【実施例】
【0034】
まず、本願発明のフィルムの製造方法で得られるフィルムの評価方法について説明する。
(1)フィルム厚みムラ
長さ1m、幅600mmのフィルムサンプルから、フィルムサンプルの幅方向中心部および端部から100mmの位置をサンプル中央とするようにして、幅40mmの厚み測定用サンプルを3箇所切り出した。その後、接触式厚み計(アンリツ(株)製KG60/A)を用いて、各厚み測定用サンプルの長手方向の厚みを連続的に測定してチャートレコーダに出力した。出力した厚みのプロファイルから厚みの最大値(MAX)と最小値(MIN)の差を厚みムラR(=MAX-MIN)μmとした。厚みムラRは3箇所の値を平均したものとする。
【0035】
(2)表面異物欠点
長さ1m、幅600mmのフィルムサンプルを暗室内で垂直方向に垂らし、フィルム背面の全面に光沢の無い黒色の布を配置し、配向フィルムを巻き出しつつ、前面(被覆層面)からブロムライトを用いてフィルム面に対し約10°から45°の範囲で該ブロムライトの角度を変えながら、フィルム正面から観察し、長径0.5mm以上の異物欠点をマーキングし、フィルム面積1m
2当たりの欠点個数を数えた。そのさい、メチルエチルケトンを浸透させたキムワイプ(登録商標)を用いて欠点部を軽く拭き、欠点部が消失しないことで塗布層由来の異物でないことを確認した。なお、表面異物欠点は製膜時間の経過とともに増加するため、本冷却装置の連続使用時間が24Hr経過したフィルムサンプルに対して反冷却ドラム面から観察した。
【0036】
(3)結晶化キズ
長さ1m、幅600mmのフィルムサンプルについて、フィルムサンプルを暗室内で垂直方向に垂らし、反冷却ドラム面から3波長蛍光灯(パナソニック(株)パルック3波長形昼白色(F.L 15EX-N 15W))の投光器反射で10mmを越えるキズをマーキングし、マーキングしたキズに対して光学顕微鏡(倍率400倍)で測定し、複数の突起物が集中して10mmを越える形状となっているキズを結晶化キズとして数えた。
【0037】
(4)ヘイズの測定
JIS−K7105(1981)にもとづき、ヘイズメーター(「NDH2000」、日本電色工業(株)製)を用いて測定した。長さ1m、幅600mmのフィルムサンプルに対して、長さ方向、幅方向の一辺が100mmの正方形の範囲で、但し、隣り合う正方形同士は重ならず、隣り合う正方形同士が一辺を共有するように、長さ方向9個所×幅方向5個所の計45箇所で測定し、その平均値をとった。
【0038】
(5)吹き付けノズル部のオリゴマ濃度
本冷却装置について、第1吹き付けノズルの表面(フィルム幅方向の中央部付近)に長さ50mm、幅50mmのテフロン(登録商標)コーティングを実施したSUS板を取り付けた。本冷却装置の連続使用時間24Hr後、SUS板を吹き付けノズルから取り外し、表面に析出、堆積したオリゴマをメタノール中で洗浄した。その濾液を、分光光度計にセットし、波長240nmの吸光度を測定した。
オリゴマ量の定量化には、あらかじめ吸光度(240nm)とオリゴマ濃度(ppm)の検量線を作成し、吸光度からオリゴマ濃度を推算した。
【0039】
(6)本冷却装置周辺のエア流れ
本冷却装置の第1吹き付けノズル及び前記押出ダイ直下(冷却ドラムの頂点付近)付近に、純水ミスト気流可視化装置(日本エアーテック株式会社 CLEAN VIEWER ACV-501)のホースを向け、可視化装置からの白煙の流れを目視観察した。本冷却装置付近のエアの強さ、向きの状態について、下記のように評価付けした。
評価A:吹き付けノズル付近のエアが押出ダイ直下に向かって勢いよく吹出している。押出ダイから吐出される熱可塑性樹脂がエアによって振動することに加え、吹き付けノズルからのエアが斜めにフィルムに当たっており冷却効率が低下するため、好ましくない。
評価B:吹き付けノズル付近のエアが押出ダイに向かって吹出しているが、押出ダイ直下までは届かない。吹き付けノズルからのエアがフィルムにやや斜めに当たっており冷却効率が若干落ちるが、口金付近のオリゴマが本冷却装置内部へ流入しておらず好ましい。
評価C:吹き付けノズル付近のエアがほとんど滞留して無風、あるいは吸込みと吹出しをランダムに繰り返している。吹き付けノズルからのエアがフィルムにまっすぐ当たっており冷却効率が高く、口金付近のオリゴマが本冷却装置内部へ流入しておらず最も好ましい。
評価D:吹き付けノズル付近のエアが緩やかに冷却ドラムの回転方向に吸込まれている。吹き付けノズルからのエアがフィルムにやや斜めに当たっており冷却効率が若干落ちることにくわえ、口金付近のオリゴマ濃度が高いエアが本冷却装置内部へ流入しており好ましくない。
評価E:吹き付けノズル付近の空気が勢いよく冷却ドラムの回転方向に吸込まれている。吹き付けノズルからのエアがフィルムに斜めに当たっており冷却効率が落ちることにくわえ、口金付近のオリゴマ濃度が高いエアが本冷却装置内部へ流入しており好ましくない。
【0040】
(7)キャスティング室のクリーン度
パーティクルカウンタを用いてキャスティング室内のクリーン度を測定した。測定箇所は冷却ドラムの真上の位置および本冷却装置最上段吹き付けノズルの真上の位置の2箇所で行い、その平均値をクリーン度の指標とした。光学用途としての適合性について、前記したフィルムの評価結果から、表面異物欠点が5個/m
2以下、結晶化キズ5個/m
2以下、厚みムラR=10μm以下の条件をすべて満足するフィルムを合格とした。
【0041】
次に、本発明のフィルム製造方法に関するフィルムの製膜条件を説明する。なお、実施例1〜6、比較例1〜6における本冷却装置条件を表1に、冷却工程条件を表2、実施例及び比較例の条件より得られたフィルムの品位特性を表3に示す。
【0042】
(実施例1)
ポリエステル原料として、ポリエチレンテレフタレート樹脂(東レ(株)、F20S)ペレットを減圧乾燥した後、押し出し機に供給し、280℃で溶融押出しした。これを表面温度20℃に保った冷却ドラム(直径φ1600mm)に静電印加法にて密着させると同時に、本冷却装置を用いて冷却固化し、厚さ2100μmの熱可塑性樹脂フィルムを得た。
本冷却装置は、熱可塑性樹脂が押出される押出ダイに一番近い部分には、第一吹き付けノズルが配置され、ノズル間排気機構を吹き付けノズルと完全に分離し、吹き付けノズルの背面から50mm離れて設置した。従って、ノズル間排気機構の吸引面は吹き付けノズルの先端面から完全に離れており、吹き付けノズル間には隙間がある。
吹き付けノズルは冷却ドラムの回転方向に沿って100mmピッチで15段設置しており、吹き付けノズルの間には隙間があり、フィルムに当たってはね返ってくるエアが通る。
また、エアが吹き出る部分はスリットタイプとなっていて、スリット間隙2mm、幅1400mmである。
【0043】
また、ノズル間排気機構の吸引面は、ブラインド式の遮蔽板を設置し、開度調整により排気量を可変とした。また、冷却ドラムの頂点真上から第一吹き付けノズルの吹き付けエアの着地点までの冷却ドラムの回転方向に沿った長さは1400mmである。
冷却固化の工程条件としては冷却ドラムの回転速度を8m/min、全吹き付け風量を90m
3/min、ノズル間排気機構の全吸引風量を70m
3/min、冷却エア温度を11℃とした。
冷却ドラム、本冷却装置は一つの部屋として、カバーなどで仕切られた空間にあり(以下、キャスティング室とする)、床5m四方、天井高さ5mで容積125m
3である。キャスティング室には押出ダイ周辺排気機構を天井に設けてあり、換気回数80回/hr、室内のクリーン度はクラス1000である。
【0044】
この熱可塑性樹脂フィルムを加熱されたロール群及び赤外線ヒーターで加熱し、その後、周速差のあるロール群で長手方向に3.2倍延伸して一軸配向ポリエステルフィルムを得た。引き続きフィルムの端部をクリップで把持して温度130℃の熱風ゾーンに導き、フィルム幅方向に3.5倍に延伸した。次にその延伸された幅を保ったまま、温度220℃の熱風ゾーンにて熱固定処理を行い、さらに温度100℃の熱風ゾーンにて冷却処理後、フィルム両端部をトリミングし、さらに巻き取り装置にて巻き取り、厚さ188μm、幅3450mmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムに対し、両端から150mmずつ除き、1000mm幅に3等分してスリットすることで、幅1000mm、長さ2000mのポリエステルフィルムロール3本を得た。この3本のうち中央のロールを用い、厚みムラ、表面異物、結晶化キズなどの評価に必要なフィルムロールサンプルを作製した。
【0045】
(実施例2)
本冷却装置において、各々の吹き付けノズルと吹き付けノズルの間にノズル間排気機構の吸引面があり、吹き付けノズルの先端面からノズル間排気機構の吸引面までの距離を100mmとした。従って、ノズル間排気機構は吹き付けノズルと分離しておらず、吹き付けノズル間に隙間はない。それ以外は実施例1と同様にして、厚さ188μm、幅1000mm、長さ2000mのポリエステルフィルムロールを得た。
【0046】
(実施例3)
冷却工程条件において、全吹き付け風量を120m
3/min、全吸引風量を70m
3/min、全吸引風量/全吹き付け風量=0.58とした。また、ノズル間排気機構を、吹き付けノズルと分離し、吹き付けノズルの背面に設置、吹き付けノズル間に隙間を設けた。そして、厚さ188μm、幅1000mm、長さ2000mのポリエステルフィルムロールを得た。
【0047】
(実施例4)
冷却工程条件において、冷却エア温度を15℃とした。また、ノズル間排気機構を、吹き付けノズルと分離し、吹き付けノズルの背面に設置、吹き付けノズル間に隙間を設けた。それ以外は実施例1と同様にして、厚さ188μm、幅1000mm、長さ2000mのポリエステルフィルムロールを得た。
(実施例5)
冷却工程条件において、天井排気を設置しない以外は実施例1と同様の条件にして、厚さ188μm、幅1000mm、長さ2000mのポリエステルフィルムロールを得た。なお、キャスティング室内のクリーン度はクラス3000である。
【0048】
(実施例6)
冷却工程条件において、全吹き付け風量を90m
3/min、全吸引風量を90m
3/min、全吸引風量/全吹き付け風量=1.00とした。また、ノズル間排気機構を、吹き付けノズルと分離し、吹き付けノズルの背面に設置、吹き付けノズル間に隙間を設けた。それ以外は実施例1と同様にして、厚さ188μm、幅1000mm、長さ2000mのポリエステルフィルムロールを得た。
【0049】
(実施例7)
冷却工程条件において、全吹き付け風量を90m
3/min、全吸引風量を45m
3/min、全吸引風量/全吹き付け風量=0.50とした。また、天井排気を設置していない。また、ノズル間排気機構を、吹き付けノズルと分離し、吹き付けノズルの背面に設置、吹き付けノズル間に隙間を設けた。それ以外は実施例1と同様にして、厚さ188μm、幅1000mm、長さ2000mのポリエステルフィルムロールを得た。
(実施例8)
冷却工程条件において、全吹き付け風量を90m
3/min、全吸引風量を81m
3/min、全吸引風量/全吹き付け風量=0.90とした。また、天井排気を設置していない。また、ノズル間排気機構を、吹き付けノズルと分離し、吹き付けノズルの背面に設置、吹き付けノズル間に隙間を設けた。それ以外は実施例1と同様にして、厚さ188μm、幅1000mm、長さ2000mのポリエステルフィルムロールを得た。
【0050】
(比較例1)
本冷却装置において、押出ダイに一番近い部分に吸引面を配置し、各々の吹き付けノズルと吹き付けノズルの間にはノズル排気機構の吸引面を配置し、吹き付けノズルの先端面とノズル間排気機構の吸引面の位置は同じ円周上に配置した。従って、吹き付けノズル間に隙間は設けない。また、吸引面へのオリゴマ析出防止対策として、吸引面内部の壁面にヒーターを配置した。
また、冷却ドラムの頂点真上から第一吹き付けノズルの吹き付けエアの着地点までの冷却ドラムの回転方向に沿った長さを1400mmとした。また、全吹き付け風量90m
3/min、全吸引風量を340m
3/minとし、全吸引風量/全吹き付け風量=3.78とした。これら以外の条件は実施例1と同様にして、厚さ188μm、幅1000mm、長さ2000mのポリエステルフィルムロールを得た。
【0051】
(比較例2)
全吹き出し風量を90m
3、全吸引風量を225m
3/minとし、全吸引風量/全吹き付け風量=2.50とした以外は比較例1と同様にして、厚さ188μm、幅1000mm、長さ2000mのポリエステルフィルムロールを得た。
【0052】
(比較例3)
キャスティング室内の喚起回数を120回/Hrとした以外は比較例1と同様にして、厚さ188μm、幅1000mm、長さ2000mのポリエステルフィルムロールを得た。なお、キャスティング室内のクリーン度はクラス800である。
【0053】
(比較例4)
吹き付けノズルの先端面からノズル間排気機構の吸引面までの距離を100mmに離した以外は比較例1と同様にして、厚さ188μm、幅1000mm、長さ2000mのポリエステルフィルムロールを得た。
【0054】
(比較例5)
押出ダイに一番近い部分に第1吹き付けノズルを設置した。また、第1吸引面の内部にはヒーターを設置していない。これら以外の条件は比較例1と同様にして、厚さ188μm、幅1000mm、長さ2000mのポリエステルフィルムロールを得た。
【0055】
(比較例6)
押出ダイに一番近い部分に第1吹き付けノズルを設置した。また、第1吸引面の内部にはヒーターを設置していない。また、ノズル間排気機構の吸引面は吹き付けノズルの先端面から離れている。これら以外の条件は比較例1と同様にして、厚さ188μm、幅1000mm、長さ2000mのポリエステルフィルムロールを得た。
【0056】
(比較例7)
押出ダイに一番近い部分に第1吹き付けノズルを設置した。また、第1吸引面の内部にはヒーターを設置していない。また、吹き付けノズルの先端面からノズル間排気機構の吸引面までの距離を100mmとした以外の条件は比較例1と同様にして、厚さ188μm、幅1000mm、長さ2000mのポリエステルフィルムロールを得た。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】