(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
光源から照射される光ビームの光量は、その光ビームを受光した受光部が出力した信号を基にして、自動制御(APC)される。光源として用いられるレーザーダイオードは、半導体レーザーであり、同じ駆動電流でも温度に応じて光源から照射される光ビームの光量が異なるからである。
【0009】
PWM信号を平滑してアナログ信号を生成すると、PWM信号の周期に対応して、アナログ信号にリップルが発生する。APCが実行される期間中に、そのリップルが原因で光源が照射する光ビームの光量が変動することにより、APCを正確に実行できず、その結果、画像の濃度にムラが発生する可能性がある。
【0010】
PWM信号を平滑する回路がCRフィルターからなるローパスフィルターの場合、CRフィルターの時定数を大きくすれば、アナログ信号にリップルが発生することを防止できる。しかし、時定数を大きくすれば、CRフィルターにPWM信号が入力されてアナログ信号を出力するまでの応答時間が長くなり、これは光ビームの光量の制御の遅延となる。従って、CRフィルターの時定数を大きくすることには限界がある。
【0011】
本発明の目的は、静電潜像を形成するための光ビームの光量についてAPCを実行する際に、光ビームを照射する光源の駆動電流の基になり、パルス信号を平滑して生成されるアナログ信号にリップルが発生しても、それによる画質の低下を抑制できる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成する本発明に係る画像形成装置は、感光体と、光ビームを照射する光源を含み、前記光源が照射した前記光ビームを主走査方向に走査させて前記感光体に主走査ラインを描画する露光部と、前記光源に照射させる前記光ビームの光量を示す周期性のパルス信号を生成するパルス生成部と、前記パルス生成部が生成した前記パルス信号を平滑して、アナログ信号を生成する平滑部と、前記平滑部で生成された前記アナログ信号を用いて、前記光源の駆動電流を生成する駆動電流生成部と、前記感光体に描画された前記主走査ラインが有効画像として扱われる有効画像期間において、予め設定された値以下の周波数の前記パルス信号を前記パルス生成部に生成させる第1の照射制御部と、前記光ビームの光量を自動制御するAPC期間において、前記予め設定された値より高い周波数の前記パルス信号を前記パルス生成部に生成させる第2の照射制御部と、前記光源が照射した前記光ビームを受光する受光部と、前記APC期間において前記受光部から出力された信号を基にして、前記駆動電流生成部に生成させる前記駆動電流の大きさを制御することにより、前記有効画像期間において前記光源に照射させる前記光ビームの光量を、前記パルス生成部に生成させる前記パルス信号が示す前記光ビームの光量と一致させる光量制御部と、を備える。
【0013】
パルス信号の周波数を高くすると、パルス信号を平滑して生成されるアナログ信号に発生するリップルを小さくできる。しかし、パルス信号の周波数が高いと、アナログ信号の分解能が低くなり(アナログ信号の値の精度が悪くなり)、実際に生成されるアナログ信号の値とアナログ信号の目標値との誤差が大きくなる場合がある。
【0014】
有効画像期間に光源から照射される光ビームは、静電潜像の形成に用いられる。このため、有効画像期間で上記誤差が大きければ、画質が低下する。誤差を許容範囲にできるパルス信号の周波数の上限を、予め設定された値の周波数とする。
【0015】
これに対して、APC期間に光源から照射される光ビームは、静電潜像の形成に用いられない。よって、APC期間は有効画像期間に比べて、アナログ信号の分解能を高くすることは要求されない。
【0016】
そこで、本発明では、第1の照射制御部が有効画像期間に、予め設定された値以下の周波数のパルス信号をパルス生成部に生成させ、第2の照射制御部がAPC期間に、予め設定された値より高い周波数のパルス信号をパルス生成部に生成させる。このように、本発明によれば、パルス信号の周波数について、予め設定された値を基準として有効画像期間とAPC期間とでパルス信号の周波数を異ならせている。
【0017】
すなわち、有効画像期間では、パルス信号の周波数を予め設定された値以下にすることにより、アナログ信号の分解能を高くして、高画質の画像を形成することを可能にしている。一方、APC期間ではパルス信号の周波数を予め設定された値より大きくすることで、アナログ信号に発生するリップルを小さくしている。これにより、リップルが原因となる光ビームの光量の変動を小さくして、APCを正確に実行できるようにしている。
【0018】
以上のとおり、本発明によれば、APCを実行する際に、光ビームを照射する光源の駆動電流の基になり、パルス信号を平滑して生成されるアナログ信号にリップルが発生しても、それによる画質の低下を抑制できる。
【0019】
上記構成において、前記パルス生成部は、カウンターにより構成され、前記予め設定された値以下の周波数の前記パルス信号と同じ周波数の第1の分周信号と、前記予め設定された値より高い周波数の前記パルス信号と同じ周波数の第2の分周信号と、をクロックパルスの入力に基づいて出力する分周器と、前記分周器から出力された前記第1の分周信号又は前記第2の分周信号を選択する分周信号選択部と、前記分周信号選択部で前記第1の分周信号が選択された場合、前記第1の分周信号の周期毎に、周期の開始から前記クロックパルスの数をカウントし、カウント数が所定数に到達するまで前記第1の分周信号のレベルを保持し、カウント数が前記所定数に到達すると前記第1の分周信号のレベルを切り替える処理をすることで、前記第1の分周信号のデューティー比を調整するデューティー比調整部と、を含み、前記第1の照射制御部は、前記分周信号選択部に前記第1の分周信号を選択させ、そして前記デューティー比調整部に前記第1の分周信号のデューティー比を調整させることにより、前記パルス生成部に前記予め設定された値以下の周波数の前記パルス信号を生成させ、前記第2の照射制御部は、前記分周信号選択部に前記第2の分周信号を選択させることにより、前記パルス生成部に前記予め設定された値より高い周波数の前記パルス信号を生成させる。
【0020】
この構成は、パルス信号の周波数が高くなると、アナログ信号の分解能が低くなるパルス生成部を備える画像形成装置の一例である。すなわち、第1の分周信号が選択された場合、デューティー比調整部は第1の分周信号の周期毎に、周期の開始からクロックパルスの数をカウントし、カウント数が所定数に到達するまで第1の分周信号のレベルを保持し、カウント数が所定数に到達すると第1の分周信号のレベルを切り替える処理をすることで、第1の分周信号のデューティー比を調整する。このようにしてデューティー比が調整されるパルス信号は、実施形態で説明するように、分周信号の周波数(パルス信号の周波数)が高くなると、アナログ信号の分解能が低くなる。
【0021】
パルス信号の周波数が高くなると、アナログ信号の分解能が低くなるパルス生成部を備える画像形成装置に、本発明を適用すれば、上述した作用効果が生じる。
【0022】
上記構成において、前記第2の照射制御部は、前記APC期間の全てにおいて、前記予め設定された値より高い周波数の前記パルス信号を、前記パルス生成部に生成させる。
【0023】
この構成によれば、APC期間の全てにおいて、予め設定された値より高い周波数のパルス信号を生成する。従って、APCの全期間にわたって、予め設定された値以下の周波数のパルス信号が生成されないので、APCの全期間にわたって、アナログ信号に発生するリップルを小さくすることができる。
【0024】
上記構成において、前記有効画像期間と前記APC期間との間の点灯禁止期間において、前記光源の点灯を禁止する点灯禁止制御部を備え、前記第2の照射制御部は、前記点灯禁止期間において、前記パルス生成部に、前記予め設定された値より高い周波数の前記パルス信号の生成を開始させる。
【0025】
この構成によれば、予め設定された値より高い周波数のパルス信号の生成を、点灯禁止期間中に開始させる。従って、APC期間の開始からパルス信号の周波数を予め設定された値より高くすることができるので、APC期間の開始からアナログ信号に発生するリップルを確実に小さくすることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、静電潜像を形成するための光ビームの光量についてAPCを実行する際に、光ビームを照射する光源の駆動電流の基になり、パルス信号を平滑して生成されるアナログ信号にリップルが発生しても、それによる画質の低下を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置1の内部構造の概略を示す図である。画像形成装置1は例えば、コピー、プリンター、スキャナー及びファクシミリーの機能を有するデジタル複合機に適用することができる。画像形成装置1は装置本体100、装置本体100の上に配置された原稿読取部200、原稿読取部200の上に配置された原稿給送部300及び装置本体100の上部前面に配置された操作部400を備える。
【0029】
原稿給送部300は自動原稿送り装置として機能し、原稿載置部301に置かれた複数枚の原稿を連続的に原稿読取部200に送ることができる。
【0030】
原稿読取部200は露光ランプ等を搭載したキャリッジ201、ガラス等の透明部材により構成された原稿台203、不図示のCCD(Charge Coupled Device)センサー及び原稿読取スリット205を備える。原稿台203に載置された原稿を読み取る場合、キャリッジ201を原稿台203の長手方向に移動させながらCCDセンサーにより原稿を読み取る。これに対して、原稿給送部300から給送された原稿を読み取る場合、キャリッジ201を原稿読取スリット205と対向する位置に移動させて、原稿給送部300から送られてきた原稿を、原稿読取スリット205を通してCCDセンサーにより読み取る。CCDセンサーは読み取った原稿を画像データとして出力する。
【0031】
装置本体100は用紙貯留部101、画像形成部103及び定着部105を備える。用紙貯留部101は装置本体100の最下部に配置されており、用紙の束を貯留することができる用紙トレイ107を備える。用紙トレイ107に貯留された用紙の束において、最上位の用紙がピックアップローラー109の駆動により、用紙搬送路111へ向けて送出される。用紙は用紙搬送路111を通って、画像形成部103へ搬送される。
【0032】
画像形成部103は搬送されてきた用紙にトナー画像を形成する。画像形成部103は感光体ドラム113、露光部115、現像部117及び転写部119を備える。露光部115は画像データ(原稿読取部200から出力された画像データ、パソコンから送信された画像データ、ファクシミリー受信の画像データ等)に対応して変調された光を生成し、一様に帯電された感光体ドラム113の周面に照射する。これにより、感光体ドラム113の周面には画像データに対応する静電潜像が形成される。この状態で感光体ドラム113の周面に現像部117からトナーを供給することにより、周面には画像データに対応するトナー画像が形成される。このトナー画像は転写部119によって先ほど説明した用紙貯留部101から搬送されてきた用紙に転写される。
【0033】
トナー画像が転写された用紙は定着部105に送られる。定着部105において、トナー画像と用紙に熱と圧力が加えられて、トナー画像は用紙に定着される。用紙はスタックトレイ121又は排紙トレイ123に排紙される。
【0034】
操作部400は操作キー部401と表示部403を備える。表示部403はタッチパネル機能を有しており、ソフトキーを含む画面が表示される。ユーザーは画面を見ながらソフトキーを操作することによって、コピー等の機能の実行に必要な設定等をする。
【0035】
操作キー部401にはハードキーからなる操作キーが設けられている。具体的にはスタートキー405、テンキー407、ストップキー409、リセットキー411、コピー、プリンター、スキャナー及びファクシミリーを切り換えるための機能切換キー413等が設けられている。
【0036】
スタートキー405はコピー、ファクシミリー送信等の動作を開始させるキーである。テンキー407はコピー部数、ファクシミリー番号等の数字を入力するキーである。ストップキー409はコピー動作等を途中で中止させるキーである。リセットキー411は設定された内容を初期設定状態に戻すキーである。
【0037】
機能切換キー413はコピーキー及び送信キー等を備えており、コピー機能、送信機能等を相互に切り替えるキーである。コピーキーを操作すれば、コピーの初期画面が表示部403に表示される。送信キーを操作すれば、ファクシミリー送信及びメール送信の初期画面が表示部403に表示される。
【0038】
図2は、
図1に示す画像形成装置1の構成を示すブロック図である。画像形成装置1は装置本体100、原稿読取部200、原稿給送部300、操作部400、制御部500及び通信部600がバスによって相互に接続された構成を有する。装置本体100、原稿読取部200、原稿給送部300及び操作部400に関しては既に説明したので、説明を省略する。
【0039】
制御部500はCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及び画像メモリー等を備える。CPUは画像形成装置1を動作させるために必要な制御を、装置本体100等の画像形成装置1の上記構成要素に対して実行する。ROMは画像形成装置1の動作の制御に必要なソフトウェアを記憶している。RAMはソフトウェアの実行時に発生するデータの一時的な記憶及びアプリケーションソフトの記憶等に利用される。画像メモリーは画像データ(原稿読取部200から出力された画像データ、パソコンから送信された画像データ、ファクシミリー受信の画像データ等)を一時的に記憶する。
【0040】
通信部600はファクシミリー通信部601及びネットワークI/F部603を備える。ファクシミリー通信部601は相手先ファクシミリーとの電話回線の接続を制御するNCU(Network Control Unit)及びファクシミリー通信用の信号を変復調する変復調回路を備える。ファクシミリー通信部601は電話回線605に接続される。
【0041】
ネットワークI/F部603はLAN(Local Area Network)607に接続される。ネットワークI/F部603はLAN607に接続されたパソコン等の端末装置との間で通信を実行するための通信インターフェイス回路である。
【0042】
露光部115について詳細に説明する。
図3は、露光部115を構成する光学部品の配置関係を示す図である。露光部115は光源31、ポリゴンミラー10及び二つの走査レンズ33,35等を備える。光源31は例えば、レーザーダイオードであり、光ビームLBを照射する。
【0043】
光源31とポリゴンミラー10との光路上には、コリメーターレンズ37及びシリンドリカルレンズ39が配置されている。コリメーターレンズ37は光源31から照射された光ビームLBを平行光にする。シリンドリカルレンズ39は平行光にされた光ビームLBを線状に集光する。線状に集光された光ビームLBはポリゴンミラー10に入射される。
【0044】
ポリゴンミラー10と感光体ドラム113との光路上には、走査レンズ33と走査レンズ35が配置されている。ポリゴンミラー10の偏向面に入射された光ビームLBは、その偏向面で反射、偏向されて、走査レンズ33,35により感光体ドラム113に結像される。すなわち、光ビームLBを感光体ドラム113に走査することにより、感光体ドラム113に静電潜像が形成される。
【0045】
露光部115はさらに、BDレンズ41及びBDセンサー43を備える。感光体ドラム113の一方の側部113aから他方の側部113bへ向けて、光ビームLBが感光体ドラム113を走査し、有効走査範囲Rを超えた光ビームLBは、BDレンズ41で集光されてBDセンサー43で受光される。BD(Beam Detect)センサー43は感光体ドラム113に走査(主走査)を開始する基準となるBD信号を生成する。
【0046】
以上説明したように、露光部115は、光ビームLBを照射する光源31を含み、光源31が照射した光ビームLBを主走査方向に走査させて感光体ドラム113(感光体の一例)に主走査ラインを描画する。
【0047】
本実施形態では、パルス信号を基にして光源31の駆動電流が生成される。
図4は、光源31の駆動電流S3を生成する駆動電流生成装置10の構成を示すブロック図である。駆動電流生成装置10はパルス生成部11、平滑部12、LDドライバー回路13、第1の照射制御部17、第2の照射制御部18及び点灯禁止制御部19を備える。
【0048】
パルス生成部11は光源31に照射させる光ビームLBの光量を示す周期性のパルス信号S1を生成し、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)により実現される。周期性のパルス信号S1として、例えば、PWM信号やPDM(Pulse Density Modulation)信号が用いることができる。PDM信号とは一定のパルス幅のパルスが出力される密度(間隔)が可変の信号である。本実施形態ではパルス生成部11で生成されるパルス信号S1がPWM信号を例にして説明する。PWM信号のデューティー比を用いて光源31に照射させる光ビームLBの光量が示される。
【0049】
平滑部12はCRフィルターからなるローパスフィルターにより構成され、パルス生成部11が生成したパルス信号S1を平滑して、アナログ電圧S2(アナログ信号)を生成する。アナログ電圧S2は光源31に照射させる光ビームLBの光量を示している。
【0050】
アナログ電圧S2はLDドライバー回路13に送られる。LDドライバー回路13には用紙に印刷する画像を示す画像データ信号が入力される。LDドライバー回路13はアナログ電圧S2及び画像データ信号を利用して、光源31の駆動電流S3を生成する制御及び光源31の点灯制御を実行する。
【0051】
LDドライバー回路13は比較部14と駆動電流生成部15とを備える。平滑部12で生成されたアナログ電圧S2は、比較部14の一方の入力部に入力されて、駆動電流生成部15に送られる。駆動電流生成部15はアナログ電圧S2を用いて光源31の駆動電流S3を生成する。
【0052】
光源31は駆動電流S3により点灯されて光ビームLBを照射する。光ビームLBは感光体ドラム113に照射される他に、フォトダイオードからなる受光部16で受光される。受光部16から出力された信号は、比較部14の他方の入力部に入力される。
【0053】
光源31であるレーザーダイオードのアノードは、受光部16であるフォトダイオードのカソードと接続される。これらのアノードとカソードは、電源と接続される。
【0054】
比較部14及び駆動電流生成部15により、光量制御部20(APC部)が構成される。光量制御部20はAPC期間において、受光部16から出力された信号と平滑部12で生成されたアナログ電圧S2とを比較して(すなわち、APC期間において受光部16から出力された信号を基にして)、駆動電流生成部15に生成させる駆動電流S3の大きさを制御する。これにより、有効画像期間において、光源31に照射させる光ビームLBの光量を、パルス生成部11に生成させるパルス信号S1が示す光ビームLBの光量と一致させる自動制御がされる。
【0055】
ここで、有効画像期間、点灯禁止期間及びAPC期間について説明する。有効画像期間とは、光ビームLBが感光体ドラム113上の有効走査範囲Rに走査され、感光体ドラム113に描画された主走査ラインが有効画像として扱われる期間をいう。有効画像期間の経過後、感光体ドラム113を外れて照射された光ビームLBが、露光部115内で乱反射されて感光体ドラム113に到達すると、静電潜像に悪影響を与える。そこで、有効画像期間の経過後、光源31の点灯を禁止する点灯禁止期間を設けている。APC期間とは、有効画像期間で光源31に照射させる光ビームLBの光量が所望値になるように、光ビームLBの光量を自動制御する期間をいう。
【0056】
第1の照射制御部17、第2の照射制御部18及び点灯禁止制御部19は、制御部500により実行される機能ブロックである。
【0057】
第1の照射制御部17は有効画像期間において、予め設定された値以下の周波数のパルス信号S1をパルス生成部11に生成させる。
【0058】
第2の照射制御部18はAPC期間において、上記予め設定された値より高い周波数のパルス信号S1をパルス生成部11に生成させる。予め設定された値については、後で説明する。
【0059】
点灯禁止制御部19は有効画像期間とAPC期間との間の点灯禁止期間において、光源31の点灯を禁止する制御をする。
【0060】
パルス生成部11で生成されるパルス信号S1であるPWM信号と平滑部12で生成されるアナログ電圧S2との関係を説明する。
図5及び
図6はこれらの関係を表すグラフである。グラフの横軸は時間を示し、グラフの縦軸はアナログ電圧S2の値を示している。
【0061】
図5及び
図6のPWM信号のデューティー比は、いずれも50パーセントであり、アナログ電圧S2の目標電圧が1.0Vである。
図6のPWM信号の周波数は、
図5のPWM信号の周波数よりも高い。PWM信号の周波数が高いほうが、アナログ電圧S2に発生するリップルが小さくなることが分かる。
【0062】
このようにパルス信号S1(PWM信号)の周波数を高くすると、パルス信号S1を平滑して生成されるアナログ電圧S2に発生するリップルを小さくできる。しかし、パルス信号S1の周波数が高いと、アナログ電圧S2の分解能が低くなる(アナログ電圧の精度が悪くなる)。これを、説明する。
【0063】
図7は、本実施形態に係る画像形成装置1に備えられるパルス生成部11のブロック図である。パルス生成部11は分周器21、分周信号選択部22及びデューティー比調整部23を含む。
【0064】
分周器21は例えば、8段のフリップフロップからなる256進カウンターにより構成される。そのカウンターに入力するクロックパルスCLKの周波数fとする。1段目のフリップフロップからは周波数f/2の分周信号Q0が出力され、2段目のフリップフロップからは周波数f/4の分周信号Q1が出力され、3段目のフリップフロップからは周波数f/8の分周信号Q2が出力され、4段目のフリップフロップからは周波数f/16の分周信号Q3が出力され、5段目のフリップフロップからは周波数f/32の分周信号Q4が出力され、6段目のフリップフロップからは周波数f/64の分周信号Q5が出力され、7段目のフリップフロップからは周波数f/128の分周信号Q6が出力され、8段目のフリップフロップからは周波数f/256の分周信号Q7が出力される。
【0065】
本実施形態では、分周信号Q4〜Q7を予め設定された値以下の周波数のパルス信号S1と同じ周波数の第1の分周信号とし、分周信号Q0〜Q3を予め設定された値より高い周波数のパルス信号S1と同じ周波数の第2の分周信号とする。
【0066】
分周信号選択部22はセレクターにより構成され、分周器21から出力された分周信号Q4〜Q7のいずれか(第1の分周信号)を第1の照射制御部17の命令により選択し、分周器21から出力された分周信号Q0〜Q3のいずれか(第2の分周信号)を第2の照射制御部18の命令により選択する。
【0067】
デューティー比調整部23は分周信号選択部22で分周信号Q4〜Q7のいずれか(第1の分周信号)が選択された場合、第1の分周信号の周期毎に、周期の開始からクロックパルスCLKの数をカウントし、カウント数が所定数に到達するまで第1の分周信号のレベルを保持し、カウント数が所定数に到達すると第1の分周信号のレベルを切り替える処理をすることで、第1の分周信号のデューティー比を調整する。
【0068】
分周信号選択部22で分周信号Q0〜Q3のいずれか(第2の分周信号)が選択された場合、分周信号選択部22は第2の分周信号をデューティー比調整部23に送らず、パルス信号S1として出力させる。第2の分周信号のデューティー比を調整しないで、第2の分周信号をパルス信号S1として出力するのは、APC期間において、光源31から照射される光ビームLBは静電潜像の形成に用いられないからである。
【0069】
デューティー比調整部23の動作について詳細に説明する。
図8は、デューティー比調整部23の動作の一例を説明するタイムチャートである。分周信号Q4及び分周信号Q2のそれぞれについて、デューティー比の調整を示している。上述したように、本実施形態において、分周信号Q2のデューティー比は調整されないが、分周信号Q4との比較のために、分周信号Q2のデューティー比の調整を示している。
【0070】
デューティー比調整部23は分周信号Q2,Q4の立ち上がりからクロックパルスCLKのカウントを開始し、カウント数が所定数に到達するまで分周信号Q2,Q4のレベルを保持し、カウント数が所定数に到達すると分周信号Q2,Q4を立ち下げる。所定数が多くなるにしたがってパルス信号S1のデューティー比が大きくなる。分周信号Q2は8個のクロックパルスCLKで一周期となるので、所定数を4にすることにより、パルス信号S1のデューティー比が50パーセントとなる。分周信号Q4は32個のクロックパルスCLKで一周期となるので、所定数を16にすることにより、パルス信号S1のデューティー比が50パーセントとなる。第1の照射制御部17はパルス信号S1のデューティー比に応じて設定された所定数のデータを有する。
【0071】
分周信号Q4の場合、1〜31のクロックパルスCLKの数でパルス信号S1のデューティー比を調整できる。3.125(=100×(1/32))なので、デューティー比を3.125%の間隔で調整できる。
【0072】
これに対して、分周信号Q2の場合、1〜7のクロックパルスCLKの数でパルス信号S1のデューティー比を調整できる。12.5(=100×(1/8))なので、デューティー比を12.5%の間隔で調整できる。
【0073】
以上より、分周信号の周波数が高くなると、パルス信号S1のデューティー比の調整間隔が大きくなり、その結果、アナログ電圧S2の分解能が低下することになる。従って、実際に生成されるアナログ電圧S2とアナログ電圧S2の目標値との誤差が大きくなる場合がある。
【0074】
有効画像期間に光源31から照射される光ビームLBは、静電潜像の形成に用いられる。このため、有効画像期間で上記誤差が大きければ、画質が低下する。誤差を許容範囲にできるパルス信号S1の周波数の上限を、予め設定された値の周波数とする。
【0075】
これに対して、APC期間に光源31から照射される光ビームLBは、静電潜像の形成に用いられない。よって、APC期間は有効画像期間に比べて、アナログ電圧S2の分解能を高くすることは要求されない。
【0076】
そこで、有効画像期間において、第1の照射制御部17は、分周信号選択部22に第1の分周信号を選択させ、そしてデューティー比調整部23に第1の分周信号のデューティー比を調整させることにより、パルス生成部11に予め設定された値以下の周波数のパルス信号S1を生成させる。APC期間において、第2の照射制御部18は、分周信号選択部22に第2の分周信号を選択させることにより、パルス生成部11に予め設定された値より高い周波数のパルス信号S2を生成させる。このように、本実施形態によれば、パルス信号S1の周波数について、予め設定された値を基準として有効画像期間とAPC期間とでパルス信号S1の周波数を異ならせている。
【0077】
すなわち、有効画像期間では、パルス信号S1の周波数を予め設定された値以下にすることにより、アナログ電圧S2の分解能を高くして、高画質の画像を形成することを可能にしている。一方、APC期間ではパルス信号S1の周波数を予め設定された値より高くすることで、アナログ電圧S2に発生するリップルを小さくしている。これにより、リップルが原因となる光ビームLBの光量の変動を小さくして、APCを正確に実行できるようにしている。
【0078】
本実施形態では、予め設定された値の周波数を例えば、分周信号Q4の周波数とし、第1の照射制御部17はアナログ電圧S2に要求される分解能に応じて、分周信号Q4〜Q7のいずれかを、分周信号選択部22に選択させる。第2の照射制御部18は分周信号Q0〜Q3のうち、例えば、平滑部12を通過できる最も高い周波数の分周信号を分周信号選択部22に選択させる。これにより、APC期間においてアナログ電圧S2に発生するリップルを最大限抑制することができる。
【0079】
以上のとおり、本実施形態によれば、APCを実行する際に、光ビームLBを照射する光源31の駆動電流の基になり、パルス信号S1を平滑して生成されるアナログ電圧S2にリップルが発生しても、それによる画質の低下を抑制できる。
【0080】
図9は、本実施形態において、パルス生成部11が生成するパルス信号S1であるPWM信号の周波数制御の第1例を示すタイムチャートである。
図10は、本実施形態において、パルス生成部11が生成するパルス信号S1であるPWM信号の周波数制御の第2例を示すタイムチャートである。一つの主走査の期間には、有効画像期間、点灯禁止期間及びAPC期間が含まれている。一つの主走査の期間には、APC期間が含まれているが、APCが実行されるのは、数回の主走査毎である。
【0081】
図9を参照して、有効画像期間及び点灯禁止期間において、第1の照射制御部17がパルス生成部11に生成させるPWM信号の周波数は、上述した予め設定された値以下である。点灯禁止期間では、光源31の点灯が禁止されるので、PWM信号の周波数は任意である。APC期間では全期間において、第2の照射制御部18がパルス生成部11に生成させるPWM信号の周波数は、予め設定された値より高い。
【0082】
図10を参照して、有効画像期間において、
図9と同様に、第1の照射制御部17がパルス生成部11に生成させるPWM信号の周波数は、予め設定された値以下である。点灯禁止期間では、第2の照射制御部18がパルス生成部11に生成させるPWM信号の周波数は、最初、予め設定された値以下であるが、途中から予め設定された値より高くされる。なお、点灯禁止期間の最初からPWM信号の周波数を予め設定された値より高くしてもよい。第2の照射制御部18は、パルス生成部11に予め設定された値より高い周波数のPWM信号の生成を継続させて、APC期間に移行する。点灯禁止期間では、光源31の点灯が禁止されているので、PWM信号の周波数を切り替えても、静電潜像に悪影響を与えることはない。APC期間では
図9と同様に全期間において、第2の照射制御部18がパルス生成部11に生成させるPWM信号の周波数は予め設定された値より高い。
【0083】
図9及び
図10で説明したように、第2の照射制御部18は、APC期間の全てにおいて、予め設定された値より高い周波数のパルス信号S1をパルス生成部11に生成させる。従って、APCの全期間にわたって、予め設定された値以下の周波数のパルス信号S1が生成されないので、APCの全期間にわたって、アナログ電圧S2に発生するリップルを小さくすることができる。
【0084】
さらに、
図10で説明したように、第2の照射制御部18は、点灯禁止期間において、パルス生成部11に、予め設定された値より高い周波数のパルス信号S1の生成を開始させる。従って、APC期間の開始からパルス信号S1の周波数を予め設定された値より高くすることができるので、APC期間の開始からアナログ信号S2に発生するリップルを確実に小さくすることができる。