特許第5798929号(P5798929)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5798929気道拡張用具及びこれを備えた気道拡張ユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5798929
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】気道拡張用具及びこれを備えた気道拡張ユニット
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/01 20060101AFI20151001BHJP
【FI】
   A61F5/01 Z
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-547554(P2011-547554)
(86)(22)【出願日】2010年12月21日
(86)【国際出願番号】JP2010072968
(87)【国際公開番号】WO2011078150
(87)【国際公開日】20110630
【審査請求日】2013年9月17日
(31)【優先権主張番号】特願2009-289497(P2009-289497)
(32)【優先日】2009年12月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000238201
【氏名又は名称】扶桑薬品工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500277803
【氏名又は名称】有限会社ネクスティア
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(72)【発明者】
【氏名】山本 啓一
(72)【発明者】
【氏名】北原 譲
(72)【発明者】
【氏名】丸山 泰代
(72)【発明者】
【氏名】新里 徹
【審査官】 金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−116662(JP,A)
【文献】 特開2009−142642(JP,A)
【文献】 特表2001−502580(JP,A)
【文献】 特開2006−296640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の首外周に装着して使用し、用具下敷き面上で使用される気道拡張用具であって、
装着した際に首後部側に接し、仰向き姿勢時に上方向の外力を受ける本体部と、
首の径に相当する距離だけ離れて前記本体部から前方へそれぞれ延出し、装着した際に両側の下顎にそれぞれ当接する一対の顎保持部と、
前記本体部に設けられ、仰向き姿勢時に下顎を上方へ突き出す方向の応力を前記本体部に及ぼす突出部と、を備え、
前記本体部及び一対の顎保持部はそれぞれ復元可能な部材で形成され、
前記仰向き姿勢から姿勢変更した場合には前記本体部及び前記一対の顎保持部が当該姿勢に応じて変形すると共に、前記仰向き姿勢になった場合には前記本体部が受ける外力を前記一対の顎保持部に作用させて気道を確保し得る高さに下顎を保持し、
前記本体部には、前記仰向き姿勢時に前記用具下敷き面に接するように、前記一対の顎保持部の延出方向に対して略垂直な平面となる受面部が形成され、前記仰向き姿勢時に前記用具下敷き面を前記受面部が押圧すると共に、前記受面部が当該用具下敷き面からの反力を受け止めて前記本体部が受ける外力として前記一対の顎保持部に作用させることを特徴とする気道拡張用具。
【請求項2】
人体の首外周に装着して使用し、用具下敷き面上で使用される気道拡張用具であって、
装着した際に首後部側に接し、仰向き姿勢時に上方向の外力を受ける本体部と、
首の径に相当する距離だけ離れて前記本体部から前方へそれぞれ延出し、装着した際に両側の下顎にそれぞれ当接する一対の顎保持部と、を備え、
前記本体部及び一対の顎保持部はそれぞれ復元可能な部材で形成され、
前記仰向き姿勢から姿勢変更した場合には前記本体部及び前記一対の顎保持部が当該姿勢に応じて変形すると共に、前記仰向き姿勢になった場合には前記本体部が受ける外力を前記一対の顎保持部に作用させて気道を確保し得る高さに下顎を保持し、
前記本体部は、前記顎保持部の一方に接続する第1の本体部と、当該第1の本体部と別体に構成され、前記顎保持部の他方に接続する第2の本体部とからなり、
前記一対の顎保持部は、前記第1及び第2の本体部に接続された各顎保持部の前記両側の下顎に対する装着位置を調整する調整手段を有し、
前記第1及び第2の本体部には、前記仰向き姿勢時に前記用具下敷き面に接するように、前記一対の顎保持部の延出方向に対して略垂直な平面となる受面部がそれぞれ形成され、前記仰向き姿勢時に前記用具下敷き面を前記各受面部が押圧すると共に、前記各受面部が当該用具下敷き面からの反力を受け止めて前記本体部が受ける外力として前記一対の顎保持部に作用させることを特徴とする気道拡張用具。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の気道拡張用具と、前記用具下敷き面として当該気道拡張用具の下に敷かれる気道拡張用具用マットとを備えた気道拡張ユニットであって、
前記気道拡張用具用マットは、仰向き姿勢時に頭部が接する頭部接触部が、仰向き姿勢時に前記気道拡張用具の本体部が接する用具接触部よりも低く、
前記気道拡張用具用マットは、復元可能な弾性材料で形成された複数の柱状体で構成されており、前記頭部接触部に立設される柱状体の高さが、前記用具接触部に立設される柱状体よりも低いことを特徴とする気道拡張ユニット。
【請求項4】
前記弾性材料は、ウレタン樹脂であることを特徴とする請求項3に記載の気道拡張ユニット。
【請求項5】
前記気道拡張用具用マットは、気体、液体又はジェル状の物質が充填された袋状体からなることを特徴とする請求項3に記載の気道拡張ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気道を確保する気道拡張用具及びこれを備えた気道拡張ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、睡眠時に10秒以上の呼吸停止を複数回繰り返す睡眠時無呼吸が問題となっている。無呼吸状態が生じると、胸腔内圧が強い陰圧となって胸腔に血液が貯留し、高血圧や心疾患等の原因となったり、深度の深い第3及び第4段階での睡眠が妨げられるため日中に眠気を感じて交通事故等を起こす恐れがある。睡眠時無呼吸は、空気の通り道である上気道が閉塞することにより起こるものであり、首回りへの脂肪の沈着、扁桃肥大、小顎症、気道へ舌(舌根)が落ち込むこと等が原因となる。
【0003】
従来、気道への舌根の落ち込み防止を目的とした気道確保補助装置が知られている(特許文献1参照)。この気道確保補助装置は、下顎部の荷重を安定して支持する支持部と、支持部から支えるべき顎の位置までの距離を調節する伸縮可能な脚部と、脚部の先端に取り付けられると共に人の下顎角部に接触して該部位を支持する顎当て部と、脚部と顎当て部の間に設けられた角度調整機構とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−116662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、睡眠中に長時間、仰向き姿勢を維持し続けると、背部が圧迫されて背部の血行が悪くなり、また、脊椎や肩に一方向からの力が長時間加わることになるため肩凝りや腰痛が生じる原因となる。これらを防ぐため、人は無意識のうちに睡眠中に複数回、仰向き姿勢から横向き姿勢へ、又は横向き姿勢から仰向き姿勢へと寝返りを打つ。
しかしながら、上記従来の気道確保補助装置を睡眠時無呼吸防止用に適用した場合、この気道確保補助装置では支持部を安定させた状態で顎当て部により下顎を固定するので、仰向きの姿勢を維持し続けなければならず、寝返りを打つ等の体の向きを変えることができない問題がある。すなわち、従来の気道確保補助装置では、仰向きの姿勢で、かつ下顎が完全に固定された状態を維持し続けた場合のみ気道を確保することができるので、例えば、睡眠中に寝返りを打った後に再び仰向きの姿勢に戻った場合には、自動的に気道を確保することができない。従って、姿勢を変える度に睡眠を一旦停止して上記装置を固定し直す必要が生じて、睡眠時間が減少する等の快適な睡眠の妨げになる問題がある。また、睡眠中であるため、上記装置が外れてしまったことに気付かない場合には、仰向き姿勢における気道の確保がされず、睡眠時無呼吸を防止することができない。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、仰向き姿勢において気道を確実に確保することができると共に、容易に姿勢を変えることができる気道拡張用具及びこれを備えた気道拡張ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の気道拡張用具は、人体の首外周に装着して使用し、用具下敷き面上で使用される気道拡張用具であって、装着した際に首後部側に接し、仰向き姿勢時に上方向の外力を受ける本体部と、首の径に相当する距離だけ離れて前記本体部から前方へそれぞれ延出し、装着した際に両側の下顎にそれぞれ当接する一対の顎保持部と、前記本体部に設けられ、仰向き姿勢時に下顎を上方へ突き出す方向の応力を前記本体部に及ぼす突出部と、を備え、前記本体部及び一対の顎保持部はそれぞれ復元可能な部材で形成され、前記仰向き姿勢から姿勢変更した場合には前記本体部及び前記一対の顎保持部が当該姿勢に応じて変形すると共に、前記仰向き姿勢になった場合には前記本体部が受ける外力を前記一対の顎保持部に作用させて気道を確保し得る高さに下顎を保持し、前記本体部には、前記仰向き姿勢時に前記用具下敷き面に接するように、前記一対の顎保持部の延出方向に対して略垂直な平面となる受面部が形成され、前記仰向き姿勢時に前記用具下敷き面を前記受面部が押圧すると共に、前記受面部が当該下敷き面からの反力を受け止めて前記本体部が受ける外力として前記一対の顎保持部に作用させることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、仰向き姿勢時に本体部が上方向の外力を受けて、該本体部から延出した一対の顎保持部が下顎を押し上げて、気道を確保し得る高さに下顎を保持するので、舌根の喉側への落ち込みを防止することができる。すなわち、仰向き姿勢の際に、本体部が受ける上方向の外力を一対の顎保持部に作用させ、睡眠時(熟睡時)の首の筋の弛緩等により下顎骨の高さが低くならないように下顎の高さを維持する。これにより、下顎骨に付着する舌根の喉側への落ち込みを防止するので、気道を確保することができる。また、本体部及び顎保持部は復元可能な部材で構成されると共に、気道拡張用具は枕等から分離した構造であるので、仰向き姿勢から横向き姿勢やうつ伏せ姿勢に姿勢変更した場合には、本体部及び顎保持部が変更した姿勢に応じて変形するので、寝返り等により仰向きの姿勢から自由に姿勢を変更することができる。また、仰向き姿勢に復帰した際には、上記本体部が上方向の外力を受け、本体部が気道を確保し得る高さに下顎を保持するので、快適な睡眠を妨げることなく、再び自動的に気道を確保することができる。
【0010】
また、この構成によれば、突出部が、下顎を上方向へ突き出す方向の応力を本体部に及ぼすので、上方向に屈曲する気道が略直線状になるように引き延ばされる効果が増大し、気道を十分に拡張することができる。
【0012】
また、この構成によれば、受面部が下敷き面からの反力を受け止めるため、本体部によりこの反力が一対の顎保持部に適切かつ均一に作用する。従って、両下顎が略同一の高さとなり、すなわち、どちらか一方の下顎が傾くことなく安定した状態で気道を確保し得る高さに保持される。これにより、確実に気道を確保することができる。
【0013】
本発明の気道拡張用具は、人体の首外周に装着して使用し、用具下敷き面上で使用される気道拡張用具であって、装着した際に首後部側に接し、仰向き姿勢時に上方向の外力を受ける本体部と、首の径に相当する距離だけ離れて前記本体部から前方へそれぞれ延出し、装着した際に両側の下顎にそれぞれ当接する一対の顎保持部と、を備え、前記本体部及び一対の顎保持部はそれぞれ復元可能な部材で形成され、前記仰向き姿勢から姿勢変更した場合には前記本体部及び前記一対の顎保持部が当該姿勢に応じて変形すると共に、前記仰向き姿勢になった場合には前記本体部が受ける外力を前記一対の顎保持部に作用させて気道を確保し得る高さに下顎を保持し、前記本体部は、前記顎保持部の一方に接続する第1の本体部と、当該第1の本体部と別体に構成され、前記顎保持部の他方に接続する第2の本体部とからなり、前記一対の顎保持部は、前記第1及び第2の本体部に接続された各顎保持部の前記両側の下顎に対する装着位置を調整する調整手段を有し、前記第1及び第2の本体部には、前記仰向き姿勢時に前記用具下敷き面に接するように、前記一対の顎保持部の延出方向に対して略垂直な平面となる受面部がそれぞれ形成され、前記仰向き姿勢時に前記用具下敷き面を前記各受面部が押圧すると共に、前記各受面部が当該用具下敷き面からの反力を受け止めて前記本体部が受ける外力として前記一対の顎保持部に作用させることが好ましい。
【0014】
この場合、各顎保持部に接続する本体部が別体に構成されるので、寝返り等の姿勢変更を容易に行うことができる。また、下顎の形状等に合わせて各顎保持部の下顎に対する装着位置を調整するので、例えば、寝返りを打った後に仰向き姿勢に復帰した場合でも、各顎保持部の下顎への当接位置の位置ずれを抑え、適切に気道を確保し得る高さに下顎を保持することができる。
【0015】
本発明の気道拡張ユニットは、上記気道拡張用具と、前記用具下敷き面として当該気道拡張用具の下に敷かれる気道拡張用具用マットとを備えた気道拡張ユニットであって、前記気道拡張用具用マットは、仰向き姿勢時に頭部が接する頭部接触部が、仰向き姿勢時に前記気道拡張用具の本体部が接する用具接触部よりも低く、前記気道拡張用具用マットは、復元可能な弾性材料で形成された複数の柱状体で構成されており、前記頭部接触部に立設される柱状体の高さが、前記用具接触部に立設される柱状体よりも低いことを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、仰向き姿勢時に頭部が接する頭部接触部が、仰向き姿勢時に本体部が接する用具接触部より低くなるので、気道拡張用具の下面位置よりも頭部が下方に下がり、相対的に気道拡張用具が上方に押し上げられる。すなわち、仰向き姿勢時において、頭部の下方への沈み込みに対して、相対的に気道拡張用具が下顎を上方へ押し出すので、より確実に舌根の沈下を抑えて気道を確保することができる。
【0018】
また、この構成によれば、複数の柱状体が復元可能な弾性材料で構成されているため、頭部接触部と用具接触部との領域が確実に区別されるので、仰向き姿勢時に頭部の沈み込みに伴い気道拡張用具が沈み込むことを抑制することができる。また、頭部接触部に立設される柱状体の高さが、用具接触部に立設される柱状体よりも低いため、頭部接触部及び用具接触部にそれぞれ頭部及び気道拡張用具を合わせた状態で仰向き姿勢になることにより、自然に頭部が下方に下がると共に、気道拡張用具が下顎を上方へ押し出すので、気道を確保することができる。また、仰向き姿勢から姿勢変更した場合には、この姿勢変更に伴って複数の柱状体が変形するので、寝返り等の体位変換も容易に行うことができる。
【0019】
本発明は、上記気道拡張ユニットにおいて、前記弾性材料は、ウレタン樹脂で構成することも可能である。
【0020】
また、上記気道拡張ユニットにおいて、前記気道拡張用具用マットは、気体、液体又はジェル状の物質が充填された袋状体から構成することも可能である。
【0021】
この構成によれば、気道拡張用具用マットに、頭部及び気道拡張用具が接触した場合、それぞれの重量差により気道拡張用具に比べて頭部が深く沈みこむものの、袋状体の容積自体は変化しないため、頭部が深く沈み込む分だけ気道拡張用具の沈み込みが抑制される。従って、仰向き姿勢時には、自然に頭部が下方に下がると共に、気道拡張用具が下顎を上方へ押し出すので、気道を確保することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、仰向き姿勢において気道を確保することができると共に、睡眠時においても容易に姿勢を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る気道拡張用具を模式的に示す外観斜視図であり、(a)は正面側から見た外観斜視図であり、(b)は背面側から見た外観斜視図である。
図2】本実施の形態に係る気道拡張用具用マットを示す模式図であり、(a)は上面図であり、(b)は、長辺部側から見た側面図であり、(c)は短辺部側から見た側面図である。
図3】本実施の形態に係る気道拡張用具を装着して気道拡張用具用マット上に仰向きに寝た状態を示す模式図である。
図4】本実施の形態に係る気道拡張ユニットの仰向き姿勢における状態を説明するための模式図であり、(a)は仰向き姿勢になる前の状態を示す図であり、(b)は仰向きに姿勢になったときの状態を示す図である。
図5】変形例に係る気道拡張用具を示す模式図である。
図6】本発明の第2の実施の形態に係る気道拡張用具を模式的に示す外観斜視図であり、(a)は正面側から見た外観斜視図であり、(b)は背面側から見た外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態に係る気道拡張用具および気道拡張ユニットについて詳細に説明する。本実施の形態に係る気道拡張ユニットは、人の仰向き姿勢において気道を確保するものであり、気道拡張用具と、気道拡張用具の下に敷かれる気道拡張用具用マットとで構成されている。
【0025】
(第1の実施の形態)
先ず、気道拡張用具について説明する。
図1(a)(b)は、本発明の第1の実施の形態に係る気道拡張用具の外観斜視図である。気道拡張用具1は、首の後側から覆うように首外周に装着して使用されるものであって、装着した際に首後部側(図1(a)に示す左側)が接する本体部2と、本体部2の両端から同一方向(図1(a)に示す右側)へそれぞれ延出する一対の顎保持部3a,3bと、を備えている。
【0026】
一対の顎保持部3a,3bは、首の径に相当する距離だけ離れて形成されると共に、装着時に下顎の輪郭に沿いながら首外周に密着するように湾曲形状に形成されている。各顎保持部3a,3bは、寝返りを打つ際に障害とならない程度に変形する復元可能な部材で構成されている。各顎保持部3a,3bには、下顎の屈曲形状と相補形状に形成された一対の顎当接部4a,4bが形成されており、各顎当接部4a,4bは装着した際に両側の下顎にそれぞれ当接する。すなわち、顎保持部3a,3bの本体部2への付け根の部分は太く、顎当接部4a,4bに相当する下顎に当接する領域から一段低くして下顎の屈曲形状に沿わせる形状としている。なお、顎当接部4a,4bにおいて一段低くなる部分は、仰向き姿勢(仰臥位)から側臥位に姿勢を変えた場合でも、下顎に負担をかけることなく寝返り等の体の向きを変えられるように、丸みをもって形成されていることが好ましい。後述するように、仰向き姿勢において、各顎当接部4a,4bが下顎に当接することにより、本体部2から受ける力を直接かつ確実に下顎に作用させ、気道を確保し得る高さ(角度)に下顎が保持されるようにしている。
【0027】
図1(a)に示すように、顎保持部3a,3bには装着時に下顎と接することとなる一部領域に下顎を下から突き上げるように支持する支持部材5a,5bが内蔵されている。支持部材5a,5bの上辺が顎当接部4a,4bとなる。支持部材5a,5bは下顎によって大きく変形することないような所定の強度を有する材料(例えば、ポリエチレン(PE),高密度ポリエチレン(HDPE),中密度ポリエチレン(MDPE),低密度ポリエチレン(LDPE),ポリプロピレン(PP),ポリ塩化ビニル(PVC),ポリ塩化ビニリデン,ポリスチレン(PS),ポリ酢酸ビニル(PVAc),ABS樹脂,AS樹脂,アクリル樹脂(PMM))を選択する。また、顎保持部3a,3bの表面は人体に接触することを考慮して、通気性に優れ、良く肌触りが良好で、多少の柔軟性を有する材料(例えば、ポリエチレン(PE),高密度ポリエチレン(HDPE),中密度ポリエチレン(MDPE),低密度ポリエチレン(LDPE),ポリプロピレン(PP),ポリ塩化ビニル(PVC),ポリ塩化ビニリデン,ポリスチレン(PS),ポリ酢酸ビニル(PVAc),ABS樹脂,AS樹脂,アクリル樹脂(PMM))を選択することが望ましい。なお、本実施の形態では、本体部2及び顎保持部3a,3bを一体形成しているが、別々に構成してもよい。
【0028】
本体部2の背面部(首後部と接触する接触面に対して反対側の外表面)には、顎保持部3a,3bの延出方向に対して略垂直な平面となる受面部2aが形成されている。本体部2の背面部から両側方に突出した板状体6が一体形成され、該板状体6の外表面にて受面部2aが形成されている。板状体6を含む本体部2は、床面又は気道拡張用具用マットといった下敷き面側からの応力を受け止めるだけの剛性を有すると共に、寝返りを打つ際に障害とならない程度に変形する復元性(柔軟性)を有する必要があり、例えば、ウレタン樹脂、ポリエチレン(PE),高密度ポリエチレン(HDPE),中密度ポリエチレン(MDPE),低密度ポリエチレン(LDPE),ポリプロピレン(PP),ポリ塩化ビニル(PVC),ポリ塩化ビニリデン,ポリスチレン(PS),ポリ酢酸ビニル(PVAc),ABS樹脂,AS樹脂,アクリル樹脂(PMM)などの弾性材料で形成されることが好ましい。この受面部2aが仰向き姿勢時に下向きとなって下敷き面側から上方向の反力を受ける面として作用する。すなわち、仰向き姿勢になると、受面部2aは下敷き面となる例えば気道拡張用具用マットの上面部を押圧するので、当該上面部からの反力を受ける。下敷き面側からの反力を効率良く受けるためには、受面部2aの面積が十分広くて、応力が一対の顎保持部3a,3bに均一に作用することが望ましい。従って、受面部2aを平坦状となし、十分な面積を確保することで、仰向き姿勢時において一方の下顎が傾くことなく両下顎が略同一の高さとなり、下顎が気道を確保し得る高さ(角度)に保持される。一方、仰向き姿勢から横向き姿勢やうつ伏せ姿勢に姿勢変更した場合には、本体部2が変更した姿勢に応じて変形し、自由な姿勢変更を許容する。また、仰向き姿勢に復帰した際には、上述したように本体部2が上方向の外力を受け、この外力を各顎保持部3a,3bに作用させて気道を確保し得る高さに下顎を保持し、自動的に気道を確保することができる。
【0029】
また、図1(b)に示すように、本体部2の背面部には受面部2aの下端部に突出部7が設けられている。突出部7は、顎保持部3a,3bの延出方向とは逆方向であって仰向き姿勢時において下向きとなる方向に延出している。突出部7は、略半円状に形成されている。突出部7の厚さTは、後述する気道拡張用具用マットに形成される溝幅Wより厚くなるように設定する。この突出部7は、仰向き姿勢時に、気道拡張用具用マットに接触して、下顎を上方へ突き出す方向の応力を本体部2に及ぼすことになる。すなわち、気道拡張用具用マットと接触する突出部7が支点となって、下顎を突き出す方向を真上方向から頭頂部側(顎の先端からみて頭の頂点)に傾けるように作用し、気道の屈曲部分を略直線状に引き延ばすように作用する。
【0030】
次に、気道拡張用具用マットについて説明する。
図2(a)〜(c)は気道拡張用具用マットの上面図、側面図、側面図である。気道拡張用具用マット10は、仰向き姿勢の際に頭部(気道拡張用具1を装着した首近傍まで含む)の下に敷かれて使用される。
【0031】
図2(a)に示すように、気道拡張用具用マット10は、長方形状をなす基体11の上面に、複数の柱状体12が格子状に配列するように立設された構成となっている。複数の柱状体12は、外力が加わると各柱状体12が変形(圧潰)する一方、当該外力が取り除かれると各柱状体12が元の形状に復元する復元性を有する弾性材料で構成されている。復元性を有する弾性材料としては、ウレタン樹脂等の低反発スポンジ材料が好適である。これにより、仰向き姿勢の際に頭部が接触することとなる部位(以下、「頭部接触部」という)13の柱状体12と、仰向き姿勢の際に気道拡張用具1の受面部2aが接触することとなる部位(以下、「用具接触部」という)14の柱状体12とが分離して独立に頭及び受面部2aを支持することになる。従って、仰向き姿勢になった際に、頭部及び気道拡張用具1の受面部2aが気道拡張用具用マット10に接触すると、頭部自体の重みによって頭部が接触する柱状体12が、受面部2aが接触する柱状体12に比べて深く沈み込む。これにより、頭部接触部13と用具接触部14との領域が確実に区別されるので、仰向き姿勢時に頭部の沈み込みに伴う気道拡張用具1の沈み込みが抑制され、気道拡張用具1が安定した状態で支持される。したがって、気道拡張用具用マット10の上面部からの上方向への反力を受面部2aに確実に伝えて、顎保持部3a,3bが気道を確保し得る高さに下顎を保持することができる。一方、仰向き姿勢から、例えば横向き姿勢に姿勢変更した場合には、この姿勢変更に伴って、気道拡張用具1の本体部2及び顎保持部3a,3bが接触する柱状体12が変形(圧潰)していくので、姿勢変更が妨げられずに自由かつ容易に寝返り等の体位変換を行うことができる。また、格子状に配列した柱状体12の間隔Wは、仰向き姿勢の際に上記突出部7が柱状体12に接触することなく溝に入り込まないように、上記突出部7の厚さTより小さく形成されている。
【0032】
なお、本実施の形態では、気道拡張用具用マット10を柱状体12で形成したが、これに限定されるものではなく、例えば一方向に連続する凸状体または溝の形成されていない平面状の弾性体で形成してもよい。また、気道拡張用具用マット10を、気体、液体又はジェル状の物質が充填された袋状体で構成してもよい。この場合には、気道拡張用具用マット10に、頭部及び気道拡張用具1(受面部2a)が接触した場合、それぞれの重量差により気道拡張用具1に比べて頭部が深く沈みこむものの、袋状体の容積自体は変化しないため、頭部が深く沈みこんだ分だけ気道拡張用具1(受面部2a)の沈み込みが抑制される。従って、仰向き姿勢時には、自然に頭部が下方に下がると共に、袋状体から上方への反力を受けた気道拡張用具1が下顎を上方へ押し出すので、気道を確保することができる。
【0033】
図2(b)に示すように、気道拡張用具用マット10において、頭部接触部13は、頭部との接触面が下方に陥没した凹状に形成されている。すなわち、頭部接触部13は、後頭部と略相補形状(凹状)に形成されている。一方、用具接触部14は頭部接触部13のような陥没は無く、一定の高さにされている。このように、気道拡張用具用マット10は仰向き姿勢時に頭部接触部13が用具接触部14より低くなるように構成されている。より詳細には、頭部接触部13に立設される柱状体12の高さが、用具接触部14に立設される柱状体よりも低く設定されている。頭部接触部13及び用具接触部14の柱状体12は互いに独立しているので、頭部接触部13及び用具接触部14に合わせて仰向き姿勢になることにより、自然に頭部が下方に下がるのに供なって、相対的に上方へ押し上げられた気道拡張用具1が下顎を上方へ押し出すこととなり、舌根の下方への沈下を抑えて気道を確保することができる。
【0034】
次に、図3及び図4(a)(b)を用いて、気道拡張用具1を装着して気道拡張用具用マット10に仰向き姿勢で横になった場合の作用効果について説明する。図3は、気道拡張用具1を装着して、気道拡張用具用マット10上に仰向きに姿勢になった状態を、頭頂部と反対方向から見た模式図である。また、図4(a)は仰向きに姿勢なる前の状態を示し、同図(b)は仰向き姿勢になった状態を示している。
【0035】
先ず、図3及び図4(a)に示すように、気道拡張用具1の顎保持部3a,3bの開放端を拡げて首後部より装着し、顎当接部4a,4bを下顎に当接する位置に合わせる。そして、床面又は布団等の上に置いた気道拡張用具用マット10の頭部接触部13に後頭部を乗せるようして仰向けになる。このとき、気道拡張用具1の本体部2の受面部2aが、下敷き面となる気道拡張用具用マット10の用具接触部14に当接する。図4(b)に示すように、受面部2aを用具接触部14に合わせた状態で気道拡張用具用マット10上に寝ると、後頭部が自然に下方(矢印A方向)に下がる一方、受面部2aが用具接触部14との接触面からの反力を受け止める。受面部2aの面積が大きいほど、気道拡張用具用マット10から受ける上方への反力が大きくなり気道拡張用具1の本体部2の沈み込みが抑制される。また、本体部2が厚いほど気道拡張用具1の本体部2が気道拡張用具用マット10から受ける上方向の力が大きくなる。このように、気道拡張用具1の本体部2の沈み込みが阻止され、気道拡張用具用マット10の用具接触部14から受ける力により顎当接部4a,4bが下顎に当接した状態で首後部に相当する本体部2が上方(矢印B方向)に突き上げられ、支持部材5a,5bが下顎を下側から押し上げて下顎が気道を確保し得る高さに保持される。このとき、気道拡張用具1の突出部7は気道拡張用具用ユニット10の柱状体12を押圧するように接触するので、本体部2を介して顎保持部3a,3b(支持部材5a,5b)が下顎を頭頂部側に向かう方向(矢印C方向)に突き上げたまま保持される。これにより、より確実に舌根の下方への沈下を抑えて気道を確保することができる。
【0036】
一方、図4(b)に示す仰向き姿勢から横向き(側臥位)等に姿勢変更する場合には、当該姿勢変更に応じて本体部2及び顎保持部3a,3bが変形する。これにより、仰臥位から寝返りを打つ等、自由に姿勢を変えることが可能である。なお、仰臥位から側臥位になった場合には、舌根が喉に落ち込まないため、気道が閉塞することもなく気道は確保されるので、気道を確保し得る高さに下顎を保持する必要はない。なお、側臥位から仰臥位に復帰した場合には、姿勢変更に応じて本体部2及び顎保持部3a,3bが変形し、再び顎保持部3a,3b(支持部材5a,5b)が本体部2を介して気道拡張用具用マット10から矢印B方向及びC方向の応力を受ける。これにより、顎当接部4a,4bが下顎を下から支持して下顎が気道を確保し得る高さになるので、自動的に気道を確保することができる。
【0037】
ところで、睡眠は、夢などを見る浅い睡眠状態のレム(REM)睡眠と、夢を見ないほど深い睡眠状態ノンレム(non−REM)睡眠とに分類される。健康な人の睡眠では、このレム睡眠とノンレム睡眠とが、約90分周期で繰り返される。睡眠時無呼吸や鼾は、ノンレム睡眠の場合に起こりやすく、喉の気道の前壁や舌根が沈下して気道を狭くしたり、閉塞することにより生じるものである。睡眠時無呼吸等が生じると睡眠状態がノンレム睡眠からレム睡眠に切り替わってしまい、睡眠時間をいくら取っても深い睡眠を得ることができず、脳を休めることができないことになる。また、ノンレム睡眠中には、脳内の下垂体前葉から一日に必要なヒト成長ホルモンが分泌されている。このヒト成長ホルモンは、筋肉や骨の成長や維持、胃腸や肌の修復を促すのに重要であり、ノンレム睡眠が所定の周期より短い時間の場合には、該ホルモンの十分な分泌は行われず、筋肉等の疲労も回復しない。
【0038】
本実施の形態によれば、気道拡張用具1の本体部2が仰向き姿勢時に上方向の力を受け、本体部2から延出した一対の顎保持部3a,3bが両側の下顎にそれぞれ当接して、気道を確保し得る高さに下顎を保持するので、下顎(骨)に付着する舌根の喉側への落ち込みを防止する。すなわち、仰向き姿勢の際に、本体部2が受ける上方向の力を顎保持部3a,3b(支持部材5a,5b)に作用させ、睡眠時(熟睡時)の首の筋の弛緩等により下顎骨の高さが低くならないように下顎の高さを維持する。一方、本体部2及び顎保持部3a,3bは復元可能な部材で構成されると共に、気道拡張用具1は枕等から別々に分離した構造であるので、仰向き姿勢から横向き姿勢やうつ伏せ姿勢に姿勢変更した場合には、本体部2及び顎保持部3a,3bが変更した姿勢に応じて自由に変形する。これにより、下顎骨に付着する舌根の喉側への落ち込みを防止するので、気道を確保することができると共に、寝返り等により仰向きの姿勢から自由に姿勢を変更することができる。また、仰向き姿勢に復帰した際には、上記本体部2が上方向の力を受け、顎保持部3a,3b(支持部材5a,5b)が気道を確保し得る高さに下顎を保持するので、快適な睡眠を妨げることなく自動的に気道を確保することができる。特に、本実施の形態に係る気道拡張ユニットは、睡眠時無呼吸症を患っている人のスムーズな呼吸を可能にする点で効果が大きいことは言うまでもなく、上述した正常な睡眠パターンを維持するため、健康維持の点でも非常に効果が大きい。
【0039】
上記実施の形態では、本体部2を両側方に突出させて受面部2aの十分な面積を確保していたが、本体部2の形状はこれに限定されない。例えば、図5に示すように、本体部2の背面から両側方への突出部21a,21bを僅かな寸法とし、しかも完全な平坦ではなく、円弧状に曲がった形状としても良い。また、受面部2aの下部に形成した突出部も、図5に示すように円弧状に曲がった本体部2の背面に沿った三日月状の突出部22であっても良い。このように、本体部2の背面が完全な平坦でなくても、仰向けになった際には下敷き面側から十分大きな応力を受けることができ、顎保持部3a,3bが気道を確保し得る高さまで下顎を突き上げて保持することができる。
【0040】
なお、図5に示すように円弧状に曲がった本体部2の背面に沿って三日月状の突出部22を設けた場合、気道拡張用具用マット10を用いなかったとしても、仰向き姿勢の際に直接床面に接触する突出部22が、顎保持部材3a,3bに床面から受ける力を作用させるので、下顎を突き上げて保持することができる。
【0041】
また、一対の顎保持部3a,3bの開放端側に、例えば、フック、マジックテープ(登録商標)等の調整手段を設けるようにしてもよい。これにより、人の顔及び下顎の大きさや形状に合わせて、仰向きの姿勢の際に気道を確実に確保するべく、気道拡張用具1の装着状態を調整することができる。
【0042】
また、上記実施の形態では、気道拡張用具用マット10の頭部接触部13を、用具接触部14に比べて低くなるように形成したが、これに限定されるものではなく、頭部接触部13及び用具接触部14の高さを同一にしてもよい。すなわち、頭部接触部13に立設される柱状体12の高さと、用具接触部14に立設される柱状体12の高さとを同一の高さにしても、本発明を適用することは可能である。この場合、仰向き姿勢の際には、後頭部が自重により頭部接触部13に沈み込んでゆくのに対して、本体部2の受面部2aが用具接触部14の接触面に接して、頭部の沈み込みに伴って気道拡張用具1が一緒に沈み込むことを阻止し、該接触面から受ける反力を本体部2に作用させる。
【0043】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本発明の第2の実施の形態に係る気道拡張用具は、上述した第1の実施の形態に係る気道拡張用具1と比べて、本体部及び顎保持部の構成のみ相違している。したがって、特に相違点についてのみ説明し、同一の構成については同一の符号を用い、繰り返しの説明を省略する。
【0044】
図6(a)(b)は、本実施の形態に係る気道拡張用具の外観斜視図である。図6に示す気道拡張用具31は、別体に構成された第1の本体部32a及び第2の本体部32bと、別体に構成され、各本体部32a,32bにそれぞれ接続する顎保持部33a,33bと、を備えている。
【0045】
第1の本体部32aは、両側方に突出した板状体36aと一体形成され、本体部32aの正面部から一方の顎保持部33aが延出している。同様に、第2の本体部32bは、両側方に突出した板状体36bと一体形成され、本体部32bの正面部から他方の顎保持部33bが延出している。各本体部32a,32bの背面部には、顎保持部33a,33bの延出方向に対して略垂直な平面となる受面部37a,37bがそれぞれ形成され、各受面部37a,37bの下端部に突出部38a,38bがそれぞれ設けられている。なお、下顎の突き出し方向を真上方向から頭頂部側に傾けて気道の屈曲部分を略直線状に引き延ばすように作用する点で突出部38a,38bを設けることが好ましいが、突出部38a,38bを設けない構成であっても、仰向き姿勢時に各受面部37a,37bが受ける外力を各顎保持部33a,33bに作用させて気道を確保し得る高さに下顎を保持することは可能である。
【0046】
また、一対の顎保持部33a,33b間には、各顎保持部33a,33bの両側の下顎に対する装着位置を調整するための調整手段39が設けられている。調整手段39は、例えば、各顎保持部33a,33bの先端部側を連結するように設けられた蝶番(又はフック)40と、各顎保持部33a,33bの対向する後端部同士を架け渡すように設けられた調整用ベルト41とで構成される。気道拡張用具31を装着する際には、蝶番40で顎保持部33a,33bを連結し、各顎保持部33a,33bの各下顎当接部4a,4bを、首外周に密着させながら両下顎の輪郭に沿わせた状態で、かつ、仰向き姿勢時に各受面部37a,37bが略均等に外力を受けるような状態で位置決めし、後頭部側において調整用ベルト41で固定する。これにより、仰向き姿勢から姿勢変更して再び仰向き姿勢に復帰した場合でも、本体部32a,32bの各受面部37a,37bが受ける上方向の力を顎保持部33a,33bに適切に作用させて気道を確保し得る高さに下顎を保持することができる。
【0047】
このように、本実施の形態によれば、各顎保持部33a,33bに接続する本体部37a,37bが別体に構成されるので、上記第1の実施の形態の効果に加えて、寝返り等の姿勢変更をさらに容易に行うことができる。また、下顎の形状等に合わせて各顎保持部33a,33bの下顎に対する装着位置を調整するので、例えば、寝返りを打った後に仰向き姿勢に復帰した場合でも、各顎保持部33a,33bの下顎への当接位置の位置ずれを抑え、適切に気道を確保し得る高さに下顎を保持することができる。
【0048】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態にいて、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、睡眠時無呼吸症の治療を医療分野及び日常生活における健康維持に有用である。
【0050】
本出願は、2009年12月21日出願の特願2009−289497に基づく。この内容は全てここに含めておく。
図1
図2
図3
図4
図5
図6