特許第5799135号(P5799135)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5799135
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】画像読取装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/00 20060101AFI20151001BHJP
   H04N 1/04 20060101ALI20151001BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
   H04N1/00 C
   H04N1/04 101
   G06T1/00 420C
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-118375(P2014-118375)
(22)【出願日】2014年6月9日
(62)【分割の表示】特願2012-263698(P2012-263698)の分割
【原出願日】2012年11月30日
(65)【公開番号】特開2014-171262(P2014-171262A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2014年6月9日
(31)【優先権主張番号】特願2012-6602(P2012-6602)
(32)【優先日】2012年1月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】特許業務法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 健志
(72)【発明者】
【氏名】横手 沙織
【審査官】 橋爪 正樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−297993(JP,A)
【文献】 特開2006−211244(JP,A)
【文献】 特開2011−216980(JP,A)
【文献】 特開平10−250150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00− 1/207
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光束を集光して結像させる光学系と、
前記光学系の結像位置に配置された光電変換手段と、
を備えた、画像読取装置であって、
前記光電変換手段に固定される固定部材と、
前記光学系を支持する支持部材と、
前記固定部材及び前記支持部材を接着する接着剤と、を備え、
前記支持部材及び前記固定部材の一方は、突出部を有し、
前記支持部材及び前記固定部材の他方は、凹部を有し、
前記接着剤は、前記光学系の光軸に対して線対称となる位置に存在する前記突出部と前記凹部との間隙のそれぞれに塗布されることを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記一方の部材は、前記固定部材であり、
前記固定部材は、前記光学系の上下方向に広がる第1板状部と、前記第1板状部から突出する前記突出部と、を有し、
前記他方の部材は、前記支持部材であり、
前記支持部材は、前記光学系の上下方向に広がる第2板状部と、前記第2板状部に形成される前記凹部としての周縁部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の画像読取
装置。
【請求項3】
前記一方の部材は、前記固定部材であり、
前記固定部材は、前記光学系の上下方向に広がる第1板状部と、前記第1板状部から突出する前記突出部と、を有し、
前記他方の部材は、前記支持部材であり、
前記支持部材は、前記光学系の上下方向に広がる第2板状部と、前記第2板状部に形成される前記凹部としての切欠部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の画像読取
装置。
【請求項4】
前記一方の部材は、前記支持部材であり、
前記支持部材は、前記光学系の上下方向に広がる第2板状部と、前記第2板状部から突出する前記突出部と、を有し、
前記他方の部材は、前記固定部材であり、
前記固定部材は、前記光学系の上下方向に広がる第1板状部と、前記第1板状部に形成される前記凹部としての周縁部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の画像読取
装置。
【請求項5】
前記一方の部材は、前記支持部材であり、
前記支持部材は、前記光学系の上下方向に広がる第2板状部と、前記第2板状部から突出する前記突出部と、を有し、
前記他方の部材は、前記固定部材であり、
前記固定部材は、前記光学系の上下方向に広がる第1板状部と、前記第1板状部に形成される前記凹部としての切欠部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の画像読取
装置。
【請求項6】
前記固定部材は、前記光学系を通過して前記光電変換手段へと結像される光束以外の光が前記光電変換手段に到達しないように、前記光電変換手段を覆って遮蔽する遮蔽手段を兼ねることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記接着剤が接着する接着箇所は、前記光学系の光軸に対して線対称となる部位であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記固定部材は、ピンが挿入可能な穴を有し、
前記ピンが前記穴に挿入されることで前記光電変換手段が位置決めされることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項9】
前記接着剤は、光硬化接着剤であることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項10】
画像を形成する画像形成部と、
請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の画像読取装置と、
を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿に光を照射する光源と、光源から照射されて原稿の表面で反射された光束を集光して結像させる光学系と、光学系の結像位置に配置された光電変換手段を有する基板部材と、を備え、原稿の画像を読み取る画像読取装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像読み取り装置の光学系であるレンズと光電変換手段であるCCDなどのセンサは、原稿を良好な画質で読みとるために精密な相対位置になるよう調整し、固定を行う必要がある。良好な画質とはピント、倍率が正しく、色収差が少ないような画像をいう。レンズの種類や大きさにもよるが、一般的な縮小光学系のレンズであればミクロンオーダの精度が位置調整に求められる。位置調整後の固定方法としては従来からネジや半田付け固定、接着剤、紫外線(UV)硬化型樹脂での接着などの方法が用いられてきた。
【0003】
ネジ固定に関しては、容易に固定、解放ができる利点があるが、ネジの固定方法の特性上、一定以上の押圧力で固定するため固定される部材が変形したり、ネジを締めるときに部材が連れ回りして動いてしまったりする欠点があり、精度は良くない。半田付けに関しても容易に固定、解放ができるが、半田が冷えて凝固する際の収縮量が数十μmと大きく、半田の量によって収縮量も変わってくるため精度よく安定した固定が難しい。
【0004】
UV以外の接着剤に関しては固定後のやり直しが難しいという欠点はあるものの、硬化時の収縮量が小さい点が利点である。しかし接着剤によっては完全硬化するまで数時間以上かかるものや、レンズ等を曇らせるガスが発生するものなどもあり注意が必要である。また、短い時間で硬化する瞬間接着剤というものがあるが、空気中の水分に触れることで硬化するため硬化する時間にややバラつきがあるのが難点である。
【0005】
UV接着に関しては通常の接着剤と同様に固定後のやり直しが難しだけでなく、UV光が接着剤にきちんと照射されるように接着部材などを透明なものにすることが多く、使用する材料が限定される欠点がある。ただし、硬化時の収縮量は小さいもので体積に対して1〜5%程度であり、他の接着剤同等以下となっており、ミクロンオーダの固定位置を保証するには最適といえる。硬化時間はUV光を照射している数十秒であるし、硬化収縮量も小さく使い勝手が良い。またUV光を照射する時間や接着剤の塗布量を調節することにより硬化収縮量や硬化時間を適切にコントロールできることが大きな利点である。ミクロンオーダーの画像読取装置の光学系と光電変換手段の位置調整及び固定にはUV方式を利用するのが最適であると言える。
【0006】
こうしたUV接着方式で固定する発明として、特許文献1及び2に記載の発明が開示されている。特許文献1に記載の発明は、レンズを保持する保持部材(支持部材)、及び、光電変換手段を有する基板部材の間が中間保持部材で連結される画像読取装置に関する発明である。特許文献2に記載の発明は、レンズを保持する筐体(支持部材)、及び、光電変換手段を有する基板部材の間が中間保持部材で連結される画像読取装置に関する発明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4202988号公報
【特許文献2】特許第4113320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1又は2に記載の発明では、基板部材と支持部材の間を結合する中間部材が余分に必要となってしまう。
【0009】
また、中間部材を光硬化接着剤で接着する場合には、中間部材が透明である必要もあり、材質の選択範囲が制限される。
【0010】
さらに、基板部材と支持部材を接合するときに、基板部材と支持部材の間が接触された上で接着剤によって結合されることから、基板部材と支持部材の間の位置調整をする段階で、基板部材と支持部材の移動が制限されて、位置調整が自在に行えない。
【0011】
本発明は、上記実情に鑑み、高精度な位置調整を前提として結合することができる画像読取装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記実情に鑑み、本発明の画像読取装置は、光束を集光して結像させる光学系と、前記光学系の結像位置に配置された光電変換手段と、を備えた、画像読取装置であって、前記光電変換手段に固定される固定部材と、前記光学系を支持する支持部材と、前記固定部材及び前記支持部材を接着する接着剤と、を備え、前記支持部材及び前記固定部材の一方は、突出部を有し、前記支持部材及び前記固定部材の他方は、凹部を有し、前記接着剤は、前記光学系の光軸に対して線対称となる位置に存在する前記突出部と前記凹部との間隙のそれぞれに塗布されることを特徴とする。
【0013】
また、このような画像読取装置を備える画像形成装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高精度な位置調整を前提として結合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例に係る画像形成装置の構成を示す断面図である。
図2】一体型ユニット(一体型走査光学ユニット)を有する画像読取装置の構成を示す斜視図である。
図3】一体型ユニットの構成を斜め上方から見た斜視図等である。
図4】レンズ及びCCDセンサの配置関係を示す斜視図である。
図5】接着剤が塗布されていない状態における一体型ユニットの構成を示す一部拡大斜視図である。
図6】接着剤が塗布された状態における一体型ユニットの構成を示す一部拡大斜視図である。
図7】接着剤が塗布された状態における一体型ユニットの構成を示す一部拡大斜視図である。
図8】比較例に係る一体型ユニットの構成を示す一部拡大斜視図である。
図9】変形例に係る一体型ユニットの構成を示す一部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0016】
以下、図面を参照してこの発明を実施するための形態を実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対位置等は、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるから、特に特定的な記載が無い限りは、発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0017】
図1は、本発明の実施例に係る画像形成装置500の構成を示す断面図である。画像形成装置500は、電子写真画像形成プロセスを利用した画像形成装置である。図1に示されるように、画像形成装置500は画像形成装置本体(以下、単に『装置本体』という)500Aを有し、この装置本体500Aの内部には、画像を形成する画像形成部Gが設けられる。画像形成部Gは、『像担持体』である感光体ドラム112、『転写装置』である転写ローラ115等を含む。少なくとも感光体ドラム112については、プロセスカートリッジに含まれ、プロセスカートリッジとして装置本体500Aに組み込まれる構成としても良い。
【0018】
装置本体500Aの内部には、シートを収納する収納カセット11、ピックアップローラ85、給送ローラ対84、搬送ローラ対82、レジストローラ対83が設けられる。また、装置本体500Aの内部には、感光体ドラム112、転写ローラ115、帯電ローラ116、露光装置111、現像装置114、定着装置118、排出ローラ対119が配置され、装置本体500Aの外部には、トレイ120が設けられている。また、装置本体500Aの上部には、原稿の画像を読み取る画像読取装置600が配置されている。画像読取装置600は枠体10を有している。枠体10の内部には、光学ユニット1(図2図3等を用いて後述)が配置されている。
【0019】
図2は、一体型走査光学ユニット1(光学ユニット)を有する画像読取装置600の構成を示す斜視図である。図2に示されるように、光学ユニット1は、枠体10の上に設置されたプラテンガラス上に下向きに置かれた原稿をプラテンガラス(不図示)の下側を走査しながら、光電変換手段であるCCDセンサ70(図4参照)により読み取っている。このときに、光学ユニット1が走査する方向を副走査方向Yといい、副走査方向Yに垂直な方向を主走査方向Xという。光学ユニット1は光源としてLED2a、2bを有する。なお、画像読取装置600には、光学ユニット1を副走査方向に移動するモータ12や、光学ユニット1を副走査方向に案内する軸4もある。
【0020】
図3(a)は、光学ユニット1の構成を斜め上方から見た斜視図である。図3(b)は、光学ユニット1の構成を示す斜め下方から見た斜視図である。図3(a)(b)に示されるように、光学ユニット1の筐体3の下部に光学保持部材56が取り付けられ、光学ユニット1の筐体3の側部に固定部材15や基板部材53が取り付けられている。光学ユニット1は、LED2a、2b等の照明ユニットと、複数のミラー(7を含む、図7(b)参照)と、レンズ55(図5参照)と、CCDセンサ70(図4参照)と、を一体化したユニットである。
【0021】
照明ユニットは、原稿に対して主走査方向Xに光を照射するユニットである。複数のミラーは、照射された光が原稿面で反射されると、その反射光を反射しつつ光束の経路を調整してレンズ55へと導いていく。レンズ55は、複数のミラーが反射した反射光のうちの少なくとも一部の光を集光させた光束をCCDセンサ70に結像させる。図3では、光学ユニット1の外形に、CCDセンサ70を有する基板部材53と、レンズ55を支持する光学保持部材56とが表れている。
【0022】
ミラーの本数や位置、反射の角度、光路長などは画像読取装置全体の大きさや、レンズ55の特性によるものや照明の光量などで適切に配置されるべきものである。これは光学ユニット1に限らず、主走査方向Xを読取り、副走査方向Zに走査しながら画像を読み取る方式の画像読取装置であるならば同じである。
【0023】
レンズ55を通った光束はCCDセンサ70の受光面に光束を結像させる。CCDセンサ70は、主走査方向Xに並ぶ光電変換素子であるCCD71(図4参照)を有している。CCDセンサ70の受光面は主走査方向Xに長く、同じく主走査方向Xに原稿を照射する照明と合わせて原稿の主走査方向Xの情報を光の量として受光し、光量を光電変換素子に貯蔵し、光量を電荷量に変化させて画像情報として転送する。こうして原稿の画像を読み取る。
【0024】
このような光電変換素子の入射面には読み取る色情報によってカラーフィルターが塗布されており、鉛直方向にそれぞれ並んでいる。CCDセンサ70の受光面は、使用するレンズ55の焦点バラツキや、保持部材のバラツキ、さらにCCDセンサ70の実装バラツキなどを鑑み、レンズ55の略焦点位置に適切に位置調整される。そして、CCDセンサ70の受光面は、レンズ55が結像させた原稿の反射光をCCDセンサ70の受光面で受光し、光の強弱を電気的信号に変換をする。その後、電気信号となった画像情報はソフト的な画像処理手段を経て、読取画像となる。
【0025】
レンズ55とCCDセンサ70の間隔は、読み取った画像の解像度や、画像の倍率や位置などの画像特性に影響し、その距離は非常に敏感である。そのため、より良好な画像を得るために、レンズ55とCCDセンサ70の間隔を適切に調整するし、その間隔を常に保つことが必須となる。
【0026】
図4は、レンズ55及びCCDセンサ70の配置関係を示す斜視図である。この図4を参照しつつ、レンズ55及びCCDセンサ70の位置の調整に関して以下に説明する。原稿などの画像を読み取る画像読取装置のセンサにはCCD71やCMOS等を用いられている。CCDセンサ70には、鉛直方向で中央となる位置(主走査方向X)に光電変換素子71が並べられている。
【0027】
位置調整の方法としては、レンズ55を固定した状態でCCDセンサ70を動かすことが一般的であるが、レンズ55を動かす方法でもレンズ55とCCDセンサ70の位置調整という意味では変わらない。ただし、レンズ55を動かすと原稿を読み取る面の位置も同時に変化するため、ガラス面上に置いた原稿を読み取る画像読取装置600の位置調整としてはCCDセンサ70を動かすことが合理的である。なお、精度としてはレンズの縮小倍率が大きければ大きいほどX、Y、Zの各方向の調整精度は高く必要になってくる。またZ方向に対してはレンズの縮小倍率の2乗に比例するほど精度が厳しくなってくるため、一番高い精度が求められる方向である。
【0028】
調整の方向としては、X、Y、Z方向とそれぞれの回転方向であるXc、Yc、Zc方向の合計6軸の方向に調整することが必要である。なお、主走査方向とはX方向と同様であり、副走査方向とはY方向と同様である。
【0029】
CCDセンサ70を位置調整する際に確認するものとしては、ピント、色ずれ量、そして幾何的な位置である中心と傾きである。X方向において主走査の中心、Y方向において副走査の中心、Z方向においてはピント及び色ずれ量の位置調整を行うことを意味する。また、Xcは副走査方向に並んだ各色のセンサにおけるピントと色ずれのバランス、Ycは主走査方向端部におけるピントと色ずれのバランス、Zcにおいては読み取る原稿に対する傾きの位置調整を行うことを意味する。
【0030】
その調整精度は1〜10μm程度の精度で調整されるのが望ましい。精度は細かければ細かいほど良いが、1μm以下の精度ではピントや色ずれ量に大きな差は見られないため、合理的な範囲は上述の1〜10μm程度で良い。位置調整方向で一番精度が求められる方向がZとYc方向であり、原稿に対する光軸方向の長さ(焦点距離)を精度よく調整することが必要である。この方向をレンズにおける縦倍率方向という。
【0031】
その他の方向としては、10μm〜30μmの間で調整されても実使用上に大きな問題が出るわけではないが、なるべく細かい調整をすれば精度が良い画像が読み取れることは間違いない。このX、Y、Zcの方向は一般的にレンズにおける横倍率方向という。
【0032】
縦倍率は横倍率に対し、距離の2乗に比例して変化するために縦倍率方向を精度よく動かす必要が生じる。
【0033】
なお、前述の特許文献2の構成では、レンズを調整できる方向は図4におけるZ、Zc方向のみであり、センサを調整できる方向はZ、Zc、Xのみであり、Y方向を調整できるような大きな中間部材ではないばかりか、Xc、Yc方向には調整できない。調整できない方向に関しては、部品の精度である程度位置が決定できることもあるが、その精度は100μm以上になることが予想され、調整が可能である構成に比べ、精度としては落ちることが考えられる。こうしたことからも、本願の実施例は、レンズやセンサを位置調整し、固定するためには、以下のものが良い。すなわち、部品を増やすことなく、あらゆる方向の位置調整を行い、装置が大掛かりになることがなく、位置決め、位置調整、接着剤塗布、UV光照射を行い、かつ高い精度を保ちながら位置調整から固定までを行うことができるというものが最適であると言える。
【0034】
図5は、接着剤が塗布されていない状態における光学ユニット1の構成を示す一部拡大斜視図である。図5に示されるように、光学ユニット1の内部には、『光学系』であるレンズ55、及び、基板部材53を備える。レンズ55は、原稿に光を照射する『光源』であるLED2a、2b(図2参照)から照射されて原稿の表面で反射された光束を集光して結像させる。基板部材53は、レンズ55の結像位置に配置された『光電変換手段』の一部である『光電変換素子』としてのCCD71を有する。
【0035】
基板部材53には固定部材15が固定される。固定部材15は、開口部15bを有し、レンズ55で収束された収束光をCCD71(光電変換素子)へと導き、非収束光(迷光)を遮蔽する部材である。こうして、固定部材15は、原稿で反射した光束が適正な光路を通ってレンズ55を通過して光電変換素子71へと結像される適正な光束以外の光束が光電変換素子71に到達しないように、光電変換素子71を覆って遮蔽する『遮蔽手段』である遮蔽部材を兼ねる。このように固定部材15が適正な光束以外の光束が光電変換素子71に到達しないように遮蔽する遮蔽手段(いわゆる「フード」)を兼ねることで、更に部品の削減が可能となる。
【0036】
この固定部材15には、詳細を後述する接着剤によって光学保持部材56が固定される。光学保持部材56は、レンズ55を支持する(ここでは、レンズ55が光学保持部材56上に載置されている)。レンズ55の前方には、ミラー7(図7(b)参照)が配置される。そして、原稿面で反射された反射光は、レンズ55によりその一部が集光されて固定部材15にある開口部15bを通り、基板部材53に実装されたCCD71へ到達する。以下に、固定部材15及び光学保持部材56を接続する接続構成に関して、以下に詳述する。
【0037】
光学ユニット1は、固定部材15、『支持部材』である光学保持部材56、及び、『光硬化接着剤』であるUV接着剤Qを有する。固定部材15は、基板部材53に固定され、光学保持部材56は、レンズ55を支持する。また、UV接着剤Qは、固定部材15及び光学保持部材56を接着する。
【0038】
固定部材15は、レンズ55の軸線と直交する方向に広がる平面状部15Jを有する。また、固定部材15は、レンズ55の軸線を含んで上下方向に広がる第1板状部15Yを有する。ここでは、第1板状部15Yと平面状部15Jとは、直交している。固定部材15は、第1板状部15Yから屈曲してレンズ55の軸線と直交する方向に突出する屈曲突出部15X1と、第1板状部15Yからレンズ55の軸線と平行な方向に突出する軸線突出部15X2と、を有する。なお、第1板状部15Yと平面状部15Jとは、必ずしも直交していなくとも良く、所定の角度で傾斜していても良い。
【0039】
光学保持部材56は、レンズ55を支持する支持面部56Xを有する。また、光学保持部材56は、レンズ55の軸線を含んで上下方向に広がる第2板状部56Yを有する。ここでは、支持面部56Xと第2板状部56Yとは、直交している。光学保持部材56は、第2板状部56Yに形成されて屈曲突出部15X1に対向する周縁部56R(凹部)と、第2板状部56Yに形成されて軸線突出部15X2に対向する切欠部56W(凹部)と、を有する。なお、支持面部56Xと第2板状部56Yとは、必ずしも直交していなくても良く、所定の角度で傾斜していても良い。
【0040】
第1板状部15Y及び第2板状部56Y、屈曲突出部15X1及び周縁部56R、軸線突出部15X2及び切欠部56Wは、間隙を有するように互いに非接触の状態で交差して配置される。ここで、特に、交差するとは、屈曲突出部15X1が、レンズ55の軸線と直交する方向にて周縁部56Rを超えるような構成をいっている。また、特に、交差するとは、軸線突出部15X2が、レンズ55の軸線と直交する方向にて切欠部56Wを超えるような構成をいっている。また、屈曲突出部15X1が周縁部56Rに向かって突出し、軸線突出部15X2が切欠部56Wに向かって突出するとも表現できる。UV接着剤Qは、屈曲突出部15X1及び周縁部56Rの間隙K1、軸線突出部15X2及び切欠部56Wの間隙K2に塗布、接着、及び、光照射される。なお、屈曲突出部15X1よりも軸線突出部15X2の方が、レンズ55の軸線と直交する方向に突出する。これは、軸線突出部15X2の方が光学保持部材56に結合し難いので結合し易くするためと、液だれを防ぐ意図によるものである。
【0041】
固定部材15が光学保持部材56に固定される場合には、第1板状部15Yの外側に第2板状部56Yが配置される。第1板状部15Yの面及び第2板状部56Yの面は、互いに対向しており、所定の隙間Lが確保されている。固定部材15及び光学保持部材56を接着するUV接着剤Qの接着剤塗布部60は、固定部材15及び光学保持部材56の間に形成される間隙K1、K2におけるいずれかの箇所である(図7参照)。間隙K1、K2は、外方からの光が到達可能な位置に配置される。なお、光学保持部材56及び固定部材15は、互いに異なる材質で形成されても良い。例えば、光学保持部材56は板金で形成され、固定部材15は樹脂で形成される。
【0042】
ここで、レンズ55の位置と光電変換素子71の位置調整の必要性に関して説明する。 一般にレンズ55は複数のレンズで構成されており、それぞれの相対位置によって焦点位置が変化してくる。また、それぞれのレンズ単体の形状の差異や、光学保持部材56の精度によっても、焦点距離や主走査、副走査方向の中心位置または原稿に対する傾きといったパラメータに組立誤差が生じる。
【0043】
レンズ単体での焦点距離や中心、傾きなどの幾何精度、または倍率方向、軸方向の各色収差などの誤差は一般的に数μm〜数十μmのズレとなることがある。またレンズ55を光学保持部材56へ載置させたり、固定部材15を基板部材53に取り付けたりする際の組み付け誤差については数百μmを超えることも多い。そのため、レンズ55の位置と光電変換素子71の位置は前述の各種誤差をキャンセルさせるための位置調整が必須である。つまり位置調整としては移動可能距離が数百μm以上であり調整精度、つまり調整分解能としては数μm程度での調整を行うことが精度良く原稿の情報を読み取るためには必要である。
【0044】
ここでは、位置調整を行う際に治具を用いて上記精度を確保している。調整治具では基板部材53に取り付けられた固定部材15を治具で保持し、レンズに対してX、Y、Z、Yc、Zc方向(図4参照)の調整を行う。ここでXc方向の調整を行わないのは鉛直方向に並んだ各色のセンサの間隔は互いに数μmと狭い間隔で配置されているので、Xc方向の調整を行っても各色のピントと色ずれ量の変化は微小であるためである。
【0045】
調整治具は固定部材15における精度良く出された位置決め基準である穴61において、調整治具と固定部材を位置決めしている。基板に実装されたCCDセンサ70はこの穴61に合わせて精度良く実装されているため調整治具によって固定部材15を保持していてもCCDセンサ70の位置が大きくズレることはない。
【0046】
固定部材15は、図示しないピンが挿入可能な穴62を有する。そのピンが穴62に挿入されることで基板部材53に対して固定され、レンズ55に対して光電変換素子71が位置決めされる。こうした構成では、固定部材15と光学保持部材56との間の位置を調整する調整装置は、固定部材15を基板部材53の基準としてクランプして移動させることで、余計な公差が増えることなく、かつ、簡素な構成で済む。
【0047】
図6は、接着剤が塗布されていない状態における光学保持部材56及び固定部材15の構成を示す一部拡大斜視図である。CCDセンサ70が実装されている『光電変換手段』である基板部材53には固定部材15が取り付けられており、固定部材15には光軸50を挟んで両側に屈曲突出部15X1が互いに光軸の反対側、つまり外側に向けて凸形状を持った状態で構成されている。屈曲突出部15X1と周縁部56Rは、間隙K1や間隙K2の幅が同一幅となるように、対向する部位は、同一形状となっている。また、屈曲突出部15X1は、第2板状部56Yを乗り越えて外方に突出する形状となっている。また、CCDセンサ70がレンズ55に対するいかなる位置に調整されたとしても、第1板状部15Yは、第2板状部56Yとの間が広がり過ぎないような距離になるように隙間Lを維持しつつ配置されている。
【0048】
このときに、光学保持部材56と固定部材15には、物理的に接している部分は無い。前述のように、固定部材15は、5軸方向に自由に動くことが必要である。そのために、どこかに接している部分があると、その方向へは調整不可能となってしまうためである。
【0049】
したがって、光学保持部材56と固定部材15は、レンズ55とCCDセンサ70が各々の単品製造誤差や組立誤差をキャンセルして良好な画像を読み取るために最適な位置に調整されるときには、以下のように配置される。すなわち、光学保持部材56と固定部材15は互いに接触することなく、かつ、第1板状部15Y及び第2板状部56Yは間隙K1、K2、隙間Lが広がり過ぎないように配置される。
【0050】
調整が終わると次に光学保持部材56と固定部材15の固定を行う。この固定方法としては実施例ではUV接着剤Qを用いる。UV接着剤Qを用いる理由としては、以下の複数の優れた利点による。まず、UV接着剤Qは接着剤が固まる際の硬化時間が短い点である。次に、硬化する際はUV光を接着剤に照射するため硬化タイミングがコントロールできる点である。次に、硬化する際の収縮量が小さい種類のものが多く、精度良く位置調整した後に位置がずれる量が非常に小さく抑えることが可能という点である。UV接着剤Qは、矢印の方向(図6参照)から塗布され、UV照射も同様に矢印の方向から行う。
【0051】
図7(a)は、UV接着剤Qが塗布された状態における光学ユニット1の構成を示す一部拡大斜視図である。具体的には、UV接着剤Qは、屈曲突出部15X1と周縁部56Rの間隙K1における2箇所に塗布される。また、UV接着剤Qは、軸線突出部15X2と切欠部56Wの間隙K2の1箇所に塗布される。UV接着剤Qは矢印X方向の片側で3箇所ずつ塗布され、これが矢印X方向の両側で行われるので、合計6箇所に塗布される。なお、例えば、UV接着剤Qは、屈曲突出部15X1に対して塗布されると、UV接着剤Qの粘性により落下して、屈曲突出部15X1の下部にある光学保持部材56の周縁部56Rにも塗布されることとなる。
【0052】
この場合に、固定部材15及び光学保持部材56の間の接着剤塗布部60は、レンズ55の光軸Zの中心に対して線対称となる2つの部位であり、前記2つの部位のいずれでも、少なくとも3箇所が確保される。こうした構成では、固定部材15及び光学保持部材56の間の接着剤塗布部60が、レンズ55の光軸の中心に対して線対称となる2つの部位であることから、UV接着剤Qが硬化するときの収縮方向のバランスが良くなって安定した固定が可能となる。また、いずれの接着処理の接着ポイントも、少なくとも3箇所確保されるので、より安定した固定が可能となる。
【0053】
また、固定部材15が光学保持部材56に対してどのような位置に調整されたとしても最大1mmに満たないので、屈曲突出部15X1は、第1板状部15Y及び第2板状部56Yの間の隙間Lを覆うような程度に矢印X方向に長さが設定されている。すなわち、屈曲突出部15X1は、上方から見た場合(矢印Y方向から見た場合)に、周縁部56Rが視認できない程度の長さに凸形状に設定されている(図6参照)。そのために、固定部材15が光学保持部材56に対してどのような位置に調整されても、UV接着剤Qは、屈曲突出部15X1と周縁部56Rの間隙K1に塗布されたときに、第1板状部15Y及び第2板状部56Yの隙間Lに入り難いようになっている。つまり、UV接着剤Qは、第1板状部15Yと第2板状部56Yの間の隙間Lに入り込み難くなっており、屈曲突出部15X1と周縁部56Rとの間隙K1の方にしか極力塗布されないようになっている。
【0054】
また、UV接着剤Qは、光軸50に対して対称となるように、光学保持部材56及び固定部材15の間に塗布される必要がある。さらに、UV接着剤Qは、3箇所の接着剤塗布部60に塗布されるが、接着後にあらゆる方向からの剥離強度が優位となるからである。特に、側面視で三角形を形成するようにUV接着剤Qによって3箇所が接着されることで、UV接着剤Qの硬化時の収縮において固定部材15が移動する量を光軸方向に対して平行にすることができるという利点もある。ただ、片側2点の接着であっても多点であっても、本発明の効果がなくなるということはもちろんない。
【0055】
図7(b)は、UV接着剤Qが塗布された状態における光学ユニット1の構成を示す一部拡大側面図である。UV接着剤Qは、間隙K1、K2の3箇所の接着剤塗布部60(点線で囲んだ部分)で接着する。UV接着剤Qで接着される前の状態では、屈曲突出部15X1と周縁部56Rの間に所定の間隙K1が設定されているが、これは、固定部材15が光学保持部材56に対して上下方向(矢印Y方向)に移動する許容範囲を確保するためのものである。UV接着剤Qで接着される前の状態では、軸線突出部15X2と切欠部56Wの間に所定の間隙K2が設定されているが、これは、固定部材15が光学保持部材56に対してレンズ55の軸線方向(矢印Z方向)に移動する許容範囲を確保するためと、鉛直方向(矢印方向Y)に移動する許容範囲を確保するためのものである。また、この間隙K1、K2は、UV接着剤Qが双方の接着対象に届かなくて接着ができないといった事態を回避するために、双方の接着対象が大きく離れすぎないように設定すべきである。
【0056】
なお、UV接着剤Qで接着される前の状態では、第1板状部15Yと第2板状部56Yの間に所定の隙間Lが設定されている。これは、固定部材15が光学保持部材56に対してレンズ55の軸線方向と直交する方向(矢印X方向)に移動する許容範囲を確保するためのものである。また、この隙間Lも、第1板状部15Yと第2板状部56Yとが離れすぎないように設定すべきである。
【0057】
前述してきたように、固定部材15が光学保持部材56に対してあらゆる方向に移動されても、精密な位置の調整ができるように、屈曲突出部15X1、周縁部56R、軸線突出部15X2、切欠部56Wの形状が決められ、間隙K1、K2の寸法が設定されている。
【0058】
図8は、比較例に係る一体型ユニットの構成を示す一部拡大斜視図である。図8は、屈曲突出部15X1が無い場合の固定部材15と光学保持部材56の配置関係を示している。屈曲突出部15X1が無い場合には、または、屈曲突出部15X1の長さが短くて第1板状部15Yと第2板状部56Yの間に板面に沿う方向に隙間Lが生じた場合には、固定部材15を位置調整して仮に隙間Lが大きく空いてしまうことが考えられる。この場合には、接着剤が塗布されると、接着剤が第1板状部15Y及び第2板状部56Yの隙間Lに入り込んでしまう。
【0059】
そうなると、矢印方向からUV照射しても、UV光の効果が発揮できるのはUV接着剤Qの表面から1mm程度の厚さの範囲であることから、UV接着剤Qの硬化不良が起こる。そのために、UV接着剤Qが硬化しても、十分な強度が得られない。つまり、硬化するUV接着剤Qの量が一定ではなく、硬化時の収縮方向と収縮量にバラつきが発生する。さらに、隙間の間隔が位置調整によって常に変化するために、UV接着剤Qの塗布後の長さや形がその都度一様ではなくなってしまうため、UV接着剤QのUV照射後の硬化収縮量にバラつきが生じてしまう懸念も発生してしまう。
【0060】
これに対して、図6を参照して前述した技術では、屈曲突出部15X1は第1板状部15Y及び第2板状部56Yの間の板面方向に沿う隙間Lを常に塞げるような長さで構成されている。そのために、第1板状部15Y及び第2板状部56Yの間に広がる隙間に対して、接着剤が入り込むことが抑制される。無駄なUV接着剤Qの量が低減される。
【0061】
また、UV接着剤Qの塗布量、及び、UV光の照射時間等を調整することにより、UV接着剤Qを一定の硬化収縮量で硬化させることができる。固定部材15を位置調整したあとUV接着剤Qの塗布直前に、硬化収縮量分移動させ接着剤硬化後に位置調整した位置とほぼ同等の位置にて硬化させるということも可能になり、製品の安定性に大きく繋がることになる。
【0062】
また従来の技術では部材の隙間に接着剤を塗布する方法が一般的であった。そのため、UV照射側から接着剤を隠してしまう部材、本構成では光学保持部材56の第2板状部56YはUV光が透過するよう略透明である必要があった。また、レンズ55を保持するためにはまた別の精度の良い部材が必要であった。しかし、本件の技術であれば両者の部品は一体化が可能であるためコストダウン及び構成の簡素化による位置調整治具等の構成簡略化も可能である。
【0063】
さらに図で説明した本案件の実施例のひとつの構成であれば、固定部材15は光電変換手段であるCCD71を実装している基板と精度良く取り付けられ、かつ、CCD71に光軸からの光以外の光が入らないように覆っている遮光手段としての機能も持たせてある。
【0064】
これは、固定部材15が樹脂材で構成されるからである。UV接着剤Qで接着する箇所は、実施例では、樹脂材である固定部材15、及び、金属材である光学保持部材56の間隙K1、K2であるが、従来のような隙間にUV接着剤Qを流し込む固定方法では、両者の部材の面と面とを合わせて接着させる接着領域が広くなってしまう。
【0065】
その状態で温度変化が起こると、材質が異なる両者の線膨張率の違いによってUV接着剤には応力がかかって破断する危険性がある。そのために、両者は同じ材質であることが望ましい。本実施例のように接着箇所を小さく、かつ、多い点で接着して固定されると、線膨張率の違いによる破断が極力抑制される。また、多い点で接着して硬化させることは、1箇所に少ないUV接着剤を用いることで、UV接着剤の硬化収縮量が小さくなる利点もある。
【0066】
無論、多点接着でない場合でも、また、屈曲突出部15X1の全体にUV接着剤Qを塗布しても固定部材15と光学保持部材56の線膨張率の差が小さかったり、温度変化が少なかったりすれば何も問題はないし、接着面積が増えるため硬化強度の向上も見込める。
【0067】
実施例の構成によれば、基板部材53に固定される固定部材15と、レンズ55を支持する光学保持部材56の間を結合する場合に、結合するための他の部品を不要としつつ、高精度な位置調整を前提として結合することができる。レンズ55と光電変換素子71の例えば6軸調整を高い精度で行いつつ、中間部材を用いることなくUV接着によって固定する。このことで、レンズ55と光電変換素子71の硬化後の位置ズレを低減でき、ピントずれや色ずれが少ない良好な読取画像を得ることができる。
【0068】
詳しくは、固定部材15は、レンズ55の副走査方向Zと直交する方向に突出する屈曲突出部15X1を有する。この屈曲突出部15X1と光学保持部材56との間に間隙K1が形成されるので、レンズ55と光電変換素子71を6軸調整した後に、光がその間隙K1に照射可能となる。すなわち、その間隙K1は、外方に露出した位置に配置されることになるので、外方から光を照射したときに、光の到達可能な位置にあることになる。そのために、固定部材15及び光学保持部材56として透明の部材が用いられる必要がなく、固定部材15及び光学保持部材56を接合するにあたって中間部材が必要ない。
【0069】
また、基板部材53に取付けられる固定部材15とレンズ55を支持する光学保持部材56との間に一定の間隔が設定されるために、部品の精度によらずに例えば6軸方向の調整が自在に実現される。そのために、CCD71を自由に位置調整して、かつ、少ない部品数で高精度の接着固定をすることが可能であり、高品質の製品を安く製造することができる。
【0070】
なお、実施例で説明した構成に替えて一体型ユニットに以下の構成を採用することも可能である。これに関しては、図9を参照されたい。前述の実施例では、固定部材15に第1板状部15Yが形成される形態であり、光学保持部材56に第2板状部56Yが形成される形態であり、そして、矢印X方向では、第1板状部15Yが第2板状部56Yよりも内側に配置されていた。これに対して、変形例では、固定部材15に第2板状部15Yが形成され、光学保持部材56に第1板状部56Yが形成される形態であり、そして、矢印X方向では、第1板状部56Yが第2板状部15Yよりも内側に配置されている。簡単にいうと、実施例では、固定部材の板状部が内側であったが、変形例では、固定部材の板状部が外側に配置される構成となっている。
【0071】
その他詳細では、固定部材15は、レンズ55の軸線を含んで上下方向に広がる第2板状部15Yと、第2板状部15Yに形成されて屈曲突出部56X1に対向する周縁部15Rと、第2板状部15Yに形成されて軸線突出部56X2に対向する切欠部15Wと、を有する。光学保持部材56は、レンズ55の軸線を含んで上下方向に広がる第1板状部56Yと、第1板状部56Yから屈曲してレンズ55の軸線と直交する方向に突出する屈曲突出部56X1と、第1板状部15Yからレンズ55の軸線に平行な方向に突出する軸線突出部56X2と、を有する。そして、ここからは、実施例で前述したと同様であるが、第1板状部15Y及び第2板状部56Y、屈曲突出部15X1及び周縁部56R、軸線突出部15X2及び切欠部56Wは、所定の間隙K2を有するように互いに非接触の状態に配置される。また、UV接着剤Qは、屈曲突出部15X1及び周縁部56Rの間隙K1、軸線突出部15X2及び切欠部56Wの間隙K1、K2に塗布、接着、及び、光照射される。
【0072】
こうした構成では、固定部材15に突起部15Xが形成されるのではなく、光学保持部材56に突起部が形成される。このように光学保持部材56の突起部が固定部材15から飛び出す構成であっても、同様の効果が得られる。
【0073】
前述してきたように、光学保持部材56または固定部材15の一方は、他方に向かって突出した『突出部』である屈曲突出部や軸方向突出部を有し、光学保持部材56または固定部材15の他方は、『凹部』である周縁部や切欠部を有し、突出部と凹部とは、間隙を有する非接触の状態で交差して配置され、UV接着剤Qは、前記突出部及び前記対向部位の前記間隙に塗布される。
【符号の説明】
【0074】
2a、2b LED(光源)
15 固定部材
15Y 第1板状部
15X1 屈曲突出部(突出部)
15X2 軸線突出部(突出部)
53 基板部材
55 レンズ(光学系)
56 光学保持部材(支持部材)
56Y 第2板状部
56R 周縁部(凹部)
56W 切欠部(凹部)
60 接着剤塗布部
71 光電変換素子(光電変換手段)
600 画像読取装置
K1 間隙
K2 間隙
Q UV接着剤(光硬化樹脂)
Z 副走査方向(軸線方向)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9