(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記禁止部は、前記第3の通信設定部によって設定された前記通信設定情報に基づく前記無線通信に関して予め定められたイベントの発生を契機に、前記禁止を解除する請求項8記載の通信装置。
アクセスポイントとして無線通信が可能な無線通信部と、有線を介して通信を行う有線通信部とを備えた複数の通信装置が、前記無線通信を行うための通信設定情報を共有する方法であって、
前記複数の通信装置のうちの1つの通信装置を、該1つの通信装置に既に設定された前記通信設定情報を他の通信装置に提供すべき第1の動作モードで動作するように設定する第1の設定工程と、
前記他の通信装置を、前記第1の動作モードに設定された前記1つの通信装置から前記既に設定された通信設定情報の提供を受けるべき第2の動作モードで動作するように設定する第2の設定工程と、
前記第1の動作モードに設定された前記1つの通信装置から、該1つの通信装置に初めて設定された、または、変更によって新たに設定された前記通信設定情報を、前記有線通信部による通信によって、前記第2の動作モードに設定された前記他の通信装置に提供する工程と、
前記第1の動作モードに設定された前記1つの通信装置から提供された前記通信設定情報を、前記第2の動作モードに設定された前記他の通信装置に設定する工程と、を備え、
前記第2の設定工程は、デフォルトの動作モードとして前記複数の通信装置を前記第2の動作モードに設定する工程として実行され、
前記第1の設定工程は、予め定められた方法によって、前記通信装置に前記通信設定情報が設定された場合に、当該通信装置を前記第1の動作モードに設定する工程として実行される、方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、持ち運び可能な無線端末が多数開発されている。かかる無線端末は、ユーザが持ち運ぶことによって、異なる場所で使用されることが多い。無線端末を持ち運んで使用する環境下では、上述の通信装置を複数備えるネットワークにおいて、各々の通信装置に設定される無線通信に関する通信設定情報、例えば、ESSID(Extended Service Set Identifier)や暗号化設定を統一することが望まれる。通信設定情報を統一していない場合、無線端末が、異なる通信装置と無線通信の接続関係を確立するたびに、ユーザは、通信設定情報を変更する必要があるからである。かかる変更作業は、ユーザにとって面倒である。一方、通信設定情報を統一すれば、無線端末は、通信設定情報を変更することなく、複数の通信装置と無線通信の接続関係を確立することができる。つまり、通信設定情報を統一すれば、シームレスな無線ローミング環境を提供することができる。
【0005】
このように通信設定情報を統一する場合、ユーザは、各々の通信装置に、同一の通信設定情報を入力する必要がある。かかる入力作業は、ユーザにとって面倒である。また、無線通信の知識に乏しいユーザにとっては、入力作業が困難になることもある。そこで、ユーザが、通信装置間の無線通信に関する通信設定情報を容易に統一することができる技術が望まれる。
【0006】
また、ユーザは、ネットワークの使用状況によって、既に統一して設定された通信設定情報を変更したい場合がある。かかる場合にも、ユーザが、通信設定情報の変更を容易に行えることが望まれる。既に統一して設定された通信設定情報の変更を行う場合、当該変更が望ましくないことも生じ得る。例えば、低いセキュリティレベルでの暗号化方式、例えば、WEP(Wired Equivalent Privacy)しか使用できない無線端末を一時的にネットワークに組み入れる場合に、複数の通信装置の通信設定のセキュリティレベルを、当該無線端末に合わせて統一することは、望ましくないこともある。したがって、複数の通信装置が、常に統一した通信設定情報を使用するのではなく、上述の場合にも柔軟に対応できることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]通信装置であって:アクセスポイントとして、所定の通信設定情報に基づいて無線通信が可能な無線通信部と;有線を介して通信を行う有線通信部と;前記通信装置を含む2以上のアクセスポイント装置のうちの1つのアクセスポイント装置に対して設定される動作モードであって、該1つのアクセスポイント装置に既に設定された前記通信設定情報を、前記2以上のアクセスポイント装置のうちの他のアクセスポイント装置に提供すべき第1の動作モードと、前記他のアクセスポイント装置に対して設定される動作モードであって、該第1の動作モードに設定されたアクセスポイント装置から前記既に設定された通信設定情報の提供を受けるべき第2の動作モードとのうちの、いずれの動作モードで動作するかを前記通信装置に対して設定する動作モード設定部と;前記通信装置が前記第1の動作モードに設定された場合に、前記通信装置に初めて設定された、または、変更により新たに設定された前記通信設定情報を、前記有線通信部による通信によって、前記第2の動作モードに設定された他の通信装置に提供する提供部とを備えた通信装置。
かかる構成は、他の通信装置が、提供を受けた通信設定情報を自身に設定すれば、通信装置と、他の通信装置との間で、通信設定情報を共有することができる。その結果、シームレスな無線ローミング環境を提供することができる。しかも、ユーザは、各々の通信装置に、同一の通信設定情報を入力する必要がない。このため、ユーザは、複数の通信装置の間で通信設定情報を容易に統一することができる。なお、適用例1の通信装置の「通信装置に初めて設定された、または、変更により新たに設定された」とは、「通信装置に初めて設定された」および「変更により新たに設定された」を除外するものではない。
【0009】
[適用例2]前記動作モード設定部は、予め定められた方法によって、前記通信装置に前記通信設定情報が設定された場合に、前記通信装置を前記第1の動作モードに設定する適用例1記載の通信装置。
かかる構成によれば、通信装置は、自律的に動作モードを設定することができる。したがって、ユーザは、通信装置に動作モードの指定を行う必要がない。そのため、ユーザの利便性が向上する。
【0010】
[適用例3]適用例2記載の通信装置であって:2つの無線通信装置の間での相互的な通信によって、前記2つの無線通信装置のうちの一方の無線通信装置から他方の無線通信装置へ前記通信設定情報を提供するプロトコルを用いて、前記通信装置が前記他方の無線通信装置として動作して、前記通信装置に前記通信設定情報を設定する第1の通信設定部を備え;前記動作モード設定部は、前記予め定められた方法としての前記プロトコルを用いた方法によって、前記通信装置に前記通信設定情報が設定された場合に、前記通信装置を前記第1の動作モードに設定し;前記提供部は、前記プロトコルを用いて前記通信装置に設定された前記通信設定情報を前記第2の動作モードに設定された前記他の通信装置に提供する通信装置。
かかる構成によれば、ユーザは、動作モードの指定を行う必要も、設定情報の入力操作を行う必要もない。そのため、ユーザの利便性が向上する。
【0011】
[適用例4]適用例1ないし適用例3のいずれか記載の通信装置であって:前記有線通信部は、前記通信装置が前記第1の動作モードに設定されている場合に、所定のパケットを、予め定められたタイミングで繰り返し送信し;前記所定のパケットには、前記通信装置に設定された前記通信設定情報の同一性を識別可能な識別情報が含まれる通信装置。
かかる構成によれば、他の通信装置は、通信装置に通信設定情報が初めて設定されたとき、または、変更により新たに設定されたときに、他の通信装置の電源が切られていても、通信装置に通信設定情報が初めて設定されたこと、または、変更により新たに設定されたことを識別情報に基づいて検知することができる。したがって、他の通信装置が、所定のパケットを受信し、通信装置に通信設定情報が初めて設定されたこと、または、変更により新たに設定されたことを識別情報に基づいて検知した場合に、通信装置に対して通信設定情報の提供を要求し、通信装置が、他の通信装置に通信設定情報を提供する構成とすれば、他の通信装置は、通信装置との間で通信設定情報を速やかに共有することができる。
【0012】
[適用例5]適用例1ないし適用例4のいずれか記載の通信装置であって、前記通信装置が前記第1の動作モードに設定されている場合であって、前記有線通信部が、前記第2の動作モードに設定された前記他の通信装置から、前記通信装置に設定された前記通信設定情報を変更する要求である変更要求を受信した場合に、該変更要求に基づいて、前記通信装置に設定された前記通信設定情報を変更することが可能な変更部を備えた通信装置。
適用例5の構成によって、通信装置に設定された通信設定情報が変更されると、適用例1の構成によって、変更後の通信設定情報が、通信装置と他の通信装置との間で共有される。したがって、ユーザは、第2の動作モードに設定された他の通信装置側からも、共有される通信設定情報の変更を行うことができる。その結果、ユーザの利便性が向上する。
【0013】
[適用例6]適用例5記載の通信装置であって:前記変更要求を受信した場合に、該変更要求に基づいて、前記通信装置に設定された前記通信設定情報の変更を許可するか否かを決定する決定部を備え;前記決定部は、前記通信設定情報の変更によって、前記無線通信のセキュリティレベルが低下しない場合にのみ、前記通信設定情報の変更を許可する決定を行い;前記変更部は、前記通信設定情報の変更を許可する決定を行った場合にのみ、前記通信装置に設定された前記通信設定情報を変更する通信装置。
かかる構成によれば、通信装置によって構成されるネットワークの管理権限は有さないが、使用権限は有するユーザによって、管理権限を有するユーザの意図に反して、第2の動作モードに設定された他の通信装置側から、共有される通信設定情報が変更されて、ネットワークのセキュリティレベルが低下することを抑制することができる。
【0014】
[適用例7]適用例1ないし適用例6のいずれか記載の通信装置であって、前記通信装置が前記第2の動作モードに設定されている場合に、前記第1の動作モードに設定された前記他の通信装置から前記通信設定情報の提供を受けて、該通信設定情報を前記通信装置に設定する第2の通信設定部を備えた通信装置。
かかる構成によれば、通信装置と他の通信装置との間で通信設定情報を共有することができる。
【0015】
[適用例8]適用例7記載の通信装置であって:前記通信装置に設定された通信設定情報の変更指示を受け付ける受付部と;前記通信装置が前記第2の動作モードに設定されている場合であって、前記受付部が前記変更指示を受け付けた場合に、前記第1の動作モードに設定された前記他の通信装置に設定された前記通信設定情報を、前記変更指示に基づいた内容に変更する要求である変更要求を、前記第1の動作モードに設定された前記他の通信装置に送信する変更要求部とを備えた通信装置。
かかる構成によれば、他の通信装置が適用例1の構成を備えている場合に、他の通信装置が、変更要求を受信して、通信設定情報を変更すると、他の通信装置の適用例1の構成によって、変更後の通信設定情報が、通信装置と他の通信装置との間で共有される。したがって、ユーザは、第2の動作モードに設定された通信装置側からも、共有される通信設定情報の変更を行うことができる。その結果、ユーザの利便性が向上する。
【0016】
[適用例9]適用例8記載の通信装置であって:前記変更要求が前記第1の動作モードに設定された前記他の通信装置に拒否された場合に、前記通信装置に設定された通信設定情報を、前記変更指示に基づいた内容に変更して設定する第3の通信設定部と;前記第3の通信設定部が前記通信設定情報の変更を行った場合に、以後、前記第2の通信設定部による前記通信設定情報の設定を禁止する禁止部とを備えた通信装置。
かかる構成によれば、通信装置のユーザは、他の通信装置で構成され、通信設定情報が共有されたネットワークとは独立した通信設定に変更して、通信装置を使用することができる。したがって、通信装置のユーザは、他の通信装置によって構成されるネットワークへの影響を抑制しつつ、通信装置を所望する方法で使用することができる。
【0017】
[適用例10]前記禁止部は、前記第3の通信設定部によって設定された前記通信設定情報に基づく前記無線通信に関して予め定められたイベントの発生を契機に、前記禁止を解除する適用例9記載の通信装置。
かかる構成によれば、通信装置のユーザに、他の通信装置で構成され、通信設定情報が共有されたネットワークとは独立した通信設定で通信装置を使用する意思がなくなった後も、独立した通信設定が継続的に維持されることがない。しかも、禁止の解除は、自動的に行われるので、ユーザの利便性が高い。
【0018】
[適用例11]適用例7ないし適用例10のいずれか記載の通信装置であって:前記無線通信部は、1つの物理的なアクセスポイントを、相互に異なる前記通信設定情報に基づいて前記無線通信を行う複数の論理的なアクセスポイントである複数の仮想アクセスポイントとして動作可能に構成され;前記第2の通信設定部は、前記複数の仮想アクセスポイントのうちの一部の仮想アクセスポイントについての前記通信設定情報のみを設定する通信装置。
かかる構成によれば、設定情報が共有されたネットワークと、設定情報が独立したネットワークとを同時に構築することができる。その結果、通信装置を用いたネットワークの運用の柔軟性を向上させることができる。例えば、一部の仮想アクセスポイントについて、高いセキュリティレベルの通信設定情報を他の通信装置との間で共有して、セキュリティレベルの高い無線ネットワークを構築できる。しかも、残りの仮想アクセスポイントは、相対的に低いセキュリティレベルで通信することもできる。その結果、通信装置と他の通信装置とで構成されるネットワークの複数のユーザのうちの一部のユーザのみが、低いセキュリティレベルで通信を行う必要がある場合に、ネットワークのセキュリティと、ユーザの利便性とを両立することができる。
【0019】
[適用例12]適用例1ないし適用例11のいずれか記載の通信装置であって:前記無線通信部は、1つの物理的なアクセスポイントを、相互に異なる前記通信設定情報に基づいて前記無線通信を行う複数の論理的なアクセスポイントである複数の仮想アクセスポイントとして動作可能に構成され、前記提供部は、前記通信装置が前記第1の動作モードに設定された場合に、前記複数の仮想アクセスポイントのうちの一部の仮想アクセスポイントについての前記通信設定情報のみを前記第2の動作モードに設定された前記他の通信装置に提供する通信装置。
かかる構成によれば、適用例11と同様の効果を奏する。
【0020】
[適用例13]前記有線通信部は、前記有線として電力線を用いた電力線搬送通信を行う適用例1ないし適用例12のいずれか記載の通信装置。
電力線搬送通信を行う通信装置は、通常、認証プロセスを経てネットワークに参加する。つまり、電力線搬送通信を行える状態の通信装置は、認証を受けている。したがって、通信装置は、他の通信装置に通信設定情報を無制限に提供することがない。その結果、セキュリティを確保することができる。
【0021】
[適用例14]適用例1ないし適用例13のいずれか記載の通信装置であって:前記通信装置は、該通信装置に設定された、該通信装置が属するネットワークの識別子を記憶し;前記提供部は、前記第2の動作モードに設定された前記他の通信装置のうちの、前記通信装置が記憶する前記識別子と同一の識別子が設定された前記他の通信装置に対してのみ、前記通信設定情報を提供する通信装置。
かかる構成によれば、通信装置および他の通信装置に、ネットワークの識別子を予め付与しておけば、複数の無線ネットワークを容易に構築することができる。
【0022】
また、本発明は、上述した通信装置のほか、適用例15の通信方法、適用例16の通信設定情報の共有方法、通信装置のプログラム、当該プログラムを記録した記録媒体等としても実現することができる。勿論、これらの実現形態に対しても、適用例2〜14の構成を付加することも可能である。なお、適用例15において、第2の通信装置は、複数台であってもよい。
[適用例15]第1の通信装置と第2の通信装置とを備えた通信システムであって:前記第1の通信装置および前記第2の通信装置の各々は;アクセスポイントとして、所定の通信設定情報に基づいて無線通信が可能な無線通信部と;有線を介して通信を行う有線通信部とを備え;前記第1の通信装置および前記第2の通信装置のうちのいずれか一方の通信装置に設定される動作モードであって、該一方の通信装置に既に設定された前記通信設定情報を、他方の通信装置に提供すべき第1の動作モードと、前記他方の通信装置に設定される動作モードであって、前記第1の動作モードに設定された前記一方の通信装置から前記既に設定された通信設定情報の提供を受けるべき第2の動作モードとのうちの、いずれかの動作モードに設定され;前記第1の動作モードに設定された前記一方の通信装置は、該一方の通信装置に初めて設定された、または、変更により新たに設定された前記通信設定情報を、前記有線通信部による通信によって、前記第2の動作モードに設定された前記他方の通信装置に提供し;前記第2の動作モードに設定された前記他方の通信装置は、前記第1の動作モードに設定された前記一方の通信装置から、前記通信設定情報の提供を受けて、該通信設定情報を前記他方の通信装置に設定する通信システム。
[適用例16]アクセスポイントとして無線通信が可能な無線通信部と、有線を介して通信を行う有線通信部とを備えた複数の通信装置が、前記無線通信を行うための通信設定情報を共有する方法であって:前記複数の通信装置のうちの1つの通信装置を、該1つの通信装置に既に設定された前記通信設定情報を他の通信装置に提供すべき第1の動作モードで動作するように設定する工程と;前記他の通信装置を、前記第1の動作モードに設定された前記1つの通信装置から前記既に設定された通信設定情報の提供を受けるべき第2の動作モードで動作するように設定する工程と;前記第1の動作モードに設定された前記1つの通信装置から、該1つの通信装置に初めて設定された、または、変更によって新たに設定された前記通信設定情報を、前記有線通信部による通信によって、前記第2の動作モードに設定された前記他の通信装置に提供する工程と;前記第1の動作モードに設定された前記1つの通信装置から提供された前記通信設定情報を、前記第2の動作モードに設定された前記他の通信装置に設定する工程とを備えた方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
A.実施例:
本発明の実施例について説明する。
A−1.ネットワークシステム20の概略構成:
図1は、本発明の通信装置の実施例としての複数の通信装置100a〜100cを用いて構築されたネットワークシステム20の概略構成を示す。図示するように、ネットワークシステム20は、ゲートウェイ30と、通信装置100a〜100cと、無線端末TE1〜TE3とを備えている。本実施例では、通信装置100a〜100cは、同一の構成を有している。以下の説明では、通信装置100a〜100cを総称して、通信装置100ともいう。
【0025】
ゲートウェイ30は、いわゆるトリプルプレイを実現するゲートウェイ装置であり、ルータ機能を有している。トリプルプレイとは、データ通信、VoIP(Voice over Internet Protocol)を使用した電話、映像配信の3つのサービスを提供することである。
図1に示すように、ゲートウェイ30は、インターネットINTに接続されている。また、ゲートウェイ30は、電話に接続されている(図示省略)。また、ゲートウェイ30は、セットトップボックスを介して、テレビに接続されている(図示省略)。ゲートウェイ30にLANケーブルを介してパーソナルコンピュータを接続することも可能である。
【0026】
また、ゲートウェイ30は、無線通信インタフェースを備えており、無線通信を行うことができる。本実施例では、ゲートウェイ30は、IEEE802.11規格に準拠した無線通信を行う。ゲートウェイ30の無線通信インタフェースは、アクセスポイントとして動作する。また、ゲートウェイ30は、WPS(Wi-Fi Protected Setup)をサポートしており、WPSの処理の起動指示を与えるボタン31を備えている。
【0027】
通信装置100は、アクセスポイントとして動作して、無線通信を行うことができる。また、通信装置100は、電力線40に接続されており、電力線40を介して、PLCによって通信を行うことができる。本実施例では、ゲートウェイ30は、PLCによる通信は行わない。ただし、ゲートウェイ30も、PLCによる通信を行ってもよい。
【0028】
無線端末TE1〜TE3は、ステーションとして動作して、無線通信を行うことができる。
図1に示すように、通信装置100aには、無線端末TE1が無線接続されている。同様に、通信装置100bには、無線端末TE2が無線接続され、通信装置100cには、無線端末TE3が無線接続されている。
【0029】
図1に示す点線は、部屋の区画を表している。図示するように、ネットワークシステム20の構成機器は、部屋R1〜R3に分散して配置されている。ゲートウェイ30、通信装置100aおよび無線端末TE1は、部屋R1に配置されている。通信装置100bおよび無線端末TE2は、部屋R2に配置されている。通信装置100cおよび無線端末TE3は、部屋R3に配置されている。本実施例では、部屋R1〜R3の壁が厚く、通信装置100a〜100cの各々が、部屋R1〜R3の区画を越えて、適正な通信速度で無線通信を行えない使用環境を想定している。このため、同一の部屋に設置されたゲートウェイ30、通信装置100aおよび無線端末TE1は、相互に無線通信を行えるが、通信装置100a〜100cは、相互に適正な無線通信を行えない。なお、建屋の床が厚く、通信装置100a〜100cが、床を越えて、適正な通信速度で無線通信を行えない場合には、建屋の階ごとに、通信装置100a〜100cを分散配置してもよい。
【0030】
かかる使用環境であっても、ネットワークシステム20では、無線通信とPLCの通信とを併用することにより、通信装置100a〜100cの各々が、ネットワーク全体として、通信パケットの転送を好適に行うことができる。例えば、無線端末TE3から無線端末TE1に向けて送信された通信パケットは、無線通信によって通信装置100cに受信され、PLCによって通信装置100cから通信装置100aに転送され、さらに、無線通信によって通信装置100aから無線端末TE1に転送される。また、無線端末TE3からインターネットINTに向けて送信された通信パケットは、無線通信によって通信装置100cに受信され、PLCによって通信装置100cから通信装置100aに転送され、無線通信によって通信装置100aからゲートウェイ30に転送され、さらに、ゲートウェイ30からインターネットINTに転送される。
【0031】
建屋の床が厚く、通信装置100a〜100cが、床を越えて、適正な通信速度で無線通信を行えない使用環境においても、通信装置100a〜100cを建屋の階ごとに分散配置すれば、同様にして、ネットワーク全体として、通信パケットの転送を好適に行うことができる。通信装置100a〜100cが、相互の電波到達範囲外に設置されている使用環境においても同様である。
【0032】
本実施例では、ゲートウェイ30および通信装置100a〜100cの無線通信に係る設定は統一されている。つまり、ゲートウェイ30および通信装置100a〜100cは、無線通信を行うための通信設定情報(以下、単に、設定情報ともいう)を共有している。設定情報とは、例えば、ESSID(Extended Service Set Identifier)である。設定情報は、ESSIDのほか、暗号化設定の情報(暗号化方式、暗号鍵の長さなど)や、認証設定の情報などを含んでもよい。かかる構成は、シームレスな無線ローミング環境をユーザに提供する。例えば、部屋R1で無線端末TE1を使用していたユーザが、無線端末TE1を携帯して、部屋R2に移動した場合、無線端末TE1を通信装置100bと無線通信可能に接続する際に、新たな無線通信の設定が必要とならない。
【0033】
A−2.通信装置100の概略構成:
図2は、通信装置100の概略構成を示す。図示するように、通信装置100は、CPU110、フラッシュROM130、RAM140、無線通信インタフェース(I/F)150、PLCインタフェース160、電源コネクタ165、簡単設定ボタン170、LANインタフェース180およびLED190を備え、それぞれがバスにより相互に接続されている。なお、以下の説明において、通信装置100a〜100cのいずれか1つの構成要素について説明する場合には、通信装置100の構成要素に付した符号の末尾に、対応する「a」〜「c」のいずれかの符号を付す。例えば、通信装置100bのCPUは、「CPU110b」もいう。
【0034】
CPU110は、フラッシュROM130に記憶されたファームウェア等のプログラムをRAM140に展開して実行することで、通信装置100の動作全般を制御する。また、CPU110は、当該プログラムを実行することで、無線通信部111、有線通信部112、動作モード設定部113、提供部114、第1の通信設定部115、第2の通信設定部116、第3の通信設定部117、変更部118、決定部119、受付部120、変更要求部121、禁止部122としても機能する。これらの各機能部の詳細については、後述する。
【0035】
無線通信インタフェース150は、無線LAN規格に準拠した無線通信を行うための制御回路である。無線通信インタフェース150は、変調器やアンプ、アンテナといったハードウェアを備えている。無線通信インタフェース150は、CPU110の無線通信部111によって制御され、アクセスポイントとして動作する。本実施例においては、無線通信インタフェース150は、無線通信部111の制御によって、ステーションとしても動作することができる。つまり、無線通信部111は、1つの無線通信インタフェース150を、アクセスポイントおよびステーションのうちの一方として選択的に機能させることができる。
【0036】
詳しくは後述するが、本実施例では、通信装置100aとゲートウェイ30との間でWPSの処理が行われる際に、無線通信インタフェース150は、ステーションとして動作する。その他のタイミングでは、無線通信インタフェース150は、アクセスポイントとして動作する。したがって、WPSを使用しない場合、例えば、ユーザの手動入力によって、通信装置100aに設定情報を登録する場合には、無線通信インタフェース150は、アクセスポイントとしてのみ動作するものであってもよい。また、通信装置100は、2つの無線通信インタフェースを備え、その一方がアクセスポイントとして動作し、他方がステーションとして動作するものであってもよい。
【0037】
PLCインタフェース160は、PLCによって通信を行うための制御回路である。電源コネクタ165は、電力線40に接続され、通信装置100の動作電圧の提供を受ける。PLCインタフェース160は、電源コネクタ165に接続される。PLCインタフェース160は、電源コネクタ165を介して受け付けた電源電圧に送信データを重畳する混合回路や、電源電圧から受信データを抽出する分離回路といったハードウェアを備えている。PLCインタフェース160の動作は、CPU110の有線通信部112によって制御される。
【0038】
簡単設定ボタン170は、ユーザが、WPSの処理の起動指示を通信装置100に与えるためのボタンである。なお、起動指示を受け付けるためのインタフェースは、適宜設定すればよい。例えば、簡単設定ボタン170がディスプレイを備えている場合には、GUI(Graphical User Interface)であってもよい。
【0039】
LANインタフェース180は、有線LANに接続するためのインタフェースである。本実施例では、有線LANインタフェース180は、IEEE802.3規格に準拠している。
【0040】
LED190は、通信装置100の動作状態をユーザに報知する報知手段として設けられる。報知の内容については後述する。なお、報知手段は、LEDに代表される発光手段に限るものではない。例えば、報知手段は、ディスプレイに代表される表示手段であってもよい。
【0041】
A−3.ネットワークシステム20における設定情報の共有方法:
ネットワークシステム20において、ゲートウェイ30および通信装置100は、無線通信に関する同一の設定情報を共有する。設定情報を共有するために、通信装置100の各々には、所定の動作モードが設定される。この動作モードは、第1の動作モードと第2の動作モードとに分類される。第1の動作モードは、2以上のアクセスポイント(ここでは、通信装置100a〜100c)のうちの1つのアクセスポイントに対して設定される。第2の動作モードは、2以上のアクセスポイントのうちの、第1の動作モードに設定されたアクセスポイント以外のアクセスポイントに設定される。第1の動作モードでは、自身に既に設定された設定情報を他のアクセスポイントに提供するための動作が行われる。第2の動作モードでは、第1の動作モードに設定されたアクセスポイントに既に設定された設定情報の提供を受ける動作が行われる。本願において、第1の動作モードに設定されたアクセスポイントをマスタともいう。また、第2の動作モードに設定されたアクセスポイントをスレーブともいう。本実施例においては、第1の動作モードおよび第2の動作モードは、通信装置100が自律的に設定する。
【0042】
図3は、動作モード設定処理の流れを示す。動作モード設定処理とは、通信装置100の各々が、上述した第1の動作モードおよび第2の動作モードのいずれかを自身に自律的に設定する処理である。動作モード設定処理は、通信装置100のCPU110が、動作モード設定部113の処理として実行する。動作モード設定処理において、CPU110は、まず、自身を第2の動作モードに設定する(ステップS210)。つまり、通信装置100は、デフォルトとして、第2の動作モードに設定され、スレーブとなる。
【0043】
自身を第2の動作モードに設定すると、CPU110は、WPSの処理によって自身に設定情報が設定されることを待機する(ステップS220)。そして、WPSの処理によって、自身に設定情報が設定されると(ステップS220:YES)、CPU110は、自身を第1の動作モードに設定する(ステップS230)。つまり、通信装置100は、WPSの処理によって自身に設定情報が設定されることを契機として、マスタになる。こうして、動作モード設定処理は終了する。かかる構成は、通信装置100が自律的に動作モードを設定することを可能とする。したがって、ユーザは、通信装置100に動作モードの指定を行う必要がないので、ユーザの利便性が向上する。なお、通信装置100は、デフォルトとして第2の動作モードに設定されなくてもよい。例えば、通信装置100は、WPSの処理によって自身に設定情報が設定された場合に、自身を第1の動作モードに設定し、マスタが送信するビーコン(詳細は後述)を受信した場合に、自身を第2の動作モードに設定してもよい。
【0044】
こうして設定される動作モードを用いて、ゲートウェイ30および通信装置100が無線通信に関する設定情報を共有する方法について説明する。以下に説明する方法は、(1)新規設定フェーズ、(2)設定共有フェーズ、(3)設定変更フェーズに分類することができる。新規設定フェーズとは、通信装置100のいずれか(以下の説明では、通信装置100a)に設定情報を設定するフェーズである。設定共有フェーズとは、通信装置100a〜100cの間で設定情報を共有するフェーズである。設定変更フェーズとは、通信装置100a〜100cの間で共有された設定情報の変更を行うフェーズである。
【0045】
A−3−1.新規設定フェーズ:
図4は、新規設定フェーズの流れを示す。新規設定フェーズでは、ゲートウェイ30と、ゲートウェイ30の無線電波の到達範囲内に設置された通信装置100の1つ(ここでは、通信装置100a)との間で所定の処理が行われる。新規設定フェーズは、ゲートウェイ30と通信装置100aとの間で、設定情報を共有する処理として捉えることもできる。
【0046】
図4に示すように、新規設定フェーズは、ユーザが、ゲートウェイ30のボタン31と、通信装置100aの簡単設定ボタン170aとを所定の時間内に続けて押下することで開始される(操作O310,320)。ゲートウェイ30がボタン31の押下を検知するとともに、通信装置100aが簡単設定ボタン170aの押下を検知すると、ゲートウェイ30と通信装置100aとの間で、無線通信によるWPSの処理が行われる(ステップS330)。このWPSの処理は、周知の通り、アクセスポイントとステーションとの間で相互的な通信を行うことによって、アクセスポイントが設定情報を生成し、ステーションに提供し、アクセスポイントとステーションとの間で設定情報を共有する処理である。このWPSの処理は、レジストレーションプロトコルによって実現される。
【0047】
本実施例の通信装置100aは、WPSの処理において、アクセスポイントとして動作することも、ステーションとして動作することもできる。具体的には、通信装置100aは、簡単設定ボタン170aの押下を検知すると、プローブリクエストを送信して、アクセスポイントを検索する。検索の結果、アクセスポイントを検出できない場合、通信装置100aは、無線通信インタフェース150をアクセスポイントとして動作させる。一方、検索の結果、アクセスポイントを検出できた場合、通信装置100aは、無線通信インタフェース150をステーションとして動作させる。本実施例では、通信装置100aは、アクセスポイントとしてのゲートウェイ30を検出できる。このため、通信装置100aは、WPSの処理におけるステーションとしての動作を行う。つまり、上記のステップS330では、ゲートウェイ30は、設定情報を生成し、当該設定情報を無線通信によって通信装置100aに提供する。
【0048】
通信装置100aは、設定情報の提供を受けると、当該設定情報をRAM140aに格納し、通信装置100aが使用する通信設定として設定する(ステップS340)。通信装置100aにおいて、上記のステップS330,S340の処理は、CPU110aの第1の通信設定部115aの処理として実行される。
【0049】
設定情報を設定すると、CPU110aは、上述した動作モード設定処理(
図3参照)によって、自身をマスタとして設定する(ステップS350)。なお、通信装置100b,100cは、WPSの処理を実行していないので、スレーブとして設定されている。こうして、新規設定フェーズは終了となる。なお、ゲートウェイ30がPLCによる通信を行える場合には、通信装置100aとゲートウェイ30とを、相互の無線電波到達範囲外に設置するケースも想定される。かかる場合には、通信装置100a〜100cのいずれかを、ゲートウェイ30の無線電波の到達範囲内に一旦設置して、上述の新規設定フェーズの処理を行った後、当該通信装置100a〜100cのいずれかを、ユーザが所望の場所に設置し直してもよい。
【0050】
A−3−2.設定共有フェーズ:
図5は、設定共有フェーズの流れを示す。設定共有フェーズは、マスタとしての通信装置100aに設定情報が設定されることによって開始される。設定共有フェーズの処理は、マスタと、各々のスレーブとの間で行われるが、
図5は、マスタとしての通信装置100aと、スレーブとしての通信装置100bとの間での処理を示している。設定共有フェーズにおける通信装置100aと通信装置100bとの通信は、PLCを使用して行われる。
図5に示すように、設定共有フェーズが開始されると、まず、マスタとしての通信装置100aのCPU110aは、WPSの処理によって、設定情報を自身に設定した時刻情報と、設定情報の内容とをキーとして使用し、ハッシュ関数によってハッシュ値を生成する(ステップS410)。このハッシュ値は、後述する処理によって、スレーブとしての通信装置100b,100cが、マスタとしての通信装置100aに設定された設定情報の同一性を識別する識別情報として使用される。
【0051】
ハッシュ値を生成するためのキーは、上述の例に限るものではなく、適宜設定すればよい。ただし、設定情報の同一性の識別性能を向上させるためには、各々の設定情報に固有の要素をキーとして含めることが望ましい。例えば、時刻情報のみをキーとして使用してもよい。あるいは、設定情報の内容のみをキーとして使用してもよい。ハッシュ値に代表される識別情報を生成する関数は、不可逆な一方向関数であることが望ましい。一方向関数によって識別情報を生成すれば、関数の入力値に設定情報の内容を含み、かつ、ネットワークシステム20へのアクセス権限を有さない不正なユーザが、識別情報を不正に傍受した場合であっても、傍受した識別情報から設定情報の内容を不正なユーザに知られることがない。
【0052】
ハッシュ値を生成すると、マスタとしての通信装置100aのCPU110aは、ビーコンの送信を開始する(ステップS420)。ビーコンには、設定変更通知とハッシュ値とが含まれる。設定変更通知とは、通信装置100aに設定情報が初めて設定されたこと、または、変更によって新たに設定されたことを示す情報である。ハッシュ値は、上記のステップS410で生成された値である。このビーコンは、ブロードキャストによって、予め定められたタイミングで繰り返し送信される。このタイミングは、周期的に設定されてもよいし、非周期的に設定されてもよい。本実施例では、ビーコンの他にも、通信装置100a〜100cの間で設定情報を共有するための通信を行う。本願では、かかる通信にかかるパケットを総称して、制御パケットともいう。制御パケットは、OSI参照モデルのデータリンク層(レイヤ2)で処理される通信パケット(フレーム)である。ただし、制御パケットは、レイヤ2でのブロードキャストおよびユニキャストをサポートするものであればよく、例えば、OSI参照モデルのネットワーク層(レイヤ3)で処理される通信パケットであってもよい。
【0053】
この制御パケットには、制御パケットの種類を表す第1のフィールドが確保されている。通信装置100の各々は、受信した制御パケットの第1のフィールドを参照することによって、制御パケットの種類を識別することができる。制御パケットの種類は、ビーコンのほか、後述する設定共有フェーズや設定変更フェーズで、マスタとスレーブとの間でやり取りされる各々の通信パケットごとに設定される。また、制御パケットには、制御パケットの送信元の通信装置100に設定された動作モードの種類を表す第2のフィールドが確保されている。かかる動作モードの種類としては、第1の動作モード、第2の動作モードおよびスタンドアロンモードを含む。つまり、通信装置100の各々は、受信した制御パケットの第2のフィールドを参照することによって、制御パケットの送信元の通信装置100が、マスタ、スレーブおよびスタンドアロン装置のうちのいずれであるのかを把握できる。スタンドアロンモードおよびスタンドアロン装置については、後述する。
【0054】
ここで説明を
図5に戻す。ビーコンの送信が開始され、スレーブとしての通信装置100bがビーコンを受信すると、通信装置100bのCPU110bは、受信したビーコンに含まれるハッシュ値と、RAM140bに記憶されたハッシュ値とを照合するとともに、受信したビーコンに含まれるハッシュ値をRAM140bに格納して記憶する(ステップS430)。具体的には、CPU110bは、ビーコンを受信するたびに、ハッシュ値をRAM140bに保存する。そして、最後に受信したビーコンに含まれるハッシュ値と、その1つ前に受信したビーコンに含まれるハッシュ値とを照合する。照合の結果、2つのハッシュ値が一致することは、マスタとしての通信装置100aの設定情報が、変更されていないことを意味する。一方、2つのハッシュ値が不一致であることは、通信装置100aの設定情報が、2つのビーコンが送信される間に変更されたことを意味する。通信装置100bが初めてビーコンを受信する場合には、RAM140bには、過去に受信したハッシュ値が記憶されていないので、CPU110bは、2つのハッシュ値を照合することはできない。この場合には、CPU110bは、2つのハッシュ値が不一致であると判断する。なお、通信装置100bが初めてビーコンを受信することは、マスタとしての通信装置100aに設定情報が初めて設定されたことを意味する。
【0055】
ハッシュ値の照合によって、2つのハッシュ値が不一致であれば、CPU110bは、ユニキャストによって、設定送信要求を通信装置100aに送信する(ステップS440)。設定送信要求は、マスタに既に設定されている設定情報の提供を求めるメッセージである。なお、2つのハッシュ値が一致する場合、ステップS440以下の処理は行われない。
【0056】
一方、通信装置100aが、スレーブとしての通信装置100bから設定送信要求を受信すると、通信装置100aのCPU110aと通信装置100bのCPU110bとは、相互に通信を行い、設定送信用暗号鍵の交換を行う(ステップS450)。設定送信用暗号鍵とは、通信装置100aが通信装置100bに設定情報を提供するための暗号化通信に使用する暗号鍵である。ステップS450の処理は、例えば、AES(Advanced Encryption Standard)の鍵交換に用いるプロトコルを使用することができる。このプロトコルは、4Way−Handshakeとも呼ばれる。
【0057】
設定送信用暗号鍵を交換すると、通信装置100aのCPU110aは、提供部114aの処理として、通信装置100aに既に設定された設定情報を通信装置100bに送信する(ステップS460)。この通信は、設定送信用暗号鍵によって暗号化される。
【0058】
一方、通信装置100bのCPU110bは、設定情報を受信すると、第2の通信設定部116bの処理として、受信した設定情報を復号化して、RAM140bに格納して記憶し、自身に設定する(ステップS470)。CPU110bは、設定情報の設定を行うと、設定受信完了通知を通信装置100aに送信する(ステップS480)。こうして、通信装置100aと通信装置100bとの間で設定情報が共有され、設定共有フェーズは終了となる。
【0059】
かかる設定共有フェーズによって、ゲートウェイ30および通信装置100の各々で設定情報が共有された後、ゲートウェイ30または通信装置100と、ステーションとしての無線端末TE1〜TE3のいずれかとの間で、WPSの処理が行われる場合、ゲートウェイ30または通信装置100は、自身に設定された設定情報を、WPSの処理の相手方としての無線端末TE1〜TE3に提供してもよい。かかる構成は、ユーザの簡単な操作のみによって、無線端末TE1〜TE3をネットワークシステム20に参加させることができる。なお、この場合、通信装置100は、設定情報を提供するのであって、自身に設定情報を設定するのではない。このため、無線端末TE1〜TE3と通信装置100との間で実行されるWPSの処理は、動作モード設定処理(
図3参照)に影響を与えない。
【0060】
CPU110aは、PLCによって通信を行う全てのアクセスポイント(ここでは、通信装置100b,100c)から設定受信完了通知を受信した後もビーコンを定期的に送信する(ステップS490)。そして、スレーブは、ビーコンを受信するたびに、上記S430〜S480におけるスレーブ側の処理を行う。したがって、通信装置100aに設定情報が初めて設定された際、スレーブの電源がOFFになっていたとしても、当該スレーブは、電源が投入された後に、ビーコンを受信して、上記S430〜S480の処理を実行して、通信装置100aと設定情報を共有することができる。ネットワークシステム20に通信装置100相当の通信装置が追加される場合も同様である。
【0061】
A−3−3.設定変更フェーズ:
設定変更フェーズは、通信装置100a〜100cの間で共有された設定情報の変更指示をマスタが受け付ける場合と、スレーブが受け付ける場合とに分類できる。マスタが変更指示を受け付ける態様としては、例えば、ユーザが、上述した新規設定フェーズの処理を再度行うことを例示できる。新規設定フェーズの処理を再度行うことで、通信装置100aに設定された設定情報が新たな内容に変更される。
【0062】
ただし、マスタが変更指示を受け付ける態様は、種々の態様とすることができる。例えば、ユーザが、有線LANインタフェース180にパーソナルコンピュータを接続して、パーソナルコンピュータから、所望の設定情報を入力し、マスタが入力情報を受け付けてもよい。あるいは、ユーザが無線端末TE1を操作して、無線端末TE1から、所望の設定情報を入力し、無線通信を介して、マスタが入力情報を受け付けてもよい。これらの態様では、WEBブラウザを介してユーザが設定情報を入力する構成が広く知られている。なお、マスタは、設定情報の入力を受け付ける代わりに、設定情報の変更指示のみを受け付けて、設定情報の内容を自動的に生成してもよい。マスタとしての通信装置100aは、変更指示を受け付けて、設定情報を変更すると、上述した設定共有フェーズの処理を実行して、変更後の設定情報を通信装置100b,100cと共有する。
【0063】
本実施例では、上述したように、通信装置100a〜100cの間で設定情報が共有された後も、マスタとしての通信装置100aは、ハッシュ値を含むビーコンを定期的に送信する。このため、通信装置100aの設定情報が変更された際、スレーブの電源がOFFになっていたとしても、当該スレーブは、電源が投入された後に、ビーコンを受信して、上記S430〜S480の処理を実行して、通信装置100aと設定情報を共有することができる。ネットワークシステム20に通信装置100相当の通信装置が追加される場合も同様である。
【0064】
図6は、スレーブが変更指示を受け付ける場合の設定変更フェーズの流れを示す。設定変更フェーズにおける通信は、PLCを使用して行われる。このケースでは、スレーブが変更指示を受け付け、マスタに設定変更の許可を求める。具体的には、
図6に示すように、まず、スレーブとしての通信装置100bのCPU110bは、受付部120bの処理として、ユーザが変更を希望する内容の設定情報を受け付ける(ステップS510)。この設定情報を受け付ける態様は、マスタが変更指示を受け付ける態様と同様に、種々の態様とすることができる。
【0065】
変更する設定情報を受け付けると、通信装置100bのCPU110bは、変更要求部121bの処理として、設定変更許可要求をマスタとしての通信装置100aに送信する(ステップS520)。設定変更許可要求は、通信装置100bの設定情報の変更を求めるメッセージである。なお、設定変更許可要求を受信した通信装置100aは、後述する処理によって設定変更を許可すると、設定情報を通信装置100a〜100cの間で共有するために、通信装置100aに既に設定された設定情報を、通信装置100bが要求する設定情報の内容に変更することとなる。このため、設定変更許可要求は、通信装置100aの設定情報の変更を求めるメッセージと捉えることもできる。
【0066】
通信装置100aが、スレーブとしての通信装置100bから設定変更許可要求を受信すると、通信装置100aのCPU110aと通信装置100bのCPU110bとは、相互に通信を行い、設定変更用暗号鍵の交換を行う(ステップS530)。設定変更用暗号鍵とは、通信装置100bが、変更する設定情報を通信装置100aに通知するための暗号化通信に使用する暗号鍵である。ステップ530の処理は、例えば、AESの鍵交換に用いるプロトコルを使用することができる。設定送信用暗号鍵を交換すると、CPU110bは、変更する設定情報を通信装置100aに送信する(ステップS540)。この通信は、設定変更用暗号鍵によって暗号化される。
【0067】
変更する設定情報を受信すると、CPU110aは、決定部119aの処理として、変更を許可するか否かを決定する(ステップS550)。この決定は、変更する設定情報の内容に基づいて行われる。具体的には、CPU110aは、設定情報の変更を許可した場合に、無線通信のセキュリティレベルが低下するか否かを判断する。この判断は、例えば、暗号化方式に基づいて行うことができる。例えば、暗号化方式が、AESからWEPに変更される場合や、AESから暗号化なしに変更される場合には、セキュリティレベルが低下するので、変更を拒否すると決定してもよい。どのような変更パターンのときに、変更を拒否するかは、予めフラッシュROM130に登録しておいてもよい。また、暗号化方式が同一であっても、暗号鍵の長さが小さくなるように変更される場合には、セキュリティレベルが低下するので、変更を拒否すると決定してもよい。このように、セキュリティレベルの低下を考慮して、設定情報の変更を許可するか否かを決定すれば、ネットワークシステム20の管理者の意図に反して、スレーブの使用権限は有するが、管理権限を有さないユーザの操作によって、ネットワークシステム20全体のセキュリティレベルが低下することを抑制できる。ただし、ステップS550は、省略してもよい。つまり、CPU110aは、設定変更の内容に関係なく、設定変更を許可してもよい。
【0068】
図7は、ステップ550において、設定情報の変更を許可する場合の設定変更フェーズの流れを示す。設定情報の変更を許可する場合、通信装置100aのCPU110aは、変更部118aの処理として、通信装置100bから受信した変更用の設定情報を、RAM140aに格納して記憶し、設定を変更するとともに、変更後の設定情報に基づいて、ハッシュ値を生成する(ステップS610)。ハッシュ値の生成方法は、上記のステップS410(
図5参照)と同様である。
【0069】
ハッシュ値を生成すると、CPU110aは、設定変更許可要求を送信した通信装置100bに設定許可応答を送信する(ステップS620)。設定許可応答は、設定変更を許可することを通知するメッセージである。この設定許可応答には、上記のステップS610で生成したハッシュ値が含まれる。一方、通信装置100bのCPU110bは、設定許可応答を受信すると、設定許可応答に含まれるハッシュ値をRAM140bに格納して記憶するとともに、上記のステップS510で受け付けた設定情報をRAM140bに格納して記憶し、設定の変更を行う(ステップS630)。
【0070】
一方、通信装置100aでは、設定許可応答を送信した後、CPU110aが、ビーコンを送信する(ステップS640)。ビーコンには、設定変更通知とハッシュ値とが含まれる。通信装置100cは、このビーコンを受信して、上記の設定共有フェーズの処理(
図5のステップS430〜S480)を実行することによって、通信装置100a,100bと、変更後の設定情報を共有できる。
【0071】
図8は、ステップ550において、設定情報の変更を拒否する場合の流れを示す。設定情報の変更を拒否する場合には、通信装置100aの設定情報は、変更されない。設定情報の変更を拒否する場合、通信装置100aのCPU110aは、設定変更許可要求を送信した通信装置100bに設定拒否応答を送信する(ステップS710)。設定拒否応答は、設定変更を拒否することを通知するメッセージである。
【0072】
一方、通信装置100bのCPU110bは、設定拒否応答を受信すると、第3の通信設定部117bの処理として、上記のステップS510で受け付けた設定情報をRAM140bに格納して記憶し、設定の変更を行う(ステップS720)。そして、CPU110bは、禁止部122bの処理として、ビーコンに基づく設定変更を禁止する動作モードに自身を制御する(ステップS730)。この動作モードでは、CPU110bは、受信したビーコンを無視することにより、上記のステップS430〜S480によって、設定変更を行うことはない。上述したように、通信装置100aは設定変更を行わないので、通信装置100cも、上記のステップS430〜S480によって、設定変更を行うことはない。したがって、ステップS730によって、通信装置100a〜100cのうちの通信装置100bのみに、異なる設定情報が設定された状態が継続される。このため、ステップS730で制御されるモードをスタンドアロンモードともいう。また、スタンドアロンモードで動作する通信装置100をスタンドアロン装置ともいう。スタンドアロンモードでは、通信装置100bは、LED190を予め定められた発光態様で発光させて、通信装置100bがスタンドアロンモードで動作していることを報知する。
【0073】
このように、通信装置100bがスタンドアロンモードで制御されることによって、通信装置100bの設定変更を行いたいユーザの要望に応えることができる。例えば、ユーザは、低いセキュリティレベルでの暗号化方式、例えば、WEPしか使用できない無線端末を、通信装置100bと通信させることができる。しかも、通信装置100a,100cの設定変更は行われないので、通信装置100bの設定変更に伴って、ネットワークシステム20全体のセキュリティレベルが低下することを抑制できる。なお、設定拒否応答を受信した場合、CPU110bは、上記のステップS510で受け付けた設定変更を行わない構成としてもよい。かかる構成は、ネットワークシステム20全体のセキュリティレベルが低下することをいっそう抑制できる。なお、スレーブは、自身をスタンドアロンモードで制御する場合に、マスタにスタンドアロンモードに移行する許可を求め、許可が得られた場合にのみ、スタンドアロンモードに移行する構成としてもよい。スタンドアロンモードへの移行を許可するか否かは、管理者が通信装置100に事前に設定しておいてもよい。こうすれば、ネットワークシステム20の管理者の意図に反して、スレーブがスタンドアロンモードに移行することを防止できる。その結果、管理者は、ネットワークシステム20の運用を行いやすくなり、利便性が向上する。
【0074】
図9は、スタンドアロン装置としての通信装置100bの動作の流れを示す。図示するように、スタンドアロンモードでの制御が開始されると、通信装置100bのCPU110bは、変更後の設定情報に基づく無線通信を監視し(ステップS810)、監視する無線通信に関して所定のイベントが発生するまで待機する(ステップS820:NO)。
【0075】
所定のイベントとしては、変更後の設定情報に基づく無線通信が以後行われないことが推定できるイベントとすることができる。例えば、所定のイベントは、変更後の設定情報を使用して通信装置100bに接続された無線端末から、所定期間、通信パケットを受信しなかったこととしてもよい。あるいは、所定のイベントは、変更後の設定情報を使用して、通信装置100bと無線端末とが無線通信の接続関係を確立した後、接続関係を確立中の無線端末が1台も存在しなくなったこととしてもよい。あるいは、所定のイベントは、当該接続関係を確立中の無線端末が1台も存在しなくなってから、予め定められた時間を経過したこととしてもよい。
【0076】
そして、CPU110bは、禁止部122bの処理として、所定のイベントを検知すると(ステップS820:YES)、スタンドアロンモードを解除する(ステップS830)。これによって、CPU110bは、次回、ビーコンを受信した際に、上記のステップS430〜S480によって、設定変更を行う。その結果、通信装置100a〜100cは、再び、同一の設定情報を共有できる。かかる構成によれば、ユーザが、通信装置100bをスタンドアロンモードで動作させる意思がなくなった後も、スタンドアロンモードが継続されることがない。しかも、スタンドアロンモードの解除は、自動的に行われるので、ユーザの利便性が高い。なお、スタンドアロン装置は、スレーブの一態様であると捉えてもよいし、スレーブとは別の態様であると捉えてもよい。スタンドアロン装置とスレーブとは別の態様であると捉える場合には、スタンドアロン装置は、スタンドアロンモードを解除する際に、自身を再度、第2の動作モードに設定してもよい。
【0077】
図10は、変形例としてのスタンドアロンモードの動作を示す。上述の例では、通信装置100bは、自律的にスタンドアロンモードを解除して、設定情報を共有する無線ネットワークに復帰する構成としたが、以下に説明する変形例では、通信装置100bは、マスタとしての通信装置100aの動作に基づいて、設定情報を共有する無線ネットワークに復帰できる。本変形例では、通信装置100aのCPU110aは、上記のステップS710(
図8参照)によって、設定拒否応答を送信する際、設定拒否応答の宛先である通信装置100bのネットワーク上の識別子(ここでは、MACアドレス)をRAM140aに登録する。そして、設定変更フェーズ(
図8参照)の処理が終了した後、通信装置100a,100bは、
図10に示す処理を実行する。なお、
図10において、
図9と同一の処理については、
図9と同一の符号を付して、詳しい説明を省略する。
【0078】
図10に示すように、変形例としてのスタンドアロンモードにおいて、通信装置100aのCPU110aは、設定拒否応答の宛先のMACアドレスを登録すると、当該MACアドレスを有する通信装置100bからの設定送信要求(
図5のステップS440参照)に応答しない非応答モードに自身を制御する(ステップS910)。以降、通信装置100bは、設定送信要求を通信装置100aに送信しても、上記のステップS450〜S480の処理(
図5参照)が実行されることはない。つまり、通信装置100bは、設定情報を共有する無線ネットワークに復帰できない。
【0079】
一方、通信装置100bでは、スタンドアロンモードでの制御を開始した後、CPU110bは、上述のステップS810,S820の処理を行う。そして、ステップS820において、所定のイベントを検知すると(ステップS820:YES)、CPU110bは、マスタを検索する(ステップS920)。この検索は、制御パケットを用いて、無線LANにおいてステーションがアクセスポイントを検索する手法に準じて、パッシブスキャンまたはアクティブスキャンによって行うことができる。ステップS920の処理によって、通信装置100bがスタンドアロンモードで制御されている間に、マスタとなる通信装置が変更されたとしても、好適にマスタを特定することができる。ここでは、マスタは変更されていないものとする。
【0080】
検索の結果、マスタを検出すると、CPU110bは、復帰要求をマスタとしての通信装置100aに送信する(ステップS930)。復帰要求は、設定情報が共有されたネットワークへの復帰を求めるメッセージである。復帰要求の第2のフィールドには、自身がスタンドアロンモードで動作していることを示す情報が含まれる。CPU110bは、復帰要求の送信後、復帰要求が受信されたことを表すACKを通信装置100aから受信した場合に(
図10では、図示省略)、スタンドアロンモードを解除する(ステップS830)。ただし、この段階では、上記のステップS910によって、通信装置100bが通信装置100aから設定情報の提供を受けることはできない。
【0081】
一方、通信装置100aのCPU110aは、スタンドアロン装置としての通信装置100bから復帰要求を受信すると、設定拒否応答を送信する際にRAM140に登録したMACアドレスと、復帰要求の送信元のMACアドレスとを照合する(ステップS940)。なお、仮に、スタンドアロン装置以外の通信装置から復帰要求を受信したとしても、当該復帰要求は、CPU110aによって無視される。照合の結果、両者が一致しなければ(ステップS950:NO)、CPU110aは、復帰要求の再度の受信を待機する。一方、照合の結果、両者が一致すれば(ステップS950:YES)、CPU110aは、非応答モードを解除し、設定拒否応答の宛先であった通信装置100bからの設定送信要求に応答する応答モードに自身を制御する(ステップS960)。以降、CPU110bは、次回、ビーコンを受信した際に、上記のステップS430〜S480によって、設定変更を行うことができる。その結果、通信装置100a〜100cは、再び、同一の設定情報を共有できる。なお、通信装置100aがステップS960の後に、応答モードに移行したことを表す通知を通信装置100bに送信し、通信装置100bが、当該通知を受信した後に、上記のステップS830を実行してもよい。
【0082】
以上説明したように、マスタは、スレーブから設定変更許可要求を受信し、当該要求に基づく設定変更を許可しない場合には、設定変更許可要求の送信元の識別情報を記憶する。そして、以降、マスタは、設定変更許可要求の送信元の通信装置に提供しない第3の動作モードで動作する。マスタは、第3の動作モードで動作中に、設定変更許可要求の送信元の通信装置から復帰要求を受信した場合、記憶した識別情報に基づいて、復帰要求の送信元のスレーブの認証を行い、認証に成功した場合にのみ、第3の動作モードを解除する。かかる構成によれば、設定情報を共有していた通信装置のみを対象として、設定情報を共有するネットワークに再び参加させることができる。
【0083】
A−4.効果:
上述した通信装置100によって構成されるネットワークシステム20によれば、マスタとなった通信装置100が、スレーブとなった通信装置100に無線通信に関する設定情報を提供し、スレーブとなった通信装置100は、提供された設定情報を自身に設定する。したがって、通信装置100の各々は、同一の設定情報を共有することができる。その結果、シームレスな無線ローミング環境を提供することができる。しかも、ユーザは、通信装置100の各々に、手動操作によって、同一の設定情報を入力する必要がない。このため、ユーザは、通信装置100の間で設定情報を容易に統一することができる。
【0084】
また、ネットワークシステム20において、設定情報の受け渡しを行うための通信には、PLCが使用される。PLCネットワークでは、通常、新たにネットワークに参加する通信装置は、認証プロセスを経る必要がある。したがって、通信装置100は、他の通信装置100に設定情報を無制限に提供することがない。換言すれば、PLCの認証プロセスを経た通信装置100のみが、設定情報を共有することができる。その結果、セキュリティを確保することができる。
【0085】
上述した実施例の変形例について説明する。
B:変形例:
B−1.変形例1:
上述の実施例では、通信装置100aは、WPSの処理によって、自身に設定情報を設定したが、設定情報を設定する方法は、WPSを使用したものに限られない。設定情報の設定は、2つの無線通信装置の間での相互的な通信によって、当該2つの無線通信装置のうちの一方の無線通信装置から他方の無線通信装置へ設定情報を提供するプロトコルを使用するものとしてもよい。かかるプロトコルとしては、WPSのほか、例えば、AOSS(AirStation One-Touch Secure System、株式会社バッファローの登録商標)を例示できる。
【0086】
B−2.変形例2:
上述の実施例においては、通信装置100は、動作モード設定処理(
図3参照)によって、自身の動作モードを設定する構成としたが、動作モードの決定は、他の態様であってもよい。例えば、通信装置100は、予め定められた方法で自身に設定情報が設定された場合に、自身をマスタに設定してもよい。予め定められた方法とは、例えば、ユーザの手動入力であってもよい。あるいは、通信装置100に所定のプログラムがインストールされている場合には、当該プログラムを利用して、1つの通信装置100に設定された設定情報を、USBメモリなどの記憶媒体に保存し、当該記憶媒体を他の通信装置100に接続して、他の通信装置100に設定情報を設定してもよい。あるいは、当該プログラムを利用して、有線接続手段、例えば、イーサネット(登録商標)を介して、1つの通信装置100に設定された設定情報を他の通信装置100に設定してもよい。あるいは、通信装置100がRFID(Radio Frequency Identification)や赤外線などの近距離通信手段を備える場合には、近距離通信手段による入力であってもよい。
【0087】
さらに、動作モードの設定は、通信装置100が自律的に行うことに限られない。例えば、通信装置100が、いずれの動作モードで設定されるべきであるかの指示を受け付ける受付手段を備える場合には、通信装置100は、当該受付手段によって受け付けた結果に基づいて、自身の動作モードを設定してもよい。かかる受付手段としては、例えば、動作モードを選択可能に構成されたスイッチ、例えば、ディップスイッチであってもよい。あるいは、受付手段は、ディスプレイであってもよい。あるいは、受付手段は、通信装置100に接続されたコンピュータ、例えば、有線LANインタフェース180に接続されたコンピュータから、WEBブラウザを介して受け付ける手段であってもよい。
【0088】
B−3.変形例3:
上述の実施例では、新規設定フェーズ(
図4参照)において、ゲートウェイ30と通信装置100aとの間でWPSの処理を実行したが、ネットワークシステム20にゲートウェイ30が含まれない場合、例えば、外部ネットワークに接続されないネットワークを構築する場合や、通信装置100aがルータ機能を備え、直接的に外部ネットワークに接続される場合には、通信装置100のうちの2つの通信装置間でWPSの処理を実行してもよい。
【0089】
B−4.変形例4:
アクセスポイントとしての通信装置100は、マルチSSIDをサポートしていてもよい。マルチSSIDがサポートされた通信装置100は、1つの物理的なアクセスポイントを、複数の論理的なアクセスポイントである複数の仮想アクセスポイントとして動作させることができる。通信設定は、仮想アクセスポイントごとに異なる内容で設定することができる。かかる場合、マスタは、自身の複数の仮想アクセスポイントのうちの一部の仮想アクセスポイントについての設定情報のみをスレーブに提供してもよい。また、スレーブは、自身の複数の仮想アクセスポイントのうちの一部の仮想アクセスポイントについてのみ、マスタから提供される設定情報を自身に設定してもよい。かかる構成は、設定情報が共有されたネットワークと、設定情報が独立したネットワークとを同時に構築することができる。その結果、通信装置を用いたネットワークの運用の柔軟性を向上させることができる。
【0090】
例えば、一部の仮想アクセスポイントについて、高いセキュリティレベルの設定情報を他の通信装置100との間で共有して、セキュリティレベルの高いネットワークを構築できる。しかも、残りの仮想アクセスポイントは、相対的に低いセキュリティレベルで通信することもできる。したがって、ネットワークシステム20の複数のユーザのうちの一部のユーザのみが、低いセキュリティレベルで通信を行う必要がある場合に、ネットワークのセキュリティと、ユーザの利便性とを両立することができる。
【0091】
また、マルチSSIDをサポートするアクセスポイントでは、仮想アクセスポイントの一部がゲストポートとして使用されることがある。ゲストポートは、アクセスポイントのユーザ以外のゲストユーザに、インターネットINTへの接続を提供するために設けられる。かかる場合、ゲストポートについては、通信装置100の各々で設定情報を共有しないものとしてもよい。かかる構成は、ゲストユーザの通信と、本来のユーザの通信とを切り離すことができるので、セキュリティを確保することができる。
【0092】
B−5.変形例5:
通信装置100で構成される無線ネットワークを複数のネットワークに区分し、区分されたネットワークの各々に1台ずつマスタを配置して、ネットワークごとに、マスタとスレーブとが設定情報を共有する構成としてもよい。かかる構成は、例えば、以下のようにして実現することができる。まず、通信装置100の各々は、所定の受付手段によって、ユーザが入力するネットワークの識別子(以下、ネットワークIDともいう)を受け付けて、自身に設定する。所定の受付手段は、上述した変形例2において説明した動作モードの設定の受付手段と同様に、種々の態様とすることができる。
【0093】
そして、マスタまたはスレーブとして設定された通信装置100の各々は、制御パケットにネットワークIDを含めて、制御パケットを送信する。設定共有フェーズにおいて、マスタは、自身に設定されたネットワークIDと同一のネットワークIDを含む設定送信要求を受信した場合にのみ、設定送信要求の送信元のスレーブに設定情報を提供する。一方、スレーブは、自身に設定されたネットワークIDと同一のネットワークIDを含むビーコンを受信した場合にのみ、上記のステップS430〜S480(
図5参照)の処理を行う。設定変更フェーズにおいても、マスタおよびスレーブは、自身に設定されたネットワークIDと同一のネットワークIDを含む制御パケットを受信した場合にのみ、当該制御パケットへの応答を行う。かかる構成によれば、共有される設定情報が異なる複数の無線ネットワークを容易に構築することができる。その結果、ユーザの利便性が向上する。
【0094】
B−6.変形例6:
マスタが送信するビーコンの単位時間あたりの送信頻度は、マスタに設定される設定情報の更新状況に応じて、変化させてもよい。例えば、マスタの通信設定が変更されてから所定の期間は、送信頻度を相対的に短くし、当該所定期間の経過後は、送信頻度を相対的に長くしてもよい。かかる構成は、マスタの電力消費を抑制することができる。
【0095】
B−7.変形例7:
上述の実施例では、通信装置100は、設定情報を共有するための有線通信手段としてPLCを使用したが、有線通信手段は、PLCに限るものではなく、種々の手段を採用することができる。例えば、有線通信手段として、イーサネット(登録商標)を使用してもよい。
【0096】
B−8.変形例8:
上述の実施例では、通信装置100の各々は、同一の構成を備えていた。そのため、ユーザは、通信装置100の各々の機能の違いを意識して、通信装置100の各々の設定場所を決定する必要がない。ただし、通信装置100として、マスタ専用機を用意してもよい。また、通信装置100として、スレーブ専用機を用意してもよい。これらの専用機では、動作モード設定部113の機能を省略することができる。マスタ専用機は、上述したCPU110の機能のうちのマスタの動作に必要な機能のみを備えていてもよい。具体的には、マスタ専用機のCPU110は、無線通信部111、有線通信部112、提供部114、第1の通信設定部115、変更部118および決定部119の機能のみを備えていてもよい。なお、第1の通信設定部115、変更部118および決定部119のうちの少なくとも1つの機能は、省略してもよい。同様に、スレーブ専用機は、上述したCPU110の機能のうちのスレーブの動作に必要な機能のみを備えていてもよい。具体的には、スレーブ専用機のCPU110は、無線通信部111、有線通信部112、第2の通信設定部116、第3の通信設定部117、受付部120、変更要求部121および禁止部122の機能のみを備えていてもよい。なお、第3の通信設定部117、受付部120、変更要求部121および禁止部122のうちの少なくとも1つの機能は、省略してもよい。このような専用機としての構成は、通信装置100の各々の機能を簡略化することができる。
【0097】
B−9.変形例9:
通信装置100は、スタンドアロンモードに移行した際や、スタンドアロンモードを解除した際に、制御パケットによって、マスタにその旨を通知してもよい。あるいは、マスタとしての通信装置100は、制御パケットによって、その他の通信装置100に対して、その他の通信装置100の動作モードをマスタに通知する要求を送信し、その応答によって、その他の通信装置100の動作モードを把握可能に構成してもよい。また、マスタとしての通信装置100は、把握した動作モードを出力可能に構成してもよい。出力の態様は、適宜設定すればよく、例えば、WEB画面の送信や、通信装置100が備えるディスプレイへの表示であってもよい。かかる構成によれば、ネットワークシステム20の管理者は、通信装置100の動作状態を容易に把握することができ、ネットワーク管理の利便性が向上する。
【0098】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採ることができる。例えば、上述した各適用例の構成要素や、実施形態中の要素は、本願の課題の少なくとも一部を解決可能な態様、または、上述した各効果の少なくとも一部を奏する態様において、適宜、組み合わせ、省略、上位概念化を行うことが可能である。