(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、
図1〜
図9を参照しながら本発明の第1の実施形態について説明する。なお、以下の説明中の方向は図中に記載した矢線方向を基準とする。
図示を省略した自動車(車両)の車内床面にはシート装置10が設けてある。シート装置10は大きな構成要素として、左右一対のスライドレール装置11と、左右のスライドレール装置11(アッパレール13)に固定したシート20と、を具備している。
左右のスライドレール装置11は、車内床面に固定した前後方向に延びるロアレール12と、ロアレール12に前後方向にスライド可能に支持しかつ自身の上面にシート20が固定されたアッパレール13と、を有している。
図6〜
図9に示すように右側のロアレール12の右側面には多数のロック孔12aが形成してあり、右側のアッパレール13にはロック爪14が前後方向に延びる軸回りに回転可能として取り付けてある。ロック爪14はロック孔12aに係合するロック位置と、ロック孔12aから脱出するアンロック位置との間を回転可能であり、図示を省略したロック爪付勢手段によってロック位置側に回転付勢されている。従ってロック孔12aとロック爪14からなるスライドロック機構は、ロック爪14に対して上記ロック爪付勢手段以外の外力が掛からないときにロック爪14がいずれかのロック孔12aに係合することによってアッパレール13のロアレール12に対するスライドを規制するロック状態となり、ロック爪14が該ロック爪付勢手段の付勢力に抗してアンロック位置に回転したときに、アッパレール13のロアレール12に対するスライドを許容するアンロック状態となる。
【0014】
シート20は、各アッパレール13の上部に固定した左右一対のベース部材21と、左右のベース部材21を固定状態で連結する左右方向に延びる連結パイプ(図示略)を具備している。ベース部材21は金属製であり、その後端部には後斜め上方に向かって突出する接続端部22が一体的に形成してある。
左右のベース部材21の接続端部22を貫通しながら左右方向(車幅方向)に延びる回転接続軸23の左右両端部には、金属からなる左右一対のシートバックフレーム24の下端部がそれぞれ回転可能に支持してあり、左右のシートバックフレーム24を図示を省略した連結パイプが結合している。左右のシートバックフレーム24及びシートバックフレーム24を連結する連結パイプの周面は図示を省略したシートバッククッションにより覆ってある。ベース部材21、連結パイプ、シートバックフレーム24、及びシートバッククッションを構成要素として具備するシートバック25は、スライドレール装置11に対して略直交状態となる起立位置(
図1、
図3の位置)と、起立位置から前方に倒れることにより略水平になって左右のベース部材21の上面を覆う全倒位置(
図4の位置)との間をベース部材21に対して回転可能である。シート20には、シートバック25を全倒位置側に回転付勢する回転付勢手段と、シートバック25を起立位置と全倒位置の間の任意の位置で固定可能なリクライニングロック手段と、リクライニングロック手段のロックを解除するシートバック25に設けたウォークイン操作手段と、を具備するリクライニング機構(図示略)が設けてある。従って、シートバック25が起立位置に位置するときにウォークイン操作手段を操作すると、リクライニングロック手段によるリクライニングロックが解除されるので、シートバック25は上記回転付勢手段の付勢力によって前方に回転する。
左右のベース部材21の前端部には、左右方向に延びる回転軸27を介して左右一対の連結リンク28の一端がそれぞれ回転可能に接続してあり、左右の連結リンク28の他端には回転軸27と平行な回転軸29を介してシートクッション30の左右両側の前端部が回転可能に接続している。連結リンク28及びシートクッション30はそれぞれ回転軸27と回転軸29を中心に回転可能であるため、シートクッション30は略水平となってベース部材21の上面を塞ぐ着座可能位置(
図1、
図2の位置)と、ベース部材21の上面を開放しながら起立する退避位置(
図3、
図4の位置)の間をベース部材21に対して回転可能である。また、ベース部材21とシートクッション30の間にはシートクッション30を着座可能位置に保持するためのシートクッションロック手段(図示略)が設けてあり、さらにシートクッション30にはシートクッションロック手段によるロックを解除するシートクッションロック解除手段(図示略)が設けてある。
【0015】
続いて右側のベース部材21及び右側のシートバックフレーム24に設けたスライド・リクライニング制御機構32について説明する。
右側のシートバックフレーム24の下端部(基端部)には押圧突起34が固定してある。
右側のベース部材21の後端部の右側面にはブラケット35が固定してある。図示するようにブラケット35には第1回転中心孔36と、第1回転中心孔36の斜め上方に位置する第2回転中心孔37と、第1回転中心孔36を中心とする円弧形状である円弧孔38と、が穿設してある。
ブラケット35の第1回転中心孔36には左右方向に延びる回転支持ピン39の左端部が嵌合固定してあり、回転支持ピン39には
図6、
図8、
図9に示すロック保持位置と、
図7に示すロック解除位置との間を回転可能なウォークイン連動回転部材40が回転可能に支持してある。ウォークイン連動回転部材40は断面コ字形をなす部材であり、左側板部の上端に突設した被押圧部41と、右側板部の下部に穿設した接続孔42と、右側板部の上部に穿設した、回転支持ピン39に回転可能に嵌合する回転中心孔43と、を具備している。
図6〜
図9に示すように接続孔42には前後方向に延びるスライドレバー45の後端部に突設した左側に向かって延びる回転接続ピン44が左右方向の回転軸回りに回転可能として接続(嵌合)しており、ベース部材21に対して左右方向の回転軸回りに回転可能に支持した回転レバー46がスライドレバー45の前端部に対して左右方向の回転軸回りに回転可能として接続している。さらに回転レバー46に設けた係合ピン46aは、ベース部材21に対して前後方向の回転軸回りに回転可能に支持したロック解除レバー47と係合しており、ロック解除レバー47に突設した右向きの連係ピン48がロック爪14に形成した係合溝14aに係合している。
回転支持ピン39には、ウォークイン連動回転部材40の左側板部と右側板部の間に位置する被押圧レバー50(被押圧部材)が回転可能に支持してある。被押圧レバー50は第1支持孔51と、回転支持ピン39の中間部が回転可能に嵌合する第2支持孔52と、第1支持孔51と第2支持孔52の間に位置する回転制御溝53と、上端部に突設した被押圧突起56と、を具備している。回転制御溝53は、キャンセル制御レバー70(後述)の回転支持孔72を中心とする円弧方向に延びる回転許容溝54と、回転許容溝54の後端と連通すると共に回転許容溝54に対して傾斜する円弧形状の(回転支持孔72を中心とする円弧上に位置しない)回転規制溝55と、を一体的に具備している。被押圧レバー50は、被押圧突起56が押圧突起34の回転軌跡上に位置する干渉位置(
図6、
図7の位置)と、押圧突起34の回転軌跡から下方に退避する非干渉位置(
図8、
図9の位置)との間を回転支持ピン39回りに回転可能であり、図示を省略した付勢手段の付勢力によって干渉位置側に回転付勢されている。さらに右側のベース部材21には被押圧レバー50と連係するキャンセル操作レバー(図示略)が回転可能に設けてある。このキャンセル操作レバーが非操作位置に位置するとき被押圧レバー50は上記付勢手段の付勢力によって干渉位置に位置し、キャンセル操作レバーが操作位置まで回転すると被押圧レバー50は該付勢手段の付勢力に抗して非干渉位置に回転する。
【0016】
被押圧レバー50の第1支持孔51には右側から回転支持ピン58が挿入してあり、回転支持ピン58の左端部近傍がブラケット35の円弧孔38に移動自在に嵌合している。そしてブラケット35と被押圧レバー50の間に位置するウォークイン作動レバー59に形成した回転支持孔60が回転支持ピン58に回転可能に嵌合している。ウォークイン作動レバー59の上下両端には被押圧端部61と押圧端部62がそれぞれ突設してある。ウォークイン作動レバー59はウォークイン連動回転部材40の左側板部と同一平面上(同じ左右方向位置)に位置しており、押圧端部62の前面が被押圧部41の後面と係合している。そのためロック爪14が上記ロック位置に位置するとき、(ロック爪14、連係ピン48、ロック解除レバー47、回転レバー46、スライドレバー45を介して)上記ロック爪付勢手段から
図5〜
図9の反時計方向の回転付勢力を受けているウォークイン連動回転部材40は上記ロック保持位置に位置し、被押圧部41から
図5〜
図9の時計方向の回転付勢力を受けるウォークイン作動レバー59は図示を省略したストッパによって
図6、
図8、
図9に示すウォークイン非作動位置に保持される。一方、ウォークイン作動レバー59(被押圧端部61)を上記ロック爪付勢手段に抗して反時計方向に回転させると、ウォークイン作動レバー59が被押圧レバー50に対して
図7に示すウォークイン作動位置(被押圧レバー50の裏に隠れた位置)まで回転しウォークイン作動レバー59の押圧端部62が被押圧部41を押圧するので、ウォークイン連動回転部材40がロック保持位置からロック解除位置へ回転する。するとスライドレバー45、回転レバー46、ロック解除レバー47が
図7に示すように動作するのでロック爪14がアンロック位置まで回転する。
【0017】
ブラケット35の第2回転中心孔37には左右方向に延びる回転支持ピン64の左端部が嵌合固定してあり、回転支持ピン64には、例えばスペーサ(図示略)を介して被押圧レバー50の右側に位置するキャンセル解除レバー65が回転可能に支持してある。キャンセル解除レバー65は、上端に突設した被押圧突部66と、前縁部から右側に突出する押圧片67と、下部に穿設した回転支持孔68と、を具備している。キャンセル解除レバー65は図示を省略した回転付勢手段によって
図6〜
図9の時計方向に回転付勢されている。
さらにキャンセル解除レバー65の右側には両端に係合ピン挿通孔71と回転支持孔72を有するキャンセル制御レバー70が位置しており、回転支持孔72が回転支持ピン64に対して抜止めされた状態で回転可能に嵌合している。さらに係合ピン挿通孔71には右側から係合ピン73(係合突起)が嵌合しており、係合ピン73の左端部が回転制御溝53に移動可能に嵌合している。
キャンセル制御レバー70は、係合ピン73を回転許容溝54に嵌合させることにより被押圧レバー50の回転支持ピン39回りの回転を許容する回転許容位置(
図6、
図7の位置)と、係合ピン73を回転規制溝55に嵌合させることにより被押圧レバー50の回転支持ピン39回りの回転を規制する回転規制位置(
図8の位置)との間を回転可能であり、図示を省略した付勢手段の付勢力によって回転規制位置側に回転付勢されている。さらに上記のようにキャンセル解除レバー65は回転付勢手段によって時計方向に回転付勢されているので、キャンセル解除レバー65に対して外力を及ぼさないとき、押圧片67がキャンセル制御レバー70の上面に当接してキャンセル解除レバー65はキャンセル制御レバー70と一緒に回転する。その一方で、押圧片67はキャンセル解除レバー65のキャンセル制御レバー70に対する反時計方向の相対回転を規制しないので、キャンセル解除レバー65はキャンセル制御レバー70に対して反時計方向に相対回転可能である。
以上説明した符号34〜70の各部材がスライド・リクライニング制御機構32の構成要素である。さらに押圧突起34、ウォークイン連動回転部材40、スライドレバー45、回転レバー46、ロック解除レバー47、及び、ウォークイン作動レバー59が「ウォークイン機構」の構成要素である。また被押圧レバー50及び上記キャンセル操作レバーが「ウォークインキャンセル機構」の構成要素であり、押圧突起34、被押圧レバー50、キャンセル解除レバー65、キャンセル制御レバー70、及び、係合ピン73が「キャンセル解除機構」の構成要素である。
【0018】
続いてシートバック25とシートクッション30を回転操作したときのスライド・リクライニング制御機構32(ウォークイン機構、ウォークインキャンセル機構、及び、キャンセル解除機構)の動作について説明する。
まずは
図1、
図6に示すようにシートバック25(シートバックフレーム24)が起立位置に位置し、シートクッション30が着座可能位置に位置する場合について説明する。
このときは
図6に示すように押圧突起34がウォークイン作動レバー59(被押圧端部61)に外力を及ぼさないので、ロック爪14がいずれかのロック孔12aに係合することによってアッパレール13のロアレール12に対するスライドを規制する。
【0019】
続いて
図6の状態からスライド・リクライニング制御機構32(ウォークイン機構)がウォークイン動作を行う場合について説明する。
シートバック25に設けた上記ウォークイン操作手段を操作してリクライニングロック手段によるリクライニングロックが解除し、シートバック25を上記回転付勢手段の付勢力によって前方に回転させると、
図7に示すように押圧突起34がウォークイン作動レバー59(被押圧端部61)を反時計方向に押圧して上記ウォークイン作動位置まで回転させる。そして押圧突起34が被押圧突起56の前面に当接することによりシートバック25が上記起立位置と上記全倒位置の間の中間傾斜位置(
図2、
図7の位置)で回転を停止する。ウォークイン作動レバー59がウォークイン作動位置まで回転すると、上述したようにロック爪14がアンロック位置まで回転してアッパレール13(シート20)がロアレール12に対してスライド可能になる(ウォークイン動作が行われる)。
アッパレール13(シート20)が所望の位置までスライドした後にシートバック25を中間傾斜位置から起立位置側に戻すと、押圧突起34からウォークイン作動レバー59(被押圧端部61)への押圧力が解除されるので、上記ロック爪付勢手段の回転付勢力によってロック爪14がロック孔12aに対して係合しアッパレール13のロアレール12に対するスライドを規制し、さらに上記ロック爪付勢手段の付勢力によってウォークイン作動レバー59がウォークイン非作動位置まで回転復帰する。
【0020】
次に
図6の状態からスライド・リクライニング制御機構32(ウォークインキャンセル機構)がウォークインキャンセル動作を行った上で、シートバック25を全倒位置まで回転させる動作について説明する。
非操作位置に位置する上記キャンセル操作レバーを操作位置まで回転させて、
図8に示すように被押圧レバー50を非干渉位置まで回転させ、回転許容溝54の前端部に嵌合していた係合ピン73を回転規制溝55の下端部(回転許容溝54の後端部)に移動させる。
被押圧レバー50が非干渉位置に位置すると押圧突起34は被押圧レバー50及びウォークイン作動レバー59と干渉しなくなる。そのため、シートクッション30を退避位置まで回転させた状態で、ウォークイン操作手段を操作してシートバック25を全倒位置まで回転させたときに、ウォークイン作動レバー59はウォークイン非作動位置に位置したままとなる。そのためロック爪14とロック孔12a係合状態が解除されることはなく、アッパレール13のロアレール12に対するスライド規制は維持される(ウォークインキャンセル機構によってウォークイン動作がキャンセルされる)。
さらに被押圧レバー50が非干渉位置まで回転したときに係合ピン73が回転規制溝55の下端部(回転許容溝54の後端部)まで相対移動するので、上記付勢手段の付勢力を受けているキャンセル制御レバー70が回転規制位置まで回転することによって係合ピン73が回転規制溝55の上部に嵌合する(
図8参照)。すると係合ピン73と回転規制溝55によって被押圧レバー50の回転支持ピン39回りの回転が規制されるので、被押圧レバー50が非干渉位置に保持される。そのため乗員は、シートバック25の上面(背面)に荷物等を載せることが可能となる。
また、このとき押圧突起34がキャンセル解除レバー65の被押圧突部66と干渉してキャンセル解除レバー65をキャンセル制御レバー70に対して反時計方向に相対回転させるが(
図8の実線参照)、キャンセル解除レバー65の回転力がキャンセル制御レバー70に対して及ぶことはない。さらに押圧突起34がキャンセル解除レバー65の後方に移動したときに、上記回転付勢手段の付勢力によってキャンセル解除レバー65は押圧片67がキャンセル制御レバー70に当接する位置まで回転復帰する(
図8の仮想線参照)。
【0021】
最後に
図8の状態からスライド・リクライニング制御機構32(キャンセル解除機構)がウォークインのキャンセル状態を解除する場合について説明する。
シートクッション30を退避位置に位置させたままシートバック25を起立位置まで回転させると、シートバック25が
図9に示す中間傾斜位置の近傍位置まで回転したときに、押圧突起34がキャンセル解除レバー65を介して回転規制位置に位置するキャンセル制御レバー70を回転許容位置に回転させ、係合ピン73を回転規制溝55の下端部(回転許容溝54の後端部)まで移動させる。すると上記付勢手段の回転付勢力によって被押圧レバー50が反時計方向に回転するので、係合ピン73を回転許容溝54の前方に相対移動させながら被押圧レバー50が干渉位置まで回転復帰する(キャンセル解除機構がウォークインのキャンセル状態を解除する)。また、被押圧レバー50が干渉位置に回転復帰するのに伴って、キャンセル操作レバーが非操作位置に移動復帰する。
シートバック25を起立位置(あるいは中間傾斜位置の近傍位置より起立位置側の任意の位置)まで回転復帰させてリクライニングロック手段によりリクライニングロックした後にシートクッション30を着座可能位置に戻すと、シートクッションロック手段がシートクッション30を自動的にロックしてシートクッション30を着座可能位置に保持する。上記のように被押圧レバー50が干渉位置に復帰しているため(キャンセル解除機構がウォークインのキャンセル状態が解除されているため)、この後に再度シートバック25を前方に(中間傾斜位置まで)倒せばウォークイン機構によるウォークイン動作が可能になる。
【0022】
以上説明したように本実施形態ではキャンセル解除機構がシートバック25の回転に連動して動作する構造なので(シートクッション30を回転操作する必要がないので)、ウォークインキャンセル機構の働きによって無効状態となったウォークイン機構を動作可能な有効状態に戻すのが容易である。
しかもウォークインキャンセル機構及びキャンセル解除機構の全構成要素である押圧突起34、被押圧レバー50、キャンセル解除レバー65、キャンセル制御レバー70、係合ピン73、及び、キャンセル操作レバーをベース部材21とシートバック25に設けており、シートクッション30側には設けていない。そのためシートクッション30のベース部材21に対する取付位置が多少不正確であっても、ウォークインキャンセル機構及びキャンセル解除機構を確実に機能させることが可能である。またウォークインキャンセル機構及びキャンセル解除機構の一部の構成要素をシートクッション30側に設ける場合に比べて、ウォークインキャンセル機構及びキャンセル解除機構の構成が簡単になる。
さらにシートバック25を全倒位置から起立位置へ回転させることにより、キャンセル解除機構(押圧突起34、被押圧レバー50、キャンセル解除レバー65、キャンセル制御レバー70、及び、係合ピン73)によるウォークインのキャンセル解除動作を行っているので、キャンセル解除動作を行うための操作手段を別個に設ける場合に比べてシート20の構造及びキャンセル解除動作が簡単である。
【0023】
続いて本発明の第2の実施形態を主に
図10〜
図17を参照しながら説明する。なお、第1の実施形態と同じ部材には同じ符号を付すに止めて、その詳細な説明は省略する。
本実施形態の右側のベース部材21及びシートバックフレーム24には以下に説明するスライド・リクライニング制御機構74が設けてある。
右側のベース部材21の右側面にはロック爪制御機構75が設けてある。ロック爪制御機構75は、ベース部材21に固定されるブラケット76と、ブラケット76に対して回転可能な動力伝達レバー77と、動力伝達レバー77を回転付勢するトーションスプリング81と、を具備している。動力伝達レバー77は、ブラケット76によって自身の軸線回りに回転可能に支持された前後方向に延びる直線回転部78と、動力伝達レバー77の後端から屈曲しながら上方に延びる被押圧端部79と、動力伝達レバー77の前端から屈曲しながら前方に延びる動力伝達端部80と、を有している。ブラケット76と動力伝達レバー77の間に設けたトーションスプリング81は、正面(前方)から見たときに直線回転部78が反時計方向に回転するように動力伝達レバー77をブラケット76に対して回転付勢している。動力伝達端部80はロック爪14(
図10〜
図17では図示略)と係合しており、動力伝達レバー77に対してトーションスプリング81以外の外力を及ぼさないときロック爪14はロック位置に保持され、トーションスプリング81の付勢力に抗して動力伝達レバー77を正面(前方)から見て時計方向に回転させると、動力伝達端部80がロック爪14を上方に押圧することによってロック爪14がアンロック位置に回転する。
【0024】
右側のベース部材21の後端部の右側面にはブラケット83が固定してある。ブラケット83の前端部には支持溝84が形成してあり、ブラケット83の後端部にはバネ掛け片85が突設してある。さらにブラケット83の後部には回転支持孔86が形成してある。
ブラケット83の回転支持孔86には左右方向に延びる回転支持ピン88の左端部が嵌合固定してあり、回転支持ピン88にはロック解除レバー89が回転可能に支持してある。ロック解除レバー89の前部には回転支持ピン88に回転可能に嵌合する回転中心孔90が形成してあり、ロック解除レバー89の右側面には回転中心孔90の直後に位置するストッパ91が突設してある。ロック解除レバー89の後部には右側に向かって延びる押圧突片92が突設してあり、ロック解除レバー89の前端部にはバネ掛け片93が突設してある。ロック解除レバー89のバネ掛け片93とブラケット83のバネ掛け片85の間には引張バネS1の両端が係止してある。ロック解除レバー89は
図12、
図14、
図15に示すロック保持位置と、
図13に示すロック解除位置との間を回転可能であり、ロック解除レバー89に対して外力が及ばないときは引張バネS1の付勢力によってロック保持位置に位置する。さらにロック解除レバー89の押圧突片92の下面は被押圧端部79の上面と常に当接している。
回転支持ピン88には、ロック解除レバー89の右側に位置する被押圧レバー95(被押圧部材)が回転可能に支持してある。被押圧レバー95は、回転支持ピン88に抜止めされた状態で回転可能に嵌合する回転中心孔97と、上端部に突設した被押圧突起98と、後縁部から右側に突出するバネ掛け片99と、を具備している。被押圧レバー95はロック解除レバー89に対して、被押圧レバー95の後面がストッパ91の前面に当接してそれ以上後方へ回転できなくなる後端位置と、ストッパ91から前方に離れて押圧突起34の回転軌跡から下方に退避する非干渉位置(
図14、
図15の位置)と、の間を回転支持ピン88回りに回転可能である。図示するように回転支持ピン88にはトーションスプリングS2(付勢手段)のコイル状部が取り付けてあり、トーションスプリングS2の両端がバネ掛け片99とバネ掛け片93にそれぞれ係止している。このトーションスプリングS2は被押圧レバー95をロック解除レバー89に対して上記後端位置側(
図12〜
図14、
図16では反時計方向)に回転付勢している。被押圧レバー95がストッパ91に当接するときの上記後端位置は、被押圧レバー95がストッパ91を後方に押圧しないとき(ロック解除レバー89が上記ロック保持位置に位置するとき)は、被押圧突起98が押圧突起34の回転軌跡上に位置する干渉位置(
図12の位置)となり、被押圧レバー95がストッパ91を後方に押圧することによりロック解除レバー89がロック解除位置に位置するときは、干渉位置から後方に倒れてベース部材21の右側面に固定したストッパ94に当接するウォークイン動作位置(
図13の位置)となる。
【0025】
右側のベース部材21の前部には、当該部分を左右方向に貫通する回転支持軸100が回転可能に支持してある。回転支持軸100の右端部にはベース部材21の右側に位置する連動レバー101の下端部が固定してあり、連動レバー101の上端部の右側面には係止突起102が一体的に突設してある。一方、回転支持軸100の左端部にはベース部材21の左側に位置すると共に連動レバー101と平行なキャンセル解除レバー103の下端部が固定してある。キャンセル解除レバー103は連動レバー101より長く、その上端は常にベース部材21の上方に突出している。さらに連動レバー101とベース部材21の右側面には、ターンオーバースプリングS3の両端がそれぞれ取り付けてある。このターンオーバースプリングS3は、連動レバー101及びキャンセル解除レバー103が水平方向に対して直交する中立位置(図示略)に位置するときは連動レバー101及びキャンセル解除レバー103に対して付勢力を及ばさず、連動レバー101及びキャンセル解除レバー103が該中立位置より後方に位置したときは連動レバー101及びキャンセル解除レバー103を
図12、
図13に示したキャンセル解除位置に向けて回転付勢し、連動レバー101及びキャンセル解除レバー103が該中立位置より前方に位置するときは連動レバー101及びキャンセル解除レバー103を
図14、
図15に示したウォークインキャンセル位置に向けて回転付勢する。
係止突起102には合成樹脂等の硬質部材からなる連係リング104が前後方向に相対移動可能に係合してあり、連係リング104と被押圧レバー95には操作ワイヤWの両端がそれぞれ固定してある。図示するように操作ワイヤWの前後両端部を除く部分は可撓性を有する被覆チューブ105により被覆してあり、被覆チューブ105の前後両端はブラケット83の支持溝84と、ベース部材21の右側面に突設した支持突起106の支持溝によって支持してある。
【0026】
図15、
図17に示すように回転接続軸23には、右側のベース部材21の左側に位置し、かつカム溝109を有する回転カム部材108が回転可能に支持してある。
シートバックフレーム24の左側面には連係部材111が固定してあり、連係部材111と回転カム部材108は左右方向に延びる回転接続ピン112を介して回転可能に接続している。
さらに右側のベース部材21の左側面には、回転支持ピン113を介して略V字形のV字レバー114が回転可能に支持してある。V字レバー114の上端部に突設したカムピン115はカム溝109に移動可能に嵌合している。
またV字レバー114の下端部には、左右方向に延びる回転接続ピン116を介して前後方向に延びるスライドレバー117の後端部が回転可能に接続している。スライドレバー117の前端部は左右方向に延びる回転接続ピン118を介してキャンセル解除レバー103の下端部に回転可能に接続している。
【0027】
以上説明した押圧突起34、引張バネS1、トーションスプリングS2、ターンオーバースプリングS3、操作ワイヤW、及び、符号75〜118の各部材がスライド・リクライニング制御機構74の構成要素である。さらに押圧突起34、ロック爪制御機構75、ロック解除レバー89、被押圧レバー95、引張バネS1、及び、トーションスプリングS2が「ウォークイン機構」の構成要素である。また被押圧レバー95、回転支持軸100、連動レバー101(係止突起102)、キャンセル解除レバー103、及び、操作ワイヤWが「ウォークインキャンセル機構」の構成要素であり、回転カム部材108、連係部材111、回転接続ピン112、回転支持ピン113、V字レバー114(カムピン115)、回転接続ピン116、スライドレバー117、回転接続ピン118、及び、トーションスプリングS2が「キャンセル解除機構」の構成要素である。
【0028】
続いてシートバック25とシートクッション30を回転操作したときのスライド・リクライニング制御機構74(ウォークイン機構、ウォークインキャンセル機構、及び、キャンセル解除機構)の動作について説明する。
まずは
図12に示すようにシートバック25(シートバックフレーム24)が起立位置に位置し、シートクッション30が着座可能位置に位置する場合について説明する。
このときは
図12に示すように押圧突起34が被押圧レバー95(被押圧突起98)に外力を及ぼさないので、被押圧レバー95はトーションスプリングS2によって干渉位置に保持されている。さらに被押圧レバー95からロック解除レバー89に対して外力が及ばないので、ロック解除レバー89は引張バネS1の付勢力によってロック保持位置に位置する。さらにロック解除レバー89から被押圧端部79には力が及ばないためロック爪14はロック位置に保持されるので、アッパレール13のロアレール12に対するスライドが規制される。
【0029】
続いて
図12の状態からスライド・リクライニング制御機構74(ウォークイン機構)がウォークイン動作を行う場合について説明する。
シートバック25に設けたウォークイン操作手段を操作することによりシートバック25を上記回転付勢手段の付勢力によって前方に回転させると、
図13に示すように押圧突起34が被押圧レバー95(被押圧突起98)を後方に押圧して、被押圧レバー95がストッパ94に当接するウォークイン動作位置まで回転するので、シートバック25は中間傾斜位置(
図13の位置)で回転を停止する。さらに被押圧レバー95がウォークイン動作位置まで回転すると、被押圧レバー95がストッパ91を後方に押圧することによりロック解除レバー89がロック解除位置まで回転するので、
図13に示すようにロック解除レバー89の押圧突片92が被押圧端部79を下方に回転させる。その結果、トーションスプリング81の付勢力に抗して動力伝達レバー77が正面(前方)から見て時計方向に回転し、動力伝達端部80によって上方に押圧されたロック爪14がアンロック位置に回転してロック孔12aから脱出するので、アッパレール13がロアレール12に対してスライド可能になる(ウォークイン動作が行われる)。
なお、被押圧レバー95がウォークイン動作位置まで回転すると操作ワイヤWが
図12の状態から後方に引かれるため、連係リング104も後方に引かれる。しかし
図12のとき連動レバー101及びキャンセル解除レバー103がキャンセル解除位置に位置するので、連係リング104は係止突起102に対して後方に相対移動する(空振りする)だけであり、連動レバー101及びキャンセル解除レバー103はキャンセル解除位置に位置したままとなる。
アッパレール13(シート20)が所望の位置までスライドした後にシートバック25を中間傾斜位置から起立位置側に戻すと、押圧突起34から被押圧レバー95(被押圧突起98)への押圧力が解除されるので、引張バネS1の付勢力によってロック解除レバー89がロック保持位置に復帰し、ストッパ91によって押圧された被押圧レバー95が干渉位置に復帰する。さらにロック解除レバー89がロック保持位置に復帰することによりロック爪制御機構75が
図12の状態に戻り、さらにロック爪14が上記ロック爪付勢手段によってロック位置まで回転しロック孔12aに対して係合する。
【0030】
次に
図12の状態からスライド・リクライニング制御機構74(ウォークインキャンセル機構)によってウォークインキャンセル動作を行った上でシートバック25を全倒位置まで回転させる動作、及び、スライド・リクライニング制御機構74(キャンセル解除機構)がウォークインのキャンセル状態を解除する動作について説明する。
この場合はまずシートクッション30を退避位置まで回転させて、シートクッション30によって覆われていたキャンセル解除レバー103を露出させる。そしてキャンセル解除位置に位置しているキャンセル解除レバー103(及び連動レバー101)をウォークインキャンセル位置まで回転させる(
図14、
図15参照)。すると
図14に示すように係止突起102によって連係リング104及び操作ワイヤWが前方に引かれるので、干渉位置に位置していた被押圧レバー95が非干渉位置まで回転する。被押圧レバー95が非干渉位置まで回転するときは、被押圧レバー95からロック解除レバー89に回転力が及ぶことはなくロック解除レバー89はロック保持位置に位置したままとなるので、ロック爪14はロック位置に位置したままロック孔12aとの係合関係を保持する(ウォークインキャンセル機構によってウォークイン動作がキャンセルされる)。
被押圧レバー95が非干渉位置に位置すると押圧突起34は被押圧レバー95と干渉しなくなるので、この後にウォークイン操作手段を操作してシートバック25を全倒位置まで回転させることが可能になる(
図16、
図17参照)。すると
図17に示すように回転カム部材108のカム溝109の前側端面によってカムピン115が後斜め上方に押圧されるのでV字レバー114が
図15の位置から反時計方向に回転し、スライドレバー117が
図15の位置から後方にスライドし、スライドレバー117の後方への移動力によってウォークインキャンセル位置に位置していた連動レバー101及びキャンセル解除レバー103がキャンセル解除位置に回転復帰する(
図17参照)。すると係止突起102が連係リング104の内部を連係リング104の後端部まで後方に相対移動する(空振りする)ため、係止突起102から連係リング104及び操作ワイヤWに及んでいた前向きの牽引力が解除される。その結果、トーションスプリングS2の回転付勢力によって非干渉位置に位置していた被押圧レバー95が干渉位置まで回転する(キャンセル解除機構がウォークインのキャンセル状態を解除する。図示略)。
【0031】
最後に
図16、
図17の状態からシート装置10を
図12の状態へ戻す場合について説明する。
シートクッション30を退避位置に位置させたまま全倒位置に位置していたシートバック25を後方に回転させると(図示略)、干渉位置に位置する被押圧レバー95(被押圧突起98)に押圧突起34が後方から当接して、被押圧レバー95を非干渉位置側に回転させながらシートバック25が起立位置側に回転する。さらに押圧突起34が被押圧レバー95(被押圧突起98)を前方に乗り越えることにより押圧突起34から被押圧レバー95に対する押圧力が消失すると、被押圧レバー95はトーションスプリングS2の回転付勢力によって干渉位置へ回転復帰する(ウォークイン動作のキャンセル状態に戻る)。
シートバック25を起立位置(あるいは中間傾斜位置の近傍位置より起立位置側の)まで回転復帰させてリクライニングロック手段によりリクライニングロックした後にシートクッション30を着座可能位置に戻すと、シートクッションロック手段がシートクッション30を自動的にロックしてシートクッション30を着座可能位置に保持する。上記のようにこのとき被押圧レバー95が干渉位置に復帰しているため(キャンセル解除機構がウォークインのキャンセル状態が解除されているため)、この後に再度シートバック25を前方に(中間傾斜位置まで)倒せばウォークイン機構によるウォークイン動作が可能になる。
【0032】
以上説明したように本実施形態でもウォークインキャンセル機構及びキャンセル解除機構の全構成要素であるまた被押圧レバー95、回転支持軸100、連動レバー101(係止突起102)、キャンセル解除レバー103、回転カム部材108、連係部材111、回転支持ピン113、V字レバー114(カムピン115)、回転接続ピン116、スライドレバー117、回転接続ピン118、トーションスプリングS2、及び、操作ワイヤWをベース部材21とシートバック25に設けており、シートクッション30側には設けていない。そのためシートクッション30のベース部材21に対する取付位置が多少不正確であっても、ウォークインキャンセル機構及びキャンセル解除機構を確実に機能させることが可能である。またウォークインキャンセル機構及びキャンセル解除機構の一部の構成要素をシートクッション30側に設ける場合に比べて、ウォークインキャンセル機構及びキャンセル解除機構の構成が簡単になる。
さらにシートバック25を起立位置から全倒位置へ回転させることにより、キャンセル解除機構(回転支持軸100、連動レバー101(係止突起102)、キャンセル解除レバー103、回転カム部材108、連係部材111、回転支持ピン113、V字レバー114(カムピン115)、回転接続ピン116、スライドレバー117、回転接続ピン118、及び、トーションスプリングS2)によるウォークインのキャンセル解除動作を行っているので、キャンセル解除動作を行うための操作手段を別個に設ける場合に比べてシート20の構造及びキャンセル解除動作が簡単である。
【0033】
以上、上記各実施形態を利用しながら本発明を説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、様々な変更を施しながら実施可能である。
例えば、左側のスライドレール装置11、ベース部材21、シートバック25にのみスライドロック機構(ロック孔12a、ロック爪14)、及び、スライド・リクライニング制御機構32、74を設けたり、左右のスライドレール装置11、ベース部材21、シートバック25にスライドロック機構、及び、スライド・リクライニング制御機構32、74を設けても良い。