特許第5799734号(P5799734)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5799734
(24)【登録日】2015年9月4日
(45)【発行日】2015年10月28日
(54)【発明の名称】乗用車の空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/34 20060101AFI20151008BHJP
   F24F 13/15 20060101ALI20151008BHJP
【FI】
   B60H1/34 651B
   F24F13/15 B
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-225580(P2011-225580)
(22)【出願日】2011年10月13日
(65)【公開番号】特開2013-86518(P2013-86518A)
(43)【公開日】2013年5月13日
【審査請求日】2014年1月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 琢磨
【審査官】 仲村 靖
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−306365(JP,A)
【文献】 特開2008−149830(JP,A)
【文献】 特開2008−037376(JP,A)
【文献】 実開平01−120043(JP,U)
【文献】 特開2010−145043(JP,A)
【文献】 仏国特許出願公開第02718682(FR,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第1243450(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/34
F24F 13/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調装置本体部から送風ダクトを通って送られてきた空気をインストルメントパネルに設けられた吹出し口から車室内空間に吹出すように構成された乗用車の空調装置であって、
前記送風ダクトと前記吹出し口との間には、その送風ダクトと前記吹出し口とをつなぐ送風通路の形状を変えて前記吹出し口から吹出す空気の方向を調整可能な風向調整機構が設けられており、
前記風向調整機構は、
前記吹出し口の周縁上側に一端側が上下回動可能に連結された第1送風通路上板と、
前記吹出し口の周縁下側に一端側が上下回動可能に連結された第1送風通路下板と、
前記送風ダクトの下流端位置の周縁上側に一端側が上下回動可能に連結された第2送風通路上板と、
前記送風ダクトの下流端位置の周縁下側に一端側が上下回動可能に連結された第2送風通路下板と、
前記第1送風通路上板の他端側と第2送風通路上板の他端側とを上下回動可能な状態で連結するとともに、第1送風通路下板の他端側と第2送風通路下板の他端側とを上下回動可能な状態で連結する連結部材と、
前記連結部材が上方、あるいは下方に移動するように、前記第1送風通路上板、第2送風通路上板、第1送風通路下板、及び第2送風通路下板を上下回動させる上下回動機構と、
を有することを特徴とする乗用車の空調装置。
【請求項2】
請求項1に記載された乗用車の空調装置であって、
前記風向調整機構は、
前記送風通路を構成する壁材として、前記吹出し口に連結される吹出し側部と、前記送風ダクトに連結される送風ダクト側部と、前記吹出し側部と前記送風ダクト側部とを連結する中間部とを連続して備えており、
前記吹出し側部が前記吹出し口の軸線に対して角度変化する動作に対して前記送風ダクト側部と中間部とが連動し、前記送風通路の形状が変化する構成であることを特徴とする乗用車の空調装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載された乗用車の空調装置であって、
前記第1送風通路上板の下面側、及び/又は、第1送風通路下板の上面側には、前記吹出し口から吹出す空気を左、あるいは右方向に導く羽根が設けられていることを特徴とする乗用車の空調装置。
【請求項4】
請求項3に記載された乗用車の空調装置であって、
前記吹出し口から吹出す空気を左方向に導く左羽根が前記第1送風通路上板の下面、あるいは第1送風通路下板の上面のいずれか一方に設けられて、板に沿う倒伏位置と前記板に対して起立する起立位置間で回動可能に構成されており、
前記吹出し口から吹出す空気を右方向に導く右羽根が前記第1送風通路上板の下面、あるいは第1送風通路下板の上面のいずれか他方に設けられて、前記倒伏位置と前記起立位置間で回動可能に構成されており、
前記左羽根と右羽根とは、一方が倒伏位置にあるときに、他方が倒伏位置と起立位置間で回動できるように構成されていることを特徴とする乗用車の空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調装置本体部から送風ダクトを通って送られてきた空気をインストルメントパネルに設けられた吹出し口から車室内空間に吹出すように構成された乗用車の空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これに関連する乗用車の空調装置が特許文献1に記載されている。
特許文献1に記載の乗用車の空調装置には、図12に示すように、インストルメントパネル100の吹出し口102に風向きを調節するフィン102fが設けられている。そして、フィン102fの向きを上下方向、あるいは左右方向に調整することで、吹出し口102から吹出される風向きを上下方向、あるいは左右方向に調整できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−157347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、フィン102fにより吹出し口102から吹出される風向きを変える構造では、フィン102fが外部から見えるため、吹出し口102とフィン102fとを一体の状態で意匠を考える必要がある。
このため、意匠上の制約が多くなり、斬新な意匠を創造する上で障害となっている。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、乗用車のインストルメントパネルにおける送風の吹出し口のフィンを省略、あるいは見え難くして、前記吹出し口の意匠を従来と比べて斬新なものにできるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、空調装置本体部から送風ダクトを通って送られてきた空気をインストルメントパネルに設けられた吹出し口から車室内空間に吹出すように構成された乗用車の空調装置であって、前記送風ダクトと前記吹出し口との間には、その送風ダクトと前記吹出し口とをつなぐ送風通路の形状を変えて前記吹出し口から吹出す空気の方向を調整可能な風向調整機構が設けられており、前記風向調整機構は、前記吹出し口の周縁上側に一端側が上下回動可能に連結された第1送風通路上板と、前記吹出し口の周縁下側に一端側が上下回動可能に連結された第1送風通路下板と、前記送風ダクトの下流端位置の周縁上側に一端側が上下回動可能に連結された第2送風通路上板と、前記送風ダクトの下流端位置の周縁下側に一端側が上下回動可能に連結された第2送風通路下板と、前記第1送風通路上板の他端側と第2送風通路上板の他端側とを上下回動可能な状態で連結するとともに、第1送風通路下板の他端側と第2送風通路下板の他端側とを上下回動可能な状態で連結する連結部材と、前記連結部材が上方、あるいは下方に移動するように、前記第1送風通路上板、第2送風通路上板、第1送風通路下板、及び第2送風通路下板を上下回動させる上下回動機構とを有することを特徴とする。
【0007】
本発明によると、送風ダクトと吹出し口との間に設けられた送風通路の形状を変えて前記吹出し口から吹出す空気の方向を調整する。
即ち、上下回動機構により第1送風通路上板、第2送風通路上板等を上回動させて連結部材を上方に移動させることで、送風通路は上に凸となるように山形に折れ曲がり、吹出し口から吹出される空気の方向は下向きとなる。
逆に、上下回動機構により第1送風通路上板、第2送風通路上板等を下回動させて連結部材を下方に移動させることで、送風通路は下に凸となるようにV字形に折れ曲がり、吹出し口から吹出される空気の方向は上向きとなる。
このため、従来のように、インストルメントパネルの吹出し口に風向調整用のフィン等を設ける必要がなくなり、その吹出し口を開口のみで形成することが可能になる。これにより、インストルメントパネルの吹出し口の形状を従来と比べて大幅に変更できるようになり、インストルメントパネルの吹出し口の意匠を斬新なものにできる。
【0008】
請求項2の発明によると、風向調整機構は、送風通路を構成する壁材として、前記吹出し口に連結される吹出し側部と、前記送風ダクトに連結される送風ダクト側部と、前記吹出し側部と前記送風ダクト側部とを連結する中間部とを連続して備えており、前記吹出し側部が前記吹出し口の軸線に対して角度変化する動作に対して前記送風ダクト側部と中間部とが連動し、前記送風通路の形状が変化する構成であることを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明によると、第1送風通路上板の下面側、及び/又は、第1送風通路下板の上面側には、吹出し口から吹出す空気を左、あるいは右方向に導く羽根が設けられていることを特徴とする。
このように、羽根が第1送風通路上板の下面側、及び/又は、第1送風通路下板の上面側に設けられているため、外部から羽根が見え難くなる。このため、前記羽根が吹出し口の意匠に影響を与えない。
【0012】
請求項4の発明によると、吹出し口から吹出す空気を左方向に導く左羽根が前記第1送風通路上板の下面、あるいは第1送風通路下板の上面のいずれか一方に設けられて、板に沿う倒伏位置と前記板に対して起立する起立位置間で回動可能に構成されており、前記吹出し口から吹出す空気を右方向に導く右羽根が前記第1送風通路上板の下面、あるいは第1送風通路下板の上面のいずれか他方に設けられて、前記倒伏位置と前記起立位置間で回動可能に構成されており、前記左羽根と右羽根とは、一方が倒伏位置にあるときに、他方が倒伏位置と起立位置間で回動できるように構成されていることを特徴とする。
このため、例えば、倒伏位置と起立位置間における左羽根の傾斜角度を調整することで中央に対する左方向の空気の吹出し量を調整し、右羽根の傾斜角度を調整することで中央に対する右方向の空気の吹出し量を調整することが可能になる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、乗用車のインストルメントパネルにおける送風の吹出し口のフィンを省略、あるいは見え難くできるため、前記吹出し口の意匠を斬新なものにできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態1に係る空調装置を備える乗用車のインストルメントパネルの左半分を表す模式斜視図である。
図2図1のII-II矢視断面図である。
図3】前記乗用車の空調装置の風向調整機構を表す模式斜視図である。
図4】前記乗用車の空調装置の風向調整機構を表す模式斜視図である。
図5】前記風向調整機構の上下回動機構を表す側面図である。
図6】前記上下回動機構の上下回動ダイヤルを表す側面図である。
図7】前記風向調整機構の第1送風通路上板の模式平面図である。
図8図7のVIII-VIII矢視断面図である。
図9】前記風向調整機構の第1送風通路下板の模式平面図である。
図10図9のX-X矢視断面図である。
図11】羽根回動部の模式図である。
図12】従来の空調装置を備える乗用車のインストルメントパネルを表す模式斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施形態1]
以下、図1から図11に基づいて本発明の実施形態1に係る乗用車の空調装置について説明する。
なお、図中に示す前後左右、及び上下は、乗用車の前後左右、及び上下に対応している。
【0016】
<乗用車10のインストルメントパネル20の概要について>
本実施形態に係る乗用車10の空調装置30について説明する前にインストルメントパネル20の概要について説明する。
乗用車10のインストルメントパネル20は、図1に示すように、フロントウィンドウ12の下側で車室の前席正面に位置するパネルであり、各メータやナビゲーションシステムのモニター、グローブボックス、助手席のエアバック等が装備されている。
インストルメントパネル20の左右両側には、斜め横方向に延びる溝状の凹部22が形成されており、その凹部22の底部分に、図2図1のII-II矢視断面図)に示すように、外から見え難い状態で空調装置30のスリット状の空気吹出し口32が設けられている。
なお、図1では、運転席側の凹部22、及び空気吹出し口32(以下、吹出し口32という)は省略されている。
【0017】
<空調装置30の概要について>
空調装置30は、車室内、あるいは室外から供給された空気の温度、湿度、空気清浄度等を調整する空調装置本体部(図示省略)を備えている。そして、前記空調装置本体部から送風ダクト34を通って送られてきた空調後の空気(送風)をインストルメントパネル20の吹出し口32から車室内空間に吹出せるように構成されている。
空調装置30は、図2に示すように、送風ダクト34の下流端位置34wと吹出し口32との間で、空気の吹出し方向を調整する風向調整機構40を備えている。
【0018】
<風向調整機構40について>
風向調整機構40は、図3図5等に示すように、送風ダクト34と吹出し口32とをつなぐ送風通路42の形状を変えて前記吹出し口32から吹出す空気の方向を調整する機構である。
風向調整機構40は、箱形のハウジング41を備えている。ハウジング41の一端側(後端側)には、送風通路42の吹出し側開口42hが形成されており、その吹出し側開口42hがインストルメントパネル20の吹出し口32に接続されるようになっている(図2図5参照)。また、ハウジング41の他端側(前端側)には、送風通路42のダクト側開口42dが形成されており、そのダクト側開口42dが送風ダクト34の下流端位置34wに接続されている。
また、前記ハウジング41内には、送風通路42を構成する第1送風通路上板43、第1送風通路下板44、第2送風通路上板45、第2送風通路下板46、及び枠状の連結通路47が収納されている。
【0019】
第1送風通路上板43は、図5等に示すように、送風通路42の下流側の天井板を構成する平板であり、その第1送風通路上板43の一端側(後端側)がハウジング41の吹出し側開口42hの上辺に連結ピン43pと貫通穴(図番省略)とにより上下回動可能な状態で連結されている。そして、第1送風通路上板43の他端側(前端側)が連結通路47の後側上辺に同じく連結ピン43pと貫通穴(図番省略)とにより上下回動可能な状態で連結されている。
第1送風通路下板44は、送風通路42の下流側の底板を構成する平板であり、その第1送風通路下板44の一端側(後端側)がハウジング41の吹出し側開口42hの下辺に連結ピン44pと貫通穴とにより上下回動可能な状態で連結されている。そして、第1送風通路下板44の他端側(前端側)が連結通路47の後側下辺に同じく連結ピン44pと貫通穴とにより上下回動可能な状態で連結されている。
即ち、第1送風通路上板43と第1送風通路下板44とが本発明の吹出し側部に相当する。また、ハウジング41の吹出し側開口42hの上辺が本発明における吹出し口の周縁上側に相当し、ハウジング41の吹出し側開口42hの下辺が本発明における吹出し口の周縁下側に相当する。
【0020】
第2送風通路上板45は、図5等に示すように、送風通路42の上流側の天井板を構成する平板であり、その第2送風通路上板45の一端側(前端側)がハウジング41のダクト側開口42dの上辺に連結ピン45pと長穴45hとにより前後スライド可能、かつ上下回動可能な状態で連結されている。そして、前記第2送風通路上板45の他端側(後端側)が連結通路47の前側上辺に連結ピン45pと長穴47hとにより前後スライド可能、かつ上下回動可能な状態で連結されている。
第2送風通路下板46は、送風通路42の上流側の底板を構成する平板であり、その第2送風通路下板46の一端側(前端側)がハウジング41のダクト側開口42dの下辺に連結ピン46pと長穴46hとにより前後スライド可能、かつ上下回動可能な状態で連結されている。そして、前記第2送風通路下板46の他端側(後端側)が連結通路47の前側下辺に連結ピン46pと長穴47jとにより前後スライド可能、かつ上下回動可能な状態で連結されている。
即ち、第2送風通路上板45と第2送風通路下板46とが本発明の送風ダクト側部に相当する。また、ハウジング41のダクト側開口42dの上辺が本発明における送風ダクトの下流端位置の周縁上側に相当し、ハウジング41のダクト側開口42dの下辺が本発明における送風ダクトの下流端位置の周縁下側に相当する。また、連結通路47が本発明の中間部及び連結部材に相当する。
【0021】
上記構成により、送風ダクト34とインストルメントパネル20の吹出し口32とは、上下に変形が可能な送風通路42によってつながれるようになる。
前記ハウジング41の左外側には、図5図6に示すように、手動操作により第1送風通路上板43をハウジング41の吹出し側開口42hの上辺(連結ピン43p)回りに上下回動させて、前記送風通路42の形状を変える上下回動機構50が設けられている。
【0022】
<上下回動機構50について>
上下回動機構50は、上下回動ダイヤル52と、その上下回動ダイヤル52と第1送風通路上板43とを連結するピン43x、及び長穴52eとを備えている。
上下回動ダイヤル52は円板状のダイヤルであり、その外周面に滑り止め用として浅いギザギザ溝であるローレットが形成されている。上下回動ダイヤル52は、ハウジング41の左側面の横軸52pに回転可能な状態で装着されており、その上下回動ダイヤル52の外周面の一部が、図1に示すように、インストルメントパネル20のダイヤル用開口25から外側に突出している。このため、上下回動ダイヤル52の外周面の突出部分を指で上方、あるいは下方に押圧するとで、上下回動ダイヤル52を横軸52p(回転中心)回りに上下回動させることが可能になる。
上下回動ダイヤル52と第1送風通路上板43とを連結するピン43xは、図5等に示すように、第1送風通路上板43の左端面に設けられており、ハウジング41の左側面の開口(図示省略)からハウジング41の外に突出している。そして、図6に示すように、上下回動ダイヤル52の形成された長穴52eに挿入されている。即ち、ピン43xが長穴52eに挿入されることで、上下回動ダイヤル52と第1送風通路上板43とが回転方向に係合するようになる。
【0023】
これにより、上下回動ダイヤル52が上下方向に回転操作されると、上下回動ダイヤル52の回転力を受けて第1送風通路上板43がハウジング41の吹出し側開口42hの上辺(連結ピン43p)を中心にして上下に回動するようになる。そして、第1送風通路上板43の上下回動によって、その第1送風通路上板43と連結通路47を介して連結されている第1送風通路下板44、第2送風通路上板45、及び第2送風通路下板46が共に回動するようになる。
なお、第1送風通路上板43、第1送風通路下板44、第2送風通路上板45、及び第2送風通路下板46の回動に伴う送風通路42の長さ寸法変化分は、連結ピン45p,46pと長穴45h,46h,47h,47jの部分で吸収されるようになる。
また、連結通路47の左側面には、図3図4に示すように、その左側面に対して直角に突出するガイドピン47pが設けられており、そのガイドピン47pがハウジング41の左側面に形成された円弧状のガイド長穴41e(点線参照)に挿入されている。ガイド長穴41eは、第1送風通路上板43と第1送風通路下板44との上下回動に伴う連結通路47の移動軌跡に合わせて縦向き円弧状に形成されている。このため、連結通路47は、ガイドピン47pとガイド長穴41eの働きで、第1送風通路上板43と第1送風通路下板44との上下回動により、上方、あるいは下方に移動するようになる。
前記第1送風通路上板43と第1送風通路下板44とには、図7図10に示すように、インストルメントパネル20の吹出し口32から吹出される空気を左右方向に導く左羽根62、及び右羽根64が設けられている。さらに、ハウジング41には、左羽根62、及び右羽根64を回動させるための羽根回動部65が設けられている。
【0024】
<羽根62,64、及び羽根回動部65について>
第1送風通路上板43の下面側には、図7図8に示すように、複数枚(図では4枚)の右羽根64が板に沿う倒伏位置と、板に対して起立する起立位置との間で回動可能なように取付けられている。また、第1送風通路下板44の上面側には、図9図10に示すように、複数枚(図では4枚)の左羽根62が同じく倒伏位置と起立位置間で回動可能なように取付けられている。
右羽根64は、吹出し口32から吹出される空気を斜め右方向に導く羽根であり、図7に示すように、下流側が徐々に右寄りになるように右方向に傾斜した状態で第1送風通路上板43の下面に配置されている。右羽根64の回動中心側端面には回転中心軸64pが設けられており、その回転中心軸64pが第1送風通路上板43の下面に設けられた軸受け部43jによって回転可能に支持されている。これにより、右羽根64は、回転中心軸64pを中心にして倒伏位置と起立位置間で回動が可能になる。さらに、各々の右羽根64は、互いに連動するように、各々の右羽根64の前端中央が連結バー64bにより相対回動可能な状態で連結されている。このため、一枚の右羽根64に対して回転力を付与することで、全ての右羽根64が同時に回動するようになる。また、倒伏位置と起立位置間における右羽根64の傾斜角度を調整することで中央方向に対する右方向の空気の吹出し量を調整することが可能になる。
【0025】
左羽根62は、吹出し口32から吹出される空気を斜め左方向に導く羽根であり、図9に示すように、下流側が徐々に左寄りになるように左方向に傾斜した状態で第1送風通路下板44の上面に配置されている。左羽根62の回動中心側端面には回転中心軸62pが設けられており、その回転中心軸62pが第1送風通路下板44の上面に設けられた軸受け部44jによって回転可能に支持されている。これにより、左羽根62は、回転中心軸62pを中心にして倒伏位置と起立位置間で回動が可能になる。さらに、各々の左羽根62は、互いに連動するように、各々の左羽根62の前端中央が連結バー62bにより相対回動可能な状態で連結されている。このため、一枚の左羽根62に対して回転力を付与することで、全ての左羽根62が同時に回動するようになる。また、倒伏位置と起立位置間における左羽根62の傾斜角度を調整することで中央方向に対する左方向の空気の吹出し量を調整することが可能になる。
【0026】
左羽根62、及び右羽根64を回動させる羽根回動部65は、図11に示すように、モータ65mの回転力を受けて正転、あるいは逆転可能に構成された中央歯車66と、左羽根62の回転中心軸62pと伝達軸67jを介して連結された左羽根用歯車67と、右羽根64の回転中心軸64pと伝達軸68jを介して連結された右羽根用歯車68とから構成されている。前記中央歯車66は、歯車部分66wと欠歯部分66nとを備えている。そして、中央歯車66が原位置(図11に示す位置)から正転するときに、その中央歯車66の歯車部分66wが右羽根用歯車68と噛合するようになる。また、前記中央歯車66が原位置から逆転するときに、その中央歯車66の歯車部分66wが左羽根用歯車67と噛合するようになる。ここで、中央歯車66が原位置(図11に示す位置)に保持されている状態では、左羽根62と右羽根64とは共に倒伏位置に保持されている。
【0027】
これにより、右方向スイッチ(図示省略)が操作されてモータ65mが正転し、中央歯車66が原位置から正転すると、中央歯車66の回転力が右羽根用歯車68、伝達軸68jを介して右羽根64に伝わり、右羽根64が倒伏位置から起立位置まで回動するようになる。なお、このとき、左羽根62は倒伏位置に保持されている。そして、右羽根64が起立位置にある状態で、左方向スイッチ(図示省略)が操作されて、モータ65mが逆転し、中央歯車66が原位置まで戻される過程で、右羽根64は起立位置から倒伏位置まで回動するようになる。
さらに、左方向スイッチにより、中央歯車66が原位置から逆転すると、中央歯車66の回転力が左羽根用歯車67、伝達軸67jを介して左羽根62に伝わり、左羽根62が倒伏位置から起立位置まで回動するようになる。なお、このとき、右羽根64は、倒伏位置に保持されている。そして、左羽根62が起立位置にある状態で、右方向スイッチ(図示省略)が操作されてモータ65mが正転し、中央歯車66が原位置まで戻される過程で、左羽根62は起立位置から倒伏位置まで回動するようになる。
【0028】
<空調装置30の風向調整機構40の動作について>
次に、空調装置30の風向調整機構40の動作について説明する。
先ず、インストルメントパネル20のダイヤル用開口25から外側に突出している上下回動ダイヤル52の外周面を上側に押圧すると、上下回動ダイヤル52は、図5図6において、横軸52pを中心に左回転するようになる。これにより、上下回動ダイヤル52の回転力が長穴52e、ピン43xを介して第1送風通路上板43に伝わり、第1送風通路上板43はハウジング41の吹出し側開口42hの上辺(連結ピン43p)を中心にして下方に回動するようになる。前述のように、第1送風通路上板43は、連結通路47を介して第1送風通路下板44、第2送風通路上板45、及び第2送風通路下板46に連結されている。このため、第1送風通路上板43が吹出し側開口42hの上辺(連結ピン43p)を中心に下方に回動すると、連結通路47が下方に移動するように、第1送風通路下板44、第2送風通路上板45、及び第2送風通路下板46が回動するようになる。即ち、第1送風通路上板43、第1送風通路下板44、連結通路47、第2送風通路上板45、及び第2送風通路下板46からなる送風通路42は、図4に示すように、下に凸となるようにV字形に折れ曲がるように変形する。この結果、インストルメントパネル20の吹出し口32から吹出される空気の方向は上向きとなる。
【0029】
逆に、上下回動ダイヤル52の外周面を下側に押圧し、上下回動ダイヤル52を、図5図6において、右回転させると、第1送風通路上板43が吹出し側開口42hの上辺(連結ピン43p)を中心に上方に回動する。そして、第1送風通路上板43の回動に伴って、連結通路47が上方に移動するように、第1送風通路下板44、第2送風通路上板45、及び第2送風通路下板46が回動するようになる。即ち、第1送風通路上板43、第1送風通路下板44、連結通路47、第2送風通路上板45、及び第2送風通路下板46からなる送風通路42は、図3に示すように、上に凸となるように山形に折れ曲がるようになる。この結果、インストルメントパネル20の吹出し口32から吹出される空気の方向は下向きとなる。
さらに、前記右方向スイッチ、あるいは左方向スイッチを操作することで羽根回動部65のモータ65mが正転、あるいは逆転し、右羽根64、あるいは左羽根62が倒伏位置と起立位置間で回動して、吹出し口32から吹出される空気が右方向、あるいは左方向に導かれるようになる。
【0030】
<本実施形態に係る空調装置30の長所について>
本実施形態に係る空調装置30によると、送風ダクト34とインストルメントパネル20の吹出し口32との間に設けられた送風通路42の形状を変えて吹出し口32から吹出す空気の方向を調整する。このため、従来のように、インストルメントパネル20の吹出し口32に風向調整用のフィン等を設ける必要がなくなり、その吹出し口32を開口のみで形成することが可能になる。これにより、インストルメントパネル20の吹出し口32の形状を従来と比べて大幅に変更できるようになり、インストルメントパネル20の吹出し口32の意匠を斬新なものにできる。
また、風向きを右方向に導く右羽根64が第1送風通路上板43に設けられており、風向きを左方向に導く左羽根62が第1送風通路下板44に設けられている。このため、外部から左右の羽根62,64が見え難くなり、羽根62,64が吹出し口32の意匠に影響を与えることがなくなる。
また、倒伏位置と起立位置間における左羽根62の傾斜角度を調整することで中央に対する左方向の空気の吹出し量を調整し、右羽根64の傾斜角度を調整することで中央に対する右方向の空気の吹出し量を調整することが可能になる。
【0031】
<変更例>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、送風通路42を第1送風通路上板43、第1送風通路下板44、第2送風通路上板45、第2送風通路下板46、及び連結通路47とから構成する例を示した。しかし、連結通路47を省略して、第1送風通路上板43と第2送風通路上板45とをヒンジ等で連結し、同じく第1送風通路下板44と第2送風通路下板46とをヒンジ等で連結して、上下回動機構50により第1送風通路上板43と第1送風通路下板44とを共に上下回動させる構成でも可能である。
さらに、送風通路42を可撓性の筒状体により構成し、送風通路42の途中位置を上下動させて、その送風通路42の形状を山形、あるいは略V字形に変形させ、送風を下向き、あるいは上向きにする構成でも可能である。また、送風通路42の途中位置を左右に移動させて、送風を左向き、あるいは右向きにすることも可能である。
さらに、上下回動機構50において手動により第1送風通路上板43等を回動させる上下回動ダイヤル52を使用する例を示したが、上下回動機構50の駆動源としてモータを使用し、モータの回転力で第1送風通路上板43等を上下回動させるようにすることも可能である。
【符号の説明】
【0032】
10・・・・乗用車
20・・・・インストルメントパネル
30・・・・空調装置
32・・・・吹出し口
34・・・・送風ダクト
40・・・・風向調整機構
41・・・・ハウジング
42・・・・送風通路
43・・・・第1送風通路上板(吹出し側部)
44・・・・第1送風通路下板(吹出し側部)
45・・・・第2送風通路上板(送風ダクト側部)
46・・・・第2送風通路下板(送風ダクト側部)
47・・・・連結通路(中間部、連結部材)
50・・・・上下回動機構
52・・・・上下回動ダイヤル
62・・・・左羽根
64・・・・右羽根
図1
図2
図3
図4
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図6
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図12