(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ウレタンプレポリマーおよび前記ポリアミック酸プレポリマーの割合が、重量比で、ウレタンプレポリマー:ポリアミック酸プレポリマー=1:0.5〜9.5である請求項1記載のポリイミド樹脂。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のポリイミド樹脂は、主鎖に連続する2つ以上のイミドユニットが導入された上述の一般式(I)で表されるポリイミド樹脂(以下、「ポリイミド樹脂(I)」と言うことがある。)である。
【0010】
一般式(I)中においてR
1は、芳香族環または脂肪族環を含む2価の有機基を示し、例えば後述する反応行程式(A)に従ってポリオール(b)とともにウレタンプレポリマー(c)を形成し得るジイソシアナート(a)においてイソシアナト基(−NCO)を除く残基等が挙げられる。
【0011】
R
2は、重量平均分子量100〜10,000、好ましくは300〜5,000の2価の有機基を示し、例えば反応行程式(A)に従ってジイソシアナート(a)とともにウレタンプレポリマー(c)を形成し得るポリオール(b)において2つの水酸基(−OH)を除く残基等が挙げられる。
【0012】
R
3は、芳香族環、脂肪族環または脂肪族鎖を含む2価の有機基を示し、例えば後述する反応行程式(B)に従ってテトラカルボン酸二無水物(e)とともにポリアミック酸プレポリマー(f)を形成し得る炭素数6〜27の芳香族ジアミン化合物、炭素数6〜24の脂肪族ジアミン化合物および炭素数6〜24の脂環式ジアミン化合物から選ばれる少なくとも1種のジアミン化合物(d)においてアミノ基(−NH
2)を除く残基等が挙げられる。上述した脂肪族鎖は、炭素数1のものも含む。
【0013】
R
4は、4個以上の炭素を含む4価の有機基を示し、例えば反応行程式(B)に従ってジアミン化合物(d)とともにポリアミック酸プレポリマー(f)を形成し得る炭素数6〜18の芳香族テトラカルボン酸二無水物および炭素数4〜6の脂環式テトラカルボン酸二無水物から選ばれる少なくとも1種のテトラカルボン酸二無水物(e)の残基等が挙げられる。
【0014】
nは1〜100、好ましくは2〜50の整数を示す。mは2〜1,000、好ましくは5〜500の整数を示す。lは1〜100、好ましくは2〜80の整数を示す。
【0015】
ポリイミド樹脂(I)は、ジイソシアナートとポリオールから得た分子両末端にイソシアナト基を有するウレタンプレポリマーと、ジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物から得た分子両末端にアミノ基を有するポリアミック酸プレポリマーと、を混合して反応させた後、ポリアミック酸プレポリマーをイミド化した共重合体であるのが好ましい。ポリイミド樹脂(I)は、例えば以下に示すような反応工程式(A)〜(C)を経て製造することができる。
【0016】
[反応行程式(A)]
【化2】
[式中、R
1,R
2,nは、上述したものと同じである。]
【0017】
(ウレタンプレポリマー(c)の合成)
まず、反応行程式(A)に従い、ジイソシアナート(a)とポリオール(b)から分子両末端にイソシアナト基を有するウレタンプレポリマー(c)を得る。ポリイミド樹脂(I)は、このウレタンプレポリマー(c)に由来するウレタン成分によって優れた柔軟性および耐久性を示すことができる。
【0018】
ジイソシアナート(a)としては、例えば2,4−トリレンジイソシアナート(TDI)、2,6−トリレンジイソシアナート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)、ポリメリックMDI(Cr.MDI)、ジアニシジンジイソシアナート(DADL)、ジフェニルエーテルジイソシアナート(PEDI)、ピトリレンジイソシアナート(TODI)、ナフタレンジイソシアナート(NDI)、ヘキサメチレンジイソシアナート(HMDI)、イソホロンジイソシアナート(IPDI)、リジンジイソシアナートメチルエステル(LDI)、メタキシリレンジイソシアナート(MXDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート(TMDI)、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート(TMDI)、ダイマー酸ジイソシアナート(DDI)、イソプロピリデンビス(4−シクロヘキシルイソシアナート)(IPCI)、シクロヘキシルメタンジイソシアナート(水添MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアナート(水添TDI)、TDI2量体(TT)等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよく、減圧蒸留したものを用いるのが好ましい。
【0019】
ポリオール(b)としては、例えばポリプロピレングリコール(PPG)、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリマーポリオール等のポリエーテルポリオール;ポリカーボネートポリオール;アジペート系ポリオール(縮合ポリエステルポリオール)、ポリカプロラクトン系ポリオール等のポリエステルポリオール;ポリブタジエンポリオール;アクリルポリオール等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0020】
ポリオール(b)は、70〜90℃、1〜5mmHg、10時間〜30時間程度の条件で減圧乾燥したものを用いるのが好ましい。また、ポリオール(b)の重量平均分子量としては、100〜10,000であるのが好ましく、300〜5,000であるのがより好ましい。重量平均分子量は、ポリオール(b)をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、得られた測定値をポリスチレン換算して得られる値である。
【0021】
反応は、ジイソシアナート(a)とポリオール(b)とを所定の割合で混合した後、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。ジイソシアナート(a)とポリオール(b)との混合比(モル)は、ジイソシアナート(a):ポリオール(b)=1.01:1〜2:1にするのが好ましい。反応温度としては、室温(23℃)〜90℃程度、反応時間としては、1時間〜5時間程度が適当である。
【0022】
反応は、溶媒下、無溶媒下のいずれで行ってもよい。反応を溶媒下で行う場合に使用できる溶媒としては、例えばN,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N−ヘキシル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリドン等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよく、脱水処理したものを用いるのが好ましい。
【0023】
得られるウレタンプレポリマー(c)の重量平均分子量としては、300〜50,000であるのが好ましく、500〜45,000であるのがより好ましい。ウレタンプレポリマー(c)の重量平均分子量があまり小さいと、ポリイミド樹脂(I)がハードになりすぎるので、柔軟性および耐久性が低下するおそれがある。また、ウレタンプレポリマー(c)の重量平均分子量があまり大きいと、ポリイミド樹脂(I)がソフトになりすぎるので、応力緩和の変化を抑制し難くなるおそれがある。重量平均分子量は、ウレタンプレポリマー(c)をGPCで測定し、得られた測定値をポリスチレン換算して得られる値である。
【0024】
[反応行程式(B)]
【化3】
[式中、R
3,R
4,mは、上述したものと同じである。]
【0025】
(ポリアミック酸プレポリマー(f)の合成)
次に、反応行程式(B)に従い、ジアミン化合物(d)とテトラカルボン酸二無水物(e)から分子両末端にアミノ基を有するポリアミック酸プレポリマー(f)を得る。このポリアミック酸プレポリマー(f)をイミド化すると、連続する2つ以上のイミドユニットが得られる。ポリイミド樹脂(I)は、このポリアミック酸プレポリマー(f)を上述したウレタンプレポリマー(c)と反応させた後にイミド化してなるので、主鎖に連続する2つ以上のイミドユニットを効率よく導入することができる。
【0026】
ジアミン化合物(d)としては、例えば1,4−ジアミノベンゼン(別名:p−フェニレンジアミン、略称:PPD)、1,3−ジアミノベンゼン(別名:m−フェニレンジアミン、略称:MPD)、2,4−ジアミノトルエン(別名:2,4−トルエンジアミン、略称:2、4−TDA)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(別名:4,4’−メチレンジアニリン、略称:MDA)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(別名:4,4’−オキシジアニリン、略称:ODA、DPE)、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(別名:3,4’−オキシジアニリン、略称:3,4’−DPE)、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(別名:o−トリジン、略称:TB)、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(別名:m−トリジン、略称:m−TB)、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(略称:TFMB)、3,7−ジアミノ−ジメチルジベンゾチオフェン−5,5−ジオキシド(別名:o−トリジンスルホン、略称:TSN)、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ビス(4−アミノフェニル)スルフィド(別名:4,4’−チオジアニリン、略称:ASD)、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(別名:4,4’−スルホニルジアニリン、略称:ASN)、4,4’−ジアミノベンズアニリド(略称:DABA)、1,n−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン(n=3,4,5、略称:DAnMG)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)−2,2−ジメチルプロパン(略称:DANPG)、1,2−ビス[2−(4−アミノフェノキシ)エトキシ]エタン(略称:DA3EG)、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(略称:FDA)、5(6)−アミノ−1−(4−アミノメチル)−1,3,3−トリメチルインダン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(略称:TPE−Q)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(別名:レゾルシンオキシジアニリン、略称:TPE−R)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(略称:APB)、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(略称:BAPB)、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン(略称:BAPP)、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(略称:BAPS)、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(略称:BAPS−M)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(略称:HFBAPP)、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(略称:MBAA)、4,6−ジヒドロキシ−1,3−フェニレンジアミン(別名:4,6−ジアミノレゾルシン)、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル(別名:3,3’−ジヒドロキシベンジジン、略称:HAB)、3,3’,4,4’−テトラアミノビフェニル(別名:3,3’−ジアミノベンジジン、略称:TAB)等の炭素数6〜27の芳香族ジアミン化合物;1,6−ヘキサメチレンジアミン(HMDA)、1,8−オクタメチレンジアミン(OMDA)、1,9−ノナメチレンジアミン、1,12−ドデカメチレンジアミン(DMDA)、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(別名:イソホロンジアミン)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、シクロヘキサンジアミン等の炭素数6〜24の脂肪族または脂環式ジアミン化合物;1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン等のシリコーン系ジアミン化合物等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0027】
テトラカルボン酸二無水物(e)としては、例えば無水ピロメリット酸(PMDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、ビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物(BPDA)、ベンゾフェノン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ジフェニルスルホン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物(DSDA)、4,4’−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)、m(p)−ターフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物等の炭素数6〜18の芳香族テトラカルボン酸二無水物;シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、1−カルボキシメチル−2,3,5−シクロペンタントリカルボン酸−2,6:3,5−二無水物等の炭素数4〜6の脂環式テトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0028】
反応は、ジアミン化合物(d)とテトラカルボン酸二無水物(e)とを所定の割合で混合した後、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。ジアミン化合物(d)とテトラカルボン酸二無水物(e)との混合比(モル)は、ジアミン化合物(d):テトラカルボン酸二無水物(e)=1.01:1〜2:1にするのが好ましい。反応温度としては、室温(23℃)〜90℃程度、反応時間としては、1時間〜5時間程度が適当である。反応は、溶媒下、無溶媒下のいずれで行ってもよい。反応を溶媒下で行う場合に使用できる溶媒としては、反応行程式(A)で例示したものと同じ溶媒が挙げられる。
【0029】
得られるポリアミック酸プレポリマー(f)の重量平均分子量としては、10,000〜1,000,000であるのが好ましく、20,000〜500,000であるのがより好ましい。ポリアミック酸プレポリマー(f)の重量平均分子量があまり小さいと、ポリイミド樹脂(I)がソフトになりすぎるので、応力緩和の変化を抑制し難くなるおそれがある。また、ポリアミック酸プレポリマー(f)の重量平均分子量があまり大きいと、ポリイミド樹脂(I)がハードになりすぎるので、柔軟性および耐久性が低下するおそれがある。重量平均分子量は、ポリアミック酸プレポリマー(f)をGPCで測定し、得られた測定値をポリスチレン換算して得られる値である。
【0030】
[反応行程式(C)]
【化4】
[式中、R
1〜R
4,n,m,lは、上述したものと同じである。]
【0031】
(ポリイミド樹脂(I)の合成)
最後に、ウレタンプレポリマー(c)と、ポリアミック酸プレポリマー(f)と、を混合して反応させ、これによりポリイミド樹脂(I)の前駆体であるポリウレタンアミック酸(以下、「PUA」と言う。)(g)を得、得られたPUA(g)をイミド化してポリイミド樹脂(I)を得る。
【0032】
ウレタンプレポリマー(c)と、ポリアミック酸プレポリマー(f)との反応は、溶媒下、無溶媒下のいずれで行ってもよい。溶媒下で反応を行う場合には、ウレタンプレポリマー(c)と、ポリアミック酸プレポリマー(f)とを所定の割合で溶媒に加えて混合し、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で反応を行うのが好ましい。
【0033】
ウレタンプレポリマー(c)とポリアミック酸プレポリマー(f)との混合比は、固形分換算による重量比で、ウレタンプレポリマー(c):ポリアミック酸プレポリマー(f)=1:0.5〜9.5の範囲にするのが好ましい。また、ウレタンプレポリマー(c)とポリアミック酸プレポリマー(f)とを、NCO/NH
2比が1.0程度の割合になるように混合するのが好ましい。これにより、ポリイミド樹脂(I)におけるイミド成分の割合を適度に高めることができ、その結果、柔軟性を維持して高い耐久性を得つつ、応力緩和の変化を抑制することができる。
【0034】
使用できる溶媒としては、反応行程式(A)で例示したものと同じ溶媒が挙げられる。反応温度としては、100〜300℃であるのが好ましく、135〜200℃であるのがより好ましく、140〜160℃であるのがさらに好ましい。反応時間としては、1時間〜10時間程度が適当である。
【0035】
PUA(g)のイミド化(脱水縮合反応)は、PUA(g)が熱分解しない条件で行えばよく、反応温度としては、150〜250℃程度、反応時間としては、90分〜150分程度が適当である。イミド化前に、PUA(g)を70〜200℃程度、20分〜3時間程度の条件で熱処理することによって、溶媒を揮発させてもよい。
【0036】
一方、無溶媒下で反応を行う場合には、通常の攪拌槽型反応器の他、排気系を有する加熱手段を備えた押出機の中でも行うことができるので、得られるポリイミド樹脂(I)を押し出して、そのままフィルム状ないしシート状に成形することができる。
【0037】
ポリイミド樹脂(I)の重量平均分子量としては、10,000〜1,000,000であるのが好ましく、15,000〜150,000であるのがより好ましく、20,000〜100,000であるのがさらに好ましい。ポリイミド樹脂(I)の重量平均分子量があまり小さいと、応力緩和の変化を抑制し難くなるので好ましくない。また、ポリイミド樹脂(I)の重量平均分子量があまり大きいと、柔軟性および耐久性が低下するおそれがある。重量平均分子量は、PUA(g)をGPCで測定し、得られた測定値をポリスチレン換算した値から導き出される値である。なお、ポリイミド樹脂(I)ではなく、PUA(g)をGPCで測定するのは、ポリイミド樹脂(I)がGPCの測定溶媒に不溶なためである。
【0038】
ポリイミド樹脂(I)におけるイミド成分の割合、すなわちイミド分率としては、30〜95重量%であるのが好ましく、55〜95重量%であるのがより好ましい。イミド分率があまり小さいと、応力緩和の変化を抑制し難くなるので好ましくない。また、イミド分率があまり大きいと、柔軟性および耐久性が低下するおそれがある。
【0039】
イミド分率は、ウレタンプレポリマー(c)およびポリアミック酸プレポリマー(f)の仕込み量から算出される値であり、下記式(α)から算出される値である。
【0041】
ポリイミド樹脂(I)の弾性率としては、0.1〜2.5GPaであるのが好ましく、1〜2GPaであるのがより好ましい。弾性率があまり小さいと、応力緩和の変化を抑制し難くなるので好ましくない。また、弾性率があまり大きいと、柔軟性および耐久性が低下するおそれがある。弾性率は、上述したイミド分率を調整することによって、所望の値に調整することができる。弾性率は、後述するように、所定の引張試験における伸張率1%時の応力より算出される値である。
【0042】
上述したポリイミド樹脂(I)は、所望の成形品に成形して使用することができる。成形品としては、例えばシート、フィルム、チューブ、ホース、ロールギア、ダイヤフラム、パッキング材、防音材、防振材、ブーツ、ガスケット、ベルト、ベルトラミネート製品、被覆材、パーベーパレーション用の分離膜、光学非線形材料、弾性繊維、圧電素子、アクチュエーター、その他の各種自動車部品、工業機械部品、スポーツ用品等が挙げられる。
【0043】
例示した成形品のうち、ベルトについて説明すると、該ベルトとしては、例えば食品用搬送ベルト、基板搬送用ベルト等の搬送ベルト;駆動用ベルト;サクション(穴あき)ベルト等が挙げられる。ポリイミド樹脂(I)を上述した成形品に成形する際には、効率よく成形する上で、PUA(g)の状態で成形した後にイミド化するのが好ましい。具体例を挙げると、PUA(g)を含む溶液を遠心成形してイミド化すれば、ポリイミド樹脂(I)からなる芯体のないシームレスベルトを得ることができる。なお、ポリイミド樹脂(I)は、例示した用途に限定されず、応力緩和の変化抑制と、柔軟性および耐久性とが要求される分野において、好適に用いることができる。
【0044】
以下、合成例および実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の合成例および実施例のみに限定されるものではない。
【0045】
以下の実施例で使用したポリイミド樹脂は、以下の4種類である。
<合成例1>
上述した反応行程式(A)〜(C)に従ってポリイミド樹脂(1)を合成した。
(ウレタンプレポリマーの合成)
まず、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)[日本ポリウレタン工業(株)社製]を減圧蒸留した。また、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)(i)[保土谷化学(株)社製の商品名「PTMG1000」、重量平均分子量:1,000]を80℃、2〜3mmHg、24時間の条件で減圧乾燥した。
【0046】
次に、上述したMDI10.13gと、PTMG20.24gとを、攪拌機およびガス導入管を備えた500mlの四つ口セパラブルフラスコにそれぞれ加え、アルゴン雰囲気下、80℃で2時間攪拌して、分子両末端にイソシアナト基を有するウレタンプレポリマーを得た。得られたウレタンプレポリマーをGPCで測定した結果、ポリスチレン換算した値で重量平均分子量は15,000であった。
【0047】
(ポリアミック酸プレポリマーの合成)
4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MDA)9.75gと、無水ピロメリット酸(PMDA)6.31gとを、攪拌機およびガス導入管を備えた500mlの四つ口セパラブルフラスコにそれぞれ加え、アルゴン雰囲気下、80℃で2時間攪拌して、分子両末端にアミノ基を有するポリアミック酸プレポリマーを得た。
【0048】
(ポリイミド樹脂(1)の合成)
得られたウレタンプレポリマーとポリアミック酸プレポリマーとの混合比が、固形分換算による重量比で、ウレタンプレポリマー:ポリアミック酸プレポリマー1:0.54になるように、ウレタンプレポリマー30gと、ポリアミック酸プレポリマー16gとを、攪拌機およびガス導入管を備えた500mlの四つ口セパラブルフラスコにそれぞれ加え、さらに脱水処理したN−メチル−2−ピロリドン(NMP)200mlを加えた。
【0049】
次に、アルゴンガス雰囲気下、150℃で2時間攪拌し、PUAを含む溶液を得た。得られたPUA溶液を遠心成形機の金型に流し込み、金型温度120℃、回転数300rpm、2時間の条件で遠心成形してPUAシートを得た。このPUAシートを金型ごと減圧デシケータ内で200℃、2時間加熱処理(脱水縮合反応)し、これにより一般式(I)中のnが1〜100、mが2〜1,000、lが1〜100であるポリイミド樹脂(1)を、芯体のない周長300mm、厚さ100μmのシームレスベルトとして得た。得られたポリイミド樹脂(1)について、ATR法にてIRスペクトルを測定した結果、1780cm
-1、1720cm
-1および1380cm
-1にイミド環に由来する吸収が観察された。
【0050】
<合成例2>
まず、MDIを5.53gにし、PTMGを11.06gにした以外は、合成例1と同様にして、重量平均分子量が15,000であるウレタンプレポリマーを得た。
【0051】
次に、MDAを13.13gにし、PMDAを12.06gにした以外は、合成例1と同様にしてポリアミック酸プレポリマーを得た。
【0052】
得られたウレタンプレポリマーとポリアミック酸プレポリマーとの混合比が、固形分換算による重量比で、ウレタンプレポリマー:ポリアミック酸プレポリマー=1:1.5になるように、ウレタンプレポリマーを16.59g、ポリアミック酸プレポリマーを25.2gにした以外は、合成例1と同様にして、PUAを含む溶液を得た。
【0053】
そして、合成例1と同様にして、このPUA溶液からPUAシートを得、このPUAシートからポリイミド樹脂(2)を、芯体のない周長300mm、厚さ100μmのシームレスベルトとして得た。得られたポリイミド樹脂(2)について、ATR法にてIRスペクトルを測定した結果、1780cm
-1、1720cm
-1および1380cm
-1にイミド環に由来する吸収が観察された。
【0054】
<合成例3>
まず、MDIを4.4gにし、PTMGを8.7gにした以外は、合成例1と同様にして、重量平均分子量が15,000であるウレタンプレポリマーを得た。
【0055】
次に、MDAを26.4gにし、PMDAを27.1gにした以外は、合成例1と同様にしてポリアミック酸プレポリマーを得た。
【0056】
得られたウレタンプレポリマーとポリアミック酸プレポリマーとの混合比が、固形分換算による重量比で、ウレタンプレポリマー:ポリアミック酸プレポリマー=1:4になるように、ウレタンプレポリマーを13.1g、ポリアミック酸プレポリマーを53.5gにした以外は、合成例1と同様にして、PUAを含む溶液を得た。
【0057】
そして、合成例1と同様にして、このPUA溶液からPUAシートを得、このPUAシートからポリイミド樹脂(3)を、芯体のない周長300mm、厚さ100μmのシームレスベルトとして得た。得られたポリイミド樹脂(3)について、ATR法にてIRスペクトルを測定した結果、1780cm
-1、1720cm
-1および1380cm
-1にイミド環に由来する吸収が観察された。
【0058】
<合成例4>
まず、MDIを1.7gにし、PTMGを3.3gにした以外は、合成例1と同様にして、重量平均分子量が15,000であるウレタンプレポリマーを得た。
【0059】
次に、MDAを22.6gにし、PMDAを24.1gにした以外は、合成例1と同様にしてポリアミック酸プレポリマーを得た。
【0060】
得られたウレタンプレポリマーとポリアミック酸プレポリマーとの混合比が、固形分換算による重量比で、ウレタンプレポリマー:ポリアミック酸プレポリマー=1:9になるように、ウレタンプレポリマーを5g、ポリアミック酸プレポリマーを46.7gにした以外は、合成例1と同様にして、PUAを含む溶液を得た。
【0061】
そして、合成例1と同様にして、このPUA溶液からPUAシートを得、このPUAシートからポリイミド樹脂(4)を、芯体のない周長300mm、厚さ100μmのシームレスベルトとして得た。得られたポリイミド樹脂(4)について、ATR法にてIRスペクトルを測定した結果、1780cm
-1、1720cm
-1および1380cm
-1にイミド環に由来する吸収が観察された。
【0062】
[実施例1〜4]
上述した合成例1〜4で得たポリイミド樹脂(1)〜(4)について、重量平均分子量、イミド分率、弾性率、応力緩和保持率および耐久性を評価した。各評価方法を以下に示すとともに、その結果を表1に示す。
【0063】
(重量平均分子量)
PUA溶液をGPCで測定し、得られた測定値をポリスチレン換算した値から導き出した。
【0064】
(イミド分率)
上述した式(α)から算出した。
【0065】
(弾性率)
ポリイミド樹脂(1)〜(4)からなるシームレスベルトより3号ダンベル試験片を打ち抜き、島津製作所社製のオートグラフ「AGS−G」を用い、標線間20mm、引張り速度50mm/分の条件で引張試験を行い、伸張率1%時の応力より弾性率を算出した。
【0066】
(応力緩和保持率)
まず、ポリイミド樹脂(1)〜(4)からなるシームレスベルトを、幅10mm、周長300mmのベルト状に加工して試験ベルトを得た。次に、この試験ベルトを2軸プーリ間にセットし、0.5%伸張させたときの初期応力(S1)をロードセルによって測定した。次に、この試験ベルトを、0.5%伸張させた状態で走行速度300m/分の条件で走行させ、200時間走行後の応力(S2)をロードセルによって測定した。そして、初期応力(S1)と200時間走行後の応力(S2)とを、式:(S2/S1)×100に当てはめ、応力緩和保持率(%)を算出した。
【0067】
(耐久性)
まず、ポリイミド樹脂(1)〜(4)からなるシームレスベルトを、幅10mm、周長300mmのベルト状に加工して試験ベルトを得た。次に、この試験ベルトを2軸プーリ間にセットし、0.5%伸張させた状態で走行速度300m/分の条件で走行させ、ベルト破断に至るまでの回転数から耐久性を評価した。判定基準は、以下のように設定した。
◎:5×10
7回転以上
○:1×10
7回転以上5×10
7回転未満
△:5×10
6回転以上1×10
7回転未満
×:5×10
6回転未満
【0068】
[比較例1]
PUA溶液として、宇部興産社製の商品名「U−ワニス−A」を用いた以外は、上述した合成例1と同様にしてPUAシートを得、このPUAシートからポリイミド樹脂を、芯体のない周長300mm、厚さ100μmのシームレスベルトとして得た。
【0069】
得られたポリイミド樹脂について、実施例1〜4と同様にして、重量平均分子量、イミド分率、弾性率、応力緩和保持率および耐久性を評価した。その結果を表1に示す。
【0071】
表1から明らかなように、実施例1〜4は、応力緩和保持率に優れ、かつ耐久性にも優れているのが分かる。これに対し、一般的なポリイミド樹脂である比較例1は、応力緩和保持率には優れるものの、耐久性に劣る結果を示した。