(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5798984
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】圧力センサ装置
(51)【国際特許分類】
G01L 13/00 20060101AFI20151001BHJP
【FI】
G01L13/00 B
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-141582(P2012-141582)
(22)【出願日】2012年6月25日
(65)【公開番号】特開2014-6135(P2014-6135A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2014年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立オートモティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100310
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 学
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(74)【代理人】
【識別番号】100091720
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 重美
(72)【発明者】
【氏名】久保 淳
(72)【発明者】
【氏名】小貫 洋
(72)【発明者】
【氏名】飛田 美帆
(72)【発明者】
【氏名】中林 研司
【審査官】
公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−028458(JP,A)
【文献】
特開2001−074581(JP,A)
【文献】
特開2005−079400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 13/00
H01L 29/84
H01L 21/52
H01L 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の圧力導入通路と、第2の圧力導入通路と、コネクタ部と、を有するハウジングと、
前記ハウジング内に設けられ、前記第1の圧力導入路から導入された圧力を検出する第1の圧力検出素子と、
前記ハウジング内に設けられ、前記第2の圧力導入路から導入された圧力を検出する第2の圧力検出素子と、
を備え、
前記第1および第2の圧力検出素子が接着剤によりハウジング内部に固定されることにより、前記第1および第2の圧力導入通路と前記ハウジング内とが気密に分離される圧力センサ装置において、
前記ハウジング内で、前記第1および第2の圧力検出素子の上側に、ベース部材と、回路基板とを設け、
前記ベース部材は、前記回路基板を接着剤により接着保持しており、
前記ハウジングは、前記第1および第2の圧力検出素子の上側に、前記ベース部材を搭載するための保持部を有しており、
前記ベース部材は、接着剤により前記ハウジングの保持部に接着固定されることを特徴とする圧力センサ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の圧力センサ装置において、
前記ベース部材は、台座部を複数有していることを特徴とする圧力センサ装置。
【請求項3】
請求項2に記載の圧力センサ装置において、
前記ベース部材に設けた台座部は、前記回路基板を前記ベース部材に搭載したときに、前記回路基板のワイヤボンディング接続箇所と対応する部分に形成されていることを特徴とする圧力センサ装置。
【請求項4】
請求項2に記載の圧力センサ装置において、
前記台座部のレイアウトが、180度回転対称となるようにすることを特徴とする圧力センサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気系に搭載される圧力センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンの内燃機関では、内燃機関本体から排出される排ガス中に含まれる排気微粒子(以下、PMと称す)が問題となっており、PMを捕集するディーゼルパティキュレートフィルタ(以下、DPFと称す)の搭載義務付けがディーゼルエンジン搭載車の普及率が高い欧州中心に進んでいる。DPFでは、ある一定量のPMを捕集したら、DPF自体を加熱し、捕集したPMを燃焼させている。DPFが捕集したPMの量は、DPFの上流側の圧力と下流側の圧力差により推定することができる。このようにして、DPFがPMにより目詰まりを起こすことを防止している。そのため、DPFを搭載する場合には、DPFの上流側と下流側の圧力を検出する圧力センサ装置を設置する必要がある。
【0003】
圧力センサ装置の回路基板の実装方法としては、例えば特許文献1に記載の発明がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−28458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ワイヤボンディングをする場合には、接続強度を向上させるために回路基板の高さ方向のばらつきが小さいほうが好ましい。特許文献1には、センサ信号処理回路を形成した回路基板7が、センサチップケースの裏面側に接着固定され、センサチップからの信号を、ボンヂングワイヤ6を介して処理回路に入力することが開示されている。特許文献1によれば、センサ信号処理回路基板が、センサチップケースに直接接着固定されている構成である。センサチップケースは、圧力導入室11aと11bを気密に分離するようにハウジングに接着剤で接着固定されている。接着剤を用いて気密に分離するよう接着するにはそれなりの量の接着剤を用いて接着する必要があるので、センサチップケースは接着剤の影響を受けやすい構成であるので、センサチップケースは高さ方向のばらつきが大きくなってしまう。すなわち、特許文献1には、回路基板の高さ方向のばらつきを低減することについての検討の余地が残されている。
【0006】
本発明の目的は、ワイヤボンディングの接続強度を向上することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の圧力センサ装置は
、前記ハウジング内で、前記第1および第2の圧力検出素子の上側に、ベース部材と、回路基板とを設け、前記ベース部材は、前記回路基板を接着剤により接着保持しており、前記ハウジングは、前記第1および第2の圧力検出素子の上側に、前記ベース部材を搭載するための保持部を有しており、前記ベース部材は、接着剤により前記ハウジングの保持部に接着固定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ワイヤボンディングの接続強度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施例を示す内燃機関のディーゼルエンジン構成図。
【
図2】(a)本発明の一実施例を示す上面図(b)本発明の一実施例を示すA−A断面図。
【
図3】(a)本発明の一実施例を示す上面図(b)本発明の一実施例を示すA−A断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための実施形態について説明する。
図1に本発明の圧力センサ装置を設けた内燃機関であるディーゼルエンジンの全体構成を示す。
【0011】
内燃機関1の排気ポートに連なる排気通路2にはターボチャージャー3及びDPF4が設けられている。圧力センサ装置5は、ホースなどの圧力導入管7、8を介して排気通路6内の圧力を検出する。圧力センサ装置5は、DPF4の上流側および下流側の圧力を検出し、DPF4の上流側の絶対圧に応じた信号と、DPF4の下流側の絶対圧に応じた信号と、DPF4の上流側および下流側の圧力の差圧に応じた信号をECU9へ出力する。
【0012】
ECU9は圧力センサ装置5が検出した差圧に基づいてDPF4が目詰まりであるかどうかを判断する。DPF4が目詰まりであると判断されたなら、DPF4を高温にすることで捕集したPMを燃焼させ、目詰まり状態を解消する。
【0013】
また吸気通路10にはエアフローセンサ11が設置されており、吸入空気量を検出する。吸気通路10には、インタークーラー12と吸気絞り弁13が備えられており、インテークマニホールド14に連通している。
【0014】
更に、排気通路2から排気再循環通路15が連通され、EGRクーラー16及び排気再循環通路絞り弁17を備えている。
【0015】
ECU9は圧力センサ装置5が検出した差圧に基づいてDPF4が目詰まりであるかどうかを判断する。DPF4が目詰まりであると判断されたなら、DPF4を高温にすることで捕集したPMを燃焼させ、目詰まり状態を解消する。
【0016】
また吸気通路10には空気流量測定装置11が設置されており、吸入空気量を検出する。吸気通路10には、インタークーラー12と吸気絞り弁13が備えられており、インテークマニホールド14に連通している。
【0017】
更に、排気通路2から排気再循環通路15が連通され、EGRクーラー16及び排気再循環通路絞り弁17を備えている。
【0018】
ECU9には、圧力センサ装置5と空気流量測定装置11の出力信号や図示しない各種センサ類の出力信号が入力され、各部の状態が知らされるようになっている。
【0019】
本発明品は、ディーゼル機関の排気系に設置された排気微粒子を捕集するDPF4の上流及び下流の圧力を、ホースなどの圧力導入管7、8を介して検出する圧力センサ装置である。1つの圧力センサ装置にて、DPF4の上流側と下流側の絶対圧出力、および、DPF4の上流側と下流側の圧力差を検知し、DPF4の目詰まり状態を判断することが可能である。
【0020】
本発明の第一実施例について、
図2を用いて説明する。
図2に示されるように、本発明の第1実施形態をなす圧力センサ装置は、コネクタターミナル22と上流側圧力導入通路25と下流側圧力導入通路26と取付け部19を有するハウジング18と、ハウジング18にインサートされた中間ターミナル23、24と、ハウジング18内に設けられた圧力検出素子27、28と、圧力検出素子27、28の上に設けられたベース部材21と、ベース部材21に設けられたセンサ回路基板20と、カバー29から構成される。
【0021】
DPF4の上流側の圧力を検出する上流側圧力検出素子27と、DPF4の下流側の圧力を検出する下流側圧力検出素子28とが、それぞれエポキシ系接着剤A31によりハウジング18に接着される。
【0022】
ハウジング18内部に、圧力導入通路25、26からガスなどが入らないようにするために、圧力検出素子27、28とエポキシ系接着剤A31により気密に分離されるようにしている。
【0023】
上流側圧力検出素子27と中間ターミナル23の一端とが溶接などで電気的に接続され、下流側圧力検出素子28と中間ターミナル24の一端とが溶接などで電気的に接続される。
【0024】
センサ回路基板20は樹脂材で形成されたベース部材21内にエポキシ系接着剤B32により接着される。ハウジング18は、圧力検出素子27、28の上側にベース部材保持部37が形成されている。ここで、上側とは、
図2でのZ軸の矢印方向のことを指す。回路基板20を搭載したベース部材21は、ハウジング18のベース部材保持部37にエポキシ系接着剤B33により接着される。これにより、回路基板20は直接圧力検出素子27、28に触れない構成となっている。
【0025】
本発明では、圧力検出素子27、28に直接回路基板を搭載する構成ではなく、ベース部材21に回路基板を搭載し、ベース部材21とハウジング18とをエポキシ系接着剤B33で接着固定する構成となっている。ハウジング18にベース部材21を接着固定するのには、ハウジング18と圧力導入通路25、26とを気密に分離させるほどの接着剤の量を必要としないので、接着剤の影響を低減することができる。そのため、回路基板の高さ方向のばらつきを低減することができるので、ワイヤボンディングの強度を向上することができる。
【0026】
センサ回路基板20には各種電子部品が搭載されるため、保護用としてシリコーンゲル35が塗布される。搭載環境下における汚損や被水等からセンサ回路基板20やワイヤボンディング30を保護するため、カバー29をエポキシ系接着剤34によりハウジング18に接着した構成としている。
【0027】
コネクタターミナル22とセンサ回路基板20とがワイヤボンディング30で電気的に接続され、中間ターミナル23の他端とセンサ回路基板20とがワイヤボンディング30で電気的に接続されており、中間ターミナル24の他端とセンサ回路基板20とがワイヤボンディング30で電気的に接続される。
【0028】
中間ターミナル23および24をハウジング18内にインサートし、中間ターミナル23、24を介して圧力検出素子27、28はそれぞれセンサ回路基板20に接続されるので、センサ回路基板20を圧力検出素子27、28の上部に配置、すなわち階層構造とすることができる。圧力検出素子27、28をセンサ回路基板20の長手方向に並べ、その上部にセンサ回路基板20を設ける構成とすることで、水平方向のスペースを有効に活用でき、圧力センサ装置の水平方向の小型化を実現できる。
【0029】
圧力検出素子27、28を2つ用いて、DPF4の上流側と下流側の圧力の絶対圧を測定し、DPFの目詰まり状態を検出している。そのため、DPF4の下流側につながるホースを上流側圧力導入通路25に誤って繋げてしまうと、上流側圧力検出素子27がDPF4の下流側の圧力を検出することとなり、DPF4の目詰まり状態を正常に判断できなくなってしまう。そのため、ホースの誤挿入を防止するために、上流側圧力導入通路25と下流側圧力導入通路26を異なる径として、上流側圧力導入通路と下流側圧力導入通路を判断しやすいようにしている。
【0030】
また、DPF4の上流側の空気は下流側よりもPMなどの異物を多く含むので、上流側圧力導入通路25の径を大きくして異物による圧力導入通路の詰まりを防止している。特に、上流側圧力導入通路25の通路内径を5.5mm以上にすると、圧力導入通路に侵入した水が水膜を張ることを抑制できるので、圧力導入通路の詰まりを効果的に防止できる。
【0031】
本発明の第2実施例について、
図3を用いて説明する。
ベース部材21の底面部に台座部36を設けている。台座部36からみて凹んでいる領域に接着剤32を充填させ、回路基板20をベース部材21に搭載している。これにより、回路基板20は台座部36に高さ方向のばらつきを抑えているので、ワイヤボンディング30の接続強度を向上できる。
【0032】
また、台座部36のレイアウトとしては、ベース部材に回路基板を搭載したときに、回路基板のワイヤボンディング箇所に台座が配置されるようにすると良い。ワイヤボンディングする箇所の下に台座があるので、ワイヤボンディング時に高さばらつきが生じることを抑制でき、ワイヤボンディングの接続強度をより向上できる。
【0033】
また、180度回転対称になるように台座部36をベース部材21の底部に設けると良い。180度回転対称のレイアウトとすることで、より高さ方向のばらつきを抑制することができ、ワイヤボンディングの接続強度を向上できる。また、180度回転対称のレイアウトとすることで、回路基板20をベース部材に取り付けるときの取り付け方向がなくなり、製造時の取り付け方向の確認プロセスがなくなり、ベース部材21に回路基板20を取り付ける作業が簡略化される。これは、ワイヤボンディング時の高さばらつきを抑制するために、回路基板20のワイヤボンディング箇所に台座36が配置されるようなレイアウトとするときに特に効果的である。
【符号の説明】
【0034】
1 内燃機関
2、6 排気通路
3 ターボチャージャー
4 DPF
5 圧力センサ装置
7 上流側圧力導入管
8 下流側圧力導入管
9 ECU
10 吸気通路
11 空気流量測定装置
12 インタークーラー
13 吸気絞り弁
14 インテークマニホールド
15 排気再循環通路
16 EGRクーラー
17 排気再循環通路絞り弁
18 ハウジング
19 取付け部
20 センサ回路基板
21 ベース部材
22 コネクタターミナル
23、24 中間ターミナル
25 上流側圧力導入通路
26 下流側圧力導入通路
27 上流側圧力検出素子
28 下流側圧力検出素子
29 カバー
30 ワイヤボンディング
31 エポキシ系接着剤A
32、33 エポキシ系接着剤B
34 エポキシ系接着剤C
35 シリコーンゲル
36 台座部
37 ベース部材保持部