特許第5799438号(P5799438)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5799438
(24)【登録日】2015年9月4日
(45)【発行日】2015年10月28日
(54)【発明の名称】被覆カーボンナノチューブの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 31/02 20060101AFI20151008BHJP
   B01J 32/00 20060101ALI20151008BHJP
   C23C 14/18 20060101ALI20151008BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20151008BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20151008BHJP
【FI】
   C01B31/02 101F
   B01J32/00
   C23C14/18
   B82Y30/00
   B82Y40/00
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-39462(P2012-39462)
(22)【出願日】2012年2月27日
(65)【公開番号】特開2013-173650(P2013-173650A)
(43)【公開日】2013年9月5日
【審査請求日】2014年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】391001619
【氏名又は名称】長野県
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝澤 秀一
(72)【発明者】
【氏名】牧村 美加
(72)【発明者】
【氏名】平岡 和志
(72)【発明者】
【氏名】滝谷 俊夫
【審査官】 山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−141056(JP,A)
【文献】 特開2007−042632(JP,A)
【文献】 特開2006−092927(JP,A)
【文献】 特表2007−516354(JP,A)
【文献】 特開2003−081618(JP,A)
【文献】 特開平04−327265(JP,A)
【文献】 特開2006−044970(JP,A)
【文献】 特開2013−173649(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0208304(US,A1)
【文献】 国際公開第2011/022091(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B31/00−31/36
C23C14/00−14/58
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆膜を垂直配向のカーボンナノチューブの全周囲に形成してなる被覆カーボンナノチューブの製造方法であって、
上記被覆膜と同一の材料からなる基板に垂直配向のカーボンナノチューブを配置し、
上記垂直配向のカーボンナノチューブが配置された基板を加熱することで、上記基板の材料を融点以下で真空昇華させてカーボンナノチューブに付着させ、上記被覆膜を形成することを特徴とする被覆カーボンナノチューブの製造方法。
【請求項2】
被覆膜の粉末材料を、垂直配向のカーボンナノチューブが配置された基板と同時に加熱することで、粉末材料を昇華させてカーボンナノチューブに付着させ、上記被覆膜を形成することを特徴とする請求項1に記載の被覆カーボンナノチューブの製造方法。
【請求項3】
被覆膜が、カーボンナノチューブの燃焼を防止するものであることを特徴とする請求項1または2に記載の被覆カーボンナノチューブの製造方法。
【請求項4】
被覆膜が、担持する触媒の耐久性を向上させる材料からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の被覆カーボンナノチューブの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆カーボンナノチューブの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは、様々な特性を有する素材であり、多くの分野への応用が期待されている。特に、個々のカーボンナノチューブを垂直配向させたものは、表面積が大きいので、触媒を担持させた用途、例えば燃料電池の電極用に適している。触媒をカーボンナノチューブに十分担持させるためには、触媒とカーボンナノチューブとの分散性や結合力を高める必要があり、この分散性や結合力を高めるものとして、カーボンナノチューブの表面処理方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−44970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載のカーボンナノチューブは、垂直配向のカーボンナノチューブに比べて表面積が小さく、燃料電池として高効率が得られない。一方で垂直配向のカーボンナノチューブは、それぞれが互いに密集しているので、それぞれに対して、被覆膜の形成など表面処理を十分に行うことが困難である。
【0005】
そこで、本発明は、垂直配向のカーボンナノチューブのそれぞれの全周囲に、容易に被覆膜を形成することができる被覆カーボンナノチューブの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に係る被覆カーボンナノチューブの製造方法は、被覆膜を垂直配向のカーボンナノチューブの全周囲に形成してなる被覆カーボンナノチューブの製造方法であって、
上記被覆膜と同一の材料からなる基板に垂直配向のカーボンナノチューブを配置し、
上記垂直配向のカーボンナノチューブが配置された基板を加熱することで、上記基板の材料を融点以下で真空昇華させてカーボンナノチューブに付着させ、上記被覆膜を形成するものである。
【0007】
また、本発明の請求項2に係る被覆カーボンナノチューブの製造方法は、請求項1に記載の被覆カーボンナノチューブの製造方法において、被覆膜の粉末材料を、垂直配向のカーボンナノチューブが配置された基板と同時に加熱することで、粉末材料を昇華させてカーボンナノチューブに付着させ、上記被覆膜を形成するものである。
【0008】
さらに、本発明の請求項3に係る被覆カーボンナノチューブの製造方法は、請求項1または2に記載の被覆カーボンナノチューブの被覆膜が、カーボンナノチューブの燃焼を防止するものである。
【0009】
また、本発明の請求項4に係る被覆カーボンナノチューブの製造方法は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の被覆カーボンナノチューブの被覆膜が、担持する触媒の耐久性を向上させる材料からなるものである。
【発明の効果】
【0010】
上記被覆カーボンナノチューブの製造方法によると、垂直配向のようにそれぞれが密集していて十分に被覆膜を形成するのが困難なカーボンナノチューブであっても、それぞれのカーボンナノチューブの全周囲に、容易に被覆膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態に係る被覆カーボンナノチューブの拡大断面模式図である。
図2】TG分析の結果を示すグラフであり、(a)がカーボンナノチューブを試料とし、(b)が被覆カーボンナノチューブを試料としたものである。
図3】カーボンナノチューブが生成した基板の平面写真であり、(a)が被覆膜を形成する前の図、(b)が被覆膜を形成した後の図である。
図4】垂直配向させたカーボンナノチューブの拡大写真であり、(a)が被覆膜を形成する前の図、(b)が被覆膜を形成した後の図、(c)が被覆膜を形成する前の透過電子顕微鏡像、(d)が被覆膜を形成した後の透過電子顕微鏡像である。
図5】同被覆カーボンナノチューブを製造する製造装置の概略断面図である。
図6】同製造装置によりカーボンナノチューブに被覆膜を形成する過程を説明するための拡大断面模式図であり、(a)が被覆膜を形成する前の図、(b)が被覆膜を形成している状態の図、(c)が被覆膜を形成した後の図である。
図7】レーザーラマン分光分析の結果を示すグラフである。
図8図7のA部分を拡大したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係る被覆カーボンナノチューブについて図面に基づき説明する。
図1に示すように、被覆カーボンナノチューブ1は、垂直配向のカーボンナノチューブ2と、カーボンナノチューブ2の全周囲に形成された被覆膜3とから構成される。図1には、一例として、基板Kに配置された被覆カーボンナノチューブ1を示す。上記カーボンナノチューブ2は、太さがナノスケールで、長さが数μm〜数mmである。上記被覆膜3は、担持する触媒(例えばPt,Niなど)の耐久性が向上する材料、すなわち、担持する触媒との結合力が高い材料からなり、例えば、Si,SiC,Ti,TiC,Cr,Cr、またはCr複炭化物からなる。なお、上記被覆膜3は、一つの材料からなる単層であってもよく、層ごとに材料が異なる複層であってもよい。複層であれば、被覆カーボンナノチューブ1の耐環境性が向上する。
【0013】
また、上記被覆膜3は、カーボンナノチューブ2の燃焼を防止する材料(耐酸化性を有する材料)からなり、例えば、Si,SiC,TiC,Cr、またはCr複炭化物からなる。このため、被覆カーボンナノチューブ1に触媒を担持させるために、酸素雰囲気下で被覆カーボンナノチューブ1を高温(550℃〜900℃)に加熱しても、カーボンナノチューブ2は被覆膜3に保護されて燃焼しない。この作用を説明するために、カーボンナノチューブ2のみのTG分析の結果を図2(a)に示し、一例として被覆膜3がSiからなる被覆カーボンナノチューブ1のTG分析の結果を図2(b)に示す。図2(a)に示すように、カーボンナノチューブ2のみの場合は、温度が550℃を超えた辺りから重量が減少し始め、温度が700℃を超えると重量が−100%(つまり0)となっている。すなわち、被覆膜3が形成されていないカーボンナノチューブ2は、温度が550℃を超えた辺りから燃焼し始め、温度が700℃を超えると燃焼により完全に消失する。これに対して、図2(b)に示すように、Siからなる被覆膜3が全周囲に形成されたカーボンナノチューブ2は、温度が900度近くに達しても、重量が一定であるから、被覆膜3に保護されて燃焼していないことが分かる。
【0014】
さらに、上記被覆膜3がSiC,TiC,Cr、またはCr複炭化物からなる場合、当該被覆膜3は耐磨耗性が高い。このため、被覆カーボンナノチューブ1は耐磨耗性材料として使用され得る。
【0015】
加えて、上記被覆膜3がTiからなる場合、当該被覆膜3は電気伝導性を有する。このため、被覆膜3が大きな電気抵抗とならず、被覆カーボンナノチューブ1の電気伝導性が向上する。
【0016】
上記被覆膜3が形成される前のカーボンナノチューブ2を図3(a)および図4(a)に示し、その透過電子顕微鏡像を図4(c)に示す。上記被覆膜3(一例としてSiからなる)が形成された後のカーボンナノチューブ2(つまり被覆カーボンナノチューブ1)の写真を図3(b)および図4(b)に示し、その透過電子顕微鏡像を図4(d)に示す。被覆膜3が形成される前のカーボンナノチューブ2は、図3(a)に示すように黒色であり、被覆膜3が形成された後のカーボンナノチューブ2は、図3(b)に示すように灰色(被覆膜3の色)である。また、図4(a)に示すように、被覆膜3が形成される前のカーボンナノチューブ2は垂直配向されたものであり、図4(b)に示すように、被覆膜3が形成された後のカーボンナノチューブ2も垂直配向が維持されている。さらに、図4(c)に示すように、被覆膜3が形成される前は、当然ながらカーボンナノチューブ(多層)のみが見られ、図4(d)に示すように、被覆膜3が形成された後は、被覆膜3であるSi層(非晶質)およびSiC層と、カーボンナノチューブ(多層)とが見られる。
【0017】
以下、上記被覆カーボンナノチューブ1の製造方法について説明する。
まず、上記製造方法に使用する製造装置について説明する。
図5に示すように、上記製造装置は、内部に加熱用機器10が設置された真空チャンバ20と、この真空チャンバ20の内部を吸引してガスを排出し得る排出管32および真空ポンプ31と、上記真空チャンバ20の内部にガスを供給し得る供給管42およびガス供給源41とを備えている。上記加熱用機器10は、加熱対象物を収容し得るカーボン容器11と、このカーボン容器11の外側に配置されて加熱対象物を加熱し得るカーボンヒータ12と、カーボンヒータ12の外周を覆うカーボン断熱材13と、カーボン断熱材13の外周を覆うシリカ繊維断熱材14とを有している。上記排出管32および供給管42は、外側から、上記真空チャンバ20、シリカ繊維断熱材14およびカーボン断熱材13を貫通して設けられている。上記カーボン容器11に収容される加熱対象物は、基板Kに配置したカーボンナノチューブ2と、被覆膜3の粉末材料Mとである。なお、上記基板Kは、被覆膜3の材料と同一材料からなる。カーボンナノチューブ2が配置された基板Kと上記粉末材料Mとは、直接カーボン容器11に収容されるのではなく、タンタル容器Vに入れられるとともにタンタル蓋Lで閉じられてから、カーボン容器11に収容される。タンタル容器Vおよびタンタル蓋Lは、加熱により基板Kおよび粉末材料Mから昇華する材料を閉じ込めることで、効率よく上記材料をカーボンナノチューブ2に付着させ、カーボンナノチューブ2の全周囲を覆うようにして、被覆膜3を形成させるものである。
【0018】
上記製造装置を使用した被覆カーボンナノチューブ1の製造方法について説明する。
予め、熱CVD法などにより、基板Kにカーボンナノチューブ2を生成させておく。この基板Kは、カーボンナノチューブ2に形成したい被覆膜3の材料と同一材料からなるものとする。なお、上記基板Kではなく、別の基板にカーボンナノチューブ2を生成させた上で、生成したカーボンナノチューブ2を上記基板Kに転写して配置してもよい。
【0019】
上記カーボンナノチューブ2が配置された基板Kと上記粉末材料Mとをタンタル容器Vに入れ、このタンタル容器Vをタンタル蓋Lで閉じる。タンタル容器V内では、カーボンナノチューブ2側を上にして基板Kを配置し、基板Kの側方に粉末材料Mを配置する[図6(a)参照]。次に、タンタル容器Vおよびタンタル蓋Lを、真空チャンバ20内のカーボン容器11に収容する。
【0020】
そして、ガス供給源41から供給管42を介して真空チャンバ20内に不活性ガスを供給するとともに、真空チャンバ20内から排出管32および真空ポンプ31を介してガスを排出する。これにより、真空チャンバ20内を不活性ガスに置換し、所定の真空度(例えば7.6×10−4〜1.3×10−4Pa)にする。その後、カーボンヒータ12によりタンタル容器V内の基板Kおよび粉末材料Mを同時に加熱する。なお、加熱温度は、基板Kおよび粉末材料Mの融点以下である。加熱された基板Kから材料が昇華し、昇華した材料はカーボンナノチューブ2に下側(基板K側)から付着する。一方、加熱された粉末材料Mは昇華し、カーボンナノチューブ2に上側(基板Kの反対側)から付着する[図6(b)参照]。カーボンナノチューブ2に付着した材料により、被覆膜3が形成される。カーボンナノチューブ2に被覆膜3が形成されたか否かの判断は、カーボンナノチューブ2の色と被覆膜3の色とが異なるので、目視により行うことが可能である。
【0021】
また、上記カーボンヒータ12による加熱では、1100〜1350℃の加熱温度が好ましく、設定最高温度での保持時間10分〜12時間の加熱時間が好ましい。ここで、加熱温度は形成する被覆膜3の材質を左右し、加熱時間は被覆膜3の厚さを左右する。
【0022】
詳しく説明すると、被覆膜3は、低い加熱温度だと最表面は非晶質の非炭化物およびその下層は結晶質炭化物層からなり、中程度の加熱温度だと結晶質の非炭化物および結晶質炭化物(被覆膜3の外層が非炭化物で内層が炭化物)からなり、高い加熱温度だと結晶質の炭化物からなる。具体的には、上記基板Kの材料と粉末材料MとがSiの場合、被覆膜3は、1100℃の加熱温度だと非晶質のSiおよびその下層は結晶質のSiCからなり、1200℃の加熱温度だと結晶質の混合材料(被覆膜3の外層がSiで内層がSiC)からなり、1300℃の加熱温度だと結晶質のSiCからなる。なお、1200℃の加熱温度で形成された被覆膜3における内層のSiCは、外層のSiとカーボンナノチューブ2とが反応したものである。
【0023】
加熱温度と被覆膜3の材質との関係を説明するために、レーザーラマン分光分析の結果を図7および図8に示す。本分析対象は、図7の縦軸における上から、カーボンナノチューブ2と、加熱温度を7通りに変更して製造した7種類の被覆カーボンナノチューブ1と、SiCと、Siとである。上記7種類の被覆カーボンナノチューブ1の加熱温度は、図7の上から、1100℃(熱処理1),1150℃(熱処理2),1200℃(熱処理3),1250℃(熱処理4),1300℃(熱処理5),1350℃(熱処理6),1400℃(熱処理7)である。図7に示すように、加熱温度が最も低い熱処理1は、カーボンナノチューブ2と似たラマンシフトになっており、結晶質のSiと似たラマンシフトになっていない。これは、熱処理1(加熱温度1100℃)だと被覆膜3は非晶質のSiおよびその下層は結晶質のSiCからなるためである。これに対して、熱処理2(1150℃)〜熱処理4(1250℃)では、結晶質のSiの特徴であるラマンシフト520cm−1程度における山が現れる。また、熱処理3(1200℃)以上では結晶質のSiCの特徴であるラマンシフト800cm−1程度にピークが徐々に大きくなり、熱処理5(1300℃)以上では、結晶質のSiCの特徴であるラマンシフト800cm−1程度における山が顕著に現れてくる。すなわち、熱処理2(1200℃)〜熱処理4(1250℃)だと被覆膜3はSiだけでなくSiCも含み、熱処理5(1300℃)〜熱処理7(1350℃)だと被覆膜3はSiCからなることが分かる。
【0024】
ところで、加熱時間は、長いほど被覆膜3の量(つまり膜厚)を増加させる。なお、加熱時間は被覆膜3の材質を左右しない。
上記カーボンヒータ12による加熱により、カーボンナノチューブ2の全周囲が被覆膜3で覆われるとともに当該被覆膜3が所望の厚さになると[図5および図6(c)参照]、つまり所定の加熱時間が経過すると、加熱を終了する。このようにして、図1に示す被覆カーボンナノチューブ1が基板Kに製造される。なお、別の基板に被覆カーボンナノチューブ1を配置したい場合は、上記基板Kに製造された被覆カーボンナノチューブ1を上記別の基板に転写すればよい。
【0025】
このように、上記被覆カーボンナノチューブ1によると、垂直配向のカーボンナノチューブ2の全周囲が被覆膜3で覆われているので、被覆膜3の表面積が大きく、十分な量の触媒を担持することができる。また、被覆膜3は、担持する触媒の耐久性が向上する材料からなるので、上記被覆カーボンナノチューブ1は担持する触媒の耐久性を向上させることができる。したがって、上記被覆カーボンナノチューブ1は、十分な量の触媒を長期に亘って担持することができる。
【0026】
また、被覆膜3がカーボンナノチューブ2の燃焼を防止する材料(例えば、Si,SiC,TiC,Cr、またはCr複炭化物)からなる場合、触媒の担保させる際の加熱温度に注意する必要がなく、また、被覆カーボンナノチューブ1の高温耐久性を向上させることができ、言い換えれば、高温、酸化性雰囲気下でもカーボンナノチューブ2の燃焼や劣化を防止することができる。
【0027】
さらに、被覆膜3が耐磨耗性を有する材料(例えば、SiC,TiC,Cr、またはCr複炭化物)からなる場合、被覆カーボンナノチューブ1を耐磨耗性材料として使用することができる。
【0028】
また、被覆膜3が電気伝導性を有する材料(例えばTi)からなる場合、被覆カーボンナノチューブ1の電気伝導性を向上させることができる。
また、被覆膜3が、外層の非炭化物(例えばSi)および内層の炭化物(例えばSiC)からなるように、複層となることで、被覆カーボンナノチューブ1の耐環境性を向上させることができる。
【0029】
一方、上記被覆カーボンナノチューブ1の製造方法によると、垂直配向のようにそれぞれが密集していて十分に被覆膜3を形成するのが困難なカーボンナノチューブ2であっても、それぞれのカーボンナノチューブ2の全周囲に、容易に被覆膜3を形成することができる。
【0030】
また、カーボンナノチューブ2が配置された基板Kを加熱するだけでよく、容易に被覆カーボンナノチューブ1を製造することができる。
さらに、加熱温度を制御するだけで、外層の非炭化物(例えばSi)および内層の炭化物(例えばSiC)からなる複層の被覆膜3が形成され、耐環境性が向上した被覆カーボンナノチューブ1を容易に製造することができる。
【0031】
ところで、上記実施の形態に係る被覆カーボンナノチューブ1の製造方法では、粉末材料Mを用いるものとして説明したが、粉末材料Mを用いることなく、カーボンナノチューブ2が配置された基板Kのみを加熱してもよい。これにより、一層容易に被覆カーボンナノチューブ1を製造することができる。
【符号の説明】
【0032】
V タンタル容器
L タンタル蓋
1 被覆カーボンナノチューブ
2 カーボンナノチューブ
3 被覆膜
10 加熱用機器
11 カーボン容器
12 カーボンヒータ
13 カーボン断熱材
14 シリカ繊維断熱材
20 真空チャンバ
31 真空ポンプ
32 排出管
41 ガス供給源
42 供給管
図1
図2
図5
図6
図7
図8
図3
図4