(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ベルト補助層がタイヤ周方向に対して87°〜90°の角度で埋設されたスチールコードからなることを特徴とする請求項1に記載の乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
前記ベルト層を構成するスチールモノフィラメントの強度が2700MPa以上であると共に、前記ベルト層を構成するスチールモノフィラメントの断面積と50mm幅当たりの打ち込み本数との積が4.5mm2 以上6.8mm2 以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
前記ベルト層を構成するスチールモノフィラメントの強度が3200MPa以上であると共に、前記ベルト層を構成するスチールモノフィラメントの断面積と50mm幅当たりの打ち込み本数との積が4.5mm2 以上6.1mm2 以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
前記ベルト層を構成するスチールモノフィラメントの強度が3500MPa以上であると共に、前記ベルト層を構成するスチールモノフィラメントの断面積と50mm幅当たりの打ち込み本数との積が4.5mm2 以上5.5mm2 以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
前記ベルト層を構成するコートコンパウンドは、20℃における動的弾性率E’が15MPa以下であり、かつ60℃におけるtanδが0.15以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上述する問題点を解決するもので、ベルトコードを単線化した場合であっても、タイヤ耐久性を維持すると共に、転がり抵抗を低減することを可能にした空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の乗用車用空気入りラジアルタイヤは、左右のビード部間にカーカス層を装架し、トレッド部におけるカーカス層の外周に、
2層のベルト層と該ベルト層と前記カーカス層との間に位置する1層のベルト補助層の3層のみを設け、前記2層のベルト層をタイヤ周方向に対して15°〜45°の角度で埋設されたスチールコードから
構成し、前記2層のベルト層
の層間でコード方向が交差するよう
にした乗用車用空気入りラジアルタイヤにおいて、前記ベルト層を直径0.27mm〜0.45mmの無撚りのスチールモノフィラメントからなるスチールコードから構成すると共に、
前記ベルト補助層をタイヤ周方向に対して80°〜90°の角度で埋設されたスチールコードから
構成し、前記ベルト層のうち最小幅を有するベルト層の両端部からタイヤ幅方向内側に向かってそれぞれ30mmの位置に前記ベルト補助層の少なくとも一部が掛かるように該ベルト補助層を配置する一方で、前記ベルト補助層をタイヤ幅方向に分割し、前記ベルト補助層の各分割片の幅を30mm以上にし、且つ、前記ベルト補助層の分割片同士の離間距離を前記ベルト層のうち最小幅を有するベルト層の20%以上にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、ベルト層を直径0.27mm〜0.45mmの無撚りのスチールモノフィラメントからなるスチールコードから構成することで、ベルト層のゲージを薄くし転がり抵抗を低減することが出来る。更に、カーカス層とベルト層との間にタイヤ周方向に対して80°〜90°の角度で埋設されたスチールコードからなるベルト補助層を設けることで、ベルトコードの座屈を抑制して、単線化に伴い低減する曲げに対する耐疲労性を補うことが出来る。その結果として、転がり抵抗の低減とタイヤの耐久性の改善を両立することが出来る。
【0009】
本発明においては、ベルト補助層がタイヤ周方向に対して87°〜90°の角度で埋設されたスチールコードからなることが好ましい。これにより、転がり抵抗をより低減することが出来る。
【0010】
本発明においては、ベルト層のうち最小幅を有するベルト層の両端部からタイヤ幅方向内側に向かってそれぞれ30mmの位置にベルト補助層の少なくとも一部が掛かるようにベルト補助層を配置
しているので、ベルトコードの座屈を効果的に抑制することが出来る。
【0011】
本発明においては、ベルト層を構成するスチールモノフィラメントの強度が2700MPa以上であると共に、ベルト層を構成するスチールモノフィラメントの断面積と50mm幅当たりの打ち込み本数との積が4.5mm
2 以上6.8mm
2 以下であることが好ましい。或いは、ベルト層を構成するスチールモノフィラメントの強度が3200MPa以上であると共に、ベルト層を構成するスチールモノフィラメントの断面積と50mm幅当たりの打ち込み本数との積が4.5mm
2 以上6.1mm
2 以下であることが好ましい。或いは、ベルト層を構成するスチールモノフィラメントの強度が3500MPa以上であると共に、ベルト層を構成するスチールモノフィラメントの断面積と50mm幅当たりの打ち込み本数との積が4.5mm
2 以上5.5mm
2 以下であることが好ましい。このように、ベルト層を構成するスチールフィラメントの強度に応じてベルト層を構成するスチールモノフィラメントの断面積と打ち込み本数との積を規定することで、強度とコードの存在量とのバランスを取り、優れた耐久性と優れた接着性を両立することが出来る。
【0012】
本発明においては、ベルト層を構成するスチールモノフィラメントが、タイヤ幅方向に並んだ2〜5本の束を単位としてベルト層中に配設されていることが好ましい。このように束を単位として配設されることで、ベルト層内の実質的なワイヤ間隔(束と束との間隔)が広くなるので、ベルトエッジセパレーションの進展を遅くし、耐セパレーション性を向上することが出来る。
【0013】
本発明においては、ベルト補助層を構成するスチールコードが2本以上のワイヤを撚り合わせて構成されることが好ましい。このように素線間摩擦の減衰性に優れる撚り線をベルト層とカーカス層との間に用いることで、乗心地性を改善することが出来る。
【0014】
本発明においては、ベルト補助層がタイヤ幅方向に分割され、ベルト補助層の各分割片の幅が30mm以上であ
り、更に、ベルト補助層の分割片同士の離間距離がベルト層のうち最小幅を有するベルト層の幅の20%以上である
ので、耐久性を悪化させることなくタイヤを軽量化することが出来る。
【0015】
本発明においては、ベルト層を構成するコートコンパウンドは20℃における動的弾性率E’が15MPa以下であり、かつ60℃におけるtanδが0.15以下であるゴム組成物から構成することが好ましい。トレッド部に2層のベルト層と1層のベルト補助層からなる3層構造のベルト部を形成した場合、ベルト部の剛性に対するコードコンパウンドの寄与が低下するため、ベルト層には柔らかくて発熱性が低いコートコンパウンドを使用することが出来る。それにより、ベルト層の発熱を抑えて耐久性を更に改善することが出来る。
【0016】
尚、20℃における動的弾性率E’とは、粘弾性スペクトロメータ―(東洋精機製作所製)を使用して、温度20℃、周波数20Hz、初期歪10%、動歪±2%の条件で測定されるものである。また、60℃におけるtanδとは、粘弾性スペクトロメーター(東洋精機製作所製)を使用して、温度60℃、周波数20Hz、初期歪10%、動歪±2%の条件で測定されるものである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の参考となる乗用車用空気入りラジアルタイヤ(以下「参考タイヤ」と称する。)を示し、図2は、本発明の実施形態からなる乗用車用空気入りラジアルタイヤ(以下「タイヤ」と称する。)を示す。また、
図3は図1の参考タイヤのカーカス層4、ベルト層10、及びベルト補助層20を抽出してタイヤ赤道面CLから一方の側のみを展開して示し、図4は、
図2のタイヤのカーカス層4、ベルト層10、及びベルト補助層20を抽出してタイヤ赤道面CLから一方の側のみを展開して示す。
【0020】
図1,2において、1はトレッド部、2はサイドウォール部、3はビード部である。左右一対のビード部3,3間には1層のカーカス層4が装架され、これらカーカス層4の端部がビードコア5の周りにタイヤ内側から外側に折り返されている。ビードコア5の外周側にはゴムからなる断面三角形状のビードフィラー6が配置されている。トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には、2層のベルト層10(11,12)がタイヤ全周に亘って配置されている。このベルト層10(11,12)は、
図3,4に示すように、スチールコードからなるベルトコード10a(11a,12a)をゴム中に埋設して構成される。このベルトコード10a(11a,12a)はタイヤ周方向に対して低角度で傾斜しており、その傾斜角度θ1は15°〜45°である。また、これらベルトコード11a,12aは層間で互いに交差するように配置されている。
【0021】
また、ベルトコード10a(11a,12a)は、直径0.27mm〜0.45mmの無撚りのスチールモノフィラメントから構成されている。このようにベルト層10を構成するベルトコード10aの直径を小さく設定することでベルト層10のゲージを薄くして転がり抵抗を低減することが出来る。尚、無撚りのスチールモノフィラメントとしては、基本的にくせ無しのものを用いるが、くせ付きのものを用いても構わない。
【0022】
このように構成された空気入りタイヤにおいて、カーカス層4とベルト層10との間には、ベルト補助層20が配置されている。このベルト補助層20は、
図3,4に示すように、スチールコードからなるベルト補助コード20aをゴム中に埋設して構成される。このベルト補助コード20aは、タイヤ周方向に対して高角度で傾斜しており、その傾斜角度θ2は80°〜90°、好ましくは87°〜90°である。このようにベルト補助層20を設けることで、ベルトコード10aの座屈を抑制して、モノフィラメント化に伴い低減する曲げに対する耐疲労性を補うことが出来る。その結果として、転がり抵抗の低減とタイヤの耐久性の改善を両立することが出来る。
【0023】
ベルトコード10a(11a,12a)の傾斜角度θ1が15°より小さいと、ベルト部の幅方向の剛性が不充分になるため操縦安定性が低下する。ベルトコード10a(11a,12a)の傾斜角度θ1が45°より大きいと、ベルト部の周剛性が不充分になるため操縦安定性が低下する。
【0024】
ベルトコード10aの直径が0.27mmより小さいと耐久性を維持するためにコードの打ち込み密度を高くする必要があり、その結果、接着性が低下しエッジセパレーション耐久性が低下する。ベルトコード10aの直径が0.45mmより大きいと、ベルト層10の薄ゲージ化の効果が不充分になるうえ、コードの曲げに対する疲労性が低下してベルト折れ耐久性が悪化する。
ベルト補助コード20aの傾斜角度θ2が80°より小さいと、ベルト部の幅方向の剛性が不充分になるため操縦安定性が低下する。
【0025】
尚、ベルト補助層20をベルト層11とベルト層12との間や最外周側のベルト層11より径方向外側に配置すると、転がり抵抗を充分に低減することが出来ない。
【0026】
ベルト補助層20は、
図1及び3に示すようにベルト層10の内周側でタイヤ幅方向全域を覆うように設けること
もできるが、本発明では、
図2及び4に示すようにタイヤ幅方向に分割され、タイヤ中央部で離間した2つの分割片21,21から構成す
る。
【0027】
いずれの場合であっても、ベルト補助層20は、ベルト層10のうち最小幅を有するベルト層11の両端部11b,11bからタイヤ幅方向内側に向かってそれぞれ30mmの位置Pにベルト補助層20の少なくとも一部が掛かるように配置す
る。言い換えれば、ベルト補助層20のタイヤ幅方向外側端部20bがベルト層10のうち最小幅を有する最小幅ベルト層11の両端部11bよりもタイヤ幅方向内側に位置し、ベルト補助層20のタイヤ幅方向外側端部20bと最小幅ベルト層11の両端部11bとの離間距離dをそれぞれ30mm以内にす
る。
【0028】
このような位置にベルト補助層20を配置することでベルトコード10の座屈を効果的に抑制することが出来る。ベルト補助層20が位置Pに掛からない場合、即ち、ベルト補助層20のタイヤ幅方向外側端部20bと最小幅ベルト層11の両端部11bとの離間距離dが30mmより大きい場合、ベルト折れが発生し易い部位を充分に補強することが出来なくなるので耐久性が低下する。
【0029】
ここで、
図2,4のようにベルト補助層20をタイヤ幅方向に分割した分割片21,21から構成する場合、各分割片のタイヤ幅方向に測定される幅は30mm以上であ
る。更に、ベルト補助層20の分割片21,21同士の離間距離Lがベルト層10のうち最小幅を有するベルト層11の幅W1の20%以上であ
る。より好ましくは、最小幅ベルト層11の幅W1の20%以上60%以下であると良い。
【0030】
ベルト補助層20を分割する場合に、このように各分割片21を配置することで、耐久性を悪化させることなくタイヤを更に軽量化することが出来る。各分割片の幅が30mmより小さいと充分にベルト層10を補強できなくなるので、耐久性が低下する。また、分割片21,21同士の離間距離Lが最小幅ベルト層11の幅W1の20%より小さいと、ベルト補助層20の量を充分に減少することが出来ないのでタイヤの軽量化の効果が充分に得られない。
【0031】
尚、
図1のように全幅を覆うベルト補助層20を設ける場合、ベルト補助層20が上述の位置Pに掛かればベルト補助層20の幅は特に限定されない。即ち、この場合、ベルト補助層20の幅は、少なくとも左右の位置P同士の間の長さを有していれば良い。つまり、ベルト補助層20の幅はW1−60mmより大きいことが好ましい。
【0032】
このように構成された本発明のタイヤにおいて、ベルトコード10a(11a,12a)の強度を高くすることで、ベルトコード10aの存在量を低減してタイヤを更に軽量化することが出来る。即ち、ベルトコード10aを構成するスチールモノフィラメントの強度と、ベルトコード10aを構成するスチールモノフィラメントの断面積と50mm幅当たりの打ち込み本数との積とを適切な範囲に設定することで、ベルトコード10aの強度と存在量のバランスを取り、耐久性を高度に維持したままタイヤを更に軽量化することが出来る。
【0033】
具体的には、ベルト層10を構成するスチールモノフィラメントの強度が2700MPa以上であると共に、ベルト層10を構成するスチールモノフィラメントの断面積と50mm幅当たりの打ち込み本数との積が4.5mm
2 以上6.8mm
2 以下であることが好ましい。或いは、ベルト層10を構成するスチールモノフィラメントの強度が3200MPa以上であると共に、ベルト層10を構成するスチールモノフィラメントの断面積と50mm幅当たりの打ち込み本数との積が4.5mm
2 以上6.1mm
2 以下であることが好ましい。或いは、ベルト層10を構成するスチールモノフィラメントの強度が3500MPa以上であると共に、ベルト層10を構成するスチールモノフィラメントの断面積と50mm幅当たりの打ち込み本数との積が4.5mm
2 以上5.5mm
2 以下であることが好ましい。
【0034】
強度がどのような範囲であっても、ベルト層10を構成するスチールモノフィラメントの断面積と50mm幅当たりの打ち込み本数との積が4.5mm
2 より小さいと、ベルトコード10aの存在量が少なくなり過ぎ、剛性が不足して耐久性が低下する。強度が2700MPa以上であると共に断面積と打ち込み本数との積が6.8mm
2 より大きい場合、強度が3200MPa以上であると共に断面積と打ち込み本数との積が6.1mm
2 より大きい場合、強度が3500MPa以上であると共に断面積と打ち込み本数との積が5.5mm
2 より大きい場合には、ベルトコード10aの存在量が各強度範囲において耐久性を充分に維持できる量よりも多くなるため、ワイヤ量が多過ぎて質量増加を招き、またコード間隔が狭くなり過ぎて接着性が不足するため、却ってタイヤの耐久性が低下する。更に、ベルトゴムのエネルギーロスが増加するため転がり抵抗の低減を阻害する。また、強度が2700MPaより小さい場合、耐久性を得るためには断面積と打ち込み本数との積を6.8mm
2 より大きく設定する必要があり、ワイヤ量が多くなり質量増加を招き、またコード間隔が狭くなり接着性が不足するため却ってタイヤの耐久性が低下する。
【0035】
尚、ベルト層10を構成するスチールモノフィラメントの強度が高い程、断面積と打ち込み本数との積、即ちベルトコード10aの存在量を低減し、タイヤを軽量化することが出来るが、製造上の観点から強度は4200MPa以下であることが好ましい。
【0036】
本発明において、ベルト層10を構成するベルトコード10aは互いに引き揃えられた状態で配置される。ベルトコード10aは、例えば、
図5(a)に示すように子午線断面においてタイヤ幅方向に均等に配置されても良いが、好ましくは、
図5(b)に示すように子午線断面においてタイヤ幅方向に並んだ2〜5本(図中では3本)の束を単位としてベルト層10中に配設されていることが好ましい。
【0037】
このように配置することで、ベルト層10内において束と束との間が実質的なワイヤ間隔となり、均等に配置する場合よりもワイヤ間隔が広くなるので、ベルトエッジセパレーションの進展が遅くなり、耐セパレーション性を向上することが出来る。このとき、ベルトコード10aの束を構成するコード本数が5本よりも多いとベルトエッジセパレーションが進展し易くなる。
【0038】
本発明においては、ベルト補助層20を構成するベルト補助コード20aはモノフィラメントから構成されていてもよいが、好ましくは2本以上、より好ましくは2〜7本のワイヤを撚り合わせて構成すると良い。特に、1×N構造のコードを用いると良い。
【0039】
本発明では、ベルト層10をモノフィラメントから構成したため、ベルト層10が剛直になり素線間摩擦が減衰し難く乗心地性が低下する傾向にあるが、このようにベルト補助層20を構成することで、2本以上のワイヤを撚り合わせてなる撚りコードは素線間摩擦で減衰性に優れているので、乗心地性を改善することが出来る。好ましくは2〜7本のワイヤを撚り合わせてなる撚りコードを用いると良い。
【0040】
また、ベルト補助層20を構成するベルト補助コード20aの打ち込み本数を15〜35本/50mmとすることが好ましい。ベルト補助コード20aの打ち込み本数が15本/50mmより小さいとベルトコードの座屈の抑制が困難になる。ベルト補助コード20aの打ち込み本数が35本/50mmより大きいとベルト座屈の抑制効果が飽和する一方で質量が増加する。
【0041】
本発明では、上述のようにトレッド部に2層のベルト層10(11,12)と1層のベルト補助層20からなる3層構造のベルト部が形成されるので、ベルト部の剛性に対するコードコンパウンドの寄与が低下する。そのため、ベルト層10には柔らかくて発熱性が低いコートコンパウンドを使用することが出来る。それにより、ベルト層10の発熱を抑えて耐久性を更に改善することが出来る。
【0042】
具体的には、ベルト層10を構成するコートコンパウンドの20℃における動的弾性率E’が15MPa以下であり、かつ60℃におけるtanδが0.15以下であることが好ましい。コートコンパウンドの20℃における動的弾性率E’が15MPaより大きいと、ベルト層10の発熱を低減することが出来ず、耐久性を向上する効果が充分に得られない。コートコンパウンドの60℃におけるtanδが0.15より大きいと、ベルト層10の発熱を低減することが出来ず、耐久性を向上する効果が充分に得られない。
【0043】
尚、ベルト補助層20のコートコンパウンドについても、ベルト層10のコートコンパウンドの場合と同様に、ベルト部の剛性に対するコードコンパウンドの寄与が低下し、柔らかくて発熱性が低いコートコンパウンドを使用することが出来るので、ベルト層10の発熱を抑えて耐久性を更に改善することが出来る。従って、ベルト層と同一の動的弾性率E’及びtanδを有するコートコンパウンドを用いることが好ましい。
【実施例】
【0044】
タイヤサイズ195/65R15の空気入りタイヤにおいて、ベルト層について、ベルト層の層数、ベルトコードの配置、構造、強度、打ち込み量、打ち込み本数、直径、20℃における動的弾性率E’及び60℃におけるtanδをそれぞれ表1〜3に示すように設定し、ベルト補助層について、ベルト補助層の有無、配置、ベルト補助コードの構造、角度、ベルト補助層の配置形態、層幅、位置Pとの重なりの有無、及びベルト補強コードの打ち込み本数をそれぞれ表1〜3に示すように設定した従来例1〜2、比較例1〜4、実施例1〜
2、参考例1〜16の24種類の試験タイヤを製作した。
【0045】
ここで、従来例1,2はベルト補助層を有さないタイヤであり、従来例1はベルト層が1×3×0.32構造の撚りコード(強度3100MPa)から構成され(打ち込み密度27本/50mm幅)、従来例2はベルト層が線径0.32mmのモノフィラメント(強度3100MPa)から構成されている(打ち込み密度81本/50mm幅)。
【0046】
比較例1〜4はベルト補助層は有しているが、比較例1についてはベルト補助コードのコード角度が小さく、比較例2はベルト補助コードの配置が異なり、比較例3,4はベルトコードの直径が本発明の範囲から外れる例である。
【0047】
尚、これら従来例1〜2、比較例1〜4、実施例1〜
2、参考例1〜16の24種類の試験タイヤのベルト層は、いずれもコードの打ち込み量が等価になっており、主ベルト層の幅はタイヤ内面側から順に、150mm、135mmである。
【0048】
また、比較例1〜4、実施例1〜
2、参考例1〜16の24種類の試験タイヤのベルト補助層は、いずれも1×3×0.32構造の撚りコード(強度3100MPa)から構成されている(打ち込み密度27本/50mm幅)。
【0049】
これら24種類の試験タイヤについて、下記の評価方法によりベルト折れ耐久性(一般条件)、ベルト折れ耐久性(過酷条件)、ベルトエッジセパレーション耐久性、及び転がり抵抗を評価し、その結果を表1〜3に併せて示した。
【0050】
ベルト折れ耐久性(一般条件)
ドラム表面が平滑な鋼製でかつ直径が1707mmであるドラム試験機を用い、周辺温度を38±3℃に制御し、リムサイズ15×6Jのリムに試験内圧160kPaで組み込んだ試験タイヤを、走行速度30km/hr、スリップ角0±4°、荷重JATMA最大荷重の70%±40%の変動条件下で、荷重とスリップ角を0.083Hzの矩形波で変動させて10時間、300km走行させた。走行後にタイヤを切開し、ベルトコード破断の有無を調べた。評価結果は2段階で示し、ベルトコード破断が発生した例を「×」、ベルトコード破断が発生しなかった例を「○」で示した。
【0051】
ベルト折れ耐久性(過酷条件)
ドラム表面が平滑な鋼製でかつ直径が1707mmであるドラム試験機を用い、周辺温度を38±3℃に制御し、リムサイズ15×6Jのリムに試験内圧160kPaで組み込んだ試験タイヤを、走行速度30km/hr、スリップ角0±5°、荷重JATMA イヤーブック2009年版記載の最大荷重の70%±40%の変動条件下で、荷重とスリップ角を0.083Hzの矩形波で変動させて10時間、300km走行させた。走行後にタイヤを切開し、ベルトコード破断の有無を調べた。評価結果は2段階で示し、ベルトコード破断が発生した例を「×」、ベルトコード破断が発生しなかった例を「○」で示した。
【0052】
ベルトエッジセパレーション耐久性
室温60℃に保持されたチャンバー内に、リムサイズ15×6Jのリムに内圧240kPaで酸素封入した試験タイヤを2週間保持後、内部の酸素を解放し、空気を160kPaにて充填する。このように前処理された試験タイヤを、ドラム表面が平滑な鋼製でかつ直径が1707mmであるドラム試験機を用い、周辺温度を38±3℃に制御し、走行速度50km/hr、スリップ角0±3°、荷重JATMA イヤーブック2009年版記載の最大荷重の70%±40%の変動条件下で、荷重とスリップ角を0.083Hzの矩形波で変動させて100時間、5000km走行させた。走行後にタイヤを切開し、ベルト幅方向端部における幅方向へのセパレーション長さ5mm以上の剥離部の有無を確認した。ベルト剥離がなければベルトエッジセパレーション耐久性が優れることを意味する。評価結果は2段階で示し、長さ5mm以上の剥離部が存在した例を「×」、長さ5mm以上の剥離部が存在しなかった例を「○」で示した。
【0053】
転がり抵抗
リムサイズ15×6Jのリムに試験内圧200kPaで組み込んだ試験タイヤを、ドラム表面が平滑な鋼製でかつ直径が1707mmであるドラム試験機を用い、JATMA イヤーブック2009年版記載の当該空気圧における最大負荷荷重の85%に相当する荷重を負荷してドラムに押し付けた状態で、速度80km/hrで走行させたときの転動抵抗を測定した。測定結果は、従来タイヤ1の測定値を100とする指数で示した。この指数値が小さいほど転がり抵抗が小さいことを意味する。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
表1〜3から判るように、実施例1〜
2は、いずれもベルト補助層を有さない従来例1,2に対して、ベルト折れ耐久性(一般条件
および過酷条件)及びベルトエッジセパレーション耐久性を高度に維持したまま、転がり抵抗を大きく低減した
。
【0058】
一方、ベルト補助コードのコード角度が小さい比較例1及びベルト補助コードの配置が異なる比較例2は、転がり抵抗を充分に低減することが出来ず、ベルトコードの直径が本発明の範囲から外れる比較例3,4はベルト折れ耐久性又はベルトエッジセパレーション耐久性を維持することが出来なかった。