特許第5799451号(P5799451)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5799451
(24)【登録日】2015年9月4日
(45)【発行日】2015年10月28日
(54)【発明の名称】区域閉鎖式ヘドロ浚渫工法
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/88 20060101AFI20151008BHJP
【FI】
   E02F3/88 F
   E02F3/88 C
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-82403(P2014-82403)
(22)【出願日】2014年4月14日
【審査請求日】2014年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】592151166
【氏名又は名称】橋梁技建株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082474
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 丈夫
(74)【代理人】
【識別番号】100129540
【弁理士】
【氏名又は名称】谷田 龍一
(72)【発明者】
【氏名】杉本 博樹
【審査官】 竹村 真一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭48−077639(JP,A)
【文献】 特開2007−307498(JP,A)
【文献】 特開2005−144340(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/105521(WO,A1)
【文献】 特開平03−206218(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/88−3/96
E02F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘドロ層が堆積する区域の上方より水内へ、上方開口が上蓋により開閉されると共に下方を開口とした掘削ケーシングを沈めてその下端部をヘドロ層内へ貫入させ、次に、掘削ケーシング内のヘドロ層を掘削して水中に分散させると共に生分解性の凝集用薬剤を攪拌混合して前記掘削分離したヘドロを凝集させ、更に、当該ヘドロ凝集物を掘削ケーシング内から外部へ搬出したあと、前記掘削ケーシングを隣接する区域上へ移動するようにした区域閉鎖式ヘドロ浚渫工法に於て、前記掘削ケーシングの外方に機械室を付設し、当該機械室に圧力水供給ポンプと凝集用薬剤タンクとポンプ加圧水内へ凝集用薬剤を混入するエジェクタ式混合器とを設けると共に、掘削ケーシングの胴部下方に圧力水噴射ノズルを設け、凝集用薬剤を混入した圧力水を前記圧力水噴射ノズルから掘削ケーシング内のヘドロ層内へ噴出することにより、ヘドロ層の掘削分離及び分離分散したヘドロと凝集用薬剤の撹拌混合を行うようにしたことを特徴とする閉鎖式ヘドロ浚渫工法。
【請求項2】
凝集用薬剤を、γ−ポリグルタミン酸を主体とする生分解性凝集剤とすると共に、掘削ケーシングの内容積1mに対して5〜1000の凝集剤を撹拌混合するようにした請求項1に記載の区域閉鎖式ヘドロ浚渫工法。
【請求項3】
凝集用薬剤を、γ−ポリグルタミン酸を主体とする生分解性の磁性凝集剤とすると共に、掘削ケーシングの内容積1mに対して5〜1000の凝集剤を撹拌混合するようにした請求項1に記載の区域閉鎖式ヘドロ浚渫工法。
【請求項4】
凝集したヘドロ凝集物を、掘削ケーシング内に配設したスクリューコンベア又は吸引ポンプに連結した吸引ホースを介して掘削ケーシング外へ搬出するようにした請求項1に記載の区域閉鎖式ヘドロ浚渫工法。
【請求項5】
掘削ケーシング内のヘドロ層を、掘削ケーシング内に配設したヘドロ掘削機により掘削分離するようにした請求項1に記載の区域閉鎖式ヘドロ浚渫工法。
【請求項6】
凝集用薬剤を磁性凝集剤とすると共に、凝集したヘドロ凝集物を、掘削ケーシング内に配設したスクリューコンベア又は磁性付与型スクリューコンベアにより掘削ケーシング外へ搬出するようにした請求項1に記載の区域閉鎖式ヘドロ浚渫工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川、湖沼、池等の底面に堆積したヘドロの浚渫工法の改良に関するものであり、特に、ボートレース場や公園内の池等に於けるヘドロの浚渫時に生ずる水質汚染や悪臭の発生を有効に防止しつつ、高能率でヘドロを排出除去(浚渫)できるようにしたヘドロ浚渫工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
汚染された河川や湖沼等の環境の回復には、水内の汚濁物質を除去して水質そのものの改善を図ること、及び川底等に堆積したヘドロを除去して臭気の発生や汚濁物質の水内への再拡散(再浮上)を防止することが、必要となる。
特に、後者の堆積したヘドロは、嫌気性下に存在するためメタンガスや悪臭を発生し、水中生物等に悪影響を与えるため、その除去が緊急の課題となっている。例えば、ボートレース場等に於いては、水の汚染によって夏期に悪臭が生じ、レースの開催自体が影響を受けると云う事態が生じている。
【0003】
そのため、これ迄にも各種の河川等の浄化処理技術が開発され、実用に供されている。図5はその一例を示すものであり、小型船舶Aに搭載した凝集用薬剤Bや薬剤混合・噴射装置C等から河川水内へ凝集用薬剤Bを噴出し、船舶Aのスクリュー等により凝集用薬剤Bを水内へ撹拌混合すると共に、凝集剤Bの撹拌により凝集して水内に浮遊した汚濁物質(凝集ブロック)を、船舶Aによりけん引したメッシュ状薄板体Dから成る回収具Dの外表面に付着させ、これによって水中に浮遊する凝集物(フロック)を回収するようにした河川等の水の浄化処理工法が開発され、実用に供されている(特開2005−205281号、特開2006−142183号等)。
【0004】
上記図5に示した水の浄化工法では、水内に浮遊する汚濁物質を比較的効率よく除去することが出来る。
しかし、河川の底面等に堆積固着したヘドロ等の除去は困難であり、当該工法により堆積固着したヘドロ等を回収除去するためには、先ず、堆積したヘドロ等を掻き混ぜして水中に再浮遊させ、次に、これに凝集用薬剤Bを撹拌混合して浮遊したヘドロを凝集物(フロック)としたあと、この凝集物(フロック)を回収具Dにより回収する必要があり、作業能率や経済性の点からその実用化が極めて困難な状態にある。
【0005】
そのため、現実には、河川床(河川底)に堆積固着したヘドロの除去は、従前から掘削機や掬取用バケット、ホッパ、吸引ポンプ等を備えた浚渫船(台船A)を用いて施工されており、所謂掘削掬取り式の浚渫工法が一般に広く用いられている。
【0006】
図6は,吸引ポンプを用いたこの種浚渫船Aの一例を示すものであり、河川や湖沼等の浚渫を行う台船Aに、水底に堆積した堆積土砂(ヘドロ)Eを吸引する吸引管Fを設け、該吸引管F先端の吸引口に上記堆積ヘドロEの表面を覆う平板Gを設け、上記台船Aを移動させながら上記平板Gの下面側の堆積ヘドロEを吸引して浚渫するように構成されている。
【0007】
同様に,図7は、河川底に堆積団結したヘドロE等の掘削除去に使用される浚渫装置Hの一例を示すものであり,台船Aの先端部に浚渫装置HをラダーIを介して上・下動自在に取り付け、掘削機Jにより掘削したヘドロEをスクリューコンベアK、フレキシブル管L、排送管Mを通して搬出するようにしている。
【0008】
しかし、上記図6図7等の掘削掬取や掘削吸引式の浚渫装置を用いるヘドロ浚渫は、ヘドロの掘削掬取や掘削吸引時に水中へ巻き上がるヘドロにより、周辺水域が広範囲にまたって著しく汚染されることになり、特に貧酸素化による水中生物への悪影響が甚大になると云う基本的な問題が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−2050281号
【特許文献2】特開2006−142183号
【特許文献3】WO2008−105521号
【特許文献4】特開2005−48358号
【特許文献5】特開平6−146337号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従前の河川等の底面に堆積固着したヘドロの浚渫に於ける上述の如き問題、即ち、河川等の底面に堆積固着したヘドロを撹拌により拡散させ、その後これに凝集剤を撹拌混合して凝集物(フロック)を回収する方式や、吸引ポンプや掘削機等を備えた浚渫船を用いる方式のヘドロ浚渫工法に於いては、掘削掬取り掘削吸引時に大量のヘドロの巻き上りを生じ、水質の悪化や臭気等による河川周辺の環境汚染を引き起すという問題を解決し、ヘドロ浚渫時に於ける前記環境汚染等の発生を、略完全に防止できるようにしたヘドロ浚渫工法を提供することを発明の主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、ヘドロ層が堆積する区域の上方より水内へ、上方開口が上蓋により開閉されると共に下方を開口とした掘削ケーシングを沈めてその下端部をヘドロ層内へ貫入させ、次に、掘削ケーシング内のヘドロ層を掘削して水中に分散させると共に生分解性の凝集用薬剤を攪拌混合して前記掘削分離したヘドロを凝集させ、更に、当該ヘドロ凝集物を掘削ケーシング内から外部へ搬出したあと、前記掘削ケーシングを隣接する区域上へ移動するようにした区域閉鎖式ヘドロ浚渫工法に於て、前記掘削ケーシングの外方に機械室を付設し、当該機械室に圧力水供給ポンプと凝集用薬剤タンクとポンプ加圧水内へ凝集用薬剤を混入するエジェクタ式混合器とを設けると共に、掘削ケーシングの胴部下方に圧力水噴射ノズルを設け、凝集用薬剤を混入した圧力水を前記圧力水噴射ノズルから掘削ケーシング内のヘドロ層内へ噴出することにより、ヘドロ層の掘削分離及び分離分散したヘドロと凝集用薬剤の撹拌混合を行うようにしたことを発明の基本構成とするものである。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の発明に於て、凝集用薬剤を、γ−ポリグルタミン酸を主体とする生分解性凝集剤とすると共に、掘削ケーシングの内容積1mに対して5〜1000gの凝集剤を撹拌混合するようにしたものである。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1の発明に於て、凝集用薬剤を、γ−ポリグルタミン酸を主体とする生分解性の磁性凝集剤とすると共に、掘削ケーシングの内容積1mに対して5〜1000gの凝集剤を撹拌混合するようにしたものである。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1の発明に於て、凝集したヘドロ凝集物を、掘削ケーシング内に配設したスクリューコンベア又は吸引ポンプに連結した吸引ホースを介して掘削ケーシング外へ搬出するようにしたものである。
【0015】
請求項5の発明は、請求項1の発明に於て、掘削ケーシング内のヘドロ層を、掘削ケーシング内に配設したヘドロ掘削機により掘削分離するようにしたものである。
【0016】
請求項6の発明は、請求項1の発明に於て、凝集用薬剤を磁性凝集剤とすると共に、凝集したヘドロ凝集物を、掘削ケーシング内に配設したスクリューコンベア又は磁性付与型スクリューコンベアにより掘削ケーシング外へ搬出するようにしたものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、河川等のヘドロ層が堆積する区域の上方より水内へ、上方開口が上蓋により開閉されると共に下方を開口とした掘削ケーシングを沈めてその下端部をヘドロ層内へ貫入させ、次に、掘削ケーシング内のヘドロ層を掘削して水中に分離分散させると共に、生分解性の凝集用薬剤を混合撹拌することにより掘削分離したヘドロを凝集させ、更に、当該へドロ凝集物を掘削ケーシング内から外部へ搬出したあと、前記掘削ケーシングを隣接する区域上へ移動させるようにしている。
【0019】
そのため、河床等に堆積固着したヘドロ層を掘削した際の掘削分散したヘドロの巻き上りが、掘削ケーシング内に限定されることになり、河川の他の領域を汚染することがない。
【0020】
また、掘削ケーシングの内部に設けた噴射ノズルから高圧水を噴射することにより、へドロ層の掘削を行う構成とした場合には、大掛りな掘削機を用いることなしに、単に高圧水ポンプを設けるだけでヘドロ層の掘削分離を効率よく行うことが出来、ヘドロ浚渫工事費の大幅な削減が可能となる。
【0021】
更に、生分解性の凝集剤を掘削分離したヘドロ内へ撹拌混合してヘドロ凝集物とし、このヘドロ凝集物を外部へ搬出するようにしているため、スクリューコンベアやポンプ吸引によりヘドロ凝集物の搬出を高能率で行うことができると共に、凝集剤そのものが生分解性であって無害なものであるため、安全性の高いヘドロ浚渫が可能となる。
【0022】
加えて、生分解性凝集剤に磁性凝集剤(MGA)を使用した場合には、スクリューコンベア等によるヘドロ凝集物の回収及び搬出をより能率よく行える。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明による区域閉鎖式ヘドロ浚渫工法の一実施形態に係る工程説明図である。
図2】掘削ケーシングの設定状況の一例を示す斜面図である。
図3図3の(a)は掘削ケーシングの一例を示す平面概要図であり、(b)は図3に於けるイ−イ視断面概要図である。
図4】掘削ケーシングに付設した機器室の平面概要図である。
図5】従前の凝集剤を用いる水中凝集物の回収方法の説明図である。
図6】従前の吸引方式によるヘドロ浚渫工法の説明図である。
図7】従前の掘削方式によるヘドロ浚渫工法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。
図1は、本発明の施工工程説明図であり、図1に於いて、1は掘削ケーシング設置工程、2はヘドロ掘削工程、3は凝集剤混入撹拌工程、4はヘドロ凝集工程、5はヘドロ凝集物搬出工程、6は掘削ケーシング移動工程であり、上記各工程から本工法発明が構成されている。
【0025】
前記掘削ケーシング設置工程1は、後述する金属製の掘削ケーシングを河川や湖沼等の所定箇所へ沈める工程であり、当該掘削ケーシングを沈めることにより、ヘドロの掘削浚渫を行う区域が他の領域から完全に分離され,掘削ケーシングの内部が閉鎖区域とされることになる。
【0026】
当該掘削ケーシング設置工程1では、浚渫対象に応じて適宜の機器・装置、例えば台船Aや、河岸に沿って走行するクレーン等が使用される。
図2は、クレーン船7を利用して、河川の一部分を利用する形式の競艇場のヘドロ浚渫に際して、掘削ケーシング8を設置する場合を示すものであり、深さ5〜10m程度の河川の底面へ高さH=3m、横幅W=10m、縦幅L=10mの金属製掘削ケーシング8を沈めるようにしている。
【0027】
尚、掘削ケーシング7の吊下げ用機器等は如何なるものであってもよく、施工場所によってはクレーン等の使用も可能である。また、図2に於いて、9は川底等に堆積固着したヘドロ層であり、ここでは厚さ2〜3mに堆積したヘドロ層の除去を行うようにしている。
【0028】
前記へドロ掘削工程2では、沈めた掘削ケーシング8の内部に位置する河川等の底面に堆積固着したヘドロ層9内へ、河川水を高圧で噴射することにより、前記ヘドロ層9の掘削分離と撹拌が行われる。
【0029】
尚、図1のへドロ掘削工程2に於いては、後述する掘削ケーシング8に設けた水中ポンプを用いて、噴射ノズルから高圧水を噴出することによりヘドロ層9を掘削分離するようにしているが、掘削ケーシング8内へ外部から掘削機(図示省略)を吊下げ配置して、当該掘削機を用いて機械的にヘドロ層9を掘削するようにしてもよいことは勿論である。
【0030】
前記凝集剤混入撹拌工程3は、掘削工程2により掘削分離されて掘削ケーシング8内に浮遊するヘドロ内へ凝集剤を混入し撹拌混合する工程であり、本実施形態に於いては、ヘドロ層9の掘削のために噴射するポンプ吸込み水内へ凝集剤を混入し、当該凝集剤の混入水をノズルから高圧力噴射することにより、へドロ層9の掘削と掘削したヘドロと水との撹拌混合を同時に行うようにしている。
【0031】
尚、ヘドロ掘削工程3が完了してから、別途に撹拌混合機等を掘削ケーシング8内へ吊下げ配備し、凝集剤を混入し乍ら撹拌混合機によってこれを撹拌することも勿論可能である。
上記掘削分離されたヘドロは、掘削ケーシング8内の水中に浮遊した状態となり、掘削ケーシング8の外部へ漏出することは殆ど起らない。
【0032】
掘削ケーシング8内へ混入される凝集剤としては、生分解性を有するγ−ポリグルタミン酸を主体とする凝集剤(商品名PGα21Ca・株式会社日本ポリグル製)を使用し、被処理水量1tonに対して5〜1000g(望ましくは10〜100gr)の量の凝集剤を混入する。
【0033】
また、後述するヘドロ凝集物の搬出を容易にするために、凝集剤として、γ−ポリグルタミン酸を主体とし、これに磁性材製微粒体を混合若しくは結合させることにより形成した磁性凝集剤(商品名MGA・株式会社ポリグル製)を使用するようにしてもよい。尚、被処理水への投入量は上記凝集剤(PGα21Ca)の場合と略同じである。
【0034】
尚、上記凝集剤PGα21Caや磁性凝集剤MGAは、特開2006−142183号、特開2006−205281号及びWO2008−105521号等により既に公知であるため、ここではその詳細な説明は省略する。
【0035】
前記凝集剤の混入撹拌工程3が完了すると、ヘドロ凝集工程4に入り、掘削ケーシング8内に於いて掘削分離されたヘドロと凝集剤と水の混合体を20〜60分間静置状態に置く。これにより、掘削分離された細かなヘドロが凝集剤を介して相互に結合、凝集し、比較的大きなヘドロ凝集物(フロック)となって掘削ケーシング8の下方部の水中に浮遊集積した状態となる。
【0036】
上記凝集工程4が完了すると、ヘドロ凝集物の搬出工程5に於いて、掘削ケーシング8の下方部水中に集積したヘドロ凝集物を掘削ケーシング8の外部へ搬出する。
【0037】
搬出の方法としては、掘削ケーシング8内へ外部よりスクリューコンベアを挿入し、スクリューコンベアを介してヘドロ凝集物を掻き上げる方法や、吸引ホースの先端を掘削ケーシング8の下方部へ挿入して真空ポンプによりヘドロ凝集物を吸引排出する方法、前記図5に示したような構造の回収具Dを掘削ケーシング8内へ挿入し、回収具Dの薄板Dの外表面にヘドロ凝集物を固着させて回収する方法等が用いられる。
尚、本実施形態に於いては、ヘドロ凝集物を真空ポンプにより吸引排出するようにしている。
【0038】
また、磁性体凝集剤MGAを使用した場合には、ヘドロ凝集物自体が磁性を持つため、凝集性能が著しく向上すると共にスクリューコンベア等のスクリュー体を磁化することにより、へドロ凝集物のみを極めて効率よく捕集して掻き上げ排出することができ、効率のよいヘドロ凝集物の排出が行える。
【0039】
上記へドロ凝集物の搬出が終われば、掘削ケーシング移動工程6に於いて、掘削ケーシング8を予め定めた隣接する区域上へ移動させ、当該新たな分割区域内のヘドロ浚渫作業を開始する。
尚、掘削ケーシング8の移動方法は如何なる方法であってもよく、本実施形態に於いては、ケーシング8を、その下端面が川底のヘドロ層の上方に位置するまで引き上げ、その後、横方向へケーシング8を移動させ、これを着床させるようにしている。
【0040】
また、ヘドロ堆積層が比較的薄い場合には、掘削ケーシング8の一側のみを若干上方へ持ち上げし、この状態で、持ち上げした側を牽引してケーシング8を所定位置へ移動させる。この方法により、ヘドロ層の巻き上げを生ずることなしに、掘削ケーシング8の横方向移動を行うことが出来る。
【0041】
図3は、本発明の実施に使用する掘削ケーシング8を示すものであり、(a)は上蓋を開放した状態の平面図、(b)は、(a)のイ−イ視断面図である。また、図4は、掘削ケーシング8に付設した機械室10の平面概要図である。
【0042】
図3及び図4を参照して、掘削ケーシング8は鋼板製であり、四角筒形の胴部(高さH=3〜10m、横幅W=5〜15m、縦幅L=5〜15m)11と、胴部11の上端部に開閉自在に軸支した上蓋12とから形成されており、胴部11の底面13は開放されている。
【0043】
即ち、胴部11の上面側は開口14とされており、対向する側壁上端に支軸17により軸支した上蓋12により、上方開口14は開閉される。
尚、本実施形態では、図3の(b)に示すように上蓋12を二つ割型に形成しているが、1枚の上蓋12とすることも可能である。
【0044】
胴部11を形成する側壁11a、11bの上端両側には,合計4個のフックを兼ねたスプリング受け15、15が設けられており、このスプリング受け15と上蓋12、12の間にスプリング16、16が介設されている。そして、このスプリング16、16により、上蓋12、12に閉鎖方向の押圧力が加えられることになる。
【0045】
また、掘削ケーシング8を形成する胴部11の一側下方の内側には、圧力水噴射ノズル18、圧力水供給等19、ポンプ吸水管20等が設けられており、ポンプ吸水管20の上端は胴部11の上方部に位置している。
【0046】
更に、掘削ケーシング8を形成する胴部11の一側下方の側部には、機械室21が気密に設けられており、ここに、図4に示すように圧力水供給ポンプ22、凝集剤タンク23、エジェクタ式混合器24、制御盤25等の機器類が収納されている。
【0047】
前記図2に示した様に、クレーン等で吊下げ支持された掘削ケーシング8は、河川等の予め定めた区域の上方へ移動され、水内へ下降される。ケーシング胴部11の下面(底面)は開放されているため、ケーシング8は順次自重によって水没し、且つ水圧によって、胴部11の下降中は上蓋12、12が開放状態となる。
【0048】
ケーシング胴部11の下端が川底部へ到着し、その自重によって下端面11cがヘドロ層9内へ貫入して川床面等へ着床すると、前記下降時に開放されていた蓋体12、12がスプリング16、16の弾性力及び蓋体12自体の自重により垂直状態から水平状態に戻され、胴部11の上方開口14が上蓋12より閉鎖される。
【0049】
その後は、前記図1に示した各工程に従って、ヘドロの浚渫が行われる。
尚、掘削ケーシング8内へ、外部からヘドロ掘削機やヘドロ搬出用スクリューコンベア等を挿入する場合には、上蓋12が必要に応じて開閉されることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は河川や湖沼、池のみならず、海洋等のヘドロ浚渫にも適用することができるものである。
【符号の説明】
【0051】
A 台船
B 凝集用薬剤
1 掘削ケーシング設置工程
2 ヘドロ掘削工程
3 凝集剤混入撹拌工程
4 ヘドロ凝集工程
5 ヘドロ凝集物搬出工程
6 掘削ケーシング移動工程
7 クレーン船
8 掘削ケーシング
9 ヘドロ層
10 機械室
11 胴部
11a、11a 側壁
12 上蓋
13 底面開口
14 上方開口
15 スプリング受け
16 スプリング
17 支軸
18 圧力水噴射ノズル
19 圧力水供給管
20 吸水管
21 機械室
22 圧力水供給ポンプ
23 凝集剤タンク
24 エジェクタ式混合器
25 制御盤
【要約】
【課題】 河川や湖沼、池等の底面に堆積固着したヘドロを、ヘドロの巻き上げ等によって広い水域に汚染を生ずることなしに、高能率で安全に、しかも安価に浚渫できるようにする。
【課題解決手段】 河川等のヘドロ層が堆積する区域の上方より水内へ、上方開口が上蓋により開閉されると共に下方が開口された掘削ケーシングを沈めてその下端部をヘドロ層内へ貫入させ、次に、掘削ケーシング内のヘドロ層を掘削して水中に分離分散させ、これに生分解性の凝集用薬剤を混合撹拌することにより掘削分離したヘドロを凝集させ、更に、当該へドロ凝集物を掘削ケーシング内から外部へ搬出したあと、前記掘削ケーシングを隣接する区域上へ移動させる。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7