(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5799574
(24)【登録日】2015年9月4日
(45)【発行日】2015年10月28日
(54)【発明の名称】制御プログラム,制御システムおよび制御方法
(51)【国際特許分類】
F22B 35/00 20060101AFI20151008BHJP
【FI】
F22B35/00 E
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-108054(P2011-108054)
(22)【出願日】2011年5月13日
(65)【公開番号】特開2012-237530(P2012-237530A)
(43)【公開日】2012年12月6日
【審査請求日】2014年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】兵頭 康弘
【審査官】
鈴木 貴雄
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−272802(JP,A)
【文献】
特開平01−256704(JP,A)
【文献】
特開平09−159103(JP,A)
【文献】
特開2002−081606(JP,A)
【文献】
特開2007−120784(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
段階的な燃焼位置にて蒸発量を制御可能とされる複数のボイラにより構成されるボイラ群を備え、
ボイラの蒸気ヘッダの圧力を検出する圧力検出器の信号に基づいて燃焼制御されるように構成されたボイラシステムの制御を行い、
前記ボイラ群のうち、いずれかのボイラの燃焼を開始する場合に、既に燃焼中のボイラのうち、いずれかのボイラの燃焼位置を一時的に高くするバックアップ制御が可能とされる制御プログラムであって、
いずれかのボイラの燃焼を開始する必要があり、前記バックアップ制御が可能なボイラの燃焼位置を一段高くして増加する場合に、燃焼が開始されるボイラに対してプレパージ信号を送るバックアップ第一制御と、
前記バックアップ第一制御開始から設定時間が経過しても、前記圧力検出器の検出圧力が設定値以上上昇しないという移行条件を満たした場合に、燃焼位置を一段高くした前記バックアップ制御が可能なボイラの燃焼位置を元の燃焼位置に戻すとともに、前記プレパージ中のボイラに着火信号を送って低燃焼へ移行させ、前記移行条件を満たさず、かつ、いずれかのボイラの燃焼を開始する必要が無いと判定する場合、燃焼位置を一段高くした前記バックアップ制御が可能なボイラの燃焼位置を元の燃焼位置に戻すとともに、前記プレパージを停止するバックアップ第二制御とを行うことを特徴とする制御プログラム。
【請求項2】
請求項1に記載の制御プログラムを備えることを特徴とするボイラシステム。
【請求項3】
段階的な燃焼位置にて蒸発量を制御可能とされる複数のボイラにより構成されるボイラ群を備え、
ボイラの蒸気ヘッダの圧力を検出する圧力検出器の信号に基づいて燃焼制御されるように構成されたボイラシステムの制御を行い、
前記ボイラ群のうち、いずれかのボイラの燃焼を開始する場合に、既に燃焼中のボイラのうち、いずれかのボイラの燃焼位置を一時的に高くするバックアップ制御が可能とされる制御方法であって、
いずれかのボイラの燃焼を開始する必要があり、前記バックアップ制御が可能なボイラの燃焼位置を一段高くして増加する場合に、燃焼が開始されるボイラに対してプレパージ信号を送るバックアップ第一制御と、
前記バックアップ第一制御開始から設定時間が経過しても前記圧力検出器の検出圧力が設定値以上上昇しないという移行条件を満たした場合に、燃焼位置を一段高くした前記バックアップ制御が可能なボイラの燃焼位置を元の燃焼位置に戻すとともに、前記プレパージ中のボイラに着火信号を送って低燃焼へ移行させ、
前記移行条件を満たさず、かつ、いずれかのボイラの燃焼を開始する必要が無いと判定する場合、燃焼位置を一段高くした前記バックアップ制御が可能なボイラの燃焼位置を元の燃焼位置に戻すとともに、前記プレパージを停止するバックアップ第二制御とを行うことを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、段階的な燃焼位置にて蒸発量を制御可能とされる複数のボイラからなるボイラ群の燃焼を制御する制御プログラム、制御システムおよび制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、段階的な燃焼位置にて蒸発量を制御可能とされる複数のボイラにより構成されたボイラ群のいずれかのボイラの燃焼を開始して蒸発量を増加させる場合に、燃焼開始するボイラが所定の蒸発量に到達して給蒸可能になるまでの間、既に燃焼しているボイラの蒸発量を増加して該燃焼開始するボイラの給蒸のタイムラグを補うためにバックアップ制御を行なう技術は、特許文献1や特許文献2にて知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平6−92804号公報
【特許文献2】特開2010−091139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この出願の発明者は、特許文献1や特許文献2のバックアップ制御において、つぎの課題を見出した。すなわち、バックアップ制御の高燃焼により、ヘッダ圧力が上昇すると、停止状態のボイラを低燃焼へ移行させる必要がなくなり、待機状態へ移行させることが考えられる。この場合、低燃焼へ移行中のボイラが着火工程まで到達している場合、着火後に直ちに待機状態へ移行させると、着火回数のみが増加し、スパークロッドの磨耗など、着火用部品の劣化が促進されてしまうという課題である。
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、スパークロッドの磨耗など、着火用部品の劣化を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、段階的な燃焼位置にて蒸発量を制御可能とされる複数のボイラにより構成されるボイラ群を備え、ボイラの蒸気ヘッダの圧力を検出する圧力検出器の信号に基づいて燃焼制御されるように構成されたボイラシステムの制御を行い、前記ボイラ群のうち、いずれかのボイラの燃焼を開始する場合に、既に燃焼中のボイラのうち、いずれかのボイラの燃焼位置を一時的に高くするバックアップ制御が可能とされる制御プログラムであって、いずれかのボイラの燃焼を開始する必要があり、前記バックアップ制御が可能なボイラの燃焼位置を一段高くして増加する場合に、燃焼が開始されるボイラに対してプレパージ信号を送るバックアップ第一制御と、前記バックアップ第一制御開始から設定時間が経過しても、前記圧力検出器の検出圧力が設定値以上上昇しないという移行条件を満たした場合に、
燃焼位置を一段高くした前記バックアップ制御が可能なボイラの燃焼位置を元の燃焼位置に戻すとともに、前記プレパージ中のボイラに着火信号を送って低燃焼へ移行させ、前記移行条件を満たさず、かつ、いずれかのボイラの燃焼を開始する必要が無いと判定する場合、
燃焼位置を一段高くした前記バックアップ制御が可能なボイラの燃焼位置を元の燃焼位置に戻すとともに、前記プレパージを停止するバックアップ第二制御とを行うことを特徴としている。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の制御プログラムを備えるボイラシステムを特徴としている。
【0008】
請求項3に記載の発明は、段階的な燃焼位置にて蒸発量を制御可能とされる複数のボイラにより構成されるボイラ群を備え、ボイラの蒸気ヘッダの圧力を検出する圧力検出器の信号に基づいて燃焼制御されるように構成されたボイラシステムの制御を行い、前記ボイラ群のうち、いずれかのボイラの燃焼を開始する場合に、既に燃焼中のボイラのうち、いずれかのボイラの燃焼位置を一時的に高くするバックアップ制御が可能とされる制御方法であって、いずれかのボイラの燃焼を開始する必要があり、前記バックアップ制御が可能なボイラの燃焼位置を一段高くして増加する場合に、燃焼が開始されるボイラに対してプレパージ信号を送るバックアップ第一制御と、前記バックアップ第一制御開始から設定時間が経過しても前記圧力検出器の検出圧力が設定値以上上昇しないという移行条件を満たした場合に、
燃焼位置を一段高くした前記バックアップ制御が可能なボイラの燃焼位置を元の燃焼位置に戻すとともに、前記プレパージ中のボイラに着火信号を送って低燃焼へ移行させ、前記移行条件を満たさず、かつ、いずれかのボイラの燃焼を開始する必要が無いと判定する場合、
燃焼位置を一段高くした前記バックアップ制御が可能なボイラの燃焼位置を元の燃焼位置に戻すとともに、前記プレパージを停止するバックアップ第二制御とを行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、不必要なボイラの着火を防止することができ、スパークロッドの磨耗など、着火用部品の劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】この発明を実施したボイラシステムの実施の形態の概略構成図である。
【
図2】同実施の形態の制御プログラムを説明するフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態のボイラシステム1を図面に基づいて詳細に説明する。ボイラ台数制御システム1は、段階的な燃焼位置にて蒸発量を制御可能とされる複数台(この実施の形態では3台)の蒸気ボイラ(以下、単にボイラという。)21,22,23からなるボイラ群2と、各ボイラ21,22,23を蒸気管(符号省略)で連結する共通の蒸気ヘッダ3と、蒸気ヘッダ3の内部の蒸気圧力を検出するための圧力検出器4と、圧力検出器4の検出圧力信号に基づいて、予め記憶した制御プログラムに基づき、予め設定しておいた起動順序に従って必要台数のボイラを燃焼・停止させ、蒸気負荷の変化に追随するように制御する台数制御器5とを備えている。蒸気ヘッダ3は、蒸気使用機器6と蒸気管(符号省略)で連結されている。
【0012】
台数制御器5による制御プログラムには、通常台数制御とバックアップ制御とを含んでいる。
【0013】
通常台数制御は、周知の制御であり、負荷量に対応した燃焼台数制御であって、圧力検出器4の圧力信号により必要燃焼台数を決定し、燃焼制御の出力信号を出す制御である。
【0014】
バックアップ制御は、前記ボイラ群2のうち、いずれかのボイラの燃焼を開始する場合に、既に燃焼中のボイラのうち、いずれかのボイラの燃焼位置を一時的に高くする制御であり、この発明の特徴とする制御である。このバックアップ制御は、バックアップ第一制御とその後に行われるバックアップ第二制御とを含んで構成される。
【0015】
バックアップ第一制御は、燃焼台数増要と判定する、すなわちいずれかのボイラの燃焼を開始する必要があると判定したとき、低燃焼状態にあり、低燃焼から高燃焼へ移行可能なボイラ(バックアップボイラ)に対して高燃焼位置への燃焼移行信号とともに、停止状態のボイラ(待機ボイラ)に対してプレパージ信号を送る制御である。
【0016】
バックアップ第二制御は、前記バックアップ第一制御開始から設定時間が経過しても前記圧力検出器4の検出圧力が設定値以上上昇しないという移行条件を満たした場合、前記プレパージ中のボイラに着火信号を送って低燃焼へ移行させ、前記移行条件を満たさず、かつ、燃焼台数増要と判定しない、すなわちいずれかのボイラの燃焼を開始する必要がない場合、前記プレパージを停止する制御である。
【0017】
バックアップ制御を含むこの実施の形態の制御手順を
図2に示す。このバックアップ制御は、待機ボイラとバックアップボイラが存在することが条件となるので、待機ボイラとバックアップボイラとのいずれかが存在しない場合は、
図2の制御手順は行われず、通常台数制御が行われる。
【0018】
通常台数制御の一実施例を説明する。ボイラ21,22,23として、停止状態、低燃焼状態(第一燃焼位置)L、高燃焼状態(第二燃焼位置)H、の三位置によって燃焼制御を行う三位置制御方式のボイラを用いた場合、次のような燃焼台数制御が行われるように構成される。低燃焼状態の蒸発量は、高燃焼の蒸発量の約1/2で、燃焼台数は、低燃焼を1台として、高燃焼を2台と換算する。
【0019】
すなわち、この実施の形態では、特許文献1と同様に、蒸気圧力によって7種類の燃焼台数制御状態に設定される。燃焼開始、バックアップ制御等の燃焼制御に際して、ボイラ21,ボイラ22,ボイラ23は、この順に優先順位が設定されている。そして、第一燃焼位置での燃焼を第二燃焼位置での燃焼より優先的に行なうようになっている。すなわち、すべてのボイラが燃焼開始されるまでは、いずれのボイラも第二燃焼位置に移行しないようになっている。
【0020】
そして、蒸気圧力が一番低い段階では、3台とも高燃焼の状態H,H,Hにあり、次の圧力段階になるとボイラ23がH→LとなってH,H,Lの状態に移る。さらに圧力が上昇すると、ボイラ22,ボイラ21が順次H→Lになり、L,L,Lの状態になる。そして、さらに圧力が上昇すると、ボイラ23,ボイラ22,ボイラ21の順に燃焼が停止し、上限の圧力段階に達すると全台数が停止する。また、蒸気圧力が降下すれば、上記の順番とは逆の順番で起動するように設定している。
【0021】
以下に、台数制御器5によるバックアップ制御を
図2に基づき説明する。負荷量は、通常一定ではなく変動を繰返す。今、負荷量が増加し、蒸気圧力が低下して、各ボイラ21,22,23がL,L,停止の状態からL,L,Lの状態への移行が必要となったとする。
【0022】
図2において、台数制御器5は、ステップS1(以下、ステップSNを単にSNという。)にて、燃焼台数増が必要かどうかを判定する。今の場合、YESが判定され、S2へ移行して、台数制御器5は、燃焼待機(燃焼停止)中のボイラである待機ボイラ23に対してプレパージ開始信号を送る。
【0023】
ついで、S3で、台数制御器5は、待機ボイラ23は給蒸に時間がかかるので、待機ボイラ23からバックアップ要求を出していると仮想的に見なす。すなわち、待機ボイラ23からは、バックアップ要求を出さない。
【0024】
そして、台数制御器5は、S4において、バックアップボイラであるボイラ21に対して、高燃焼への移行信号を送る。その結果、各ボイラボイラ21,22,23がそれぞれ、H,L,プレパージの状態となり、燃焼台数を増加させて負荷量増加に対応する。
【0025】
S5では、バックアップ可能蒸気量が零かどうか,すなわち他にバックアップボイラが
存在するかどうかを判定する。今の場合、ボイラ22があるので、NOが判定され、S6へ移行する。
【0026】
S6では、台数制御器5は、設定時間以内に蒸気ヘッダ3内の圧力が設定値以上上昇しないという移行条件を満たしているかどうかを判定する。
【0027】
S6でNOが判定されると、S1に戻り、台数制御器5は、燃焼台数を増加させる必要があるかどうかを判定する。この判定は、各ボイラ21,22,23がL,L,停止の状態からL,L,Lの状態への移行が必要かどうかの判定である。S1でNOが判定される,すなわち燃焼台数増が必要ないと判断されると、S8へ移行して、待機ボイラ23をプレパージから元の待機状態へ戻すとともに、バックアップボイラ21を高燃焼から低燃焼へ戻す。
【0028】
S6でYESが判定される、前記移行条件を満たした場合、S7へ移行して、待機ボイラ23をプレパージから着火工程を経て低燃焼へ移行させるとともに、バックアップボイラ21を高燃焼から低燃焼へ戻す。これにより、ボイラ21,22,23がL,L,停止の状態からL,L,Lの状態へ移行して、燃焼台数が増加する。
【0029】
S6の判定後に、S1でYESが判定されると、待機ボイラとバックアップボイラが存在する場合、S2からS5の処理が繰り返される。今の場合、待機ボイラは存在しないので、S2からS5の処理は行われない。
【0030】
以上の実施の形態のバックアップ制御により、バックアップ第一制御(S2〜S4)開始から設定時間が経過しても圧力検出器4の検出圧力が設定値以上上昇しないという移行条件(S6の判定条件)を満たさず、かつ、燃焼台数増要の条件(S1の判定条件)を満たさない場合、待機ボイラの着火工程への移行を停止するので、スパークロッドの磨耗による劣化を防止することができる。
【0031】
この発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、前記実施の形態のように、低燃焼状態の蒸発量を高燃焼の蒸発量の約1/2とするものに限定されない。そして、バックアップ制御を特許文献2に記載のように、前記バックアップ制御が可能なボイラの燃焼位置を一段高くして増加するそれぞれの蒸発量が、不足蒸発量以上である場合に、前記バックアップ制御の開始タイミングを、前記蒸発量に対応する少なくとも一の物理量が変化する速度に応じて制御するように構成されるボイラシステムにもこの発明は適用される。
この場合、前記速度が所定値以上の場合に、前記バックアップ制御を、
(不足蒸発量)≦(バックアップ制御が可能なボイラの燃焼位置を高くして増加する蒸発量)
を満足する最小台数のボイラにより制御するように構成できる。
また、前記速度が所定値以下の場合に、
前記バックアップ制御を、
(不足蒸発量)≧(バックアップ制御が可能なボイラの燃焼位置を高くして増加する蒸発量)
を満足する最大台数のボイラにより制御するように構成できる。
【0032】
また、前記実施の形態では、各ボイラを3位置制御のボイラとしたが、停止、低燃焼、中燃焼、高燃焼の4位置制御以上のボイラとすることができる。この場合、バックアップボイラは、低燃焼または、中燃焼のボイラとなる。さらに、通常台数制御は、前記実施の形態に記載した以外の制御とすることができる。
【符号の説明】
【0033】
2 ボイラ群
21,22,23 蒸気ボイラ(ボイラ)
3 蒸気ヘッダ
4 圧力検出器