(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
飲用水は不足してきている。水が豊富な国々でも、すべての水源および貯水池が飲用水の生産に好適なわけではなく、今日の水源の多くは、水質の劇的な劣化に脅かされている。飲用目的に使用する供給水は当初、主に地表水および地下水であった。しかし、海水、塩水、汽水、廃水および汚染流出水の処理は、環境上および経済上の理由でさらに重要性を増している。
【0003】
飲用用途として海水または汽水から水を回収するために、乾燥地域、海岸領域および海島にとってかなり重要である複数の方法が公知であり、このような方法には、蒸留、電解ならびに浸透または逆浸透方法が含まれる。このような方法によって得られる水は、pH緩衝塩が不足しているために、非常に軟く、低いpH値を有し、このため反応性が高い傾向があり、処理しなければ従来のパイプラインで輸送する間に重大な腐食に関する問題を生じるおそれがある。この他に、未処理脱塩水は、飲用水源としては直接使用できない。望ましくない物質のパイプラインシステム内での溶解を防止するために、水道、例えば管および弁の腐食を回避するために、ならびに水の口当たりを良くするために、水に無機物を再添加することが必要である。
【0004】
水の再ミネラル化に主に使用される従来の方法は、二酸化炭素の石灰溶解および石灰石床濾過である。他のより一般的でない再ミネラル化方法には、例えば水和石灰および炭酸ナトリウムの添加、硫酸カルシウムおよび重炭酸ナトリウムの添加、または塩化カルシウムおよび重炭酸ナトリウムの添加が含まれる。
【0005】
石灰方法は、CO
2の酸性化水による処理を包含し、以下の反応が関与している:
【0006】
【化1】
【0007】
上の反応スキームから推測されるように、再ミネラル化のために1当量のCa(OH)
2をCa
2+および重炭酸塩に変換するには、2当量のCO
2が必要である。この方式は、塩基性アニオン水酸化物を緩衝重炭酸塩種に変換するために、2当量のCO
2の添加に依存している。水の再ミネラル化では、総重量に基づいて0.1−0.2重量%の、一般に石灰水と呼ばれる水酸化カルシウム飽和溶液を、石灰乳(通常、最大限で5重量%)より調製する。したがって、石灰水を生成するための飽和器を使用しなければならず、再ミネラル化の目標レベルを達成するために大量の石灰水が必要である。この方式のさらなる欠点は、消石灰が腐食性であるため、適切な取扱いや特別の装置を必要とすることである。この他に、消石灰の軟水への添加が十分に制御されていないと、石灰の緩衝特性が存在しないために、望ましくないpH変化が引き起こされることがある。
【0008】
石灰床濾過の方法は、軟水を粒状石灰石床に通過させて炭酸カルシウムを水流に溶解させる工程を含む。石灰石にCO
2の酸性化水を接触させることによって:
【0009】
【化2】
に従って、水がミネラル化される。
【0010】
石灰による方法とは異なり、再ミネラル化のために1当量のCaCO
3をCa
2+および重炭酸塩に変換するには、1当量のみのCO
2が化学量論的に必要である。その上、石灰石は腐食性ではなく、CaCO
3の緩衝特性のために、pHの大きな変化は防止される。
【0011】
石灰の代わりに炭酸カルシウムを使用するもう1つの別の利益は、炭酸カルシウムの二酸化炭素のフットプリントが非常に低いことである。炭酸カルシウム1トンを生産するためにはCO
2 75kgが放出されるのに対して、石灰1トンの生産にはCO
2 750kgが放出される。したがって、石灰の代わりに炭酸カルシウムを使用することによって、環境上の利益がある。
【0012】
しかし、粒状炭酸カルシウムの溶解速度は低く、石灰石濾過工程には大型のフィルターが必要である。このことによりこのフィルターにはかなり大きな設置面積が生じ、このような石灰石床濾過システムには大きなプラント表面積が必要とされる。
【0013】
石灰乳または石灰のスラリを使用する水の再ミネラル化は、US7,374,694およびEP0520826に記載されている。US5,914,046は、パルス化石灰石床を使用する流出水量中の酸性度を低下させる方式について記載している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の別の態様により、水の再ミネラル化のための微粒子化炭酸カルシウムの使用が提供される。
【0022】
本発明の好都合な実施形態は、相当する従属請求項で規定されている。
【0023】
一実施形態により、スラリ中の炭酸カルシウムの濃度は、スラリの総重量に基づいて0.05から40重量%、1から25重量%、2から20重量%、好ましくは3から15重量%および最も好ましくは5から10重量%であり、またはスラリ中の炭酸カルシウムの濃度は、スラリの総重量に基づいて10から40重量%、15から30重量%もしくは20から25重量%である。別の実施形態により、炭酸カルシウムは、0.1から100μmの、0.5から50μmの、1から15μmの、好ましくは2から10μmの、最も好ましくは3から5μmの粒径を有する。また別の実施形態により、炭酸カルシウムは、微粒子化炭酸カルシウムの総重量に基づいて、0.02から2.5重量%の、0.05から1.5重量%のまたは0.1から0.6重量%のHCl不溶分含有量を有する。また別の実施形態により、炭酸カルシウムは、粉砕炭酸カルシウム、修飾炭酸カルシウムもしくは沈降炭酸カルシウムまたはこれらの混合物である。炭酸カルシウムは大理石、石灰石およびチョークの主構成要素であることが注目される。方解石は、無機炭酸塩であり、炭酸カルシウムの最も安定な多形体である。炭酸カルシウムの他の多形体は、無機物の霰石およびバテライトである。霰石は380−470℃にて方解石に変化し、バテライトはさらに安定性が低い。一実施形態により、スラリは、マグネシウム、カリウムまたはナトリウムを含有する無機物、好ましくは炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムマグネシウム、例えばドロマイト質石灰石、石灰質ドロマイト、ドロマイトまたは半焼成ドロマイト;焼成ドロマイトなどの酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、炭酸水素カリウムまたは炭酸水素ナトリウムをさらに含む。別の実施形態により、スラリは、水と炭酸カルシウムを混合することによって新たに調製される。また別の実施形態により、スラリの調製とスラリの注入との間の期間は、48時間未満、24時間未満、12時間未満、5時間未満、2時間未満または1時間未満である。また別の実施形態により、注入されたスラリは、飲用水の国内ガイドラインによって規定された微生物学的品質要求事項を満たすものである。
【0024】
一実施形態により、得られた再ミネラル化水は、15から200mg/lの、好ましくは50から150mg/lのおよび最も好ましくは100から125mg/lの、または15から100mg/lの、好ましくは20から80mg/lのおよび最も好ましくは40から60mg/lの、炭酸カルシウムとしてのカルシウム濃度を有する。別の実施形態により、得られた再ミネラル化水は、5から25mg/lの、好ましくは5から15mg/lのおよび最も好ましくは8から12mg/lのマグネシウム濃度を有する。また別の実施形態により、再ミネラル化水は、5.0NTUより低い、1.0NTUより低い、0.5NTUより低いまたは0.3NTUより低い濁度値を有する。また別の実施形態により、再ミネラル化水は、−1から2の、好ましくは−0.5から0.5の、最も好ましくは−0.2から0.2のランゲリア飽和指数を有する。また別の実施形態により、再ミネラル化水は、5以下の、好ましくは4以下のおよび最も好ましくは3以下のシルト密度指数SDI
15を有する。また別の実施形態により、再ミネラル化水は、4以下の、好ましくは2.5以下の、最も好ましくは2以下の膜ファウリング指数MFI
0.45を有する。
【0025】
一実施形態により、供給水は、脱塩された海水、汽水もしくは塩水、処理済み廃水または地下水、地表水もしくは降雨などの天然水である。
【0026】
一実施形態により、二酸化炭素が第1の工程で注入され、続いてスラリが第2の工程で注入されるか、またはスラリが第1の工程で注入され、続いて二酸化炭素が第2の工程で注入されるか、または二酸化炭素およびスラリが同時に注入される。別の実施形態により、二酸化炭素は、スラリの調製に使用される水に注入される。
【0027】
一実施形態により、再ミネラル化水は、供給水とブレンドされる。別の実施形態により、方法は粒子除去工程をさらに含む。
【0028】
一実施形態により、方法は、(c)再ミネラル化水のアルカリ度、伝導率、総硬度、カルシウム濃度、pH、CO
2濃度、総溶解固形分および濁度を含む群より選択される、再ミネラル化水のパラメータ値を測定する工程、(d)測定したパラメータ値を所定のパラメータ値と比較する工程および(e)測定したパラメータ値と所定のパラメータ値との間の差に基づいて注入した二酸化炭素および/またはスラリの量を提供する工程をさらに含む。別の実施形態により、所定のパラメータ値はpH値であって、pH値は5.5から9、好ましくは7から8.5である。
【0029】
一実施形態により、微粒子化炭酸カルシウムは水の再ミネラル化に使用され、再ミネラル化水は、飲用水、水泳用プールの水などのレクリエーション用水、加工用途のための工業用水、灌漑水または帯水層もしくは井戸灌養のための水より選択される。
【0030】
「アルカリ度(TAC)」という用語は、本発明で使用する場合、溶液が酸を炭酸塩または重炭酸塩の当量点まで中和する能力の尺度である。アルカリ度は、溶解した塩基の化学量論的和に等しく、CaCO
3としてmg/lで規定される。アルカリ度は滴定装置によって測定することができる。
【0031】
本発明の目的のために、「カルシウム濃度」という用語は、溶液中の総カルシウム含有量を指し、Ca
2+またはCaCO
3としてmg/lで規定される。カルシウム濃度は滴定装置によって測定することができる。
【0032】
「伝導率」は、本発明の意味では、測定した水が塩、イオンまたは不純物をどれだけ含まないかという指標として使用される;水が純粋であるほど、伝導率はより低くなる。伝導率は、伝導率計によって測定することができ、μS/cmで規定される。
【0033】
「粉砕炭酸カルシウム(GCC)」は、本発明の意味では、大理石、チョークまたは石灰石を含む天然源から得られた炭酸カルシウムであり、湿式および/または乾式による、例えばサイクロンによる粉砕、ふるい分けおよび/または分画などの処理によって加工される。粉砕炭酸カルシウムがドロマイト質方解石の場合のように、定義されたマグネシウム濃度を本来含有できることは、当業者に公知である。
【0034】
「ランゲリア飽和指数(LSI)」という用語は、本発明で使用する場合、水性液体がスケール形成性である傾向、または腐食性である傾向を表し、正のLSIはスケール形成性傾向を示し、負のLSIは腐食性の特性を示す。従って平衡したランゲリア飽和指数、即ちLSI=0は、水性液体が化学的平衡にあることを意味する。LSIは以下のように計算する:
LSI=pH−pH
s
式中、pHは、水性液体の実際のpH値であり、pH
sは、CaCO
3飽和の水性液体のpH値である。pH
sは、以下のように概算できる:
pH
s=(9.3+A+B)−(C+D)
式中、Aは水性液体中に存在する総溶解固形分(TDS)の数値指標であり、Bは水性液体の温度の数値指標(K)であり、Cは水性液体のカルシウム濃度の数値指標(CaCO
3のmg/l)およびDは水性液体中のアルカリ度の数値指標(CaCO
3のmg/l)である。パラメータAからDは、以下の等式を使用して決定される:
A=(log
10(TDS)−1)/10
B=−13.12×log
10(T+273)+34.55
C=log
10[Ca
2+]−0.4
D=log
10(TAC)
式中、TDSは総溶解固形分(mg/l)であり、Tは温度(℃)であり、[Ca
2+]は水性液体のカルシウム濃度(CaCO
3のmg/l)およびTACは水性液体のアルカリ度(CaCO
3のmg/l)である。
【0035】
「シルト密度指数(SDI)」という用語は、本発明で使用する場合、水中の微粒子状物質の量を指し、逆浸透またはナノ濾過システムのファウリング傾向と相関している。SDIは例えば、水を208.6kPaの一定の印加水圧にて通過させるときの、0.45μm膜フィルタの目詰まり率から計算できる。SDI
15値は、水を208.6kPaの一定の印加水圧にて15分間通過させるときの、0.45μm膜フィルタの目詰まり率から計算される。通例、スパイラル型逆浸透は5未満のSDIを必要とし、中空繊維逆浸透システムは3未満のSDIを必要とする。
【0036】
「修正ファウリング指数(MFI)」という用語は、本発明で使用する場合、懸濁物質の濃度を指し、水の逆浸透またはナノ濾過膜を目詰まりさせる傾向を予測するための、SDIよりも正確な指数である。MFIを決定するために使用できる方式は、15分の濾過期間にわたって30秒ごとに体積を記録することを除いて、SDIの場合と同じであり得る。MFIは、t/VをVに対してプロットするときに(tは、体積V(リットル)を収集するための時間(秒)である。)、曲線の直線部の傾きとして、グラフを使って得ることができる。1未満のMFI値は約3未満のSDI値に相当し、コロイド状および微粒子状ファウリングを制御するのに十分な低さであると見なすことができる。
【0037】
限外濾過(UF)膜をMFI測定に使用する場合、指数は、0.45μm膜フィルタを使用する場合のMFI
0.45と対比して、MFI−UFと呼ばれる。
【0038】
本発明の目的では、「微粒子化された」という用語は、マイクロメートル範囲の粒径、例えば0.1から100μmの粒径を指す。微粒子化粒子は、摩擦に基づく技法、例えば湿式または乾式条件下のどちらかでの製粉または粉砕でもよい。しかし、他のいずれかの好適な方式、例えば沈降、超臨界溶液の急速膨張、スプレードライ、天然起源の砂または泥の分級または分画、水の濾過、ゾル−ゲル方法、スプレー反応合成、火炎合成または液体泡合成によって、微粒子化粒子を生産することも可能である
【0039】
本文書を通して、炭酸カルシウム生成物の「粒径」は、粒径の分布によって示される。値d
xは、粒子のx重量%の直径がd
x未満である直径を表す。このことは、d
20という値はすべての粒子の20重量%がこの値より小さい粒径であること、およびd
75という値はすべての粒子の75重量%がこの値より小さい粒径であることを意味する。このためd
50という値は、重量中央粒径であり、即ちすべての粒の50重量%がこの粒径よりも大きいまたは小さい。本発明の目的では、粒径は別途指摘しない限り、重量中央粒径d
50として規定される。0.5μmを超えるd
50を有する粒子の重量中央粒径d
50値を決定するためには、マイクロメリティックス社、米国によるセディグラフ5100装置を使用できる。
【0040】
「沈降炭酸カルシウム(PCC)」は、本発明の意味では、水性環境における二酸化炭素と石灰との反応後の沈降によって、または水中でのカルシウムおよび炭酸塩源の沈降によって、または溶液からのカルシウムおよび炭酸イオン、例えばCaCl
2およびNa
2CO
3の沈降によって一般に得られる、合成物質である。
【0041】
「再ミネラル化」という用語は、本発明で使用する場合、口当たりの良い水を得るために、無機物を全くまたは十分な量で含有していない水へ無機物を回復させることを指す。再ミネラル化は、少なくとも炭酸カルシウムを処理される水に添加することによって達成できる。場合により、例えば健康に関連した利益のために、または一部の必須無機物および微量元素を適切に摂取できるようにするために、さらなる物質を炭酸カルシウムに混合して、次に再ミネラル化方法の間に水に添加してもよい。ヒトの健康および飲用水の品質に関する国内ガイドラインに従って、再ミネラル化生成物は、マグネシウム、カリウムまたはナトリウムを含有する別の無機物、例えば炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウムまたは必須微量元素を含有する他の無機物を含んでもいてもよい。
【0042】
本発明の目的のために、「スラリ」は、不溶性固形分および水ならびに場合によりさらなる添加剤を含み、通常、大量の固形分を含有し、このためスラリが形成された液体よりも粘性であり、一般に高密度である。
【0043】
「総溶解固形分(TDS)」という用語は、本発明で使用する場合、液体中に含まれる、分子、イオン化または微粒子状(コロイド状ゾル)懸濁形の無機物質および有機物質すべてを合せた含有量の尺度である。一般に、操作上の定義は、固形分は2マイクロメートルのふるいによる濾過の後に十分に残存するほど小さくなければならないということである。総溶解固形分は、伝導率計によって評価することができ、mg/lで規定される。
【0044】
「濁度」は、本発明の意味では、一般に裸眼では見えない個々の粒子(懸濁固形分)によって引き起こされる、流体の曇りまたは濁りを示す。濁度の測定は、水質の主要な試験であり、比濁計を用いて行うことができる。本発明で使用するような較正済み比濁計による濁度の単位は、比濁計濁度単位(NTU)として規定される。
【0045】
本発明の水の再ミネラル化方法は、(a)供給水を提供する工程、ならびに(b)ガス状二酸化炭素およびスラリを供給水に注入する工程であって、スラリは微粒子化炭酸カルシウムを含む工程を含む。
【0046】
本発明の方法で使用される供給水は、各種の供給源から得られる。本発明の方法によって処理される供給水は好ましくは、脱塩された海水、汽水もしくは塩水、処理済み廃水または地下水、地表水もしくは降雨などの天然水である。
【0047】
本発明の一実施形態により、供給水を前処理することができる。前処理は、例えば供給水が地表水、地下水または雨水から得られるときには必要である場合がある。例えば飲用水ガイドラインを達成するには、例えば有機物または好ましくない無機物などの汚染物質を除去するために、化学的または物理的技法を使用して水を処理する必要がある。例えばオゾン処理を第1の前処理工程として使用して、第2の処理工程としての凝固、凝集またはデカンテーションを続けることができる。例えばFeClSO
4もしくはFeCl
3などの鉄(III)塩、またはAlCl
3、Al
2(SO
4)
3もしくはポリアルミニウムなどのアルミニウム塩は、凝集剤として使用することができる。凝集した物質は、例えばサンドフィルターまたは多層フィルターによって供給水から除去することができる。供給水を前処理するために使用することができるさらなる水の精製方法は、例えばEP1975310、EP1982759、EP1974807またはEP1974806に記載されている。
【0048】
本発明の別の例示的な実施形態により、海水または汽水は、最初に外洋採取または井戸などの地下採取によって海からポンプでくみ上げられ、次にふるい、沈降分離または砂除去処理などの物理的前処理を受ける。必要とされる水質に応じて膜上の潜在的なファウリングを減少させるために、凝固および凝集などの追加の処理工程が必要になる場合がある。前処理済みの海水または汽水は次に、例えば多段フラッシュ、多重効用蒸留または限外濾過もしくは逆浸透などの膜濾過を用いて蒸留されて、微粒子および溶解物質が除去され得る。
【0049】
本発明の方法の工程(b)により、ガス状二酸化炭素および微粒子化炭酸カルシウムを含むスラリが供給水中に注入される。一実施形態により、第1の工程で二酸化炭素が注入され、続いて第2の工程でスラリが注入される。代わりの実施形態により、第1の工程でスラリが注入され、第2の工程で二酸化炭素が注入される。しかし、二酸化炭素およびスラリを同時に注入することも可能である。好ましくは、第1の工程で二酸化炭素が注入され、続いて第2の工程でスラリが注入される。いずれの理論にも縛られるものではないが、最初に二酸化炭素を注入することにより反応が加速されると考えられる。
【0050】
ガス状二酸化炭素は貯蔵タンクから取得することができ、貯蔵タンク内でガス状二酸化炭素は液相中に保持されている。二酸化炭素の消費速度および環境に応じて、極低温タンクまたは従来の断熱タンクのどちらかを使用することができる。液体二酸化炭素は、空気加熱気化器または電気もしくは蒸気ベース気化システムを用いてガス状二酸化炭素に変換することができる。必要ならば、例えば圧力降下弁を使用することによって、注入前にガス状二酸化炭素の圧力を低下させることができる。
【0051】
ガス状二酸化炭素を制御速度にて供給水流中に注入し、水流中で二酸化炭素気泡の分散体を形成して、水流中に気泡を溶解させることができる。例えば二酸化炭素の供給水への溶解は、透過物/蒸留物における開始CO
2濃度、最終目標pH値(過剰のCO
2)および最終目標カルシウム濃度(添加されたCaCO
3)によって、40−60mg/lの流速にて供給水流を提供することによって促進することができる。例示的な実施形態により、二酸化炭素は、供給水流中の乱流領域に導入され、乱流領域では、例えばパイプラインにおける制限によって乱流を生成することができる。例えば二酸化炭素は、パイプライン内に配置されたベンチュリの喉部に導入することができる。ベンチュリの喉部におけるパイプラインの断面積の狭窄によって、乱流エネルギーが発生して、二酸化炭素を比較的小さい気泡に分裂させて、このことによって二酸化炭素の溶解が促進される。一実施形態により、二酸化炭素は圧力下で水流中に導入される。本発明の別の実施形態により、二酸化炭素の供給水への溶解はスタティックミキサによって促進される。
【0052】
流量制御弁または他の手段を用いて、二酸化炭素の水流中への流速を制御することができる。例えばCO
2分注ブロックおよびCO
2ライン内測定装置を使用して、CO
2の流速を制御することができる。本発明の1つの例示的な実施形態により、CO
2は、CO
2分注ユニット、スタティックミキサおよびライン内CO
2測定装置を備えた複合ユニットを使用して注入される。
【0053】
二酸化炭素は、炭酸を形成することによって供給水を酸性化する。供給水中に注入される二酸化炭素の量は、供給水中にすでに存在している二酸化炭素の量によって変わるであろう。供給水中にすでに存在している二酸化炭素の量は次に、供給水の上流の処理によって変わるであろう。例えばフラッシュ蒸発によって脱塩された供給水は、逆浸透によって脱塩された供給水とは含有する二酸化炭素の量が異なるであろうし、このためpHが異なる。例えば逆浸透によって脱塩された供給水は、約5.3のpHを有する場合があり、低濃度の、例えば2−5mg/lのCO
2を有することができる。
【0054】
供給水の再ミネラル化は、微粒子化炭酸カルシウムを含むスラリを供給水中に注入することによって誘発される。
【0055】
供給水中に注入されるスラリは、微粒子化炭酸カルシウムを含む。一実施形態により、スラリ中の炭酸カルシウムの濃度は、スラリの総重量に基づいて0.05から40重量%、1から25重量%、2から20重量%、3から15重量%または5から10重量%である。別の実施形態により、スラリ中の炭酸カルシウムの濃度は、スラリの総重量に基づいて10から40重量%、15から30重量%または20から25重量%である。
【0056】
微粒子化炭酸カルシウムは、マイクロメートル範囲の粒径を有する。一実施形態により、微粒子化カルシウムは、0.1から100μmの、0.5から50μmの、1から15μmの、2から10μmのまたは3から5μmの粒径を有する。
【0057】
好適な炭酸カルシウムの例は、粉砕炭酸カルシウム、修飾炭酸カルシウムもしくは沈降炭酸カルシウムまたはこれらの混合物である。天然粉砕炭酸カルシウム(GCC)は、例えば大理石、石灰石、チョークおよび/またはドロマイトの1つ以上を特徴とする。沈降炭酸カルシウム(PCC)は、例えば霰石、バテライトおよび/または方解石鉱物結晶形の1つ以上を特徴とする。霰石は普通、針状形であるのに対して、バテライトは六方晶系に属する。方解石は、偏三角面、斜方晶、球状および斜方六面形を形成することができる。修飾炭酸カルシウムは、表面および/または内部構造修飾を持つ天然粉砕または沈降炭酸カルシウムを特徴とし、例えば炭酸カルシウムは、例えば脂肪族カルボン酸またはシロキサンなどの疎水性表面処理剤によって処理または被覆することができる。炭酸カルシウムは、例えばポリアクリレートまたはポリダドマックによって、カチオン性またはアニオン性となるように処理または被覆することができる。
【0058】
本発明の一実施形態により、微粒子化炭酸カルシウムは粉砕炭酸カルシウム(GCC)である。好ましい実施形態により、微粒子化炭酸カルシウムは、3から5μmの粒径を有する粉砕炭酸カルシウムである。
【0059】
本発明の別の実施形態により、微粒子化炭酸カルシウムは、微粒子化炭酸カルシウムの総重量に基づいて、0.02から2.5重量%の、0.05から1.5重量%のまたは0.1から0.6重量%のHCl不溶分含有量を含む。好ましくは、微粒子化炭酸カルシウムのHCl不溶分含有量は、微粒子化炭酸カルシウムの総重量に基づいて0.6重量%を超えない。HCl不溶分含有物は、例えば石英、シリケートまたは雲母などの無機物でもよい。
【0060】
微粒子化炭酸カルシウムに加えて、スラリは微粒子化無機物をさらに含むことができる。一実施形態により、スラリは、微粒子化炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムマグネシウム、例えばドロマイト質石灰石、石灰質ドロマイト、ドロマイトまたは半焼成ドロマイト;焼成ドロマイトなどの酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウムまたは必須微量元素を含有する他の無機物を含むことができる。
【0061】
本発明の一実施形態により、スラリは、水および微粒子化炭酸カルシウムを混合することによって新たに調製される。事前混合されたスラリは、安定剤または殺生物剤などのさらなる薬剤の添加を必要とし得るため、スラリの現場調製が好ましい。これらの薬剤は再ミネラル水では望ましくない化合物であり得るからである。本発明の好ましい実施形態により、スラリの調製とスラリの注入との間の期間は、スラリ中での細菌増殖を回避するのに十分な短さである。1つの例示的な実施形態により、スラリの調製とスラリの注入との間の期間は、48時間未満、24時間未満、12時間未満、5時間未満、2時間未満または1時間未満である。本発明の別の実施形態により、注入されたスラリは、飲用水の国内ガイドラインによって規定された微生物学的品質要求事項を満たすものである。
【0062】
スラリは、例えば希薄なスラリには機械式スターラ、またはより高濃度のスラリには特定の粉末液体混合装置などのミキサを使用して調製することができる。調製されるスラリの濃度に応じて、混合時間は、0.5から30分、1から20分、2から10分または3から5分でもよい。本発明の一実施形態により、スラリは混合機を使用して調製され、混合機によってスラリの同時混合および分注が可能となる。
【0063】
スラリを調製するために使用する水は、例えば蒸留水、供給水または工業用水である。本発明の好ましい実施形態により、スラリを調製するために使用する水は、供給水、例えば脱塩処理から得た透過物または蒸留物である。本発明の例示的な実施形態により、スラリを調製するために使用する水は、二酸化炭素によって酸性化される。いずれの理論にも縛られるものではないが、スラリを調製するために使用する水のこのようなCO
2前処理によっては、水への炭酸カルシウムの溶解が増加して、このため反応時間が短縮される。
【0064】
一実施形態により、微粒子化炭酸カルシウムを含むスラリは、供給水流中に直接注入される。例えば、スラリ用の貯蔵容器と連通したポンプによって、スラリを供給水流中に制御速度にて注入することができる。好ましくは、スラリは、スラリ濃度に応じて1から10リットル/立方メートル供給水の速度にて供給水流中に注入することができる。別の実施形態により、微粒子化炭酸カルシウムを含むスラリは、例えば機械式スターラなどのミキサを使用して、反応チャンバ内で供給水と混合される。また別の実施形態により、スラリは、供給水流全体を収容するタンクに注入される。
【0065】
本発明の一実施形態により、供給水の一部のみがスラリの注入によって再ミネラル化され、続いて再ミネラル化水が未処理供給水とブレンドされる。場合により、供給水の一部のみが最終目標値と比較して高い炭酸カルシウム濃度まで再ミネラル化され、続いて再ミネラル化水が未処理供給水とブレンドされる。
【0066】
別の実施形態により、処理水または処理水の一部は、再ミネラル化水の濁度レベルをさらに低下させるために、例えば限外濾過によって濾過される。
【0067】
本発明の一実施形態により、スラリは、炭酸カルシウムの完全溶解が達成される量で注入される。例えばCO
2および炭酸カルシウムを含むスラリの注入は、1当量のCO
2に対して1当量の炭酸カルシウムが供給水中に添加される方式で調整されるか、または定義されたpHに達するように、CO
2を定義された過剰量で注入することができる。一実施形態により、本発明の方法は、CO
2酸性化供給水の再ミネラル化および中和が同時に達成されるような方式で行われる。
【0068】
必要ならば、過剰な二酸化炭素は、ガス・ストリッピング・システムを使用して再ミネラル化水から除去することができる。過剰な二酸化炭素は、本発明の方法で使用するために再生利用することができる。
【0069】
供給水中に注入される二酸化炭素および炭酸カルシウムの量は、水に所望の品質を与えるように選択される。例えば再ミネラル化水の品質は、ランゲリア飽和指数(LSI)によって評価することができる。一実施形態により、再ミネラル化水は、−1から2の、好ましくは−0.5から0.5の、最も好ましくは−0.2から0.2のランゲリア飽和指数を有する。別の実施形態により、再ミネラル化水は、5以下の、好ましくは4以下のおよび最も好ましくは3以下のシルト密度指数SDI
15を有する。また別の実施形態により、再ミネラル化水は、4以下の、好ましくは2.5以下の、最も好ましくは2以下の膜ファウリング指数MFI
0.45を有する。評価は、例えば処理供給水を継続的に測定することによって行うことができる。再ミネラル化システムに応じて、処理pHのpHは、例えば処理水流中で、スラリおよび供給水が混合される反応チャンバ内で、または再ミネラル化水の貯蔵タンク内で測定することができる。本発明の一実施形態により、pHは、再ミネラル化工程の30分後、20分後、10分後、5分後または2分後に測定される。pH値の測定は、室温、即ち約20℃にて行うことができる。
【0070】
本発明の例示的な実施形態により、注入された二酸化炭素および/またはスラリの量は、処理供給水のpH値を検知することによって制御される。またはもしくは加えて、注入された二酸化炭素および/またはスラリの量は、アルカリ度、伝導率、総硬度、カルシウム濃度、CO
2濃度、pH、総溶解固形分または濁度などのパラメータを検知することによって制御される。一実施形態により、本発明の方法は、(c)再ミネラル化水のアルカリ度、伝導率、総硬度、カルシウム濃度、CO
2濃度、pH、総溶解固形分または濁度を含む群より選択される、再ミネラル化水のパラメータ値を測定する工程、(d)測定したパラメータ値を所定のパラメータ値と比較する工程および(e)測定したパラメータ値と所定のパラメータ値との間の差に基づいて注入した二酸化炭素および/またはスラリの量を提供する工程をさらに含む。
【0071】
一実施形態により、所定のパラメータ値はpH値であり、pH値は5.5から9、好ましくは7から8.5である。
【0072】
本発明の方法は、飲用水、水泳用プールの水などのレクリエーション用水、加工用途のための工業用水、灌漑水または帯水層もしくは井戸灌養のための水を生産するために使用することができる。
【0073】
一実施形態により、再ミネラル化水中の二酸化炭素および炭酸カルシウムの濃度は、国内ガイドラインによって規定された飲用水質に必要とされる値を満足している。一実施形態により、本発明の方法によって得られる再ミネラル化水は、CaCO
3として15から200mg/lの、好ましくはCaCO
3として50から150mg/lのおよび最も好ましくはCaCO
3として100から125mg/lの、または15から100mg/lの、好ましくは20から80mg/lのおよび最も好ましくは40から60mg/lのカルシウム濃度を有する。スラリが炭酸マグネシウムまたは硫酸マグネシウムなどのさらなるマグネシウム塩を含む場合、本発明の方法によって得られる再ミネラル化水は、5から25mg/lの、好ましくは5から15mg/lのおよび最も好ましくは8から12mg/lのマグネシウム濃度を有することができる。
【0074】
本発明の一実施形態により、再ミネラル化水は、5.0NTUより低い、1.0NTUより低い、0.5NTUより低いまたは0.3NTUより低い濁度を有する。
【0075】
本発明の例示的な実施形態により、再ミネラル化水は、−0.2から+0.2のLSI、15から200mg/lのカルシウム濃度、5から25mg/lのマグネシウム濃度、CaCO
3として100と200mg/lの間のアルカリ度、7と8.5の間のpHおよび0.5NTUより低い濁度を有する。
【0076】
本発明の一実施形態により、粒子除去の工程は、例えば再ミネラル化水の濁度レベルを低下させるために、再ミネラル化の後に行われる。粒子除去の工程は、例えば供給水または供給水の一部の濁度レベルを低下させるために、二酸化炭素および/またはスラリの注入前に行うことも可能である。一実施形態により、沈降分離工程が行われる。例えば供給水および/または再ミネラル化水は、水の濁度レベルをさらに低下させるために、浄化器または貯蔵タンク内にパイプで給送することができる。別の実施形態により、粒子はデカンテーションによって除去することができる。または、供給水および/または再ミネラル化水の少なくとも一部は、水の濁度レベルをさらに低下させるために、例えば限外濾過によって濾過することができる。
【実施例】
【0077】
以下の実施例は、各種の炭酸塩岩から調製された炭酸カルシウムを多様の濃度で有する、各種のスラリを示す。
【0078】
供給水を逆浸透脱塩方法から得て、約50mg/lのCO
2によって酸性化した。スラリは、適切な量の炭酸カルシウムを供給水100mlと、室温にて磁気スターラを用いて、1000−1500rpmの間の撹拌および3−5分の間の混合時間にて混合することによって調製した。再ミネラル化は、少量のスラリを酸性化供給水約1リットルに添加することによって行い、スラリおよび供給水は、磁気スターラを用いて1000−1500rpmの間の撹拌および2分の混合時間にて混合した。スラリ添加後に毎回、処理供給水から試料を採取し、アルカリ度、濁度、伝導率、pH、温度を制御した。供給水の再ミネラル化の目標として、CaCO
3として125mg/lの最終カルシウム濃度を選択した。各試料について再ミネラル化の濁度を混合後および最低60分の沈降期間の後に直接測定した。沈降した試料で測定された濁度は、再ミネラル化方法における沈降分離の影響を観察するために行った。
【0079】
濁度はハックランゲ2100AN ISラボラトリ濁度計によって測定し、較正は0.1、20、200、1000、4000および7500NTU未満のStabCal濁度標準(ホルマジン標準)を使用して行った。
【0080】
総アルカリ度は、メトラートレドT70滴定装置によって、関連するLabX Light滴定ソフトウェアを使用して測定した。この滴定には、アプリケーションパンフレット37(水分析)の対応するメトラートレド法M415に従って、DGi111−SGpH電極を使用した。pH電極の較正は、pH値4.01、7.00および9.21のメトラートレド標準を使用して行った。
【0081】
[
実施例1]
スラリA
スラリの総重量に基づいた0.5および5重量%の炭酸カルシウム濃度を有する2つのスラリを、3.5μmの粒径および炭酸カルシウムの総重量に基づいた0.2重量%のHCl不溶分含有量を有する大理石の微粒子化炭酸カルシウムから調製した。
【0082】
表1にまとめた結果は、0.5重量%および5重量%のCaCO
3スラリを用いた両方の再ミネラル化方法で同様の濁度値を示している。沈降期間の後、試料は0.5NTUより低い濁度値を示した。
【0083】
[
実施例2]
スラリB
スラリの総重量に基づいた0.5、1および10重量%の炭酸カルシウム濃度を有する3つのスラリを、2.8μmの粒径および炭酸カルシウムの総重量に基づいた1.5重量%のHCl不溶分含有量を有する大理石の微粒子化炭酸カルシウムから調製した。
【0084】
表1にまとめた結果は、3つすべての再ミネラル化方法について同様の濁度を示している。しかし、再ミネラル化の2分後に採取した沈降試料で測定した濁度値は、実施例1の値より高く、このことは大理石の炭酸カルシウムのHCl不溶分含有量の相違によるものであり得る。
【0085】
[
実施例3]
スラリC
スラリの総重量に基づいた5重量%の炭酸カルシウム濃度を有するスラリを、3μmの粒径および炭酸カルシウムの総重量に基づいた0.1重量%のHCl不溶分含有量を有する石灰石の微粒子化炭酸カルシウムから調製した。
【0086】
表1にまとめた結果は、沈降試料で測定した濁度値が実施例1および2の値と比較してはるかに低いことを示し、このことは炭酸塩岩の地質構造の違いによるものであり得る。
【0087】
【表1】
【0088】
[
実施例4]
各種粒径
スラリの総重量に基づいた5重量%の炭酸カルシウム濃度を有する3つのスラリを、3.5、9および20μmの粒径ならびに炭酸カルシウムの総重量に基づいた0.2重量%のHCl不溶分含有量を有する大理石の微粒子化炭酸カルシウムから調製した。
【0089】
表2にまとめた結果は、沈降期間後により大きい粒径、即ち20μmを持つ再ミネラル化水の濁度が、より小さい粒径、即ち3.5μmを持つ再ミネラル化水の濁度と比較して、より低い濁度を有することを示している。
【0090】
【表2】
【0091】
パイロット規模実施例
以下のパイロット規模実施例は、炭酸カルシウムの水性スラリを使用する各種の再ミネラル化実験を示す。このパイロット試験用のすべてのスラリを調製するために使用する微粒子化炭酸カルシウムは、3μmの粒径および炭酸カルシウムの総重量に基づいた0.1重量%のHCl不溶分含有量を有する石灰石である。この石灰石は、実施例3で示したスラリCを調製するために使用した炭酸カルシウムに相当する。微粒子化炭酸カルシウムの水性スラリの固形分含有量は、微粒子化炭酸カルシウムの重量に基づいて0.4−20重量%の間であった。微粒子化炭酸カルシウムスラリを調製するために使用した水性媒体は、逆浸透によって得た水であった。以下では、「逆浸透によって得た水」および「逆浸透またはRO水」という用語は、同意語として使用する。
【0092】
パイロット規模試験では、50または100mg/LのどちらかのCaCO
3を逆浸透(RO)によって得た水に添加した。
【0093】
すべてのパイロット規模試験は、シルバーソン製のフラッシュミックスFM30ミキサ内で常圧にて、過剰量のCO
2を使用して行った。再ミネラル化試験は、バッチモードまたは連続モードのどちらかで行い、どちらも400Lバッファタンクを使用した。微粒子化炭酸カルシウムスラリは、バッチモードの供給弁によって、およびライン内再ミネラル化実験用の蠕動ポンプによって添加した。
【0094】
CO
2の酸性化水中に分注された炭酸カルシウムの溶解を、pH、伝導率および濁度を測定することによって調べた。濁度の低下および伝導率の上昇により、目標水質、例えば1NTU未満の濁度を満足するために、特定の条件、例えば初期RO水質、温度、CO
2過剰にてCaCO
3が完全に溶解するための反応時間を評価することが可能であった。
【0095】
1.
100mg/LのCaCO3の添加および各種のCO2流速によるRO水の再ミネラル化のバッチ試験
微粒子化CaCO
3スラリを使用する再ミネラル化試験は、CO
2分注の作用におけるCaCO
3の溶解を調べるために、最初にバッチモードで行った。この試験は、逆浸透によって得られ、バッファタンクに含有されている水400Lを、閉ループ内のミキサを通じてポンプで給送することによって行った。このバッチ試験では、ポンプおよびフラッシュミックスミキサの前に、4.5バールのCO
2圧にて定義された期間にわたって、CO
2分注を行った。
【0096】
使用した微粒子化炭酸カルシウムスラリは、微粒子化炭酸カルシウムの重量に基づいて20重量%の固形分含有量を有していた。再ミネラル化のために、RO水に100mg/LのCaCO
3を1回、供給弁を通じて添加した。
【0097】
この試験に使用したRO水は、以下のパラメータを有していた:
【0098】
【表3】
【0099】
伝導率、pHおよび濁度を各試験で測定して、指数関数的挙動を濁度低下および伝導率上昇について観察した。したがって、目標濁度を達成するために必要とされる反応時間は、各CO
2分注について概算できた。
【0100】
表3は、微粒子化炭酸カルシウムの重量に基づいて20重量%の固形分含有量を有する微粒子化炭酸カルシウムスラリを使用した、および各種のCO
2流速を使用した、100mg/LのCaCO
3の添加によるRO水の再ミネラル化で得た各種の結果を示す。
【0101】
【表4】
【0102】
表3からわかるように、および予想されたように、CaCO
3の溶解は、実験中に分注された過剰量のCO
2を使用することによって加速させることができる。1NTU未満の濁度は、2、4および8L/分のCO
2の流速それぞれで、およそ90分、60分および40分後に達成することができた。
【0103】
2.
50mg/LのCaCO3の添加および各種のCO2分注時間によるRO水の再ミネラル化のバッチ試験
すべての試験は、上記のパイロット規模試験と同じプロトコルを使用して行った;しかし処理RO水に添加したカルシウム濃度は、100mg/Lの代わりに50mg/Lであった。
【0104】
これらのバッチ試験では、CO
2がシステム中に導入された位置は、前の試験の間と同じ、例えばポンプおよびフラッシュミキサの前であった。CO
2分注を4.5バールにて4L/時の一定流速によって、各種の分注時間で行った。すべての試験は、RO水に添加したCaCO
3の量に対して過剰量のCO
2を使用することによって行った。CO
2分注時間の、即ちこのバッチ試験の間に分注された過剰量のCO
2の、再ミネラル化水の濁度に対する影響を観察した。
【0105】
表4は、微粒子化炭酸カルシウムの重量に基づいて10重量%の固形分含有量を有する微粒子化炭酸カルシウムスラリを使用した、および各種の分注時間で4L/時の一定のCO
2流速を使用した、50mg/LのCaCO
3の添加によるRO水の再ミネラル化で得た各種の結果を示す。
【0106】
【表5】
【0107】
実験番号4では、CO
2をRO水に連続して分注したが、実験番号5および6では、CO
2を実験の最初の10分間または20分間だけ分注した。実験番号7では、CaCO
3を一切添加せずに、RO水をCO
2によって最初に10分間処理した。次に、微粒子化カルシウムスラリを添加して、さらにCO
2を実験のさらに10分間にわたって分注した。
【0108】
実験番号7では、前分注を行っていないときの他の実験番号4から6と比較したときに、CO
2前分注によって、より急速な濁度低下が実験開始時に示されることが観察された。しかしCO
2分注を中止したときに、さらなる改善は観察されなかった。加えて、目標の濁度レベルに達するために必要とされる時間は、すべての実験でCO
2分注と比例していた。最も高速の実験は、CO
2を連続添加した実験番号4であった。最も低速の実験は、CO
2を10分間のみ分注した実験番号5であった。1NTU未満の濁度は、10分、20分および連続CO
2分注でそれぞれ、およそ90分、60分および40分後に達成することができた。
【0109】
3.
50mg/LのCaCO3の添加および各種のCO2流速によるRO水の再ミネラル化の連続再ミネラル化試験
バッチ試験に関して上に記載したのと同じ構成を使用して、2回の再ミネラル化実験を連続モードで行った。
【0110】
実験を連続モードで開始するために、まずRO水400Lの1つのバッチを、微粒子化炭酸カルシウムの重量に基づいて10重量%の固形分含有量を有する微粒子化炭酸カルシウムスラリを使用することによって、50mg/LのCaCO
3で最初に処理した。濁度が1NTU未満の値に達したとき、微粒子化炭酸カルシウムの重量に基づいて0.4重量%の固形分含有量を有する水性微粒子化炭酸カルシウムスラリを蠕動ポンプによって0.15L/分にて添加することによって、連続再ミネラル化方法を開始した。再ミネラル化水は12L/分の流速にて生産された。
【0111】
強調する必要があるのは、連続再ミネラル化実験がpH、伝導率および濁度に関して非常に安定な条件を1時間を超える期間にわたって示したことである。
【0112】
表5は、微粒子化炭酸カルシウムの重量に基づいて0.4重量%固形分含有量を有する微粒子化炭酸カルシウムスラリを使用した、および各種のCO
2流速を使用した、50mg/LのCaCO
3の添加によるRO水の連続再ミネラル化の結果を示す。
【0113】
【表6】