特許第5799096号(P5799096)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クラフト・フーヅ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特許5799096-コーヒー粉砕方法 図000015
  • 特許5799096-コーヒー粉砕方法 図000016
  • 特許5799096-コーヒー粉砕方法 図000017
  • 特許5799096-コーヒー粉砕方法 図000018
  • 特許5799096-コーヒー粉砕方法 図000019
  • 特許5799096-コーヒー粉砕方法 図000020
  • 特許5799096-コーヒー粉砕方法 図000021
  • 特許5799096-コーヒー粉砕方法 図000022
  • 特許5799096-コーヒー粉砕方法 図000023
  • 特許5799096-コーヒー粉砕方法 図000024
  • 特許5799096-コーヒー粉砕方法 図000025
  • 特許5799096-コーヒー粉砕方法 図000026
  • 特許5799096-コーヒー粉砕方法 図000027
  • 特許5799096-コーヒー粉砕方法 図000028
  • 特許5799096-コーヒー粉砕方法 図000029
  • 特許5799096-コーヒー粉砕方法 図000030
  • 特許5799096-コーヒー粉砕方法 図000031
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5799096
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】コーヒー粉砕方法
(51)【国際特許分類】
   A23F 5/08 20060101AFI20151001BHJP
   A23F 5/36 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
   A23F5/08
   A23F5/36
【請求項の数】16
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2013-519845(P2013-519845)
(86)(22)【出願日】2011年7月15日
(65)【公表番号】特表2013-530716(P2013-530716A)
(43)【公表日】2013年8月1日
(86)【国際出願番号】US2011044127
(87)【国際公開番号】WO2012009605
(87)【国際公開日】20120119
【審査請求日】2014年6月6日
(31)【優先権主張番号】1012034.3
(32)【優先日】2010年7月16日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】501175214
【氏名又は名称】クラフト・フーヅ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】KRAFT FOODS R & D, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェラルド オー.フォンテイン
(72)【発明者】
【氏名】アラン ガンドル
(72)【発明者】
【氏名】カン ウォン チェル
【審査官】 一宮 里枝
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−076866(JP,A)
【文献】 特開平05−192248(JP,A)
【文献】 特開2007−006818(JP,A)
【文献】 特開2001−231452(JP,A)
【文献】 特開昭53−020466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F 5/00−5/50
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/FSTA/FROSTI(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーヒー粉砕方法であって、
a)焙煎したコーヒー前駆物質の粒子を粉砕チャンバー中に導入するステップと、
b)可溶性コーヒーの粒子を前記粉砕チャンバー中に導入するステップと、
c)前記粉砕チャンバー中にガスを噴射して、前記焙煎したコーヒー前駆物質の粒子および前記可溶性コーヒーの粒子に移動性をもたせるステップとにより、
d)前記粉砕チャンバー内で、前記焙煎したコーヒー前駆物質の粒子を自己衝突させ、かつ、前記可溶性コーヒーの粒子と前記焙煎したコーヒー前駆物質の粒子とを衝突させ、前記焙煎したコーヒー前駆物質の粒子を細砕することによって、粉砕およびブレンドしたコーヒー製品を製造するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記焙煎したコーヒー前駆物質の粒子および前記可溶性コーヒーの粒子は、前記粉砕チャンバー中への導入の前に一緒に混合されることを特徴とする請求項1に記載のコーヒー粉砕方法。
【請求項3】
前記焙煎したコーヒー前駆物質の粒子および前記可溶性コーヒーの粒子は、前記粉砕チャンバー中に別々に導入されることを特徴とする請求項1に記載のコーヒー粉砕方法
【請求項4】
ステップa)における前記焙煎したコーヒー前駆物質の粒子は、摂氏5度と30度との間の温度であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のコーヒー粉砕方法。
【請求項5】
前記粉砕チャンバーは、ステップb)、c)およびd)の最中に極低温冷却を受けないことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のコーヒー粉砕方法。
【請求項6】
ステップd)で製造される前記粉砕およびブレンドしたコーヒー製品は、乾燥重量で10から80%の焙煎グラインドコーヒーおよび乾燥重量で20から90%の可溶性コーヒーを含むことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のコーヒー粉砕方法。
【請求項7】
ステップd)で製造される前記粉砕およびブレンドしたコーヒー製品は、乾燥重量で10から70%の焙煎グラインドコーヒーおよび乾燥重量で30から90%の可溶性コーヒーを含むことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のコーヒー粉砕方法。
【請求項8】
ステップd)で製造される前記粉砕およびブレンドしたコーヒー製品は、乾燥重量で15から50%の焙煎グラインドコーヒーおよび乾燥重量で50から85%の可溶性コーヒーを含むことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のコーヒー粉砕方法。
【請求項9】
ステップd)で製造される前記粉砕およびブレンドしたコーヒー製品は、乾燥重量で50%の焙煎グラインドコーヒーおよび乾燥重量で50%の可溶性コーヒーを含むことを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のコーヒー粉砕方法。
【請求項10】
ステップd)において、前記細砕の結果、前記粉砕およびブレンドしたコーヒー製品が、40ミクロン以下の乾式Helos粒径分布D90を有することを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載のコーヒー粉砕方法。
【請求項11】
ステップd)において、前記細砕の結果、前記粉砕およびブレンドしたコーヒー製品が、30ミクロン以下の乾式Helos粒径分布D90を有することを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載のコーヒー粉砕方法。
【請求項12】
前記焙煎したコーヒー前駆物質の粒子は、全粒の焙煎したコーヒー豆であることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載のコーヒー粉砕方法。
【請求項13】
前記焙煎したコーヒー前駆物質の粒子は、粗挽きの焙煎したコーヒー豆であることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載のコーヒー粉砕方法。
【請求項14】
前記可溶性コーヒーの粒子は、噴霧乾燥したインスタントコーヒーの粒子、凍結乾燥したインスタントコーヒーの粒子、またはこれらの混合物であることを特徴とする請求項1から13のいずれかに記載のコーヒー粉砕方法。
【請求項15】
ステップb)において前記粉砕チャンバー中に噴射される前記ガスは、窒素、空気、またはこれらの混合物であることを特徴とする請求項1から14のいずれかに記載のコーヒー粉砕方法。
【請求項16】
前記ガスは、摂氏−20度と周囲温度との間の温度であることを特徴とする請求項15に記載のコーヒー粉砕方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、コーヒー製品およびコーヒー製品を形成する方法(process)に関する。本願は、特に、ある割合の、焙煎してグラインドしたコーヒー(以下、焙煎グラインドコーヒー)(roasted ground coffee)を組み込んだ可溶性コーヒー製品およびかかる製品を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インスタントの可溶性コーヒー製品、たとえば凍結乾燥したインスタントコーヒーおよび噴霧乾燥したインスタントコーヒーは、よく知られている。凍結乾燥したインスタントコーヒーの例には、Kenco(登録商標)Smooth freeze dried coffeeがある。かかるインスタントの可溶性コーヒー製品は、周知の焙煎方法および抽出方法で、コーヒー豆から液体コーヒー濃縮物中間体(コーヒー液(coffee liquor)として広く知られている)を引き出すことによって形成される。場合によって、コーヒー濃縮物には、やはり当該技術分野において周知の通り、抽出されたコーヒーの中間体から取り出したコーヒーの香気を添加することによって香気を付与してもよい。コーヒー濃縮物は、この後、種々の泡立てステップおよび乾燥ステップを受けて、湯を加えるとコーヒー飲料に戻すことができる乾燥した粒状の最終製品が製造される。
【0003】
インスタントの可溶性コーヒー製品は、コーヒー飲料の調製の仕方が経済的、迅速かつ簡単であるため、消費者に人気がある。しかし、飲料に戻す前の製品の外観と、飲むときの両方において、より焙煎グラインドコーヒー製品を彷彿させるインスタントの可溶性コーヒー製品を製造したいという要望がある。
【0004】
より魅力のあるインスタントの可溶性コーヒー製品の製造を企図して、可溶性コーヒー製品中に、ある割合の焙煎グラインドコーヒーを組み込むことが知られている。たとえば、特許文献1には、可溶性のコーヒー成分およびグラインドしたコーヒー成分からブレンドした種々の可溶性コーヒー製品が記載されている。
【0005】
焙煎グラインドコーヒー成分を組み込んだ可溶性コーヒー製品について、本出願人が発見した問題は、焙煎グラインドコーヒー粒子を液体コーヒー濃縮物中間体の中に適切に分散させることが困難であるということである。分散が不十分であると、焙煎グラインドコーヒー粒子が凝集する場合があり、加えて液体コーヒー中間体は焙煎グラインドコーヒーの非水和領域を導き、この領域が十分に「湿潤」しないことになる。
【0006】
1つには、分散が不十分である問題を克服しようとするために、焙煎物およびコーヒーの粒径を約30から40ミクロン未満のコロイドの粒径まで低減しようとすることが知られている。たとえば、特許文献2には、噴霧乾燥したインスタントコーヒーおよび粒径が5から25ミクロンの焙煎したコーヒーのコロイド粒子を含む、凝集したインスタントコーヒー製品が記載されている。
【0007】
しかし、コロイドのサイズの粒子の焙煎グラインドコーヒーを生成するためには、特別なグラインド方法を利用する必要がある。その理由は、粒子をそのような小さなサイズまでグラインドするときに、焙煎グラインドコーヒーに含有されるコーヒーオイルが放出される傾向があるためである。コーヒーオイルが放出すると、グラインド方法に弊害が起こる。たとえばコーヒー粒子が凝集したり、グラインド機の表面が汚れ、機械の定期的な清掃が必要になり、そのため稼働中断時間が生じたりする。
【0008】
この問題を克服するために、焙煎したコーヒー豆を、コロイドのサイズまでグラインドする前に極低温で予備凍結することが知られている。たとえば、特許文献1では、焙煎したコーヒー豆を約−5℃の温度まで凍結し、次いで粒径平均または粒径中央値が約350ミクロン以下の粒子に微粉化する。別の例では、特許文献3に、焙煎したコーヒー豆を液体窒素中で急冷してから粒径45ミクロン未満までグラインドする方法が記載されている。
【0009】
焙煎したコーヒー豆をグラインドする前に極低温で凍結するための要件は、製造方法の複雑性および費用を増大させる。
【0010】
焙煎したコーヒー豆をコロイド状にグラインドすることを可能にするために提案されている別の解決策は、グラインドする混合物に追加のオイルを添加して、追加の潤滑性を付与することである。これによってグラインド機の表面が汚れるという問題を克服することができる場合があるが、その結果、グラインドしたコーヒー製品のオイル含有量が高くなり、さらに加工してインスタントの可溶性コーヒー飲料にするためのコーヒー中間体として使用するには理想的でなくなる。その理由は、製品組成物に弊害をもたらさずに製品に添加することのできる量は比較的少量のみであるためである。
【0011】
特許文献4で提案されている別の解決策は、カカオマスまたは糖などの追加の成分を添加して、焙煎およびグラインドしたコーヒーが放出したコーヒーオイルを吸収するというものである。しかし、純粋な可溶性コーヒー飲料中にコロイドの焙煎グラインドコーヒーを使用したいという要望である場合、この方法は不適である。
【0012】
既知の別の要望は、インスタントの可溶性コーヒー製品の外観を焙煎グラインドコーヒーの外観により近づけようとすることである。一般的に、インスタントの可溶性コーヒー製品は、焙煎グラインドコーヒーより色が明るい。したがって、インスタントの可溶性コーヒー製品、特に凍結乾燥した可溶性コーヒー(以下、凍結乾燥可溶性コーヒー)(freeze−dried soluble coffee)の色を褐色化したいという要望がある。可溶性コーヒーの色を褐色化する従来技術の方法には、特許文献5に記載されている蒸気褐色化機(steam darkener)の使用および特許文献6に記載されている凍結乾燥した中間体の再湿潤が含まれる。さらに、可溶性コーヒー製品を褐色化するためにCOガス化が使用されている。
【0013】
しかし、可溶性コーヒー製品の外観を褐色化する従来技術の手法は、ある欠点がある。水の添加もしくは蒸気の使用によるコーヒー中間製品の再湿潤、またはCOなどのガスの使用は、最終製品の密度および溶解性を変化させることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第2010/005604号パンフレット
【特許文献2】米国特許第4,594,257号明細書
【特許文献3】GB2022394
【特許文献4】EP1631151
【特許文献5】EP0700640
【特許文献6】EP0090561
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本明細書において、他に文脈による要求がない限り、用語「焙煎したコーヒー」は、コーヒー生豆を焙煎することによって生成したコーヒー物質を意味する。この物質は焙煎したコーヒー豆の形態にしてもよいし、グラインド、脱カフェイン、圧搾などのその先の方法ステップによって生成される任意の他の形態にしてもよい。焙煎したコーヒーの具体的な例として、焙煎したコーヒー豆、焙煎した圧搾ケーク(expeller cake)、焙煎し、薄片にしたコーヒーが含まれる。
【0016】
本明細書において、他に文脈による要求がない限り、用語「焙煎グラインドコーヒー」は、元の焙煎したコーヒー物質の粒径を低減するために細砕方法を受けた、焙煎したコーヒー物質を意味する。やはり他に文脈による要求がない限り、細砕方法はグラインド、細断、打砕および圧砕のうち1つまたは複数を含むことができる。
【0017】
本明細書において、用語「Helos粒径分布D90」は、Sympatec、Clausthal−Zellerfeld、ドイツから入手可能なHelos(商標)レーザー光回折式粒径分析器にて得られる、粒径分布の体積での90パーセンタイル値を意味する。すなわち、D90とは、粒子の体積での90%がこの値以下という特徴のサイズであるような、分布に関する値である。この値は乾式試料(「乾式Helos」と呼ぶ)についても、湿式試料(「湿式Helos」と呼ぶ)、たとえば粒子と水との混合後などの試料についても得ることができる。値が粒径分布の50パーセンタイル値を表すD50についても同様である。
【0018】
Helosは、1つの評価方法が0.1μmから8750μmまでの測定範囲全体に亘って適用されるレーザー回折式センサーシステムである。この計器は、乾式試料および湿式試料、すなわち粉末、懸濁剤、乳剤または噴霧剤の粒径分析用に設計されている。
【0019】
湿式Helos測定については、100℃の湯を使用して飲料を濃度1.5%(湯200ml中に固形物3g)までで作製し、キュベット(PTFEでコーティングされ、1000RPMで運転するマグネチックスターラーを備えている)中に滴下して、20%と25%との間の光学濃度を目標とする。超音波を使用する際、チタン製の一体型音波処理指状突起(integrated sonication finger)はキュベット中に手作業で下げることができる。
【0020】
Helosシステムで粒径を測定するには3つの選択肢がある。
【0021】
【表1】
【0022】
乾式粒径分布は、Sympatec GmbH製のHELOS/KF、R4レンズ、RODOS/M分散システムおよびVIBRIフィーダーを使用して測定される。
【0023】
湿式粒径分布は、Sympatec GmbH製のHELOS/KF、R3レンズ、キュベット分散システムを使用して測定される。
【0024】
本明細書において、「La単位」で表示した色について述べるときは、Dr. Lange GmbH、Dusseldorf、ドイツから入手可能な、640nm内部フィルターを備えたDr. Lange(登録商標)Colour Reflectance Meter Model LK−100を使用し、焙煎グラインドコーヒーまたは可溶性コーヒーの試料の可視光反射率を使用して測定した単位表示を意味する。LaスケールはHunter 1948 L,a,b色空間に基づいており、この色空間において、L成分が「明度」を測定し、L=0は黒であり、L=100は完全な拡散反射色である。したがって、La数値が低いほど、測定した試料は褐色である。
【0025】
第1の態様において、本開示は、乾燥重量で5から30%の焙煎グラインドコーヒーおよび乾燥重量当量で70から95%の可溶性コーヒーを含む凍結乾燥可溶性コーヒー製品を記載し、焙煎グラインドコーヒーの乾式Helos粒径分布D90は100ミクロン以下であり、凍結乾燥可溶性コーヒー製品の色はLangeスケールで13から30La単位である。
【0026】
好ましくは、凍結乾燥可溶性コーヒー製品は、乾燥重量で10から20%の焙煎グラインドコーヒーおよび乾燥重量当量で80から90%の可溶性コーヒーを含む。一例では、凍結乾燥可溶性コーヒー製品は、乾燥重量で15%の焙煎グラインドコーヒーおよび乾燥重量当量で85%の可溶性コーヒーを含む。
【0027】
凍結乾燥可溶性コーヒー製品は焙煎グラインドコーヒーと可溶性コーヒーの両方を含むとして記載してきたが、このことは、この製品が追加の成分も含む可能性を排除するものではないことが理解されるであろう。
【0028】
驚くべきことに、小粒径の焙煎グラインドコーヒーを凍結乾燥可溶性コーヒー製品の中に組み込むと、焙煎グラインドコーヒーをより視覚的に彷彿させるより褐色の最終製品が出来ることがわかった。
【0029】
比較すると、従来技術の凍結乾燥可溶性コーヒー製品の色は、一般的に、25La単位を超える。従来技術のガス化の方法を使用してさえ、21La単位未満の色の最終製品を製造することは不可能であった。
【0030】
さらに、従来技術の焙煎グラインドコーヒーの色は、一般的に、6から13La単位である。
【0031】
好ましくは、焙煎グラインドコーヒーの乾式Helos粒径分布D90は、50ミクロン以下、より好ましくは30ミクロン以下である。
【0032】
好ましくは、凍結乾燥可溶性コーヒー製品の色は、Langeスケールで16から25La単位である。より好ましくは、凍結乾燥可溶性コーヒー製品の色は、Langeスケールで17から20La単位である。
【0033】
好ましくは、凍結乾燥可溶性コーヒー製品の密度は185から265g/リットルである。より好ましくは、凍結乾燥可溶性コーヒー製品の密度は205から235g/リットルである。一例では、凍結乾燥可溶性コーヒー製品の密度は、225g/リットルである。
【0034】
有利なことに、焙煎グラインドコーヒー粒子を添加することによって最終製品を褐色化すると、消費者が期待する密度レベルおよび溶解性レベルを実現する最終製品を製造することが可能になる。
【0035】
好ましくは、凍結乾燥可溶性コーヒー製品の粒径範囲は0.3から3.5mmである。より好ましくは、凍結乾燥可溶性コーヒー製品の粒径範囲は0.3から2.5mmである。一例では、凍結乾燥可溶性コーヒー製品の粒径範囲は0.3から1.5mmである。
【0036】
凍結乾燥した製品は、グラインドし、篩にかけて、焙煎グラインドコーヒー製品を彷彿させる粒径にすることが可能である。
【0037】
焙煎グラインドコーヒーは、既知の方法、たとえば当該技術分野において周知であり、例として上記の特許文献3に記載されている、焙煎したコーヒー豆の極低温粉砕などによって得ることができる。しかし、好ましくは、焙煎グラインドコーヒーは、さらに以下に記載することにする本開示の第4の態様の新規な細砕方法によって得られる。
【0038】
好ましくは、凍結乾燥可溶性コーヒー製品は、さらに以下に記載することにする本開示の第2の態様の新規な方法によって製造される。
【0039】
第2の態様において、本開示は、凍結乾燥可溶性コーヒー製品を形成する方法であって、
i)濃縮したコーヒー抽出物を形成するステップと、
ii)濃縮したコーヒー抽出物を泡立て、予備凍結して、泡立てて予備凍結したコーヒー中間体を形成するステップと、
iii)泡立てて予備凍結したコーヒー中間体を凍結して、凍結したコーヒー中間体を形成するステップと、
iv)凍結したコーヒー中間体をグラインドし、篩にかけて、グラインドしたコーヒー中間体を形成するステップと、
v)グラインドしたコーヒー中間体を乾燥して、凍結乾燥可溶性コーヒー製品を形成するステップと
を含み、
ステップii)および/またはステップiii)の前に、粉砕およびブレンドしたコーヒー中間体が組み込まれ、
粉砕およびブレンドしたコーヒー中間体は、乾燥重量で10から80%の焙煎グラインドコーヒーおよび乾燥重量で20から90%の可溶性コーヒーを含む、
方法を記載する。
【0040】
第3の態様において、本開示は、噴霧乾燥した可溶性コーヒー(以下、噴霧乾燥可溶性コーヒー)(spray−dried soluble coffee)製品を形成する方法であって、
i)濃縮したコーヒー抽出物を形成するステップと、
ii)濃縮したコーヒー抽出物を泡立てて、泡立てたコーヒー中間体を形成するステップと、
iii)任意選択で、泡立てたコーヒー中間体を濾過し、均質化して、濾過および均質化したコーヒー中間体を形成するステップと、
iv)泡立てたコーヒー中間体または濾過および均質化したコーヒー中間体を噴霧乾燥して、噴霧乾燥可溶性コーヒー製品を形成するステップと
を含み、
ステップii)および/またはステップiv)の前に、粉砕およびブレンドしたコーヒー中間体が組み込まれ、
粉砕およびブレンドしたコーヒー中間体は、乾燥重量で10から80%の焙煎グラインドコーヒーおよび乾燥重量で20から90%の可溶性コーヒーを含む、
方法を記載する。
【0041】
驚くべきことに、可溶性コーヒーを形成する方法の一部として、粉砕およびブレンドしたコーヒー中間体(焙煎グラインドコーヒー粒子および可溶性コーヒー粒子から形成された)を組み込むと、濃縮したコーヒー抽出物の全体に亘って、焙煎してグラインドした粒子がきわめて良好に分散することがわかった。
【0042】
好ましくは、第2の態様または第3の態様の粉砕およびブレンドしたコーヒー中間体は、乾燥重量で10から70%の焙煎グラインドコーヒーおよび乾燥重量で30から90%の可溶性コーヒーを含む。さらに好ましくは、第2の態様または第3の態様の粉砕およびブレンドしたコーヒー中間体は、乾燥重量で15から50%の焙煎グラインドコーヒーおよび乾燥重量で50から85%の可溶性コーヒーを含む。一例では、第2の態様または第3の態様の粉砕およびブレンドしたコーヒー中間体は、乾燥重量で50%の焙煎グラインドコーヒーおよび乾燥重量で50%の可溶性コーヒーを含む。
【0043】
第2の態様または第3の態様の粉砕およびブレンドしたコーヒー中間体は、焙煎グラインドコーヒーと可溶性コーヒーの両方を含むとして記載してきたが、このことは、この中間体が追加の成分も含む可能性を排除するものではないことが理解されるであろう。
【0044】
好ましくは、第2の態様または第3の態様の粉砕およびブレンドしたコーヒー中間体の乾式Helos粒径分布D90は40ミクロン以下である。より好ましくは、第2の態様または第3の態様の粉砕およびブレンドしたコーヒー中間体の乾式Helos粒径分布D90は30ミクロン以下である。
【0045】
好ましくは、第2の態様または第3の態様の方法において、凍結乾燥したコーヒー製品または噴霧乾燥したコーヒー製品は、乾燥重量で5から30%の焙煎グラインドコーヒーおよび乾燥重量当量で70から95%の可溶性コーヒーを含む。より好ましくは、凍結乾燥したコーヒー製品または噴霧乾燥したコーヒー製品は、乾燥重量で10から20%の焙煎グラインドコーヒーおよび乾燥重量当量で80から90%の可溶性コーヒーを含む。一例では、凍結乾燥したコーヒー製品または噴霧乾燥したコーヒー製品は、乾燥重量で15%の焙煎グラインドコーヒーおよび乾燥重量当量で85%の可溶性コーヒーを含む。
【0046】
凍結乾燥したコーヒー製品または噴霧乾燥したコーヒー製品は、焙煎グラインドコーヒーと可溶性コーヒーの両方を含むとして記載してきたが、このことは、この製品が追加の成分も含む可能性を排除するものではないことが理解されるであろう。
【0047】
粉砕およびブレンドしたコーヒー中間体の可溶性コーヒーは、噴霧乾燥したインスタントコーヒー、凍結乾燥したインスタントコーヒー、またはこれらの混合物を含んでもよい。
【0048】
上記の凍結乾燥可溶性コーヒー製品を形成する方法の、乾燥する前のグラインドしたコーヒー中間体の合計コーヒー固形物濃度は、52%以上63%以下とすることができる。
【0049】
上記の噴霧乾燥可溶性コーヒー製品を形成する方法の、乾燥する前のコーヒー中間体の合計コーヒー固形物濃度は、52%以上63%以下とすることができる。
【0050】
いずれの場合にも、合計コーヒー固形物濃度は、好ましくは56%から60%とすることができる。
【0051】
本開示の第2の態様および第3の態様は、上記の方法によって製造された可溶性コーヒー製品にも適用される。
【0052】
さらに、本開示の第2の態様および第3の態様は、上記の可溶性コーヒー製品を使用して形成されたコーヒー飲料にも適用される。
【0053】
第4の態様において、本開示は、コーヒー粉砕方法であって、
a)焙煎したコーヒー前駆物質の粒子を粉砕チャンバー中に導入するステップと、
b)可溶性コーヒーの粒子を粉砕チャンバー中に導入するステップと、
c)粉砕チャンバー中にガスを噴射して、焙煎したコーヒー前駆物質の粒子および可溶性コーヒーの粒子に移動性をもたせるステップと、
d)これにより、粉砕チャンバー内で、焙煎したコーヒー前駆物質の粒子の自己衝突および可溶性コーヒーの粒子と焙煎したコーヒー前駆物質の粒子との衝突により、焙煎したコーヒー前駆物質の粒子を細砕することによって、粉砕およびブレンドしたコーヒー製品を製造するステップと
を含む方法を記載する。
【0054】
有利なことに、焙煎したコーヒー前駆物質をこのように細砕することは、焙煎したコーヒーの粒径を低減する優れた手段となり、焙煎したコーヒー前駆物質からのコーヒーオイルの放出によって従前発生していた悪影響がないことがわかった。理論に縛られることを望むものではないが、可溶性コーヒーの粒子を粉砕チャンバー中に組み込むと、可溶性コーヒーが、一部の、好ましくはほとんどのまたはすべての、細砕中に放出されたコーヒーオイルを吸収すると理解される。
【0055】
有利なことに、焙煎したコーヒー前駆物質の粒子を可溶性コーヒーの粒子と衝突させることにより、可溶性コーヒーの粒子は、粉砕チャンバー内で細砕する作用物質(comminuting agent)として活発に使用される。当然ながら、自己衝突、換言すれば、焙煎したコーヒー前駆物質の粒子が他の焙煎したコーヒー前駆物質の粒子に衝突することによる焙煎したコーヒー前駆物質の細砕が、幾分あろう。しかし、焙煎したコーヒー前駆物質を可溶性コーヒーの粒子と衝突させることによって生じた追加の細砕が、粉砕活動を増強することがわかった。可溶性コーヒーの粒子が特に硬いものではないことを考慮すると、これは特に驚くべきである。
【0056】
好みで、移動性をもたせた焙煎したコーヒー粒子(mobilised roasted coffee particles)を粉砕チャンバーの追加の表面、たとえば衝突板などに衝突させるように仕向けて、追加の細砕効果を生むようにしてもよい。しかし、このような衝突の使用は方法にとって必須ではない。
【0057】
焙煎したコーヒー前駆物質の粒子および可溶性コーヒーの粒子は、粉砕チャンバー中に導入する前に一緒に混合してもよい。たとえば、原料を乾燥形態でバッチ混合し、一般的なホッパー供給を介して粉砕チャンバー中に導入してもよい。
【0058】
あるいは、焙煎したコーヒー前駆物質の粒子および可溶性コーヒーの粒子は、粉砕チャンバー中に別々に導入してもよい。たとえば、焙煎したコーヒー前駆物質および可溶性コーヒー前駆物質用に別々のホッパーを用意してもよい。
【0059】
別の可能性として、単一の供給ラインの使用があり、これを使用して、1つの前駆物質を粉砕チャンバー中に噴射してもよい。これは他方の前駆物質を流の中に同伴するように作用する。
【0060】
好ましくは、ステップa)における焙煎したコーヒー前駆物質の粒子は、摂氏5度と30度との間の温度である。
【0061】
好ましくは、粉砕チャンバーは、ステップb)、c)およびd)の最中に極低温冷却を受けない。
【0062】
本開示の態様の特定の利点は、コーヒーオイルの放出を防止するために、焙煎したコーヒー前駆物質を極低温冷却することは、粉砕によってコロイドの粒径まで低減されている場合でさえ不要である、ということである。コーヒー前駆物質は、任意選択で、たとえば摂氏5度ほどに低い温度まで冷却することによって、粉砕する前に何らかの予備低温冷却を受けてもよい。しかし、焙煎したコーヒー前駆物質は、周囲温度(一般的に摂氏20から25度)で使用してもよい。
【0063】
さらに、粉砕装置の物理的な構成要素(チャンバーの壁、供給ラインなど)を冷却することは必須ではない。しかし、粉砕方法中に水分を除去するのを助けるために、噴射ガスを低温冷却することは望ましい場合がある。ガスを低温冷却すると、粉砕装置を幾分冷却することになるであろう。しかし、これは、一般的に極低温冷却中に冷却される結果よりもかなり程度の低いものとなる。ガスは、摂氏−20度と周囲温度との間の温度としてもよい。一例では、摂氏−16度のガスを使用した。
【0064】
活発な冷却をしないこと(または上記の通りの最小限の冷却の使用)は、粉砕方法に必要な機械の複雑性をかなり低減し、方法時間を早め、方法の粉砕段階に伴うコストを低減する。
【0065】
好ましくは、ステップd)で製造される粉砕およびブレンドしたコーヒー製品は、乾燥重量で10から80%の焙煎グラインドコーヒーおよび乾燥重量で20から90%の可溶性コーヒーを含む。より好ましくは、ステップd)で製造される粉砕およびブレンドしたコーヒー製品は、乾燥重量で10から70%の焙煎グラインドコーヒーおよび乾燥重量で30から90%の可溶性コーヒーを含む。さらにより好ましくは、ステップd)で製造される粉砕およびブレンドしたコーヒー製品は、乾燥重量で15から50%の焙煎グラインドコーヒーおよび乾燥重量で50から85%の可溶性コーヒーを含む。一例では、ステップd)で製造される粉砕およびブレンドしたコーヒー製品は、乾燥重量で50%の焙煎グラインドコーヒーおよび乾燥重量で50%の可溶性コーヒーを含む。粉砕して、乾燥重量で70%を超える焙煎グラインドコーヒーを含有する製品を製造することは、上記の通り、供給ガスを摂氏約−20度の温度まで低温冷却する場合に可能になることがある。そうでなければ、製品中の焙煎グラインドコーヒーの割合を最大で70%までに限定することが好ましい。
【0066】
粉砕およびブレンドしたコーヒー製品は、焙煎グラインドコーヒーと可溶性コーヒーの両方を含むとして記載してきたが、このことは、この製品が追加の成分も含む可能性を排除するものではないことが理解されるであろう。
【0067】
好ましくは、ステップd)において、細砕の結果、粉砕およびブレンドしたコーヒー製品の乾式Helos粒径分布D90は40ミクロン以下である。より好ましくは、ステップd)において、細砕の結果、粉砕およびブレンドしたコーヒー製品の乾式Helos粒径分布D90は30ミクロン以下である。
【0068】
焙煎したコーヒー前駆物質の粒子は、全粒の焙煎したコーヒー豆でも、粗挽きの焙煎したコーヒー豆でもよい。この方法は、全粒の焙煎したコーヒー豆の適用が可能で、方法ルートが単純化する。しかし、好みで、焙煎したコーヒーを粉砕チャンバー中に挿入する前に、焙煎したコーヒー豆の最初の粗挽きを実施することができる。
【0069】
可溶性コーヒーの粒子は、噴霧乾燥したインスタントコーヒーの粒子、凍結乾燥したインスタントコーヒーの粒子、またはこれらの混合物でもよい。
【0070】
粉砕およびブレンドしたコーヒー製品が中で利用されようとする最終製品のタイプと調和するタイプの可溶性コーヒーを使用することに利点がある場合がある。たとえば、粉砕およびブレンドしたコーヒー製品が、最終的に凍結乾燥したコーヒー製品中に組み込まれる予定である場合、粉砕チャンバー中で細砕する作用物質として使用する可溶性コーヒー製品は、選択してやはり凍結乾燥可溶性コーヒーとすることができる。しかし、方法の中で使用される可溶性コーヒーのタイプは、所望に応じて混合し、変更してもよい。
【0071】
好ましくは、ステップb)において粉砕チャンバー中に噴射されるガスは、窒素、空気、またはこれらの混合物である。
【0072】
粉砕チャンバーは、ジェットミルの一部を形成することができる。このようなミルの例には、流動床対向型ジェットミル(fluid bed opposed jet mill)、Jet−O−Mizer(商標)ミル、ボルテックスミル、スパイラルミルなどが含まれる。
【0073】
本開示の第4の態様は、上記の方法によって製造された、粉砕およびブレンドしたコーヒー製品にも適用される。
【0074】
粉砕およびブレンドしたコーヒー製品は、上記の本開示の第2の態様および第3の態様の方法において、粉砕およびブレンドしたコーヒー中間体として使用することができる。あるいは、粉砕およびブレンドしたコーヒー製品は、この先の他のコーヒー系の製品の製造に使用することができる。さらに、粉砕およびブレンドしたコーヒー製品は、それ自体で最終製品として包装し、販売することができる。
【0075】
本開示は、上記の粉砕およびブレンドしたコーヒー製品もしくは上記の可溶性コーヒー製品または上記の凍結乾燥可溶性コーヒー製品を収容する容器にも適用される。
【0076】
容器は、瓶、広口瓶、缶、リフィルパック、小袋、スティックパック、フィルターバッグ、または飲料調製機において使用するのに好適な容器、たとえば少なくとも部分的にフィルター材料で形成された軟質パッド、または実質的に空気不透過性および水不透過性の材料で形成された、硬質、半硬質もしくは軟質のカートリッジなどとすることができる。
【0077】
容器は、1つまたは複数の追加の飲料成分、たとえば天然甘味料もしくは人工甘味料、乳製品ベースのクリーマーもしくは非乳製品ベースのクリーマー、乳糖、植物性脂肪、乳清タンパク質、乳化剤、安定剤、加工デンプン、担体、増量剤、香味剤、着色剤、栄養素、保存料、流動剤(flow agent)または起泡剤などをさらに収容してもよい。
【0078】
本開示は、飲料調製機において使用するのに好適な少なくとも1つの容器、たとえば、少なくとも部分的にフィルター材料で形成された軟質パッド、または実質的に空気不透過性および水不透過性の材料で形成された、硬質、半硬質もしくは軟質のカートリッジなどと組み合わせた前記飲料調製機にも適用され、前記少なくとも1つの容器は、上記の粉砕およびブレンドしたコーヒー製品もしくは上記の可溶性コーヒー製品または上記の凍結乾燥可溶性コーヒー製品を収容する。
【0079】
本開示は、上記の粉砕およびブレンドしたコーヒー製品または上記の可溶性コーヒー製品または上記の凍結乾燥可溶性コーヒー製品を、水性液体、好ましくは湯と混合するステップを含む、飲料の作製方法にも適用される。
【0080】
混合は飲料調製機によって行うことができる。あるいは、入れ物の中で手作業にて混合してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0081】
本開示の実施形態を、単に例示の目的で、添付の図面を参照しながら以下に記載することにする。
図1】ジェットミルの機構の略図である。
図2】Helos粒径分布D90に対するミクロンで表した粒径のグラフである。
図3】凍結乾燥可溶性コーヒーおよび噴霧乾燥可溶性コーヒーを形成する従来技術の方法を説明するフローダイアグラムである。
図4a】本開示による凍結乾燥可溶性コーヒー製品を形成する方法を説明するフローダイアグラムである。
図4b図4aの方法の変型を説明するフローダイアグラムである。
図5a】本開示による凍結乾燥可溶性コーヒー製品を形成する別の方法を説明するフローダイアグラムである。
図5b図5aの方法の変型を説明するフローダイアグラムである。
図6】本開示による噴霧乾燥可溶性コーヒー製品を形成する方法を説明するフローダイアグラムである。
図7】本開示による噴霧乾燥可溶性コーヒー製品を形成する別の方法を説明するフローダイアグラムである。
図8】種々の凍結乾燥可溶性コーヒー製品について、色の低減をLa単位で示すグラフである。
図9】容器の第1の例を示す図である。
図10】容器の第2の例を示す図である。
図11】飲料調製機の例を示す図である。
図12】種々の試料製品の走査型電子顕微鏡写真である。
図13】種々の試料製品の走査型電子顕微鏡写真である。
図14】種々の試料製品の走査型電子顕微鏡写真である。
図15】種々の試料製品の走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0082】
本開示の1つの態様において、粉砕およびブレンドしたコーヒー製品は、焙煎したコーヒー前駆物質をジェットミルなどの粉砕装置の中で細砕することによって製造することができる。好適なジェットミルは、Fluid Energy Processing and Equipment Company、Telford、PA、USAから入手可能なJet−O−Mizer(商標)ミルである。別の好適なミルは、Hosakawa Micron Ltd、Runcorn、Cheshire、英国から入手可能なHosokawa Alpine Fluid Bed Opposed Jet Mill−AFGである。他の好適な粉砕装置には、スパイラルミルおよびボルテックスミルと呼ばれるミルが含まれる。
【0083】
ジェットミルの機構原理の略図を図1に示している。ミル1は、供給口3を有する粉砕チャンバー2、一連のガス入口4、サイズ分級ホイール8および製品出口5を備える。
【0084】
図1の粉砕チャンバー2は、下端に外周に沿って間隔を置いてガス入口4を有し、上端の付近に位置づけされた製品出口5を有する、略円筒形の本体の形態をとる。
【0085】
供給口3は、粉砕チャンバー2に連通して、原料前駆物質(複数可)を、全粒の焙煎したコーヒー豆または粗挽きの焙煎したコーヒー豆および可溶性コーヒー粒子の形態で、チャンバー外周のある位置で、または外周付近のある位置で接線方向に粉砕チャンバー2の中に供給することを可能にする。
【0086】
サイズ分級ホイール8は、粉砕チャンバー2の上端付近に位置し、チャンバー2から細砕された粒子を受け入れ、その粒子を所望の粒径で製品出口5へと通過させるようになっている。
【0087】
焙煎したコーヒー前駆物質および可溶性コーヒー前駆物質は所要の比率で乾燥バッチ混合され、次いで、図1に矢印Aで概略的に示したように供給口3に連通するホッパー中に堆積される。供給ガスを供給して、前駆物質をホッパーから同伴し、チャンバー2に運搬することができる。
【0088】
使用の際、圧縮ガスが複数のガス入口4に供給される。ガス入口4は、ガス入口4を通過するガス流がチャンバー2の中で渦巻いたらせん状のガス流を発生させるように、チャンバー2の半径方向に対してある角度で、好ましくはチャンバー2に接線方向に、配置される。
【0089】
使用の際、焙煎したコーヒー前駆物質を細砕するため、前駆物質はチャンバー2の中に供給され、ガス入口4を通ってチャンバー2に入る高速流のガス(およびさらに前駆物質とともに供給口3を通って入る供給ガス(使用する場合))によってチャンバー2の中で移動できるようになる。
【0090】
細砕は、焙煎したコーヒー前駆物質および可溶性コーヒーの、各粒子間の高速の衝突によって発生し、その結果、焙煎したコーヒー前駆物質が微粉化する。粒径が低減するにつれて、より小さな粒径がチャンバー2を上昇してサイズ分級ホイール8に入る。サイズ分級ホイール8は、受け入れる粒子を分級し、所望の粒径未満の粒子を製品出口5に向けて先へと通過させるように作用する。粒子は、図1に矢印Bで概略的に示したように、ミルから出る。より大きな粒子はチャンバーの中に維持され、さらなる細砕を受ける。このように、ジェットミルは、製品出口5を通過する粒径の排出を分級するのにも役立つ。
【0091】
ジェットミルのタイプによって、粉砕チャンバー2、ガス入口4、および製品出口5の配置および構造は変更されてもよい。
【0092】
ガス入口4に供給されるガスおよび焙煎したコーヒー前駆物質をチャンバー2の中に運搬する供給ガスは、空気でもよいが、好ましくは窒素などの不活性ガスである。粉砕の最中に発生した水分をチャンバー2から除去することを助けるために、供給ガスは、除湿および/または低温冷却してもよい。除湿は、たとえばデシカント式除湿機またはコンプレッサー式除湿機の使用によるものでもよい。さらに、あるいは、ガス入口4に供給されるガスを低温冷却してもよい。
【0093】
焙煎したコーヒー前駆物質は、全粒の焙煎したコーヒー豆でもよいし、あるいは、従来の粉砕方法を使用して粗挽きした、100ミクロンを超える粒径を有するコーヒー豆でもよい。
【0094】
可溶性コーヒーは、噴霧乾燥したインスタントコーヒー製品でも凍結乾燥したインスタントコーヒー製品でもよい。ジェットミルで粉砕する前の可溶性コーヒー製品の粒径は、一般的に、噴霧乾燥可溶性コーヒーでは100ミクロンと350ミクロンとの間であり、凍結乾燥可溶性コーヒーでは0.1から3.5mmである。
【0095】
粉砕方法の前または最中に、ミル1は極低温冷却を受ける必要はない。むしろ、ミル1は、好ましくはミル1が置かれる場所に存在する実質的な周囲温度で運転される。
【0096】
上記のように、供給ガスおよび/またはガス入口に供給されるガスは、任意選択で低温冷却してもよく、その結果、装置の構成要素がわずかに冷却される場合がある。たとえば、特に、粉砕およびブレンドしたコーヒー製品中の可溶性コーヒーの乾燥重量に対する焙煎グラインドコーヒーの乾燥重量の比率が50%を超える場合、ガス入口4に供給される冷却ガス、たとえば摂氏−16度の温度まで冷却したガスを使用することによって、ジェットミルの処理量が有益に増加する場合があることがわかっている。具体的には、これによって、混合物中の焙煎グラインドコーヒーの乾燥重量の割合を80%までとすることが可能である。以下に示す結果は、Fluid Energy Processing and Equipment Company、Telford、PA、USAから入手可能なRoto−Jet15ミルを使用して得られた。ミルに、焙煎して8Laにした100%アラビカ豆を供給した。ガス入口4に対する圧力は7バールとし、供給したガスは、第1の試料として摂氏+5度まで、および第2の試料として摂氏−16度まで冷却した、乾燥した空気とした。両試料について、ジェットミルの分級器を、粒径分布D90が30ミクロンのものを生成するように調節した。
【0097】
【表2】
【0098】
表からわかる通り、温度が摂氏−16度の空気を使用すると、所要の粒径分布を依然として維持しながら、ジェットミルの処理量が大幅に増加する。
【0099】
しかし、これは従来技術の極低温冷却方法と比較すると依然として比較的高温であることに留意すべきであり、焙煎したコーヒー前駆物質および可溶性コーヒーはジェットミルに入れる前に極低温冷却を受けていないことに留意すべきである。
【0100】
焙煎したコーヒー前駆物質は、粉砕前に極低温冷却も極低温の前処理も受けない。一般的に、ホッパー6の中に充填するときの焙煎したコーヒー前駆物質の温度は、5から30℃の範囲内であろう。焙煎したコーヒー前駆物質は、粉砕装置の周囲の室温としてもよい。
【0101】
製品出口5から得られた粉砕およびブレンドしたコーヒー製品は、乾燥重量で20から90%の可溶性コーヒーおよび乾燥重量で10から80%の焙煎グラインドコーヒーを含む。好ましくは、製品出口5から得られた粉砕およびブレンドしたコーヒー製品は、乾燥重量で30から90%の可溶性コーヒーおよび乾燥重量で10から70%の焙煎グラインドコーヒーを含む。より好ましくは、粉砕およびブレンドしたコーヒー製品は、乾燥重量で50から85%の可溶性コーヒーおよび乾燥重量で15から50%の焙煎グラインドコーヒーを含む。一例では、粉砕およびブレンドしたコーヒー製品は、乾燥重量で50%の可溶性コーヒーおよび乾燥重量で50%の焙煎グラインドコーヒーを含む。
【0102】
粉砕後、粉砕およびブレンドしたコーヒー製品の粒径分布は、乾式Helos粒径分布D90が40ミクロン以下、より好ましくは30ミクロン以下である。
【0103】
実施例
図2は、本開示に従って製造した粉砕およびブレンドしたコーヒー製品の乾式Helos粒径分布D90(およびさらに湿式Helos値)を、存在する焙煎グラインドコーヒーの乾燥重量割合の関数として表した結果を示す。見てわかる通り、焙煎グラインドコーヒーが10から70%まででは、乾式Helos粒径分布D90は40ミクロン以下である。焙煎グラインドコーヒーが70%を超すと、乾式Helos粒径分布D90は有害なほどに増加する。(上述の通り、これはジェットミルへの供給ガスを低温冷却することによって改善することができる)。焙煎グラインドコーヒーが50%以下では、乾式Helos粒径分布D90は30ミクロン以下が実現する。
【0104】
別の例において、ブラジルのアラビカ豆とコロンビアのアラビカ豆とのブレンドを焙煎して11.5Laの色にし、予備グラインドしてD50を500ミクロンにした。得られた焙煎したコーヒー前駆物質を、アラビカの噴霧乾燥したコーヒーと、焙煎したコーヒー前駆物質50%対噴霧乾燥したコーヒー前駆物質50%の比率で乾燥バッチ混合した。次いで、得られたブレンドを、Hosokawa Alpine Fluid Bed Opposed Jet Mill−AFGに入れて、種々の供給速度および分級器速度で粉砕した。以下の結果が得られた。
【0105】
【表3】
【0106】
有利なことに、表からわかる通り、各例について、30ミクロン未満の乾式Helos粒径分布D90が、ある範囲の供給速度および分級器速度で取得可能であった。
【0107】
本開示の別の態様は、ある割合の焙煎グラインドコーヒーを含有する粉砕およびブレンドしたコーヒー製品を組み込んだ、新規な可溶性インスタントコーヒー製品の製造方法に関する。
【0108】
噴霧乾燥可溶性コーヒーを形成する従来技術の方法および凍結乾燥可溶性コーヒーを形成する従来技術の方法は、両方とも、焙煎方法および抽出方法によって、コーヒー豆からコーヒー濃縮物中間体を生成するステップで開始される。図3は、必要な各段階を説明している。コーヒー生豆を、焙煎し、次いでグラインドしてから水に添加してコーヒー豆成分を抽出する。任意選択で、コーヒーの香気をこの時点で取り出して、液体香気製品を製造してもよい。次いで、抽出液体を、たとえばパーコレーションカラム(percolation column)に入れて濃縮して、コーヒー液として広く知られている濃縮した抽出物を生成する。任意選択で、この時点で、予め製造した香気製品を組み込んで、香気を付与したコーヒー濃縮物中間体を製造してもよい。かかる方法は周知である。
【0109】
手順の残部は、可溶性製品を噴霧乾燥するか、または凍結乾燥するかによって決まる。噴霧乾燥可溶性コーヒーについては、残る方法ステップには、泡立て、濾過および均質化、ならびに噴霧乾燥して、噴霧乾燥した製品を製造するステップが含まれる。凍結乾燥可溶性コーヒーについては、残る方法ステップには、泡立ておよび予備凍結、凍結、グラインドおよび篩がけ、ならびに真空乾燥が含まれる。
【0110】
本開示によれば、これらの既知の方法は、ある割合の焙煎グラインドコーヒーを含有する粉砕およびブレンドしたコーヒー中間体の組み込みによって改変される。以下に記載する方法の各々において、粉砕およびブレンドしたコーヒー中間体それ自体が、乾燥重量で10から80%の焙煎グラインドコーヒーおよび乾燥重量で20から90%の可溶性コーヒーを含有することができる。好ましくは、粉砕およびブレンドしたコーヒー中間体は、乾燥重量で10から70%の焙煎グラインドコーヒーおよび乾燥重量で30から90%の可溶性コーヒーを含有する。より好ましくは、粉砕およびブレンドしたコーヒー中間体は、乾燥重量で15から50%の焙煎グラインドコーヒーおよび乾燥重量で50から85%の可溶性コーヒーを含有する。一例では、粉砕およびブレンドしたコーヒー中間体は、乾燥重量で50%の可溶性コーヒーおよび乾燥重量で50%の焙煎グラインドコーヒーを含む。
【0111】
以下の方法のいずれにおいても、粉砕およびブレンドしたコーヒー中間体の可溶性コーヒーの成分は、噴霧乾燥したインスタントコーヒー、凍結乾燥したインスタントコーヒー、またはこれらの混合物から得られるものでもよい。
【0112】
粉砕およびブレンドしたコーヒー中間体の乾式Helos粒径分布D90は、好ましくは40ミクロン以下、より好ましくは30ミクロン以下である。
【0113】
以下に記載した方法の各々において、最終コーヒー製品は、乾燥重量で5から30%の焙煎グラインドコーヒーおよび乾燥重量当量で70から95%の可溶性コーヒーを含むことができる。(たとえば、乾燥重量で15%の焙煎グラインドコーヒーおよび乾燥重量当量で85%の可溶性コーヒーを含有する可溶性コーヒー最終製品は、液体コーヒー濃縮物と、乾燥重量で50%の焙煎グラインドコーヒーおよび乾燥重量で50%の可溶性コーヒーを有する、乾燥した、粉砕およびブレンドしたコーヒー中間体とを、コーヒー濃縮物中間体対粉砕およびブレンドしたコーヒー中間体の比率を70:30にして混合することによって得ることができる。
【0114】
好ましい選択肢では、粉砕およびブレンドしたコーヒー中間体は、図1を参照しながら上に記載した本開示の新規な方法を使用して生成される。しかし、必要な割合の焙煎グラインドコーヒーおよび可溶性コーヒーを有する、粉砕およびブレンドしたコーヒー中間体は、別の手段で生成された場合でも、使用することができる。
【0115】
図4aは、凍結乾燥可溶性コーヒー製品25を形成するための第1の凍結乾燥方法を示す。コーヒー濃縮物中間体20(香気付与、または香気非付与)を、泡立ておよび予備凍結ステップ21の前に、高剪断ミキサー50を使用して、粉砕およびブレンドしたコーヒー中間体30と混合する。好適なミキサーには、Silverson Machines Ltd、Chesham、英国から入手可能な高剪断バッチミキサーおよび高剪断インラインミキサーが含まれる。次にステップ21で、混合物を泡立て、予備凍結し、次いで、さらなる凍結ステップのためにベルトフリーザー22に供給する。次にステップ23で、凍結した中間体をグラインドし、篩にかけて、粒径範囲を0.3から3.5mm、好ましくは0.3から2.5mm、より好ましくは0.3から1.5mmにする。次にステップ24で、中間体を真空乾燥して、凍結乾燥可溶性コーヒー製品25を製造する。その後、製品を容器の中に充填することができる。
【0116】
図4aの方法の変型が図4bに示されている。この方法は、ステップ22までは図4aを参照しながら上に記載した通りである。しかし、ステップ23で、凍結した中間体をグラインドし、篩にかけて、より大きな1.0から3.5mmの粒径範囲にする。次にステップ24で、中間体を真空乾燥して、凍結乾燥可溶性コーヒー中間製品25aを生成する。ステップ26で、凍結乾燥可溶性コーヒー中間製品25aは第2のグラインドを受け、0.3から1.5mmの粒径範囲に低減して、凍結乾燥可溶性コーヒー製品25を製造する。その後、製品を容器の中に充填することができる。
【0117】
図5aは、凍結乾燥可溶性コーヒー製品25を形成するための第2の凍結乾燥方法を示す。この方法は、粉砕およびブレンドしたコーヒー製品30を泡立ておよび予備凍結ステップ21の後で組み込むこと以外は、図4aを参照しながら上に記載した第1の方法と同じである。やはり上記のタイプの高剪断ミキサー50を使用することができ、他の点において、この方法は第1の方法と同じである。
【0118】
図5aの方法の変型が図5bに示されている。この方法は、ステップ22までは図5aを参照しながら上に記載した通りである。しかし、ステップ23で、凍結した中間体をグラインドし、篩にかけて、より大きな1.0から3.5mmの粒径範囲にする。次にステップ24で、中間体を真空乾燥して、凍結乾燥可溶性コーヒー中間製品25aを生成する。ステップ26で、凍結乾燥可溶性コーヒー中間製品25aは第2のグラインドを受け、0.3から1.5mmの粒径範囲に低減して、凍結乾燥可溶性コーヒー製品25を製造する。その後、製品を容器の中に充填することができる。
【0119】
図4bおよび図5bの変型した方法の利点は、真空乾燥中の粒径が図4aおよび図5aの方法における粒径より大きく、これによって乾燥中の製品ロスが低減されることがわかった、ということである。図4aおよび図5aの方法では、きわめて小さな粒径を真空乾燥するとき、粒子が、蒸発する中間体の含水と一緒に運び去られるために、製品ロスが発生する可能性があることがわかっている。
【0120】
上記の本開示の凍結乾燥方法の各々のさらなる利点は、驚くべきことに、微粉砕した焙煎グラインドコーヒーを含める場合、より良好な凍結乾燥性能が実現し、より高濃度の可溶性固形物を凍結乾燥前に製品中に組み込むことができることがわかった、ということである。
【0121】
用語「凍結乾燥性能」とは、乾燥した製品の品質上の問題、具体的にはメルトバックおよび粘着性の塊を回避することである。「メルトバック」とは、凍結乾燥中に昇華によって各顆粒構造から水を除去できないことであり、「粘着性の塊」とは、コーヒーベッドトレー(coffee bed tray)全体に亘って個々の顆粒から昇華した水蒸気を除去できないことから生じるものである。
【0122】
一般的な凍結乾燥方法は、低温室のベルト上で、泡立てたコーヒー抽出物を凍結するというものである。凍結すると、コーヒー板状物(coffee slab)を顆粒化し、篩にかけて、特定の顆粒サイズにしてから凍結乾燥器中で乾燥する。
【0123】
凍結乾燥器の処理能力は、その脱水能力によって制限される。凍結乾燥器に供給される凍結したコーヒー粒子の中の水分量は、凍結した場合、液体コーヒー抽出物の合計コーヒー固形物の濃度によって決まる。コーヒー固形物の濃度が高いほど、含水量は低くなり、したがって、凍結乾燥器がその水を除去するための処理能力をあまり利用しなくて済む。
【0124】
したがって、凍結乾燥器の所与の脱水能力については、乾燥器に供給する固形物の濃度を高めることによって、製品処理量の増加を企図することもある。しかし、濃度を高めると、製品のメルトバックおよび凝集した顆粒の粘着性の塊の生成など、製品の品質に悪影響を及ぼすことが既にわかっている。このような制限があるため、供給抽出物が含有する合計コーヒー固形物は約50%を超えるべきではないということが以前は認められてきた。
【0125】
しかし、本開示の方法および製品によれば、メルトバックおよび粘着性の塊を回避しながら、合計コーヒー固形物濃度が63%までのものを凍結乾燥器に供給することができるということがわかった。たとえば、濃度56%および60%の優れた抽出物を、粒径D50が30から40ミクロンかつD99が60ミクロン未満の微粉砕した焙煎グラインドコーヒー15%(乾燥重量で)と、純粋な可溶性コーヒー固形物85%(乾燥重量で)とで形成することができる。
実施例
改良がなされた乾燥性能および製品の品質を例証するため、以下の凍結乾燥した試料を調製した。各事例において、凍結乾燥した顆粒を再溶解し、水を添加して、所要の濃度のコーヒー固形物を作製することによって、主成分の抽出物を作製した。乾燥は、すべての試料について同じ条件で実施した。すなわち、乾燥器はデンマーク、SoeborgのGEA Niroから入手可能なRay2モデルとした。試料は標準的なトレーに入れ、加熱プロファイル、最初の製品重量、乾燥器への供給材料の粒径を同一にして乾燥した。
【0126】
試料1−1(比較)
最終抽出物は、コーヒー固形物濃度が56%(純粋な可溶性コーヒー固形物のみ)であり、空気で泡立て、凍結し、グラインドし、篩にかけて0.7mm〜3.35mmの間のサイズにし、最後に真空乾燥した。冷却したコーヒー顆粒を−40℃で凍結し、3.0時間または3.4時間真空乾燥した。
【0127】
【表4】
【0128】
試料2−1
最終抽出物は、コーヒー固形物濃度が56%(主成分の抽出物が原料の可溶性コーヒー固形物、および微粉砕した焙煎グラインドコーヒーが原料の、泡立てる前に添加したコーヒー固形物によって作製され、最終製品は乾燥重量で15%の焙煎グラインドコーヒーおよび乾燥重量当量で85%の可溶性コーヒーを含む)であり、空気で泡立て、凍結し、グラインドし、篩にかけて0.7mm〜3.35mmの間のサイズにし、最後に乾燥した。冷却したコーヒー顆粒を−40℃で凍結し、3.0時間または3.4時間真空乾燥した。
【0129】
【表5】
【0130】
3.35mmサイズの篩を使用して篩がけすることによって、粘着性の塊の存在を定量化し、以下の結果を得た。
【0131】
【表6】
【0132】
表からわかる通り、微粉砕した焙煎グラインドコーヒーを含めると、粘着性の塊の存在が実質的に排除される。
【0133】
篩がけによる比較に加えて、走査型電子顕微鏡(SEM)写真による直接的な目視比較を行った。図12は試料1−1の乾燥したコーヒー製品のSEM写真を示し、一方、図13は試料2−1の乾燥したコーヒー製品のSEM写真を示す。
【0134】
写真からわかる通り、微粉砕した焙煎グラインドコーヒーを含有する試料2−1は、純粋な可溶性固形物の試料1−1と比較して、その構造において崩壊した部分が少ない。
【0135】
試料1−2(比較)
最終抽出物は、コーヒー固形物濃度が60%(純粋な可溶性コーヒー固形物のみ)であり、空気で泡立て、凍結し、グラインドし、篩にかけて0.7mm〜3.35mmの間のサイズにし、最後に真空乾燥した。冷却したコーヒー顆粒を−40Cで凍結し、3.0時間真空乾燥した。
【0136】
【表7】
【0137】
試料2−2
最終抽出物は、コーヒー固形物濃度が60%(主成分の抽出物が原料の可溶性コーヒー固形物、および微粉砕した焙煎グラインドコーヒーが原料の、泡立てる前に添加したコーヒー固形物によって作製され、最終製品は乾燥重量で15%の焙煎グラインドコーヒーおよび乾燥重量当量で85%の可溶性コーヒーを含む)であり、空気で泡立て、凍結し、グラインドし、篩にかけて0.7mm〜3.35mmの間のサイズにし、最後に乾燥した。冷却したコーヒー顆粒を−40Cで凍結し、3.0時間真空乾燥した。
【0138】
【表8】
【0139】
この場合も、3.35mmサイズの篩を使用して篩がけすることによって、粘着性の塊の存在を定量化し、以下の結果を得た。
【0140】
【表9】
【0141】
走査型電子顕微鏡(SEM)写真による直接的な目視比較を行った。図14は試料1−2の乾燥したコーヒー製品のSEM写真を示し、一方、図15は試料2−2の乾燥したコーヒー製品のSEM写真を示す。
【0142】
写真からわかる通り、微粉砕した焙煎グラインドコーヒーを含有する試料2−2は、試料1−2と比較して、構造において崩壊した部分が少ない。
【0143】
さらに別の有益な点として、微粉砕した焙煎グラインドコーヒーを含有する凍結したコーヒー抽出物をグラインドすると、純粋な可溶性コーヒーから形成して凍結したコーヒー抽出物と比較して、生成される微粉が少ないという点で、グラインドの性能が向上することがわかった。
【0144】
【表10】
【0145】
グラインドについては、同一機械、同一方法および同一パラメーターを使用した。すなわち、グラインド機による選別で8mm、篩による選別で0.7〜3.35mmとした。
【0146】
図6は、噴霧乾燥可溶性コーヒー製品44を形成するための第1の噴霧乾燥方法を示す。コーヒー濃縮物中間体20(香気付与、または香気非付与)を、泡立てステップ41の前に、高剪断ミキサー50を使用して、粉砕およびブレンドしたコーヒー中間体30と混合する。上述したタイプの高剪断ミキサー50を使用することができる。次にステップ41で混合物を泡立て、次いでステップ42で濾過し、任意選択で均質化する。次にステップ43で、中間体を噴霧乾燥して、噴霧乾燥可溶性コーヒー製品44を製造する。その後、製品を容器の中に充填することができる。
【0147】
図7は、噴霧乾燥可溶性コーヒー製品44を形成するための第2の噴霧乾燥方法を示す。この方法は、粉砕およびブレンドしたコーヒー製品30を乾燥混合物中に組み込むこと以外は、上記の第1の噴霧乾燥方法と同じである。具体的には、噴霧乾燥装置(当該技術分野において公知の通り)は、コーヒー粉末の微粉を再循環させるための微粉回収器を備える。ステップ51で、粉砕およびブレンドしたコーヒー中間体30を微粉回収器からの再循環ライン内に供給し、したがって、中間体30は、噴霧乾燥段階中に製品の中に組み込まれる。
【0148】
ジェットミルで粉砕することによって形成した、粉砕およびブレンドしたコーヒー中間体は、液体(湯または濃縮した液体コーヒー抽出物など)中できわめて良好な分散特性を有することがわかった。
【0149】
実施例
ジェットミルで粉砕し、ブレンドしたコーヒー中間体の有益な分散品質を例証するために、以下の試料を次の通り調製した。
【0150】
試料1(比較)
焙煎して色を8.5Laにし、次いで従来技術の手法を使用して極低温でグラインドした100%アラビカ豆。次いで、得られたグラインド済み材料の乾燥重量で15%を、アラビカ系の乾燥した可溶性コーヒー85%と、手作業で乾燥混合した−最終組成、乾燥重量で15%の焙煎グラインドコーヒー、乾燥重量当量で85%の可溶性コーヒー。
【0151】
試料2
焙煎して色を8.5Laにし、次いで85%のアラビカ系の乾燥した可溶性コーヒーとともにジェットミルで粉砕した15%アラビカ豆−最終組成、乾燥重量で15%の焙煎グラインドコーヒー、乾燥重量当量で85%の可溶性コーヒー。
【0152】
試料3
焙煎して色を8.5Laにし、次いでブレンドした中間体を形成するために70%のアラビカ系の乾燥した可溶性コーヒーとともにジェットミルで粉砕した、30%アラビカ豆。乾燥重量で50%のアラビカ系の乾燥した可溶性コーヒーと手作業で乾燥混合した、乾燥重量で50%のブレンドした中間体−最終組成、乾燥重量で15%の焙煎グラインドコーヒー、乾燥重量当量で85%の可溶性コーヒー。
【0153】
試料4
焙煎して色を8.5Laにし、次いでブレンドした中間体を形成するために50%のアラビカ系の乾燥した可溶性コーヒーとともにジェットミルで粉砕した、50%アラビカ豆。乾燥重量で70%のアラビカ系の乾燥した可溶性コーヒーと手作業で乾燥混合した、乾燥重量で30%のブレンドした中間体−最終組成、乾燥重量で15%の焙煎グラインドコーヒー、乾燥重量当量で85%の可溶性コーヒー。
【0154】
次に、試料から飲料を調製し、乾式Helos粒径分布および湿式Helos(超音波有りおよび超音波なし)粒径分布を測定し、以下の結果を得た。
【0155】
【表11】
【0156】
攪拌した試料の湿式Helosは最初に調合したときの粒径を表し、微細にグラインドした、焙煎したコーヒー粒子の水中での分散が不十分であることによって材料の「凝集物」が形成される場合は、値がより高い。
【0157】
凝集物の形成は、超音波を伴う湿式Helosの測定値と比較することによって判定することができる。超音波は、凝集物(存在する場合)を崩壊するように作用する。
【0158】
結果からわかる通り、極低温でグラインドした、焙煎したコーヒーで形成した比較試料1は、この製品の焙煎グラインドコーヒーの合計含有量が試料2から4と同じであるにもかかわらず、分散特性が不十分で、顕著な凝縮(超音波を伴う湿式Helos値と超音波を伴わない湿式Helos値との間の大幅な差によって立証される)があった。比較すると、本開示の試料2および試料3は、粉砕およびブレンドしたコーヒー中間体が乾燥重量で15または30%の焙煎グラインドコーヒーを有する場合、分散がきわめてより良好である。乾燥重量で50%の焙煎グラインドコーヒーを含む試料4は、従来技術の組成物より幾分改善を示しているが、試料2および試料3ほどの改善は見られない。
【0159】
本開示の別の態様は、焙煎グラインドコーヒーを彷彿させる外観を有する新奇な凍結乾燥可溶性コーヒー製品に関する。
【0160】
驚くべきことに、小粒径の焙煎グラインドコーヒーを凍結乾燥可溶性コーヒー製品に添加すると、最終製品の褐色化を引き起こすことができ、その結果、凍結乾燥した製品が、従来技術の凍結乾燥したコーヒー製品より、焙煎グラインドコーヒーに近似して見えることを発見した。
【0161】
焙煎グラインドコーヒー粒子は、好ましくはコロイド状のサイズであり、乾式Helos粒径分布D90が100ミクロン以下、好ましくは50ミクロン以下、より好ましくは30ミクロン以下である。
【0162】
焙煎グラインドコーヒーは、乾燥重量で、凍結乾燥した製品の5から30%を構成することができる。
【0163】
焙煎グラインドコーヒーは、全粒の焙煎したコーヒー豆を極低温粉砕することによって得ることができる。しかし、好ましくは、焙煎グラインドコーヒーは、図1を参照しながら上に記載した本開示の粉砕方法によって得られる。その方法において、焙煎グラインドコーヒーは、粉砕およびブレンドしたコーヒー中間体の成分である。
【0164】
焙煎グラインドコーヒーは、高剪断混合によって製品の中に組み込むことができる。好ましくは、本開示の粉砕およびブレンドしたコーヒー中間体が使用されようとする場合、焙煎グラインドコーヒーは、図4および図5を参照しながら上に記載した方法の1つを使用して組み込まれる。
【0165】
凍結乾燥したコーヒー最終製品の色は、Langeスケールで、13から30La単位、好ましくは16から25La単位、より好ましくは17から20La単位である。
【0166】
可溶性コーヒー製品の密度も色に影響を及ぼす。一般的に、製品の密度が高いほど褐色になる。しかし、可溶性製品の密度が高すぎるのは望ましくない。したがって、本開示は、製品の密度の調節とは別に(または組み合わせて)使用して、所望の製品の色を選択することができる柔軟な選択肢を提供する。
【0167】
図8は、第1のセットである3つの試料製品AからCの結果を表す。3つの試料AからCのすべてについて、凍結乾燥器に供給した製品の合計固形物(可溶性コーヒー固形物、および該当する場合は焙煎グラインドコーヒー固形物)濃度を50%とし、乾燥時間は3.37時間とした。試料AからCは以下の特徴を有するものとした。
【0168】
試料A(比較例)
標準的な純ロブスタの濃縮した抽出物を、焙煎グラインドコーヒーを全く含めずに、既知の従来技術の手法を使用して泡立て、凍結乾燥した。色変化の基準点0を試料Aの密度210g/lに設定する。220g/lに密度が増加すると、色変化は−1.5La単位になる。230g/lに密度が増加すると、色変化は−2.7La単位になる。
【0169】
試料B
泡立て後に焙煎グラインドコーヒーを添加した、図5aの方法による凍結乾燥した製品で、最終製品は乾燥重量で15%の焙煎グラインドコーヒーおよび乾燥重量当量で85%の可溶性コーヒーを含む。
【0170】
試料Aと比較して、試料Bは、色変化が密度210g/lで−3.0La単位、密度220g/lで−3.8La単位のより褐色の製品になった。
【0171】
試料C
泡立て前に焙煎グラインドコーヒーを添加した、図4aの方法による凍結乾燥した製品で、最終製品は乾燥重量で15%の焙煎グラインドコーヒーおよび乾燥重量当量で85%の可溶性コーヒーを含む。
【0172】
試料Aと比較して、試料Cは、色変化が密度210g/lで−1.5La単位、密度220g/lで−2.4La単位、および密度230g/lで−3.4La単位のより褐色の製品になった。
【0173】
【表12】
【0174】
以下の表は、第2のセットである2つの試料群、固形物濃度および乾燥時間が異なる製品Dおよび製品Eについての結果を表す。試料群Dおよび試料群Eは、以下の特徴を有するものとした。
【0175】
試料D(比較例)
標準的な純アラビカの濃縮した抽出物を、焙煎グラインドコーヒーを全く含めずに、泡立て、凍結乾燥した。色変化の基準点0を、3つの条件について、試料の密度220g/lに設定した。3つの条件とは、乾燥器への供給は固形物濃度56%で乾燥時間3時間、乾燥器への供給は固形物濃度60%で乾燥時間3時間、および乾燥器への供給は固形物濃度56%で乾燥時間3.37時間である。
【0176】
試料E
泡立て前に焙煎グラインドコーヒーを添加した、図4aの方法による凍結乾燥した製品で、最終製品は乾燥重量で15%の焙煎グラインドコーヒーおよび乾燥重量当量で85%の可溶性コーヒーを含み、密度は220g/lである。試料Dと同一の3つの条件を評価した。
【0177】
【表13】
【0178】
上のデータからわかる通り、焙煎グラインドコーヒーを含めると、純粋な可溶性コーヒー製品と比較して、最終製品の顕著な褐色化が実現する。
【0179】
凍結乾燥した製品は、ステップ23でグラインドして粒径を0.3から3.5mm、好ましくは0.3から2.5mm、より好ましくは0.3から1.5mmにする場合、焙煎グラインドコーヒーをより彷彿させることもわかった。
【0180】
上記の粉砕およびブレンドしたコーヒー製品もしくは上記の可溶性コーヒー製品または上記の凍結乾燥可溶性コーヒー製品は、販売用に、図9に示したような広口瓶101などの容器に入れてもよい。あるいは、粉砕およびブレンドしたコーヒー製品または可溶性コーヒー製品または凍結乾燥可溶性コーヒー製品は、飲料調製機において使用するのに好適な容器の中に入れてもよい。たとえば、図10は、図11に示した飲料調製機103の中で使用することができるカートリッジ102の形態の好適な容器を示す。
【0181】
製品は、1つまたは複数の追加の飲料成分、たとえば天然甘味料もしくは人工甘味料、乳製品ベースのクリーマーもしくは非乳製品ベースのクリーマー、乳糖、植物性脂肪、乳清タンパク質、乳化剤、安定剤、加工デンプン、担体、増量剤、香味剤、着色剤、栄養素、保存料、流動剤または起泡剤などを含有してもよい。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5a
図5b
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15