特許第5799031号(P5799031)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5799031
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】二液用射出機
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/46 20060101AFI20151001BHJP
【FI】
   B29C45/46
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-5547(P2013-5547)
(22)【出願日】2013年1月16日
(65)【公開番号】特開2014-136354(P2014-136354A)
(43)【公開日】2014年7月28日
【審査請求日】2014年7月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227054
【氏名又は名称】日精樹脂工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100161355
【弁理士】
【氏名又は名称】野崎 俊剛
(72)【発明者】
【氏名】池田 透
【審査官】 田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−334974(JP,A)
【文献】 特開2000−326376(JP,A)
【文献】 特開2006−117750(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端にノズルを備える射出筒と、この射出筒に往復移動自在に収納され前進動作で液状材料を射出するプランジャと、このプランジャを回転させることなく前後進させるプランジャ移動手段と、前記射出筒に付設され二種類の液状材料を混合するミキシング機構と、このミキシング機構で混合された混合済み液状材料を前記射出筒内へ供給する通路とからなる二液用射出機において、
前記プランジャは、前部に且つ外周に螺旋溝を備え、
この螺旋溝は、後端が前記プランジャの途中になるように、前端から前記プランジャ手段に向かって延びており、
前記通路は、前進限位置にある前記プランジャの前記螺旋溝の前記後端に向けて開口するように前記射出筒に貫通形成され、
前記ミキシング機構から供給される混合済み液状材料が前記螺旋溝を通って前記プランジャの前方空間に貯留されるようにしたことを特徴とする二液用射出機。
【請求項2】
前記ミキシング機構は、ミキシングブロックと、このミキシングブロックに回転自在に収納されるスクリューと、前記ミキシングブロックに支持され前記スクリューを回すスクリュー回転機構と、前記ミキシングブロックに設けられ第1の液状材料を前記スクリューの基部へ供給する第1液供給路と、この第1液供給路とは別の部位にて前記ミキシングブロックに設けられ第2の液状材料を前記スクリューの基部へ供給する第2液供給路と、前記ミキシングブロックに設けられ前記スクリューの先端近傍から混合済み液状材料を流出させる第1通路とからなることを特徴とする請求項1記載の二液用射出機。
【請求項3】
前記第1液供給路と前記第2液供給路は、前記スクリューの回転中心を通る線上に配置され且つ前記第1液供給路と前記第2液供給路の間に前記スクリューが介在するようにしたことを特徴とする請求項2記載の二液用射出機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二液用射出機の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
二種類の液状樹脂材料(以下、液状材料と略記する。)を受け入れ、混合し、計量してから射出する射出機が提案されている(例えば、特許文献1(図1)参照。)。
【0003】
図8は従来の二液用射出機の基本構成図であり、第1シリンダ101で第1液102が押し出され、第2シリンダ103で第2液104が押し出される。第1液102と第2液104は混合器105で合わされ、混合シリンダ106へ流入する。この混合シリンダ106で混合軸107により二液が十分に混合され、混合液となる。この混合液は連絡路108を介して射出シリンダ109へ導入される。
【0004】
図9図8の要部拡大図であり、(a)に示すように、混合液111がプランジャ112の前方空間に貯められる。プランジャ112が後退すると前方空間が増加し、貯留する混合液111の量が増加する。(b)に示すように、射出直前にはプランジャ112が十分に後退し、十分な量の混合液111がプランジャ112の前方に貯められる。
【0005】
ところで、最初に入った液111aがプランジャ112と共に後退し、この液111aの次の混合液111が続くため、最後に入った液111bはプランジャ112から最も遠い部位に貯留される。
そのため、プランジャ112を前進させると、最後に入った液111bが最初に射出され、最初に入った液111aが最後に射出される。いわゆる、先入れ後出し(先に入った液111aが後で出される。)が行われる。
【0006】
液状材料は、性質が時間と共に変化しやすい。最初に入った液111aはプランジャ112の前方空間に長く留められ、最後に入った液111bは滞留時間が短い。最初に入った液111aと最後に入った液111bとが時間差により性質に差が出るため、好ましくない。
対策として、先入れ先出しが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−76276公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、先入れ先出しが可能な二液用射出機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、先端にノズルを備える射出筒と、この射出筒に往復移動自在に収納され前進動作で液状材料を射出するプランジャと、このプランジャを回転させることなく前後進させるプランジャ移動手段と、前記射出筒に付設され二種類の液状材料を混合するミキシング機構と、このミキシング機構で混合された混合済み液状材料を前記射出筒内へ供給する通路とからなる二液用射出機において、
前記プランジャは、前部に且つ外周に螺旋溝を備え、
この螺旋溝は、後端が前記プランジャの途中になるように、前端から前記プランジャ手段に向かって延びており、
前記通路は、前進限位置にある前記プランジャの前記螺旋溝の前記後端に向けて開口するように前記射出筒に貫通形成され、
前記ミキシング機構から供給される混合済み液状材料が前記螺旋溝を通って前記プランジャの前方空間に貯留されるようにしたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明では、ミキシング機構は、ミキシングブロックと、このミキシングブロックに回転自在に収納されるスクリューと、ミキシングブロックに支持され前記スクリューを回すスクリュー回転機構と、ミキシングブロックに設けられ第1の液状材料をスクリューの基部へ供給する第1液供給路と、この第1液供給路とは別の部位にてミキシングブロックに設けられ第2の液状材料を前記スクリューの基部へ供給する第2液供給路と、ミキシングブロックに設けられスクリューの先端近傍から混合済み液状材料を流出させる第1通路とからなることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明では、第1液供給路と第2液供給路は、スクリューの回転中心を通る線上に配置され且つ第1液供給路と第2液供給路の間にスクリューが介在するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、プランジャに螺旋溝を設け、この螺旋溝を介して混合済み液状材料がプランジャの前方空間へ導かれるようにした。最初に入った液状材料は前方空間の前部に貯留され、最後に入った液状材料は前方空間の後部、すなわちプランジャの直近に貯留される。射出時にプランジャを前進させると、最初の液状材料が最初に射出される。すなわち、先入れ先出しがなされ、材料の変質が防止される。
【0013】
請求項2に係る発明では、スクリューの回転速度を適度に制御することにより、混合時間を稼ぐことで混合を促すことができる。また、スクリューを回転させることで、第1・第2の液状材料を低圧で供給することができる。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、ミキシングブロックに1本の穴を開けるだけで、第1液供給路と第2液供給路を一括して形成することができる。ミキシングブロックの加工コストを下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る二液用射出機の側面図である。
図2図1の2−2線断面図である。
図3図2の3−3線断面図である。
図4図3の4−4線断面図である。
図5】螺旋溝の作用図である。
図6図1に示す二液用射出機の変更例を示す図である。
図7図1に示す二液用射出機の更なる変更例を示す図である。
図8】従来の二液用射出機の基本構成図である。
図9図8の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0017】
図1に示すように、二液用射出機10は、先端にノズル11を備える射出筒12と、この射出筒12に軸方向に移動自在に収納される棒状のプランジャ13と、射出筒12の基部を支える支持盤14と、この支持盤14を支えるベース15と、このベース15に取付けられ支持盤14に平行に配置されるシリンダ支持板16と、このシリンダ支持板16に支えられプランジャ13を前後進させるプランジャ移動手段17と、射出筒12の上面に取付けられるミキシング機構20とからなる。
【0018】
プランジャ13は前部に螺旋溝13aを備える。
支持盤14とシリンダ支持板16は、上部同士をタイロッド18で連結することが望ましい。タイロッド18により、支持盤14及びシリンダ支持板16の振れを防止することができる。
プランジャ移動手段17は、油圧シリンダ、エアシリンダ、電動シリンダが適している。
【0019】
図2に示すように、ミキシング機構20は、射出筒12の上面に載せられる弁箱21と、この弁箱21に上下移動可能の収納される弁体22と、弁箱21の上にボルト23、23で固定され弁体22を上下させるバルブアクチュエータ24と、弁箱21の側方に取付けられるミキシングブロック25と、このミキシングブロック25に回転可能に収納されるスクリュー26と、ミキシングブロック25の一端に取付けらスクリュー26を回すスクリュー回転機構27とからなる。
スクリュー回転機構27は、減速機付き電動機が好適である。
【0020】
ミキシングブロック25から弁箱21へ水平な第1通路28が設けられ、この第1通路28の先端から鉛直に下がるようにして弁箱21及び射出筒12に第2通路29が設けられ、この第2通路29が射出筒12内まで延びている。バルブアクチュエータ24で、弁体22が下げられると、この弁体22で第2通路29が塞がれ、弁閉状態になる。また、バルブアクチュエータ24で、弁体22が上げられると第2通路29と第1通路28が繋がり、弁閉状態になる。
【0021】
図3に示すように、スクリュー26は螺旋羽根26aを有し、混合室31に収納される。この混合室31の下部に第1通路28が設けられる。また、混合室31の上部に第1液供給路32と第2液供給路33が接続される。第1液供給路32は、第1シリンダ34で圧送される第1の液状材料としての第1液35を混合室31へ導く通路であり、第2液供給路33は、第2シリンダ36で圧送される第2の液状材料としての第2液37を混合室31へ導く通路である。
【0022】
図4に示すように、第1液供給路32と第2液供給路33は、スクリュー26の回転中心を通る線38上に配置され且つ第1液供給路32と第2液供給路33の間にスクリュー26が置かれる。第1液供給路32の接続口と第2液供給路33の接続口は、1回の穴開け工程で設けることができる。
【0023】
図3において、スクリュー回転機構27でスクリュー26を低速で回す。好ましくは矢印(1)のように逆回転させる。そして、第1液供給路32から第1液35を混合室31へ供給し、第2液供給路33から第2液37を混合室31へ供給する。
図4に示すように、スクリュー26が中央にあるため、第1液35と第2液37が直接混合することはなく、一旦、スクリュー26の基部に当たる。
【0024】
その後、図3にて、スクリュー26の螺旋羽根26aに沿って旋回しながら進む。この際、矢印(1)のように低速で逆回転させると、第1液35と第2液37の前進速度(図では下へ進む速度)が減速される。すなわち、第1液35と第2液37は長い時間かけてスクリュー26で撹拌混合される。逆回転させることにより、スクリュー26が短くても十分な混合を行わせることができる。
【0025】
混合済み液状材料39は、図5(a)に示すように、第2通路29から螺旋溝13aに至り、螺旋溝13aを通って、プランジャ13の前方空間に貯められる。プランジャ13を徐々に後退する。
【0026】
第1液35は、例えば硬化剤(液状シリコーンゴム)であり、第2液37は、例えば主剤(液状シリコーンゴム)であって、第1液35に第2液37を混合した後は、時間経過に比例して性質(物性)が変化する。
【0027】
プランジャ13が後退限に達すると、図5(b)に示すように、最初の材料39sは前方に貯められ、最後の材料39eは後方(プランジャ13直近位置)に貯められる。プランジャ13を前進させると、最初の材料39sがノズル11から射出され、最後の材料39eが最後にノズル11から射出される。すなわち、先入れ先出しがなされ、射出筒12での最初の材料39sの滞留時間と最後の材料39eとを近似させることができるため、材料の変質が防止される。従って、量産工程における硬化防止のためのメンテナンス時間を減らすことができる。加えて、連続稼働時間が増加できるため、生産性の向上を図ることができる。
【0028】
ところで、図2において、第1通路28がプランジャ13に直交するように延びており、ミキシングブロック25、スクリュー26及びスクリュー回転機構27は、プランジャ13から距離Lだけ離れた位置に設けられる。結果、プランジャ13を中心にして、図面反時計回りの偶力(モーメント)が発生する。この偶力は射出筒12にねじり力として作用する。ミキシングブロック25、スクリュー26及びスクリュー回転機構27を大型化すると、この偶力が増大し、射出筒12に影響する。
装置的には偶力が無い方が好まれる。そこで、偶力を無くすることができる例を次に説明する。
【0029】
図6に示すように、第1通路28をプランジャ13と平行になるように配置する。すなわち、弁箱21とミキシングブロック25とを射出筒12の軸方向に沿って並べる。結果、射出筒12に偶力が作用する心配はなくなる。その他は符号を流用し、詳細な説明は省略する。
【0030】
さらなる変更例を次に説明する。
図7に示すように、ミキシング機構20は、スタティックミキサー(静止型混合機)であってもよい。スタティックミキサー41は、ミキシングブロック25と、静止部材(非回転部材)であるミキサーエレメント42と、このミキサーエレメント42の一端から第1液35及び第2液37を導入するエンドプレート43とからなる。ミキサーエレメント42は、平板を右又は左にねじった形態のものが好ましい。
【0031】
エンドプレート43を介して第1シリンダ34から第1液35をミキシングブロック25内へ圧入する。同時に、第2シリンダ36から第2液37をミキシングブロック25内へ圧入する。
第1液35及び第2液37はミキサーエレメント42により、順次撹拌混合されるが、この際に分離、転換、変転を繰り返され、撹拌混合が促される。スクリュー回転機構(図3、符号27)が不要であるため、ミキシング機構20が簡単に且つ安価になる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、互いに性質が異なる第1液と第2液を混合し、射出する二液用射出機に好適である。
【符号の説明】
【0033】
10…二液用射出機、11…ノズル、12…射出筒、13…プランジャ、13a…螺旋溝、17…プランジャ移動手段、20…ミキシング機構、25…ミキシングブロック、26…スクリュー、27…スクリュー回転機構、28…第1通路、32…第1液供給路、33…第2液供給路、35…第1の液状材料(第1液)、37…第2の液状材料(第2液)、38…スクリューの回転中心を通る線、39…混合済み液状材料。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9