【実施例1】
【0012】
まず、
図1を用いて加熱調理器の本体2を説明する。本体2は、システムキッチン1の上面から落とし込んで設置され、設置後は本体2前面のオーブン4と操作パネル5がシステムキッチン1の前面に露出するようになっている。なお、操作パネル5は主にオーブン4の電源の入・切やメニューの選択・設定、操作を行うものである。
【0013】
本体2の上面には、耐熱ガラス等からなるプレート3が配置され、プレート3の周囲端面は、プレート枠11によって保護されている。プレート3には、載置部右6a、載置部左6b、載置部中央6cからなる載置部6が描かれており、載置した調理鍋を誘導加熱できる。そして、載置部6の下方には、調理鍋を誘導加熱するための加熱コイルユニット(図示無し)が設置されている。
【0014】
また、プレート3の前側には、各加熱コイルユニットの操作を行う上面操作部9と各加熱コイルユニットの火力などを表示する上面表示部10が設けられている。
【0015】
さらに、本体2の上面後側には、吸気口7と排気口8が設けられており、吸気口7を介して本体内部に導かれた冷却風は、本体内部に設けられた冷却ファンによって、発熱部品である加熱コイルユニットや電子部品に供給され、発熱部品を冷却した排熱は、排気口8から排出される。なお、排気口8からは、オーブン4からの廃熱も同時に排出される。
【0016】
オーブン4は、魚や肉、ピザ等の被加熱物を焼くためのもので、本実施例では、本体2前面の左側に配置しているが、右側に配置しても良く、また、呼び名としてロースター、グリルと呼ぶこともある。
【0017】
次に、
図2〜
図9を用いて、本実施例のオーブン4を詳細に説明する。
図2および
図3は、
図1の一点鎖線A−Aにおけるオーブン4の断面図であり、
図2はオーブンドア12を閉じた状態を示し、
図3はオーブンドア12を引き出した状態を示す。オーブン4の内壁を構成する調理庫14は、前面に開口部14dを設けた箱型をしており、開口部14dの周囲にはフランジ部14eが設けられる。
図2に示すように、開口部14dはフランジ部14eと重なるオーブンドア12によって塞がれる。
【0018】
調理庫14の内部には、魚などの被加熱物30を載置する焼網29と、焼網29を載置し被加熱物30から落ちる脂などを受け止めるオーブン皿28が収納されている。オーブン皿28は出し入れし易いようにスライドレール27に載置され、スライドレール27の前端にオーブンドア12がドア受け26によって固定されている。
【0019】
また、調理庫14の内部には、シーズヒータ等の発熱体からなる上ヒータ42と下ヒータ43が設置され、上ヒータ42は調理庫14の上面に固定金具16で固定されている。さらに、調理庫14の奥側上部には、触媒を用いて油煙を分解浄化してから排気する排気出口41が設けられる。
【0020】
次に、
図4から
図7を用いて、下ヒータ43の詳細な形状および下ヒータ43を動かすための構成を詳細に説明する。
【0021】
まず、
図7の斜視図を用いて、下ヒータ43の形状を説明する。
図7に示すように、下ヒータ43は、線ヒータを複数回折り曲げて形成されており、各々の線ヒータを直線状に連結するヒータ押え金具18を備えている。そして、
図2に示すように、ヒータ押え金具18の両端を調理庫14の側面に設けたヒータ受け22に載置した状態で下ヒータ43に通電し、魚などの被加熱物を調理する。
【0022】
図4は調理庫14を奥側面14aから見た斜視図であり、調理庫14の左奥側(
図4では符号B近傍)には開口部A14bが設けられ、右奥側(
図4では符号C近傍)には開口部B14cが設けられている。そして、開口部A14bには、開口部A14bを封鎖するとともに、支持具20aに保持されたヒンジピン37aを軸にして回転自在なヒータ保持金具19aが設けられている。また、開口部B14cには、開口部B14cを封鎖するとともに、支持具20bに保持されたヒンジピン37bを軸にして回転自在なヒータ保持金具19bが設けられている。このように、ヒータ保持金具19a、19bを回転自在としたので、これらにヒータ金具17a、17bを介して固定された下ヒータ43を上下に動かすことができる。本実施例では、使用者が下ヒータ43を動かすときには、本体2の前面に突出した操作レバー24を用いるが、その詳細は後述する。
【0023】
次に、
図5から
図7を用いて、両開口部近傍の構成を更に詳細に説明する。
【0024】
まず、
図4の符号Bで示した、開口部A14b近傍の構成を
図6と
図7を用いて説明する。
図6に示すように、調理庫43の後側には下ヒータ43の端子部43aが突出しており、その先端には端子43bが設けられている。図示しない電源から電線を介して端子43bに供給される電力によって、下ヒータ43が加熱される。
図7に示したように、下ヒータ43の端子部43aは、ヒータ金具17aの支え部17a−1によって支えられるとともに、ヒータ固定部17a−2で圧着固定されている。このように、端子部43aを2点支持することによって、下ヒータ43を強固に固定でき、下ヒータ43の自重によってヒータ固定部17a−2でガタが生じるのを抑制できる。
【0025】
また、
図6に示すように、ヒータ保持金具19aは、平面部19a−1、ヒンジ部19a−2、貫通部19a−3、連結部19a−4、電線固定部19a−5を備える。これらのうち、平面部19a−1は、開口部A14bを塞ぐ機能とヒータ金具17aを介在して下ヒータ43を固定する機能を有する。調理を行うときには、開口部A14bは平面部19a−1によって閉鎖されるので、調理中に発生した油煙等の開口部A14bからの漏洩が抑制される。なお、下ヒータ43を固定したヒータ金具17aは、ヒータ保持金具19aにネジなどで固定される。このとき、ヒータ金具17aを、ヒータ保持金具19aの平面部19a−1に直接固定しても良いし、複数の部品を介在して間接的に固定しても良い。
【0026】
ヒンジ部19a−2は、平面部19a−1に垂直なフランジを略コ字状を形成するように配置したものであり、ヒンジ部19a−2のフランジに設けられた貫通部19a−3は、ヒンジピン37aを貫通させるためのものである。
【0027】
連結部19a−4は、後述するアーム23からの力をヒータ保持金具19aに伝達するものであり、連結部19a−4に連結されたアーム23が前方向に移動すると、ヒンジピン37aを支点としてヒータ保持金具19aが奥側に倒れ、これに固定された下ヒータ43が持ち上がる。
【0028】
電線固定部19a−5は、端子43bに接続された電線を保持して固定するものである。操作レバー24が操作され、下ヒータ43が持ち上げられた場合、電線固定部19a−5は端子43bとの位置関係を維持したまま変動するので、電線に働いた力は電線固定部19a−5に負担され、端子43bに応力が発生することがない。このため、端子43bでは応力による電線の断線を回避できる。
【0029】
支持具20aは、調理庫14の底面に固定されるものであり、ヒンジ部20a−1、貫通部20a−2を備える。これらのうち、ヒンジ部20a−1は、調理庫14の奥側面14aに垂直なフランジを略コ字を形成するように配置したものであり、ヒンジ部20a−1に設けられた貫通部20a−2は、ヒンジピン37aを貫通させるためのものである。
【0030】
以上で説明したように、ヒータ保持金具19a、ヒンジピン37a、支持具20aによって、ヒンジ31aが形成され、ヒンジピン37aを軸として下ヒータ43を自在に持ち上げることができる。なお、
図2に示すように、ヒータ保持金具19aと本体2を導電部材50で接続した。これにより、ヒンジ31aを介する接続に頼らずとも、下ヒータ43の外装を確実にアースに接続することができる。
【0031】
次に、
図4の符号Cで示した開口部B14c近傍の構成を
図5と
図7を用いて説明する。
図7に示したように、下ヒータ43の右奥側は、ヒータ金具17bの支え部17b−1によって支えられる。下ヒータ43は、ヒータ金具17aと17bの二つによって支持されるので、下ヒータ43を強固に固定でき、下ヒータ43の自重によってガタが生じるのを抑制できる。
【0032】
また、
図5に示すように、ヒータ保持金具19bは、平面部19b−1、ヒンジ部19b−2、貫通部19b−3を備える。これらのうち、平面部19a−1は、開口部B14cを塞ぐ機能とヒータ金具17bを介在して下ヒータ43を固定する機能を有する。調理を行うときには、開口部B14cは平面部19b−1によって閉鎖されるので、調理中に発生した油煙等の開口部B14cからの漏洩が抑制される。なお、下ヒータ43を固定したヒータ金具17bは、ヒータ保持金具19bにネジなどで固定される。このとき、ヒータ金具17bを、ヒータ保持金具19bの平面部19b−1に直接固定しても良いし、複数の部品を介在して間接的に固定しても良い。
【0033】
ヒンジ部19b−2は、平面部19b−1に垂直なフランジを略コ字を形成するように配置したものであり、ヒンジ部19b−2のフランジに設けられた貫通部19b−3は、ヒンジピン37bを貫通させるためのものである。
【0034】
支持具20bは、調理庫14の奥側面14aに固定されるものであり、ヒンジ部20b−1、貫通部20b−2を備える。これらのうち、ヒンジ部20b−1は、調理庫14の奥側面14aに垂直なフランジを略コ字を形成するように配置したものであり、ヒンジ部20b−1に設けられた貫通部20b−2は、ヒンジピン37bを貫通させるためのものである。
【0035】
以上で説明したように、ヒータ保持金具19b、ヒンジピン37b、支持具20bによって、ヒンジ31bが形成され、ヒンジピン37bを軸として下ヒータ43を自在に持ち上げることができる。
【0036】
次に、操作レバー24を操作し下ヒータ43を持ち上げるための機構を詳細に説明する。
図2に示すように、支持具20aは、調理庫14の前端から後端にわたり、調理庫14の下部を覆うように設けられた一体成形の部品であり、その上面に取り付けられた、操作レバー24、アーム23の可動空間を確保している。なお、本実施例では、支持具20aを一体成形としたので、バラツキを抑制でき、後述する下ヒータ駆動機構の機械的な品質を均一に保つことが容易となる。
【0037】
図7に示すように、操作レバー24は、前端となる操作部24aが、調理庫14の下側のフランジ部14eに設けられた案内溝であるレバーガイド35を貫通して本体2の前面に突出したものであり、ネジ40(割りピン等で代用しても良い)を支点24bに操作部24aがレバーガイド35内を左右に動くレバーである。そして、操作レバー24は、下方に設けられたバネ25によって常に上方に付勢されている。支点24bの隣には作用点24cが設けられ、操作部24a、支点24b、作用点24cの三者で略L字状の梃子を構成する。作用点24cには、略I字状のアーム23の前端が回転自在に連結され、操作レバー24を操作することで、アーム23を動かすことができる。
図7から明らかなように、操作レバー24の操作部24aから支点24bまでの距離は、支点24bから作用点24cまでの距離よりも長いため、使用者は小さな力でアーム23を動かすことができる。以上で説明した、操作レバー24、ネジ40、アーム23によって、使用者が加えた力を伝達する動力伝達機構が構成される。なお、操作レバー24の本体をステンレス等の金属で形成し、操作部24aを樹脂で形成すると、調理庫14内部が高温である場合に、熱伝導によって操作レバー24と操作部24aもある程度高温となるため、操作部24aに触れることで、火傷をすることなく調理庫14の大凡の温度を知ることができる。
【0038】
次に、
図9を用いて、レバーガイド35の構成を詳細に説明する。レバーガイド35は、上方向が開放した略コ字状の形状であり、左上には係止部A35aが設けられ、右上には係止部B35bが設けられている。また、係止部B35bの左上には、操作部24aを確実に保持するための切り込み35cが設けられ、係止部A35aの右下には、操作部24aの移動を滑らかにするための面取り35dが設けられる。操作レバー24はバネ25によって常に上方に付勢されているため、一方の係止部に留まっている操作部24aが不意に他方の係止部に移動してしまうことはないが、使用者が操作部24aを押し下げながらバネ25上面をスライドさせると、容易に他方の係止部に移動させることができる。
【0039】
次に、操作レバー24を操作して、下ヒータ43を持ち上げる仕組みを説明する。調理可能状態のときには下ヒータ43はヒータ受け22に載置されており、操作レバー24の操作部24aはレバーガイド35の係止部A35aに位置している。
図7に示すように、使用者が操作部24aを押し下げながら係止部B35bの方向(符号イ)に動かすと、操作レバー24が符号ロの方向に回転する。そして、操作レバー24の回転運動(符号ロ)は、アーム23が前方向に動く略直線運動(符号ハ)に変換される。このようにして、符号イ方向の力が、略90度方向の異なる符号ハ方向の力へ変換される。ヒータ保持金具19aの連結部19a−4に連結されたアーム23の後端が前方向に移動(符号ハ)すると、ヒータ保持金具19aはヒンジピン37aを支点として奥側に倒れる(符号ニ)。この結果、ヒータ金具17aを介してヒータ保持具19aに固定された下ヒータ43は、符号ホの方向に回転して上ヒータ42方向に持ち上がる。なお、下ヒータ43の回転に伴い、これを固定するヒータ金具17bおよびヒータ保持金具19bもヒンジピン37bを支点として符号ニの方向に回転する。
【0040】
アーム23の前方向の移動量と下ヒータ43の持ち上げ量は比例関係にあるため、下ヒータ43の持ち上げ量を大きくするには、アーム23の前方向の移動量を大きくすれば良い。本実施例の操作レバー24では、操作部24aを動かしたときのアーム23の前方向の移動量を最大化するため、操作部24a、支点24b、作用点24cの配置を略二等辺三角形状としている。
【0041】
下ヒータ43が持ち上がると、下ヒータ43の自重によって符号ホと逆方向の力が働く。この結果、符号ニ、ハ、ロとは逆方向の力が各部品に働き、最終的に操作部24aにも符号イとは逆方向に力(左向きの力)が働く。下ヒータ43の自重によって発生する左向きの力と、バネ25によって発生する上向きの力が作用する結果、操作部24aには、左上向きの力が作用する。係止部B35bの左上には切り込み35cが設けられており、係止部B35bに移動した操作部24aは切り込み35cで確実に保持されるので、使用者が手を放しても、操作部43aが不意に係止部A35aに戻ってしまうことがなく、下ヒータ43を上げた状態を維持することができる。
【0042】
次に、持ち上げられた下ヒータ43を調理可能な位置に戻すための操作を詳細に説明する。下ヒータ43を元の位置に戻すときには、使用者は、操作部24aを右方向に移動させ切り込み35cから外した後、下方向に押し下げ、係止部B35bから係止部A35aに移動させる。このときの操作レバー24の回転運動(符号ロの逆方向)は、アーム23が後方向に動く略直線運動(符号ハの逆方向)に変換される。アーム23が後方向に移動すると、ヒータ保持金具19aがヒンジピン37aを支点として前側に立ち上がり、これに固定された下ヒータ43が調理可能な位置に戻る。なお、前述したように、操作部24aには左向きの力が作用しているため、切り込み35cを外れた操作部24aは、使用者が力を加えなくても自動的に左方向に移動する。また、操作部24aには上方向の力が作用しているため、レバーガイド35の左側に移動した操作部24aは、使用者が力を加えなくても自動的に上方向に移動し係止部A35aに収まる。そして、調理庫14の側面に設けたヒータ受け22にヒータ押さえ金具18が載置され、下ヒータ43が調理時の位置に固定される。以上のようにして、下ヒータ43を調理可能な位置に戻すことができる。
【0043】
次に、本実施例のオーブンドア12の裏面の構成を説明する。オーブンドア12の裏面には、係止部A35aと対応する位置に凹部あるいは孔が設けられている。従って、操作レバー24の操作部24aが係止部A35aにあり、下ヒータ43が調理可能な位置にあるときには、操作部24aが凹部あるいは孔に嵌まるので、オーブンドア12を閉めることができる。このような構成を採った結果、オーブンドアが閉まっているオーブン調理中に誤って操作部24aを操作してしまうことはない。一方、操作部24aが係止部B35bにあり、下ヒータ43が持ち上げられているときには、操作部24aがオーブンドア12の裏面と衝突するので、オーブンドア12を閉めることができない。このため、使用者はオーブンドア12が閉められているかを確認するだけで、下ヒータ43の状態を確認することができる。なお、オーブンドア12の開閉を検出するドアスイッチを設け、オーブンドア12が開いているときにはオーブン調理を開始しないようにしても良い。
【0044】
次に、以上で説明した本実施例の加熱調理器を用いた調理について、被加熱物30として魚を焼く場合を例に説明する。
【0045】
まず、オーブンドア12を手前に引くと、ドア受け26に接続されたスライドレール27が引き出され、オーブン皿28と焼網29も一緒に引き出される。
【0046】
オーブンドア12を閉めているとき、操作部24aはオーブンドア12の下部に収まっているので、不用意に触れてしまう心配や服を引っ掛ける心配がない。また、オーブンドア12を開けたときは、操作部24aはオーブン皿28の下方に位置するため、被加熱物30を焼網29に載置するときに邪魔になることも無い。
【0047】
調理時は、魚などから油煙が発生し、その多くは排出出口41部に搭載された触媒(図示なし)にて分解され浄化されて排気される。しかし、一部は調理庫14の内壁全面に油脂として付着する。調理回数が増えると、調理庫14内に付着した油脂は調理時に解け流れて溜まり、特に調理庫14の底面14dが大変汚れることになる。
【0048】
次に、調理を行うことで汚れてしまった調理庫14の底面14dの具体的な清掃方法について説明する。
【0049】
まず、清掃時の火傷を防ぐため、調理庫14が冷えていることを確認した後、オーブンドア12を引き出し、オーブン皿28と焼網29を取り外し、次いで、オーブンドア12を取り外す。これにより、開口部14dに障害物が無くなるため、操作レバー24の操作部24aを視認できるようになり、容易に操作できる。操作部24aを押し下げ、レバーガイド35の係止部A35aから係止部B35bにスライドさせると、
図8に示すように、下ヒータ43が持ち上がる。これにより、下ヒータ43の下に手を入れる空間が生まれるので、濡れた布巾や中性洗剤を染み込ませた布巾で調理庫14の底面14dを容易に拭くことできる。清掃が終了すると、操作レバー24の操作部24aを係止部B35bから係止部A35aに戻すことで下ヒータ43の位置を調理時の位置に戻すことができ、再び調理できるようになる。
【0050】
以上で説明した本実施例によれば、加熱調理器の本体の前側に設けた操作部でヒータを可動できるので、安全性や使い勝手を良くすることができる。