特許第5798961号(P5798961)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5798961
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】浴室用液体洗浄剤
(51)【国際特許分類】
   C11D 1/29 20060101AFI20151001BHJP
   C11D 17/08 20060101ALI20151001BHJP
   C11D 3/04 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
   C11D1/29
   C11D17/08
   C11D3/04
【請求項の数】3
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-68243(P2012-68243)
(22)【出願日】2012年3月23日
(65)【公開番号】特開2013-199569(P2013-199569A)
(43)【公開日】2013年10月3日
【審査請求日】2014年11月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】藤村 昌平
(72)【発明者】
【氏名】矢野 万季
【審査官】 吉田 邦久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−153231(JP,A)
【文献】 特表2001−520269(JP,A)
【文献】 国際公開第99/019449(WO,A1)
【文献】 特表2012−530183(JP,A)
【文献】 特開2011−132511(JP,A)
【文献】 特開平11−335700(JP,A)
【文献】 特開昭55−034256(JP,A)
【文献】 特開2012−233077(JP,A)
【文献】 特開2012−241091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/29
C11D 3/04
C11D 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物(a)と、金属イオン封鎖剤(b)とを含有する、浴室用液体洗浄剤。
【化1】
[式(1)中、xとyはそれぞれ1〜7の整数であり、x+y=8である。POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を表す。pはPOの平均繰返し数、qはEOの平均繰返し数を表し、p+qは1〜10である。Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムおよびアルカノールアミンのいずれかである。]
【請求項2】
(a)/(b)で表される質量比が0.6〜1.7である、請求項1に記載の浴室用液体洗浄剤。
【請求項3】
亜鉛(c)をさらに含有する、請求項1または2に記載の浴室用液体洗浄剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室用の液体洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の浴室のユニット化・システム化に伴い、浴槽や浴室の壁・床等に加えて、排水口内や排水経路等にも、プラスチックが広く採用されるようになってきている。ところが、プラスチックの表面は疎水性であるため、該表面には、皮脂等の油性汚れや、石鹸等に含まれる脂肪酸と水道水中のカルシウムとが結合した水不溶性の脂肪酸カルシウム等のスカム汚れが付着しやすい。そこで、このようなスカム汚れの付着を抑制する目的で、浴槽や浴室の壁・床、洗面器等のプラスチック表面を親水化加工したり、これらの形状を工夫したりする等の対策が講じられるようになってきている。しかしながら、排水口内や排水経路等の表面には、このような対策が講じられることはあまりないため、これらの表面等に付着するスカム汚れの問題は依然多かった。
【0003】
一方、スカム汚れを洗浄するための洗剤としては、例えば特許文献1および2に記載のように、金属イオン封鎖剤と界面活性剤や溶剤とを組み合わせた組成物が知られている。この種の洗剤によれば、金属イオン封鎖剤の作用により、スカム汚れの主成分である脂肪酸カルシウム等の水不溶性物質を脂肪酸アルカリ金属塩等の水溶性物質に変えるとともに、汚れを分散させる界面活性剤や溶剤を作用させることで、スカム汚れに対する洗浄効果が発揮されるものと考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−335700号公報
【特許文献2】特開2001−187895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような洗剤を使用することによって、洗面器や浴室の床等の被洗浄物に付着したスカム汚れを一旦は良好に洗浄できても、その後のすすぎ工程で問題が生じやすかった。
すなわち、すすぎ工程においてこれら被洗浄物に水道水をかけ、洗剤を希釈すると、金属イオン封鎖剤の作用により生成していた脂肪酸アルカリ金属塩等の水溶性物質が、水道水中のカルシウムイオン等によって再度脂肪酸カルシウム等の水不溶性物質に戻り、析出しやすい。そして、このように再度析出した水不溶性物質が、スカム汚れとして、排水口内や排水経路等に再付着するという問題があった。
このように排水口内や排水経路に再付着したスカム汚れは、慢性的な汚れとなり、排水効率が低下するだけでなく、微生物の温床になったり、悪臭発生の原因になったりする。
【0006】
また、このようなスカム汚れの再付着は、すすぎ工程で生じた排液が泡立っている場合に、より顕著になりやすい傾向があった。
すなわち、排液が泡立っていると、再度析出した脂肪酸カルシウム等の水不溶性物質や、ブラシやスポンジで物理力により剥がされた汚れ等が、泡に絡まって排水口内や排水経路に留まりやすい。その結果、スカム汚れが再付着しやすくなる。
そのため、スカム汚れの再付着を抑制する観点から、浴室用の洗剤には、すすぎ工程において水道水で希釈されると、速やかに泡が消失するという良好な破泡性を示すことも求められる。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、スカム汚れの洗浄力に優れるだけでなく、すすぎ工程におけるスカム汚れの再析出抑制効果と優れた破泡性とを備えることにより、排水口内や排水経路等へのスカム汚れの再付着を抑制できる浴室用液体洗浄剤の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討した結果、分岐型アルキル基を有する特定の陰イオン界面活性剤(化合物(a))と、金属イオン封鎖剤(b)とを組み合わせることにより、スカム汚れの洗浄力に優れるだけでなく、すすぎ工程におけるスカム汚れの再析出抑制効果と優れた破泡性とを備え、それにより、スカム汚れの再付着を抑制できる浴室用液体洗浄剤を提供できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明の浴室用液体洗浄剤は、スカム汚れを水溶性物質とする金属イオン封鎖剤(b)を有し、かつ、スカム汚れを取り込む作用に優れた化合物(a)を備えている。そのため、すすぎ工程で水道水が加えられても、スカム汚れを再析出させにくい。さらに、本発明の浴室用液体洗浄剤は、すすぎ工程で希釈された際には速やかに破泡する。そのため、仮にスカム汚れが再析出したとしても、これを泡で絡めて排水口内や排水経路に留めてしまうことがなく、スカム汚れの再付着を高度に抑制できる。
【0009】
本発明の浴室用液体洗浄剤は、下記一般式(1)で表される化合物(a)と、金属イオン封鎖剤(b)とを含有することを特徴とする。
【化1】
[式(1)中、xとyはそれぞれ1〜7の整数であり、x+y=8である。POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を表す。pはPOの平均繰返し数、qはEOの平均繰返し数を表し、p+qは1〜10である。Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムおよびアルカノールアミンのいずれかである。]
(a)/(b)で表される質量比は、0.6〜1.7であることが好ましい。
本発明の浴室用液体洗浄剤は、亜鉛(c)をさらに含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の浴室用液体洗浄剤によれば、スカム汚れの洗浄力に優れるだけでなく、すすぎ工程におけるスカム汚れの再析出抑制効果と優れた破泡性とを備えることにより、排水口内や排水経路等へのスカム汚れの再付着を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の浴室用液体洗浄剤(以下、単に液体洗浄剤という場合がある。)は、一般式(1)で表される化合物(a)と、金属イオン封鎖剤(b)とを含有する。
以下、これらの成分をそれぞれ(a)成分、(b)成分という場合がある。
また、本発明の液体洗浄剤が被洗浄物とする浴室とは、浴槽、浴室内の壁・床・天井、浴室のドア、浴室に設けられた鏡、蛇口、シャワー、排水口、排水経路(排水パイプ等。)等の各種設備であり、プラスチック、金属、陶磁器等の硬表面を有するものである。
【0012】
<化合物(a)>
(a)成分は、分岐型アルキル基を有する式(1)で表される陰イオン界面活性剤である。このような(a)成分と後述の(b)成分とを組み合わせることにより、スカム汚れの洗浄力に優れる液体洗浄剤が得られる。また、この液体洗浄剤は、すすぎ工程におけるスカム汚れの再析出抑制効果と優れた破泡性とを備え、そのため、排水口内や排水経路等へのスカム汚れの再付着を抑制する効果(スカム汚れ再付着抑制効果)が得られる。
【0013】
【化2】
[式(1)中、xとyはそれぞれ1〜7の整数であり、x+y=8である。POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を表す。pはPOの平均繰返し数、qはEOの平均繰返し数を表し、p+qは1〜10である。Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムおよびアルカノールアミンのいずれかである。]
【0014】
式(1)中、xとyは、それぞれ1〜7の整数であり、x+y=8である。x+y=8であることにより、液体洗浄剤は、スカム汚れの洗浄力に優れるだけでなく、すすぎ工程におけるスカム汚れの再析出抑制効果と優れた破泡性とを備え、スカム汚れ再付着抑制効果を発揮する。
2x+1、C2y+1としては、それぞれ、直鎖状のアルキル基又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられ、スカム汚れの洗浄力とスカム汚れ再付着抑制効果に優れることから、直鎖状のアルキル基が好ましい。そのなかでも、C2x+1、C2y+1は、プロピル基とペンチル基との組合せ(xとyの一方が3で、他方が5であること)が特に好ましい。
【0015】
式(1)中、POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基、pはPOの平均繰返し数、qはEOの平均繰返し数をそれぞれ表す。
p+qは1〜10であり、好ましくは1〜5であり、特に好ましくは3〜4である。p+qが前記範囲であることにより、(a)成分を含む液体洗浄剤は、スカム汚れの洗浄力に優れるだけでなく、すすぎ工程におけるスカム汚れの再析出抑制効果と優れた破泡性とを備え、スカム汚れ再付着抑制効果を発揮する。
qは1〜10であることが好ましく、1〜5であることがより好ましい。pは0〜9であることが好ましく、0〜4であることがより好ましい。
【0016】
POとEOとが混在している場合、POとEOとの配列状態は特に制限されず、ランダム状に混在していてもよく、ブロック状に混在していてもよい。
なお、p、qは、それぞれPO、EOの「平均」繰返し数を示している。すなわち、式(1)で表される化合物は、PO、EOの繰返し数が異なる分子(PO又はEOを有しない分子を含む)の集合体である。また、C2x+1とC2y+1との組合せの異なる分子の集合体であってもよい。
【0017】
式(1)中、Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムおよびアルカノールアミンのいずれかであり、(C2x+1)(C2y+1)CH−CHO−(PO)p−(EO)q−SOとともに水溶性の塩を形成し得るものであればよい。
アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属としては、カルシウム、マグネシウム等が挙げられる。アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0018】
(a)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
また、(a)成分としては、ガーベット反応による2分子縮合で得られた、β位に分岐構造を有するアルコールのアルキレンオキシド付加物の硫酸化物であることが好ましい。
(a)成分は、ガーベットアルコールのアルキレンオキシド付加物を、槽型反応方式、フィルム型反応方式、管型気液混相流反応方式等を用いて、たとえば液体無水硫酸との混合、又はSOガスとの接触等により硫酸化した後、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、アンモニウム又はアルカノールアミン等で中和することにより製造できる。
【0019】
ガーベットアルコールのアルキレンオキシド付加物の具体例としては、BASF社製のルテンゾールXP30(エチレンオキシドの平均付加モル数3)、ルテンゾールXP40(エチレンオキシドの平均付加モル数4)、ルテンゾールXL40(プロピレンオキシドの平均付加モル数1、エチレンオキシドの平均付加モル数3)(以上、商品名)等が挙げられる。
【0020】
液体洗浄剤中の(a)成分の含有量は、1〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは3〜7質量%である。
(a)成分の配合量が下限値以上であると、液体洗浄剤はスカム汚れを充分に取り込むことができ、スカム汚れの洗浄力がより優れる。また、すすぎ工程においてもスカム汚れを充分に保持し、スカム汚れの再析出抑制効果がより良好となる。(a)成分の配合量が上限値以下であると、すすぎ工程で液体洗浄剤が水道水で希釈された場合には、(a)成分の配向が疎となりやすく、破泡性がより優れる傾向がある。
【0021】
<金属イオン封鎖剤(b)>
金属イオン封鎖剤(b)としては、例えば、アミノカルボン酸類、有機カルボン酸類、ホスホン酸類、ホスホノカルボン酸類、リン酸類等や、これらと塩基性物質との塩等、金属イオン封鎖剤として通常用いられるものを採用できる。塩としては、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属との塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンとの塩等が挙げられる。金属イオン封鎖剤(b)は、1種以上を使用できる。
【0022】
アミノカルボン酸類またはその塩としては、例えば、下記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
【化3】
【0023】
式(2)中、M、M、Mは互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、カチオン性アンモニウム基およびアルカノールアミンのいずれかである。アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウムが好ましい。アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンが好ましい。M、M、Mとしては、アルカリ金属が好ましく、ナトリウムが特に好ましい。
Aは、炭素数8〜22の直鎖又は分岐アルキル基、スルホ基、アミノ基、水酸基、水素原子又はCOOMを表す。Aとしては、CH、OH、H、COOMが好ましく、なかでもCH、Hがより好ましく、CHが特に好ましい。なお、Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、カチオン性アンモニウム基およびアルカノールアミンのいずれかである。アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウムが好ましい。アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンが好ましい。M、M、Mとしては、アルカリ金属が好ましく、ナトリウムが特に好ましい。
m及びnは、それぞれ0〜2の整数である。mは、好ましくは0又は1である。nは、好ましくは0又は1である。mとnとがいずれも0の場合、AはCHである。
【0024】
式(2)で表されるアミノカルボン酸類(M、M、Mがいずれも水素原子。)としては、メチルグリシンジ酢酸(m=n=0、A=CH)、アスパラギン酸ジ酢酸(m=1、n=0、A=COOH)、イソセリンジ酢酸(m=0、n=1、A=OH)、β−アラニンジ酢酸(m=0、n=1、A=H)、グルタミン酸ジ酢酸(m=n=0、A=H)が挙げられる。
【0025】
その他のアミノカルボン酸類としては、エチレンジアミンテトラ酢酸、ニトリロトリ酢酸、イミノジ酢酸、イミノジコハク酸、ジエチレントリアミノペンタ酢酸、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミン酢酸、エチレンジアミンテトラプロピオン酢酸、トリエチレンテトラヘキサ酢酸、エチレングリコールジエーテルジアミンテトラ酢酸、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸、シクロヘキサン−1,2−ジアミンテトラ酢酸等が挙げられる。
【0026】
有機カルボン酸類としては、酢酸、アジピン酸、モノクロル酢酸、シュウ酸、コハク酸、オキシジコハク酸、カルボキシメチルコハク酸、カルボキシメチルオキシコハク酸等、またグリコール酸、ジグリコール酸、乳酸、酒石酸、カルボキシメチル酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸等のヒドロキシカルボン酸物質を挙げることができる。
【0027】
ホスホン酸類としては、エタン−1,1−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸およびその誘導体、1−ヒドロキシエタン−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1,2−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸等を挙げることができる。
【0028】
ホスホノカルボン酸類としては、2−ホスホノブタン−1,2−ジカルボン酸、1−ホスホノブタン−2,3,4−トリカルボン酸、α−メチルホスホノコハク酸等を挙げることができる。
リン酸類としては、オルソリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、メタリン酸、ヘキサメタリン酸、フィチン酸等の縮合リン酸等を挙げることができる。
【0029】
金属イオン封鎖剤(b)としては、これらのなかでは、アミノカルボン酸類またはその塩が好ましい。特に、スカム汚れの洗浄力とスカム汚れの再析出抑制効果とがより良好である点からは、メチルグリシンジ酢酸およびその塩(特にアルカリ金属塩。)、エチレンジアミンテトラ酢酸およびその塩(特にアルカリ金属塩。)が好ましい。
【0030】
液体洗浄剤中の(b)成分の含有量は、1〜10質量%であることが好ましく、3〜7質量%であることがさらに好ましい。(b)成分の配合量が下限値以上であると、スカム汚れの主成分である脂肪酸カルシウムに充分に作用して、これを脂肪酸ナトリウム等の水溶性物質に変えることができ、スカム汚れの洗浄力がより優れる。また、すすぎ工程においても同様の作用が持続し、水溶性物質の不溶化を防ぎ、スカム汚れの再析出抑制効果をより良好に発揮できる。一方、(b)成分の配合量が上限値を超えた場合には、すすぎ工程で加えられる水道水中に含まれ、破泡性に寄与すると考えられる2価金属イオン(カルシウムイオン等。)を必要以上に捕捉してしまう。そのため、破泡性を良好に維持する観点から、(b)成分の配合量を上限値以下とすることが好ましい。
【0031】
(a)成分と(b)成分との質量比(a)/(b)は、0.6〜1.7が好ましく、0.8〜1.3がより好ましい。(a)成分と(b)成分とがこのような比率であると、特に、すすぎ工程におけるスカム汚れの再析出抑制効果と破泡性とがともに非常に優れる。そして、これら2つの特性が共に優れることに起因して、排水口内や排水経路等に対するスカム汚れ再付着抑制効果が高度に発揮される。
【0032】
<亜鉛(c)>
液体洗浄剤は、亜鉛(c)(以下、(c)成分という場合もある。)をさらに含有することができる。
(c)成分は、スカム汚れなどに起因する排水口等の悪臭を抑制する成分であって、例えば、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、グルコン酸亜鉛、臭化亜鉛、硝酸亜鉛、塩化亜鉛アンモニウム、酢酸亜鉛、硫酸亜鉛アンモニウム、硫酸亜鉛アルミニウム、硫酸亜鉛カリウム、ヨウ化亜鉛等の水溶性亜鉛(25℃の水1Lに10g以上溶解する亜鉛化合物。)の形態で、液体洗浄剤に配合されることが好ましく、特に、硫酸亜鉛、塩化亜鉛が悪臭抑制効果の点から好ましい。
(c)成分としては、1種以上を使用できる。また、(c)成分は、液体洗浄剤中においては、(a)成分であるアニオン性界面活性剤の対イオンや、(b)成分である金属イオン封鎖剤の塩を構成する陽イオンなどとして存在していてもよく、その存在形態には特に制限はない。
【0033】
液体洗浄剤中の(c)成分の含有量は、0.01〜10質量%であることが好ましく、1〜5質量%であることがさらに好ましい。(c)成分の配合量が下限値以上であると、(c)成分による悪臭抑制効果が充分に発揮される。また、上限値以下であると、(c)成分の配合による液体洗浄剤の貯蔵安定性低下が生じにくい。
【0034】
また、(c)成分を配合する場合には、その悪臭抑制効果をより発揮させるために、(b)成分としてアミノカルボン酸類またはその塩を採用することが好ましく、さらには上記式(2)で表されるアミノカルボン酸類(メチルグリシンジ酢酸、アスパラギン酸ジ酢酸、イソセリンジ酢酸、β−アラニンジ酢酸、グルタミン酸ジ酢酸等。)またはその塩を採用することが好ましく、より好ましくは、メチルグリシンジ酢酸またはその塩を採用する。
【0035】
<溶媒>
(水)
本発明の液体洗浄剤は、液体洗浄剤の調製しやすさや、すすぎの際に水に容易に溶解する観点等から、通常、溶媒として水を含有する。
液体洗浄剤中の水の配合量は、液体洗浄剤中50〜95質量%が好ましく、70〜95 質量%がより好ましく、75〜90質量%がさらに好ましい。
水の配合量が下限値以上であると、液体洗浄剤がすすぎの際に水に溶解し流れやすくなり、上限値以下であれば、洗浄成分を充分に含有することが可能である。
【0036】
(有機溶剤)
溶媒としては、水以外に1種以上の有機溶剤を用いてもよい。有機溶剤を使用することによって、例えば(a)〜(c)成分を液体洗浄剤に良好に溶解させる効果や、洗浄力を向上させる効果が得られる。
【0037】
有機溶剤としては、例えば、炭素数2〜4の1価アルコール、炭素数4〜12の多価アルコールや炭素数4〜10のグリセリルエーテル、炭素数3〜14のグリコールエーテル溶剤が挙げられる。
炭素数2〜4の1価アルコールとしては、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ノルマルブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャルブタノールが挙げられる。
炭素数4〜12の多価アルコールや炭素数4〜10のグリセリルエーテルとしては、イソプレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン、ヘキシルグリセリルエーテル等が挙げられる。
炭素数3〜14のグリコールエーテル溶剤としては、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、フェニルカルビトール、フェニルセロソルブ、ベンジルカルビトール等が挙げられる。
【0038】
これらのうち、(a)〜(c)成分を液体洗浄剤に溶解させる効果、洗浄力の点から、炭素数3〜14のグリコールエーテル溶剤が好ましく、特に好ましくはジエチレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。
有機溶剤の含有量は、液体洗浄剤中、1〜20質量%が好ましく、さらに好ましくは5〜15質量%である。下限値以上であると、(a)〜(c)成分が液体洗浄剤中に良好に溶解し、液体洗浄剤に濁りが生じにくくなる傾向がある。また、有機溶剤を添加することによる洗浄力の向上効果が得られやすい。一方、上限値以下であると、(a)〜(c)成分や後述の任意成分の溶解性も維持でき、ゲル化やダマ等のない均一な液体洗浄剤が得られる傾向がある。
【0039】
<任意成分>
本発明の液体洗浄剤は、本発明の効果を妨げない範囲で、浴室用洗浄剤に使用され得る成分を目的に応じて含んでもよい。このような任意成分としては、以下に示す成分が挙げられる。任意成分は、必要に応じて1種以上を用いることができる。
【0040】
(界面活性剤)
界面活性剤としては、上述した(a)成分以外の界面活性剤(アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、半極性界面活性剤)が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、特に限定されず、公知のものを使用できる。例えば、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩;α−オレフィンスルホン酸塩;直鎖又は分岐鎖のアルキル硫酸エステル塩;アルキルエーテル硫酸エステル塩又はアルケニルエーテル硫酸エステル塩;アルキル基を有するアルカンスルホン酸塩;α−スルホ脂肪酸エステル塩等が挙げられる。
塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン塩等が挙げられる。
【0041】
これらのうち、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩としては、直鎖アルキル基の炭素数が8〜16のものが好ましく、炭素数10〜14のものが特に好ましい。
α−オレフィンスルホン酸塩としては、炭素数10〜20のものが好ましい。
アルキル硫酸エステル塩としては、炭素数10〜20のものが好ましい。
アルキルエーテル硫酸エステル塩又はアルケニルエーテル硫酸エステル塩としては、炭素数10〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基もしくはアルケニル基を有し、平均1〜10モルの酸化エチレンを付加したもの(すなわち、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩又はポリオキシエチレンアルケニルエーテル硫酸エステル塩)が好ましい。
アルカンスルホン酸塩の炭素数は10〜20、好ましくは14〜17であり、2級アルカンスルホン酸塩が特に好ましい。
α−スルホ脂肪酸エステル塩としては、炭素数10〜20のものが好ましい。
【0042】
これらのアニオン性界面活性剤は、市場において容易に入手することができる。また、公知の方法により合成してもよい。
【0043】
非イオン性界面活性剤としては特に限定されず、公知のものを使用できる。具体的には、アルキルアミンオキシド型界面活性剤としては、N−ラウリル−N,N−ジメチルアミンオキシド、N−ミリスチル−N,N−ジメチルアミンオキシド、N−パルミチル−N,N−ジメチルアミンオキシド、ラウロイルアミノプロピルジメチルアミンオキシド等から選ばれるアルキルアミンオキシドが好ましい。
【0044】
また、R11−O−(R12O)−H(R11は炭素数10〜18の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基、R12は炭素数1〜3の炭化水素基、好ましくはアルキレン基、tは平均付加モル数であり1〜20、好ましくは5〜15の数である。)で表されるポリオキシアルキレン付加型非イオン性界面活性剤、アルキルグリコシド、ソルビタン脂肪酸エステル等も挙げられ、ポリオキシアルキレン(炭素数2〜3)アルキル(炭素数10〜18)エーテル(アルキレンオキシド平均付加モル数5〜20)が好ましい。
【0045】
両性界面活性剤としては特に限定されず、公知のものを使用できる。具体的には、カルボン酸塩型、硫酸エステル塩型、スルホン酸塩型、リン酸エステル塩型等の両性界面活性剤が挙げられ、なかでも洗浄力の点から、カルボン酸型が好ましい。
カルボン酸塩型の両性界面活性剤としは、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシアルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシアルキルアミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のベタイン型両性界面活性剤が挙げられる。
【0046】
カチオン性界面活性剤としては特に限定されず、公知のものを使用できる。具体的には、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムメトサルフェート、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジオクチルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジヒドロキシエチルアンモニウムクロライド、ジ牛脂アルキルジメチルアンモニウムクロライド、ジ(ステアロイルオキシエチル)ジメチルアンモニウムクロライド、ジ(オレオイルオキシエチル)ジメチルアンモニウムクロライド、ジ(パルミトイルオキシエチル)ジメチルアンモニウムメトサルフェート、ジ(ステアロイルオキシイソプロピル)ジメチルアンモニウムクロライド、ジ(オレオイルオキシイソプロピル)ジメチルアンモニウムクロライド、ジ(オレオイルオキシブチル)ジメチルアンモニウムクロライド、ジ(ステアロイルオキシエチル)メチルヒドロキシエチルアンモニウムメトサルフェート、トリ(ステアロイルオキシエチル)メチルメトサルフェート等が挙げられる。なお、「牛脂アルキル」基の炭素数は14〜18である。
上記のなかでも、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライドが好ましい。
【0047】
本発明の液体洗浄剤のpHは、25℃でのpHが5〜10であることが好ましく、7〜9であることがより好ましい。
液体洗浄剤のpHが上記範囲内であると、浴室内の素材に対する影響もマイルドで各種の汚れに対する洗浄力が良好となり好ましい。
【0048】
以上説明した液体洗浄剤は、分岐構造を有する硫酸エステル塩である化合物(a)と、金属イオン封鎖剤(b)とを含有する。そのため、スカム汚れの洗浄力に優れるだけでなく、すすぎ工程における排水口内や排水経路等へのスカム汚れの再付着を抑制できる。
かかる効果が得られる理由は、必ずしも明らかではないが、以下のように推測される。
【0049】
すなわち、化合物(a)は、β位で分岐している特異的な構造により、一般的な直鎖状または分岐鎖状のアニオン界面活性剤に比べ動的表面張力低下能が高い。そのため、新しく界面が出来た時に界面活性剤分子膜が速やかに形成される。よって、水不溶性のスカム汚れの溶解や分散能に優れ、(b)成分によるスカム汚れの水溶性化作用とあいまって、優れた洗浄力を発揮するものと考えられる。また、(a)成分は、スカム汚れの溶解や分解能に優れ、すすぎ工程で水道水が加えられてもスカム汚れを再析出させにくく、スカム汚れの排水口内や排水経路への再付着を高度に抑制できるものと考えられる。
また、疎水基が嵩高い(a)成分は、界面に密に配向しにくい構造となっているため、すすぎ工程で水道水が加えられ希釈されると一気に破泡しやすい。そのため、仮にスカム汚れが再析出したとしても、これを泡で絡めて排水口内や排水経路に留めることがなく、スカム汚れの再付着をより高度に抑制できるものと考えられる。
【0050】
また、さらに(c)成分を用いることで、液体洗浄剤の悪臭抑制効果も高めることができる。(c)成分を用いることにより、かかる効果が得られる理由は明らかではないが、(a)成分、(b)成分によって排水口内や排水経路にスカムの付着が抑制され、その結果、抗菌効果を有する(c)成分の亜鉛が微量残された汚れ成分(ニオイ成分)に直接作用することで優れた悪臭抑制効果を奏するものと考えられる。
【0051】
このように本発明の液体洗浄剤によれば、スカム汚れを落とすことができ、しかも、排水口内や排水経路等に再付着させることなく、浴室掃除を完了することができる。よって、このような液体洗浄剤を日常的に使用することが、洗剤の原液で洗浄される機会が少ない排水口や排水経路等を清潔に保つ点で、非常に効果的である。
【実施例】
【0052】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0053】
<液体洗浄剤の調製>
表に示す配合組成に従って、以下に示す製造方法により、各実施例および比較例の液体洗浄剤1000gをそれぞれ調製した。
表中の配合量の単位は「質量%」であり、いずれの成分も純分換算量を示す。
なお、各例の液体洗浄剤は、表に記載の各成分の合計が100質量%となるように水でバランスして調製した。
【0054】
[調製方法]
1Lビーカーに、バランス成分である蒸留水の70〜80%を入れ、ついで、(a)成分または(a’)成分と、(b)成分と、(c)成分と、任意成分を表の記載に則して入れ、マグネチックスターラー(Fine製 F−606N)で充分に撹拌した。
撹拌による混合終了後、25℃でのpHが8になるように、必要に応じpH調整剤を適量(水酸化ナトリウムを純分として約2g以下の量。)添加した。その後、全体量が100質量%になるように蒸留水を入れ、さらによく攪拌し、各例の浴室用液体洗浄剤をそれぞれ製造した。
なお、水の配合量を示す「バランス」は、液体洗浄剤に含まれる全配合成分の合計の配合量(質量%)が100質量%となるように加えられた残部を意味する。
【0055】
pH測定は、液体洗浄剤を25℃に調温し、ガラス電極式pHメータ(製品名:HM−30G、東亜ディーケーケー(株)製)を用い、ガラス電極を液体洗浄剤に直接に浸漬して行った。また、pHの値は、1分間経過後に示すpHの値を採用した。
【0056】
表中、(a)/(b)は、液体洗浄剤中の(b)成分含有量に対する、(a)成分含有量の割合(質量比)を意味する。
【0057】
[各成分]
以下に、表中に示した成分について説明する。
((a)成分)
(a)−1:ポリオキシエチレンモノ(2−プロピルヘプチル)エーテル硫酸エステルNa
BASF社製「ルテンゾール XP30」290gを、撹拌装置付の500mLフラスコに取り、窒素置換後、液体無水硫酸(サルファン)81gを反応温度40℃に保ちながらゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間撹拌を続け、目的とするポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸を得た。さらに、これを水酸化ナトリウム水溶液で中和することにより得た。
(a)−1は、式(1)において、C2x+1=プロピル基、C2y+1=ペンチル基、x+y=8、p=0、q=3、M=ナトリウムに相当。
【0058】
(a)−2:ポリオキシエチレンモノ(2−プロピルヘプチル)エーテル硫酸エステルNa
BASF社製「ルテンゾール XP30」の代わりに、BASF社製「ルテンゾール XP40」の334gを用いた以外は、(a)−1と同様にして調製した。
(a)−2は、式(1)において、C2x+1=プロピル基、C2y+1=ペンチル基、x+y=8、p=0、q=4、M=ナトリウムに相当。
【0059】
(a)−3:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノ(2−プロピルヘプチル)エーテル硫酸エステルNa
BASF社製「ルテンゾール XP30」の代わりに、BASF社製「ルテンゾール XL40」の349gを用いた以外は、(a)−1と同様にして調製した。
(a)−3は、式(1)において、C2x+1=プロピル基、C2y+1=ペンチル基、x+y=8、p=1、q=3、M=ナトリウムに相当。
【0060】
((a)成分の比較品である(a’)成分)
(a’)−1:直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩
炭素数10〜14のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(テイカ製、テイカパワーL121を水酸化ナトリウムにて中和。)
【0061】
(a’)−2:2−プロピルヘプチルエーテル硫酸エステルNa
ヘキシルアルデヒドをアルカリによってゲルベ縮合(二量化)させ、これによって得られた2−プロピルヘプタノールの158gを撹拌装置付の500mLフラスコに取り、窒素置換後、液体無水硫酸(サルファン)81gを反応温度40℃に保ちながらゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間撹拌を続け、目的とするアルキルエーテル硫酸を得た。さらに、これを水酸化ナトリウム水溶液で中和することにより得た。
(a’)−2は、式(1)において、C2x+1=プロピル基,C2y+1=ペンチル基、x+y=8、p=0、q=0、M=ナトリウムに相当。
【0062】
(a’)−3:ポリオキシエチレン(2−ブチルオクチル)エーテル硫酸エステルナトリウム(エチレンオキサイド平均3モル付加)
4Lのオートクレーブ中に、サソール社製、商品名ISOFOL12(式(1)におけるC2x+1=ブチル基,C2y+1=ヘキシル基)の372gと、水酸化カリウム触媒の0.8gとを仕込み、オートクレーブ内を窒素置換し、攪拌しながら昇温した。その後、温度180℃、圧力0.3mPaに維持しながら、エチレンオキシドの271gを導入し、エチレンオキシドの平均付加モル数3の反応物を得た。次に、こうして得られたアルコールエトキシレートの321gを撹拌装置付の500mLフラスコに取り、窒素置換後、液体無水硫酸(サルファン)の81gを反応温度40℃に保ちながらゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間撹拌を続け、目的とするポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸を得た。さらに、これを水酸化ナトリウム水溶液で中和することにより(a’)−3を得た。
(a’)−3は、式(1)において、C2x+1=ブチル基,C2y+1=ヘキシル基、x+y=10、p=0、q=3、M=ナトリウムに相当。
【0063】
(a’)−4:ポリオキシエチレン(2−ブチルオクチル)エーテル硫酸エステルナトリウム(エチレンオキサイド平均12モル付加)
4Lのオートクレーブ中に、サソール社製、商品名ISOFOL12(式(1)におけるC2x+1=ブチル基,C2y+1=ヘキシル基)の372gと、水酸化カリウム触媒0.8gとを仕込み、オートクレーブ内を窒素置換し、攪拌しながら昇温した。その後、温度180℃、圧力0.3mPaに維持しながらエチレンオキシド1084gを導入し、エチレンオキシドの平均付加モル数12の反応物を得た。次に、こうして得られたアルコールエトキシレートの728gを撹拌装置付の500mLフラスコに取り、窒素置換後、液体無水硫酸(サルファン)の81gを反応温度40℃に保ちながらゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間撹拌を続け、目的とするポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸を得た。さらに、これを水酸化ナトリウム水溶液で中和することにより(a’)−4を得た。
(a’)−4は、式(1)において、C2x+1=ブチル基,C2y+1=ヘキシル基、x+y=10、p=0、q=12、M=ナトリウムに相当。
【0064】
(a’)−5:炭素数13の分岐アルコールにEO平均3モル付加品の硫酸化物
BASF社製「ルテンゾール TO3」の332gを、撹拌装置付の500mLフラスコに取り、窒素置換後、液体無水硫酸(サルファン)の81gを反応温度40℃に保ちながらゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間撹拌を続け、目的とするポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸を得た。さらに、これを水酸化ナトリウム水溶液で中和することにより(a’)−5を得た。
【0065】
(a’)−6:直鎖ラウリルアルコールのEO平均5モル付加品の硫酸化物
4Lのオートクレーブ中に、新日本理化社製、商品名コノール1275の372gと、水酸化カリウム触媒の0.8gとを仕込み、オートクレーブ内を窒素置換し、攪拌しながら昇温した。その後、温度180℃、圧力0.3mPaに維持しながらエチレンオキシドの453gを導入し、エチレンオキシドの平均付加モル数5モルの反応物を得た。次に、こうして得られたアルコールエトキシレートの413gを撹拌装置付の500mLフラスコに取り、窒素置換後、液体無水硫酸(サルファン)の81gを反応温度40℃に保ちながらゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間撹拌を続け、目的とするポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸を得た。さらに、これを水酸化ナトリウム水溶液で中和することにより(a’)−6を得た。
なお、(a’)−6は、分岐構造を持たないものである。
【0066】
(a’)−7:直鎖ラウリルアルコールのEO平均2モル付加品の硫酸化物
4Lのオートクレーブ中に、新日本理化社製、商品名コノール1275の372gと、水酸化カリウム触媒の0.8gとを仕込み、オートクレーブ内を窒素置換し、攪拌しながら昇温した。その後、温度180℃、圧力0.3mPaに維持しながらエチレンオキシドの181gを導入し、エチレンオキシドの平均付加モル数2モルの反応物を得た。次に、こうして得られたアルコールエトキシレートの274gを撹拌装置付の500mLフラスコに取り、窒素置換後、液体無水硫酸(サルファン)の81gを反応温度40℃に保ちながらゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間撹拌を続け、目的とするポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸を得た。さらに、これを水酸化ナトリウム水溶液で中和することにより(a’)−7を得た。
なお、(a’)−7は、分岐構造を持たないものである。
【0067】
(a’)−8:直鎖ラウリルアルコールのEO平均15モル付加品の硫酸化物
4Lのオートクレーブ中に、新日本理化社製、商品名コノール1275の372gと、水酸化カリウム触媒の0.8gとを仕込み、オートクレーブ内を窒素置換し、攪拌しながら昇温した。その後、温度180℃、圧力0.3mPaに維持しながらエチレンオキシドの1359gを導入し、エチレンオキシドの平均付加モル数15の反応物を得た。次に、こうして得られたアルコールエトキシレートの866gを撹拌装置付の500mLフラスコに取り、窒素置換後、液体無水硫酸(サルファン)の81gを反応温度40℃に保ちながらゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間撹拌を続け、目的とするポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸を得た。さらに、これを水酸化ナトリウム水溶液で中和することにより(a’)−8を得た。
なお、(a’)−8は、分岐構造を持たないものである。
【0068】
(a’)−9:直鎖ミリスチルアルコールのEO平均3モル付加品の硫酸化物
4Lのオートクレーブ中に、花王社製、商品名カルコール4098の412gと、水酸化カリウム触媒の0.8gとを仕込み、オートクレーブ内を窒素置換し、攪拌しながら昇温した。その後、温度180℃、圧力0.3mPaに維持しながらエチレンオキシドの271gを導入し、エチレンオキシドの平均付加モル数3の反応物を得た。次に、こうして得られたアルコールエトキシレートの342gを撹拌装置付の500mLフラスコに取り、窒素置換後、液体無水硫酸(サルファン)の81gを反応温度40℃に保ちながらゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間撹拌を続け、目的とするポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸を得た。さらに、これを水酸化ナトリウム水溶液で中和することにより、(a’)−9を得た。
なお、(a’)−9は、分岐構造を持たないものである。
【0069】
(a’)−10:炭素数C12,13の合成アルコ−ルのEO平均3モル付加品の硫酸化物
4Lのオートクレーブ中に、サソール社製、商品名Safol23の400gと、水酸化カリウム触媒の0.8gを仕込み、オートクレーブ内を窒素置換し、攪拌しながら昇温した。その後、温度180℃、圧力0.3mPaに維持しながらエチレンオキシドの271gを導入し、エチレンオキシドの平均付加モル数3の反応物を得た。次に、こうして得られたアルコールエトキシレートの334gを撹拌装置付の500mLフラスコに取り、窒素置換後、液体無水硫酸(サルファン)の81gを反応温度40℃に保ちながらゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間撹拌を続け、目的とするポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸を得た。さらに、これを水酸化ナトリウム水溶液で中和することにより、(a’)−10を得た。
【0070】
((b)成分)
(b)−1:メチルグリシンジ酢酸三ナトリウム(BASF製、Trilon M)
(b)−2:エチレンジアミンテトラ酢酸二ナトリウム(BASF製、Trilon BD)
(b)−3:2,2’−イミノジコハク酸四ナトリウム(ランクセス製、Baypure CX100)
(b)−4:クエン酸三ナトリウム二水和物(扶桑化学工業製、精製クエン酸ナトリウム)
【0071】
((c)成分)
(c)−1:硫酸亜鉛(関東化学製、特級)
(c)−2:塩化亜鉛(関東化学製、特級)
【0072】
なお、任意成分であるジエチレングリコールモノブチルエーテルとしては、日本乳化剤製の「ブチルジグリコール」を用いた。
pH調整剤としては、水酸化ナトリウム(関東化学製、試薬特級)または硫酸(関東化学製、試薬特級)を用いた。また、(a)成分および(a’)成分を製造する際に用いた水酸化ナトリウム水溶液は、水酸化ナトリウム(関東化学製、試薬特級)を水に溶解させたものを使用した。
【0073】
<液体洗浄剤の評価および確認試験>
各例の液体洗浄剤について、以下に示す評価方法によって各評価を行い、その結果を表に併記した。
【0074】
[スカム汚れ洗浄力評価]
6ヶ月間浴室で使用し、スポンジでこすった程度では容易に除去できない石鹸カス汚れ(スカム汚れ)が付着したポリプロピレン製洗面器(アイリスオーヤマ、オフロタイムシリーズ、ホワイト)の表面を、液体洗浄剤10mLを含ませたウレタンスポンジ(スコッチブライト、バスシャイン抗菌スポンジ、75×160×47mm)で10往復こすり、汚れの除去状態を目視評価した。評価基準は以下のとおりとし、3点以上を合格とした。
5点:汚れが完全に落ちた。
4.5点:汚れがほぼ完全に落ちた。
4点:汚れの大半が落ちた。
3.5点:汚れがかなり落ちた。
3点:汚れがある程度落ちた。
2点:汚れがあまり落ちていない。
1点:汚れがほとんど落ちていない。
【0075】
[破泡性評価]
以下のように評価を行った。3点以上を合格とした。
(1)100倍希釈試験
500mLの硬質ポリ塩化ビニル製容器(AS ONE、クリア広口瓶)に液体洗浄剤を1mL入れ、ついで起泡のために、常温(25℃)の水道水(4.6°DH)を10mL加え、蓋を閉めてよく撹拌して液体洗浄剤を泡立てた(洗浄時の起泡工程に相当。)。ついで、希釈のために水道水を100mL加え、蓋を閉めて5回ほど混ぜ合わせ(すすぎ時の希釈工程に相当。)、1分間静置した。1分間静置後の泡の様子を目視観察し、すべての泡が破泡している場合は、「5点」とした。泡が残っている場合には、その液体洗浄剤について次の(2)の試験を行った。
(2)300倍希釈試験
希釈のために加える水道水の量を100mLに代えて300mLとした以外は、上記(1)と同様にし、1分間静置後の泡の様子を目視観察した。すべての泡が破泡している場合は、「4点」とした。泡が残っている場合には、その液体洗浄剤について、次の(3)の試験を行った。
(3)500倍希釈試験
希釈のために加える水道水の量を100mLに代えて500mLとした以外は、上記(1)と同様にし、1分間静置後の泡の様子を目視観察した。すべての泡が破泡している場合は、「3点」とした。泡が残っている場合には、その液体洗浄剤について、次の(4)の試験を行った。
(4)1000倍希釈試験
洗剤の量を1mLに代えて0.5mLとし、起泡のために加える水道水の量を10mLに代えて5mLとし、希釈のために加える水道水の量を100mLに代えて500mLとした以外は、上記(1)と同様にし、1分間静置後の泡の様子を目視観察した。すべての泡が破泡している場合は、「2点」とした。泡が残っている場合には、その液体洗浄剤について、次の(5)の試験を行った。
(5)2000倍希釈試験
洗剤の量を1mLに代えて0.25mLとし、起泡のために加える水道水の量を10mLに代えて2.5mLとし、希釈のために加える水道水の量を100mLに代えて500mLとした以外は、上記(1)と同様にし、1分間静置後の泡の様子を目視観察した。すべての泡が破泡している場合は、「1点」とした。泡が残っている場合には、その液体洗浄剤については「0点」とした。
【0076】
[浴室排水口の悪臭抑制効果評価]
家庭の浴室排水口から採取したヌメリ0.1gを900mLガラス瓶(AS ONE、UMサンプル瓶)に入れ、液体洗浄剤1gをヌメリに接触するように添加した。5分後の瓶内臭気強度を下記評価基準にて30代男性5名、女性5名で評価し、その平均点を求めた。
そして、平均点が1点未満を「◎」、1点以上3点未満を「○」、3点以上を「×」として、3段階で評価した。
なお、液体洗浄剤を添加しない場合の瓶内臭気強度(ブランク試験)は、5点である。
5点:耐えられない程度の強い臭気。
4点:強い臭気。
3点:明らかに感じる臭気。
2点:何の臭いかがわかる程度の臭気。
1点:やっと感知できる程度の臭気。
0点:無臭。
−:未評価。
【0077】
[再付着試験]
下記のような浴室設備を使用して、スカム汚れの再付着について確認試験を行った。
浴室床材(INAX,FA−1609P(4)−W)に、架台(INAX,FR−1609(11)−M)と排水トラップ(INAX,TP−39−L)とを設け、さらに排水トラップに透明な塩化ビニル製配管(SEKISUI,エスロンクリアーパイプφ50)を接続して、試験用の浴室設備とした。
上記設備の浴室床上で、6ヶ月間浴室で使用し、スポンジでこすった程度では容易に除去できない石鹸カス汚れ(スカム汚れ)が付着したポリプロピレン製洗面器(アイリスオーヤマ、オフロタイムシリーズ、ホワイト)を、液体洗浄剤10mLを含ませたウレタンスポンジ(スコッチブライト、バスシャイン抗菌スポンジ、75×160×47mm)で汚れが落ちるまでこすり、常温(25℃)の水道水(4.6°DH)で液体洗浄剤をすべてすすいだ。
この操作を3回繰り返し、浴室設備の排水トラップ(排水口)内と塩化ビニル製配管(排水経路)内へのスカム汚れの再付着について、下記の評価基準により目視評価した。「◎」および「○」が合格である。
◎:スカム汚れが全く再付着していない。
○:スカム汚れがほとんど再付着していない。
×:スカム汚れがはっきりと再付着している。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
【表3】
【0081】
【表4】
【0082】
表に示す結果から、各実施例の液体洗浄剤によれば、「スカム汚れ洗浄力」が優れるだけでなく、「破泡性」にも優れ、排水口内や排水経路等へスカム汚れが再付着しにくいことが確認できた。