(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
先頭にヘッドパイプを有する車体フレームと、上記ヘッドパイプに軸支されるステアリングシャフトと、このステアリングシャフトに固定され前輪を懸架するフロントフォークとを備え、
上記フロントフォークの内部にこのフロントフォークの伸縮に伴い膨縮可能な気室が形成され、この気室内に収容される気体が上記フロントフォークの伸縮量に応じた反力を発生する自動二輪車において、
上記車体フレーム内に形成されて気体を収容する容室と、この容室と上記気室とを連通する通路と、この通路の途中に設けられる気体供給手段とを備え、
上記気体供給手段は、上記気室の内圧が閾値よりも上昇したとき上記気室から上記容室に気体を排出し、上記気室の内圧が閾値よりも低下したとき上記容室から上記気室に気体を供給することを特徴とする自動二輪車。
上記車体フレームが上記ヘッドパイプから後方に延びるメインフレームを備え、このメインフレームの内部に上記容室が形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の自動二輪車。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の一実施の形態に係る自動二輪車について、図面を参照しながら説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は、同じ部品を示す。
【0013】
図1に示すように、本実施の形態に係る自動二輪車は、先頭にヘッドパイプ10を有する車体フレーム1と、上記ヘッドパイプ10に軸支されるステアリングシャフト2と、このステアリングシャフト2に固定され前輪3を懸架するフロントフォーク4とを備える。
【0014】
そして、
図2に示すように、上記フロントフォーク4の内部には、このフロントフォーク4の伸縮に伴い膨縮可能な気室Aが形成されており、この気室A内に収容される気体が上記フロントフォーク4の伸縮量に応じた反力を発生する。
【0015】
さらに、上記自動二輪車は、上記車体フレーム1内に形成されて気体を収容する容室Bと、この容室Bと上記気室Aとを連通する通路5と、上記容室Bから上記気室Aに気体を供給することが可能なレギュレータ(気体供給手段)50とを備える。
【0016】
以下、詳細に説明すると、本実施の形態に係るフロントフォーク4は、アウターチューブ40と、このアウターチューブ40内に出没可能に挿入されるインナーチューブ41とからなる懸架装置本体Fを備え、この懸架装置本体F内に緩衝器Dを収容している。
【0017】
また、上記懸架装置本体Fの内部には、緩衝器Dの外側にリザーバRが形成されており、このリザーバRには、作動流体が収容されてリザーバ液室R1が形成されるとともに、その液面Oを介して上側に気体が収容されて気室Aが形成されている。
【0018】
そして、上記リザーバRの作動流体や気体は、懸架装置本体Fの上下の開口を塞ぐキャップ部材42及びボトム部材43と、アウターチューブ40の
図2中下側開口に取り付けられてインナーチューブ41の外周面に摺接する環状のオイルシール44及びダストシール45とで懸架装置本体F内に密閉されている。
【0019】
また、上記気室Aには、気体が圧縮されながら収容されており、懸架装置本体F(フロントフォーク)を常に伸長方向に附勢する。さらに、上記気室Aの容積は、インナーチューブ41がアウターチューブ40から退出する懸架装置本体F(フロントフォーク)の伸長時に拡大し、インナーチューブ41がアウターチューブ40内に進入する懸架装置本体F(フロントフォーク)の圧縮時に縮小するため、上記気室Aの内圧がフロントフォークの伸縮量に応じて変化し、上記気室Aは、フロントフォークの伸縮量に応じた反力を発生する。
【0020】
また、本実施の形態において、フロントフォーク4は、コイルスプリングからなる懸架ばねを備えておらず、気室Aの反力のみで車体を弾性支持するエアばね式のフロントフォークであり、金属製のコイルスプリングからなる懸架ばねを備えるフロントフォークと比較して軽量化することができる。
【0021】
つづいて、上記フロントフォーク4において懸架装置本体F内に収容される緩衝器Dは、上記懸架装置本体Fの軸心部に起立するシリンダ6と、キャップ部材42に垂設されるとともにロッドガイド60に軸支されフロントフォーク4の伸縮に伴いシリンダ6内に出没するロッド7と、このロッド7の先端に保持されてシリンダ6の内周面に摺接するピストン8とを備える。
【0022】
そして、上記シリンダ6内は、上記ピストン8により二つの部屋P1,P2に区画されており、これらの部屋P1,P2は作動流体で満たされている。以下、ロッド側(
図2中上側)の部屋を一方室P1、ピストン側(
図2中下側)の部屋を他方室P2とする。尚、本実施の形態において、シリンダ6やリザーバRに収容される作動流体は、水、水溶液、油等からなる液体であり、緩衝器Dは液圧緩衝器である。
【0023】
さらに、上記緩衝器Dは、一方室P1と他方室P2とを連通する第一流路80の途中に設けられてこの第一流路80を通過する作動流体に抵抗を与える伸側減衰バルブV1と、一方室P1と他方室P2とを連通する第二流路81の途中に設けられて作動流体が他方室P2から一方室P1に移動することのみを許容する圧側チェック弁C1と、他方室P2とリザーバ液室R1とを連通する第三流路90の途中に設けられてこの第三流路90を通過する作動流体に抵抗を与える圧側減衰バルブV2と、他方室R2とリザーバ液室R1とを連通する第四流路91の途中に設けられて作動流体がリザーバ液室R1から他方室P2に移動することのみを許容する伸側チェック弁C2とを備える。
【0024】
そして、シリンダ6からロッド7が退出するフロントフォーク4の伸長時には、一方室P1がピストン8で加圧され、一方室P1の作動流体が第一流路80を通過して他方室P2に移動するため、緩衝器Dは伸側減衰バルブV1の抵抗に起因する減衰力を発生する。また、このとき退出したロッド体積分の作動流体がシリンダ6内で不足となるため、この不足分の作動流体が伸側チェック弁C2を開いて第四流路91を通過し、リザーバ液室R1から他方室R2に移動する。
【0025】
他方、シリンダ6内にロッド7が進入するフロントフォーク4の圧縮時には、他方室P2がピストン8で加圧され、他方室P2の作動流体が圧側チェック弁C1を開き第二流路81を通過して一方室P1に移動する。また、このとき進入したロッド体積分の作動流体がシリンダ6内で余剰となるため、この余剰分の作動流体が第三流路90を通過して他方室P2からリザーバ液室R1に移動し、緩衝器Dは圧側減衰バルブV2の抵抗に起因する減衰力を発生する。
【0026】
つまり、緩衝器Dは、フロントフォーク4の伸縮に伴い減衰力を発生してフロントフォーク4の伸縮運動を抑制し、シリンダ6内に出没するロッド体積分のシリンダ内容積変化を上記リザーバRで補償している。
【0027】
また、上記フロントフォーク4は、上記緩衝器Dのロッド7に保持される筒状のばね受け70の先端70aと、シリンダ6から外周側に突出するロッドガイド60の突出部60aとの間に配置されるバランスばねSを備えている。
【0028】
そして、このバランスばねSは、コイルスプリングからなり、フロントフォーク4の最伸長時から所定のストローク範囲においてフロントフォーク4を収縮方向に附勢するとともに、フロントフォーク4の最伸長時における気室Aがフロントフォーク4を伸長方向に附勢する力を相殺する。
【0029】
したがって、本実施の形態においては、フロントフォーク4を懸架ばねとして機能する気室Aで常に伸長方向に附勢していても、最伸長時から所定のストローク範囲にあるフロントフォーク4の収縮をバランスばねSが助け、最伸長時近傍におけるフロントフォーク4の収縮を速やかに開始させて乗り心地を良好にすることができる。
【0030】
もどって、上記懸架装置本体Fにおけるアウターチューブ40は、
図1に示すように、ステアリングシャフト2に固定されている。このステアリングシャフト2は、車体フレーム1のヘッドパイプ10に軸支され、回転可能とされており、
図1中上側にハンドルHが固定されている。他方、上記懸架装置本体Fにおけるインナーチューブ41の
図1中下端は、前輪3の車軸に固定されている。これにより、ハンドルHの操作によりステアリングシャフト2とともにフロントフォーク4を回転させ、前輪3の向きを変更することができる。
【0031】
つづいて、上記車体フレーム1は、自動二輪車の先頭側に配置される上記ヘッドパイプ10と、このヘッドパイプ10から後方に連設されるフレーム本体11とからなる。そして、自動二輪車において、このフレーム本体11にエンジンEが取り付けられている。
【0032】
また、本実施の形態において、フレーム本体11は、
図2に示すように、上記ヘッドパイプ10から自動二輪車の後方に延びるメインフレーム11aと、上記ヘッドパイプ10から自動二輪車の下方に延びるダウンチューブ11bと、上記メインフレーム11aと上記ダウンチューブ11bの終端を連結するピボットフレーム11cと、上記メインフレーム11aとダウンチューブ11bとの間に架設される補強用のガセットプレート11dとを備えている。そして、上記メインフレーム11aは、その内部が中空に形成されて容室Bを有し、この容室B内に気体が封入されている。
【0033】
さらに、上記容室Bが通路5を介して上記気室Aに連通しているとともに、上記通路5の途中にレギュレータ(気体供給手段)50が設けられている。このレギュレータ50は、上記気室Aの内圧が所定よりも上昇及び低下したときに、上記容室Bと上記気室Aとを連通し、上記気室Aの気体を上記容室Bに排出したり、上記容室Bから上記気室A内に気体を供給したりする。
【0034】
尚、上記気室Aにおける内圧の検出方法は、ばね等の機械的な方法で検出するとしても、センサ等の電気的な方法で検出するとしても良く、適宜周知の検出方法を採用することが可能であり、内圧の検出のタイミングも、気体の排出時と供給時でそれぞれ一定であれば良い。
【0035】
また、上記レギュレータ50が作動する上記気室Aの内圧の閾値も、フロントフォーク4の所望の反力範囲により適宜設定することが可能である。
【0036】
また、具体的な気室Aから容室Bへの気体の排出方法や、容室Bから気室Aへの気体の供給方法も、適宜周知の方法を採用することが可能であり、上記排出と上記供給を別の構成要素で行うとしても良い。
【0037】
以下、本実施の形態に係る自動二輪車の作用効果について説明する。本実施の形態において、上記気室Aの内圧が所定よりも上昇し、フロントフォーク4の反力が所定よりも大きくなると、上記レギュレータ50が上記容室Bと上記気室Aとを連通し、上記気室Aの気体を上記容室Bに排出する。
【0038】
他方、上記気室Aの内圧が所定よりも低下し、フロントフォーク4の反力が所定よりも小さくなると、上記レギュレータ50が上記容室Bと上記気室Aとを連通し、上記容室Bから上記気室A内に気体を供給する。
【0039】
したがって、上記気室Aの内圧を一定の範囲内に収めることで、フロントフォーク4の反力特性を一定の範囲内に収めることが可能となる。
【0040】
また、本発明においては、フロントフォーク4の気室Aに気体を供給するための気体供給源が車体フレーム1の内部に形成される容室Bからなる。つまり、車体フレーム1自体を気体供給源となる容器として利用していることから、車体フレーム1に容器を別に取り付けることが不要で取り付けスペースの心配がなく、重量増となることを抑制することが可能となる。
【0041】
また、本実施の形態におけるフロントフォークは、コイルスプリングからなる懸架ばねを備えておらず、気室Aの反力のみで車体を弾性支持するエアばね式のフロントフォークであり、フロントフォークの反力特性が特に変化しやすい。
【0042】
このため、気室Aに気体を供給するための容器を車体フレーム1に取り付ける場合には、大容量の容器が必要となり、取り付けスペースの確保がより困難であり、重量増となり易い。したがって、エアばね式のフロントフォークにおいては、車体フレーム1自体を容器として利用することが特に有効である。
【0043】
また、本実施の形態においては、気室Aの内圧が所定よりも上昇したとき気室Aから容室Bに気体を排出し、気室Aの内圧が所定よりも低下したとき容室Bから気室Aに気体を供給するレギュレータ50を通路5の途中に設けたことから、気室Aの内圧が所定よりも上昇したときに排出される気体を容器Bに留め、蓄圧することが可能となる。
【0044】
また、本実施の形態においては、メインフレーム11aに容室Bを形成したことから、フロントフォーク4の近くに気体供給源(容室B)を配置することが可能となり、気室Aと容室Bとを連通する通路5を短くすることが可能となる。
【0045】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱することなく改造、変形及び変更を行うことができることは理解すべきである。
【0046】
例えば、上記実施の形態に係る自動二輪車において、フロントフォーク4がコイルスプリングを備えていないエアばね式のフロントフォークであるとしたが、エアばねとして機能する気室を有していれば金属性のコイルスプリングを備えていても良い。
【0047】
また、上記実施の形態におけるフロントフォーク4は、アウターチューブ40が車体側に取り付けられるとともに、インナーチューブ41が車軸側に取り付けられる倒立型のフロントフォークであるが、インナーチューブ41が車体側に取り付けられるとともに、アウターチューブ40が車軸側に取り付けられる正立型のフロントフォークであるとしても良い。
【0048】
また、上記実施の形態におけるフロントフォーク4は、正立型の液圧緩衝器Dを収容しているが、倒立型や両ロッド型の緩衝器を収容するとしても、作動流体として気体を利用する空圧緩衝器を収容するとしても、シリンダ6を廃してインナーチューブ41の内周面にピストン8が直接摺接するとしても良く、如何なる形態の緩衝器を収容しているとしても良い。
【0049】
また、上記実施の形態において、気体供給源となる容室Bが、車体フレーム1のメインチューブ11a内に形成されるとしたが、車体フレーム1内であれば、どの部分に気体供給源となる容室Bを設けても良く、この場合も上記実施の形態と同様に、車体フレーム1に別に容器を取り付ける必要がなく、取り付けスペースの心配がない。
【0050】
また、上記実施の形態においては、気室Aと容室Bとを連通する通路5の途中に気体供給手段たるレギュレータ50を設け、このレギュレータ50で気室A内に気体を給排し、フロントフォーク4の反力特性を一定の範囲内に収めているが、フロントフォーク4の反力特性を一定の範囲内に収めることが可能であれば気体供給手段の構成及び位置は上記の限りではない。
【0051】
例えば、図示しないが、気室Aと容室Bとを通路5で常に連通し、上記容室Bの反気室側に上記気室Aの内圧に応じて駆動される気体供給手段たる可動ピストンを設け、上記気室A及び上記容室Bの内圧が所定よりも低下したとき、可動ピストンを気室側に移動させて容室Bの容積を縮小して上記気室A及び上記容室Bの内圧を高める一方、上記気室A及び上記容室Bの内圧が所定よりも上昇したとき、可動ピストンを反気室側に移動させて容室Bの容積を拡大して上記気室A及び上記容室Bの内圧を低くするとしても良い。
【0052】
また、上記実施の形態における気体供給手段たるレギュレータ50は、上記気室Aの内圧が所定よりも上昇及び低下したとき容室Bと気室Aとを連通するが、レギュレータ50が上記気室Aの内圧が所定よりも低下したときにのみ容室Bと気室Aを連通し、容室Bから気室A内に気体を供給するとしても良い。尚、この場合においては、キャップ部材42等にリリーフバルブ(図示せず)を設け、気室Aの内圧が所定よりも上昇したとき上記リリーフバルブで気室Aの気体を大気側に排出することが好ましい。
【0053】
また、上記実施の形態における車体フレーム1は、メインフレーム11a、ダウンチューブ11b、ピボットフレーム11c、ガセットプレート22dとを備えているがこの限りではなく、車体フレーム1の構成は適宜選択することが可能である。