(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記先幕が前記開口を閉鎖する位置における前記第1付勢部材のトルクは、前記先幕が前記開口から退避した位置から前記開口を閉鎖する位置まで移動するように、前記第1駆動部材を駆動させる際の前記第1アクチュエータの起動時のトルクよりも小さく設定されている、請求項1又は2のフォーカルプレーンシャッタ。
前記後幕が前記開口を閉鎖する位置における前記第2付勢部材のトルクは、前記後幕が前記開口から退避した位置から前記開口を閉鎖する位置まで移動するように、前記第2駆動部材を駆動させる際の前記第2アクチュエータの起動時のトルクよりも小さく設定されている、請求項1乃至4の何れかのフォーカルプレーンシャッタ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して実施例を説明する。
図1は、本実施例のフォーカルプレーンシャッタ1の正面図である。フォーカルプレーンシャッタ1は、開口11を有した基板10、開口11を開閉する先幕20A及び後幕20B、先幕20Aを駆動するためのアーム31a及び補助アーム32a、後幕20Bを駆動するためのアーム31b及び補助アーム32bを有している。
【0013】
基板10は合成樹脂製であり、矩形状の開口11を有している。先幕20A、後幕20Bは、それぞれ複数の羽根から構成されるが、
図1においては、21a、21bのみを示し、他の羽根は省略してある。羽根21a、21bは合成樹脂製であり、薄く形成されている。また、アーム31a、31b、補助アーム32a、32bは薄板状の合成樹脂製である。これらアームは基板10に揺動自在に支持されている。
【0014】
フォーカルプレーンシャッタ1は、先幕20A、後幕20Bを駆動する駆動源であるアクチュエータ70a、70bを備えている。アクチュエータ70a、70bは、それぞれ所定の範囲を双方向に回転可能なロータ71a、71bを有している。ロータ71a、71bは、例えば周方向に複数の磁極が着磁された永久磁石である。アクチュエータ70aは、ロータ71a以外に、不図示のステータ、ステータに巻回されたコイルを有している。コイルへの通電によりステータが励磁され、ステータとロータ71aとの間に作用する磁気的吸引力、反発力により、ロータ71aが回転する。70bも同様である。ロータ71a、71bにはそれぞれ、先幕駆動レバー(以下、駆動レバーと称する)40a、後幕駆動レバー(以下、駆動レバーと称する)40bが固定されている。
【0015】
ロータ71aが回転することにより、駆動レバー40aは所定の範囲を揺動する。駆動レバー40aの先端には突起部43aが形成されている。突起部43aは、アーム31aに形成された嵌合孔に嵌合している。また、基板10には突起部43aを逃がす円弧状の逃げ溝13aが形成されている。突起部43aが逃げ溝13aの端部に当接することにより、駆動レバー40aの揺動範囲が制限されている。
【0016】
逃げ溝13aの一端及び他端のそれぞれに緩衝部材51a、52aが設けられている。駆動レバー40aの突起部43aが緩衝部材51a又は52aに当接することにより、駆動レバー40aのバウンドが抑制されている。先幕20Aが開口11から退避した状態においては、先幕20Aを構成する複数の羽根は重畳状態にあり、駆動レバー40aの突起部43aは緩衝部材52aに当接する。先幕20Aが開口11を閉鎖した状態では、先幕20Aを構成する複数の羽根は展開して開口11を閉鎖し、駆動レバー40aの突起部43aは緩衝部材51aに当接する。
【0017】
同様に、駆動レバー40bもアーム31bの嵌合孔に嵌合した突起部43bを有し、逃げ溝13bの一端及び他端のそれぞれに緩衝部材51b、52bが設けられている。後幕20Bが開口11から退避した状態においては、後幕20Bを構成する複数の羽根は重畳状態にあり、駆動レバー40bの突起部43bは緩衝部材51bに当接する。後幕20Bが開口11を閉鎖した状態では、後幕20Bを構成する複数の羽根は展開して開口11を閉鎖し、駆動レバー40bの突起部43bは緩衝部材52bに当接する。緩衝部材51a、52a、51b、52bは、例えば、ゴム又はスポンジである。緩衝部材51a、52a、51b、52bは、それぞれ、第1緩衝部材、第2緩衝部材、第3緩衝部材、第4緩衝部材の一例である。逃げ溝13a、13bは、それぞれ第1及び第2逃げ溝の一例である。
【0018】
例えば、連射撮影時においては、駆動レバー40a、40bは、短期間で所定範囲を往復回転する。このため、逃げ溝13a、13bの両端にこのような緩衝部材を設けることにより、駆動レバー40a、40bの衝撃を吸収することができる。
【0019】
以上の構成により、ロータ71aが回転すると駆動レバー40aが揺動してアーム31aが揺動する。これにより、先幕20Aが移動して開口11を開閉する。同様に、ロータ71bが回転すると駆動レバー40bが揺動してアーム31bが揺動する。これにより、後幕20Bが移動して開口11を開閉する。駆動レバー40a、アーム31a、補助アーム32aは、先幕20Aを駆動する第1駆動部材の一例である。アクチュエータ70a、70bは、それぞれ第1及び第2アクチュエータの一例である。駆動レバー40b、アーム31b、補助アーム32bは、後幕20Bを駆動する第2駆動部材の一例である。駆動レバー40a、40bは、それぞれ第1及び第2駆動レバーの一例である。アーム31a、31bは、第1及び第2アームの一例である。
【0020】
ここで、フォーカルプレーンシャッタ1を備えた光学機器の一例であるカメラの構成について説明する。
図2は、フォーカルプレーンシャッタ1を備えたカメラのブロック図である。カメラは、フォーカルプレーンシャッタ1、制御部300、撮像素子400等を備えている。制御部300は、カメラ全体の動作を制御し、CPU、ROM、RAM等を備えている。尚、カメラは、
図2には図示していないが、焦点距離を調整するためのレンズ等を備えている。
【0021】
制御部300は、アクチュエータ70a、70bのそれぞれのコイルの通電状態を制御する。撮像素子400は、被写体像を電気信号に変換する。撮像素子400は、例えばCCDやCMOSである。
【0022】
尚、先幕20A、後幕20Bをチャージ位置に位置付けるためのセット部材は設けられていない。先幕20A、後幕20Bは、双方向に回転可能なロータ71a、71bによってチャージ位置に位置付けることができるからである。
【0023】
次に、フォーカルプレーンシャッタ1の動作について説明する。
図3は、フォーカルプレーンシャッタ1のタイミングチャートである。
図1は、初期状態でのフォーカルプレーンシャッタ1を示している。初期状態においては、
図1に示すように、先幕20A、後幕20Bは開口11から退避して全開状態を保持している。
【0024】
その後、カメラのレリーズスイッチが押されると、チャージ動作が開始される。チャージ動作が開始されると、アクチュエータ70aのコイルに通電されて、後述する付勢部材の付勢力に抗して先幕20Aは開口11を閉じるように移動する。また、アクチュエータ70bのコイルには、後幕20Bが開口11に向けて一度移動するように通電された後、アクチュエータ70bのコイルへの通電方向が切り替えられて、後幕20Bは開口11から退避する。
【0025】
その後、先幕20Aが開口11を閉鎖し、後幕20Bが開口11から退避した状態でアクチュエータ70a、70bのコイルへの通電が遮断される。このようにしてチャージ動作が完了する。
【0026】
チャージ動作完了後、所定の休止期間を経て、露出動作が開始される。露出動作が開始されると、アクチュエータ70aのコイルが通電され、先幕20Aは後述する付勢部材の付勢力を利用して開口11を開くように走行する。アクチュエータ70aのコイルが通電されてから所定時間経過後に、アクチュエータ70bのコイルが通電され、後幕20Bが後述する付勢部材の付勢力に抗して開口11を閉じるように走行する。先幕20Aが開口11から完全に退避し後幕20Bが開口11を完全に閉鎖するとアクチュエータ70a、70bのコイルへの通電は遮断される。このようにして、露出動作が終了する。先幕20Aが開口11を開き始めたときから後幕20Bが開口11を完全に閉じるまでの間の期間を露出期間と称する。
【0027】
露出動作終了後、制御部300のRAMや又はカメラ側のメモリにデータが読み込まれる。次に、アクチュエータ70bのコイルが通電され、後幕20Bが後述する付勢部材の付勢力を利用して開口11から退避して、
図1に示す初期状態に戻りリセットが完了する。
【0028】
また、動画撮影中においては
図1に示すような全開状態が維持される。ここで、動画撮影中やレリーズスイッチが押される前の全開状態においては基本的に、アクチュエータ70a、70bは無通電状態である。即ち、ロータ71aの保持トルクによって、駆動レバー40aの突起部43aは52aに押し付けられた状態が維持されている。また、ロータ71bの保持トルクによって、駆動レバー40bの突起部43bは緩衝部材51bに押し付けられた状態が維持される。
【0029】
ここで、本実施例のフォーカルプレーンシャッタ1において、補助アーム32a、32bには、それぞれ付勢部材60a、60bが連結されている。付勢部材60a、60bは、それぞれコイルバネであるがこれに限定されない。例えば、付勢部材60a、60bは、板バネ、線バネであってもよい。付勢部材60aの一端は補助アーム32aに連結され、付勢部材60aの他端は基板10に連結されている。付勢部材60bの一端は補助アーム32bに連結され、付勢部材60bの他端は基板10に連結されている。全開状態において、付勢部材60a、60bは、それぞれ先幕20A、後幕20Bが開口11から退避するように補助アーム32a、32bを付勢している。このように、ロータ71a、71bの保持トルクに加えて付勢部材60a、60bの付勢力により、先幕20A、後幕20Bが開口11から退避した状態が維持できる。これにより、アクチュエータ70a、70bが無通電で全開状態が維持されている場合に衝撃等によって先幕20A又は後幕20Bが意図せずに開口11を閉じる、又は開口11の一部を閉鎖してしまうことを簡単な構成で抑制することができる。付勢部材60a、60bは、それぞれ第1及び第2付勢部材の一例である。
【0030】
図4は、ロータ71aのトルクと付勢部材60aのトルクとの関係を示したグラフである。縦軸はトルクを示し、横軸は駆動レバー40aの作動角を示している。駆動レバー40aの突起部43aが緩衝部材51aに当接しているとき、即ち、先幕20Aが開口11を閉鎖する位置を、駆動レバー40aの作動角が0度としている。駆動レバー40aの突起部43aが52aに当接しているとき、即ち、先幕20Aが開口11から退避した位置で駆動レバー40aの作動角は最大となる。
【0031】
曲線T71aは、ロータ71aが時計方向に回転するときの時計方向でのトルクの大きさを示している。換言すれば、曲線T71aは、先幕20Aが開口11から退避するときのロータ71aのトルクを示している。曲線T72aは、ロータ71aが反時計方向に回転するときの反時計方向でのトルクの大きさを示している。換言すれば、曲線T72aは、先幕20Aが開口11を閉鎖するときのロータ71aのトルクを示している。
図2に示すように、ロータ71aが何れの方向に回転する場合であっても、起動してから停止するまでの間ロータ71aのトルクは上昇し、また、起動時でのロータ71aのトルクは最小値T7aminとなる。また、駆動レバー40aの突起部43aが緩衝部材51a又は52a当接する直前のロータ71aのトルクは最大値T7amaxとなる。
【0032】
曲線T6aは、付勢部材60aのトルクを示している。駆動レバー40aの作動角が0度のとき、即ち、先幕20Aが開口11を閉鎖する位置のとき付勢部材60aは最も伸びた状態になり付勢部材60aのトルクは最大値T6amaxとなる。駆動レバー40aの作動角が最大のとき、付勢部材60aの長さは自然長となり付勢部材60aのトルクは最小値0となる。先幕20Aが開口11から退避した位置からロータ71aが反時計方向に回転するにつれて、付勢部材60aのトルクは増大する。
【0033】
ここで、フォーカルプレーンシャッタ1の動作の説明で述べたように、先幕20Aが開口11から退避した位置から開口11を閉鎖する位置へ移動する際には、ロータ71aは、付勢部材60aの付勢力に抗して駆動レバー40aを駆動させなければならない。このため、
図4に示すように、付勢部材60aのトルクは、ロータ71aが反時計方向に回転している間の反時計方向でのトルクよりも常に小さくなるように設定されている。具体的には、先幕20Aが開口11を閉鎖する位置における付勢部材60aのトルクの最大値T6amaxは、先幕20Aが開口11から退避した位置から開口11を閉鎖する位置まで移動するように、駆動レバー40aを駆動させる際のロータ71aの起動時のトルクT7aminよりも小さくなるように設定されている。これにより、付勢部材60aの付勢力の影響を受けることなくロータ71aを反時計方向に回転させることができる。
【0034】
図5は、ロータ71bのトルクと付勢部材60bのトルクとの関係を示したグラフである。後幕20Bが開口11から退避した位置を、駆動レバー40bの作動角が0度としている。後幕20Bが開口11を閉鎖する位置で駆動レバー40bの作動角は最大となる。曲線T71bは、ロータ71bが時計方向に回転するときの時計方向でのトルクの大きさを示している。換言すれば、曲線T71bは、後幕20Bが開口11を閉鎖するときのロータ71bのトルクを示している。曲線T72bは、ロータ71bが反時計方向に回転するときの反時計方向でのトルクの大きさを示している。換言すれば、曲線T72bは、後幕20Bが開口11から退避するときのロータ71bのトルクを示している。曲線T6bは、付勢部材60bのトルクを示している。ロータ71bが時計方向に回転するにつれて、付勢部材60bのトルクは増大し、後幕20Bが開口11を閉鎖する位置のとき付勢部材60bは最も伸びた状態になり付勢部材60bのトルクは最大値T6bmaxとなる。駆動レバー40bの作動角が0度のとき、付勢部材60bの長さは自然長となり付勢部材60bのトルクは最小値0となる。後幕20Bが開口11から退避した位置からロータ71bが反時計方向に回転するにつれて、付勢部材60bのトルクは増大する。
【0035】
ここで、フォーカルプレーンシャッタ1の動作の説明で述べたように、後幕20Bが開口11から退避した位置から開口11を閉鎖する位置へ移動する際には、ロータ71bは、付勢部材60bの付勢力に抗して駆動レバー40bを駆動させなければならない。このため、
図5に示すように、付勢部材60bのトルクは、ロータ71bが時計方向に回転している間の時計方向でのトルクよりも常に小さくなるように設定されている。具体的には、後幕20Bが開口11を閉鎖する位置における付勢部材60bのトルクの最大値T6bmaxは、後幕20Bが開口11から退避した位置から開口11を閉鎖する位置まで移動するように駆動レバー40bを駆動させる際のロータ71bの起動時のトルクT7bminよりも小さくなるように設定されている。これにより、付勢部材60bの付勢力の影響を受けることなくロータ71bを時計方向に回転させることができる。
【0036】
尚、上記実施例においては、先幕20A及び後幕20Bが開口11から退避した位置において、付勢部材60a及び付勢部材60bの付勢力がそれぞれ最小値0となる例を示したが、これに限らない。上記位置において、付勢部材60a及び付勢部材60bの付勢力がそれぞれ最小値となるように構成されていればよい。
【0037】
また、本実施例のフォーカルプレーンシャッタ1によれば、チャージ動作完了後の露出動作時の先幕の走行に、第1付勢部材である付勢部材60aの付勢力を使用することができる。同様に、露出動作完了後のリセット時の後幕の走行に、第2付勢部材である付勢部材60bの付勢力を使用することができる。このように、付勢部材60aの付勢力は、露出動作時に先幕の走行を補助し、付勢部材60bの付勢力は、露出動作完了後のリセット時の後幕の走行を補助する働きを有する。したがって、先幕20Aの駆動源であるアクチュエータ70a、後幕20Bの駆動源であるアクチュエータ70bの駆動電源の負荷を低減できる。
【0038】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、変形・変更が可能である。
【0039】
本実施例のフォーカルプレーンシャッタは、スチールカメラやデジタルカメラなどの光学機器に採用できる。
【0040】
また、本実施例においては、羽根、アームは薄く形成された合成樹脂製である場合を説明したが、薄く形成された金属製であってもよい。上記実施例において、先幕は4枚の羽根から構成されるが、これに限定されない。先幕及び後幕は、それぞれ2枚〜5枚の何れであってもよい。
【0041】
上記実施例において、付勢部材60a、60bは、それぞれ補助アーム32a、32bに連結されている。しかしながらこのような構成に限定されず、例えば、付勢部材60aは、アーム31a又は駆動レバー40aに連結されていてもよい。また、付勢部材60bは、アーム31b又は駆動レバー40bに連結されていてもよい。
【0042】
上記実施例においては、
図4に示したように付勢部材60aのトルクは、駆動レバー40aの作動角が最大のときでゼロになるように設定してある。しかしながら、このような構成に限定されず、駆動レバー40aの作動角が最大の時でも、先幕20Aが開口11から退避するように補助アーム32aを引張るように付勢部材60aを設定してもよい。即ち、駆動レバー40aの作動角が最大のときでも付勢部材60aが自然長よりも伸びた状態となるようにセットしてもよい。付勢部材60bについても同様である。