場合と異なり、上沓11や下沓12の性能に悪影響を与えることを防止することが出来る。
【0067】
なお、入力判別機構20を複数設けるにあたって、その数は、特に限定されるものではなく、例えば、二つ、三つ、四つでも良く、更に、七つ以上であっても良い。また、各レベルに対応する入力判別機構20を、一つではなく、複数設けるようにしても良い。更に、定義する入力レベルの数も、特に限定されるものではないが、多いほど、入力レベルを細かく判別することが出来る。
【0068】
[7.入力判別機構の後付けの例]
上述のように、ボルトやナット等で構成される脆弱部材20aは、所定値以上の入力があれば、破損又は変形する。上述のように、入力判別機構20を複数設け、入力レベルを判別出来るようにしたときには、例えば、支承装置10が交換が必要な程度まで破損していなくても、脆弱部材20aが破損又は変形することになる(
図12及び
図13のレベル「3」以下)。また、既設の支承装置10に対して、新たに、入力判別機構20を設ける場合もある。そこで、
図14に示すように、入力判別機構30は、後付け出来るように構成することも出来る。
【0069】
具体的に、
図14に示すように、この入力判別機構30は、上沓11と下沓12との間に架設され、上沓11の外周部に一体的に取り付けられる第一係止部材31と下沓12の外周部に一体的に取り付けられる第二係止部材32とに脆弱部材30aが取り付けられている。脆弱部材30aは、上沓11や下沓12に比べて脆弱なスタッドボルト33の両端に第一及び第二ナット34,35を螺着して構成されている。スタッドボルト33は、上述のスタッドボルト23と同様で、例えば一方の端部に第一ネジ部が設けられ、他方の端部に第二ネジ部が設けられている。第一ネジ部には、第一ナット34が螺合され、第二ネジ部には、第二ナット35が螺合される。第一ナット34及び第二ナット35は、それぞれ、座面が略球面状の球面状座面34a,35aで構成されている。
【0070】
上沓11の外周部であって、下沓12と対向する面には、脆弱部材30aが係止される第一係止部材31が固定される。具体的に、第一係止部材31は、底板部31aと側板部31bとを有し、底板部31aに、第一ボルト挿通孔31cが形成されている。そして、この第一係止部材31は、第一固定ボルト31dを上沓11の貫通孔31eに挿通し、側板部31bのネジ穴31fに螺合することによって上沓11の下沓12と対向する面に固定される。第一係止部材31の底板部31aには、第一ボルト挿通孔31cが形成され、上側の面は、第一ボルト挿通孔31cが中心に位置するように、第一ナット34の第一球面状座面34aが圧接される略球面状の第一球面状凹部31hが形成されている。
【0071】
下沓12の外周部であって、上沓11と対向する面には、脆弱部材30aが係止される第二係止部材32が固定される。具体的に、第二係止部材32は、底板部32aと側板部32bとを有し、底板部32aに、第二ボルト挿通孔32cが形成されている。そして、この第二係止部材32は、第二固定ボルト32dを下沓12の貫通孔32eに挿通し、側板部32bのネジ穴32fに螺合することによって下沓12の上沓11と対向する面に固定される。第二係止部材32の底板部32aには、第二ボルト挿通孔32cが形成され、下側の面は、第二ボルト挿通孔32cが中心に位置するように、第二ナット35の第二球面状座面35aが圧接される略球面状の第二球面状凹部32hが形成されている。
【0072】
なお、第一及び第二係止部材は、側板部31b,32bに第一及び第二取付片36,37を外側に折曲して第一及び第二固定ボルト31d,32dで上沓11と下沓12の相対する面に固定するようにしても良い(後述の
図18参照)。
【0073】
第一ボルト挿通孔31cと第二ボルト挿通孔32cとは、互いの中心軸線が一致するように形成されている。また、第一係止部材31の底板部31aは、第二係止部材32と対向する側に第一拡径部31gが設けられ、スタッドボルト33が中心軸線に対して傾くことが出来るように構成され、第二係止部材32の底板部32aも、第一係止部材31と対向する側に第二拡径部32gが設けられ、スタッドボルト23が中心軸線に対して傾くことが出来るように構成されている。なお、第一及び第二拡径部31g,32gを設ける代わりに、第一及び第二ボルト挿通孔31c,32cの直径をスタッドボルト33の直径より大きくして、がたつきを有するようにし、スタッドボルト33が傾くようにしても良い。
【0074】
スタッドボルト33は、少なくとも第一係止部材31と第二係止部材32との間に架設可能な長さを有している。
図5(B)の場合と同様に、スタッドボルト33は、第一ボルト挿通孔31cと第二ボルト挿通孔32cとの中心軸線に対して傾けるようにして、第一ボルト挿通孔31c、第二ボルト挿通孔32cの何れかに挿通され、次いで、中心軸線と一致させて他方のボルト挿通孔に挿通される。この後、スタッドボルト33の各端部には、第一ナット34と第二ナット35が螺合され、第一ナット34の第一球面状座面34aは、第一球面状凹部31hに嵌合され、第二ナット35の第二球面状座面35aは、第二球面状凹部32hに嵌合される。なお、スタッドボルト33や第一及び第二ナット34,35の取付作業は、第一及び第二係止部材31,32の沓11,12への取付作業の前であっても後であっても良い。
【0075】
以上のような入力判別機構30によれば、支承装置10の上沓11と下沓12に後付けで取り付けることが出来、例えば、既設の支承装置10にも容易に取り付けることが出来る。また、入力レベルに応じた複数の入力判別機構30を設けている場合、支承装置10が交換不要であっても、小さい入力レベルを判別する入力判別機構30が破損又は変形していることがある。このような場合であっても、破損又は変形した入力判別機構30のみを、容易に交換することが出来る。なお、入力判別機構30の支承装置10への後付けの機構は、
図14に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0076】
[8.波状可撓性部材を用いた入力判別機構]
次に、入力判別機構の変形例として、脆弱部材として、波状可撓性部材41を用いた入力判別機構40を
図15を参照して説明する。この入力判別機構40は、固定支承装置にも適用可能ではあるが、特に、上沓11と下沓12の相対的変位量が大きくなる場合を想定した可動支承装置や水平力分散支承装置に特に用いることが出来る。
図15に示すように、この入力判別機構40は、脆弱部材として、波状可撓性部材41を用いている。この波状可撓性部材41は、波状の例えば薄い鋼板や樹脂板であって、可撓性を有している。この波状可撓性部材41は、一端部が、上沓11の外周面に、ボルト等の第一係止部材42によって固定され、他端部が、下沓12の外周面に、ボルト等の第二係止部材43によって固定される。上沓11及び下沓12の外周面には、それぞれネジ穴状の第一及び第二固定孔44,45が穿孔されている。波状可撓性部材41の各端部を挿通した第一及び第二係止部材42,43は、第一及び第二固定孔44,45が螺合され、これにより、波状可撓性部材41は、上沓11と下沓12の外周面に固定される。
【0077】
このような入力判別機構40では、設計強度未満の入力に対して、少なくとも、波状可撓性部材41が伸長し過ぎて、波状可撓性部材41の波状部分が破損することを防止することが出来る。これに対して、設計強度を超える入力があったときには、例えば、波状可撓性部材41が最大の伸長量を超える程に上沓11と下沓12とが相対的に変位し、波状可撓性部材41の波状部分が破損する。これにより、事後的に、支承装置10に対してどの程度の入力があったかを確認することが出来る。また、支承装置の強度部材に対して直接的に脆弱部材を設けることに比して、強度部材である上沓11や下沓12等の強度低下を招かず性能が低下することを防止することが出来る。更に、第一及び第二係止部材42,43の固定部分が破損しなくても、波状可撓性部材41が伸びて塑性変形した状態を確認することで、入力の大きさを確認することが出来る。また、この入力判別機構40では、波状可撓性部材41の各端部を第一及び第二係止部材42,43で上沓11や下沓12の外周面に固定するだけで良く、後付け作業や波状可撓性部材41の交換作業を簡単に行うことが出来る。
【0078】
なお、この入力判別機構40にあっても、
図6や
図12に示すように、支承装置10に複数設けるようにしても良い。この場合には、入力判別機構40毎に、入力レベルに応じて波状可撓性部材41の伸長量や長さを異なるように設定する。これにより、
図12及び
図13で説明した場合と同様に、入力判別機構40の状態を確認することで、どの程度の入力があったかを事後的に判別することが出来る。
【0079】
[9.ワイヤ状部材を用いた入力判別機構]
図16に示す入力判別機構50は、脆弱部材に、ワイヤ状部材51を用いたものである。この入力判別機構50も、固定支承装置にも適用可能ではあるが、特に、上沓11と下沓12の相対的変位量が大きい場合も許容する可動支承装置や水平力分散支承装置に用いることが出来る。この入力判別機構50で用いるワイヤ状部材51は、繊維、鋼材、樹脂等の可撓性を有する線材で形成されており、上沓11や下沓12に対して脆弱となっている。このワイヤ状部材51は、1本でも良いが、ここでは、長さの異なる複数本が結束されている。具体的に、複数本のワイヤ状部材51は、一端部が第一係止部材52によって結束され、他端部が第二係止部材53によって結束されている。第一及び第二係止部材52,53は、ワイヤ状部材51の結束部52a,53aとは反対側に、環状の第一及び第二固定部52b,53bとが形成されている。ワイヤ状部材51の一端部を結束した第一係止部材52は、第一固定部52bに第一固定ボルト52cを挿通して、上沓11の外周面の第一ネジ穴52dに固定される。ワイヤ状部材51の他端部を結束した第二係止部材53は、第二固定部53bに第二固定ボルト53cを挿通して、下沓12の外周面の第二ネジ穴53dに固定される。
【0080】
第一及び第二係止部材52,53は、ここでは、例えば長さの異なる四本のワイヤ状部材51(51a,51b,51c,51d、以下、単に「51」ともいう。)を結束部52a,53aでカシメ等により結束しており、四本のワイヤ状部材51では、四段階の入力レベルを判別することが出来る。ここでは、例えば、ワイヤ状部材51a−51dの長さと入力レベルとの関係は次のようになっている。
ワイヤ状部材51a・・・最も短い・・・入力レベル1
ワイヤ状部材51b・・・2番目に短い・・・入力レベル2
ワイヤ状部材51c・・・3番目に短い・・・入力レベル3
ワイヤ状部材51d・・・最も長い・・・入力レベル4
なお、入力レベルは、「4」が最も大きい。すなわち、ワイヤ状部材51は、長くなるほど、入力レベルが高くなり、上沓11と下沓12との相対的変位量が大きくなっても、切断しないようになっている。
【0081】
以上のような入力判別機構50では、例えば、「入力レベル1」の入力があったときには、最も短いワイヤ状部材51aのみが切断し、最も大きい「入力レベル4」があったときには、最も長いワイヤ状部材51dを含む全てのワイヤ状部材51a−51dが切断される。
【0082】
これにより、どのワイヤ状部材51が切断したかを確認することで、どの程度の入力があったかを、事後的に確認することが出来る。また、例えば、「「入力レベル3」では、支承装置の交換は必要であるが、緊急を要しない。」、「「入力レベル4」では、支承装置の交換が直ちに必要である。」といったように、入力レベルとワイヤ状部材51の長さとを関連付けて定義付けることで、どの支承装置を優先的に交換する必要があるのかを容易に判断することが出来る。また、レベル「2」以下の入力を確認したときには、支承装置の交換は不要であると確認することが出来る。また、この入力判別機構50では、第一及び第二係止部材52,53で上沓11や下沓12の外周面に固定するだけで良く、後付け作業やワイヤ状部材51が結束された第一及び第二係止部材52,53の交換作業を簡単に行うことが出来る。また、所定値以上の入力があったときには、ワイヤ状部材51a−51dが切断するだけなので、支承装置の強度部材に対して直接的に脆弱部材を設けることに比して、強度部材となる上沓11や下沓12等の強度低下を招かず、その機能が低下することを防止することが出来る。
【0083】
なお、ワイヤ状部材51の本数は、特に限定されるものではなく、一本でも、二本、三本、更に、五本以上であっても良い。ただし、ワイヤ状部材51は、本数が多いほど、入力レベルをより細かく判別することが出来る。
【0084】
[10.ワイヤ状部材を入力判別機構の変形例]
図17に示す入力判別機構60は、脆弱部材に、ワイヤ状部材61を複数本、ここでは四本用いている。ワイヤ状部材61a,61b,61c,61d(以下、単に「61」とも言う。)は、繊維、鋼材、樹脂等の可撓性を有する線材で同じ長さに形成されているが、それぞれ伸び率が異なる。これらのワイヤ状部材61は、一端部が第一係止部材62に係止され、この第一係止部材62は、例えば上沓11の下面の第一ネジ穴62bに第一固定ボルト62aが螺合されることによって固定される。また、ワイヤ状部材61の他端部は、第二係止部材63に係止され、この第二係止部材63は、例えば下沓12の下面の第二ネジ穴63bに第二固定ボルト63aが螺合されることによって固定される。なお、第一及び第二係止部材62,63は、例えば上沓11や下沓12の外周面に固定するようにしても良い。また、ワイヤ状部材61の第一及び第二係止部材62,63への係止方法は、周知の方法で実現可能であり、例えばワイヤ状部材61の端部に抜け止めを設けて、第一及び第二係止部材62,63の挿通孔にワイヤ状部材61を係止するようにすれば良い。
【0085】
例えば、四本のワイヤ状部材61a,61b,61c,61dは、ワイヤ状部材の長さを適宜に設定したとき、以下のような許容伸び率を有する。
ワイヤ状部材61a・・・伸び率101%・・・入力レベル1
ワイヤ状部材61b・・・伸び率105%・・・入力レベル2
ワイヤ状部材61c・・・伸び率110%・・・入力レベル3
ワイヤ状部材61d・・・伸び率115%・・・入力レベル4
なお、入力レベルは、「4」が最も大きい。すなわち、ワイヤ状部材61は、許容伸び率が高くなるほど、入力レベルが高くなり、上沓11と下沓12との相対的変位量が大きくなっても、切断しないようになっている。
【0086】
以上のような入力判別機構60では、例えば、「入力レベル1」の入力があったときには、最も伸び率の小さいワイヤ状部材61aのみが切断し、最も大きい「入力レベル4」があったときには、伸び率の高いワイヤ状部材61dを含む全てのワイヤ状部材61a−61dが切断される。これにより、どのワイヤ状部材61が切断したかを確認することで、どの程度の入力があったかを、事後的に確認することが出来る。また、上述のように、「「入力レベル3」では、支承装置の交換は必要であるが、緊急を要しない。」、「「入力レベル4」では、支承装置の交換が直ちに必要である。」といったように、入力レベルとワイヤ状部材61の伸び率とを関連付けて定義付けることで、どの支承装置を優先的に交換する必要があるのかを容易に判断することが出来る。また、レベル「2」以下の入力を確認したときには、支承装置の交換は不要であると確認することが出来る。更に、この入力判別機構60では、第一及び第二係止部材62,63で沓11,12の外周面に固定するだけで良く、後付け作業やワイヤ状部材61を係止した第一及び第二係止部材62,63の交換作業を簡単に行うことが出来る。また、所定値以上の入力があったときには、ワイヤ状部材61a−61dが切断するだけなので、支承装置の強度部材に対して直接的に脆弱部材を設けることに比して、強度部材となる上沓11や下沓12等の強度低下を招かず、その機能が低下することを防止することが出来る。
【0087】
なお、ワイヤ状部材61の本数は、特に限定されるものではなく、一本でも、二本、三本、更に、五本以上であっても良い。ただし、ワイヤ状部材51は、本数が多いほど、入力レベルをより細かく判別することが出来る。
【0088】
[11.上部構造物と下部構造物との間に架設された入力判別機構(
図14の変形例)]
次に、
図14に示した入力判別機構30を、支承装置10に直接的に取り付けるのではなく、支承装置10の近傍に取り付ける場合を、
図18を参照して説明する。この入力判別機構30は、支承装置10と隣接した位置に設けられるものであり、直接的には、上部構造物4と下部構造物2との相対的な変位量を判別し、間接的に、支承装置10の上沓11と下沓12との相対的な変位量を判別することが出来るようにしたものである。
【0089】
具体的に、
図18に示すように、この入力判別機構30は、上部構造物4と下部構造物2との間に架設され、上部構造物4に一体的に取り付けられる第一係止部材31と下部構造物2に一体的に取り付けられる第二係止部材32とに脆弱部材30aが取り付けられている。脆弱部材30aは、上部構造物4や下部構造物2、更には上沓11や下沓12に比べて脆弱なスタッドボルト33の両端に第一及び第二ナット34,35を螺着して構成される。スタッドボルト33は、上述のスタッドボルト23と同様で、例えば一方の端部に第一ネジ部が設けられ、他方の端部に第二ネジ部が設けられている。第一ネジ部には、第一ナット34が螺合され、第二ネジ部には、第二ナット35が螺合される。第一ナット34及び第二ナット35は、それぞれ、座面が略球面状の球面状座面34a,35aで構成されている。
【0090】
上部構造物4の下部構造物2と対向する面には、脆弱部材30aが係止される第一係止部材31が固定される。具体的に、第一係止部材31は、底板部31aと側板部31bとを有し、底板部31aに、第一ボルト挿通孔31cが形成されている。そして、この第一係止部材31は、側板部31bに上部構造物4に取り付けるための第一取付片36が外側に折曲されて設けられている。第一取付片36は、第一貫通孔36aを有し、第一固定ボルト31dを、第一貫通孔36aに挿通し、上部構造物4の第一固定孔36bに螺合することによって上部構造物4の下部構造物2と対向する面に固定される。第一係止部材31の底板部31aには、第一ボルト挿通孔31cが形成され、上側の面は、第一ボルト挿通孔31cが中心に位置するように、第一ナット34の第一球面状座面34aが圧接される略球面状の第一球面状凹部31hが形成されている。
【0091】
下部構造物2の上部構造物4と対向する面には、脆弱部材30aが係止される第二係止部材32が固定される。具体的に、第二係止部材32は、底板部32aと側板部32bとを有し、底板部32aに、第二ボルト挿通孔32cが形成されている。そして、この第二係止部材32は、側板部32bに下部構造物2に取り付けるための第二取付片37が外側に折曲されて設けられている。第二取付片37は、第二貫通孔37aを有し、第二固定ボルト32dを、第二貫通孔37aに挿通し、下部構造物2の第二固定孔37bに螺合することによって下部構造物2の上部構造物4と対向する面に固定される。第二係止部材32の底板部32aには、第二ボルト挿通孔32cが形成され、下側の面は、第二ボルト挿通孔32cが中心に位置するように、第二ナット35の第二球面状座面35aが圧接される略球面状の第二球面状凹部32hが形成されている。
【0092】
そして、第一ボルト挿通孔31cと第二ボルト挿通孔32cとは、互いの中心軸線が一致するように形成されている。また、第一係止部材31の底板部31aは、第二係止部材32と対向する側に第一拡径部31gが設けられ、スタッドボルト33が中心軸線に対して傾くことが出来るように構成され、第二係止部材32の底板部32aも、第一係止部材31と対向する側に第二拡径部32gが設けられ、スタッドボルト23が中心軸線に対して傾くことが出来るように構成されている。なお、第一及び第二拡径部31g,32gを設ける代わりに、第一及び第二ボルト挿通孔31c,32cの直径をスタッドボルト33の直径より大きくして、がたつきを有するようにし、スタッドボルト33が傾くようにしても良い。
【0093】
以上のような入力判別機構30によれば、支承装置10の近傍に、上部構造物4と下部構造物2との間に後付けで取り付けることが出来、例えば、既設の支承装置10の近傍にも容易に取り付けることが出来る。また、入力レベルに応じた複数の入力判別機構30を設けている場合、支承装置10が交換不要であっても、小さい入力レベルを判別する入力判別機構30が破損又は変形していることがある。このような場合であっても、破損又は変形した入力判別機構30のみを、容易に交換することが出来る。なお、入力判別機構30の上部構造物4と下部構造物2への後付けの機構は、
図18に限定されるものではなく、周知の方法で適宜変更可能である。
【0094】
[12.上部構造物と下部構造物との間に架設された入力判別機構の変形例1(
図15の変形例)]
次に、
図15に示した入力判別機構40を、支承装置10に直接的に取り付けるのではなく、支承装置10の近傍の上部構造物4と下部構造物2との間に取り付ける例を、
図19を参照して説明する。具体的に、
図19に示すように、この入力判別機構40は、
図15の場合と同様に、脆弱部材として、波状可撓性部材41を用いている。この波状可撓性部材41は、一端部が、上部構造物4に、ボルト等の第一係止部材42によって固定され、他端部が、下部構造物2に、ボルト等の第二係止部材43によって固定される。上部構造物4と下部構造物2の互いに相対する面には、それぞれネジ穴状の第一及び第二固定孔44,45が穿孔されている。波状可撓性部材41の各端部を挿通した第一及び第二係止部材42,43は、上部及び下部プレート16,17の第一及び第二貫通孔46,47を通って第一及び第二固定孔44,45に螺合され、これにより、波状可撓性部材41は、上部構造物4と下部構造物2の互いに相対する面に固定される。
【0095】
以上のような入力判別機構40によれば、支承装置10の近傍に、上部構造物4と下部構造物2との間に後付けで取り付けることが出来、例えば、既設の支承装置10の近傍にも容易に取り付けることが出来る。また、この入力判別機構40では、設計強度未満の入力に対して、少なくとも、波状可撓性部材41が伸長し過ぎて、波状可撓性部材41の波状部分が破損することを防止することが出来る。これに対して、設計強度を超える入力があったときには、例えば、波状可撓性部材41が最大の伸長量を超える程に上部構造物4と下部構造物2とが相対的に変位し、波状可撓性部材41の波状部分が破損する。これにより、事後的に、直接的には、上部構造物4と下部構造物2との相対的な変位量を判別し、間接的に、支承装置10の上沓11と下沓12との相対的な変位量を判別することが出来る。なお、この入力判別機構40にあっても、
図6や
図12に示すように、支承装置10の近傍に入力レベルに応じて伸長量や長さの異なる波状可撓性部材41を複数設けるようにし、どの程度の入力があったかを段階的に判別することが出来るようにしても良い。
【0096】
[13.上部構造物と下部構造物との間に架設された入力判別機構の変形例2(
図16の変形例)]
次に、
図16に示した入力判別機構50を、支承装置10に直接的に取り付けるのではなく、支承装置10の近傍の上部構造物4と下部構造物2との間に取り付ける例を、
図20を参照して説明する。具体的に、
図20に示すように、この入力判別機構50は、脆弱部材に、ワイヤ状部材51を用いている。このワイヤ状部材51は、1本でも良いが、ここでは、長さの異なる複数本が結束されている。具体的に、複数本のワイヤ状部材51は、一端部が第一係止部材52によって結束され、他端部が第二係止部材53によって結束されている。第一及び第二係止部材52,53は、ワイヤ状部材51の結束部52a,53aとは反対側に、環状の第一及び第二固定部52b,53bとが形成されている。第一及び第二係止部材52,53は、ここでは、例えば長さの異なる四本のワイヤ状部材51(51a,51b,51c,51d、以下、単に「51」ともいう。)を結束部52a,53aでカシメ等により結束しており、四本のワイヤ状部材51で四段階の入力レベルを判別することが出来る。
【0097】
ワイヤ状部材51の一端部を結束した第一係止部材52は、第一固定部52bに第一固定ボルト52cを挿通して、上部構造物4に取り付けるための第一取付具54の第一ネジ穴54aに螺合される。第一取付具54は、全体が略L字状をなし、一片に第一ネジ穴54aが形成されており、他片に第一挿通孔54bが形成されている。ワイヤ状部材51の他端部を結束した第二係止部材53は、第二固定部53bに第二固定ボルト53cを挿通して、下部構造物2に取り付けるための第二取付具55の第二ネジ穴55aに螺合される。第二取付具55は、全体が略L字状をなし、一片に第二ネジ穴55aが形成されており、他片に第二挿通孔55bが形成されている。
【0098】
ボルト等の第一及び第二固定部材56,57は、第一及び第二取付具54,55の第一及び第二挿通孔54b,55bに挿通され、更に、上部及び下部プレート16,17の第一及び第二貫通孔58,59を通って上部構造物4と下部構造物2の相対する面に形成された第一及び第二ネジ穴52d,53dに螺合され固定される。
【0099】
以上のような入力判別機構50によれば、支承装置10の近傍に、上部構造物4と下部構造物2との間に後付けで取り付けることが出来、例えば、既設の支承装置10の近傍にも容易に取り付けることが出来る。また、どのワイヤ状部材51が切断したかを確認することで、直接的には、上部構造物4と下部構造物2との相対的な変位量を判別し、間接的に、支承装置10の上沓11と下沓12との相対的な変位量を判別することが出来る。なお、ワイヤ状部材51の本数は、特に限定されるものではなく、一本でも、二本、三本、更に、五本以上であっても良い。ただし、ワイヤ状部材51は、本数が多いほど、入力レベルをより細かく判別することが出来る。
【0100】
[14.上部構造物と下部構造物との間に架設された入力判別機構の変形例3(
図17の変形例)]
次に、
図17に示した入力判別機構60を、支承装置10に直接的に取り付けるのではなく、支承装置10の近傍の上部構造物4と下部構造物2との間に取り付ける例を、
図21を参照して説明する。具体的に、
図21に示すように、この入力判別機構60は、脆弱部材に、伸び率が異なる同じ長さのワイヤ状部材61a,61b,61c,61d(以下、単に「61」とも言う。)が用いられている。これらのワイヤ状部材61は、一端部が第一係止部材62に係止され、この第一係止部材62は、例えば上部構造物4の下部構造物2と相対する面の第一ネジ穴62bに上部プレート16の第一貫通孔64を通って第一固定ボルト62aが螺合されることによって固定される。また、ワイヤ状部材61の他端部は、第二係止部材63に係止され、この第二係止部材63は、例えば下部構造物2の上部構造物4と相対する面の第二ネジ穴63bに下部プレート17の第二貫通孔65を通って第二固定ボルト63aが螺合されることによって固定される。
【0101】
以上のような入力判別機構60によれば、支承装置10の近傍に、上部構造物4と下部構造物2との間に後付けで取り付けることが出来、例えば、既設の支承装置10の近傍にも容易に取り付けることが出来る。また、どのワイヤ状部材61が切断したかを確認することで、直接的には、上部構造物4と下部構造物2との相対的な変位量を判別し、間接的に、支承装置10の上沓11と下沓12との相対的な変位量を判別することが出来る。なお、ワイヤ状部材61の本数は、特に限定されるものではなく、一本でも、二本、三本、更に、五本以上であっても良い。ただし、ワイヤ状部材51は、本数が多いほど、入力レベルをより細かく判別することが出来る。
【0102】
[15.可動支承装置(鋼製支承)と組み合わせた入力判別機構]
支承装置には、支承装置10のようなゴム支承の他に、鋼製支承がある。
図22は、一般的な、固定支承装置として用いられるピン支承装置71である。このピン支承装置71は、上沓72と下沓73を円柱状のピン74で連結した構造で、ピン74を中心に回転可能となっている。以上説明したような入力判別機構20,30,40,50,60は、ピン支承装置71の近傍であって、上沓72が固定される上部構造物4と下沓73が固定される下部構造物2との間に配設される。例えば、ピン支承装置71は、一般に固定支承に分類されることから、
図18に示した入力判別機構30等が近傍に設けられる。これにより、例えば、上部構造物4がどの程度回転変形したのかを事後的に確認することが出来る。
【0103】
また、鋼製支承には、
図23に示すように、可動支承装置として用いられるローラー支承装置76がある。このローラー支承装置76は、ピン支承装置71の下沓73と底板77との間に設けられたローラー78の転がりにより水平変位に追従出来るようにしている。以上説明したような入力判別機構20,30,40,50,60は、ローラー支承装置76の近傍であって、上沓72が固定される上部構造物4と底板77が固定される下部構造物2との間に配設される。可動支承装置は、大変位量に対応する必要があり、例えば、ローラー支承装置76は、
図19−
図20に示した入力判別機構40,50,60等が近傍に設けられる。これにより、例えば、上部構造物4がどの程水平変位したのかを事後的に確認することが出来る。
【0104】
その他、既設の鋼製支承としては、
図24に示すように、固定支承装置として用いられるピボット支承装置81もある。このピボット支承装置81は、上沓82に、球面状の凹面部83を設け、下沓84に球面状の凸面部85を設け、凹面部83と凸面部85とを組み合わせて全方向に回転するように構成されている。更に、ピボット支承装置81には、可動支承装置として用いられるように、ローラー支承装置76と組み合わせたものもある。このようなピボット支承装置の近傍にも、以上説明したような入力判別機構20,30,40,50,60を設けることが出来る。なお、ピボット支承装置81は、凹面部83を下沓84に設け、凸面部85を上沓82に設けても良い。これにより、例えば、上部構造物4がどの程度回転変形したのかを事後的に確認することが出来る。
【0105】
[16.建物の上部構造物と下部構造物との間に架設された入力判別機構]
従来の上部構造物となるビル建物91は、建物基礎等の下部構造物92との間に、上述した支承装置10と略同様の免震装置93が配設される。以上説明したような入力判別機構20,30,40,50,60は、ビル建物91と下部構造物92との間の空間部の免震装置93の近傍に設けることが出来る。また、大変位量に対応する入力判別機構40,50,60は、ビル建物91の側壁と下部構造物92の表面との間に設けるようにしても良い。この場合、大変位量に対応する入力判別機構40,50,60は、地表に露出しているので、確認作業を容易に行うことが出来る。
【0106】
[17.その他の変形例]
以上の説明で用いた支承装置10は、上下反転し、下沓を上沓として、上沓を下沓として用いるようにしても良い。また、支承方向を水平方向としたり、鉛直方向からずれた方向に設定することも可能であり、本発明の入力判別機構の取付状態も、支承装置10の向きに応じて適宜変更される。更に、本発明の入力判別機構を設ける位置は、支承装置の近傍に限定されるものではなく、離れた位置であっても良い。例えば、本発明の入力判別機構は、
図1の下部構造物2としての橋台と上部構造体2としての橋桁の端部に設けられる桁遊間2aや桁遊間2aに配設される間詰め材やダンパー2bの近傍に設けるようにしても良い。また、
図18−
図24を用いて説明した上部構造物4と下部構造物2との間に架設される20,30,40,50,60は、上部構造物4と下部構造物2に後付けされる場合だけでなく、上部構造物4に第一係止部材が一体的に固設されていても良く、下部構造物に第二係止部材が一体的に固設されていても良い。