(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような高密閉型住宅では、換気量が少なく、室内に湿気がこもりがちとなり、僅かな隙間等から室内の湿気が壁内に進入するおそれがある。水蒸気が多量に含まれる空気が壁内に入り込んで滞留した場合、内部結露等により建物の耐久性が低下してしまうおそれがある。また、断熱材を使用して結露により断熱材に水分が付着すると断熱性が著しく低下するおそれがある。そこで、壁内に空気が流れる通気層を有する壁内通気構造を形成すると、壁内の湿気を含んだ空気を移動させることができる。しかし、ドーム状構造物では頂上部が緩やかな半球状となるため、頂上部では上方に向かって開口させることとなり防水性等の理由から壁内の通気層の空気を効果的に排出できるような排気口を設け難いという第1の問題点があった。
【0006】
同様に防水性等の理由により、室内の空気を換気するための開口部をドーム状構造物の頂上部には設け難い。すなわち、ドーム状構造物の室内における良好な空気循環を達成することができるような効果的な開口部を頂上部には設け難い。ドーム状構造物では室内側もドーム状となっているため、暖まって上昇した空気がドーム頂上部に滞留してしまうという第2の問題点があった。
請求項1、2
及び3記載の発明は、上記した従来の技術の有する第1の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、壁内通気構造における壁内通気の排気口を効果的に確保することができ、壁の内部での結露の発生が抑えられて、耐久性、断熱性に優れたドーム状構造物を提供することを目的とする。また、三角形構造体内での結露の発生が抑えられて、耐久性、断熱性に優れたドーム状構造物を提供することを目的とする。
【0007】
請求項
4記載の発明は、上記した従来の技術の有する第2の問題点に鑑みてなされたものであり、上記した請求項1、2
又は3記載の発明の目的に加え、室内における良好な空気循環を達成することができるドーム状構造物を提供することを目的とする。
請求項
5記載の発明は、上記した請求項1、2、3
又は4に記載の発明の目的に加え、キューポラの屋根の内部での結露の発生が抑えられて、耐久性、耐熱性に優れたドーム状構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(請求項1)
請求項1記載の発明に係るドーム状構造物10は、周囲をドーム状に覆うドーム壁520が設けられているとともに、前記ドーム壁520の内部には空気が流れる通気層460を有する壁内通気構造が設けられたドーム状構造物10であって、前記ドーム状構造物10の頂部には、前記ドーム壁520から立ち上がる立設壁420とこの立設壁420の頂部間を覆う屋根440とによりキューポラ400が設けられ、前記立設壁420の内部には、前記ドーム壁520の通気層460と連通するとともに空気が流れる通気層460が形成され、前記立設壁420の頂部と前記屋根440との際に、前記立設壁420の通気層460から屋外に開放される排気口110が設けられているとともに、前記ドーム壁520は、三角形の各辺に相当する位置にそれぞれ設けられている3本のフレーム部材50からなるとともに、該三角形の各頂点に相当する位置にそれぞれ設けられている固定手段70により該フレーム部材50の端部同士が連結されている三角形構造体40が、複数個、隙間なく立体的に連設されることによりドーム状に形成され、前記三角形構造体40には、前記フレーム部材50の屋外側を面として覆う外側層と、前記外側層の室内側を覆う内側層とが形成され、前記外側層と前記内側層との間には前記通気層460が形成されて
おり、前記三角形構造体40を隙間なく連設することにより環状に形成された層構造部Lを複数、積み重ねた階層構造により形成され、前記三角形構造体40には、前記フレーム部材50の室外側を面として覆う前記内側層としての室外側シート材95と、前記三角形の辺縁に沿って前記室外側シート材95の室外側に位置する面の上に下地材として所定の距離を空けて固定される複数の辺縁胴縁310と、前記辺縁胴縁310の室外側に位置する面に固定されるとともに前記室外側シート材95との間に前記辺縁胴縁310を挟み込んだ状態で前記室外側シート材95を覆う前記外側層としての屋外側面状体90とが形成され、前記辺縁胴縁310間には、前記室外側シート材95と前記屋外側面状体90との間の内部空間100から隣接する三角形構造体40側に向かって連通する連通手段301が形成され、前記室外側シート材95と前記屋外側面状体90との間の前記内部空間100が前記連通手段301を介して隣接する前記三角形構造体40の前記内部空間100と連通することにより前記ドーム壁520の内部に前記通気層460が形成され、前記階層構造は、前記層構造部Lとして、前記三角形の頂点のみで上層と接する前記三角形構造体40(以下、「順三角形構造体42」とする。)と前記三角形の辺をもって前記上層と接する前記三角形構造体40(以下、「逆三角形構造体41」とする。)とが円周上に交互に並んだ交互層構造部20を有し、前記交互層構造部20においては、隣接する前記順三角形構造体42と前記逆三角形構造体41との境界に位置する前記辺縁胴縁310間の前記連通手段301を介して、前記順三角形構造体42の前記内部空間100から同一階層で隣接する前記逆三角形構造体41の前記内部空間100へ連通する隣接連通部360が形成されていることを特徴とする。
【0009】
ドーム状構造物10のドーム壁520の内部には、空気が流れる通気層460が形成されている。この通気層460内の空気は、屋外側の太陽光の照射を起因とする温度上昇や、室内暖房の熱等を起因とする温度上昇により、膨張して密度が小さくなることにより通気層460内を頂部に向かって上昇する。この上昇した空気は、ドーム壁520の頂部において、ドーム壁520の通気層460と連通するキューポラ400の立設壁420の通気層460に入り込む。立設壁420の通気層460に入り込んだ空気は、立設壁420の通気層460内を頂部に向かって上昇する。立設壁420の頂部にまで上昇した空気は、立設壁420の頂部と、キューポラ400の屋根440との際において、屋外に開放された排気口110から屋外へ排気される。このように、ドーム壁520及び立設壁420の通気層460内には、立設壁420の頂部に位置する排気口110まで自然に上昇する空気の流れが形成される。これにより、ドーム壁520及び立設壁420の通気層460の内部に室内側から湿気のある空気が進入しても、通気層460内の上昇する空気の流れによって効率的に排気口110から屋外に排出される。したがって、結露の元になる水蒸気が素早く屋外に排出される。このように、ドーム壁520内の空気の換気に効果的な排気口110を設けたことにより、ドーム状構造物10のドーム壁520及び立設壁420に自然な空気の流れを発生させる通気層460が形成され、ドーム壁520及び立設壁420の内部の換気が促進される。
【0010】
さらに、排気口110は立設壁420の頂部と屋根440との際(なお、立設壁420の頂部と屋根440との際の近傍の立設壁420や屋根440も含む)に設けてあるため、上方に向かって開口させることなく上方を屋根440により覆うことができ、雨が直接入り込み難い構造にすることができる。これにより、防水性に優れたものにすることができる。
結果として、本発明は、ドーム状構造物10の壁内通気構造における壁内通気の排気口110を効果的に確保することができ、ドーム状構造物10の壁の内部での結露の発生が抑えられて、耐久性、断熱性に優れたものにすることができる。
ここで、「三角形構造体40が、複数個、隙間なく立体的に連設されることによりドーム状に形成され」たドーム状構造物10とは、いわゆるジオデシックドーム、あるいはフラードーム等と呼ばれるドーム状の構造物を意味する。
また、「フレーム部材50」は、ドーム状構造物10の骨格となるものであって、ドーム状構造物10を構成する各三角形構造体40の各辺に相当する位置にそれぞれ設けられているものである。
三角形構造体40の外側層と内側層との間に通気層460が形成されているため、三角形構造体40内での結露の発生が抑えられる。その結果として、三角形構造体40内は乾燥状態が維持され、三角形構造体40内の環境が良好に維持される。
【0012】
また、「順三角形構造体42」は、交互層構造部20において、三角形の頂点のみで上層と接する三角形構造体40であって、頂点を上部に持つとともに底辺を下部に持つ上向き三角形である。
【0013】
また、「逆三角形構造体41」は、交互層構造部20において、三角形の辺をもって上層と接する逆三角形の三角形構造体40であって、頂点を下部に持つとともに底辺を上部に持つ下向き三角形を意味する。
また、ここで、「隣接する前記順三角形構造体42と前記逆三角形構造体41との境界に位置する前記辺縁胴縁310間の前記連通手段301を介して」には、交互層構造部20の同一階層に隣接する順三角形構造体42と逆三角形構造体41との境界に位置する順三角形構造体42及び逆三角形構造体41の両方の辺縁胴縁310間の連通手段301(具体的には、辺縁胴縁連通手段311)を介しているものが含まれる。
【0014】
順三角形構造体42の辺縁胴縁310間の連通手段301(具体的には、辺縁胴縁連通手段311)と、隣接する逆三角形構造体41の辺縁胴縁310間の連通手段301(具体的には、辺縁胴縁連通手段311)とを介して、順三角形構造体42の内部空間100から隣接する逆三角形構造体41の内部空間100へ連通する隣接連通部360が形成されている。この隣接連通部360を介して同一階層の交互層構造部20において順三角形構造体42の内部空間100から逆三角形構造体41の内部空間100への通気が行われる。
ここで、辺縁胴縁310は、たとえば所定の長さを有する複数個の短尺片が互いの間隔を空けて、三角形構造体40の辺縁に沿って配置されるものである。このような辺縁胴縁310の連通手段301は、短尺片間の間隔を空けた部分が隣接する三角形構造体40の内部に向かって連通する連通手段301となる。
【0015】
なお、辺縁胴縁310には、その長尺方向の途中において長尺方向に対して直交する方向に開口する孔や溝を設けても良い。
また、ここで、辺縁胴縁310は、各三角形構造体40のそれぞれの辺縁に沿って別個に配置されるものに限定されるものではない。本発明に係る辺縁胴縁310には、具体的にはたとえば隣接する三角形構造体40の辺縁に沿った共通の辺縁胴縁310が、隣接する三角形構造体40の境界の辺縁に沿って跨いで配置されるようなものでもよい。この場合であっても、この共通の辺縁胴縁310間の連通手段301を介して、隣接する三角形構造体40の内部空間へ連通する隣接連通部360が設けられていることになる。
【0016】
本発明では、交互層構造部20の順三角形構造体42の室外側シート材95と屋外側面状体90との間の内部空間100に水蒸気を多量に含んだ空気が室内側から進入しても、隣接連通部360を介して湿気を含んだ空気がこの順三角形構造体42の左右に隣接する逆三角形構造体41の内部空間100へ拡散して移動する。具体的には、順三角形構造体42の内部空間100の湿気を含んだ空気が、同一階層で隣接する前記順三角形構造体42と逆三角形構造体41との境界に位置する辺縁胴縁310間の連通手段301を介して、左右の逆三角形構造体41の内部空間100へ移動する。これにより、湿気を含んだ空気が、ドーム状構造物10内の特定の三角形構造体40の内部空間100に滞留することが防止される。したがって、ドーム状構造物10の三角形構造体40の内部空間100での結露の発生が抑えられる。その結果として、三角形構造体40の内部空間100は乾燥状態が維持され、三角形構造体40の内部空間100の環境が良好に維持される。また、三角形構造体40内であって室外側シート材95の室内側に湿気を含んだ空気が存在しても、その空気を三角形構造体40の内部空間100を介して拡散して移動させることが可能となる。これにより、耐久性のあるドーム状構造物10の提供が可能となる。また、三角形構造体40内に断熱材が使用されるような場合でも、三角形構造体40内が乾燥状態となるため、結露の発生が抑えられることで、断熱材に結露による水分の付着が抑えられ、断熱性能の低下が抑えられる。
【0017】
(請求項
2)
請求項
2記載の発明に係るドーム状構造物10は、
周囲をドーム状に覆うドーム壁520が設けられているとともに、前記ドーム壁520の内部には空気が流れる通気層460を有する壁内通気構造が設けられたドーム状構造物10であって、前記ドーム状構造物10の頂部には、前記ドーム壁520から立ち上がる立設壁420とこの立設壁420の頂部間を覆う屋根440とによりキューポラ400が設けられ、前記立設壁420の内部には、前記ドーム壁520の通気層460と連通するとともに空気が流れる通気層460が形成され、前記立設壁420の頂部と前記屋根440との際に、前記立設壁420の通気層460から屋外に開放される排気口110が設けられているとともに、前記ドーム壁520は、三角形の各辺に相当する位置にそれぞれ設けられている3本のフレーム部材50からなるとともに、該三角形の各頂点に相当する位置にそれぞれ設けられている固定手段70により該フレーム部材50の端部同士が連結されている三角形構造体40が、複数個、隙間なく立体的に連設されることによりドーム状に形成され、前記三角形構造体40には、前記フレーム部材50の屋外側を面として覆う外側層と、前記外側層の室内側を覆う内側層とが形成され、前記外側層と前記内側層との間には前記通気層460が形成されており、前記三角形構造体40には、前記三角形構造体40の室外側を面として覆う前記外側層としての室外側面状体80が形成されるとともに、前記三角形構造体40の室内側を面として覆う前記内側層としての室内側シート材225が形成され、前記三角形構造体40の内部には、前記フレーム部材50と、前記室外側面状体80と、前記室内側シート材225とにより囲まれる内部空間100が形成され、前記フレーム部材50には、隣接する前記三角形構造体40の前記内部空間100同士を連通して通気するためのフレーム部材通気孔60が形成され、前記室外側面状体80と前記室内側シート材225との間の前記内部空間100が前記フレーム部材通気孔60を介して隣接する前記三角形構造体40の前記内部空間100と連通することにより前記ドーム壁520の内部に前記通気層460が形成されていることを特徴とする。
【0018】
ここで、「三角形構造体40が、複数個、隙間なく立体的に連設されることによりドーム状に形成され」たドーム状構造物10や、「フレーム部材50」は、請求項
1の手段で説明したものと同一であるため説明を省略する。
本発明では、三角形構造体40のフレーム部材50と室外側面状体80と室内側シート材225とに囲まれる内部空間100に水蒸気を多量に含んだ空気が進入しても、フレーム部材通気孔60を介して、その湿気を含んだ空気がこの三角形構造体40に隣接する他の三角形構造体40の内部空間100へ拡散して移動する。これにより、その湿気を含んだ空気が、特定の三角形構造体40の内部空間100に滞留することが防止される。したがって、三角形構造体40の内部空間100内での結露の発生が抑えられる。その結果として、三角形構造体40の内部空間100内は乾燥状態が維持され、内部空間100の環境が良好に維持される。これにより、耐久性のあるドーム状構造物10の提供が可能となる。また、内部空間100内に断熱材が使用されるような場合でも、内部空間100内での結露の発生が抑えられることで、断熱材に結露による水分の付着が抑えられ、断熱性能の低下が抑えられる。
【0019】
(請求項
3)
請求項
3記載の発明に係るドーム状構造物10は、
周囲をドーム状に覆うドーム壁520が設けられているとともに、前記ドーム壁520の内部には空気が流れる通気層460を有する壁内通気構造が設けられたドーム状構造物10であって、前記ドーム状構造物10の頂部には、前記ドーム壁520から立ち上がる立設壁420とこの立設壁420の頂部間を覆う屋根440とによりキューポラ400が設けられ、前記立設壁420の内部には、前記ドーム壁520の通気層460と連通するとともに空気が流れる通気層460が形成され、前記立設壁420の頂部と前記屋根440との際に、前記立設壁420の通気層460から屋外に開放される排気口110が設けられているとともに、前記ドーム壁520は、三角形の各辺に相当する位置にそれぞれ設けられている3本のフレーム部材50からなるとともに、該三角形の各頂点に相当する位置にそれぞれ設けられている固定手段70により該フレーム部材50の端部同士が連結されている三角形構造体40が、複数個、隙間なく立体的に連設されることによりドーム状に形成され、前記三角形構造体40には、前記フレーム部材50の屋外側を面として覆う外側層と、前記外側層の室内側を覆う内側層とが形成され、前記外側層と前記内側層との間には前記通気層460が形成されており、前記三角形構造体40を隙間なく連設することにより環状に形成された層構造部Lを複数、積み重ねた階層構造により形成され、前記三角形構造体40には、前記フレーム部材50の室外側を面として覆う前記内側層としての室外側面状体80と、前記三角形の辺縁に沿って前記室外側面状体80の室外側に位置する面
の上に下地材として
所定の距離を空けて固定される複数の辺縁胴縁310と、前記辺縁胴縁310の室外側に位置する面に固定されるとともに前記室外側面状体80との間に前記辺縁胴縁310を挟み込んだ状態で前記室外側面状体80を覆う前記外側層としての屋外側面状体90とが形成され、前記辺縁胴縁310間には、前記室外側面状体80と前記屋外側面状体90との間の内部空間100から隣接する三角形構造体40側に向かって連通する連通手段301が形成され、前記室外側面状体80と前記屋外側面状体90との間の前記内部空間100が前記連通手段301を介して隣接する前記三角形構造体40の前記内部空間100と連通することにより前記ドーム壁520の内部に前記通気層460が形成され、前記階層構造は、前記層構造部Lとして、前記三角形の頂点のみで上層と接する前記三角形構造体40(以下、「順三角形構造体42」とする。)と前記三角形の辺をもって前記上層と接する前記三角形構造体40(以下、「逆三角形構造体41」とする。)とが円周上に交互に並んだ交互層構造部20を有し、前記交互層構造部20においては、隣接する前記順三角形構造体42と前記逆三角形構造体41との境界に位置する前記辺縁胴縁310間の前記連通手段301を介して、前記順三角形構造体42の前記内部空間100から同一階層で隣接する前記逆三角形構造体41の前記内部空間100へ連通する隣接連通部360が形成されていることを特徴とする。
【0020】
ここで、「三角形構造体40が、複数個、隙間なく立体的に連設されることによりドーム状に形成され」た「ドーム状構造物10」及び「フレーム部材50」
並びに「順三角形構造体42」、「逆三角形構造体41」、「連通手段301」及び「隣接する前記順三角形構造体42と前記逆三角形構造体41との境界に位置する前記辺縁胴縁310間の前記連通手段301を介して」は、請求項
1の手段の欄で説明したものと同一であるため説明を省略する。
順三角形構造体42と、隣接する逆三角形構造体41との辺縁に沿って複数の辺縁胴縁310が設けられ、その辺縁胴縁310間には、順三角形構造体42の内部空間100から隣接する逆三角形構造体41の内部空間100へ連通する隣接連通部360が形成されている。この隣接連通部360を介して同一階層の交互層構造部20において順三角形構造体42の内部空間100から逆三角形構造体41の内部空間100への通気が行われる。
【0021】
本発明では、交互層構造部20の順三角形構造体42の室外側面状体80と屋外側面状体90との間の内部空間100に水蒸気を多量に含んだ空気が室内側から進入しても、隣接連通部360を介して湿気を含んだ空気がこの順三角形構造体42の左右に隣接する逆三角形構造体41の内部空間100へ拡散して移動する。具体的には、順三角形構造体42の内部空間100の湿気を含んだ空気が、同一階層で隣接する前記順三角形構造体42と逆三角形構造体41との境界に位置する辺縁胴縁310の連通手段301を介して、左右の逆三角形構造体41の内部空間100へ移動する。これにより、湿気を含んだ空気が、ドーム状構造物10内の特定の三角形構造体40の内部空間100に滞留することが防止される。したがって、ドーム状構造物10の三角形構造体40の内部空間100での結露の発生が抑えられる。その結果として、三角形構造体40の内部空間100は乾燥状態が維持され、三角形構造体40の内部空間100の環境が良好に維持される。また、三角形構造体40内であって室外側面状体80の室内側に湿気を含んだ空気が存在しても、その空気を三角形構造体40の内部空間100を介して拡散して移動させることが可能となる。これにより、耐久性のあるドーム状構造物10の提供が可能となる。また、三角形構造体40内に断熱材が使用されるような場合でも、三角形構造体40内が乾燥状態となるため、結露の発生が抑えられることで、断熱材に結露による水分の付着が抑えられ、断熱性能の低下が抑えられる。
【0022】
(請求項
4)
請求項
4記載の発明は、上記した請求項1、2
又は3記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。すなわち、前記立設壁420には、室内側と室外側との間で換気可能な換気構造が設けられるとともに前記換気構造の両側に前記通気層460が形成されていることを特徴とする。
キューポラ400の屋根440の下に位置する立設壁420には室内側と室外側との間で換気可能な換気構造が設けられていることにより、室内から上昇してキューポラ400内部に入り込んできた空気を室内側から室外側に向かって効果的に排気することができる。これにより、ドーム状構造物10の室内における良好な空気循環を達成することができる。
【0023】
なお、キューポラ400の周囲に換気構造としての窓を複数個(具体的にはたとえば5個の三角形構造体40からなる五角形のキューポラ400では各三角形構造体40ごとに設けて合計5個)形成することにより、いずれの方向から風が吹いても、キューポラ400内部には風が通り抜ける路を形成することができる。これにより、上昇してキューポラ400内部に入り込んできた空気を効果的に外部に排出することができる。
(請求項
5)
請求項
5記載の発明は、上記した請求項1、2、3
又は4に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。すなわち、前記キューポラ400の屋根440の内部には、空気が流れる通気層460を有する屋根内通気構造450が設けられていることを特徴とする。
【0024】
キューポラ400の屋根440の内部に空気が流れる通気層460を有する屋根内通気構造450が形成されている。室内側から湿気のある空気が屋根440内に入り込んでも、通気層460を介して空気が移動し、湿気のある空気は拡散する。これにより、屋根440の内部の特定の箇所に湿気を含んだ空気が滞留することがなく、屋根440内部の結露の発生が抑えられる。
また、屋外側の太陽光の照射や室内暖房の熱を起因とする温度上昇により高温となった屋根440内部の空気が、通気層460を介して移動し、熱の排出が図られる。これにより、高温の空気が1カ所に滞留して周辺部材の温度上昇を招くことが防止される。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、以上のように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
請求項1、2
及び3記載の発明によれば、壁内通気構造における壁内通気の排気口を効果的に確保することができ、壁の内部での結露の発生が抑えられて、耐久性、断熱性に優れたドーム状構造物を提供することができる。また、三角形構造体内での結露の発生が抑えられて、耐久性、断熱性に優れたドーム状構造物を提供することができる。
請求項
4記載の発明によれば、請求項1、2
又は3記載の発明の効果に加えて、室内における良好な空気循環を達成することができるドーム状構造物を提供することができる。
【0026】
請求項
5記載の発明によれば、上記した請求項1、2、3
又は4記載の発明の効果に加え、キューポラの屋根の内部での結露の発生が抑えられて、耐久性、耐熱性に優れたドーム状構造物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1の実施の形態)
図1、
図2及び
図3に示すように、第1の実施の形態に係るドーム状構造物10には、周囲をドーム状(半球状)に覆うドーム壁520が設けられている。ドーム状構造物10の頂部には、ドーム壁520から立ち上がる五角筒状の立設壁420とこの立設壁420の頂部間を覆う屋根440とによりキューポラ400が設けられている。
前記ドーム壁520は、三角形の各辺に相当する位置にそれぞれ設けられている3本のフレーム部材50からなる三角形構造体40が複数個、隙間なく立体的に連設されることによりドーム状に形成されている。
【0029】
前記屋根440も、同様の三角形構造体40が5個、隙間なく立体的に連設されることによりドーム状の表面の一部の五角形部分が外方に向かって立設壁420の高さ分だけ突出しているように形成されている。前記立設壁420は、ドーム壁520の頂部の五角形の各辺から上方に向かって長方形状のものが5個、立設することにより全体として五角筒状に形成されている。なお、立設壁420が立ち上がる位置は、上述した位置に限定されるものではなく、上述した位置よりも頂上側又は下方側に変更してもよいものである。
結果として、前記ドーム状構造物10は、三角形構造体40を隙間なく連設することにより環状に形成された層構造部Lを5層、積み重ねた階層構造により形成されている。
前記層構造部Lは、最上部に位置する構造部であって全体形状が五角形状の第1構造部11を有している。前記キューポラ400は、この五角形状の上に固定されている。なお、本実施の形態ではキューポラ400の屋根440の下には、何も設けられていないが、特にこれに限定されるものではない。たとえば5個の三角形構造体40の構造部材であるフレーム部材50だけの骨組みだけが設けられてもよく、また、後述する第5の実施の形態(
図21、
図22)のように連続する天井部610が設けられてもよい。
そして、層構造部Lは、第1構造部11の立設壁420の下側に第1構造部11とは隙間なく連設されるものであって同一の球に内接する15個の三角形構造体40を隙間なく環状に組み合わせた形状の第2構造部12を有している。そして、層構造部Lは、第2構造部12の下側に第2構造部12とは隙間なく連設されるものであって同一の球に内接する25個の三角形構造体40を隙間なく環状に組み合わせた形状の第3構造部13を有している。そして、層構造部Lは第3構造部13の下側に第3構造部13とは隙間なく連設されるものであって同一の球に内接する30個の三角形構造体40を隙間なく環状に組み合わせた形状の第4構造部14を有している。そして、層構造部Lは、第4構造部14の下側に第4構造部14とは隙間なく連設されるものであって30個の三角形構造体40を隙間なく環状に組み合わせた形状の第5構造部15を有している。この第5構造部15はコンクリートからなる基礎30(
図2参照)の上に固定されている。なお、三角形構造体40の個数は、上述したものに限定されるものではない。具体的にはたとえば第5構造部15に大きな出入り口や開口窓や当該三角形構造体40の室内を拡張する部屋等を設けるような場合には、隣接する複数(たとえば3個)の三角形構造体40を設けずにそのような機能を有するものを拡張して形成してもよい。
【0030】
本実施の形態では、第2構造部12から第5構造部15までにおいて、同一階層の三角形構造体40は、下側に2つの頂点を有するとともに上側に1つの頂点が配置される順三角形構造体42と、下側に1つの頂点を有するとともに上側に2つの頂点が配置される逆三角形構造体41との2種類の三角形構造体40を有する。順三角形構造体42は、三角形の頂点のみで上層と接するものであり、逆三角形構造体41は、三角形の辺をもって上層と接するものである。すなわち、逆三角形構造体41は、いわゆる「逆三角形」となっている。そして、第2構造部12から第5構造部15までの同一階層の層構造部Lとして、順三角形構造体42と逆三角形構造体41とが円周上に交互に配置された交互層構造部20が形成されている(
図2参照)。そして、第1構造部11では、屋根440が5個の順三角形構造体42のみによって形成され、立設壁420が順三角形構造体42の下辺と第2構造部12の逆三角形構造体41の上辺とに挟まれる5個の長方形状のものから形成されている。
なお、第1構造部11は、上述したものに限定されるものではなく、ドーム壁520の天井部分を曲面状に連続するように形成し、その上に5個の三角形構造体40からなる五角錐のキューポラ400の屋根を立設壁420により設けるようにしてもよい(
図21、
図22参照。詳細は第5の実施の形態で説明する)。
【0031】
本実施の形態では、キューポラ400の屋根440は半径Rの同一の球に内接する5個の三角形構造体40から構成され、第2構造部12から第4構造部14までは半径Rの同一の球に内接する多数の三角形構造体40から構成されている。また、第5構造部15は同一の円柱に内接する多数の三角形構造体40から構成されている。なお、第5構造部15の順三角形構造体42は、
図1及び
図2に示すように、底辺の位置に相当するフレーム部材50は設けられてない。そこには、
図1及び
図2の一点鎖線で示される基礎30の上面が配置されている。
前記ドーム状構造物10は、フレーム部材50の端部同士を連結するとともに三角形構造体40の三角形の各頂点に相当する位置にそれぞれ設けられている固定手段70としてのコネクタ71を備えている。
【0032】
そして、各三角形構造体40の各辺に相当する位置にそれぞれ設けたフレーム部材50と各三角形構造体40の各頂点に相当する位置にそれぞれ設けた固定手段70としてのコネクタ71とから、
図1に示すドーム状のトラス骨格が構築されている。そして、このドーム状のトラス骨格がドーム状構造物10の構造躯体となる。
前記コネクタ71の材質は金属であり、フレーム部材50の材質は木質である。もちろん、コネクタ71及びフレーム部材50の材質はこれに限定されるものではなく、木質、金属、合成樹脂等の他の材質や、それらの組合せたものを採用することもできる。
前記第5構造部15の下端に設けられるコネクタ71をベースコネクタ72とする。このベースコネクタ72は、第5構造部15の下端の頂点に集まるフレーム部材50の端部同士を連結するためのものである。また、ベースコネクタ72は、2本のフレーム部材50の端部同士を連結するための部材として機能するとともに、トラス骨格を基礎に接合するための部材としても機能する。
【0033】
前記第4構造部14と第5構造部15との境界線上に設けられるコネクタ71をビームコネクタ73とする。前記ビームコネクタ73は、第4構造部14と第5構造部15との境界線上の頂点に集まる6本のフレーム部材50の端部同士を連結するためのものである。
前記ベースコネクタ72及びビームコネクタ73以外のコネクタ71であって、5本のフレーム部材50の端部が集まる位置(5個の三角形構造体40の頂点が集まる位置)に設けられるコネクタ71を5アームコネクタ74とする。この5アームコネクタ74は、その位置に集まる5本のフレーム部材50の端部同士を連結するためのものである。
前記ベースコネクタ72及びビームコネクタ73以外のコネクタ71であって、6本のフレーム部材50の端部が集まる位置(6個の三角形構造体40の頂点が集まる位置)に設けられるコネクタ71を6アームコネクタ75とする。この6アームコネクタ75は、その位置に集まる6本のフレーム部材50の端部同士を連結するためのものである。なお、ドーム壁520上部の五角形の各頂点部分には、この6アームコネクタ75が配置されてあるが、6個の三角形構造体40のうち2個の三角形構造体40が無く、残りの4個の三角形構造体40の頂点が集まる位置に、それらを形成する5本のフレーム部材50の端部が集まっている。また、屋根440の五角形の中心部分には、この5アームコネクタ74が配置され、5個の三角形構造体40を形成する5本のフレーム部材50の端部が集まっている。
【0034】
図4に示すように、1つの三角形構造体40においては三角形の各辺に相当する位置にそれぞれフレーム部材50が配置されている。そして、そのフレーム部材50の端部同士がコネクタ71で固定されている。この
図4に示す三角形構造体40は、第3構造部13の三角形構造体40のうちの1つを示すものであって、三角形の頂点に相当する位置に配置されたコネクタ71には、6アームコネクタ75が形成されている。
前記6アームコネクタ75は、ハブ76と、補強平板部78と、アーム77とを有している。
前記ハブ76は、円筒状のものである。前記補強平板部78は、ハブ76の一方の開口を塞ぐように設けられた平板状のものである。前記アーム77は、フレーム部材50を接合するためのものであってハブ76の外周面から外方へ向けて突出する6枚の平板状のものからなる。
【0035】
前記アーム77は、6アームコネクタ75が配置される三角形の頂点に集まるフレーム部材50と同じ数だけ設けられている。6アームコネクタ75が配置される三角形の頂点には、6本のフレーム部材50が集まる(なお、頂上付近に配置された6アームコネクタ75には、5本のフレーム部材50が集まる)。このため、アーム77は6枚設けられている。また、各アーム77は、各フレーム部材50と1対1に対応する。つまり、1枚のアーム77に1本のフレーム部材50が接合される。
また、各アーム77は、その端部がハブ76の外周面と補強平板部78との双方に接合されている。これにより、1本のフレーム部材50を1枚のアーム77で支持するのに十分な強度を発揮する。
【0036】
前記フレーム部材50は、三角形構造体40の各辺に相当する位置に配置されている。そして、このフレーム部材50は全体形状が直方体状の木質から形成されている。このフレーム部材50の端部は、前記コネクタ71のアーム77にボルト及びナット(図示せず)で固定されている。そして、三角形の各辺に相当する位置に設けられた3本のフレーム部材50が、コネクタ71により連結されることにより、三角形のトラス骨格となる三角形構造体40が形成されている。
三角形構造体40の室外側に位置する面には、当該面を覆うシート状の室外側シート材95が貼付されている(
図10、11参照)。この室外側シート材95は、湿気は透過するが水分は通さない透湿防水シートからなるものである。この室外側シート材95は、複数の三角形構造体40の室外側に跨るように貼付されている。
【0037】
前記三角形構造体40の室内側空間226には、フレーム部材50間に渡されるとともに室外側シート材95と後述する内装仕上げ材220との間に渡されて、フレーム部材50と室外側シート材95と内装仕上げ材220とを支持するブロッキング材140が形成されている。
各三角形構造体40には室外側シート材95の室外側に位置する面に下地材として固定される木質からなる胴縁300が形成されている。この胴縁300は、室外側シート材95の室外側に配置され、室外側シート材95を挟みこむようにして室内側のフレーム部材50及びブロッキング材140に固定されている(
図6、
図10、
図11参照)。
各三角形構造体40には、その胴縁300の室外側に位置する面に固定されるとともに室外側シート材95との間に胴縁300を挟み込んだ状態で室外側シート材95を覆う屋外側面状体90が形成されている(
図10、
図11参照)。この屋外側面状体90は木質からなる三角形の平板である。この三角形構造体40の内部には、胴縁300を挟み込んだ状態で屋外側面状体90と室外側シート材95との間に内部空間100が形成されている(
図6、
図10参照)。
ここで、三角形構造体40には、フレーム部材50の屋外側を面として覆う外側層と、外側層の室内側を覆う内側層とが形成され、外側層と内側層との間には空気が自由に流れる通気層460が形成されている。本実施の形態では、外側層としての屋外側面状体90と、内側層としての室外側シート材95との間の内部空間100に通気層460としての第1通気層472が形成されているものである。
フレーム部材50を有する三角形構造体40の室内側には、防湿シート381が貼付されることで防湿層380が形成されている。防湿シート381の室内側には、1つの三角形構造体40の室内側に位置する三角形の面を覆う内装仕上げ材220が形成されている(
図10参照)。この三角形構造体40の内部には、室外側シート材95と防湿シート381との間に室内側空間226が形成されている(
図10参照)。この室内側空間226が、前記ブロッキング材140により小空間に分割されている。
【0038】
図5に示すように、前記ブロッキング材140は縦方向、横方向又は斜め方向に配置されている。このブロッキング材140には、フレーム部材50間を連結するものと、ブロッキング材140とフレーム部材50との間を連結するものがある。このブロッキング材140により三角形構造体40の室内側空間226は、複数個の空間に分割されている。
図5に示すように第1構造部12から第4構造部15までの三角形構造体40のブロッキング材140の配置と、第5構造部11の三角形構造体40のブロッキング材140の配置とは異なるように形成されている。
【0039】
第4構造部14から上の三角形構造体40のブロッキング材140は、所定の三角形構造体40の所定の頂点位置を中心として三角形構造体40を回転させた配置となっている。
第5構造部15の三角形構造体40のブロッキング材140は、横方向に3本配置されている。さらに、第5構造部15の三角形構造体40では、このブロッキング材140間の上下と、ブロッキング材140とフレーム部材50との間に渡された下地材としてのブロッキング補助材144が設けられている。
なお、ブロッキング材140やブロッキング補助材144の個数や配置は上述したものに限定されるものではない。
図6に示すように、胴縁300は、三角形構造体40の三角形の辺縁に沿う辺縁胴縁310と、三角形構造体40の中心位置のブロッキング材140に沿う中胴縁320とを備えている。
【0040】
辺縁胴縁310は、1つの三角形構造体40のフレーム部材50による三角形の3辺の辺縁に沿って室外側シート材95の室外側に位置する面に固定されている。中胴縁320は、三角形構造体40の中央のブロッキング材140の長尺方向に沿って室外側シート材95の室外側に固定されている。なお、中胴縁320の固定位置は、特に限定されるものではなく、固定可能であれば自由に配置可能なものであって複数のブロッキング材140やフレーム部材50間に跨って斜め等に配置されてもよい。
各胴縁300は、長手方向に沿って、所定の距離を空けて配置されている。これにより、室外側シート材95と屋外側面状体90との間の内部空間100において連通する連通手段301が形成されている。具体的には、前記辺縁胴縁310間には、室外側シート材95と屋外側面状体90との間の内部空間100から隣接する三角形構造体40側に向かって連通する辺縁胴縁連通手段311が形成されている。
三角形構造体40の内部空間100の中には、中胴縁320により一部が仕切られる複数の小空間143が形成されている。中胴縁320間には、一方の小空間143から他方の小空間143へ連通する中胴縁連通手段321が形成されている。
【0041】
交互層構造部20においては、同一階層で隣接する順三角形構造体42と逆三角形構造体41との境界に位置する各辺縁胴縁310間の連通手段301(具体的には、辺縁胴縁連通手段311)を介して、順三角形構造体42の内部空間100から同一階層で隣接する逆三角形構造体41の内部空間100へ連通する隣接連通部360が形成されている。すなわち、隣接連通部360は、順三角形構造体42の辺縁胴縁310間の辺縁胴縁連通手段311と、同一階層で隣接する逆三角形構造体41の辺縁胴縁310間の辺縁胴縁連通手段311とを介して、順三角形構造体42の内部空間100から隣接する逆三角形構造体41の内部空間100へ連通するものである。この隣接連通部360を介して同一階層の交互層構造部20において順三角形構造体42の内部空間100から同一階層で隣接する逆三角形構造体41の内部空間100への通気が行われる。
【0042】
交互層構造部20においては、逆三角形構造体41とこれに接する上層の順三角形構造体42との境界に位置する各辺縁胴縁310間の連通手段301(具体的には、辺縁胴縁連通手段311)を介して逆三角形構造体41の内部空間100からその上層に位置する順三角形構造体42の内部空間100へ連通する上層連通部370が形成されている。すなわち、上層連通部370は、逆三角形構造体41の前記境界に位置する辺縁胴縁310間の辺縁胴縁連通手段311と、これに接する上層の順三角形構造体42の前記境界に位置する辺縁胴縁310間の辺縁胴縁連通手段311とを介して、逆三角形構造体41の内部空間100からその上層に位置する順三角形構造体42の内部空間100へ連通するものである。この上層連通部370を介して交互層構造部20において上位階層への通気が行われる。
【0043】
また、胴縁300は、室外側シート材95を挟みこむような状態でフレーム部材50やブロッキング材140に固定されているが、とくにこれに限定されるものではない。具体的にはたとえばフレーム部材50やブロッキング材140の室外側の面に下地材としての平板状のものを固定して、その平板状の下地材に室外側シート材95を貼付し、その室外側に室外側シート材95を挟み込むような状態で上述した胴縁300を下地材に釘等で固定するようにしてもよい。
なお、胴縁300は、上述したように、2本、平行して配置されるものに限定されるものではない。具体的にはたとえば、
図7に示すように、三角形構造体40の境界に跨るように1本の胴縁300を、隣接する三角形構造体40の両方の三角形の辺縁に沿って配置してもよい(
図8(b)参照)。また、1本の胴縁300を、ブロッキング材140に沿って配置してもよい。
【0044】
図8(a)は、本実施の形態に係る胴縁300であって、1本のフレーム部材50の室外側に互いに隣接する三角形構造体40の辺縁胴縁310が固定されているものである(なお、
図8では室外側シート材95等は省略)。この辺縁胴縁310の室外側面は、屋外側面状体90が隙間無く密着できるように斜めに傾斜している。
【0045】
また、上述したように2本の辺縁胴縁310を使用せずに、1本の辺縁胴縁310を使用する場合には、
図8(b)に示すように、辺縁胴縁310の室外側の面は中央で最も厚みのある山形状の傾斜面にすると好適である。また、本実施の形態では、フレーム部材50が1本であったが、フレーム部材50を2本、所定の隙間を空けて平行に配置するような場合には、
図8(c)に示すように、各フレーム部材の室外側に辺縁胴縁310が配置されるようにしてもよい。
図9に示すように、このドーム状構造物10のドーム壁520、立設壁420及び屋根440の内部には、空気が自由に流れる通気層460が形成されている。
【0046】
ドーム壁520の内部には、内部空間100内に空気が流れる通気層460としての第1通気層472が形成されている。本実施の形態では、第1通気層472は、屋外側面状体90と室外側シート材95との間に形成されている(
図10参照)。ドーム壁520の下端には、第1通気層472へ屋外からの外気を取り入れるための吸気口120が形成されている。
ドーム壁520の高さ方向の途中には、採光用のドーム窓540が固定されている。このドーム窓540は、開閉不能に固定されているものであるが、電動により開閉可能なものに形成してもよい。第1通気層472は、これらの複数のドーム窓540の両側に迂回して空気が流れるような構造に形成されている。
【0047】
キューポラ400の立設壁420の内部には、内部空間100内に空気が流れる通気層460としての第2通気層482が形成されている。本実施の形態では第2通気層482は、屋外側面状体90と室外側シート材95との間に形成されている(
図12参照)。この第2通気層482は、ドーム壁520の第1通気層472と連通するように形成されているものである。
立設壁420の高さ方向の途中には、室内側と室外側との間で換気可能な換気構造が設けられている。この換気構造は、具体的には立設壁420の高さ方向の途中に設けた四角枠状の窓枠564と、この窓枠564の室外側を覆うとともに温度によって自動的に開閉可能な換気ガラリ555とを有している(
図13(a)参照)。
なお、換気構造は、上記換気ガラリ555に限定されるものではなく、通常に使用される開閉可能な上部窓560でもよい(
図13(b)〜(i)参照)。また、そのような上部窓560は、電動モータを利用することにより上部等を軸として回動可能とすることで電動で開閉可能な構造にすることができる。
前記換気ガラリ555は、第1構造部11の5個の三角形構造体40の底辺側の立設壁420の全てに1個ずつ合計5個形成されてある。この換気ガラリ555により、ドーム状構造物10の室内の暖まって上昇してキューポラ400内部に入り込んだ空気を、キューポラ400内部から屋外に効率的に排気することができる。もちろん、換気ガラリ555の個数はこれに限定されるものではなく、1個だけ形成するようにしてもよく、また、2〜4個、または、6個以上設けるようにしてもよい。なお、立設壁420における空気が流れる通気層460としての第2通気層482は、各換気ガラリ555の両側に配置され、換気ガラリ555の周りを空気が迂回して流れるように形成されている。
【0048】
キューポラ400の屋根440には、内部空間100内に空気が流れる通気層460としての第3通気層492が形成されている。本実施の形態では、第3通気層492は屋外側面状体90と室外側シート材95との間に形成されている(
図12参照)。
図10に示すように、コンクリートからなる基礎30の上にベースコネクタ72が固定されている。そして、このベースコネクタ72のアーム77に最下層である第5構造部15の三角形構造体40の順三角形構造体42が固定されている。そして、この第5構造部15の順三角形構造体42の下端には室外側シート材95と屋外側面状体90との間の内部空間100である第1通気層472から屋外に向かって開放された吸気口120が設けられている。この吸気口120の吸気の取り込み口の部分には、吸気容量を確保するとともに虫やねずみ等の侵入を防ぐために細かな微少穴が縦方向に多数形成されている合成樹脂からなる下部換気部材121が形成されている。この下部換気部材121は、ドーム状構造物10の第5構造部15の下端に全周に渡って形成されている。この下部換気部材121を介して吸気口120から入り込んだ屋外の空気は、通気層460としての第1通気層472内を上昇する。上昇した空気は、上述した隣接連通部360及び上層連通部370を介して複数の階層を上昇する(
図6参照)。そして、上昇した空気は、最終的にキューポラ400の立設壁420の内部の第2通気層482へ入り込むように形成されている(
図12参照)。
【0049】
各三角形構造体40の屋外側面状体90の室外側には外部の水分が室内側に進入しないようにするための防水シート180が貼付されている。この防水シート180は、具体的には、アスファルトフーフィングが使用されている。そして、防水シート180の室外側には、風雨からドーム状構造物10を守るための外表面材190が形成されている。この外表面材190は、上層では屋根材としての機能を果たすとともに、下層では壁材としての機能を果たす。この外表面材190の材質としては、無機質の粉粒と合成樹脂を主成分とした塗覆材を組み合わせ、表面に彩色砂粒を焼き付けた不燃材を用いている。もちろん、外表面材190はこれに限定されるものではなく、金属板や、セラミック等からなるものを使用してもよい。
【0050】
前記三角形構造体40の室外側シート材95、辺縁胴縁310、中胴縁320及び屋外側面状体90は釘等によりフレーム部材50やブロッキング材140に固定されている。
前記三角形構造体40の室外側シート材95の室内側には熱の伝導を抑えるための断熱材による断熱層130が形成されている。この断熱層130はグラスウール等を含有する繊維系断熱材が押し固められたボード状のものが使用されている。特に図示していないが隣接する2つの断熱層130の間に発生する隙間には、発泡系断熱材であるウレタンフォームが充填されている。もちろん、断熱材の材質としては上述したものに限定されるものではなく、他の断熱性能を有する材料を使用してもよい。
【0051】
前記断熱層130の室内側には、前記防湿シート381(防湿層380)が貼付され、その室外側には前記内装仕上げ材220が形成されている。
なお、前記第5構造部15の順三角形構造体42の室外側では、室外側シート材95、屋外側面状体90、防水シート180及び外表面材190は、フレーム部材50よりも下方まで具体的には基礎30の上端面よりも下方まで延設されている。
また、三角形構造体40の室内側にも、断熱層130、防湿シート381及び内装仕上げ材220が基礎30の上端面よりも下方まで形成されている。
図11に示すように、三角形構造体40の内部には、胴縁300が、屋外側面状体90と室外側シート材95との間に挟み込まれている状態で固定されている。この胴縁300には、室外側シート材95と屋外側面状体90との間の内部空間100から隣接する三角形構造体40側に向かって連通する胴縁300の連通手段301(辺縁胴縁連通手段311)が形成されている。この連通手段301が形成されていることにより、隣接する内部空間100同士が連通する通気層460として機能するものである。
【0052】
また、6本のフレーム部材50が集合する三角形構造体40の頂点には、6アームコネクタ75が配置され、この6アームコネクタ75が各フレーム部材50を固定する固定手段70としての役割を果たしている。この6アームコネクタ75の室内側には、内装仕上げ材220等を支持するための内壁用コネクターキャップ574がはめ込まれている。同様に6アームコネクタ75の室外側には、胴縁300等を支持するための外壁用コネクターキャップ572がはめ込まれている。
【0053】
図12に示すように、第2構造部12の逆三角形構造体41の内部の第1通気層472と、キューポラ400の立設壁420内部の第2通気層482とは、空気が移動可能に連通している。これにより、第2構造部12の逆三角形構造体41の上辺の第1通気層472から立設壁420の第2通気層482へ上昇してきた空気が移動する。
キューポラ400の立設壁420の内部構造は、三角形構造体40の内部構造と略同様に形成されている。立設壁420には、内部にブロッキング材を有する四角枠状の部材の室外側に室外側シート材95が形成されている。この室外側シート材95の室外側には胴縁300が設けられ、この胴縁300間には連通手段301が設けられている。この胴縁300の室外側には、室外側シート材95との間で胴縁300を挟み込むようにして屋外側面状体90が形成されている。
【0054】
立設壁420の第2通気層482は、換気ガラリ555の両側であって隣接する換気ガラリ555の間に形成されている。このため、上昇してきた空気は、換気ガラリ555の両側であって、隣接する換気ガラリ555の間の第2通気層482を通って立設壁420の頂部に到達する。
立設壁420の頂部と、キューポラ400の屋根440との際に、立設壁420の第2通気層482から屋外に開放される排気口110が形成されている。この排気口110には、排気容量を確保するとともに虫やねずみ等の進入を防ぐための細かな微少孔が横方向に多数形成されている合成樹脂からなる上部換気部材112が形成されている。この上部換気部材112は、キューポラ400の立設壁420の頂部と、屋根440の軒裏との間に全部の周囲に渡って形成されている。なお、上部換気部材112を立設壁420と屋根440との間の一部にだけ設けてもよい。この上部換気部材112を介して立設壁420の第2通気層482を上昇してきた空気が屋外に排出されるように形成されている。なお、この上部換気部材112の内部に所定の温度を超えると膨張して上部換気部材112の内部に充満して上部換気部材112からの熱や火の粉の進入をシャットアウトする熱膨張耐火材を設けるようにしてもよい。
【0055】
キューポラ400の屋根440は、ドーム壁520を構成している三角形構造体40と同一の三角形構造体40を5個組み合わせて形成されている。この屋根440の三角形構造体40の内部には、屋外側面状体90と室外側シート材95との間に胴縁300が挟み込まれることにより、屋外側面状体90と室外側シート材95との間の内部空間100において空気が移動可能な通気層460としての第3通気層492が形成されている。この第3通気層492によりキューポラ400の屋根440の内部に空気が流れる屋根内通気構造450が設けられている。この屋根440の軒裏118には、第3通気層492内部の空気を屋外に排出し、又は屋外の空気を第3通気層492内部に取り込むための軒裏換気口116が形成されている。この軒裏換気口116には、排気容量又は吸気容量を確保するとともに虫やねずみ等の進入を防ぐための細かな微少孔が縦方向に多数形成されている合成樹脂からなる軒裏換気部材114が形成されている。この軒裏換気部材114は、キューポラ400の屋根440の周囲全部に渡って形成されている。なお、軒裏換気部材114を屋根440の周囲の一部にだけ設けてもよい。この軒裏換気部材114を介して屋根440の第3通気層492内の空気が換気されるように形成されている。なお、上部換気部材112と同様にその内部に熱膨張耐火材を設けてもよい。
【0056】
なお、特に図示していないが、第1構造部11においては、同一階層で隣接する順三角形構造体42同士の境界に位置する各辺縁胴縁310間の辺縁胴縁連通手段311により、順三角形構造体42の内部空間100から最上層の同一階層で隣接する順三角形構造体42の内部空間100へ連通する最上層隣接連通部が形成されている。この最上層隣接連通部を介して、5個の三角形構造体40の内部の通気層460が互いに連通する第3通気層492が形成される。
なお、本実施の形態では、第1構造部11の5個の三角形構造体40の底辺付近にそれぞれ設けた軒裏換気口116により第3通気層492が換気されるように形成されているが必ずしもこれに限定されるものではない。たとえば、第1構造部11の5個の三角形構造体40のうちの1個又は複数個の頂点付近に屋外との換気が可能であって雨等が入り込まないようなカバーを上に設けた排気口を形成してもよく、また、本実施の形態で説明した軒裏換気口116と併設してもよい。
【0057】
図13(a)に示すように、本実施の形態に係る換気構造は、換気ガラリ555を有している。この換気ガラリ555には、窓枠564の屋外側に配置されて窓枠564の全面を覆う屋外側金属板590が設けられている。この屋外側金属板590には、横方向に細長いスリット状に開口する横スリット582が形成されている。この横スリット582の外側には、横スリット582の上縁から室外側を覆う縦断面形状が円弧状のカバー584が設けられている。
そして、この窓枠564の室内側には、窓枠564の室内側全面を覆う室内側金属板592が配置されている。この室内側金属板592には、縦方向に細長いスリット状に開口する縦スリット586が形成されている。この縦スリット586の内部には、多数の細長の微少孔を有するパンチングメタル588が設けられている。このパンチングメタル588には、可動板が隣接して設けられている。この可動板は温度変化により横方向に移動して、パンチングメタル588を開放して屋外側との換気可能な状態にする開放状態と、パンチングメタル588を閉塞して屋外側との換気不能な状態にする閉塞状態とにすることができる。なお、この可動板は形状記憶合金の温度変化に伴う変形により移動可能に形成されているものである。
【0058】
ここで、上述した換気構造は、上述したような換気ガラリ555に限定されるものではない。室内側と室外側とで換気可能な構造であれば、他の構造のものでもよいものである。具体的には立設壁420に設ける換気構造としては
図13(b)〜(k)に示すように種々の構造のものが適用可能である。
図13(b)に示すように本実施の形態に係る換気構造としての上部窓560は、開閉窓部562の上部が軸支され、下部が電動により屋外側に向かって突き出すようにして開放される。また、
図13(c)に示すように上部窓560における開閉窓部562を電動により屋内側に向かって突き出すようにしてもよい。
【0059】
図13(d)に示すように上部窓560における開閉窓部562の下部が軸支され、その上部を電動により屋外側に向かって外側に倒すようにしてもよく、
図13(e)に示すように開閉窓部562の下部が軸支され、その上部を電動により室内側に向かって内側に倒すようにしてもよい。なお、
図13(b)〜(e)は、開閉窓部562の上下部材のいずれかを横軸で軸支したが、開閉窓部562の左右部材のいずれかを縦軸で軸支してその縦軸の周りに開閉窓部562を回転させることで開放するようにしてもよい。
図13(f)に示すように上部窓560における開閉窓部562の左右縦部材の中央が横方向に軸支され、開閉窓部562を電動により横軸の周りに回転させるようにしてもよい。また、
図13(g)に示すように上部窓560における開閉窓部562の上下横部材の中央が縦方向に軸支され、開閉窓部562を電動により縦軸の周りに回転させるようにしてもよい。
【0060】
図13(h)に示すように上部窓560を左右にスライドする引き戸としての開閉窓部562が電動により横方向にスライドして開く片引き戸にしてもよい。また、
図13(i)に示すように上部窓560を上下にスライドする開閉窓部562の一方のみが電動により上下方向にスライドして開くようにしてもよい。
【0061】
図13(j)に示すように、他の構造の換気ガラリであって、窓枠564の内部に縦軸を回転中心軸として回転可能な多数のルーバー563を縦方向に設け、この開閉窓部562としてのルーバー563を電動により回転させることで窓枠564を開放可能にしてもよい。また、
図13(k)に示すように窓枠564の内部に横軸を回転中心軸として回転可能な多数のルーバー563を横方向に設け、この開閉窓部562としてのルーバー563を電動により回転させることで窓枠564を開放可能にしてもよい。
【0062】
(作用及び効果)
(1)本実施の形態では、
図10に示すように、階層構造の最下層の層構造部Lに位置する三角形構造体40の下端の吸気口120から、下部換気部材121を介して屋外の空気が入り込む。そして、この吸気口120から入り込んだ空気は、屋外側の太陽光の照射を起因とする温度上昇や、室内暖房の熱等を起因とする温度上昇により、膨張し、室外側シート材95及び屋外側面状体90の間の第1通気層472としての内部空間100内を上昇する。この上昇した空気は、交互層構造部20の順三角形構造体42の内部空間100から隣接連通部360を介して同一階層で隣接する逆三角形構造体41の内部空間100へ移動する。移動した空気は、この逆三角形構造体41の内部空間100から上層連通部370を介して上層に隣接する順三角形構造体42の内部空間100へ移動する。これを階層構造の複数の交互層構造部20において繰り返すことで空気が上層に移動し、最終的には移動した空気は第1通気層472の頂部である第2構造部12の逆三角形構造体41の上辺へ移動する。第1通気層472の頂部に移動してきた空気は、第1通気層472に連通する立設壁420の第2通気層482に入り込む。立設壁420の第2通気層482に入り込んだ空気は、第2通気層482内を頂部に向かって上昇する。立設壁420には換気ガラリ555が形成されているがこの換気ガラリ555の両側に第2通気層482が形成されているため、換気ガラリ555の両側の第2通気層482を介して内部空間100内の空気が上昇する。
【0063】
第2通気層482内において立設壁420の頂部にまで上昇した空気は、立設壁420の頂部と、キューポラ400の屋根440の軒裏118との際において、第2通気層482から屋外に向かって開放された排気口110としての上部換気部材112を介して屋外へ排気される。このように、ドーム状構造物10のドーム壁520及び立設壁420の通気層460(第1通気層472及び第2通気層482)には、立設壁420の頂部に位置する排気口110まで自然に上昇する空気の流れが形成される。これにより、ドーム壁520及び立設壁420の通気層460の内部に室内側から湿気のある空気が進入しても、通気層460内の上昇する空気の流れによって効率的に排気口110から屋外に排出される。したがって、結露の元になる水蒸気が素早く屋外に排出される。このように、ドーム壁520内の空気の換気に効果的な排気口110を設けたことにより、ドーム状構造物10のドーム壁520及び立設壁420の全面に自然な空気の流れを発生させる通気層460(第1通気層472及び第2通気層482)が形成され、ドーム壁520及び立設壁420の内部の換気が促進される。
【0064】
さらに、排気口110は立設壁420の頂部と屋根440の軒裏118との際に設けてあるため、上方に向かって開口してなく、排気口110の上方が屋根440により覆われている。これにより、雨が直接入り込み難く、防水性に優れたものとなっている。
結果として、本実施の形態によれば、ドーム状構造物10の壁内通気構造における壁内通気の排気口110を効果的に確保することができ、ドーム状構造物10の壁の内部での結露の発生が抑えられて、耐久性、断熱性に優れたものにすることができる。
(2)本実施の形態では、
図6に示すように、交互層構造部20の順三角形構造体42の室外側シート材95と屋外側面状体90との間の内部空間100に水蒸気を多量に含んだ空気が進入しても、隣接連通部360を介して湿気を含んだ空気がこの順三角形構造体42の左右に隣接する逆三角形構造体41の内部空間100へ拡散して移動する。具体的には、順三角形構造体42の内部空間100の湿気を含んだ空気が、同一階層で隣接する順三角形構造体42と逆三角形構造体41との境界に位置する各辺縁胴縁310の辺縁胴縁連通手段311を介して、左右の逆三角形構造体41の内部空間100へ移動する。
【0065】
本実施の形態では、
図6に示すように、交互層構造部20の隣接連通部360から逆三角形構造体41の内部空間100に水蒸気を多量に含んだ空気が進入しても、上層連通部370を介して湿気を含んだ空気がこの逆三角形構造体41の上層に隣接する順三角形構造体42の内部空間100へ拡散して移動する。具体的には、三角形構造体40の内部空間100にある湿気を含んだ空気は、屋外又は室内側からの熱により膨張し容積を増すとともに上方へ移動する。逆三角形構造体41において、内部空間100の水平断面は上方になる程、断面積が増加する。これにより、容積を増しながら上昇しようとする空気が逆三角形構造体41の内部空間100内でスムーズに上方へ移動するとともに上方へ移動するに従って拡散が促される。その空気は最後に逆三角形構造体41の水平断面積が最大となる辺に位置するとともに上層と接する境界に位置する辺縁胴縁310に到達する。到達した空気は、その辺縁胴縁310間の辺縁胴縁連通手段311と上層の順三角形構造体42の境界に位置する辺縁胴縁310間の辺縁胴縁連通手段311とを介して、その順三角形構造体42の内部空間100内へ移動する。結果として、逆三角形構造体41の内部空間100の空気が上層連通部370を介して上層の順三角形構造体42の内部空間100へスムーズに移動する。これにより、交互層構造部20において上層への空気の移動が良好に行われる。
【0066】
上述した隣接連通部360及び上層連通部370により、湿気を含んだ空気が、ドーム状構造物10内の特定の三角形構造体40の内部空間100に滞留することが防止される。したがって、ドーム状構造物10の三角形構造体40の内部空間100での結露の発生が抑えられる。その結果として、三角形構造体40の内部空間100は乾燥状態が維持され、三角形構造体40の内部空間100の環境が良好に維持される。また、三角形構造体40内であって室外側シート材95の室内側の室内側空間226に湿気を含んだ空気が存在しても、その空気を三角形構造体40の内部空間100を介して拡散して移動させることが可能となる。これにより、耐久性のあるドーム状構造物10の提供が可能となる。また、三角形構造体40内に断熱材が使用されるような場合でも、三角形構造体40内が乾燥状態となるため、結露の発生が抑えられることで、断熱材に結露による水分の付着が抑えられ、断熱性能の低下が抑えられる。
【0067】
(3)
図12に示すようにキューポラ400の屋根440の軒裏118の下に位置する立設壁420には開放可能な換気ガラリ555が設けられている。換気ガラリ555は軒裏118の下に位置するため、雨が直接に入り込むことを防止することができて防水性を確実に確保することができるとともに、室内から上昇してキューポラ400内部に入り込んできた室内の空気を換気ガラリ555から屋外に向かって効果的に排気することができる。これにより、ドーム状構造物10の室内における良好な空気循環を達成することができる。
また、キューポラ400の周囲には換気ガラリ555が複数個(具体的には5個)形成されていることにより、いずれの方向から風が吹いても、キューポラ400の室内側の空間には風が通り抜ける路を形成することができる。これにより、上昇してキューポラ400内部に入り込んできた空気を効果的に外部に排出することができる。
【0068】
(4)
図12に示すようにキューポラ400の屋根440には、空気が流れる通気層460としての第3通気層492を有する屋根内通気構造450が形成されている。室内側から湿気のある空気が屋根440内に入り込んでも、第3通気層492を介して空気が移動し、湿気のある空気は拡散する。これにより、屋根440の内部の特定の箇所に湿気を含んだ空気が滞留することがなく、屋根440内部の結露の発生が抑えられる。
また、屋外側の太陽光の照射や室内暖房の熱を起因とする温度上昇により高温となった屋根440内部の空気が、第3通気層492を介して移動し、熱の排出が図られる。これにより、高温の空気が1カ所に滞留して周辺部材の温度上昇を招くことが防止される。
【0069】
(5)本実施の形態によれば、
図1に示すように、三角形構造体40の三角形の各辺に相当するフレーム部材50が三角形の頂点の位置で固定手段70としてのコネクタ71で連結されることにより三角形構造体40の三角形が形成される。同時に、隣接する他の三角形構造体40のフレーム部材50の端部も当該固定手段70としてのコネクタ71で連結される。これにより、複数の三角形構造体40が連続して設けられる。
そして、各三角形構造体40の三角形の各辺に相当する位置にそれぞれ設けたフレーム部材50と各三角形構造体40の三角形の各頂点に相当する位置にそれぞれ設けた固定手段70としてのコネクタ71とからドーム状のトラス骨格が構築され、このドーム状のトラス骨格が、ドーム状構造物10の構造躯体となる。
【0070】
(6)
図6に示すように、前記中胴縁320間には、中胴縁連通手段321が形成されている。このため、中胴縁連通手段321を介して小空間143同士の通気が行われ、内部空間100内での空気が自由に移動できる。これにより、中胴縁320により一部が仕切られる小空間143同士の空気の移動が妨げられることがなく、三角形構造体40の内部空間100内における良好な空気の流れが維持される。
(7)
図10、
図11、
図12に示すように、室外側シート材95の室内側には断熱層130が形成されている。これにより、通気層460には断熱材が充填されてなく、通気層460における全部の空間が上昇する空気を移動させるための空間として利用される。
【0071】
通常、通気層460内の一部に断熱層130を設けると、通気層460は、断熱層130を設けていない一部の空間だけしか通気のために利用できない。このような通気層460の一部にだけ通気のための空間を設けるような場合と比較して、本実施の形態では通気層460内に大量の空気の流れを発生させることができる。これにより、前記通気層460内の湿気のある空気を効率的に排出させることができ、より一層、三角形構造体40の内部の環境が良好となる。
(8)
図10、
図11、
図12に示すように室外側シート材95の室内側に防湿シート381による防湿層380を設けたことで室内側からの湿気が三角形構造体40の内部に入り込むことが抑えられる。これにより、三角形構造体40の内部空間100はさらに乾燥状態が維持され、三角形構造体40の内部空間100の環境が良好に維持されてさらに耐久性のあるドーム状構造物10の提供が可能となる。
【0072】
本実施の形態では、屋外側に防水シート180が設けられている。さらに防水シート180の室内側には、室外側シート材95(透湿防水シート)により、水は通さないが湿気は通す透湿防水シートが配置されている。さらに、その室内側には湿気を通さない防湿シート381が配置されている。これらにより、多重防水が施されていることとなり、三角形構造体40の内部に結露やカビ等が発生することを抑えることができる。
(第2の実施の形態)
図14に示すように、第2の実施の形態では軒裏118と立設壁420の頂部との間には、屋根440の第3通気層492と立設壁420の第2通気層482との間を連通させる軒裏連通孔111が形成されている。この軒裏連通孔111を立設壁420の頂部と屋根440との際(間)近傍に設けて屋根440の第3通気層492と立設壁420の第2通気層482とが連通するように形成されている。本実施の形態では、立設壁420の頂部と軒裏118との間の排気口110を設けずに軒裏118の軒裏換気口116だけで換気を行うようにしているものである。立設壁420の第2通気層482を上昇してきた空気は、軒裏連通孔111を通って屋根440の第3通気層492内に入り込み、その後、軒裏118の軒裏換気口116から軒裏換気部材114を介して屋外に排出されるものである。本実施の形態でも第2の実施の形態と同様に、第1通気層472、第2通気層482及び第3通気層492の全てが連通することになり、ドーム状構造物10の全周囲に渡って連通する通気層460が形成されていることになる。これにより、第2の実施の形態で説明した同様の作用及び効果を奏することができる。さらに、軒裏換気口116が軒裏118に上下方向に貫通するため、立設壁420の排気口110よりも屋外からの雨や埃等の進入を抑えることができ、防水性に優れたものにすることができる。
【0073】
(第3の実施の形態)
本実施の形態では、第1の実施の形態における室外側シート材95に加えて室外側シート材95の室内側に木質からなる室外側面状体80が形成されているものである。その他の構造は、第1の実施の形態で説明したものと同様の構造からなるものである。
図15に示すように、各三角形構造体40には、1つの三角形構造体40の室外側に位置する三角形の面を覆う木質からな室外側面状体80が形成されている。この室外側面状体80の室外側に室外側シート材95が配置されている。さらに、各三角形構造体40には室外側シート材95の室外側に位置する面に下地材として固定される木質からなる胴縁300が第1の実施の形態で説明したものと同様に配置されている。さらに、各三角形構造体40には、その胴縁300の室外側に位置する面に固定されるとともに室外側シート材95との間に胴縁300を挟み込んだ状態で室外側シート材95を覆う屋外側面状体90が形成されている。この屋外側面状体90及び室外側面状体80は木質からなる三角形の平板である。そして、この三角形構造体40の内部には、胴縁300を挟み込んだ状態で屋外側面状体90と室外側シート材95との間に内部空間100が形成されている。
【0074】
前記三角形構造体40の室外側面状体80の室内側には、第1の実施の形態と同様のフレーム部材50間に渡されるブロッキング材140が形成されている。
図15に示すように、コンクリートからなる基礎30の上にベースコネクタ72が固定されている。そして、このベースコネクタ72のアーム77に最下層である第5構造部15の三角形構造体40の順三角形構造体42が固定されている。そして、この第5構造部15の順三角形構造体42の下端には室外側面状体80と屋外側面状体90との間の内部空間100から屋外に向かって開放された吸気口120が設けられている。この吸気口120には、第1の実施の形態で説明した下部換気部材121が設けられている。この下部換気部材121から入り込んだ屋外の空気は、屋外側面状体90と室外側面状体80との間の通気層460を上昇し、最終的には第1の実施の形態で説明したものと同様の排気口110から屋外に排出される。
【0075】
図16に示すように、2つの隣接する三角形構造体40の間には1本のフレーム部材50が形成されている。三角形構造体40の三角形の辺縁には辺縁胴縁310が、屋外側面状体90と室外側シート材95との間に挟み込まれている状態で固定されている。辺縁胴縁310間には、第1の実施の形態と同様に室外側シート材95と屋外側面状体90との間の内部空間100から隣接する三角形構造体40側に向かって連通する辺縁胴縁連通手段311が形成されている。この辺縁胴縁連通手段311が形成されていることにより、隣接する内部空間100同士が連通する通気層460として機能するものである。
図16に示すフレーム部材50は、同一階層における隣接する三角形構造体40間に配置されているものである。
図16では、図中の右側の三角形構造体40が順三角形構造体42により形成され、図中の左側の三角形構造体40が逆三角形構造体41により形成されている。この場合、順三角形構造体42の内部空間100内の空気が温度上昇により膨張し、順三角形構造体42の内部空間100から順三角形構造体42及び逆三角形構造体41の各辺縁胴縁310の辺縁胴縁連通手段311を介して逆三角形構造体41の内部空間100へ移動する。
【0076】
各三角形構造体40の室外側面状体80の室外側には、第1の実施の形態で説明した材質と同様の防水シート180、外表面材190が形成されている。前記三角形構造体40の室外側面状体80の室内側には第1の実施の形態で説明した断熱層130が形成されている。前記断熱層130の室内側には前記防湿シート381、前記内装仕上げ材220が形成されている。
本実施の形態においても、第1の実施の形態で説明した
図13(b)〜(k)に示す換気構造のバリエーションを有し、また、
図14に示す排気口110や軒裏換気口116のバリエーションを有する。
なお、本実施の形態では、室外側シート材95と室外側面状体80との両方を有しているが、室外側シート材95を配置せずに室外側面状体80だけにすることもできる。本実施の形態における室外側シート材95を省略しても、外側層としての屋外側面状体90と、内側層としての室外側面状体80との間の内部空間100に通気層460としての第1通気層472が形成される。かかる場合であっても上述したものと同様の作用及び効果を奏することができる。
(作用)
本実施の形態では第1の実施の形態における室外側シート材95に加えて室外側面状体80を設けている。本実施の形態でも、第1の実施の形態で説明した第1通気層472、第2通気層482及び第3通気層492と同様の機能を有する通気層460を屋外側面状体90と室外側面状体80(又は室外側シート材95)との間の内部空間100に形成することができる。これにより、第1の実施の形態で説明したものと同様の壁内の換気機能を有し、同様の作用及び効果を奏する。
【0077】
(第4の実施の形態)
上述した第1〜第3の実施の形態では、通気層460が胴縁300を挟み込んだ屋外側面状体90と室外側シート材95(又は室外側面状体80)との間に設けられていたが、本実施の形態では、通気層460がフレーム部材50を挟み込んだ室外側面状体80と室内側シート材225との間に設けられているものである。すなわち、外側層としての室外側面状体80と、内側層としての室内側シート材225との間の内部空間100に通気層460が形成されているものである。
本実施の形態では、ドーム壁520には室外側面状体80と室内側シート材225との間に空気が流れる第1通気層472が形成され、立設壁420には室外側面状体80と室内側シート材225との間に空気が流れる第2通気層482が形成され、屋根440には室外側面状体80と室内側シート材225との間に空気が流れる第3通気層492が形成されている。ただし本実施の形態では、フレーム部材50には隣接する三角形構造体40の室外側面状体80と室内側シート材225との間の内部空間100同士を連通して通気するためのフレーム部材通気孔60が形成されていることに特徴を有する。
【0078】
図17に示すように、本実施の形態では、第1の実施の形態と同様に1つの三角形構造体40においては三角形の各辺に相当する位置にそれぞれフレーム部材50が配置されている。そして、そのフレーム部材50の端部同士がコネクタ71で固定されている。このコネクタ71の構造等は、第1の実施の形態と同一である。
各三角形構造体40には、1つの三角形構造体40の室外側に位置する三角形の面を覆う室外側面状体80が形成されている。各三角形構造体40には、1つの三角形構造体40の室内側に位置する三角形の面を覆う室内側シート材225が形成されている(
図18参照)。この室外側面状体80は木質からなる三角形の平板である。室内側シート材225は、室外側シート材95と同様に透湿防水シートからなる。そして、この三角形構造体40の内部には、3本のフレーム部材50と室外側面状体80と室内側シート材225とにより囲まれる内部空間100が形成されている。
【0079】
前記フレーム部材50には、隣接する三角形構造体40の内部空間100同士を連通して通気するためのフレーム部材通気孔60が形成されている。前記フレーム部材通気孔60は1つのフレーム部材50の長尺方向に略等間隔で6個形成されている。もちろん、このフレーム部材通気孔60の個数や形状等は、これに限定されるものではなく、隣接する内部空間100の空気が自由に移動できるようなものであれば他の個数や形状であってもよく、また、孔状でなくても隣接する三角形構造体40の内部空間100同士を連通するものであれば室外側面状体80又は室内側シート材225側に開口する断面凹状の溝でもよい。このフレーム部材通気孔60がフレーム部材50に形成されていることにより、当該フレーム部材50によって隔てられる2つの内部空間100同士が連通する。そして、このフレーム部材通気孔60は三角形構造体40の3本のフレーム部材50の全てに同様に形成されている。これにより当該三角形構造体40の内部空間100は、この三角形構造体40の3本のフレーム部材50に隣接する3個の三角形構造体40の内部空間100と連通する。そして、全ての三角形構造体40のフレーム部材50にも、同様にフレーム部材通気孔60が形成されていることにより、全ての三角形構造体40の内部空間100同士が連通する1つの通気層460が形成されている。
【0080】
すなわち、室外側面状体80と室内側シート材225との間の内部空間100がフレーム部材通気孔60を介して隣接する三角形構造体40の内部空間100と連通することにより、ドーム壁520の内部に通気層460が形成されている。
立設壁420の四角枠を構成するフレーム部材50にも、同様のフレーム部材通気孔60が形成されるとともに、室外側面状体80と室内側シート材225との間の内部空間100において空気が移動できる第2通気層482が形成されている(
図20参照)。そして、ドーム壁520の第1通気層472と、立設壁420の第2通気層482とはフレーム部材通気孔60を介して連通している。これにより、ドーム壁520及び立設壁420には、第1の実施の形態と同様に第1通気層472と第2通気層482とが連通する通気層460が形成される。また、キューポラ400の屋根440を構成する第1構造部11の5個の三角形構造体40に用いられているフレーム部材50にも同様のフレーム部材通気孔60が形成され、各三角形構造体40の内部空間100間で空気が連通する第3通気層492が形成されている。さらに、立設壁420の第2通気層482と、屋根440の第3通気層492とは、立設壁420の頂部に設けたフレーム部材50のフレーム部材通気孔60を介して空気が移動できるように連通している。これにより、ドーム壁520と、立設壁420と、屋根440との内部の内部空間100の全てが連通する通気層460を形成することができる。
【0081】
前記三角形構造体40の内部空間100には、フレーム部材50間に渡されるとともに室外側面状体80と室内側シート材225との間に渡されて、フレーム部材50と室外側面状体80と室内側シート材225とを支持するブロッキング材140が形成されている。このブロッキング材140により内部空間100が複数の小空間143に仕切られている。
具体的には、前記ブロッキング材140は、複数個設けられてあり、フレーム部材50間を連結するものと、ブロッキング材140とフレーム部材50との間を連結するものがある。これらのブロッキング材140により、三角形構造体40の内部空間100は、複数の小空間143に分割されている。そして、各ブロッキング材140には小空間143同士を連通するブロッキング通気孔150が形成されている。このブロッキング通気孔150は隣接する小空間143同士を連通するものである。このブロッキング通気孔150はブロッキング材140により仕切られた小空間143同士の内部の空気が互いに移動可能となるように形成されているものである。
【0082】
交互層構造部20においては、同一階層で隣接する順三角形構造体42と逆三角形構造体41との境界に位置するフレーム部材50のフレーム部材通気孔60を介して、順三角形構造体42の内部空間100から同一階層で隣接する逆三角形構造体41の内部空間100へ連通する隣接連通部360が形成されている。この隣接連通部360を介して同一階層の交互層構造部20において順三角形構造体42の内部空間100から同一階層で隣接する逆三角形構造体41の内部空間100への通気が行われる。
交互層構造部20においては、逆三角形構造体41とこれに接する上層の順三角形構造体42との境界に位置するフレーム部材50のフレーム部材通気孔60を介して逆三角形構造体41の内部空間100からその上層に位置する順三角形構造体42の内部空間100へ連通する上層連通部370が形成されている。この上層連通部370を介して交互層構造部20において上位階層への通気が行われる。
【0083】
図18に示すように、コンクリートからなる基礎30の上にベースコネクタ72が固定されている。そして、このベースコネクタ72のアーム77に第5構造部15の三角形構造体40の順三角形構造体42が固定されている。そして、この第5構造部15の順三角形構造体42の下端には横方向のフレーム部材50が設けられていない。前記第5構造部15の順三角形構造体42の室外側では、室外側面状体80と防水シート180と外表面材190とは、フレーム部材50よりも下方まで、具体的には、基礎30の上端面よりも下方まで延設されている。前記吸気口120は、これらの室外側面状体80、防水シート180及び外表面材190の下端と基礎30との間にあって、屋外からの空気が入り込み可能な隙間に形成されている。この吸気口120から入り込んだ屋外の空気は、フレーム部材通気孔60を介して、通気層460内を上昇する。
【0084】
なお、室内側シート材225の室内側には、第1の実施の形態で説明したものと同様の材質からなる断熱層130、防湿シート381及び内装仕上げ材220が形成されている。
図19に示すように、2つの隣接する三角形構造体40の間には1本のフレーム部材50が形成されている。フレーム部材50には隣接する内部空間100同士を連通するためのフレーム部材通気孔60が形成されている。このフレーム部材通気孔60が形成されていることにより、隣接する内部空間100同士が連通する通気層460として機能するものである。
図19に示すフレーム部材50は、同一階層における隣接する三角形構造体40間に配置されているものである。
図19では、図中の右側の三角形構造体40が順三角形構造体42により形成され、図中の左側の三角形構造体40が逆三角形構造体41により形成されている。この場合、順三角形構造体42の内部空間100内の空気が温度上昇により膨張し、フレーム部材50のフレーム部材通気孔60から逆三角形構造体41の内部空間100へ移動する。
【0085】
各三角形構造体40の室外側面状体80の室外側には外部の水分が室内側に進入しないようにするための防水シート180が貼付されている。この防水シート180の室外側には、風雨からドーム状構造物10を守るための外表面材190が形成されている。防水シート180及び外表面材190は、第1の実施の形態で説明したものと同様の材質から形成されている。
前記三角形構造体40のフレーム部材50の両面には、室内側の部材を固定するための木質からなる受け材170が受け材締結具230により固定されている。
前記三角形構造体40の室内側シート材225の室内側には熱の伝導を抑えるための断熱材による断熱層130が形成されている。この断熱層130は第1の実施で説明したものと同一材質からなり、グラスウール等を含有する繊維系断熱材が押し固められたボード状のものが使用されている。このボード状の断熱層130は室内側から室内側締結具240により受け材170に固定されている。隣接する2つの断熱層130の間に発生する隙間には、発泡系断熱材であるウレタンフォーム200が充填されている。
【0086】
前記断熱層130の室内側には防湿層380としての防湿シート381が貼付されている。そして、この防湿シート381の室内側には内装仕上げ材220が固定されている。
図20に示すように、本実施の形態では、ドーム壁520においては、第1通気層472は三角形構造体40の室外側面状体80と室内側シート材225との間に設けられている。同様に、キューポラ400の立設壁420の第2通気層482と、屋根440の第3通気層492とは、室外側面状体80と室内側シート材225との間に設けられている。そして、第2通気層482を上昇してきた空気の一部は、立設壁420の頂上部に設けてある排気口110から屋外に排出可能に形成されている。また、立設壁420の第2通気層482を上昇してきた空気の他の一部は、立設壁420の頂部のフレーム部材50に設けたフレーム部材通気孔60から屋根440の第3通気層492に入り込み、この第3通気層492から第1の実施の形態で説明した軒裏換気口116の軒裏換気部材114を介して屋外に排出される。
【0087】
本実施の形態においても、第1の実施の形態で説明した
図13(b)〜(k)に示す換気構造のバリエーションを有し、また、
図12や
図14に示すような排気口110や軒裏換気口116の構造からなるバリエーションを有する。
(作用及び効果)
本実施の形態では、三角形構造体40のフレーム部材50と室外側面状体80と室内側シート材225とに囲まれる内部空間100に水蒸気を多量に含んだ空気が進入しても、フレーム部材通気孔60を介して、その湿気を含んだ空気がこの三角形構造体40に隣接する他の三角形構造体40の内部空間100へ拡散して移動する。
【0088】
具体的には、
図17に示すように、順三角形構造体42の内部空間100に湿気を含んだ空気が入り込んだ場合、その湿気を含んだ空気は、同一階層で隣接する順三角形構造体42と逆三角形構造体41との境界に位置するフレーム部材50の隣接連通部360としてのフレーム部材通気孔60を介して、左右の逆三角形構造体41の内部空間100へ移動する。
また、交互層構造部20の隣接連通部360から逆三角形構造体41の内部空間100に水蒸気を多量に含んだ空気が進入しても、上層連通部370を介して湿気を含んだ空気がこの逆三角形構造体41の上層に隣接する順三角形構造体42の内部空間100へ拡散して移動する。具体的には、三角形構造体40の内部空間100にある湿気を含んだ空気は、屋外又は室内側からの熱により膨張し容積を増すとともに上方へ移動する。逆三角形構造体41において、内部空間100の水平断面は上方になる程、断面積が増加する。これにより、容積を増しながら上昇しようとする空気が逆三角形構造体41の内部空間100内でスムーズに上方へ移動するとともに上方へ移動するに従って拡散が促される。その空気は最後に逆三角形構造体41の水平断面積が最大となる辺に位置するとともに上層と接する境界に位置するフレーム部材50に到達する。到達した空気は、そのフレーム部材50のフレーム部材通気孔60を介して、その上層に位置する順三角形構造体42の内部空間100内へ移動する。結果として、逆三角形構造体41の内部空間100の空気が上層連通部370を介して上層の順三角形構造体42の内部空間100へスムーズに移動する。これにより、交互層構造部20において上層への空気の移動が良好に行われる。
【0089】
本実施の形態では、湿気を含んだ空気が、特定の三角形構造体40の内部空間100に滞留することが防止される。したがって、三角形構造体40の内部空間100内での結露の発生が抑えられる。その結果として、三角形構造体40の内部空間100内は乾燥状態が維持され、内部空間100の環境が良好に維持される。これにより、耐久性のあるドーム状構造物10の提供が可能となる。また、内部空間100内に断熱材が使用されるような場合でも、内部空間100内での結露の発生が抑えられることで、断熱材に結露による水分の付着が抑えられ、断熱性能の低下が抑えられる。
その結果として、三角形構造体40の内部空間100内は乾燥状態が維持され、内部空間100の環境が良好に維持される。これにより、耐久性のあるドーム状構造物10の提供が可能となる。
【0090】
本実施の形態によれば、
図17に示すように、室外側面状体80と室内側シート材225とが、ブロッキング材140により支持されているため、室外側面状体80と室内側シート材225との変形がそれぞれ抑えられ、剛性が高められる。その結果として、ドーム状構造物10全体としても剛性が高められる。
そして、このブロッキング材140には、ブロッキング材140により仕切られる内部空間100の小空間143同士を連通するブロッキング通気孔150が形成されている。このため、内部空間100の小空間143同士の空気の移動が妨げられることがなく、空気が自由に移動できる。これにより、内部空間100内の通気層460における良好な空気の流れが維持される。
【0091】
本実施の形態によれば、
図18に示すように、屋外の空気が第5構造部15の吸気口120から通気層460内に入り込む。そして、この吸気口120から通気層460内に入り込んだ空気は、屋外側の太陽光の照射を起因とする温度上昇や室内暖房の熱等を起因とする温度上昇により、膨張して通気層460としての内部空間100内を上昇する。この上昇した空気は、フレーム部材50のフレーム部材通気孔60やブロッキング材140のブロッキング通気孔150(
図17)を通って、さらに隣接連通部360や上層連通部370を介して(
図17参照)上層に位置する三角形構造体40の内部空間100へ移動する。最終的に、この移動した空気は、
図20に示すように、キューポラ400の立設壁420の内部空間100へ移動する。そこで、移動してきた空気は、第1の実施の形態と同様に、キューポラ400の立設壁420の頂部と、屋根440の軒裏との際の排気口110から屋外に向かって排出される。このように、三角形構造体40の内部の通気層460に吸気口120から排気口110に向かって自然に上昇する空気の流れが形成される。これにより、フレーム部材50と室外側面状体80と室内側シート材225とに囲まれる内部空間100内に室内側から湿気のある空気が進入しても、通気層460内の上昇する空気の流れによって、効率的に排気口110から屋外に排出される。したがって、結露の元になる水蒸気が素早く屋外に排出される。このように、ドーム状構造物10の三角形構造体40の内部空間100に自然な空気の流れを発生させる通気層460が形成されることにより三角形構造体40の内部空間100内の換気が促進される。
【0092】
本実施の形態によれば、
図19に示すように、室内側シート材225の室内側には断熱層130が形成されている。これにより、室外側面状体80と室内側シート材225との間の内部空間100には断熱層130が充填されてなく、内部空間100における全部の空間が上昇する空気を移動させるための通気層460の空間として利用することができる。
室外側面状体80と室内側シート材225との間の内部空間100内の一部に断熱層130を設けると、内部空間100は断熱層130を設けていない一部の空間だけしか通気層460として利用できない。このような内部空間100の一部にだけ通気層460を設ける場合と比較して、本実施の形態は室外側面状体80と室内側シート材225との間の内部空間100内に大量の空気の流れを発生させることができる。これにより、前記内部空間100内の湿気のある空気を効率的に排出させることができ、より一層、内部空間100の環境が良好となる。
【0093】
その他の第1の実施の形態と同様の構成であって、同様の作用及び効果を奏する。
(第5の実施の形態)
上述した第1の実施の形態のドーム壁520の頂上には、立設壁420が設けられ、その立設壁420の上端間を覆うようにキューポラ400が設けられていた(
図9参照)。ドーム壁520の天井は、キューポラ400の部分で段差状になっていた。断熱層130は、キューポラ400の屋根440及び立設壁420の内部に設けられていた(
図12)。
それに対して、本実施の形態では、
図21に示すように、ドーム壁520の頂上には、ドーム壁520の内壁(天井)が半球状に連続する天井部610が設けられている。この天井部610は5個の三角形構造体40からなり全体として五角形の形状である。この天井部610の壁内には断熱層130が連続して設けられている。キューポラ400の屋根440及び立設壁420には、第1の実施の形態で設けられていたような断熱層は形成されていない。天井部610の上面の五角形の縁から上方に向かって立設壁420が設けられている。この立設壁420の上端間を覆うように五角形の屋根440が設けられ、結果として、五角形の天井部610の上にキューポラ400が載置されているような状態で固定されている。
【0094】
キューポラ400の内部には、天井部610から立設壁420に向かって連通するとともにL字状に曲げられたパイプ状の換気パイプ620が設けられている。換気パイプ620は、天井部610に開口するパイプ入口622と、立設壁420に開口するパイプ出口624とを有している。このパイプ入口622とパイプ出口624との間が連通し、室内の空気が屋外へ排出可能に形成されている。
図22に示すように、換気パイプ620のパイプ出口624には、強制換気用の電動ファン626が設けられている。この電動ファン626は、室内側の空気を吸い出して、屋外側へ強制的に排出できるように形成されている。なお、本実施の形態では換気構造として電動ファンを有する強制換気によるものを使用しているが、特にこれに限定されることはなく、電動ファンを有しない、自然換気によるものでもよい。
【0095】
本実施の形態によれば、ドーム状構造物10の室内側から上方の天井側を見たときに、天井部610が周囲と連続して設けられているため、連続する曲面からなる意匠的に優れた天井外観を得ることができる。また、換気パイプ620を設けたことで、上昇する暖まった室内の空気を電動ファン626を介して屋外に効率的に排出することができる。
なお、その他の構成は、第1の実施の形態と同様のものである。ドーム壁520の内部には、第1の実施の形態と同様の第1通気層472及び第2通気層482が設けられている。それらを通ってきた空気は、上部換気部材112から屋外へ排出される。また、キューポラ400の屋根440には、第1の実施の形態と同様の第3通気層492が設けられている。その第3通気層492の空気は、軒裏換気部材114を介して屋外へ排出される。
【0096】
ここで、上述したような周囲の天井と連続する天井部610は、第1の実施の形態だけではなく、第2〜4の実施の形態でも同様に設けることができ、上述したものと同様の作用及び効果を得ることができる。
上述した第1〜第5の実施の形態のうちから組合せ可能な2以上の実施の形態を組み合わせてもよい。具体的にはたとえば第1の実施の形態で説明した屋外側面状体90と室外側シート材95との間の通気層460と、第4の実施の形態で説明した室外側面状体80と室内側シート材225との間の通気層460との両方の空気が流れる層を設けるようにすることもできる。これにより、ドーム壁520、立設壁420及び屋根440に2種類の経路の異なる空気が流れる層が設けられて壁内の換気機能をさらに向上させることができる。