【実施例1】
【0038】
a)まず、本実施例の燃料電池システムの構成について説明する。
図1に模式的に示す様に、本実施例の燃料電池システム1は、周知の固体酸化物形燃料電池(SOFC)である燃料電池3のシステムであり、燃料ガス(アノード燃料:例えば都市ガス)と酸化剤ガス(カソードエア:例えば空気)との供給を受けて発電を行う燃料電池3と、燃料電池3に供給する燃料ガスを水素リッチのガスに改質する改質器5などを備えており、それらは、断熱容器7に収納されている。
【0039】
なお、この燃料電池3及び改質器5等を断熱容器7に収容した構成を、発電モジュール9と称する。
また、発電モジュール9の外部には、基本的な構成として、空気を燃料電池3の図示しない空気極側に送る空気供給ライン11と、燃料ガスを燃料電池3の図示しない燃料極側に送る燃料供給ライン13とを備えるとともに、排ガスから水分を凝縮して回収する排熱回収用熱交換器15と、凝縮水を溜める水タンク(改質水タンク)17と、水タンク17内に配置された異物除去用フィルタ19と、発電モジュール9(即ち燃料電池3)から排出される排ガス(オフガス)を熱交換器15に導く第1排ガスライン21と、熱交換器15によって回収された凝縮水(改質水)等を水タンク17に導く導入管路23と、凝縮水を改質水として水タンク17から改質器5に送る改質水ライン25とを備えている。
【0040】
また、これとは別に、水道水等の上水を熱交換器19に供給する第1上水ライン27と、熱交換後の温水を排出する温排水ライン29と、上水を水タンク17に供給する第2上水ライン31と、水タンク17から気液分離後の排ガスを排出する第2排ガスライン33と、水タンク17から余剰の水(ドレン水)を排出するドレンライン35とを備えている。
【0041】
以下、各構成について説明する。
前記燃料電池3は、図示しないが、固体酸化物形燃料電池の発電単位である板状の燃料電池セルが複数個積層されたスタックである。この燃料電池セルは、いわゆる燃料極支持膜形タイプの燃料電池セルであり、周知の(燃料流路に接する様に配置された)燃料極と、固体電解質体と、(空気流路に接する様に配置された)空気極とを備えている。
【0042】
前記改質器5は、燃料電池3に供給される燃料ガスを水素リッチの燃料ガス(改質ガス)に改質する装置である。この改質器5の上流側には、図示しないが、改質水を気化させる気化器が設けられている。
【0043】
なお、ここで、改質に使用する燃料ガスとしては、都市ガスのほかに、LPG・灯油・メタノール・バイオメタノールなどがある。
前記熱交換器15は、燃料電池3から排出される(発電後の)排ガスを冷却し、その排ガス中から水分を凝縮して回収する装置であり、排ガスの冷却のために、外部から冷却水として(例えば水道水や井戸水等の)上水が導入される。
【0044】
前記フィルタ19は、有底カップ状であり、その側面が濾過面として構成されている。このフィルタ19は、多孔質体又は網状体であり、(細菌の増殖を防止するために)例えばステンレス等の金属、又は例えばアルミナ等のセラミックから構成されている。なお、凝縮水が酸性になる場合は、金属の場合には、耐酸性が高い材質か表面に耐酸性処理を施すことが望ましい。更に、異物のサイズは通常10μm以上であるので、フィルタ19の目の粗さは10μm以下とする。
【0045】
前記改質水ライン25には、周知の水改質用ポンプ37、イオン交換樹脂フィルタ39、水流検出器41が配置されている。
また、前記第1上水ライン27には、周知の上水用フィルタ43、排熱回収用水ポンプ45が配置され、第2上水ライン29には、上水の供給を調節する(例えば電磁弁である)給水弁47が配置されている。
【0046】
なお、第2排ガスライン33は、水タンク17の上部の蓋49に接続され、ドレンライン35は水タンク17の側壁50に接続されている。
更に、本実施例では、フィルタ19の内側の水位を検出するために、蓋49に内側水位センサ51が配置されている。この内側水位センサ51は、フィルタ19の内部の液面を検知する検知部53を備えている。
【0047】
同様に、蓋49には、フィルタ19の外側の水位を検出するために、外側水位センサ55が配置されている。この外側水位センサ55は、フィルタ19の外側の液面を検知する検知部57を備えている。
【0048】
そして、内側水位センサ51及び外側水位センサ53は、周知のマイコン等を備えた電子制御装置(コントローラ)59を備えており、この電子制御装置59により、燃料電池システム1の各種の動作が制御される。
【0049】
なお、図示しないが、電子制御装置59には、フィルタ19の目詰まり等の異常を、表示や音声等の音で報知する表示装置やスピーカ等が接続されている。
b)次に、燃料電池システム1の要部である水タンク17等の構成について説明する。
【0050】
図2に拡大して示すように、本実施例では、水タンク17のタンク内底面からの高さ方向において、各種の高さが設定されている。
具体的には、フィルタ19の高さであるフィルタ高さH2、フィルタ19内の凝縮水の高さの上限である満水時高さH1(=第3の閾値TH3)が設定されている。なお、H2>H1である。
【0051】
特に本実施例では、第3の閾値TH3より低い位置に、フィルタ19の外側の水位の下限値である第1の閾値TH1が設定され、第3の閾値TH3と第1の閾値TH1との間に、フィルタ19の外側の水位の上限値である第2の閾値TH2が設定されている。
【0052】
なお、以下では、内側検出センサ51によって検出されたフィルタ19の内側の水位をフィルタ内液面高さh2と称し、外側検出センサ55によって検出されたフィルタ19の外側の水位をフィルタ外液面高さ(タンク内液面高さ)h1と称する。
【0053】
また、水タンク17の蓋49に取り付けられた第2排ガスライン33は、水タンク17側の開口部61が、水タンク17内の水に接しないような高さ(フィルタ高さH2よりも高い位置)に設けられている。
【0054】
更に、水タンク17の側壁50に取り付けられたドレンライン35の取水口63は、水タンク17内の水位が所定の高さ(満水時高さH1)を超えないように、満水時高さH1に設けられている。なお、図示しないが、ドレンライン35の他の取水口は、フィルタ19においても、満水時高さH1に設けられている。これにより、フィルタ19の外側の、水位が満水時高さH1を上回らないように設定されている。
【0055】
また、改質水ライン25の取水口65は、水タンク17の側壁50の低い位置、例えば第1の閾値TH1よりも低い位置に設けられている。
c)次に、燃料電池システム1の動作と電子制御装置59にて行われる処理について説明する。
【0056】
<フィルタ目詰まり検知処理>
本処理は、フィルタ19の内側と外側の液面高さの差(水位差Δh=h2−h1)が、所定の水位差の閾値ΔhTHに達した場合には、目詰まり等によるフィルタ交換時期であるとして、警報を発生する処理である。
【0057】
図3に示す様に、まず、ステップ(S)100にて、外側水位センサ55によって、フィルタ外液面高さ(タンク内液面高さ)h1を検出する。
続くステップ110では、内側水位センサ51によって、フィルタ内液面高さh2を検出する。
【0058】
続くステップ120では、目詰まりや異物の堆積の程度が大きくなると、その程度に応じて、フィルタ内液面高さh2がフィルタ外液面高さh1より大きくなるので、フィルタ内液面高さh2からフィルタ外液面高さh1を引いて、その水位差Δh(=h2−h1)を求める。
【0059】
続くステップ130では、フィルタ外液面高さh2とフィルタ外液面高さh1との水位差Δhが、閾値ΔhTH以上か否かを判定する。ここで肯定判断されると、ステップ140に進み、一方否定判断されるとステップ100に戻る。
【0060】
なお、この閾値ΔhTHは、目詰まりや異物の堆積の程度(従ってフィルタ19の浄水供給能力の低下の程度)を判定するための基準値であり、実験等によって定めることができる。
【0061】
ステップ140では、水位差Δhが大きく、よって、目詰まりや異物の堆積の程度が大きく(従ってフィルタ19の浄水供給能力の低下が大きく)、フィルタ19の交換時期(或いは清掃時期)であるとみなして、その旨の警報を出し、一旦本処理を終了する。
【0062】
<第1液面制御処理>
本処理は、フィルタ外液面高さh1が、第1の閾値TH1に達した場合には、貯水量不足として、フィルタ19内に上水を供給し、また、フィルタ外液面高さh1が、第2の閾値TH2に達した場合には、貯水量過剰として、フィルタ19内への上水の供給を停止する処理である。
【0063】
図4に示す様に、まず、ステップ200にて、外側水位センサ55によって、フィルタ外液面高さh1を検出する。
続くステップ210にて、フィルタ外液面高さh1の高さの判定を行う。具体的には、フィルタ外液面高さh1の高さが、「h1≦第1の閾値TH1」か、「第1の閾値TH1<h1<第2の閾値TH2」か、「第2の閾値TH2≦h1」かを判定する。そして、「h1≦第1の閾値TH1」の場合はステップ220に進み、「第1の閾値TH1<h1<第2の閾値TH2」の場合はステップ230に進み、「第2の閾値TH2≦h1」の場合はステップ240に進む。
【0064】
ステップ220では、フィルタ19の外側の水位が過度に低下した(下限に達した)として、給水弁47を開き、上水をフィルタ19の内側に供給する。
ステップ240では、フィルタ19の外側の水位が過度に上昇した(上限に達した)として、給水弁47を閉じ、上水のフィルタ19の内側への供給を停止する。
【0065】
ステップ230では、給水弁47による上水の供給中か、或いは、フィルタ19の外側の水位が適度だとして、前回の制御状態を維持し(給水弁47の開放又は閉鎖の維持)、一旦本処理を終了する。
【0066】
<第2液面制御処理>
上水供給時に、フィルタ19を通過する水流量が、フィルタ19内に供給される上水の供給量より少ないと、フィルタ19の内側の水位が上昇し、フィルタ19の上面から(未浄化の)水が溢れる恐れがある。そこで、本処理では、フィルタ内液面高さh2が、第3の閾値TH3に達した場合には、フィルタ19内への上水の供給を停止する。なお、本処理は、上水が供給されている場合の処理である。
【0067】
図5に示す様に、まず、ステップ300にて、内側水位センサ51によって、フィルタ内液面高さh2を検出する。
続くステップ310にて、フィルタ内液面高さh2が第3の閾値TH3以上か否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ320に進み、一方否定判断されるとステップ300に進む。
【0068】
ステップ230では、フィルタ19の内側の水位が過度に上昇した(満水時高さH1に達した)として、給水弁47を閉じ、上水のフィルタ19の内側への供給を停止する。
d)次に、本実施例の効果を説明する。
【0069】
本実施例では、燃料電池3から排出される排ガスから凝縮水を取り出し、その凝縮水を水タンク17内に配置されたフィルタ19の内側に導入し、フィルタ19では凝縮水から異物を除去して濾過し、その濾過した浄水を改質器5に供給する。
【0070】
このとき、フィルタ19の内側の水位は、フィルタ19の目詰まりや異物の堆積の状態(従ってフィルタ19の浄水供給能力)に応じて変化するので、フィルタ19の目詰まり等の程度に応じて、フィルタ19の内側の水位と外側の水位とには差が生じる。
【0071】
よって、本実施例では、フィルタ内液面高さh2とフィルタ外液面高さh1とを検出し、その高さの差(水位差)Δhを求める。この水位差Δhは、フィルタ19の目詰まり等の程度に対応しているので、この水位差Δhからフィルタ19の目詰まり等の程度、従って目詰まり等によるフィルタ19の浄水供給能力(浄化性能)の低下を容易に検知することができる。
【0072】
従って、例えば水位差Δhが所定の(目詰まり等の判定値である)閾値ΔhTH以上となった場合、即ち、フィルタ19に(フィルタ19の交換等に対応する程度の)目詰まり等があると判断した場合には、その旨やフィルタ交換の案内等を報知することにより、フィルタ19の適切な交換や清掃を行うことができる。
【0073】
これにより、フィルタ19の目詰まり等によるフィルタの浄化性能の低下によって生じる問題点、例えば、改質器5に供給する浄水が不足するという問題の発生を未然に防止することができる。
【0074】
また、本実施例では、フィルタ19の外側の水位が、過度に低くなった(第1の閾値TH1以下)場合には、フィルタ19の内側に上水を供給するので、常にフィルタ19内(従って水タンク17内)に、十分な水を確保することができる。よって、改質水が不足することはない。
【0075】
更に、本実施例では、フィルタ19の外側の水位が、過度に高く(第2の閾値TH2以上)なった場合には、フィルタ19の内側の水位も過度に高くなったとみなして、フィルタ19の内側への上水の供給を停止するので、フィルタ19内の凝縮水等が(浄化されずに)フィルタ19外に溢れることがない。よって、水タンク17からは、常に、フィルタ19にて浄化された浄水を改質器5に供給することができる。
【0076】
その上、本実施例では、上水の供給中に、フィルタ19の内側の水位が、過度に高く(第3の閾値TH3以上)なった場合には、フィルタ19の内側への上水の供給を停止するので、フィルタ19内の凝縮水等が(浄化されずに)フィルタ19外に溢れることがない。よって、この点からも、フィルタ19にて浄化された浄水を改質器5に供給することができる。
【0077】
また、本実施例では、フィルタ19の透孔の径は、10μm以下であるので、凝縮水中のほぼ全ての異物を好適に除去することができる。
更に、本実施例では、フィルタ19の材質が金属又はセラミックであるので、微生物が発生することがなく、フィルタ自体が新たな異物の発生源になりにくいという利点がある。
【0078】
その上、本実施例では、改質水ライン25が水タンク17の下部に接続されているので、フィルタ19内の凝縮水は、ほぼ下方に向かってフィルタ19外に流れる。よって、異物が舞い上がりにくくフィルタ19内の底部に堆積し易いという利点がある。
【0079】
また、本実施例では、導入配管23がフィルタ19の内側に向かって配置されるとともに、第2排ガスライン33は、蓋49に接続されている。従って、熱交換器15によって気液分離された凝縮水は減少することなく、全量がフィルタ19内に供給される。
【0080】
なお、他の例として、フィルタ外液面高さ(タンク内液面高さ)h1とフィルタ内液面高さh2との差である水位差Δhが、上述した所定の閾値ΔhTHを連続して超過する超過時間(連続時間)を監視し、この連続した超過時間が所定時間閾値Ta以上となった場合に、目詰まりなどによるフィルタ交換時期であるとして、警報を発する処理を行っても良い。これによって、一層的確にフィルタ19の目詰まり検出することができる。
【0081】
以下に、この他の例のフィルタ目詰まり検知処理について簡単に説明する。
図6に示す様に、まず、ステップ400にて、外側水位センサ55によって、フィルタ外液面高さ(タンク内液面高さ)h1を検出する。
【0082】
続くステップ410では、内側水位センサ51によって、フィルタ内液面高さh2を検出する。
続くステップ420では、フィルタ内液面高さh2からフィルタ外液面高さh1を引いて、その水位差Δh(=h2−h1)を求める。
【0083】
続くステップ430では、フィルタ外液面高さh2とフィルタ外液面高さh1との水位差Δhが、閾値ΔhTH以上か否かを判定する。ここで肯定判断されると、ステップ440に進み、一方否定判断されるとステップ400に戻る。
【0084】
ステップ440では、水位差Δhが、閾値ΔhTHを連続して超過する超過時間が所定時間閾値Ta以上か否かを判定する。ここで肯定判断されると、ステップ450に進み、一方否定判断されるとステップ400に戻る。
ステップ450では、超過時間が大きいで、目詰まり等の程度が大きく、フィルタ19の交換時期(或いは清掃時期)であるとみなして、その旨の警報を出し、一旦本処理を終了する。