【実施例】
【0021】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車体のフロアパネル構造およびその設計方法を示すが、まず、
図1を参照して、車体構造について概略的に説明する。なお、図中、矢印Fは車両の前方を示す。
図1はリヤサイドフレームアッパおよびリヤクロスメンバアッパ(いわゆるNo.4クロスメンバアッパ)を省略した状態の斜視図であって、
図1において、エンジンルームと車室とを前後方向に仕切るダッシュロアパネル1を設け、このダッシュロアパネル1の下部後端には、車両後方に向けて略水平に延びるフロアパネル2を連結固定している。
このフロアパネル2の車幅方向中央部には、車室内へ突出して車両の前後方向に延びるトンネル部3を一体または一体的に形成している。
【0022】
上述のフロアパネル2の左右両端部には、サイドシルインナ4とサイドシルアウタとを備えたサイドシル5を接合固定している。このサイドシル5は、サイドシルインナ4とサイドシルアウタとの間に、車両の前後方向に延びるサイドシル閉断面が形成された車体剛性部材である。
また、上述のフロアパネル2には、トンネル部3を跨いで左右のサイドシルインナ4,4間を車幅方向に連結するフロアクロスメンバ6(いわゆるNo.2クロスメンバ)を設け、このフロアクロスメンバ6とフロアパネル2との間には、車幅方向に延びる閉断面を形成して、下部車体剛性の向上を図っている。
上述のフロアクロスメンバ6に対して車両後方に離間した位置には、トンネル部3の縦壁と左右のサイドシルインナ4,4とを車幅方向に連結する左右のフロアクロスメンバ7,7を設け、このフロアクロスメンバ7とフロアパネル2との間には、車幅方向に延びる閉断面を形成して、下部車体剛性の向上を図っている。
【0023】
ここで、前側のフロアクロスメンバ6と後側のフロアクロスメンバ7とは、互いに平行に配設されている。
上述のフロアパネル2の後端部にはキックアップ部8を連結している。このキックアップ部8は上下方向に延びる縦壁8aと、該縦壁8aの上端から車両後方に延びる略水平部8bとを備えて、車幅方向に延びる部材である。
上述のトンネル部3は、ダッシュロアパネル1とキックアップ部8との間にわたって車両の前後方向に延びるように形成されている。
一方、上述のキックアップ部8の後部にはリヤシートパン9を介してリヤフロアパネル10(以下単に、リヤフロアと略記する)を連結固定している。
【0024】
図2は
図1の要部拡大斜視図であって、車体のフロアパネル構造を示すものである。
図3は
図2のA‐A線矢視に沿う車幅方向断面図、
図4は
図2のB‐B線矢視に沿う車両前後方向断面図である。
図2,
図4に示すように、リヤフロア10の車両前側には、接合部10Fを介してリヤクロスメンバ11(いわゆるNo.4クロスメンバ)を接合固定している。
このリヤクロスメンバ11は断面ハット形状のリヤクロスメンバアッパ12と、断面逆ハット形状のリヤクロスメンバロア13とを備えて、車幅方向に延びる車体強度部材であり、リヤフロア10とリヤクロスメンバアッパ12との間には車幅方向に延びるリヤクロス閉断面14を形成すると共に、リヤフロア10とリヤクロスメンバロア13との間にも車幅方向に延びるリヤクロス閉断面15を形成し、上下の各リヤクロス閉断面14,15を、リヤフロア10を介して対向させ、所謂二重閉断面構造と成している。
【0025】
図2,
図4に示すように、リヤフロア10の車両後側には、接合部10Rを介してリヤエンドメンバ16を接合固定している。
このリヤエンドメンバ16はリヤエンドパネル17との両者で、車幅方向に延びるリヤエンド閉断面18を形成するもので、この実施例では、接合部10Rをリヤエンドパネル17に接合固定し、このリヤエンドパネル17の前部にリヤエンドメンバ16を結合固定しているが、リヤエンドパネル17とリヤエンドメンバ16との前後位置関係は、この逆の構成、つまり、リヤエンドパネル17が前側に、リヤエンドメンバ16が後側に位置する構成であってもよい。
【0026】
図2,
図3に示すように、リヤフロア10の車幅方向の左右両側には、接合部10LE,10RIを介してリヤサイドフレーム19,19を接合固定している。
このリヤサイドフレーム19は断面ハット形状のリヤサイドフレームアッパ20と、断面逆ハット形状のリヤサイドフレームロア21とを備えて、車両の前後方向に延びる車体強度部材であり、上述の接合部10LE,10RIを介してリヤサイドフレームアッパ20とリヤサイドフレームロア21とを接合固定することで、車両の前後方向に延びるリヤサイド閉断面22を形成して、車体側部剛性の向上を図っている。
要するに、
図2〜
図4に示すように、リヤフロア10の周縁部を囲むように該リヤフロア10の車両前側、後側および車幅方向の左右両側に、リヤクロスメンバ11、リヤエンドメンバ16およびリヤサイドフレーム19,19を配設したものである。
上述のリヤフロア10は、
図2〜
図4に示すように、少なくとも車幅方向両側に配設されたフレーム部材としてのリヤサイドフレーム19,19と間隔を隔てて下方に突出して形成された物品格納部としてのスペアタイヤパン23を備えている。
【0027】
この実施例では、上述のリヤフロア10は該リヤフロア10の周縁部を囲む全てのフレーム部材であるリヤクロスメンバ11、リヤエンドメンバ16および左右のリヤサイドフレーム19,19と間隔を隔てて下方に段下げ形成されたスペアタイヤパン23を備えている。
そして、上述のスペアタイヤパン23は、その底部を形成する物品格納底部としてのタイヤ格納底部24と、スペアタイヤパン23の壁部(周壁部)を形成する物品格納壁部としてのタイヤ格納壁部25と、を備えている。
【0028】
図2〜
図4に示すように、スペアタイヤパン23のタイヤ格納底部24の中央部上面には、物品支持手段としてのタイヤ支持ブラケット26が結合固定されている。
図3,
図4に示すように、上述のスペアタイヤパン23に格納される物品としてのスペアタイヤ27は、ホイールディスク28と、リム29と、タイヤ30とを備えている。
【0029】
一方、上述のリヤフロア10は、
図3に示すように、タイヤ格納壁部25の上端部25aと上述の接合部10LE,10RIとを連結する車幅方向左右両側の第1連結部31,31と、
図4に示すように、車両前側のフレーム部材であるリヤクロスメンバ11とタイヤ格納壁部25の前側上端部25bとの間を連結する第2連結部32と、同図に示すように、車両後側のフレーム部材であるリヤエンドメンバ16とタイヤ格納壁部25の後側上端部25cとの間を連結する第3連結部33と、を備えている。
【0030】
図3に示すように、タイヤ格納壁部25の上端部25aは、リヤフロア10の車幅方向両側に位置するフレーム部材としてのリヤサイドフレーム19との接合部10LE,10RIよりも上下方向で下方に位置しており、しかも
、左右両方の第1連結部31,31の大部分が下方に傾斜した平面または曲面(図示実施例では平面)で形成されている。
詳しくは、
図3に示すように、車幅方向断面における上述の第1連結部31と、上述の接合部10LE,10RIを通る水平線HORと、のなす角度θが12度以上25度以下の範囲に設定されている。
このように、上記角度θを12〜25度の範囲内に設定することで、物品格納スペースを確保しつつ、スペアタイヤパン23乃至リヤフロア10の剛性の確保を図るものである。
すなわち、上記角度θが12度未満の場合には、第1連結部31が過度に水平状態に近づいて、充分な剛性が確保できず、逆に上記角度θが25度を超過する場合には、剛性は確保できるものの、下方傾斜が過度に急角度となってスペアタイヤパン23の物品格納スペースが充分に確保できなくなるので、上記角度θを12〜25度の範囲とすることで、剛性の確保と、物品格納スペースの確保との両立を図るものである。
【0031】
上述のスペアタイヤパン23は、リヤサイドフレーム19と間隔を隔てて下方に段下げ形成されるのみならず、車両前側のフレーム部材であるリヤクロスメンバ11と間隔を隔てて下方に突出して形成されており、
図4に車体前後方向断面で示すように、リヤクロスメンバ11の後部とタイヤ格納壁部25の前側上端部25bとの水平方向距離L2よりも、リヤエンドメンバ16(この実施例では、接合部10R参照)とタイヤ格納壁部25の後側上端部25cとの水平方向距離L1が短く設定されている。
つまり、L2>L1の関係式が成立するように構成されている。換言すれば、上述の第2連結部32の水平方向距離L2が、第3連結部33の水平方向距離L1よりも長くなるように構成したものであって、これにより、共振周波数による振動モードの腹(振幅の大きい部分)が車両前側となるように調整することができ、周波数に対する感度が高い車両後側に共振周波数による振動モードの腹が位置することを回避するように構成している。
また、上述の第2連結部32を曲面、詳しくは、上方に凸形となる曲形に形成し、面剛性をもたせて、パネル共振周波数が低下するのを防止すべく構成している。
【0032】
図5は
図3のスペアタイヤパン23におけるタイヤ格納底部24の拡大図(但し、図示の便宜上、曲面の曲率を誇張して図示している)であって、
図5の(a)の実施形態では、タイヤ格納底部24の中央部が上方に突出する曲面に形成されており、
図5の(b)の実施形態では、タイヤ格納底部24の中央部が下方に突出する曲面に形成されていて、何れの実施形態においても、タイヤ格納底部24を平面で構成するものに対して面剛性の向上を図ることができる。
さらに、
図5の(a)で示すタイヤ格納底部24の中央部が上方に突出する曲面の方が、
図5の(b)に示すタイヤ格納底部24の中央部が下方に突出する曲面に対して、剛性が高くなり、共振周波数も高くなることから、
図5の(b)の構造に対して、
図5の(a)の構造の方が、さらに好ましい。なお、これらの各曲面は球面で形成してもよい。
また、上述のタイヤ格納底部24、第1連結部31、第2連結部32、第3連結部33は基本面が特許請求の範囲に記載した条件を満たす曲面や平面であればよく、この基本面に対して、例えば、ビードや孔部などの部分的な変形部分が設けられていてもよい。
【0033】
図6は角度θ(
図3参照)に対するスペアタイヤパン23の1次共振周波数(但し、角度0度からの増加分を示す)の実測値を示す特性図である。
図6において、横軸には、車幅方向断面における第1連結部31と、接合部10LE,10RIを通る水平線HORと、のなす角度θをとり、縦軸には、角度0度からの増加分としての共振周波数をとっている。
【0034】
特性aは、
図4に仮想線で示すNo.4,5クロスメンバ34がなく、かつ角度θ(
図3参照)を有するセダンタイプの本実施例の特性である。特性bは、
図4に仮想線で示すNo.4,5クロスメンバ35がなく、かつ角度θ(
図3参照)を有するSUV(Sport Utility Vehicle、スポーツ多目的車)タイプの本実施例の特性である。
【0035】
特性cは、
図4に仮想線で示すNo.4,5クロスメンバ34がなく、かつ角度θ=0度で第1連結部が水平な従来の特性である。特性dは、
図4に仮想線で示すNo.4,5クロスメンバ34を有し、かつ角度θ=0度で第1連結部が水平のセダンタイプの従来の特性である。特性eは、
図4に仮想線で示すNo.4,5クロスメンバ35を有し、かつ角度θ=0度で第1連結部が水平のSUVタイプの従来の特性である。
【0036】
特性c,d,eの対比から明らかなように、No.4,5クロスメンバ34,35を設けて、剛性を高めることにより、No.4,5クロスメンバ34,35がない特性cから特性d,eの如く共振周波数を高めることができるが、従来構造ではNo.4,5クロスメンバ34、またはNo.4,5クロスメンバ35を用いるので、この分、車体重量が増加する。
【0037】
これに対して、本実施例の特性a,bから明らかなように、セダンタイプ、SUVタイプの何れにおいても、上記角度θを順次大きくしていくと、これに対応して剛性が高まるので、共振周波数も順次高くなり、角度θが12度〜25度の範囲では、No.4,5クロスメンバ34,35を用いる従来構造の特性d,eと略同等またはそれ以上の共振周波数を、No.4,5クロスメンバ34,35なしで得ることができた。
また、特性a,bから明らかなように、角度θを少し変更するだけで、共振周波数の調整が容易となる。要するに、本実施例では、共振周波数コントロールと軽量化とを両立することができ、NVH性能の改善を図ることができる。
【0038】
つぎに、
図7,
図8を参照して、上記実施例の車体のフロアパネル構造を設計する車体のフロアパネル構造の設計方法について説明する。
図7は設計方法を示す工程図であって、ステップS1(振動系特定工程)で、スペアタイヤパン23(リヤフロア10)と共振を引き起こす振動系を特定する。
上述の共振を引き起こす振動系としては、車室内の空洞を形成する部材であるリフトゲート、ルーフパネル、カウル部、フロントヘッダ、フロントウインドガラスなどの他部材、空洞共鳴、パワートレイン系起振力やタイヤ振動入力などの振動入力源が挙げられる。
【0039】
次にステップS2(共振周波数および振動入力の特定工程)で、実車テストやシミュレーション解析により、共振周波数と、振動入力の大きさとを、複数の振動系ごとに特定する。
【0040】
次にステップS3(周波数マップ作成工程)で、上記ステップS2において特定した共振周波数と振動入力の大きさとを基に、
図8に示す周波数マップ(MAP)を作成する。
図8は周波数マップ(MAP)の一例を示し、他部材A、他部材B、他部材C、振動入力源D、振動入力源Eのそれぞれに対応して共振周波数の帯域(矢印参照)と、()内に大、中、小で示す振動入力の大きさ、とを表わしたものである。
【0041】
次にステップS4(角度設定工程)で、車幅方向断面(
図3参照)における上記第1連結部31と上記接合部10LE,10RIを通る水平線HORとのなす角度θを、上述の振動系(他部材A,B,C、振動入力源D,E参照)の影響の少ない共振周波数となる角度に設定する。
つまり、
図8にスペアタイヤパン23の周波数領域を白抜き矢印で示すように、上述の振動系の周波数領域と重ならない、もしくは
、影響の小さい周波数となるように、上記角度θの値を求めるものである。
【0042】
このように、
図1〜
図6で示した実施例の車体のフロアパネル構造は、フロアパネル(リヤフロア10参照)と、該フロアパネル(リヤフロア10)の周縁部を囲むように該フロアパネルの車両前側、後側、および車幅方向の両側に配設され該フロアパネルに接合部10F,10R,10LE,10RIを介して接合された複数のフレーム部材(リヤクロスメンバ11、リヤエンドメンバ16、リヤサイドフレーム19参照)と、で構成された車体のフロアパネル構造であって、上記フロアパネル(リヤフロア10)は、少なくとも上記フレーム部材のうち車幅方向両側に配設されたフレーム部材(リヤサイドフレーム19,19参照)と間隔を隔てて下方に突出して形成された物品格納部(スペアタイヤパン23参照)と、上記物品格納部(スペアタイヤパン23)の底部を形成する物品格納底部(タイヤ格納底部24参照)と、上記物品格納部(スペアタイヤパン23)の壁部を形成する物品格納壁部(タイヤ格納壁部25参照)と、上記物品格納壁部(タイヤ格納壁部25)の上端部25aと上記接合部10LE,10RIとを連結する車幅方向両側の第1連結部31,31と、を有し、上記物品格納底部(タイヤ格納底部24)が上方または下方に突出する曲面(
図5参照)であり、上記物品格納壁部(タイヤ格納壁部25)の上端部25aが、上記フロアパネル(リヤフロア10)と上記車幅方向両側のフレーム部材(リヤサイドフレーム19)との接合部10LE,10RIよりも上下方向で下方に位置し、少なくとも一方の上記第1連結部31の大部分が、下方に傾斜した平面または曲面で形成されたものである(
図2〜
図5参照)。
【0043】
この構成によれば、物品格納壁部(タイヤ格納壁部25)の上端部25aが、フロアパネル(リヤフロア10)と車幅方向両側のフレーム部材(リヤサイドフレーム19)との接合部10LE,10RIよりも上下方向で下方に位置しており、少なくとも一方の第1連結部31の大部分が、下方に傾斜した平面または曲面で形成されているので、クロスメンバなどの他の部材を別途設けることなく物品格納部(スペアタイヤパン23)の剛性を上げることができる。
これにより、物品格納部(スペアタイヤパン23)の共振周波数コントロールと軽量化とを両立することができ、NVH性能のよい車体のフロアパネル構造を提供することができる。
また、両方の上記第1連結部31,31の大部分が、下方に傾斜した平面または曲面で形成されたものである(
図3参照)。
【0044】
この構成によれば、両方の第1連結部31,31の大部分を下方傾斜構造と成したので、物品格納部(スペアタイヤパン23)の剛性をさらに向上させることができると共に、共振周波数コントロールがより一層容易となる。
しかも、車幅方向断面における上記第1連結部31と、上記接合部10LE,10RIを通る水平線HORと、のなす角度θを、12度以上25度以下に設定したものである(
図3参照)。
【0045】
この構成によれば、次のような効果がある。
つまり、上記角度θが12度未満の場合には、充分な剛性が確保できず、逆に上記角度θが25度を超過する場合には物品格納部(スペアタイヤパン23)の格納スペースが適切な形状で確保できなくなったり、他のレイアウトとの兼ね合いで確保できなくなるので、上記角度θを12度以上25度以下と成すことで、物品格納スペースを確保しつつ、剛性の確保を図ることができる。
また、上記角度範囲は、角度の変更度合が小さくても剛性および共振周波数の大きな変更調整が可能な範囲であるため、他の性能やレイアウトへの影響を僅少とすることができる。
さらに、上記物品格納部(スペアタイヤパン23)が、上記車両前側のフレーム部材(リヤクロスメンバ11参照)と間隔を隔てて下方に突出して形成され、上記車両前側のフレーム部材(リヤクロスメンバ11)と上記物品格納壁部(タイヤ格納壁部25)の前側上端部25bとの水平方向距離L2よりも、上記車両後側のフレーム部材(リヤエンドメンバ16)と上記物品格納壁部(タイヤ格納壁部25)の後側上端部25cとの水平方向距離L1が短く設定されたものである(
図4参照)。
【0046】
この構成によれば、共振周波数による振動モードの腹(振幅の大きい部分)が車両前側となるように調整することができる。換言すれば、車両後側においては周波数に対する感度が高いので、共振周波数による振動モードの腹が車両後側となることを回避することができる。
また、上記車両前側のフレーム部材(リヤクロスメンバ11)と上記物品格納壁部(タイヤ格納壁部25)の前側上端部25bとの間を連結する第2連結部32を、曲面と成したものである(
図4参照)。
【0047】
この構成によれば、上述の第2連結部32を曲面と成して、面剛性をもたせたので、パネル共振周波数が低下するのを防止できる。因に、上記第2連結部を平面で形成した場合には、共振周波数が低下する。
加えて、上記物品格納部をタイヤ格納部(スペアタイヤパン23参照)と成したものである(
図3,
図4参照)。
【0048】
この構成によれば、タイヤ格納壁部25の上端部25aが、フロアパネル(リヤフロア10)と車幅方向両側のフレーム部材(リヤサイドフレーム19参照)との接合部10LE,10RIよりも上下方向で下方に位置しており、少なくとも一方の第1連結部31の大部分が、下方に傾斜した平面または曲面で形成されているので、クロスメンバなどの他の部材を別途設けることなくタイヤ格納部(スペアタイヤパン23)の剛性を上げることができる。
これにより、タイヤ格納部(スペアタイヤパン23)の共振周波数コントロールと軽量化とを両立することができ、NVH性能の改善を図ることができる。
【0049】
また、
図7,
図8で示した車体のフロアパネル構造の設計方法は、上記請求項1に記載の車体のフロアパネル構造を設計する車体のフロアパネル構造の設計方法であって、請求項1に記載の車体のフロアパネル(リヤフロア10参照)と共振を引き起こす振動系を特定する第一の工程(ステップS1参照)と、シミュレーション解析により上記振動系の共振周波数と振動入力の大きさとを特定する第二の工程(ステップS2参照)と、車幅方向断面(
図3参照)における上記第1連結部31と上記接合部10LE,10RIを通る水平線HORとのなす角度θを、上記振動系の影響の少ない共振周波数となる角度に設定する第三の工程(ステップS4参照)と、を備えたものである(
図7,
図8参照)。
【0050】
この構成によれば、第一の工程(ステップS1)で、車体のフロアパネル(リヤフロア10)と共振を引き起こす振動系を特定し、次に第二の工程(ステップS2)で、シミュレーション解析により上記振動系の共振周波数と振動入力の大きさとを特定し、次に第三の工程(ステップS4)で、車幅方向断面(
図3参照)における上記第1連結部31と上記接合部10LE,10RIを通る水平線HORとのなす角度θを、上記振動系の影響の少ない共振周波数となる角度に設定する。
この設計方法により、簡易であり、かつ車体形状等によらない汎用性の高い方法で共振周波数をコントロールすることができる。
【0051】
図9,
図10は車体のフロアパネル構造の他の実施例を示し、
図9はスペアタイヤパン23の車幅方向断面図、
図10は
図9の要部拡大断面図(但し、図示の便宜上、曲面の曲率を誇張して図示している)である。
図9,
図10に示すように、この実施例では、タイヤ格納底部24の全体が、なだらかに下方に突出する曲面または球面で形成されている。
このように構成しても、その他の構成、作用、効果については、先の実施例とほぼ同様であるから、
図9,
図10において、前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0052】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のフロアパネルは、上述の実施例のリヤフロア10に対応し、
以下同様に、
フロアパネルの周縁部を囲むフレーム部材は、リヤクロスメンバ11、リヤエンドメンバ16、リヤサイドフレーム19に対応し、
物品格納部は、スペアタイヤパン23に対応し、
物品格納底部は、タイヤ格納底部24に対応し、
物品格納壁部は、タイヤ格納壁部25に対応し、
タイヤ格納部は、スペアタイヤパン23に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【0053】
例えば、上記実施例においては、第1連結部の大部分が、下方に傾斜した平面または曲面で形成され、物品格納底部が上方または下方に突出する曲面で形成されるが、これらは、その基本面が曲面や平面であればよく、例えば、該基本面に対してビードや孔部などの部分的な変形構造を加えてもよい。
また、第2連結部は曲面のみに限定されるものではなく、傾斜した平面や、傾斜平面と補強ビードとの組合せ構造であってもよい。