特許第5798949号(P5798949)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5798949
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】角パイプ
(51)【国際特許分類】
   A63B 59/50 20150101AFI20151001BHJP
   A63B 102/20 20150101ALN20151001BHJP
   A63B 102/22 20150101ALN20151001BHJP
   A63B 102/24 20150101ALN20151001BHJP
【FI】
   A63B59/50
   A63B102:20
   A63B102:22
   A63B102:24
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-43400(P2012-43400)
(22)【出願日】2012年2月29日
(65)【公開番号】特開2013-179948(P2013-179948A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2014年5月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 英二
【審査官】 中村 祐一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−035599(JP,A)
【文献】 特開2001−279931(JP,A)
【文献】 特開平09−266961(JP,A)
【文献】 特開平09−239071(JP,A)
【文献】 特開平07−236712(JP,A)
【文献】 特開2005−271279(JP,A)
【文献】 特開平10−151690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 59/00 − 59/80
A63B 102/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂が含浸された繊維から成る複数のシートを多重に巻回して断面が多角形の管状積層体として構成される角パイプであって、前記多角形の角部が所定の曲率半径を有する円弧状を成し、各層を形成するそれぞれのシートの巻回の巻き始め部分と巻き終わり部分とが多角形の同じ角部に重ね合わせて位置され、それぞれのシートの巻回の巻き始め部分と巻き終わり部分との重ね合わせ部分の重ね代は、それが位置される角部の曲率半径に応じて設定されることを特徴とする角パイプ。
【請求項2】
多角形の頂点の数の整数倍の数のシートが巻回され、それぞれのシートの巻回の巻き始め部分と巻き終わり部分との重ね合わせ部分が多角形の全ての角部にわたって均等に振り分けられて配置されることを特徴とする請求項1に記載の角パイプ。
【請求項3】
最内層のシートから最外層のシートへと向かうにしたがい、それぞれのシートの巻回の巻き始め部分と巻き終わり部分との重ね合わせ部分が、多角形の1つの周方向に沿って互いに隣接する各角部に順次に位置されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の角パイプ。
【請求項4】
前記各シートは、角パイプの軸長方向に対して所定の角度を成す方向で繊維が引き揃えられており、最内層のシートから最外層のシートへと向かうにしたがって前記角度が段階的に大きくなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の角パイプ。
【請求項5】
最内層のシートから最外層のシートへと向かうにしたがって前記繊維の引き揃え方向が周方向に近づくことを特徴とする請求項4に記載の角パイプ。
【請求項6】
前記複数のシートは、前記角度が0°のシートを含むことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の角パイプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多角形断面を有する中空の角パイプであって、例えばアイスホッケー、フィールドホッケー、クリケットなどの競技用スティックのシャフトや、釣竿の握り部等に用いられる角パイプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から多角形断面を有する中空の角パイプは様々な形態のものが知られている(例えば特許文献1ないし特許文献4参照)。このような角パイプは、様々な産業分野で使用され、例えば競技用スティックのシャフトや釣竿の握り部などにおいても使用できる。
【0003】
例えば、前記競技用スティックは、握持して保持されるシャフトと、シャフトの先端部に一体的または着脱可能に装着され、ボールやパックを叩くブレードとを備えており、通常、このような競技用スティックのシャフトは、例えば繊維強化プラスチックのような複合材を用いて軽量化を図ることが知られている。また、このようなシャフトは、断面形状を矩形にすることが一般化されている。これは、ブレード部分でボールやパックを打つ(以下、打球と称する)際、軸に対して加わる回転トルクを抑え易くするためである。すなわち、シャフトの断面が円形状や楕円形状であると、シャフトを強く握持して保持していても、回転トルクが作用すると掌の内部で回転し易くなってしまい、結果として、ブレード部分で強く打球した際に回転トルクに負けてシャフトが回り、正確なシュート(方向性)を打てないか、あるいは、ボールやパックに十分な力を伝えきれないからである。また、釣竿の握り部や、他のシャフトの握り部などにおいても、容易く回転しないしっかりとした握持を可能にするべく断面形状を矩形にすることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−076202号
【特許文献2】特開2002−295737号
【特許文献3】特開平06−246024号
【特許文献4】特開平03−234614号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような角パイプは、十分な握持保持力を確保するなどの観点からは、矩形に限らず、六角形や八角形などの様々な多角形断面を成し得るが、いずれにしても、軽量化等のために繊維強化プラスチックのような複合材を用いて形成する場合には、例えば、強化繊維(例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維)にエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂等のマトリックス樹脂を含浸して形成された、いわゆる複数のプリプレグシートを多重に巻回して成る管状の積層体として構成することができる。
【0006】
そして、複数のプリプレグシートを多重に巻回して断面が多角形、例えば矩形の管状積層体として角パイプを構成する場合、一般に、各層のプリプレグシートの巻回の巻き始めと巻き終わりの部分は、作業性等を考慮して、矩形断面の角部(四隅)を避けて矩形の各辺の略中間部付近に位置される。
【0007】
しかしながら、通常、プリプレグシートの巻回の巻き始めと巻き終わりの部分は上下に重ねられて外側に膨出する部分となるため、これが矩形断面の各辺に位置されると、膨出度合によっては見栄えが悪いだけでなく握持し難くなる場合もある。
【0008】
また、通常、角パイプを握持する際にはその角部に握力が集中的に作用する。更に、角部は障害物とぶつかり易く、特に角パイプを落下させた際には衝撃が角部に集中する。したがって、角パイプにあっては、その角部の強度を高めることが望まれる。しかし、角部を強化するためにプリプレグシートの巻回枚数を単に増加させただけでは、角パイプの重量増に繋がりかねない。
【0009】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、軽量化を図りつつ多角形断面の角部の強度を効果的に高めることができる角パイプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するために、本発明は、樹脂が含浸された繊維から成る複数のシートを多重に巻回して断面が多角形の管状積層体として構成される角パイプであって、前記多角形の角部が所定の曲率半径を有する円弧状を成し、各層を形成するそれぞれのシートの巻回の巻き始め部分と巻き終わり部分とが多角形の同じ角部に重ね合わせて位置され、それぞれのシートの巻回の巻き始め部分と巻き終わり部分との重ね合わせ部分の重ね代は、それが位置される角部の曲率半径に応じて設定されることを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、各層を形成するそれぞれのシートの巻回の巻き始め部分と巻き終わり部分とが多角形の同じ角部に重ね合わせて位置されるため、シートの重ね合わせ部分を多角形の角部に位置させない従来と比べて角部の肉厚および繊維量がほぼ倍になり、角部の曲げ強度や耐衝撃性を従来と比べて飛躍的に向上させることができる。また、シートの巻回数を増やすのではなく各シートの重ね合わせ部分を角部に位置させることで角部の剛性を高めようとしているため、従来と同等のシート巻回数で軽量化を図りつつ、多角形断面の角部の強度を効果的に高めることができる。また、各シートの重ね合わせ部分を角部に位置させているため、シートの重ね合わせ部分を多角形断面の辺に位置させる従来と比べて、見栄えも良く、握持保持性も向上する。
【0012】
なお、上記構成において、「角部」とは、多角形の頂点を形成する部分であって、所定の角度範囲の円弧部分を含む。また、「巻き始め部分」とは、シートの巻回始めの所定長さの一端部分のことであり、また、「巻き終わり部分」とは、シートの巻回終わりの所定長さの他端部分のことである。
【0013】
また、上記構成では、多角形の頂点の数の整数倍の数のシートが巻回され、それぞれのシートの巻回の巻き始め部分と巻き終わり部分との重ね合わせ部分が多角形の全ての角部にわたって均等に振り分けられて配置されることが好ましい。このようにすると、各角部の厚さ及び繊維量が角パイプ全体にわたって均等になり、全ての角部の強度を同等に確保することができる。また、上記構成では、最内層のシートから最外層のシートへと向かうにしたがい、それぞれのシートの巻回の巻き始め部分と巻き終わり部分との重ね合わせ部分が、多角形の1つの周方向に沿って互いに隣接する各角部に順次に位置されてもよい。このようにすると、各角部の厚さの均一化を容易に実現できる。なお、この場合、「外層」とは、角パイプの軸方向中心軸から相対的に遠い側の層のことであり、「内層」とは、角パイプの軸方向中心軸に相対的に近い側の層のことである。
【0014】
また、上記構成において、各シートは、角パイプの軸長方向に対して所定の角度を成す方向で繊維が引き揃えられており、最内層のシートから最外層のシートへと向かうにしたがって前記角度が段階的に大きくなることが好ましい。その場合、最内層のシートから最外層のシートへと向かうにしたがって前記繊維の引き揃え方向が周方向に近づくことが望ましい。このようにすると、外層側ほど耐衝撃性が高くなり(剛性が大きくなり)、潰れ(座屈し)難くなる。また、上記構成において、複数のシートは、前記角度が0°のシートを含んでもよい。これにより、角パイプの曲げ剛性を高めることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の角パイプは、各層を形成するそれぞれのシートの巻回の巻き始め部分と巻き終わり部分とが多角形の同じ角部に重ね合わせて位置されるため、軽量化を図りつつ多角形断面の角部の強度を効果的に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)は本発明の角パイプが適用できる競技用スティックの要部斜視図、(b)は本発明の角パイプが適用できる釣竿の握り部を含む基端側の要部斜視図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る角パイプの横断面図である。
図3図2の角パイプを形成するために必要なマンドレルおよびプリプレグシート(繊維方向がそれぞれ異なる)を示す概略側面図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係る角パイプの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の角パイプの実施形態について具体的に説明する。
図1の(a)は、角パイプの一例としてのシャフト2を有する競技用スティック1の全体構成を示す図である。この競技用スティック1は、シャフト2と、シャフト2の先端に装着され、ボールやパック等を打球するブレード5とを備えた構成となっている。シャフト2の基端部には、図示しないグリップテープが巻回されている。通常、シャフト2は、使用者の身長や競技における各人のポジション等に応じてカットされ、このカット部分が隠蔽されるように前記グリップテープが巻回されている。なお、グリップテープは、シャフト2の外周面に直接、巻回しても良いし、握り性を考慮して、シャフト2に別部材を取着した状態で巻回しても良い。また、ブレード5は、用途によって形状や材料が選択され、シャフト2の先端に装着される。この場合、ブレード5については、シャフト2と一体化されていても良いし、交換可能に構成されていても良い。
【0018】
一方、図1の(b)は、角パイプの一例としての握り部13を有する釣竿10の全体構成を示す図である。この釣竿10は、竿杆の基端側にリール11を装着可能なリールシート12を備えており、リールシート12の基端側に握持して保持できる握り部13を有する。
【0019】
図2は、競技用スティック1のシャフト2や釣竿10の握り部13を構成する本発明の第1の実施形態に係る角パイプ20の横断面を示している。図示のように、本実施形態の角パイプ20は、例えば断面が矩形(四角形;本実施形態では略長方形)の管状(中空)構造を成しており、所定の曲率半径を有する円弧状の四隅の角部A,B,C,Dと、これらの角部A,B,C,D間を繋ぐ4つの側面部20a,20b,20c,20dとを有している。また、角パイプ20の管状構造は、多角形として四角形を成す角パイプ20の頂点(角部)の数の整数倍、本実施形態では4枚のシート22,24,26,28を多重に巻回することにより積層体として構成される。
【0020】
また、各シート22,24,26,28は、強化繊維(例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維)にエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂等のマトリックス樹脂を含浸して形成された、いわゆるプリプレグシートであり、角パイプ20は、例えば図3に示される各種のプリプレグシート、すなわち、角パイプ20の軸長方向X(図1参照)に対して+45°の角度を成す方向で繊維が引き揃えられて成るプリプレグシート(以下、+45°シートという)S1、角パイプ20の軸長方向Xに対して−45°の角度を成す方向で繊維が引き揃えられて成るプリプレグシート(以下、−45°シートという)S2、角パイプ20の軸長方向Xに繊維が引き揃えられて成るプリプレグシート(以下、0°シートという)S3、角パイプ20の軸長方向Xに対して−60°の角度を成す方向で繊維が引き揃えられて成るプリプレグシート(以下、−60°シートという)S4、角パイプ20の軸長方向Xに対して+60°の角度を成す方向で繊維が引き揃えられて成るプリプレグシート(以下、+60°シートという)S5、角パイプ20の軸長方向Xに対して−75°の角度を成す方向で繊維が引き揃えられて成るプリプレグシート(以下、−75°シートという)S6、角パイプ20の軸長方向Xに対して+75°の角度を成す方向で繊維が引き揃えられて成るプリプレグシート(以下、+75°シートという)S7のうちの少なくとも幾つかを任意に組み合わせて使用することにより形成される。
【0021】
また、このようなプリプレグシートはそれぞれ、断面が矩形に形成された芯金(マンドレル)50(図3参照)に対して先端から基端まで通して所定回数(例えば1周ずつ)巻回される。具体的には、例えば、プリプレグシートは、端縁が軸長方向に沿って芯金50に対して当て付けられ、アイロン付け等される。そして、プリプレグシートは、ローリングされながら芯金50に巻回されていき、最終的に所定枚数が巻回し終わった段階で固定用のテープ(図示せず)で安定される。その後、常法にしたがって、加熱工程、脱芯工程等を経ることにより、角パイプ20が形成される。
【0022】
このようにプリプレグシートを巻回して形成される本実施形態の角パイプ20は、各層を形成するそれぞれのシート22,24,26,28の巻回の巻き始め部分と巻き終わり部分とが角パイプ20の同じ角部A,B,C,Dに重ね合わせて位置されることを特徴とする。更に本実施形態の角パイプ20は、4枚のそれぞれのシート22,24,26,28の巻回の巻き始め部分と巻き終わり部分との重ね合わせ部分22A,24C,26B,28Dが角パイプ20の全ての角部A,C,B,Dにわたって均等に振り分けられて配置されることを特徴とする。
【0023】
具体的には、図2に示されるように、角パイプ20の軸方向中心軸O(図1および図2参照)に最も近い最内層(第1の層)を形成する+45°シートS1から成る第1のプリプレグシート22は、1周だけ巻回されて、その巻回の巻き始め部分22aと巻き終わり部分22bとが角パイプ20の同じ角部Aに重ね合わせて位置される。また、第1のプリプレグシート22上に積層される−45°シートS2から成る第2のプリプレグシート24(第2の層)は、1周だけ巻回されて、その巻回の巻き始め部分24aと巻き終わり部分24bとが角パイプ20の同じ角部Cに重ね合わせて位置される。更に、第2のプリプレグシート24上に積層される+45°シートS1から成る第3のプリプレグシート26(第3の層)は、1周だけ巻回されて、その巻回の巻き始め部分26aと巻き終わり部分26bとが角パイプ20の同じ角部Bに重ね合わせて位置される。また、角パイプ20の軸方向中心軸O(図1および図2参照)から最も遠い最外層(第4の層)を形成する(第3のプリプレグシート26上に積層される)−45°シートS2から成る第4のプリプレグシート28は、1周だけ巻回されて、その巻回の巻き始め部分28aと巻き終わり部分28bとが角パイプ20の同じ角部Dに重ね合わせて位置される。なお、各プリプレグシート22,24,26,28の重ね合わせ部分22A,24C,26B,28Dの重ね代はそれが位置される角部A,C,B,Dの部位の曲率半径に応じて例えば1〜4mmに設定される。
【0024】
以上説明したように、本実施形態によれば、各層を形成するそれぞれのシート22,24,26,28の巻回の巻き始め部分と巻き終わり部分とが角パイプ20(多角形)の同じ角部A,C,B,Dに重ね合わせて位置されるため、シートの重ね合わせ部分を多角形の角部に位置させない従来と比べて角部A,B,C,Dの肉厚および繊維量がほぼ倍になり、角部A,B,C,Dの曲げ強度や耐衝撃性を従来と比べて飛躍的に向上させることができる。また、シートの巻回数を増やすのではなく各シート22,24,26,28の重ね合わせ部分22A,24C,26B,28Dを角部A,C,B,Dに位置させることで角部A,C,B,Dの剛性を高めようとしているため、従来と同等のシート巻回数で軽量化を図りつつ、多角形断面の角部A,C,B,Dの強度を効果的に高めることができる。また、各シート22,24,26,28の重ね合わせ部分22A,24C,26B,28Dを角部A,C,B,Dに位置させているため、シートの重ね合わせ部分を多角形断面の辺に位置させる従来と比べて、見栄えも良く、握持保持性も向上する。また、本実施形態では、多角形の頂点の数の整数倍の数のシート22,24,26,28が巻回され、それぞれのシート22,24,26,28の巻回の巻き始め部分と巻き終わり部分との重ね合わせ部分22A,24C,26B,28Dが多角形の全ての角部A,C,B,Dにわたって均等に振り分けられて配置されているため、各角部A,C,B,Dの厚さ及び繊維量が角パイプ20全体にわたって均等になり、全ての角部A,C,B,Dの強度を同等に確保することができる。
【0025】
図4は、競技用スティック1のシャフト2や釣竿10の握り部13を構成する本発明の第2の実施形態に係る角パイプ20Aの横断面を示している。図示のように、本実施形態の角パイプ20Aも、例えば断面が矩形(四角形;本実施形態では略長方形)の管状(中空)構造を成しており、所定の曲率半径を有する円弧状の四隅の角部A,B,C,Dと、これらの角部A,B,C,D間を繋ぐ4つの側面部20a,20b,20c,20dとを有している。また、角パイプ20Aの管状構造は、多角形として四角形を成す角パイプ20の頂点(角部)の数の整数倍、本実施形態では8枚のシート22,24,26,28,32,34,36,38を多重に巻回することにより積層体として構成される。なお、本実施形態では、後述するように、これらの8枚のシートの途中に0°シートS3から成る2枚のプリプレグシート25,31を介在させているが、これらのシート25,31を設けなくてもよい。あるいは、これらのシート25,31(0°シートS3)を全部で4枚(または4n枚;nは自然数)使用し、これらの4枚のシートも含めて、角パイプ20Aの頂点(角部)の数の整数倍、例えば12枚のシートを全体で使用してもよい。
【0026】
また、本実施形態の角パイプ20Aは、図3に示される各種のプリプレグシートS1〜S7の全てを組み合わせて使用することにより形成されている。そして、図示のように、本実施形態の角パイプ20Aにおいても、各層を形成するそれぞれの8枚のシート22,24,26,28,32,34,36,38の巻回の巻き始め部分と巻き終わり部分とが多角形の同じ角部A,B,C,Dに重ね合わせて位置されるとともに、それぞれの8枚のシート22,24,26,28,32,34,36,38の巻回の巻き始め部分と巻き終わり部分との重ね合わせ部分22D,24A,26B,28C,32D,34A,36B,38Cが多角形の全ての角部A,B,C,Dにわたって均等に振り分けられて配置されている。また、これらのことに加え、本実施形態では、更に、角パイプ20Aの軸方向中心軸Oに最も近い最内層の第1のプリプレグシート22から角パイプ20Aの軸方向中心軸Oから最も離れた最外層の第8のプリプレグシート38へと向かうにしたがい、それぞれのシート22,24,26,28,32,34,36,38の巻回の巻き始め部分と巻き終わり部分との重ね合わせ部分22D,24A,26B,28C,32D,34A,36B,38Cが、角パイプ20A(多角形)の1つの周方向(本実施形態では図4の時計回り方向D→A→B→C→D→A→B→C)に沿って互いに隣接する各角部D,A,B,Cに順次に位置されるようになっている。
【0027】
具体的には、図4に示されるように、角パイプ20Aの軸方向中心軸Oに最も近い最内層(第1の層)を形成する+45°シートS1から成る第1のプリプレグシート22は、1周だけ巻回されて、その巻回の巻き始め部分22aと巻き終わり部分22bとが角パイプ20Aの同じ角部Dに重ね合わせて位置される。また、第1のプリプレグシート22上に積層される−45°シートS2から成る第2のプリプレグシート24(第2の層)は、1周だけ巻回されて、その巻回の巻き始め部分24aと巻き終わり部分24bとが角パイプ20Aの(角部Dに対して時計周り方向で隣接する)同じ角部Aに重ね合わせて位置される。なお、この第2のプリプレグシート24上には0°シートS3から成るプリプレグシート25が1周だけ巻回されて積層されている。そして、このプリプレグシート25は、その巻回の巻き始め部分25aと巻き終わり部分25bとが角パイプ20Aの1つの側面部、ここでは側面部20eの略中間部で重ね合わせて位置される。
【0028】
更に、第2のプリプレグシート24上にプリプレグシート25を介して積層される+45°シートS1から成る第3のプリプレグシート26(第3の層)は、1周だけ巻回されて、その巻回の巻き始め部分26aと巻き終わり部分26bとが角パイプ20Aの(角部Aに対して時計周り方向で隣接する)同じ角部Bに重ね合わせて位置される。また、第3のプリプレグシート26上に積層される−45°シートS2から成る第4のプリプレグシート28(第4の層)は、1周だけ巻回されて、その巻回の巻き始め部分28aと巻き終わり部分28bとが角パイプ20Aの(角部Bに対して時計周り方向で隣接する)同じ角部Cに重ね合わせて位置される。なお、この第4のプリプレグシート28上には0°シートS3から成るプリプレグシート31が1周だけ巻回されて積層されている。そして、このプリプレグシート31は、その巻回の巻き始め部分31aと巻き終わり部分31bとが角パイプ20Aの1つの側面部、ここでは側面部20eと対向する側面部20bの略中間部で重ね合わせて位置される。
【0029】
また、第4のプリプレグシート28上にプリプレグシート31を介して積層される+60°シートS5から成る第5のプリプレグシート32(第5の層)は、1周だけ巻回されて、その巻回の巻き始め部分32aと巻き終わり部分32bとが角パイプ20Aの(角部Cに対して時計周り方向で隣接する)同じ角部Dに重ね合わせて位置される。また、第5のプリプレグシート32上に積層される−60°シートS4から成る第6のプリプレグシート34(第6の層)は、1周だけ巻回されて、その巻回の巻き始め部分34aと巻き終わり部分34bとが角パイプ20Aの(角部Dに対して時計周り方向で隣接する)同じ角部Aに重ね合わせて位置される。
【0030】
更に、第6のプリプレグシート34上に積層される+75°シートS7から成る第7のプリプレグシート36(第7の層)は、1周だけ巻回されて、その巻回の巻き始め部分36aと巻き終わり部分36bとが角パイプ20Aの(角部Aに対して時計周り方向で隣接する)同じ角部Bに重ね合わせて位置される。また、第7のプリプレグシート36上に積層される−75°シートS6から成る第8のプリプレグシート38(第8の層;最外層)は、1周だけ巻回されて、その巻回の巻き始め部分38aと巻き終わり部分38bとが角パイプ20Aの(角部Bに対して時計周り方向で隣接する)同じ角部Cに重ね合わせて位置される。なお、各プリプレグシート22,24,26,28,32,34,36,38の重ね合わせ部分22D,24A,26B,28C,32D,34A,36B,38Cの重ね代はそれが位置される角部D,A,B,Cの部位の曲率半径に応じて例えば1〜4mmに設定される。
【0031】
また、以上の構造から分かるように、角パイプ20Aは、最内層のプリプレグシート22から最外層のプリプレグシート38へと向かうにしたがって、角パイプ20Aの軸長方向Xに対するシート繊維の引き揃え方向の成す角度が段階的に大きくなっている(±45°→±60°→±75°)。特に、本実施形態では、最内層のシート22から最外層のシート38へと向かうにしたがって前記繊維の引き揃え方向が周方向に近づいている。
【0032】
以上説明したように、本実施形態によれば、各層を形成するそれぞれのシート22,24,26,28,32,34,36,38の巻回の巻き始め部分と巻き終わり部分とが角パイプ20A(多角形)の同じ角部A,C,B,Dに重ね合わせて位置されるため、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。また、本実施形態では、最内層のシート22から最外層のシート38へと向かうにしたがい、それぞれのシート22,24,26,28,32,34,36,38の巻回の巻き始め部分と巻き終わり部分との重ね合わせ部分22D,24A,26B,28C,32D,34A,36B,38Cが、多角形の1つの周方向(本実施形態では図4の時計回り方向D→A→B→C→D→A→B→C)に沿って互いに隣接する各角部D,A,B,Cに順次に位置されている。したがって、各角部A,B,C,Dの厚さの均一化を容易に実現できる。
【0033】
また、本実施形態において、各シート22,24,26,28,32,34,36,38は、角パイプ20Aの軸長方向Xに対して所定の角度を成す方向で繊維が引き揃えられており、最内層のシート22から最外層のシート38へと向かうにしたがって前記角度が段階的に大きくなっている。特に、本実施形態では、最内層のシート22から最外層のシート38へと向かうにしたがって前記繊維の引き揃え方向が周方向に近づいている。そのため、外層側ほど耐衝撃性が高くなり(剛性が大きくなり)、潰れ(座屈し)難くなる。また、本実施形態の角パイプ20Aは、前記角度が0°のシート(0°シートS3)を含んでいる。そのため、角パイプ20Aの曲げ剛性を高めることができる。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。例えば、前述した実施形態では、角パイプ20,20Aの断面が矩形(四角形;長方形)であったが、本発明の角パイプの断面は、矩形に限定されず、六角形、八角形などの他の多角形であっても構わない。また、前述した実施形態では、各プリプレグシートが1周のみ巻回されているが、複数周にわたって巻回されてもよい。要は、シートの巻き始め部分と巻き終わり部分とが多角形の同じ角部に位置されていればよい。また、前述した実施形態において、各シートは、繊維が一方向にのみ引き揃えられたものであるが、周方向強化繊維と軸方向強化繊維(あるいは、傾斜方向強化繊維)とが織り込まれて成る織布状のものであっても良い。また、前述した第2の実施形態では、各シートの重ね合わせ部分が各角部に対して時計回り方向で順次に位置されているが、反時計回りで順次に位置されてもよく、これは好ましくは繊維方向に応じて決定される。また、前述した実施形態では、シートの数が多角形の頂点の数の整数倍であったが、シートの数(したがって、シートの重ね合わせ部分の数)は、多角形の頂点の数の整数倍である必要はなく、また、多角形の頂点の数より少なくても多くてもよい。
【符号の説明】
【0035】
20,20A 角パイプ
22,24,26,28,32,34,36,38,S1,S2,S3,S4,S5,S6,S7 シート
22a,24a,26a,28a,32a,34a,36a,38a 巻き始め部分
22b,24b,26b,28b,32b,34b,36b,38b 巻き終わり部分
22A,22D,24A,24C,26B,28C,28D,32D,34A,36B,38C 重ね合わせ部分
A,B,C,D 角部
図1
図2
図3
図4