(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5799400
(24)【登録日】2015年9月4日
(45)【発行日】2015年10月28日
(54)【発明の名称】地盤注入装置および地盤注入工法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20151008BHJP
【FI】
E02D3/12 101
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-264466(P2014-264466)
(22)【出願日】2014年12月26日
【審査請求日】2015年2月4日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509023447
【氏名又は名称】強化土株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000162652
【氏名又は名称】強化土エンジニヤリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000230788
【氏名又は名称】日本基礎技術株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087491
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 享
(74)【代理人】
【識別番号】100104271
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 保子
(72)【発明者】
【氏名】島田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】橋本 正信
【審査官】
苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−307508(JP,A)
【文献】
特開2011−074720(JP,A)
【文献】
特開2004−137750(JP,A)
【文献】
実開平05−073034(JP,U)
【文献】
特開2001−323451(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出口を有する複数の注入管を吐出口が管軸方向の異なる位置にくるように結束することにより構成された結束注入管を削孔内に挿入し、当該注入管と孔壁との間隙をシール材を充填してシールした後、前記注入管を通して孔壁周囲の地盤中に地盤改良材を注入する地盤注入装置において、前記結束注入管の管軸方向の一ケ所または複数ケ所で注入管を湾曲させて湾曲部を形成し、または軸方向にゆるませて結束し、当該湾曲部またはゆるませた部分と削孔内に充填されたシール材が一体に固化してシールパッカーを形成することにより、注入管の吐出口から吐出した地盤改良材が結束注入管の隙間にそって地上に流出するのを防止するように構成されていることを特徴とする地盤注入装置。
【請求項2】
請求項1記載の地盤注入装置において、前記注入管は軟質性のチューブから形成されていることを特徴とする地盤注入装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の地盤注入装置において、前記注入管または結束注入管に棒状、或いは吐出口を有するパイプ状の芯材が抱き合わせてあることを特徴とする地盤注入装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の地盤注入装置において、地盤改良材貯蔵タンクと、一プラント中にそれぞれ独立した駆動源で作動し、かつ、集中管理装置で制御される複数のユニットポンプを備えた多連装注入装置と、地盤に埋設され、それぞれが前記各ユニットポンプと導管を通して接続された、吐出口を有する複数本の注入管とを備え、前記導管に流量圧力検出器を備えてなり、これにより前記流量圧力検出器からの流量および/または圧力データの信号を集中管理装置に送信し、注入状況を集中管理装置で一括管理しながら前記タンク中の地盤改良材を各ユニットポンプの作動により任意の注入速度、注入圧力あるいは注入量で各注入管に圧送し、複数の吐出口から同時に或いは選択的に地盤に多点注入することを特徴とする地盤注入装置。
【請求項5】
吐出口を有する複数の注入管を吐出口が管軸方向の異なる位置にくるように結束することにより構成された結束注入管を削孔内に挿入し、当該注入管と孔壁との間隙をシール材の注入によりシールした後、前記結束注入管を通して孔壁周囲の地盤に注入する地盤注入工法において、前記結束注入管の所定区間を湾曲させて湾曲部を形成し、または軸方向にゆるませて結束し、当該湾曲部またはゆるませた部分とシール材が一体に固化してシールパッカーを形成することにより、結束注入管の吐出口から吐出した地盤改良材が結束注入管の隙間にそって地上に流出するのを防止することを特徴とする地盤注入工法。
【請求項6】
請求項5記載の地盤注入工法において、地盤改良材貯蔵タンクと、一プラント中にそれぞれ独立した駆動源で作動し、かつ、集中管理装置で制御される複数のユニットポンプを備えた多連装注入装置と、地盤に埋設され、それぞれが前記各ユニットポンプと送液管を通して接続された、吐出口を有する複数本の注入管とを備え、前記送液管に流量圧力検出器を備えてなり、これにより前記流量圧力検出器からの流量および/または圧力データの信号を集中管理装置に送信し、注入状況を集中管理装置で一括管理しながら前記タンク中の地盤改良材を各ユニットポンプの作動により任意の注入速度、注入圧力あるいは注入量で各注入管に圧送し、複数の吐出口から同時に或いは選択的に地盤に多点注入することを特徴とする地盤注入工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出口を有する複数の注入細管を注入細管の吐出口が管軸方向の異なる位置にくるように結束することにより構成された結束注入管を削孔内に挿入し、当該結束注入管を通して地盤中に地盤改良材を注入する地盤注入装置並びに地盤注入工法に関し、特に結束注入管を通して地盤中に地盤改良材を注入する際、各注入細管の吐出口から削孔内に吐出された注入材が、注入細管と注入細管との間隙を管軸方向に沿って流れ互いに混ざり合ってしまったり、あるいは地上に溢れ出してしまう事態を防止して、孔壁周囲の各注入ステージに最適量の注入材を確実にかつ効率的に浸透注入できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
これまで出願人は、先端部に吐出口を有する複数の注入細管を各注入細管の吐出口が管軸方向の異なる位置にくるように互いに添い合わせ結束することにより構成され結束注入管(
図9(b))を用いて、地盤中の各ステージに必要量の地盤改良材をステージ毎に浸透注入させて地盤改良を行う地盤注入工法を開発している(
図9(a),(b)、特許文献1参照)。
【0003】
この結束注入管を利用すると、地盤中の各ステージに最適量の注入材を注入することができ、また各ステージに同時に、あるいは時間をずらして注入することもでき、さらにステージ毎に異なる注入材を注入することもできる等のメリットがある。
【0004】
また、複数の注入管を複数の注入地点に間隔をおいて設置して注入することにより、造成地などの広大な面積の地盤に対しても、複数地点に同時にまたは順番に、あるいは注入地点毎に異なる注入材を注入することができ、きわめて効率的に地盤改良を実施することができる(
図9(a))。
【0005】
実施に際しては、ボーリング等で形成した削孔内に結束注入管を挿入し、その周囲にセメントベントナイトスラリーや低アルカリのカルシウムシリケートスラリー等の低強度の固化材(以下「シール材」という)を充填して孔壁と結束注入管との間隙をシールする。そして、各注入細管を通して削孔内に注入材を注入する。
【0006】
そうすると、各注入細管の吐出口から削孔内の各ステージに注入材が吐出し、注入材はその吐出圧で吐出口周辺の固化したシール材を砕いて孔壁側に流れ、孔壁より孔壁周囲の各ステージ内に浸透注入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3724644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の結束注入管では、結束注入管と孔壁間の間隙はセメントスラリー等からなるシール材を充填することによりほぼ完璧にシールできるものの、結束注入管を構成する注入細管と注入細管との間隙には懸濁液が浸入し得ないので完全にシルールすることは困難であった。
【0009】
このため、各注入細管の吐出口から吐出した注入材は、注入細管と注入細管との間隙を管軸方向に流れて地上に流出してしまうことがあった。
【0010】
また、ステージごとに最適量の地盤改良材、あるいは異なる種類の地盤改良材を注入したつもりでも、地上に溢れ出さないまでも削孔内で互いに混ざり合ってしまい、ステージごとに最適量の地盤改良材、異なる種類の地盤改良材を確実に注入できないという課題があった。
【0011】
この現象は結束注入管の場合に限らず、単体の注入管を用いても発生することがあり、注入管の吐出口から吐出した注入材が注入管とその周囲のシール材との間隙を注入管に沿って管軸方向に流れて地上に溢れ出してしまうという課題があった。
【0012】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、削孔内に挿入された結束注入管の各注入細管の吐出口から削孔内に吐出した地盤改良材が、注入管に沿って、或いは注入管と注入管との間隙に沿って管軸方向に流れて互いに混ざり合ってしまつたり、あるいは地上に溢れ出してしまう事態を防止し、簡便な構造でかつ施工条件、地盤条件に容易に順応できる結束注入管を用いて孔壁周囲の各ステージに確実に浸透注入できるようにした地盤改良装置並びに地盤注入工法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、吐出口を有する注入管を削孔内に挿入し、当該注入管と孔壁との間隙をシール材の注入によりシールした後、前記注入管を通して孔壁周囲の地盤中に地盤改良材を注入することにより地盤改良を行う地盤注入装置および注入工法の発明であり、前記注入管の所定区間を湾曲に変形させ、かつ当該湾曲部と前記シール材が一体に固化したシールパッカーを形成することにより、前記注入管の吐出口から吐出した地盤改良材が注入管に沿って或いは注入管と注入管同士の隙間に沿って、地上に流出するのを防止するようにしたことを特徴とするものである。
【0014】
このようにすることにより、注入深度が地表面に近くても地盤改良液は地表面に逸出せずに所定の深度で周辺に浸透することができる(
図1〜
図7)。
【0015】
また、前記注入管を複数、吐出口が管軸方向の異なる位置にくるように互いに添い合わせ結束することにより構成された結束注入管を削孔内に挿入し、当該結束注入管と孔壁との間隙をシール材の注入によりシールした後、前記結束注入管を通して孔壁周囲の各ステージに注入材を注入する地盤注入装置および注入工法の発明であり、前記各注入管の所定区間を湾曲に変形させ、あるいは軸方向にゆるませて結束し、かつ当該湾曲部あるいはゆるませた部分と前記シール材が一体に固化したシールパッカーを形成することにより、前記各注入管の吐出口から吐出した注入材が各注入管に沿って地上に流出したり、互いに混ざり合うのを防止するようにしたことを特徴とするものである(
図1〜
図3)。
【0016】
上記したいずれの方法においても、注入管の一ケ所または複数ケ所所で一定区間を湾曲に変形させ、あるいは軸方向にゆるませて結束し、当該湾曲部と前記シール材が一体に固化したシールパッカーを形成することで、注入管の外周がシールパッカーによって完全にシールされるのみならず、湾曲部内等に湾曲部等と一体となったシールパッカーが形成され、また結束注入管の内側にも湾曲部等の拡径部の隙間からシール材が入り込んで結束注入細管と一体となって固化して強固なシールパッカーを形成するため、注入管の吐出口から吐出した地盤改良材が注入管の外周面に沿って、並びに結束注入管の隙間に沿ってシールパッカーより上に上昇し、地上に溢れ出すような事態を確実に防止することができる(
図1〜
図7)。
【0017】
また、湾曲部は注入管の上部(地盤表層部)、すなわち削孔の地上近くに位置するように一個(
図4、
図5〜
図7参照)または管軸方向に複数形成してもよい(
図1〜
図3)。
【0018】
シール材としては固結性材料ならすべて用いることができるがセメントグラウトやセメントベントナイト、スラグ系懸濁液、その他懸濁液を任意の強度に配合したものを用いることが好ましい。また、浸透性注入材を注入するにあたって、シール材の強度が固くて割れにくい場合は、あらかじめ水等を圧入してシール材を割裂してから浸透性注入材を注入してもよい。
【0019】
さらに、注入材の補充用注入管を先端が湾曲部あるいはゆるめた部分に位置するように設置して、湾曲部を有する位置に注入材を補充注入することにより止水性と、固結性が高めて、注入圧が高くても地表面に注入材が逸出しにくいシールパッカーを形成することができる(
図2、
図3、
図7参照)。また湾曲部では補充用注入管を用いて任意の注入材を用いて強固なシールパッカーを形成することもできるし、或いは一次注入材(CB(セメントベントナイト)や瞬結材等)を注入して逸脱しやすい土層を固結することができる。
【0020】
また、上記シールパッカーは軟質性のチューブを軸方向にゆるませて結束して地盤中に設置することによりシールグラウトが容易に結束注入管同士の隙間に入り込み、結束注入細管とシールグラウトが一体となった強固なシールパッカーを形成することができる(
図2)。
【0021】
このように本発明は、各注入管の吐出口を有する上側の所定区間を孔壁側に湾曲に変形させてあるいはゆるめて拡径部を形成し、当該拡径部の各湾曲部とシール材とを一体に固化したシールパッカーを形成することで、また結束細管または拡径部を形成することによりその隙間からシールグラウトが入り込み、各注入管の外周部も内部の隙間もシールパッカーによって完全にシールされるため、各注入管の吐出口から吐出した注入材が注入管の外周面のみならず、結束注入管の隙間に沿ってシールパッカーより上に上昇することはないので、各ステージに吐出された注入材が混ざり合ってしまうのを確実に防止することができ、また、注入深度が地表面に近くても、地盤改良材の地上への逸出を防ぐことができる(
図1〜
図7)。
【0022】
これにより各注入管を通して孔壁周囲の各ステージに最適量の注入材を無駄なく確実に浸透注入させることができる。また、シールパッカー中に設けた吐出口から地盤改良材を注入することによって、シールパッカーを横方向に割裂して地盤中の所定の領域に浸透させることができる。この場合、勿論、地盤改良材が注入管同士の隙間から地盤中に逸出することはない(
図2)。
【0023】
結束注入管は結束金具で複数の注入管を結束しなくても、複数の注入管を抱き合わせて削孔内に挿入したものでもよい。
【0024】
注入管にはポリエチレンやポリエステル等の変形自在な軟質性のチューブや塩ビパイプ等が適し、鉄筋や塩ビ棒などの硬質樹脂製の棒状材からなる芯材を抱き合わせて形状を保持することにより削孔内に容易に挿入することができ、また曲線状に形成された削孔内にも容易に挿入することができる。
【0025】
また、注入管はビニール製のチューブで形成し、鉄筋や塩ビ棒などの硬質樹脂製の棒状材を芯材として抱き合わせることにより、曲線状に形成された削孔内にも容易に挿入することができる。また、芯材に孔開きパイプを用いることにより湾曲部、或いは所定の位置から一次注入材を注入したり、シール材を追加注入することもできる。
【0026】
また、注入圧力を高くする必要がある場合は、ナイロン等の強度の高い素材を用いてもよい。結束注入管を軟質材料で形成する利点は、工場から現場への運搬に際して丸めて現場に搬入し、現場で削孔径が大きくても小さくても任意にその湾曲を調節できるので、削孔径を小さくできるし、また湾曲部の長さも任意に調整できる。
【0027】
注入管どうしを結束する結束部材は、簡単な止め金具であってもよいし、
図1〜
図4のように芯材を囲んで複数の注入管を挿入する部材でもよい。もちろんこれらを抱き合わせるだけの結束注入管でも、上記シールパッカーを設けることにより地上部への注入材の逸出を防止することができる。また、注入管の吐出口部分は、逆止弁で覆うことが好ましい。
【0028】
本発明における注入材は、懸濁性グラウト、シリカ系グラウト、その他任意の地盤改良材料を用いることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、注入管の所定区間を孔壁側に湾曲に変形させ、当該湾曲部と前記シール材が一体に固化したシールパッカーを形成することで、注入管の外周も湾曲した注入管内部もシールパッカーによって完全にシールされるため、注入管の吐出口から吐出した注入材が注入管の外周面や注入管と芯材との間に沿ってシールパッカーより上に上昇し、地上に溢れ出すような事態を確実に防止することができる。
【0030】
また特に、結束注入管においては、吐出口を有する上側の各注入管の所定区間を孔壁側に湾曲に変形させ、当該各湾曲部とシール材とを一体に固化したシールパッカーを形成することで、各注入管の外周のみならず、湾曲部の拡径部の隙間から湾曲部内部にシール材が入り込んで固結して、シールパッカーによって完全にシールされるため、各注入管の吐出口から吐出した注入材が注入管の外周面のみならず、注入管同士の隙間に沿ってシールパッカーより上に上昇することはないので、各ステージに吐出された注入材が混ざり合ってしまったり、地上に逸出するのを確実に防止することができる。
【0031】
これにより各注入管を通して孔壁周囲の各ステージに最適量の注入材を無駄なく確実に浸透注入させることができる。また上記シールパッカーは軟質性のチューブを軸方向にゆるませて結束して地盤中に設置することにより結束注入細管と一体となった強固なシールパッカーを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の結束注入管による地盤注入装置および地盤注入方法において、削孔内に挿入された結束注入管を示し、(a)はその一部正面図、(b),(c)は、(a)におけるイ−イ線、ロ−ロ線断面図である。
【
図2】軸方向にゆるませて設置した結束注入管を示し、吐出口はシールパッカー中に設けられている。
【
図3】補充用注入管を備えた結束注入管を示し、(a)はその一部正面図、(b),(c)は(a)におけるイ−イ線、ロ−ロ線断面図である。
【
図4】(a),(b)は、結束注入管の変形例を図示したものであり、いずれもその一部正面図である。
【
図5】(a),(b)は、1本のチューブからなる注入管を示し、いずれもその側面図である。
【
図6】(a),(b)は、芯材を備えた1本のチューブからなる注入管を示し、いずれもその側面図である。
【
図7】(a),(b)は、補充用注入管を備えた1本のチューブからなる注入管を示し、いずれも側面図である。
【
図8】(a),(b)は、本発明の実施形態を図示したものであり、(a)は複数の結束注入管、或いは
図5〜
図7の注入管を用いた地盤注入方法および注入装置の説明図である。(b)は複数の結束注入管を用いた地盤注入方法および注入装置である。
【
図9】特許文献1に記載されている地盤注入装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図8は、本発明の地盤注入方法および地盤注入装置の一実施形態を図示したものであり、削孔A内に挿入された本発明注入管1と、当該注入管1に送液管2を通して送液される注入材の供給タンク3と、当該注入材の供給タンク3から注入管1に送液管2を通して注入材を送液するための複数のユニットポンプPからなる送液ポンプ4を備えている。
【0034】
また、注入管1に送液される注入材の流量と圧力を計測するための流量圧力計5、結束注入管1の各注入細管1a(
図1〜4参照)に送液される注入材の送液バルブ6、さらに送液ポンプ4、流量圧力計5および送液バルブ6を適切な状態に制御するコントローラ7等を備えている。
【0035】
結束注入管1は、例えば、
図1に図示するように、下端部に吐出口1bを有する複数の注入細管1aより構成され、当該複数の注入細管1aは各注入細管1aの吐出口1bが管軸方向に一定の間隔をおいて互いに異なる位置にくるように管軸方向に添い合わせられ、かつ管軸方向に間隔をおいて複数箇所が結束部材8によって結束されている。
【0036】
また、複数の注入細管1aの中心部に各注入細管1aの形状を保持する芯材9が結束注入管1の管軸方向に通して抱き合わせられ、複数の注入細管1aと共に一つに結束されている。
【0037】
注入細管1aにはビニールチューブ等の変形自在な合成樹脂製のチューブが用いられ、また芯材9には金属製(鉄筋等)または硬質樹脂製の棒状材より形成されている。曲線ボーリングで形成された削孔内に挿入する場合(図示せず)は、芯材は可撓性のある材料から形成されたものが望ましい。
【0038】
結束部材8には結束ひもやテープや結束冶具(図示せず)を用いることで、注入細管1aどうしおよび各注入細管1aと芯材9とを簡単に結束できて結束注入管1を容易に製作することができる。
【0039】
結束冶具8は、硬質合成樹脂材などからなるブロック片から形成され、また中心に芯材9が貫通する芯材貫通孔が形成され、周縁部に複数の注入細管1aが一本ずつ貫通する複数の貫通溝が円周方向に可能な限り間隙を詰めて形成されている。
【0040】
また、各注入細管1aどうしおよび各注入細管1aと芯材9は互いに密着するように添い合わせて結束することにより、結束注入管1の外径が可能な限り小径となるように構成され、これにより結束注入管1を挿入する削孔Aの内径を小さくすることができる。
【0041】
さらに、結束注入管1の各吐出口1bを有する位置の上側に孔壁側に拡径する拡径部10が形成されている。拡径部10は、各注入細管1aの管軸方向の一定区間を孔壁側にほぼ湾曲に変形させることにより形成された複数の湾曲部1c,1cより形成されている。拡径部10は各湾曲部1cの曲率を変えることにより結束注入管1の管軸方向に長軸を有する楕円体、結束注入管の管軸直角方向に長軸を有する楕円体、球体状に形成することができる。
【0042】
これにより、結束注入管1の拡径部10においては、隣接する各注入細管1aと注入細管1aとの間、各注入細管1aと芯材9との間に充分な間隙が確保され、また、各注入細管1aと孔壁A1との間にも一定の間隙が確保される。
【0043】
また、削孔1内に注入されたシール材Bは、拡径部10において隣接する各注入細管1aと注入細管1aとの間、各注入細管1aと芯材9との間、さらに孔壁A1と各注入細管1aとの間にも確実に充填されて、拡径部10と共に一体に固化して各吐出口1bの上側において削孔AをシールするシールパッカーCを形成する。
【0044】
これにより、各注入細管1aの吐出口1bから削孔A内に吐出された注入材Bは、各拡径部10においてシールパッカーCによって管軸方向への流れが完全に遮断されるため、各吐出口1bから吐出された注入材し吐出口近傍のシール材Bを砕いて孔壁A1より各ステージに浸透注入させることができる。
【0045】
なお、
図1〜
図4に図示するいずれの結束注入管においても、各注入細管1aが塩ビ管などの硬質樹脂管から形成されている場合、芯材9は省略されることがある。
【0046】
図4(a),(b)は、同じく結束注入管の変形例を図示したものであり、いずれも、
図1、
図3で説明した拡径部10が結束注入管1の上部に形成されている。これらの結束注入管は芯材9を備えているが削孔深度が浅かったり、注入細管がある程度硬ければ芯材を省略してもよい。この結束注入管によれば、削孔Aの上部にシールパッカーCが形成され、注入材が各注入細管1aに沿って地上に流出するのを防止することができる。なお、拡径部10は結束注入管の上部に複数形成されていてもよい。
【0047】
図5、
図6、
図7に図示する注入管は、一本のチューブから形成され、下部に注入材の吐出口1b、上部に湾曲部1cがそれぞれ形成されている。
【0048】
湾曲部1cは、注入管1の管軸方向の一定区間を孔壁側に湾曲に変形させることにより形成されている。
【0049】
なお、
図5(a)に図示する注入管1は1個の湾曲部1cを有し、
図5(b)に図示する注入管1は、管軸方向に隣接して交互に湾曲する2個の湾曲部1c,1cを有している。また、
図6(a),(b)に図示する注入管は、
図5(a),(b)で説明した注入管1に芯材9を抱き合わせて形成された注入管を図示したものである。
【0050】
さらに、
図3と
図7(a),(b)に図示する注入管は、シールパッカーCを形成するシール材を補充するための補充用注入管14を備えている。補充用注入管14によってシール材を補充注入することでシールパッカーCによる止水性を高めることができる。
【0051】
なお、補充用注入管14は、各シールパッカーCを形成する位置に先端部が到達するように設置されていてもよく(
図3参照)、また地盤の表層部など、主な位置のシールパッカーCを形成する位置にのみ先端部が到達するように設置されていてもよい(
図7参照)。
【0052】
これらの注入管によると、削孔A内の上部に注入管1の湾曲部1cと削孔A内に充填されたシール材Bが一体に固結してシールパッカーCが形成されることで、注入管1の外周に沿って上昇する注入材が地上に流出するのを防止することができ、また、注入管1がシールパッカーCを固定するアンカーとなって、注入管1の吐出口1bから吐出した注入材の上向きの水圧に抵抗する。
【0053】
図8は、本発明の他の実施形態を図示したものであり、特に
図1〜
図4で説明した結束注入管を複数備えている。当該地盤注入装置によれば、広大な面積を有する地盤の地盤改良や地盤浄化をきわめて効率的にしかも短期間で行うことができる。
【0054】
具体的に説明すると、所定領域の地盤に間隔をおいて形成された複数の削孔A内に上記した結束注入管1がそれぞれ挿入されている。また、各結束注入管1に注入材の供給タンク3から延びる共通の送液管2aがそれぞれ接続され、送液管2aには供給タンク3から各注入地点の結束注入管1に注入材を送液するための送液ポンプ4、各結束注入管1に送液される注入材の流量と圧力を計測するための流量・圧力計5、各結束注入管1への送液の開始と停止を切り替える流路切替バルブ12、さらに各結束注入管1において各注入細管1aへの流量を調整する送液バルブ6等がそれぞれ接続されている。
【0055】
さらに送液ポンプ4、各送液バルブ6および各流路切替バルブ12にはこれらの機器を適切な状態に制御するためのコントローラ7が接続されている。
【0056】
このような構成において、送液ポンプ4、流量・圧力計5、流路切替バルブ12および流量調節6をコントローラ7によって適切に制御することにより、各注入地点に注入材を送液すると共に、各注入地点において孔壁周囲の各ステージ内に所定の量の注入材を注入することができる。また、流路切替バルブ12を操作することにより1削孔内の結束注入細管の複数の吐出口に同時に選択的に注入することもできるし、複数の削孔中に設けた結束注入細管に同時に或いは選択的に注入することもできる(
図8(b))。
【0057】
さらに、各注入地点の送液バルブ6を操作することにより各ステージへの注入材の注入量を調節したり、注入を停止したりすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、結束注入管を用いた地盤注入工法によって地盤改良や地盤浄化を実施する際に、結束注入管を構成する各注入細管の吐出口から削孔内に吐出した注入材が、削孔内で混ざり合ってしまったり地上に溢れ出したりするのを防止して、孔壁周囲の各ステージ(土層)内に注入材を確実に浸透注入させることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 結束注入管、注入管
1a 注入細管
1b 吐出口
1c 湾曲部
2 送液管
3 注入材の供給タンク
4 多連装注入装置
5 流量・圧力計
6 吐出口付きパイプ
7 集中管理装置
8 結束部材
9 芯材
10 拡径部
12 バルブ
14 補充用注入管
A 削孔(ボーリング孔)
A1 孔壁
B シール材
C シールパッカー
P ユニットポンプ
【要約】
【課題】各注入細管の吐出口から削孔内に吐出した注入材が削孔内で混合したり地上に流出したりするのを防止して、孔壁内の各ステージに浸透注入させるようにした地盤注入工法および地盤注入装置を提供する。
【解決手段】削孔A内に結束注入管1を挿入し、結束注入管1と孔壁A1との間隙を、シール材Bを注入してシールする。結束注入管1を通して孔壁周囲の各ステージに注入材を注入する。結束注入管1は下端部に吐出口1bを有する複数の注入細管1aを各注入細管1aの吐出口1bが管軸方向の異なる位置にくるように互いに添い合わせ結束することにより構成する。各注入細管1aの所定区間を孔壁側に湾曲に変形させ、当該湾曲部1cとシール材Bが一体に固化したシールパッカーCを形成することにより、各注入細管1aの吐出口1bから吐出した注入材が各注入細管1aに沿って地上に流出しないようにする。
【選択図】
図1