【実施例1】
【0012】
本発明の吹出グリルは、空気調和機のダクトの空気通路出口側に取り付けられ、空気調和機の吹出口を形成する。吹出グリル1は、
図1〜
図3に示すように、前面パネル2と、取付枠3と、風向を調整する風向変更装置4と、風向変更装置4とは異なる向きの風向を調整する風向変更装置5とからなり、例えば風向変更装置4が左右の風向を調整し、風向変更装置5が上下の風向を調整する。
前面パネル2は、前後面が開放された四角い枠状で、同枠内が吹出口2aとなるダクト部20と、同ダクト部20の前面側に額縁状に設けられた縁面21と、ダクト部20の中央に左右を仕切るように立設された風向板軸受部22とからなる。
【0013】
尚、以下の説明では、吹出グリル1において、
図1で前面パネル2の縁面21が配置された方を前面、その反対面を背面とし、前面パネル2を正面視した時に縁面21が幅広の面を有する側を右側面、その反対面を左側面として説明を進める。
【0014】
風向板軸受部22は、
図3、
図4に示すように、前面側に延出し、後述する風向板50を軸支するアーム部を備え、アーム部は最下段の風向板50以外を軸支する第1アーム部23と、第1アーム部23と別形状となり最下段に配置された風向板50を軸支する第2アーム部24からなる。
第1アーム部23の先端部23aは、風向板50の軸受孔23bを備えるとともに、先端の形状は風向板50が回動した時に風向板50と接触しないように軸受孔23bと同心円の半円形状に形成されている。
第2アーム部24の先端部24aは、風向板50の軸受孔24bを備えるとともに、先端部24aの形状の上部部分は風向板50が回動した時に風向板50と接触しないように軸受孔24bと同心円の1/4円形状に形成され、下部部分は矩形状に形成され、矩形状の下端角部には更に前方に半円状に突出した突片24cを備える。突片24cは、正面視で第2アーム部24と同じ幅で構成され、第2アーム部24と先端部24aおよび突片24cは、後述する風向板50が垂直状態の時には風向板50に隠蔽され、前面側からは視認されることはない。
【0015】
吹出グリル1は、
図3に示すように、室内の壁面10の開口部に取付枠3を先に取り付け、同取付枠3と空気調和機から延設された吹出用ダクト11とを接続する。その後に前面パネル2の縁面21を室内に露出させながら前面パネル2のダクト部20を取付枠3内に埋め込んで設置する。
風向変更装置4は、前面パネル2のダクト部20内の後方に設けられ、風向変更装置5は、前面パネル2のダクト部20内の前方に設けられる。
【0016】
なお、図示しないが、空気調和機は天井裏に本体を設置し、室内に設けられた吸込グリルとダクトを介して吸い込まれた空気を屋外に設置した室外機との間で熱交換する。熱交換された空気は吹出用ダクト11を通過し、吹出グリル1のダクト部20内の風向変更装置4と風向変更装置5とで室内に広く届くように吹出方向を調整されて吹き出される。
【0017】
風向変更装置4は、
図4に示すように、並列に配置され上端と下端に回転軸40aを備えた6枚の左右風向板40と、左右風向板40同士を連結する連結板41で構成され、前面パネル2の中央の風向板軸受部22で仕切られたダクト部20内の右室と左室にそれぞれ1組ずつ、回転軸40aを軸支することで配置される。
左右風向板40を、前面に対して垂直に取り付けられた状態で空気調和機を運転すると、吹出空気は前面側に吹き出される。
吹出空気を左側に向ける時は、左右風向板40のいずれかの一つを摘み、左方向へ移動させると、左右風向板40は回転軸40a中心として回動する。一つの左右風向板40を回動させると、連結板41が左方向へ移動するとともに、連結板41で連結されたその他の左右風向板40も一斉に左方向へ回動し、吹出空気は左面側に吹き出される。
【0018】
次に風向変更装置5の構成について説明する。
風向変更装置5は、吹出口2aの前面に並列に配置され、運転時は
図1に示すように吹出口2aを開放し、運転停止時は
図2に示すように、シャッター状に吹出口2aを閉塞する複数枚(本実施例では4枚)の風向板50と、
図4に示すモータ駆動機構6とからなる。
【0019】
風向板50は、スチレン系の樹脂製でなり、
図5に示すように、細長く前面側に緩やかに湾曲した板状で上面に第1テーパ部51aと下面に第2テーパ部51bを有する羽根部51と、羽根部51の両端に備えられ、羽根部面を底辺とした五角形状の薄板でなる左側支持部52および右側支持部53と、羽根部51の背面側中央に立設するリブ状の中央支持部54とからなる。
なお、
図3に示すように、第1テーパ部51aは、上段に配置される風向板50の第2テーパ部51bと平行となり、背面側が高く前面側が低くなるテーパ形状となる。
【0020】
図4および
図5に示すように、左側支持部52には、外側に向かって羽根部51と平行に回転軸52aが立設し、回転軸52aは、軸受70を介して前面パネル2のダクト部20の吹出口側壁20bに設けた軸孔25に軸支される。
右側支持部53には、羽根部51と平行に回転軸53aが立設し、回転軸53aは、軸受70を介して前面パネル2のダクト部20の吹出口側壁20bに設けた軸孔25に軸支され、回転軸53aの先端部がモータ駆動機構6と連結される。
中央支持部54には、片側に回転軸54aが立設し、回転軸54aは、軸受71を介して前面パネル2の風向板軸受部22の軸受孔23b、24bに軸支される。
回転軸52a、53a、54aは羽根部51と平行な直線n上に配置されることで、風向板50が左右両端と中央の3点をそれぞれ前面パネル2に支持されて自在に回動する。3点が支持されることで、風向板50が自重により撓んだり、送風の影響により発生する振動を防ぐことができる。
なお、軸受70と軸受71は風向板とは異なるポリアセタール等の高摺動性樹脂でなり、風向板50の摺動性を向上させ回動時に異音を防止する効果がある。
【0021】
また、右側支持部53には、右側支持部53を挟んで回転軸53aの対面にリンク軸53bが立設する。リンク軸53bは、リンク板8から突設したアーム80の先端の隙間に挿入されて軸支される。リンク板8は
図3に示すように、その他のそれぞれの風向板50も同時にアーム80で軸支することで、モータ駆動機構6の回動に合わせ、全ての風向板50をリンクさせて回動することができる。
【0022】
モータ駆動機構6は、モータ60が、ギアボックス61で前面パネル2に固定され、図示しないがモータ60の回転軸が連結軸とスプリングを介して、風向板50のいずれか1つの回転軸53aに組み合わされる。
【0023】
次に、風向変更装置5の作動について説明する。
図2および
図3に示すように、空気調和機の運転停止時には、風向板50は羽根部50aで吹出口2aを閉塞した状態になっている。この時は、モータ60が風向板50のいずれか1つの回転軸53aを下方へ回動させるとともに、リンク軸53bが所定の方向へ回動し、リンク軸53bの回動に合わせリンク板8が移動することで、他の風向板50も同様に回動することにより、全ての風向板50が均一の角度を保てることになる。
また、下段の風向板50の第1テーパ部51aに上段の風向板50の第2テーパ部51bが順次被さる状態となることで、吹出口内部に埃の侵入を抑えることが出来、さらに、いずれか1つの風向板50が開きぎみの状態となった場合でも、上段の風向板50の第2テーパ部に当接して押えられる。
【0024】
最下段の風向板50と前面パネル2のダクト部20の間には、上と下に若干の隙間mが設けられている。これは、運転中に人為的な操作により風向板を垂直状態にして吹出口2aを閉塞された際に、出口が無くなった吹出空気により、吹出口2a内部に故障や破損を引き起こすことを防ぐために最低限の通風を確保する目的で、風向板で吹出口2aを完全に塞ぐことがないように設けているものである。
【0025】
空気調和機の操作部の指示により空気調和機が運転開始をすると、モータ60が駆動し、モータ60の回転軸と連結された風向板50のいずれか1つの回転軸53aがモータ60に合わせて回動する。回転軸53aは、回転軸52a、54aと平行な直線n上に配置されているので風向板50が、回転軸52a、53a、54aを回転の中心点として回動する。モータ60は風向板50を
図6に示すように、点線で示した風向板(50)の運転停止時の位置から、実線で示す風向板50の位置の範囲まで上方に約90度の範囲で正逆に回転させるようになっている。風向板50は互いにリンク板8でリンクされていることで、その他の風向板50も同様に同じ角度に回動する。これにより、風向板50が吹出口2aを開放することで、吹出空気が室内に吹き出される。
風向板50は
図6のように90度の全開の位置まで回動してもよいし、任意の位置に設定して室内の一定の方向に向けて吹出空気を吹出してもよい。また風向を所定の角度範囲で連続的に往復して回動させる指令がある場合は、モータ60が正逆に回転することで風向板50が所定の角度範囲で連続的に往復して回動し、室内の隅々まで行き渡るように吹出空気が吹き出されることになる。
【0026】
空気調和機の操作部の指示により空気調和機が運転停止をすると、モータ60が運転停止位置で停止して、風向板50も吹出口2aを閉塞する
図3の垂直状態に戻ることになる。並列に配置された羽根部51の第1テーパ部51aと上端の第2テーパ部51bは運転停止時には、互いに接触せずに、若干の隙間が設けられている。また羽根部51は風向板軸受部22の第1アーム部23とは間隔を空けてあるが、第2テーパ部24の突片24bとは、近接している。この状態では第2アーム部24と先端部24aおよび突片24cは、羽根部51で隠れ、前面側からは視認することができないため美観を損なうことはない。
【0027】
しかし、風向板50とダクト部20の間には、隙間mが設けられているため、最下段の風向板50の下端を本来の風向板50の回動範囲ではない方向へ人為的に押し込むことが予測される。その場合には、
図7に示すように、第2アーム部24の突片24cに羽根部51の第2テーパ部51bの角部が当接し、羽根部51の第1テーパ部51aの上端が、上段の羽根部51の第2テーパ部51bに接触する。これにより、さらに風向板が押し込まれることを防ぐことができる。その結果、風向板50を押し込むことによる風向板の回転の反動により、上段の風向板に接触して、その風向板が中央軸受やリンク板から位置ずれしたり、外れることによる故障や破損を防ぐことが可能となる。