特許第5799352号(P5799352)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 北川工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5799352-導電部材 図000002
  • 特許5799352-導電部材 図000003
  • 特許5799352-導電部材 図000004
  • 特許5799352-導電部材 図000005
  • 特許5799352-導電部材 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5799352
(24)【登録日】2015年9月4日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】導電部材
(51)【国際特許分類】
   H01R 11/01 20060101AFI20151001BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20151001BHJP
   H01R 12/55 20110101ALI20151001BHJP
【FI】
   H01R11/01 P
   H05K9/00 E
   H01R12/55
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2010-253010(P2010-253010)
(22)【出願日】2010年11月11日
(65)【公開番号】特開2012-104412(P2012-104412A)
(43)【公開日】2012年5月31日
【審査請求日】2013年11月7日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000242231
【氏名又は名称】北川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】北野 宏樹
【審査官】 片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−293340(JP,A)
【文献】 実開昭57−041268(JP,U)
【文献】 特開平09−115574(JP,A)
【文献】 特開2003−031984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 11/01
H01R 12/55
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の部材と第二の部材との間に介装されることにより、前記第一の部材と前記第二の部材を電気的に接続する導電部材であって、
金属材料からなる単一の面状体に複数の貫通孔又は切欠きを形成して、当該貫通孔又は切欠きを挟んで両側にある部分のうち、一方の部分については当該部分を前記面状体の表面側へ突出する形態に曲げるとともに、他方の部分については当該部分を前記面状体の裏面側へ突出する形態に曲げることにより、前記表面側及び前記裏面側の双方それぞれにおいて複数の凸部が突出する形態とされた金属部と、
エラストマー材料からなり、前記凸部の先端部分を外部に露出させた状態で前記金属部が埋設されており、前記表面側及び前記裏面側にある凸部のうち、少なくとも一方の側にある凸部の先端部分が前記第一の部材に接するとともに、他方の側にある凸部の先端部分が前記第二の部材に接する向きにされた状態で、前記第一の部材と前記第二の部材との間に挟み込まれた際には、弾性変形することによって、前記凸部の先端部分を前記第一の部材側又は前記第二の部材側に向かって押圧するエラストマー部と
を備えたことを特徴とする導電部材。
【請求項2】
前記表面側及び前記裏面側の凸部が、前記面状体の表裏面に垂直な方向から見て、一列に並ぶ位置に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の導電部材。
【請求項3】
前記面状体には、前記貫通孔が形成されており、
前記面状体のうち、前記凸部とされた部分以外の部分は、前記一列に並ぶ位置にある前記凸部の両側において各凸部に連設された一対の連設部とされている
ことを特徴とする請求項2に記載の導電部材。
【請求項4】
前記第一の部材と前記第二の部材との間に挟み込まれた際には、前記金属部及び前記エラストマー部の変形に伴って、前記凸部の両側にある前記一対の連設部が互いに離間する方向へ移動する
ことを特徴とする請求項3に記載の導電部材。
【請求項5】
前記金属部は、前記第一の部材と前記第二の部材との間に挟み込まれた前記エラストマー部が弾性変形した際に、当該エラストマー部の形態に追従するかたちで塑性変形する金属箔からなる
ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の導電部材。
【請求項6】
前記凸部の先端部分には平面状に形成された金属平面部が設けられ、前記表面側にある前記凸部と前記裏面側にある前記凸部とで、前記金属平面部が平行になっている
ことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の導電部材。
【請求項7】
前記エラストマー部には、前記金属平面部に対して面一とされたエラストマー平面部が形成されている
ことを特徴とする請求項6に記載の導電部材。
【請求項8】
前記凸部は、前記金属平面部を挟む両側の位置に連設された側面部を有する形態とされており、
当該側面部は、前記金属平面部から連続する一部が前記エラストマー部の外部に露出する一方、残りの部分が前記エラストマー部の内部に埋設されている
ことを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の導電部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一の部材と第二の部材との間に介装されることにより、第一の部材と第二の部材を電気的に接続する導電部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、第一の部材と第二の部材との間に介装されることにより、第一の部材と第二の部材を電気的に接続する導電部材として、第一の部材にはんだ付けされるとともに、第二の部材に対して接触するように配置されることにより、両部材間に導電経路を構成するものが知られている。
【0003】
このような導電部材の代表的な例としては、例えば、金属の薄板から打ち抜かれた部品を折り曲げて形成されたものを挙げることができる(例えば、特許文献1参照。)。この種の板金製の部材は、一般にばね性のある金属材で形成されており、例えば、第一の部材であるプリント配線板に表面実装されて、第二の部材である別のプリント配線板、シールド板、あるいはシャーシなどとの間で導通をとる際に利用される。
【0004】
また、上記のような表面実装部品とは異なる形態の導電部材としては、より長尺な形態に構成されたものも知られている。このような導電部材の代表的な例としては、第一の部材と第二の部材の隙間から漏洩又は侵入する電磁波を抑制する電磁波シールド用ガスケットとして利用されるものを挙げることができる(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
このような電磁波シールド用ガスケットは、例えば、単位構造が一軸方向に繰り返し形成されてなる長尺材として構成されるが、これもばね性のある金属材で形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−115574号公報
【特許文献2】特開2003−31984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、携帯電話などのモバイル機器においては、きわめて小型化・軽量化が進んでいるため、プリント配線板と筐体との隙間がきわめて狭くなっている。そのため、このような隙間に導電部材を配設してプリント配線板と筐体を電気的に接続する際には、きわめて小型の導電部材、特に高さ方向寸法がきわめて小さい低背型の導電部材が必要となる。
【0008】
しかし、上記特許文献1に記載された導電部材のように、金属板を折り返すように曲げてばね部を形成した構造になっているものは、高さ方向寸法がごく小さいものを加工しようとすると、はんだ接合部に対して略V字状にばね部を折り返す際、過剰に小さいアールでばね部を折り返さざるを得なくなる。そのため、そのような無理な折り返しをすると、ばね部が折り返し部分で折れやすくなってしまう傾向があった。
【0009】
また、上記のように折り返し部分の谷折り箇所が鋭角をなすかたちで略V字状に折り返す代わりに、折り返し部分の谷折り箇所が鈍角をなすかたちで金属板の一部を切り上げて、その切り上げ部分を他の部分に接触させる構造になっているものもある。しかし、このような切り上げばねは、ばね性に劣り、復元性が良くないため、あまり大きなストロークを確保することはできず、十分に高い接触圧を確保することは難しい、といった問題があった。
【0010】
さらに、上記特許文献2に記載された電磁波シールド用ガスケットにおいても、金属材のばね性を確保できる範囲内でしか小型化ができないため、高さ方向寸法や幅方向寸法がきわめて小さいガスケットを構成することは容易ではない、という問題があった。
【0011】
一方、上記のような金属製の導電部材以外には、例えば、弾性体を芯材にして、その周囲に導電布や導電性フィルムを巻き付けた構造とされた導電部材も提案されている。しかし、このような構造の導電部材は、弾性体が全周にわたって導電布や導電性フィルムによって拘束されている状態にある。そのため、この種の導電部材が二部材間に挟み込まれた際には、変形した弾性体の逃げ場所がなく、弾性体から導電布や導電性フィルムに作用する圧力が過剰に高くなりやすいので、導電布や導電性フィルムに過大な負荷がかかってしまう、という問題があった。
【0012】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、小型化した場合でも十分に高い接触圧を発揮させることができ、二部材間に挟み込まれた際に導電部分に過大な負荷がかかることもない導電部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以下、本発明において採用した構成について説明する。
請求項1に記載の導電部材は、第一の部材と第二の部材との間に介装されることにより、前記第一の部材と前記第二の部材を電気的に接続する導電部材であって、金属材料からなる単一の面状体に複数の貫通孔又は切欠きを形成して、当該貫通孔又は切欠きを挟んで両側にある部分のうち、一方の部分については当該部分を前記面状体の表面側へ突出する形態に曲げるとともに、他方の部分については当該部分を前記面状体の裏面側へ突出する形態に曲げることにより、前記表面側及び前記裏面側の双方それぞれにおいて複数の凸部が突出する形態とされた金属部と、エラストマー材料からなり、前記凸部の先端部分を外部に露出させた状態で前記金属部が埋設されており、前記表面側及び前記裏面側にある凸部のうち、少なくとも一方の側にある凸部の先端部分が前記第一の部材に接するとともに、他方の側にある凸部の先端部分が前記第二の部材に接する向きにされた状態で、前記第一の部材と前記第二の部材との間に挟み込まれた際には、弾性変形することによって、前記凸部の先端部分を前記第一の部材側又は前記第二の部材側に向かって押圧するエラストマー部とを備えたことを特徴とする。
【0014】
このように構成された導電部材において、表面側及び裏面側にある凸部は、いずれか一方の凸部が第一の部材又は第二の部材のいずれか一方にはんだ付けされて、他方の凸部が第一の部材又は第二の部材のいずれか他方に接触するように配置される。あるいは、表面側及び裏面側にある凸部が、それぞれ第一の部材又は第二の部材のいずれかに接触するように配置される。すなわち、この導電部材は、配設箇所にはんだ付けすることもできるし、はんだ付けすることなく配設することも可能なものである。
【0015】
このような導電部材が第一の部材と第二の部材との間に挟み込まれると、エラストマー部は、弾性変形することにより、金属部に設けられた凸部の先端部分を第一の部材側又は第二の部材側に向かって押圧する状態になる。
【0016】
したがって、凸部が第一の部材又は第二の部材のいずれかに接触するように配置された箇所においては、凸部が第一の部材又は第二の部材に対して適切な接触圧で圧接する状態になるので、金属ばねを利用したものとは異なり、小型化した場合でも十分に高い接触圧を発揮させることができる。
【0017】
また、凸部は、金属材料からなる単一の面状体に複数の貫通孔又は切欠きを形成し、貫通孔又は切欠きを挟んで両側にある部分のうち、一方の部分については当該部分を面状体の表面側へ突出する形態に曲げるとともに、他方の部分については当該部分を面状体の裏面側へ突出する形態に曲げることによって形成されている。
【0018】
そのため、各凸部の突出方向には金属部分があるものの、その突出方向とは反対側の方向には金属部分が存在しない構造になっている。したがって、凸部が第一の部材又は第二の部材のいずれかに圧接する状態となった際に、弾性変形する状態となるエラストマー部は、凸部の突出方向とは反対側において比較的自由に変形できる。
【0019】
よって、エラストマー部が全周にわたって導電布や導電性フィルムで拘束されているものとは異なり、エラストマー部から凸部の内側に過大な圧力がかかるのを抑制でき、また、接触箇所に対する追従性が良好な変形を実現することができる。
【0020】
なお、以上のような導電部材を構成するに当たって、金属材料としては、導電性に優れた各種金属を用いることができ、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、その他の各種合金(例えば、ステンレス、りん青銅、ベリリウム銅など)を用いることができる。これらの金属材料は、性能だけを考慮すれば導電性の高いものほど好ましいが、コスト面なども考慮した上で、好適なものを適宜選択すればよい。
【0021】
また、エラストマー材料としては、例えば、各種ゴム、ゴム弾性を有する熱可塑性エラストマー、多数の高分子が鎖の上の特定部分の結合により互いに部分的につながってできた三次元網目状構造を持つゲル等が用いられる。
【0022】
上記のゴムとしては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエン・スチレンゴム、ブタジエン・アクリロニトリルゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、エチレン・酢ビゴム、多硫化物系ゴム、ウレタンゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ターポリマー、ガタパーチャ、クロロスルホン化ポリエチレン、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、ふっ素ゴム、ポリイソブチレン、アクリルゴム等が例示される。
【0023】
上記の熱可塑性エラストマーとしては、スチレンブロック共重合体(SBC)、サーモポリオレフィン(TPO)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、熱可塑性加硫エラストマー(TPV)等が例示される。
【0024】
上記のゲルとしては、三次元網目状構造を持つベースポリマーの網目組織の間隙に軟化剤(例えばオイル成分)を包含して流動性を失った状態にしたものが好適である。
そのベースポリマーとしては、例えば、スチレン系(イソプレン−スチレン系(SIS系)、エチレン−プロピレン−スチレン系(SEPS系)、エチレン−ブタジエン−スチレン系(SEBS系)、オレフィン系、エステル系、アミド系、ウレタン系などの各種熱可塑性エラストマー、並びに、これらの水添、その他による変成物、あるいは、スチレン系、ABS系、オレフィン系、塩化ビニル系、アクリル系、カーボネート系、アセタール系、ナイロン系、ハロゲン化オレフィン系(四フッ化エチレン系、フッ化−塩化エチレン系、フッ化エチレンプロピレン系など)、セルロース系(エチルセルロース系など)の熱可塑性樹脂、及びこれらの樹脂のゴム変成物などが挙げられる。なお、これらの各種熱可塑性樹脂は、単独で用いても、2種以上をブレンドして用いてもよい。
【0025】
軟化剤としては、鉱物油系、植物油系、合成系などの各種ゴム用又は樹脂用軟化剤が挙げられる。鉱物油系としては、パラフィン系、ナフテン系、アロマ系などのプロセスオイルが挙げられ、植物油系としては、ひまし油、綿実油、亜麻仁油、菜種油、大豆油、パーム油、椰子油、落花生油、木蝋、パインオイル、オリーブ油などが挙げられる。これらの軟化剤は単独で用いても良いが、互いの相溶性が良好な2種以上を混合させて用いてもよい。なお、軟化剤の添加量が多いほどゲルの硬度は低いものとなるので、所望の硬度となるように調製すればよい。
【0026】
また、ベースポリマー及び軟化剤のほか、諸特性の改良のため、公知の樹脂成分などの添加剤を併用することができる。樹脂成分としては、例えば、ポリオレフィン樹脂やポリスチレン樹脂などを併用することができる。これらを添加することにより加工性、耐熱性の向上を図ることができる。ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、プロピレンと他の少量のα−オレフィンとの共重合体(例えば、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン/4−メチル−1−ペンテン共重合体)、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリブテン−1等を挙げることができる。
【0027】
さらに、他の添加剤として、必要に応じて、抗菌剤、ヒンダードアミン系光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、無機充填剤、着色剤、シリコーンオイル、クマロン樹脂、クマロン−インデン樹脂、フェノールテルペン樹脂、石油系炭化水素、ロジン誘導体等の各種粘着付与剤(タッキファイヤー)を併用することができる。
【0028】
さらに、リフローはんだ付けで表面実装可能な導電部材を構成する場合には、エラストマー材料はリフロー工程に耐え得る物性を備えた材質であることを要求される。実施にあたっては、上に例示したゴム、エラストマー、ゲル等でリフロー工程に耐え得る材質を選択して使用すればよい。リフロー工程で要求される耐熱条件は、任意に設定し得るが、一般的な条件の一例としては、例えば240℃以下、5秒以下といった条件を挙げることができる。
【0029】
請求項2に記載の導電部材は、請求項1に記載の導電部材において、前記表面側及び前記裏面側の凸部が、前記面状体の表裏面に垂直な方向から見て、一列に並ぶ位置に形成されていることを特徴とする。
【0030】
このような導電部材であれば、凸部が一列に並ぶ位置に形成されているので、凸部の個数に応じた長さを持つ線状の導電部材となる。したがって、凸部の個数を少なめにすることで、自動実装用の導電部材として利用することもでき、あるいは、凸部の個数を十分に多めにすることで、導電性ガスケットとして利用される導電部材を構成することもできる。
【0031】
請求項3に記載の導電部材は、請求項2に記載の導電部材において、前記面状体には、前記貫通孔が形成されており、前記面状体のうち、前記凸部とされた部分以外の部分は、前記一列に並ぶ位置にある前記凸部の両側において各凸部に連設された一対の連設部とされていることを特徴とする。
【0032】
このように構成された導電部材によれば、一列に並ぶ位置にある凸部の両側には、各凸部に連設された一対の連設部が設けられている。そのため、導電部材を凸部の列設方向へ引っ張るような力が導電部材に作用したとしても、連設部が破断しない限り、貫通孔の幅が拡大することはなく、導電部材が貫通孔部分で分断されるのを抑制することができる。
【0033】
請求項4に記載の導電部材は、請求項3に記載の導電部材において、前記第一の部材と前記第二の部材との間に挟み込まれた際には、前記金属部及び前記エラストマー部の変形に伴って、前記凸部の両側にある前記一対の連設部が互いに離間する方向へ移動することを特徴とする。
【0034】
このように構成された導電部材によれば、一対の連設部が互いに離間する方向へ移動すると、金属部の形態が凸部を形成する前の面状体に近づき、金属部の変形量は減少することになる。したがって、金属部の変形量が増大する場合に比べ、金属部にかかる負荷を軽減することができる。
【0035】
請求項5に記載の導電部材は、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の導電部材において、前記金属部は、前記第一の部材と前記第二の部材との間に挟み込まれた前記エラストマー部が弾性変形した際に、当該エラストマー部の形態に追従するかたちで塑性変形する金属箔からなることを特徴とする。
【0036】
このように構成された導電部材によれば、金属部がエラストマー部の形態に追従するかたちで塑性変形する金属箔で構成されているので、金属部そのものにばね性を持たせることは困難であるが、エラストマー部が弾性変形することで、金属箔からなる金属部もエラストマー部の形態に追従するかたちで塑性変形する。したがって、このような構造になっていれば、ばね性が発現するような機械的強度の高い金属材で金属部を形成しなくても済むので、きわめて容易に小型化を実現することができ、低背型の自動実装部品や導電性ガスケットを構成するのに好適なものとすることができる。
【0037】
請求項6に記載の導電部材は、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の導電部材において、前記凸部の先端部分には平面状に形成された金属平面部が設けられ、前記表面側にある前記凸部と前記裏面側にある前記凸部とで、前記金属平面部が平行になっていることを特徴とする。
【0038】
このように構成された導電部材によれば、表面側にある凸部先端の金属平面部と裏面側にある凸部先端の金属平面部が平行になっているので、平行な面間に挟み込まれる場合に、それら平行な面双方に適切に接触させることができる。
【0039】
また、自動実装部品として構成される場合には、表面側にある凸部先端の金属平面部と裏面側にある凸部先端の金属平面部のうち、一方をはんだ接合面として利用し、他方を自動実装機の吸引ノズルで吸着するための吸着面として利用することができる。
【0040】
請求項7に記載の導電部材は、請求項6に記載の導電部材において、前記エラストマー部には、前記金属平面部に対して面一とされたエラストマー平面部が形成されていることを特徴とする。
【0041】
このように構成された導電部材によれば、所定の設置場所に導電部材を配置した際、その配置場所に金属平面部が接する状態になると、金属平面部とともにエラストマー平面部も配置場所に接する状態となる。そのため、金属平面部よりも表面の摩擦抵抗が大となるエラストマー平面部が滑り止めとしての役割を果たす。
【0042】
したがって、僅かな外力を受けたことが原因で導電部材の向きが変わってしまうのを抑制でき、小型の自動実装部品を構成した場合には好適なものとなる。また、長尺な導電性ガスケットを構成した場合には、金属製のものよりも、配置作業中の位置ずれが抑制されるので、作業性の良好な導電性ガスケットとすることができる。
【0043】
請求項8に記載の導電部材は、請求項6又は請求項7に記載の導電部材において、前記凸部は、前記金属平面部を挟む両側の位置に連設された側面部を有する形態とされており、当該側面部は、前記金属平面部から連続する一部が前記エラストマー部の外部に露出する一方、残りの部分が前記エラストマー部の内部に埋設されていることを特徴とする。
【0044】
このように構成された導電部材によれば、金属平面部を挟む両側の位置に側面部が連設され、その側面部の一部がエラストマー部の外部に露出しているので、この凸部をはんだ付けする際には、側面部にはんだフィレットが形成される。しかも、この側面部において、エラストマー部の外部に露出する部分は、その露出範囲を所望の範囲に調節することができるので、過剰にはんだが濡れ上がらない程度に調節することができる。
【0045】
したがって、はんだフィレットが形成されない形態になっているものに比べ、はんだ付けされた箇所の接合強度を向上させることができる。また、過剰にはんだが濡れ上がって比較的大きいはんだフィレットが形成されるものとも異なり、剛性の高いはんだフィレットの形成に伴って導電部材の柔軟性が損なわれてしまうこともなく、特に小型化された導電部材において、導電部材のサイズに見合う最適なサイズのはんだフィレットが形成されるように調節することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】(a)は導電部材の斜視図、(b)は導電部材が備える金属部の斜視図。
図2】(a)は導電部材の平面図、(b)は導電部材の正面図、(c)は導電部材の右側面図、(d)は導電部材のA−A線断面図、(e)は導電部材のB−B線断面図。
図3】導電部材の使用状態を示す説明図。
図4】(a)は変形例として示した導電部材の斜視図、(b)は変形例として示した導電部材が備える金属部の斜視図。
図5】(a)〜(o)はそれぞれ貫通孔又は切欠きの形態を例示する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0047】
次に、本発明の実施形態について一例を挙げて説明する。
図1及び図2に示す導電部材1は、二つの部材間に介装されることにより、それら二つの部材を電気的に接続する部材で、金属材料で形成された金属部3と、エラストマー材料で形成されたエラストマー部5とを備えている。
【0048】
金属部3は、厚さ0.01mmの金属箔を、図1(b)に示すような形態に加工したもので、大部分がエラストマー部5の内部に埋設され、一部だけがエラストマー部5の外部に露出する状態になっている。
【0049】
より詳しくは、この金属部3は、短冊状の金属箔にスリット状の貫通孔11を一つ形成して、その貫通孔11を挟んで両側にある部分のうち、一方の部分については当該部分を金属箔の表面側へ突出する形態に曲げて凸部13を形成するとともに(図1(b)及び図2(d)参照。)、他方の部分については当該部分を金属箔の裏面側へ突出する形態に曲げて凸部15を形成したものである(図1(b)及び図2(e)参照。)。
【0050】
このような加工が金属箔に施されたことにより、貫通孔11は、略六角形の開口をなすように開かれた状態となっている(図1(b)参照。)。なお、以下の説明においては、導電部材1各部の相対的な位置関係を簡潔に説明するため、便宜的に凸部13の突出方向を上、凸部15の突出方向を下として説明を続ける。ただし、ここでいう上下の各方向は、導電部材1の使用状態において、凸部13を上に向けた状態で使用すべきことを意味するものではない。
【0051】
凸部13,15は、それぞれの先端部分がエラストマー部5の外部へ露出している。より具体的には、凸部13は、最上端にある金属平面部13Aと、この金属平面部13Aに連設されて下方へと延びる側面部13Bを有する形態とされ、金属平面部13Aと側面部13Bの上端側の一部がエラストマー部5の外部へ露出し、側面部13Bの残りの部分がエラストマー部5の内部に埋設されている。
【0052】
また、凸部15は、最下端にある金属平面部15Aと、この金属平面部15Aに連設されて上方へと延びる側面部15Bを有する形態とされ、金属平面部15Aと側面部15Bの下端側の一部がエラストマー部5の外部へ露出し、側面部15Bの残りの部分がエラストマー部5の内部に埋設されている。なお、金属平面部13Aと金属平面部15Aは、平行な面になっている。
【0053】
貫通孔11は、貫通孔11の輪郭線が金属箔の輪郭線に連続しない形態のものであって、輪郭線が金属箔の輪郭線に連続する形態となる切欠き状のものではない。このような形態の貫通孔11を形成することにより、金属箔のうち、凸部13,15とされた部分以外の部分については、平面視した際に一列に並ぶ位置にある凸部13,15の両側において各凸部13,15に連設された一対の連設部17を形成する部分とされている。なお、連設部17の端部は、エラストマー部5の外部に露出する状態にある。
【0054】
以上のような形態の金属部3は、本実施形態においては、エラストマー部5を成形するために用意された金型内で金属箔を加工することによって形成されている。具体的には、金型内には、あらかじめ貫通孔11が形成された金属箔が配置され、凸部13,15それぞれの突出方向に向かって金型内で治具を突き上げることにより、その治具の先端で凸部13,15となる部分が突出方向へと押し出される。
【0055】
そして、このような金属箔の加工を終えたら、引き続いて金型内に、エラストマー部5となる原料組成物を射出することにより、エラストマー部5が成形される。ただし、金属部3をこのような加工方法で加工するか否かは任意であり、他の方法で同等な形状に成形してもよい。
【0056】
一方、エラストマー部5には、金属平面部13A,15Aに対して面一とされたエラストマー平面部21,23が形成されている。また、エラストマー部5において、エラストマー平面部21から連続する部分には、エラストマー部5の端に向かって下り勾配となる傾斜が付与され、これにより、作業者の指先などが引っかかりにくい形態となっている。
【0057】
以上のように構成された導電部材1は、例えば、図3に示すように、凸部15がプリント配線板31に対してはんだ付けされるとともに、別のプリント配線板33が凸部13に接触する位置に配置され、これにより、両プリント配線板31,33を電気的に接続することができる。
【0058】
導電部材1をプリント配線板31上に設置する際には、例えば、自動実装機を使って設置を行うことができ、その際、金属平面部13A及びエラストマー平面部21は、いずれも自動実装機が備える吸引ノズルで導電部材1を吸着するための吸着面として利用することができる。
【0059】
特に、エラストマー平面部21は、エラストマー材料で形成された摩擦係数の高い面になっているので、このエラストマー平面部21を吸着面として利用すれば、吸引ノズルで吸着した導電部材1を移動させる際に、慣性力などを受けて導電部材1の向きが変わってしまうのを抑制することができる。
【0060】
一方、エラストマー平面部23は、導電部材1がプリント配線板31上に配置された際に、滑り止めとして機能する。そのため、例えば、はんだ付けが完了する前の状態で、リフロー炉内での搬送途中にプリント配線板31に振動が伝わるようなことがあっても、そのような振動を受けて導電部材1の向きが変わってしまうのを抑制することができる。
【0061】
また、凸部15をプリント配線板31に対してはんだ付けする際には、はんだフィレット35が形成されることになる部分の高さhを、事前に最適化された高さとすることができる。具体的には、はんだフィレット35が形成されることになる部分の高さhは、エラストマー部5を形成するための金型の設計に応じた所望の高さとされる。
【0062】
この高さhが過剰に小さいと、はんだフィレット35が形成されなくなるため、はんだ付けによる接合強度が低下するものの、この高さhが過剰に大きいと、はんだの濡れ上がり量が増大してはんだフィレット35が大きくなるため、ごく小型の導電部材1である場合には、導電部材1が想定以上にはんだフィレット35に埋没し、導電部材1の柔軟性が損なわれてしまうおそれがある。
【0063】
この点、この導電部材1であれば、エラストマー部5を設けることで、はんだフィレット35が形成されることになる部分の高さhを、設計通りの位置に制限することができるので、良好な接合強度を確保しつつ、導電部材1の柔軟性も適切に確保することができる。
【0064】
さらに、はんだ付けの完了後、導電部材1がプリント配線板31,33の間に挟み込まれる際には、導電部材1は、プリント配線板31,33間で圧縮されて、その圧縮力を受けて弾性変形する。このとき、導電部材1は、プリント配線板31,33間が狭まる方向へ圧縮されると、図3中に示す矢印P方向へ膨らむように変形する。
【0065】
金属部3は、図3に示す断面上で、凸部15が下半分の筒状をなす形態となっているものの、上半分は開放された状態にある。そのため、エラストマー部5は、全周にわたって拘束された状態にはなく、図3中に矢印Qで示すように、エラストマー部5の上部においては大きく変形することができる。
【0066】
また、凸部13のある箇所では、上記図3とは上下が逆転し、凸部13が上半分の筒状をなす形態となっているものの、下半分は開放された状態にある。さらに、凸部13のある箇所と凸部15のある箇所の境界では、連設部17しか存在しない状態にある。
【0067】
つまり、この導電部材1では、凸部13,15の列設方向について、どの位置で断面を見ても、多くても上半分か下半分でエラストマー部5が包囲されている状態にあるだけで、全周にわたってエラストマー部5が包囲されている箇所がない。
【0068】
したがって、エラストマー部5が金属部3によって全周にわたって包囲されているようなものとは異なり、エラストマー部5に無理な歪みが生じたり、過剰に圧力がかかったりすることがなく、導電部材1をスムーズに変形させることができる。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の具体的な一実施形態に限定されず、この他にも種々の形態で実施することができる。
例えば、上記実施形態では、上方へ突出する凸部13と、下方へ突出する凸部15を、それぞれ一つずつ設けてある例を示したが、図4(a)及び同図(b)に示す導電部材51のように、上方へ突出する凸部13と、下方へ突出する凸部15を、それぞれ複数設けた金属部53を、エラストマー部55に埋設した構造としてもよい(図4の場合は、五つずつ設けたものを例示。)。
【0070】
このような形態にすれば、多点で電気的接触を図ることが可能な多点接点構造を実現することができる。ただし、その分だけ長尺な導電部材となるので、小型化を図るには、図1図3に示したものが好ましく、凸部の数をどの程度とするかは、目的に応じて最適な数にすればよい。また、電磁波シールド用ガスケットとして利用する場合など、さらに長尺な導電部材が必要であれば、図4に例示したもの以上に繰り返し単位を増やしてもよい。
【0071】
また、以上説明した事例では、上方へ突出する凸部13と、下方へ突出する凸部15を、同数個に揃えてあったが、例えば、上方へ突出する凸部13が二つで、下方へ突出する凸部15が一つ、といった具合に、凸部13,15の総数が奇数となるような構造になっていてもよい。
【0072】
このような構造にすれば、吸着面として利用される金属平面部13A又はエラストマー平面部21の位置を、凸部の列設方向両端間の中央にすることができるので、吸引ノズルで吸引したときの安定性を、より一層改善することができる。
【0073】
さらに、上記実施形態で示した金属部3や金属部53では、図5(a)に例示する金属箔61のように、短冊状の金属箔の長手方向に対して垂直な方向へ細長く延びる形態とされたスリット状の貫通孔を形成してあったが、貫通孔の形態については、他の形態であってもよい。例えば、図5(b)〜図5(i)に例示する金属箔62〜69のように、様々な形態の貫通孔を考え得る。
【0074】
また、図5(a)〜図5(i)に例示した貫通孔の代わりに、図5(j)〜図5(o)に例示する金属箔70〜75のように、切欠きが形成されたものを採用してもよい。ただし、短冊状の金属箔が長手方向へ引っ張られた場合には、切欠きを有する金属箔70〜75よりも、貫通孔を有する金属箔61〜69の方が、機械的強度は高くなるので、そのような強度が要求されるか否かも考慮して、貫通孔を設けるか切欠きを設けるかを選定すると好ましい。
【0075】
さらに、上述の金属箔61〜75は、いずれも短冊状のものに貫通孔又は切欠きを設けた形態であったが、短冊状(長方形)のものをベースにするか否かも任意である。
【符号の説明】
【0076】
1,51・・・導電部材、3・・・金属部、5・・・エラストマー部、11・・・貫通孔、13,15・・・凸部、13A,15A・・・金属平面部、13B,15B・・・側面部、17・・・連設部、21,23・・・エラストマー平面部、31,33・・・プリント配線板、61〜75・・・金属箔。
図1
図2
図3
図4
図5