(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5798846
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 12/89 20110101AFI20151001BHJP
H01R 12/79 20110101ALI20151001BHJP
【FI】
H01R12/89
H01R12/79
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-199308(P2011-199308)
(22)【出願日】2011年9月13日
(65)【公開番号】特開2013-62116(P2013-62116A)
(43)【公開日】2013年4月4日
【審査請求日】2014年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100060690
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 秀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100108017
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 貞男
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 直樹
【審査官】
竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−093526(JP,A)
【文献】
特開2001−135379(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0118861(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/70 − 12/91
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有するフラット回路体と、該フラット回路体を保持したハウジングと、を備えたコネクタにおいて、
前記ハウジングが、前記フラット回路体を表面に固定する取付板と、前記取付板における前記フラット回路体と反対側に重ねられるとともに前記取付板に対してスライド可能に設けられたスライド部材と、を有し、
相手コネクタに嵌合される際、前記取付板及び前記フラット回路体の一端部が前記相手コネクタの雌端子内に挿入されて該雌端子内における最も奥の位置に位置付けられた後に、前記スライド部材の一端部が前記雌端子内に押し込まれることによって、前記フラット回路体の導体が前記雌端子に電気接続され、
前記ハウジングが、前記取付板及び前記フラット回路体を前記スライド部材との間に挟むホルダをさらに有し、
前記スライド部材と前記ホルダとを固定する固定手段が設けられている
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記スライド部材の一端部にテーパーが設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記取付板の一端部を前記スライド部材の一端部よりも相手コネクタ側に位置させて前記取付板と前記スライド部材とを係止させる係止手段が設けられている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルプリント基板やフレキシブルフラットケーブルなどの可撓性を有するフラット回路体と、該フラット回路体を保持したハウジングと、を備えたコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図12は従来のコネクタの説明図であり、(a)は側面図、(b)は底面図である。
図13は
図12に示されたコネクタが嵌合される相手コネクタの説明図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図14は
図12に示されたコネクタが相手コネクタに嵌合される様子を説明する説明図であり、(a)は嵌合途中を示す図、(b)は嵌合した状態を示す図である。
【0003】
図12に示すように、上記コネクタ201は、フレキシブルプリント基板206と、該フレキシブルプリント基板206を保持したハウジング210と、を備えている。
【0004】
上記フレキシブルプリント基板206は、絶縁体であるベースフィルム260上に導体261が箔状に形成され、さらにその上に絶縁体であるカバーレイ262が貼り付けられた周知のフレキシブルプリント基板である。また、フレキシブルプリント基板206の一端部は、相手コネクタ202と電気接続される部分であるので、導体261が、カバーレイ262によって覆われることなく露出している。
【0005】
上記ハウジング210は、フレキシブルプリント基板206を表面に固定する板部240、及び、相手コネクタ202に設けられたロック突起284に係止するロックアーム246、が設けられた取付板204と、フレキシブルプリント基板206を板部240との間に挟むホルダ205と、を有している。
【0006】
図13に示すように、上記相手コネクタ202は、フレキシブルプリント基板206の導体261と電気接続される雌端子207と、雌端子207を収容したハウジング208と、を備えている。雌端子207は、略U字状に形成されたFPC接続部270と、図示しないプリント基板に電気接続される基板接続部272と、を有している。ハウジング208は、FPC接続部270を内側に位置付けたハウジング本体280と、ハウジング本体280の外表面に設けられたロック突起284と、を有している。
【0007】
続いて、上記コネクタ201が上記相手コネクタ202に嵌合される際の様子について説明する。コネクタ201は、
図14(a)に示すように、フレキシブルプリント基板206の長手方向に沿って相手コネクタ202に近付けられ、板部240及びフレキシブルプリント基板206の一端部がFPC接続部270の内側に挿入され、さらに奥側に押し込まれることで、
図14(b)に示すように相手コネクタ202に嵌合される。また、コネクタ201は、導体261が、嵌合初期段階から嵌合最終段階まで一定の接触加重でFPC接続部270に摺接しながら相手コネクタ202に嵌合される。
【0008】
上述したコネクタ201においては、フレキシブルプリント基板206の導体261と雌端子207のFPC接続部270との接触荷重が、嵌合初期段階から嵌合最終段階まで一定であったことから次のような問題があった。すなわち、接触荷重が低い場合には、導体261とFPC接続部270との接触面に生じる接触抵抗が増加する可能性があるという問題があった。また、接触荷重が高い場合には、導体261がFPC接続部270に摺接する際、これら双方に磨耗が発生する可能性があるという問題があった。
【0009】
また、特許文献1には、上述した問題を解決することが可能なコネクタが開示されている。すなわち、特許文献1には、フレキシブルプリント基板の一端部が挿入されるハウジングと、前記ハウジング内に収容され、前記フレキシブルプリント基板の一端部をクランプするコンタクトと、前記コンタクトを開放状態またはクランプ状態に切り替え操作するアクチュエータと、を備えたコネクタが開示されている。このコネクタにおいては、フレキシブルプリント基板の一端部がコンタクトの内側に挿入された後にアクチュエータが回転されることによって、コンタクトがクランプ状態に切り替えられて、フレキシブルプリント基板の導体とコンタクトとが電気接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−176427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に開示されたコネクタにおいては、上述した接触荷重不足による接触抵抗増加の問題、及び、磨耗の問題は解決できるものの、以下に示す他の問題があった。すなわち、
図14に示されたコネクタ201は、相手コネクタ202に嵌合される際、フレキシブルプリント基板206の導体261が雌端子207のFPC接続部270に摺接する構成であったが、特許文献1に開示されたコネクタは、フレキシブルプリント基板の導体がコンタクトに摺接しないので、フレキシブルプリント基板またはコンタクトに異物が付着している場合、この異物が除去されないままフレキシブルプリント基板がコンタクトにクランプされてしまうという問題があった。なお、前記異物は、フレキシブルプリント基板とコンタクトとの接触抵抗増加の要因になり好ましくない。さらに、特許文献1に開示されたコネクタにおいては、アクチュエータを設けることでコネクタが大型化し、重量が増加するという問題があった。また、前記アクチュエータは、狭い場所での操作が困難であるという問題があった。
【0012】
したがって、本発明は、耐磨耗性が良好であり、接触抵抗値を低く抑えることができるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために請求項1に記載された発明は、可撓性を有するフラット回路体と、該フラット回路体を保持したハウジングと、を備えたコネクタにおいて、前記ハウジングが、前記フラット回路体を表面に固定する取付板と、前記取付板における前記フラット回路体と反対側に重ねられるとともに前記取付板に対してスライド可能に設けられたスライド部材と、を有し、相手コネクタに嵌合される際、前記取付板及び前記フラット回路体の一端部が前記相手コネクタの雌端子内に挿入されて該雌端子内における最も奥の位置に位置付けられた後に、前記スライド部材の一端部が前記雌端子内に押し込まれることによって、前記フラット回路体の導体が前記雌端子に電気接続され
、前記ハウジングが、前記取付板及び前記フラット回路体を前記スライド部材との間に挟むホルダをさらに有し、前記スライド部材と前記ホルダとを固定する固定手段が設けられていることを特徴とするコネクタである。
【0015】
請求項
2に記載された発明は、請求項
1に記載された発明において、前記スライド部材の一端部にテーパーが設けられていることを特徴とするものである。
【0016】
請求項
3に記載された発明は、請求項
1又は2に記載された発明において、前記取付板の一端部を前記スライド部材の一端部よりも相手コネクタ側に位置させて前記取付板と前記スライド部材とを係止させる係止手段が設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載された発明によれば、前記ハウジングが、前記フラット回路体を表面に固定する取付板と、前記取付板における前記フラット回路体と反対側に重ねられるとともに前記取付板に対してスライド可能に設けられたスライド部材と、を有し、相手コネクタに嵌合される際、前記取付板及び前記フラット回路体の一端部が前記相手コネクタの雌端子内に挿入されて該雌端子内における最も奥の位置に位置付けられた後に、前記スライド部材の一端部が前記雌端子内に押し込まれることによって、前記フラット回路体の導体が前記雌端子に電気接続されるので、取付板及びフラット回路体の一端部が相手コネクタの雌端子内における最も奥の位置に位置付けられるまでは、前記フラット回路体の一端部が低い接触荷重にて前記雌端子に摺接し、その後、スライド部材の一端部が前記雌端子内に押し込まれることによって、前記フラット回路体の一端部と前記雌端子との接触加重が増加することとなる。よって、フラット回路体の導体及び相手コネクタの雌端子に付着した異物を除去することができるとともにこれら導体及び雌端子の磨耗を抑制でき、相手コネクタとの嵌合最終段階では前記導体と前記雌端子との接触荷重を十分に確保することができる。したがって、耐磨耗性が良好であり、接触抵抗値を低く抑えることができるコネクタを提供することができる。
【0018】
また、請求項
1に記載された発明によれば、前記ハウジングが、前記取付板及び前記フラット回路体を前記スライド部材との間に挟むホルダをさらに有し、前記スライド部材と前記ホルダとを固定する固定手段が設けられているので、フラット回路体が取付板から脱落することを確実に防止でき、かつ、容易に組み立てることができるコネクタを提供することができる。
【0019】
請求項
2に記載された発明によれば、前記スライド部材の一端部にテーパーが設けられ
ているので、スライド部材の一端部を低挿入力にて雌端子内に押し込むことができるコネ
クタを提供することができる。
【0020】
請求項
3に記載された発明によれば、前記取付板の一端部を前記スライド部材の一端部
よりも相手コネクタ側に位置させて前記取付板と前記スライド部材とを係止させる係止手
段が設けられているので、取付板及びフラット回路体の一端部が相手コネクタの雌端子内
における最も奥の位置に位置付けられた状態で、スライド部材を相手コネクタ側にさらに
押圧することによって、取付板とスライド部材との係止を解除することができ、そのまま
スライド部材の一端部を雌端子内に押し込むことができる。したがって、相手コネクタへ
の一連の嵌合作業をワンアクションにて行うことができるコネクタを提供することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態にかかるコネクタを示す断面図であり、該コネクタが相手コネクタに近付けられた状態を示す図である。
【
図2】
図1に示されたコネクタにおける取付板及びフレキシブルプリント基板の一端部が、相手コネクタの雌端子内に挿入されて該雌端子内における最も奥の位置に位置付けられた状態を示す図である。
【
図3】
図2に示されたコネクタにおけるスライド部材の一端部が雌端子内に押し込まれることによって、フレキシブルプリント基板の導体が雌端子に電気接続された状態を示す図である。
【
図4】
図1に示された取付板の説明図であり、(a)は側面図、(b)は底面図である。
【
図5】
図1に示されたスライド部材の説明図であり、(a)は側面図、(b)は底面図である。
【
図6】
図1に示されたフレキシブルプリント基板の説明図であり、(a)は側面図、(b)は底面図である。
【
図7】
図1に示されたホルダの説明図であり、(a)は側面図、(b)は底面図である。
【
図8】
図1に示された相手コネクタの説明図であり、(a)は平面図、(b)は(a)中のA−A線に沿った断面図である。
【
図9】
図5に示されたスライド部材に
図4に示された取付板が組み付けられた状態を示す図であり、(a)は側面図、(b)は底面図である。
【
図10】
図9に示された取付板に
図6に示されたフレキシブルプリント基板が固定された状態を示す図であり、(a)は側面図、(b)は底面図である。
【
図11】
図10に示されたスライド部材に
図7に示されたホルダが組み付けられた状態を示す図であり、(a)は側面図、(b)は底面図である。
【
図12】従来のコネクタの説明図であり、(a)は側面図、(b)は底面図である。
【
図13】
図12に示されたコネクタが嵌合される相手コネクタの説明図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【
図14】
図12に示されたコネクタが相手コネクタに嵌合される様子を説明する説明図であり、(a)は嵌合途中を示す図、(b)は嵌合した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施形態にかかる「コネクタ」を
図1〜11を用いて説明する。
【0023】
図1に示すように、上記コネクタ1は、「可撓性を有するフラット回路体」であるフレキシブルプリント基板6と、該フレキシブルプリント基板6を保持したハウジング10と、を備えている。また、
図1中の符号2は、コネクタ1が嵌合される相手コネクタを表している。
【0024】
図6に示すように、上記フレキシブルプリント基板6は、絶縁体であるベースフィルム60上に導体61が箔状に形成され、さらにその上に絶縁体であるカバーレイ62が貼り付けられた周知のフレキシブルプリント基板である。また、フレキシブルプリント基板6の長手方向の一端部は、相手コネクタ2と電気接続される部分であるので、導体61が、カバーレイ62によって覆われることなく露出している。また、
図6(b)に示すように、フレキシブルプリント基板6の幅方向の両端部には、後述する取付板3に固定するための貫通孔63が設けられている。
【0025】
図8に示すように、上記相手コネクタ2は、フレキシブルプリント基板6の導体61と電気接続される複数の雌端子7と、複数の雌端子7を収容した合成樹脂製のハウジング8と、を備えている。前記雌端子7は、金属板から型抜きされることにより得られるものであり、略U字状に形成されたFPC接続部70と、プリント基板等に電気接続される第2接続部72と、を有している。前記FPC接続部70は、内側の空間にフレキシブルプリント基板6の一端部を位置付ける。また、FPC接続部70の先端部には、フレキシブルプリント基板6の導体61と接触する突起状の接触部71が設けられている。前記ハウジング8は、FPC接続部70を内側に位置付けたハウジング本体80と、ハウジング本体80の外表面に設けられたロック突起84と、を有している。前記ハウジング本体80は、筒状の周壁81と、奥壁82と、で構成されている。また、奥壁82には、FPC接続部70の後端部を位置付けるとともに第2接続部72をハウジング本体80外に導出する貫通孔83が複数設けられている。また、フレキシブルプリント基板6の一端部は、奥壁82と反対側に位置する開口部からハウジング本体80内に挿入されて、FPC接続部70の内側に挿入される。
【0026】
上記ハウジング10は、フレキシブルプリント基板6を表面に固定する取付板3と、取付板3におけるフレキシブルプリント基板6と反対側に重ねられるとともに取付板3に対してスライド可能に設けられたスライド部材4と、取付板3及びフレキシブルプリント基板6をスライド部材4との間に挟むホルダ5と、を有している。
【0027】
図4に示すように、上記取付板3は、絶縁性の合成樹脂で構成されており、平板状の板部30と、板部30の一端部から立設した立設部31と、板部30の他端部側から円柱状に立設した一対の円柱部32と、板部30の両側面に設けられた係止突起33と、で構成されている。また、フレキシブルプリント基板6は、板部30に重ねられるとともに貫通孔63に円柱部32が挿入されることによって取付板3に固定される。また、フレキシブルプリント基板6は、ベースフィルム60が板部30に接触する向きで取付板3に固定される。また、この状態で、立設部31は、フレキシブルプリント基板6の一端部に沿う(
図10を参照。)。この取付板3は、板部30の一端部及び立設部31が、フレキシブルプリント基板6の一端部とともに相手コネクタ2のFPC接続部70内に挿入される(
図2,3を参照。)。また、係止突起33は、スライド部材4に係止する部位である。
【0028】
図5に示すように、上記スライド部材4は、絶縁性の合成樹脂で構成されており、取付板3の板部30に重ねられる第2板部40と、第2板部40の他端部から立設した第2立設部41と、第2板部40の両側部から立設し、互いの間に板部30及びフレキシブルプリント基板6を位置付ける一対の側壁42と、各側壁42の外表面に設けられ、ホルダ5と係合される凸部43と、各側壁42の内表面に設けられた係止受け部44と、第2板部40の外表面に連なったロックアーム46と、で構成されている。
【0029】
上記第2板部40は、その一端部45が板部30の一端部側に位置付けられ、他端部が板部30の他端部側に位置付けられる。また、第2板部40の一端部45は、相手コネクタ2のFPC接続部70内に挿入される部位であり(
図3を参照。)、他端部よりも厚みが薄く形成されている。また、第2板部40の一端部45には、FPC接続部70内に挿入される際の挿入力を小さくするために、テーパー45aが設けられている。
【0030】
上記係止受け部44は、
図9(b)に示すように、互いの間に係止突起33を位置付けることが可能な第1突起44a及び第2突起44bで構成されている。これら第1突起44aと第2突起44bとの間に係止突起33が位置付けられることにより、取付板3とスライド部材4とが係止されて、取付板3の一端部がスライド部材4の一端部よりも相手コネクタ2側に位置した状態が維持される。また、
図2に示すように、取付板3の立設部31が相手コネクタ2の奥壁82に突き当たった状態で、スライド部材4を相手コネクタ2側にさらに押圧することによって、取付板3とスライド部材4との係止を解除することができ、すなわち係止突起33を第1突起44aと第2突起44bとの間から第2立設部41側に離脱させることができ、そのまま第2板部40の一端部45をFPC接続部70内に押し込むことができる。
【0031】
このように、コネクタ1には、取付板3の一端部をスライド部材4の一端部よりも相手コネクタ2側に位置させて、すなわち板部30の一端部を第2板部40の一端部45よりも相手コネクタ2側に位置させて、取付板3とスライド部材4とを係止させる係止手段12が設けられている。この係止手段12は、上記係止突起33及び上記係止受け部44で構成されている。
【0032】
上記ロックアーム46は、第2板部40と間隔をあけて平行に延びたアーム部46aと、アーム部46aに設けられた係止孔46cと、アーム部46aと第2板部40とを連結した連結部46bと、で構成されている。このロックアーム46は、
図3に示すように、係止孔46cの内側に相手コネクタ2のロック突起84を位置付けることによって、コネクタ1と相手コネクタ2との嵌合状態を維持する。
【0033】
図7に示すように、上記ホルダ5は、絶縁性の合成樹脂で構成されており、フレキシブルプリント基板6のカバーレイ62側に重ねられる第3板部50と、第3板部50の両側部から立設し、互いの間にスライド部材4の一対の側壁42を位置付ける一対の側板51と、で構成されている。前記第3板部50には、取付板3の一対の円柱部32をそれぞれ移動自在に位置付ける一対の長孔52が貫通形成されている。また、第3板部50は、
図11に示すように、フレキシブルプリント基板6の一端部、すなわち導体61が露出した部分、を覆わないサイズに形成されている。前記各側板51には、スライド部材4の凸部43と係合する係合孔53が貫通形成されている。このホルダ5は、前記係合孔53が前記凸部43と係合することによってスライド部材4に固定される。
【0034】
このように、コネクタ1には、スライド部材4とホルダ5とを固定する固定手段11が設けられている。この固定手段11は、上記凸部43及び上記係合孔53で構成されている。また、本発明のコネクタ1は、前述したホルダ5と固定手段11とを有しているので、フレキシブルプリント基板6が取付板3から脱落することを確実に防止でき、かつ、容易に組み立てることができる。また、本発明では、ホルダ5を用いず、フレキシブルプリント基板6を取付板3に接着するなどして取付板3に固定するようにしても良い。
【0035】
続いて、上述した構成のコネクタ1を組み立てる手順を説明する。まず、
図9に示すように、スライド部材4の第2板部40と取付板3の板部30とを重ねるとともに係止突起33を第1突起44aと第2突起44bとの間に位置付けて、取付板3の一端部をスライド部材4の一端部よりも相手コネクタ2側に位置させた状態で、取付板3とスライド部材4とを係止させる。次に、
図10に示すように、ベースフィルム60が板部30に接触する向きでフレキシブルプリント基板6の一端部を板部30に重ねるとともに貫通孔63に円柱部32を挿入してフレキシブルプリント基板6を取付板3に固定する。そして、
図11に示すように、一対の円柱部32を一対の長孔52内に位置付けるとともにホルダ5をスライド部材4に固定して、スライド部材4とホルダ5との間に取付板3及びフレキシブルプリント基板6を挟む。このようにしてコネクタ1を組み立てる。
【0036】
続いて、上記コネクタ1が上記相手コネクタ2に嵌合される際の様子について説明する。コネクタ1は、
図1に示すように、フレキシブルプリント基板6の長手方向に沿って相手コネクタ2に近付けられ、
図2に示すように、先に、取付板3及びフレキシブルプリント基板6の一端部のみが相手コネクタ2の雌端子7内に挿入される。この際、フレキシブルプリント基板6の導体61が低い接触荷重にて雌端子7の接触部71に摺接する。
【0037】
そして、取付板3及びフレキシブルプリント基板6の一端部が雌端子7内における最も奥の位置に位置付けられると、取付板3の立設部31が相手コネクタ2の奥壁82に突き当たる。この状態で、スライド部材4が相手コネクタ2側にさらに押圧されることによって、取付板3とスライド部材4との係止が解除され、スライド部材4が取付板3に対してスライド可能となる。
【0038】
そして、スライド部材4が相手コネクタ2側にさらに押圧されることによって、スライド部材4の一端部、すなわち第2板部40の一端部45、が
図3に示すように雌端子7内に押し込まれる。このことによって、フレキシブルプリント基板6の導体61と雌端子7の接触部71との接触荷重が増加し、これら導体61と接触部71とが確実に電気接続される。最後に、ロックアーム46がロック突起84に係止して、コネクタ1が相手コネクタ2に完全嵌合される。
【0039】
このように、本発明のコネクタ1は、フレキシブルプリント基板6の長手方向に沿ってスライド部材4を相手コネクタ2側に押圧する動作のみで、相手コネクタ2に嵌合させることができる。すなわち、本発明のコネクタ1は、相手コネクタ2への一連の嵌合作業をワンアクションにて行うことができる。
【0040】
また、本発明のコネクタ1は、相手コネクタ2に嵌合する際、フレキシブルプリント基板6の導体61が低い接触荷重にて雌端子7の接触部71に摺接するので、導体61及び接触部71の磨耗を抑制しつつ、導体61及び接触部71に付着した異物を除去することができる。また、前記異物とは、酸化皮膜、埃、錆、等である。このことにより、導体61と接触部71との接触抵抗値を低く抑えることができる。また、導体61と接触部71とは、FPC接続部70内に後から挿入される第2板部40によって最終的に高い接触荷重にて電気接続されるので、接触抵抗値を低く抑えることができる。
【0041】
また、上述した実施形態では、「可撓性を有するフラット回路体」として、フレキシブルプリント基板6を用いた例を説明したが、本発明では、フレキシブルプリント基板6の代わりにフレキシブルフラットケーブルを用いることもできる。すなわち、本発明における「可撓性を有するフラット回路体」とは、フレキシブルプリント基板やフレキシブルフラットケーブルなどの、可撓性を有する薄型で平らな回路体を言う。
【0042】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 コネクタ
2 相手コネクタ
3 取付板
4 スライド部材
5 ホルダ
6 フレキシブルプリント基板(フラット回路体)
7 雌端子
10 ハウジング
61 導体