(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5799319
(24)【登録日】2015年9月4日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】電子書籍データ処理方法、電子書籍サーバ、クライアント端末、及び電子書籍配信システム
(51)【国際特許分類】
G06F 21/10 20130101AFI20151001BHJP
G09C 1/00 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
G06F21/10
G09C1/00 660D
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-288132(P2012-288132)
(22)【出願日】2012年12月28日
(65)【公開番号】特開2014-130497(P2014-130497A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2013年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】398034168
【氏名又は名称】株式会社アクセル
(74)【代理人】
【識別番号】100106426
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 賢二
(72)【発明者】
【氏名】客野 一樹
【審査官】
木村 励
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−142781(JP,A)
【文献】
特開2010−072916(JP,A)
【文献】
特開2000−022775(JP,A)
【文献】
特開2005−092709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 21/00 − 21/88
G09C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子書籍サーバに格納された電子書籍データをネットワークを介してクライアント端末にダウンロードする際の電子書籍データ処理方法であって、
前記電子書籍サーバは、前記クライアント端末から、所望の電子書籍の配信要求を受けると、前記所望の電子書籍に係る圧縮電子書籍データの一部をバイトデータ単位で書換え、その一部を書き換えられた圧縮電子書籍データと、その書換えを戻す処理である展開用プログラムを、前記ネットワークを介して前記クライアント端末に送信し、
前記クライアント端末のブラウザは、前記電子書籍サーバから、一部を書き換えられた圧縮電子書籍データと、その書換えに対応した展開用プログラムを前記ネットワークを介して受信すると、受信した一部書換え圧縮電子書籍データに対して、受信した展開用プログラムを施すことにより、元の圧縮電子書籍データを復元することを特徴とする電子書籍データ処理方法。
【請求項2】
電子書籍サーバに格納された電子書籍データをネットワークを介してクライアント端末にダウンロードする際の電子書籍データ処理方法であって、
少なくとも1つの書籍に係る電子書籍データを圧縮符号化して前記電子書籍サーバに格納しておき、
前記クライアント端末が、前記電子書籍サーバに対して所望の電子書籍の配信を要求し、
前記電子書籍サーバが、前記所望の電子書籍に係る圧縮電子書籍データの一部をバイトデータ単位で書換え、
前記電子書籍サーバが、その一部を書き換えられた圧縮電子書籍データと、その書換えを戻す処理である展開用プログラムを、前記ネットワークを介して前記クライアント端末に送信し、
前記クライアント端末で動作するブラウザが、受信した一部書換え圧縮電子書籍データに対して、受信した展開用プログラムを施すことにより、元の圧縮電子書籍データを復元し、
前記クライアント端末が、復元した圧縮電子書籍データに対して伸長処理を施して、前記ブラウザにより表示部に表示することを特徴とする電子書籍データ処理方法。
【請求項3】
前記電子書籍サーバは、前記圧縮電子書籍データの一部を書き換えるための書換え手法を複数用意しておき、そのうちの1つを選択して前記圧縮電子書籍データの一部をバイトデータ単位で書き換えることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子書籍データ処理方法。
【請求項4】
前記電子書籍サーバは、前記所望の電子書籍に係る圧縮電子書籍データの属性に応じて、前記複数の書換え手法から1つの書換え手法を選択することを特徴とする請求項3に記載の電子書籍データ処理方法。
【請求項5】
前記電子書籍サーバは、前記クライアント端末から配信要求された時刻に応じて、前記複数の書換え手法から1つの書換え手法を選択することを特徴とする請求項3に記載の電子書籍データ処理方法。
【請求項6】
前記複数の書換え手法は、少なくとも、所定数のバイトデータに対してビット反転処理を施す手法、所定数のバイトデータに対してビットシフトを施す手法、あるバイトデータと他のバイトデータを入れ替える手法、及びあるバイトデータに対してS−boxをかける手法を含むことを特徴とする請求項3に記載の電子書籍データ処理方法。
【請求項7】
電子書籍サーバに格納された電子書籍データをネットワークを介してクライアント端末にダウンロードする際の電子書籍データ処理方法であって、
前記電子書籍サーバは、前記クライアント端末から、所望の電子書籍の配信要求を受けると、前記所望の電子書籍に係る圧縮電子書籍データの一部を書換え、その一部を書き換えられた圧縮電子書籍データを前記ネットワークを介して前記クライアント端末に送信すると共に、その書換えに対応した展開用プログラムを、画像ファイルに偽装して前記クライアント端末に送信し、
前記クライアント端末のブラウザは、前記電子書籍サーバから、一部を書き換えられた圧縮電子書籍データと、その書換えに対応した展開用プログラムを前記ネットワークを介して受信すると、受信した一部書換え圧縮電子書籍データに対して、受信した展開用プログラムを施すことにより、元の圧縮電子書籍データを復元することを特徴とする電子書籍データ処理方法。
【請求項8】
格納した電子書籍データをネットワークを介してクライアント端末にダウンロードするための電子書籍サーバであって、
少なくとも1つの書籍に係る電子書籍データが圧縮符号化されて格納される格納部と、
前記クライアント端末から、所望の電子書籍の配信要求を受けると、前記所望の電子書籍に係る圧縮電子書籍データの一部をバイトデータ単位で書換え、その一部を書き換えられた圧縮電子書籍データと、その書換えを戻す処理である展開用プログラムを、前記ネットワークを介して前記クライアント端末に送信する書換え処理部と、
を備えたことを特徴とする電子書籍サーバ。
【請求項9】
前記書換え処理部は、前記圧縮電子書籍データの一部を書き換えるための書換え手法を複数用意しておき、そのうちの1つを選択して前記圧縮電子書籍データの一部をバイトデータ単位で書き換えることを特徴とする請求項8に記載の電子書籍サーバ。
【請求項10】
前記複数の書換え手法は、少なくとも、所定数のバイトデータに対してビット反転処理を施す手法、所定数のバイトデータに対してビットシフトを施す手法、あるバイトデータと他のバイトデータを入れ替える手法、及びあるバイトデータに対してS−boxをかける手法を含むことを特徴とする請求項9に記載の電子書籍サーバ。
【請求項11】
格納した電子書籍データをネットワークを介してクライアント端末にダウンロードするための電子書籍サーバであって、
少なくとも1つの書籍に係る電子書籍データが圧縮符号化されて格納される格納部と、
前記クライアント端末から、所望の電子書籍の配信要求を受けると、前記所望の電子書籍に係る圧縮電子書籍データの一部を書換え、その一部を書き換えられた圧縮電子書籍データを前記ネットワークを介して前記クライアント端末に送信すると共に、その書換えに対応した展開用プログラムを、画像ファイルに偽装して前記クライアント端末に送信する書換え処理部と、
を備えたことを特徴とする電子書籍サーバ。
【請求項12】
電子書籍サーバに格納された電子書籍データをネットワークを介してダウンロードするクライアント端末であって、
前記電子書籍サーバに対して所望の電子書籍の配信を要求し、前記電子書籍サーバから、バイトデータ単位で一部を書き換えられた圧縮電子書籍データと、その書換えを戻す処理である展開用プログラムを前記ネットワークを介して受信すると、受信した一部書換え圧縮電子書籍データに対して、受信した展開用プログラムを施すことにより、元の圧縮電子書籍データを復元するブラウザと、
復元した圧縮電子書籍データに対して伸長処理を施す伸長処理部と、
前記伸長処理部により伸長された電子書籍データが表示される表示部と、
を備えたことを特徴とするクライアント端末。
【請求項13】
請求項8に記載の電子書籍サーバと、請求項12に記載のクライアント端末とを備えたことを特徴とする電子書籍配信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子書籍データ処理方法、電子書籍サーバ、クライアント端末、及び電子書籍配信システムに関し、特に、第三者への情報漏洩防止と処理速度の双方を勘案した電子書籍データ処理方法、電子書籍サーバ、クライアント端末、及び電子書籍配信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、ネットワークを介して、静止画、動画、テキスト情報等の様々なコンテンツ情報が流通している。その典型として、個々人がクライアント装置としての端末を有し、ネットワークに接続される各種サーバに蓄積されたそれらのコンテンツをダウンロードするという形態が大部分を占めている。そのとき、提供されるコンテンツ情報の著作権保護や漏洩防止等の観点からいわゆるDRM(Digital Rights Management)を施すことが一般的になっている。DRMとは、デジタルコンテンツの複製の制限や漏洩の防止を図ることによる著作権保護の手法・技術の総称であるが、その最も一般的な手法としては、暗号化技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、上述のコンテンツ情報を1つとして、最近特に、電子書籍が注目され普及してきている。かかる電子書籍データについて、DRMとしての暗号化を施す技術は例えば特許文献2に開示されている。
【0004】
ここで、電子書籍データについては、サーバからダウンロードされたそのデータをクライアント端末で閲覧するには、これまで、専用のいわゆるビューアで行うことが主流であった。しかしながら、最近では、汎用のいわゆるブラウザにより閲覧できる電子書籍データも増加してきている。このブラウザで閲覧することを前提とした電子書籍等のコンテンツデータに対して暗号化を施して保護する技術は、例えば特許文献3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4791425号公報
【特許文献2】特開2003−337912号公報
【特許文献3】特開2005−157893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献3のように、サーバにおいてコンテンツデータ全体に対して暗号化し、それを端末がダウンロードし、ブラウザ上で復号化する処理では、特に復号化に長時間を要するという課題がある。
【0007】
本発明は上述のような事情から為されたものであり、本発明の目的は、通信路上での漏洩を確実に防止しつつ、その処理を簡易にして高速処理を行うことができる電子書籍データ処理方法、電子書籍サーバ、クライアント端末、及び電子書籍配信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の電子書籍データ処理方法は、電子書籍サーバに格納された電子書籍データをネットワークを介してクライアント端末にダウンロードする際の電子書籍データ処理方法であって、前記電子書籍サーバは、前記クライアント端末から、所望の電子書籍の配信要求を受けると、前記所望の電子書籍に係る圧縮電子書籍データの一部を
バイトデータ単位で書換え、その一部を書き換えられた圧縮電子書籍データと、その書換え
を戻す処理である展開用プログラムを、前記ネットワークを介して前記クライアント端末に送信し、前記クライアント端末のブラウザは、前記電子書籍サーバから、一部を書き換えられた圧縮電子書籍データと、その書換えに対応した展開用プログラムを前記ネットワークを介して受信すると、受信した一部書換え圧縮電子書籍データに対して、受信した展開用プログラムを施すことにより、元の圧縮電子書籍データを復元することを要旨とする。
【0009】
また、上記目的を達成するため、本発明の電子書籍データ処理方法は、電子書籍サーバに格納された電子書籍データをネットワークを介してクライアント端末にダウンロードする際の電子書籍データ処理方法であって、少なくとも1つの書籍に係る電子書籍データを圧縮符号化して前記電子書籍サーバに格納しておき、前記クライアント端末が、前記電子書籍サーバに対して所望の電子書籍の配信を要求し、前記電子書籍サーバが、前記所望の電子書籍に係る圧縮電子書籍データの一部を
バイトデータ単位で書換え、前記電子書籍サーバが、その一部を書き換えられた圧縮電子書籍データと、その書換え
を戻す処理である展開用プログラムを、前記ネットワークを介して前記クライアント端末に送信し、前記クライアント端末で動作するブラウザが、受信した一部書換え圧縮電子書籍データに対して、受信した展開用プログラムを施すことにより、元の圧縮電子書籍データを復元し、前記クライアント端末が、復元した圧縮電子書籍データに対して伸長処理を施して、前記ブラウザにより表示部に表示することを要旨とする。
【0010】
そのとき、好適には、前記電子書籍サーバは、前記圧縮電子書籍データの一部を書き換えるための書換え手法を複数用意しておき、そのうちの1つを選択して前記圧縮電子書籍データの一部を
バイトデータ単位で書き換えるようにする。
【0011】
ここで、前記電子書籍サーバは、前記所望の電子書籍に係る圧縮電子書籍データの属性に応じて、前記複数の書換え手法から1つの書換え手法を選択することができる。
【0012】
あるいは、前記電子書籍サーバは、前記クライアント端末から配信要求された時刻に応じて、前記複数の書換え手法から1つの書換え手法を選択することができる。
【0013】
また、
前記複数の書換え手法は、少なくとも、所定数のバイトデータに対してビット反転処理を施す手法、所定数のバイトデータに対してビットシフトを施す手法、あるバイトデータと他のバイトデータを入れ替える手法、及びあるバイトデータに対してS−boxをかける手法を含むことが好適である。
【0014】
また、上記目的を達成するため、本発明の電子書籍データ処理方法は、電子書籍サーバに格納された電子書籍データをネットワークを介してクライアント端末にダウンロードする際の電子書籍データ処理方法であって、前記電子書籍サーバは、前記クライアント端末から、所望の電子書籍の配信要求を受けると、前記所望の電子書籍に係る圧縮電子書籍データの一部を書換え、その一部を書き換えられた圧縮電子書籍データを前記ネットワークを介して前記クライアント端末に送信すると共に、その書換えに対応した展開用プログラムを、画像ファイルに偽装して前記クライアント端末に送信
し、前記クライアント端末のブラウザは、前記電子書籍サーバから、一部を書き換えられた圧縮電子書籍データと、その書換えに対応した展開用プログラムを前記ネットワークを介して受信すると、受信した一部書換え圧縮電子書籍データに対して、受信した展開用プログラムを施すことにより、元の圧縮電子書籍データを復元することを要旨とする。
【0015】
また、上記目的を達成するため、本発明の電子書籍サーバは、格納した電子書籍データをネットワークを介してクライアント端末にダウンロードするための電子書籍サーバであって、少なくとも1つの書籍に係る電子書籍データが圧縮符号化されて格納される格納部と、前記クライアント端末から、所望の電子書籍の配信要求を受けると、前記所望の電子書籍に係る圧縮電子書籍データの一部を
バイトデータ単位で書換え、その一部を書き換えられた圧縮電子書籍データと、その書換え
を戻す処理である展開用プログラムを、前記ネットワークを介して前記クライアント端末に送信する書換え処理部と、を備えたことを要旨とする。
【0016】
そのとき、好適には、前記書換え処理部は、前記圧縮電子書籍データの一部を書き換えるための書換え手法を複数用意しておき、そのうちの1つを選択して前記圧縮電子書籍データの一部を
バイトデータ単位で書き換えるようにする。
【0017】
また、
前記複数の書換え手法は、少なくとも、所定数のバイトデータに対してビット反転処理を施す手法、所定数のバイトデータに対してビットシフトを施す手法、あるバイトデータと他のバイトデータを入れ替える手法、及びあるバイトデータに対してS−boxをかける手法を含むことが好適である。
【0018】
また、
上記目的を達成するため、本発明の電子書籍サーバは、格納した電子書籍データをネットワークを介してクライアント端末にダウンロードするための電子書籍サーバであって、少なくとも1つの書籍に係る電子書籍データが圧縮符号化されて格納される格納部と、前記クライアント端末から、所望の電子書籍の配信要求を受けると、前記所望の電子書籍に係る圧縮電子書籍データの一部を書換え、その一部を書き換えられた圧縮電子書籍データを前記ネットワークを介して前記クライアント端末に送信すると共に、その書換えに対応した展開用プログラムを、画像ファイルに偽装して前記クライアント端末に送信する
書換え処理部と、を備えたことを要旨とする。
【0019】
また、上記目的を達成するため、一方、本発明のクライアント端末は、電子書籍サーバに格納された電子書籍データをネットワークを介してダウンロードするクライアント端末であって、前記電子書籍サーバに対して所望の電子書籍の配信を要求し、前記電子書籍サーバから、
バイトデータ単位で一部を書き換えられた圧縮電子書籍データと、その書換え
を戻す処理である展開用プログラムを前記ネットワークを介して受信すると、受信した一部書換え圧縮電子書籍データに対して、受信した展開用プログラムを施すことにより、元の圧縮電子書籍データを復元するブラウザと、復元した圧縮電子書籍データに対して伸長処理を施す伸長処理部と、前記伸長処理部により伸長された電子書籍データが表示される表示部と、を備えたことを要旨とする。
【0020】
また、上記目的を達成するため、併せて、本発明の電子書籍配信システムは、上述の電子書籍サーバと、上述のクライアント端末とを備えたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、以下のような効果がある。すなわち、送信路上で第三者に漏洩する事態があっても、書換え済み圧縮電子書籍データは、上述のように、言わば一部破壊されたデータであるので、当該第三者は、たとえ採用された圧縮手法を認識していた、又は認識できたとしても、伸長処理を行えない。なお、この場合、可変長圧縮符号化処理の特性から、書き換えられている部分のみならず、書き換えられていない部分も含めて全体が伸長できない。また、ブラウザの開発者ツールのネットワーク通信履歴などから画像ファイルを抜き取られたとしても、同様に伸長処理を行えない。従って、当該第三者に情報が漏洩することが回避され、電子書籍データに係る著作権は保護される。
【0022】
一方
、一部のみしか書き換えていないので、電子書籍データ全体に対して処理を施す一般の暗号化処理と比較して、簡易に、かつ短時間で行える利点がある。また、それに対応して、クライアント端末のブラウザにおける復元処理も簡易に短時間で行える。
【0023】
つまり、通信路上での漏洩を確実に防止しつつ、その処理を簡易にして高速処理を行うことができるという利点がある。
【0024】
また、特に、電子書籍サーバが、圧縮電子書籍データの一部を
バイトデータ単位で書き換えるための書換え手法を複数用意しておき、そのうちの1つを選択して前記圧縮電子書籍データの一部を書き換えるようにすれば、たとえ展開用スクリプトが通信路上で解析されたとしても、それに対応する書換え手法のみが解読されることとなるので、電子書籍データの漏洩を最小限に抑えることができる。
【0025】
更に、電子書籍サーバは、展開用スクリプトを画像ファイルに偽装してクライアント端末に送信してやるようにすれば、通信路上を流れる展開用スクリプト自体の情報を第三者に認識されにくくできる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の電子書籍配信システムにおける一実施形態の概略機能構成を示す図である。
【
図2】クライアント端末のハードウェア概略構成の具体例を示す図である。
【
図3】電子書籍サーバのハードウェア概略構成の具体例を示す図である。
【
図4】本発明の電子書籍データ処理方法における一実施形態の概略処理手順を示すフローチャートである。
【
図5】複数の書換え手法[k]の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の電子書籍配信システムにおける一実施形態の概略機能構成を示す図である。同図に示した電子書籍配信システムは、それぞれがネットワーク3に接続可能なクライアント端末1及び電子書籍サーバ2を備え、それらは互いにそのネットワーク3を介して通信可能となっている。ここで、クライアント端末1は、典型的には電子ブックリーダー、電子書籍ビューワーなどのように呼ばれる専用端末であるとか、いわゆるスマートフォンのような汎用携帯情報端末やいわゆるタブレット端末であるが、いわゆるパーソナルコンピュータであってもよい。また、ネットワーク3としては、典型的にはIPネットワークであるが、いわゆる3G回線等の他の既存のネットワークであってもよい。
【0028】
図1に示すように、クライアント端末1は、ブラウザ11、伸長処理部12、及び表示部13を少なくとも備えている。ここで、ブラウザ11は、電子書籍サーバ2に対して所望の電子書籍データの配信を要求する。また、ブラウザ11は、電子書籍サーバ2から配信された書換え済み圧縮電子書籍データに、同様に送られてきた、その書換えに対応する展開(復元)用スクリプトを施すことにより、元の圧縮電子書籍データを復元する圧縮電子書籍データ復元部111を有している。また、伸長処理部12は、圧縮電子書籍データ復元部111により復元された元の圧縮電子書籍データを入力して伸長処理を施し、ブラウザ11に戻す。また、表示部13には、ブラウザ11により表示可能に処理された電子書籍データが表示される。なお、ブラウザ11は、典型的にはHTML(Hyper Text Markup Language)5の規格に対応しているものである。
【0029】
また、
図1に示すように、電子書籍サーバ2は、要求受付部21、圧縮電子書籍データ格納部22、及び書換え処理部23を少なくとも備えている。ここで、要求受付部21は、クライアント端末1からの配信要求を受け付ける。また、圧縮電子書籍データ格納部22には、配信可能な複数の電子書籍が電子データ化され、更に圧縮符号化されて格納されている。なお、この電子データ化は、典型的には画像化されることで行われるが、圧縮符号化の手法としては特に限定されず、例えば、JPEG(Joint Photographic Experts Group)、PNG(Portable Network Graphics)等がある。また、書換え処理部23は、要求受付部21からの指示に応じて、圧縮電子書籍データ格納部22から、指定された書籍の圧縮データを読み出し、複数の書換え手法[1]〜[n]のうちの選択した書換え手法に基づいて、その読み出した圧縮電子書籍データの一部を書き換え、その書換え済みの圧縮電子書籍データをクライアント端末1に配信するとともに、採用した書換え手法に対応した展開用スクリプトを画像ファイルに偽装して送信する。なお、書換え処理部23における複数の書換え手法[1]〜[n]、選択した書換え手法[k]による圧縮電子書籍データの一部の書換え、クライアント端末1に送る展開用スクリプト、及び、クライアント端末1内の圧縮電子書籍データ復元部111における復元処理の具体的説明については、後述する。また、上述の「偽装」の意味についても後述する。
【0030】
図2は、クライアント端末1のハードウェア概略構成の具体例を示す図である。ここでは、スマートフォンの例を挙げている。但し、音声通話に係る機能等、直接関係のない機能構成については省略している。同図に示すように、クライアント端末1は、ハードウェア構成として、全体の制御を行うCPU(Central Processing Unit)51と、所定のプログラムが予め格納されるROM(Read Only Memory)52と、実行中のプログラムや実行中の処理に係るデータが一時的に格納されるRAM(Random Access Memory)53と、各種テキストデータ及び静止画・動画データが格納されるFLASH(Flash Memory)54と、ネットワーク3との通信を担う通信制御部55と、各種テキストデータ及び静止画・動画データが表示されるディスプレイ56と、オペレータが指で触れて各種指示等を行うためのタッチパネル57と、各種外部デバイスを接続するためのインターフェース58とを備えている。なお、
図1との関係では、ブラウザ11や伸長処理部12の各機能は、それらのプログラムがRAM53に格納されてCPU51により実行されることにより実現される。また、表示部13は、ディスプレイ56とタッチパネル57とで構成されている。
【0031】
図3は、電子書籍サーバ2のハードウェア概略構成の具体例を示す図である。同図に示すように、電子書籍サーバ2は、ハードウェア構成として、全体の制御を行うCPU61と、所定のプログラムが予め格納されるROM62と、実行中のプログラムや実行中の処理に係るデータが一時的に格納されるRAM63と、各種テキストデータ及び静止画・動画データが格納されるHDD(Hard Disk)64と、ネットワーク3との通信を担う通信制御部65とを備えている。なお、
図1との関係では、要求受付部21や書換え処理部23の各機能は、それらのプログラムがRAM63に格納されてCPU61により実行されることにより実現される。また、
図1に示される圧縮電子書籍データ格納部22に格納されている圧縮電子書籍データも、HDD64に格納されている。
【0032】
図4は、本発明の電子書籍データ処理方法における一実施形態の概略処理手順を示すフローチャートである。
そこで、電子書籍の配信を受けたい場合、オペレータは、特定のサイトに対してその要求をすべく、クライアント端末1のタッチパネル57を介して、電子書籍の指定等の指示を行う。指示を受けたクライアント端末1のブラウザ11は、そのオペレータの操作指示に応じて、指定された電子書籍の配信(ダウンロード)を電子書籍サーバ2に要求する(ステップS11)。クライアント端末1から送信された配信要求は、電子書籍サーバ2の要求受付部21で受け付けられ、その要求受付部21は、その配信要求を書換え処理部23に伝える(ステップS21)。要求受付部21から配信要求を伝えられた書換え処理部23は、指定された書籍に係る圧縮データを圧縮電子書籍データ格納部22から読み出す(ステップS22)。
【0033】
次に、書換え処理部23は、複数の書換え手法[1]〜[n]のうちから選択した書換え手法に基づいて、その読み出した圧縮電子書籍データの一部を書換える(ステップS23)。ここで、複数の書換え手法[k]の一例を
図5に示す。同図において、書換え手法[1]は、所定数のバイトデータに対してビット反転処理を施す手法である。具体的には、画像ファイルの特定のバイトデータの反転したいビットデータに対して1、維持するビットデータに対して0をあてて排他的論理和をとればよい。また、書換え手法[2]は、所定数のバイトデータに対してビットシフトを施す手法である。具体的には、画像ファイルの特定のバイトデータについて例えば2ビット左シフトし、オーバーフローした上位2ビットのデータは下位ビットに巡廻させる。また、書換え手法[3]は、あるバイトデータと他のバイトデータを入れ替える手法である。具体的には、画像ファイルの特定のバイトデータを他のバイトデータと入れ替えるが、複数のバイトデータを対象にしてもよい。また、書換え手法[4]は、あるブロックデータと他のブロックデータを入れ替える手法である。具体的には、画像ファイルの特定のブロックデータを他のブロックデータと入れ替えるが、複数のブロックデータを対象にしてもよい。また、書換え手法[5]は、あるバイトデータに対してS−boxをかける。具体的には、画像ファイルの特定のバイトデータを変換テーブルに基づいて他のバイトデータに変換するものである。上述の手法のいずれも、どれほどのバイトデータに書換えを施すかは、第三者による復元の容易性と処理速度とのトレードオフとなる。典型的には、圧縮電子書籍データの一部としては、そのヘッダ部の少なくとも一部が含まれていることが好ましい。ヘッダ部には、画像サイズ、ハフマンテーブル等の重要な情報が含まれているので、その部分を書き換えさえすれば、全体の復元性は大きく低下するからである。
【0034】
ここで、書換え処理部23がいずれの書換え手法を選択するかは、各種の手法が考えられる。その1つとしては、電子書籍サーバ2において、個々の電子書籍に対して、ランダムに、又はその属性に応じて、シード(seed)値を予め決定しておき、そのシード値に基づいて用意した複数の書換え手法[1]〜[n]のうちから1つの書換え手法を選択するというものである。すなわち、書換え処理部23は、クライアント端末1から配信要求された電子書籍のデータに割り当てられたシード値を参照して特定の書換え手法[k]を選択する。また、他の手法としては、配信要求のあった日時に依存して選択のためのシード値を決定するという手法がある。しかしながら、これらに限られることはなく、要は、特定の書換え手法に偏ることなく、各電子書籍データに対して万遍なく選択されることにより、第三者により書換えの手法を認知される可能性を低くできればよい。
【0035】
次に、書換え処理部23は、選択した書換え手法[k]に対応した展開用スクリプトを作成し、要求元のクライアント端末1宛に、書換え済み圧縮電子書籍データを配信するとともに、対応する展開用スクリプトを送信する(ステップS24)。ここで、展開用スクリプトとは、選択した書換え手法[k]で書き換えられた圧縮電子書籍データを復元するための、クライアント端末1のブラウザ11上で動作可能なスクリプト言語(例えば、JavaScript(登録商標))である。例えば、ある配信要求に係る電子書籍に対して書換え手法[1]が選択され、特定のビットデータに対して反転処理を行ったならば、その反転処理をクライアント端末1のブラウザ11上で戻せるように動作するスクリプト言語である。
【0036】
ここで、送信する展開用スクリプトについては、画像ファイルに偽装して送信すれば、更に好適である。すなわち、展開用スクリプトとして記述されたプログラムのアスキーコードを画像のピクセル値に対応させて見かけ上画像データ(例えばPNG画像)として送信する。
【0037】
なお、電子書籍サーバ2側においては、送信した圧縮電子書籍データ及び対応する展開用スクリプトを一定期間又は一定条件下でキャッシュしておくことが一般的である。
【0038】
一方、書換え済み圧縮電子書籍データと、それに対応した展開用スクリプトを受信したクライアント端末1は、そのブラウザ11内の圧縮電子書籍データ復元部111が、受信した書換え済み圧縮電子書籍データにその展開用スクリプトを施して元の圧縮電子書籍データを復元する(ステップS12)。このとき、前述のように、展開用スクリプトが画像ファイルに偽装されて送られている場合には、まず、そのピクセル値に基づいてアスキーコードとして復元する。そして、圧縮電子書籍データ復元部111が、所定のスクリプト言語で記述された展開用スクリプトを実行することにより、元の圧縮電子書籍データを復元する。
【0039】
次に、ブラウザ11は、復元した圧縮電子書籍データを伸長処理部12に送り、伸長処理部12は、そのデータに対して伸長処理を施し、処理後のデータをブラウザ11に戻す(ステップS13)。伸長処理後の得られた電子書籍データはブラウザで表示可能なデータ(例えば画像データとその表示位置を指定する情報)であるので、ブラウザ11は、そのデータに基づき当該書籍の内容を表示部13に表示できる(ステップS14)。
【0040】
なお、上述の実施形態にあっては、クライアント端末1において書き換えられた圧縮電子書籍データを復元するために、クライアント端末1に送るデータとして、「(展開用)スクリプト」という表現を使用したが、本発明の主旨としては、この表現に限定されず、すなわち、「クライアント端末1のブラウザ11上で動作可能なプログラム」であればよい。
【0041】
また、上述の実施形態にあっては、配信要求を受けて送るごとに書換えを行っているが、シード値を配信要求日時に基づいて決定するのではなく、ランダムに、又は電子書籍の属性等に応じて決定するのであれば、予め、書換え済みの圧縮電子書籍データを格納部に格納しておくことも可能である。
【0042】
以上のように、上述の一実施形態によれば、以下のような効果がある。すなわち、送信路上で第三者に漏洩する事態があっても、書換え済み圧縮電子書籍データは、上述のように、言わば一部破壊されたデータであるので、当該第三者は、たとえ採用された圧縮手法を認識していた、又は認識できたとしても、伸長処理を行えない。なお、この場合、可変長圧縮符号化処理の特性から、書き換えられている部分のみならず、書き換えられていない部分も含めて全体が伸長できない。また、ブラウザの開発者ツールのネットワーク通信履歴などから画像ファイルを抜き取られたとしても、同様に伸長処理を行えない。従って、当該第三者に情報が漏洩することが回避され、電子書籍データに係る著作権は保護される。
【0043】
一方
、一部のみしか書き換えていないので、電子書籍データ全体に対して処理を施す一般の暗号化処理と比較して、簡易に、かつ短時間で行える利点がある。また、それに対応して、クライアント端末1のブラウザ11における復元処理も簡易に短時間で行える。
【0044】
以上から総じて、通信路上での漏洩を確実に防止しつつ、その処理を簡易にして高速処理を行うことができるという利点がある。
【0045】
加えて、上述の実施形態においては、電子書籍データの属性や配信要求日時に応じてシード値を決定して、そのシード値に基づいて複数の書換え手法の中から1つの書換え手法を選択している。これは暗号化でいえば、単一の暗号化アルゴリズムを採用して鍵のみを個々に変えるのではなく、暗号化アルゴリズム自体も複数にしていることに対応しているので、たとえ展開用スクリプトが通信路上で解析されたとしても、それに対応する書換え手法のみが解読されることとなるので、電子書籍データの漏洩を最小限に抑えることができる。
【0046】
更に、上述の実施形態においては、電子書籍サーバから送信する展開用スクリプトを画像ファイルに偽装して送信しているので、通信路上を流れる展開用スクリプト自体の情報を第三者に認識されにくくできている。
【0047】
なお、上述した本発明の実施形態は、電子書籍の配信に限定して記述しており、本願発明においてはそれで足りるものであるが、拡張の可能性としては、ソーシャルゲームにおける画像配信など、圧縮処理された状態で配信される他のコンテンツにも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の電子書籍データ処理方法、電子書籍サーバ、クライアント端末、及び電子書籍データ配信システムは、例えばインターネット上の電子書籍販売サイトから所望の電子書籍を購入して自身の電子ブックリーダー、電子書籍ビューワー、スマートフォン、タブレット端末等にダウンロードするシステムに採用できる。
【符号の説明】
【0049】
1 クライアント端末
11 ブラウザ
111 圧縮電子書籍データ復元部
12 伸長処理部
13 表示部
2 電子書籍サーバ
21 要求受付部
22 圧縮電子書籍データ格納部
23 書換え処理部
3 ネットワーク
51,61 CPU
52,62 ROM
53,63 RAM
54 FLASH
64 HDD
55,65 通信制御部
56 ディスプレイ
57 タッチパネル
58 各種外部デバイスインターフェース