【実施例】
【0028】
以下、本発明について実施例及び比較例を示してより具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。
【0029】
尚、物性の測定方法は以下の通りである。
(1)核磁気共鳴分光法(NMR):溶媒としてクロロホルム−dを使用し、JNM−ECA500(日本電子株式会社製)で測定した。
(2)ガスクロマトグラフ−質量分析(GC−MS):EI(株式会社島津製作所製GCMS−QP2010)を用いて測定した。
【0030】
製造例1
4−メタンスルホニルオキシ−2−アダマンタノン(4MsOX)の合成
4−ヒドロキシ−2−アダマンタノン(4HOX)599.62g(3.6mol),トリエチルアミン655mL(4.7mol)を、テトラヒドロフラン(THF)2.5Lで溶解させた。ここにメタンスルホン酸クロライド310mL(4.0mol)の滴下をゆっくりと開始した。
【0031】
適宜除熱し、約1.5時間かけて滴下を完了させ、さらに2時間の反応を行った。反応液に水1Lを加え、定法により処理すると下記式で表わされる4MsOX785.74g(3.2mol,収率:89.2%,GC純度:99.9%)が得られた。
【0032】
GC−MS:244(M+,11.3%),165(15.3%),148(27.4%),120(43.7%),91(29.2%),79(100%)
【化11】
式中、Msはメタンスルホニルである。
【0033】
製造例2
endo−ビシクロ[3.3.1]−6−ノネン−3−カルボン酸(BNC)の合成1
製造例1で合成した4MsOX250.52g(1.0mol),エタノール460mL,50%水酸化ナトリウム水溶液500mL(9.5mol),水1.2Lの混合液を、還流温度で2時間反応させた後、室温まで冷却した。
【0034】
反応溶液に含まれる有機不純物を抽出除去し、引き続き、濃塩酸で酸性にすると白色固体が析出した。生成した白色固体をろ過し、得られた白色ケークをTHF1.5Lで溶解させた。油水分離の後、定法により処理すると、下記式で表わされるBNC501.52g(3.0mol,収率:76.4%,GC純度:99.2%)が得られた。
【0035】
GC−MS:166(M+,4.7%),148(25.4%),120(15.5%),91(18.9%),79(100%)
【化12】
【0036】
製造例3
BNCの合成2
2−アダマンタノン4.5g(30mmol),メタンスルホン酸15mL(231mmol)のスラリーに、アジ化ナトリウム2.9g(45mmol)を、室温において十数回に分け、約30分かけて添加した。50℃でさらに1時間反応させた。ここにエタノール34mL,50wt%水酸化ナトリウム水溶液36mL(682mmol),水79mLを加え、還流温度で2時間反応させた後、室温まで冷却した。
【0037】
以降の後処理を製造例2と同様に行ったところ、BNC3.6g(21mmol,収率:71.4%,GC純度:96.8%)が得られた。
【0038】
[5−オキソ−4−オキサ−5−ホモアダマンタン−2−オール(HL−2−OH)の合成]
実施例1
製造例2又は製造例3で合成したBNC45.0g(271mmol),ギ酸38mL(1.0mol)のスラリーに、30wt%過酸化水素水52mL(509mmol)をゆっくり滴下した。この際、水浴で除熱しながら45℃以下を保持した。滴下後、さらに3時間の反応を行ったところ原料転化率は100%であった。
【0039】
反応液は、亜硫酸水素ナトリウムを発泡しなくなるまで加え、過剰の過酸化水素をクエンチし、水酸化ナトリウムと炭酸水素ナトリウムでpH=8程度になるまで中和した。定法により処理すると、下記式で表わされるHL−2−OH43.7g(240mmol,収率:88.5%,GC純度:96.8%)が得られた。
【0040】
実施例1の方法で得られるHL−2−OHは、4HOXを直接酸化して得られるものより純度が高く異性体の混入も少ない。
【0041】
GC−MS:182(M+,7.4%),154(20.7%),136(11.5%),120(15.9%),110(32.4%),95(43.1%),79(100%),66(76.4%),57(43.4%),41(40.5%)
1H−NMR:1.46(dd,J=2.9Hz,13.2Hz,1H),1.82〜1.98(m,5H),2.07(d,J=13.2Hz,2H),2.17(d,J=13.2Hz,1H),2.34(ddt,J=1.1Hz,4.6Hz,15.7Hz,1H),3.02〜3.04(m,1H),3.46(br−s,1H),3.94(s,1H),4.27(dd,J=2.0Hz,2.3Hz,1H)
13C−NMR:25.37,27.25,29.30,30.56,30.94,32.32,40.68,70.49,76.09,178.76
【化13】
【0042】
比較例1
HL−2−OHの合成
実施例1において、ギ酸38mL(1.0mol)の代わりに酢酸57mL(1.0mol)を用いた以外は実施例1と同様に反応を行い、HL−2−OHを合成した。結果、原料転化率が17.6%であった。実施例1と比較すると原料転化率が大きく低下した。
【0043】
比較例2
HL−2−OHの合成
以下の通り、非特許文献4と同様の条件で反応を行なった。
BNC997mg(6mmol)をジクロロメタン50mLに溶解し,m−クロロ過安息香酸1795mg(10.4mol)を徐々に加えた。滴下後、さらに1.5時間の還流を行った。反応液は、実施例1と同様に後処理をすると、HL−2−OH808mg(4.4mmol,収率:73.9%,GC純度:99.0%)が得られた。実施例1と比較すると収率が低かった。
【0044】
実施例2
2−アダマンタノン2000g(13.3mol)に、98%硫酸4480gと水1690gを用いて調製した72wt%硫酸水6170gを加え撹拌開始した。2−アダマンタノンと硫酸の混合液に30wt%過酸化水素水1360mL(13.3mol)を1時間かけてゆっくり滴下しながら60℃以下を保持した。滴下後、さらに60℃で3時間撹拌した後、2回目の30wt%過酸化水素水1360mL(13.3mol)を30分かけて滴下した。その後、100℃に昇温し、6時間撹拌を続けた。この反応終了時点で原料転化率は100%,目的物(4−オキサ−5−オキソ−5−ホモ−2−アダマンタノール)のGC選択率は93.4%であった。
反応液は、水3.3Lを加えた後、水酸化ナトリウム水溶液で中和した。中和後、亜硫酸水素ナトリウムを発泡しなくなるまで加え、過剰の過酸化水素をクエンチした。得られた反応混合物を定法により精製することにより、目的物(4−オキサ−5−オキソ−5−ホモ−2−アダマンタノール)965g(5.3mol,単離収率:39.8%,GC純度:96.0%)が得られた。
【化14】
【0045】
実施例3
2−アダマンタノン6020mg(40mmol)に、98%硫酸13.5gと水5.1gを用いて調製した72wt%硫酸水18.6gを加え撹拌開始した。2−アダマンタノンと硫酸の混合液に30wt%過酸化水素水4.1mL(40mmol)を30分かけてゆっくり滴下しながら60℃以下を保持した。滴下後、さらに60℃で1時間撹拌した後、2回目の30wt%過酸化水素水4.1mL(40mmol)を滴下した。その後、100℃に昇温し、4時間撹拌を続けた結果、反応終了時点での原料転化率は100%,目的物のGC選択率は85.5%で、後処理/精製後の単離収率は43.3%であった。
【0046】
実施例4
98%硫酸13.5gと水5.1gを用いて調製した72wt%硫酸水18.6gの代わりに、98%硫酸13.5gと水15.1gを用いて調製したした47wt%硫酸水28.6gを用いたこと他は実施例3と同様にして反応した。その結果、反応終了時点での原料転化率は100%であり、目的物のGC選択率は38.8%で、後処理/精製後の単離収率は17.8%であった。
【0047】
実施例5
98%硫酸13.5gと水5.1gを用いて調製した72wt%硫酸水18.6gの代わりに、98%硫酸13.5gと水25.2gを用いて調製した35wt%硫酸水38.7gを用いた他は実施例3と同様にして反応を実施した。その結果、反応終了時点での原料転化率は100%であり、目的物のGC選択率は14.3%で、後処理/精製後の単離収率は9.3%であった。
【0048】
実施例6
2回目の30wt%過酸化水素水を滴下する代わりに、滴下せずに反応を終了としたこと他は、実施例3と同様にして反応を実施した。その結果、反応終了時点での原料転化率は99.5%であり、目的物のGC選択率は21.2%で、後処理/精製後の単離収率は11.2%であった。
【0049】
実施例7
100℃に昇温する代わりに、80℃に昇温した他は、
実施例3と同様に反応を実施した。反応終了時点での原料転化率は100%であり,目的物のGC選択率は38.5%で、後処理/精製後の単離収率は16.4%であった。
【0050】
実施例8
2−アダマンタノン6020mg(40mmol)に、98%硫酸27.0gと水5.1gを用いて調製した84wt%硫酸水32.1gを加え撹拌開始した。2−アダマンタノンと硫酸の混合液に30wt%過酸化水素水12.3mL(120mmol)を30分かけてゆっくり滴下しながら60℃以下を保持した。滴下後、さらに60℃で30分撹拌した後、100℃に昇温し、3時間撹拌を続けた結果、反応終了時点での原料転化率は100%,目的物のGC選択率は81.3%で、後処理/精製後の単離収率は17.6%であった。