(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を例えば自動車等の車両に搭載されるアナログ式の速度計に適用した場合について説明する。
【0010】
図1、
図2において、表示装置としてのアナログ式の速度計Dは、回路基板10と、この回路基板10に導通装着され回転軸20が前方に延びる駆動装置30と、回転軸20にて回動駆動される指針40と、この指針40の背後に位置して回路基板10上に配置される表示パネル50と、回路基板10と表示パネル50との間に配置されるケース体60と、指針40を照明する指針用光源70と、表示パネル50を照明する光源80と、表示パネル50の可視領域を定める見返し部材90とから構成されている。
【0011】
回路基板10は、例えばガラスエポキシ系基材に配線パターン(図示せず)を施した硬質回路基板からなり、指針用光源70と、光源80と、駆動装置3と各光源70、80とを駆動・制御する制御手段(図示せず)と、抵抗、コンデンサ等の各種回路部品とが前記配線パターンに導通接続されている。
【0012】
駆動装置30は、可動磁石式計器またはステッピングモータからなり、回転軸20が回路基板10を貫通するように、その主要部が回路基板10の背後に装着され、且つ半田付け等の適宜導通手段により前記配線パターン(前記制御手段)に電気接続される。
【0013】
指針40は、回転軸20の先端側に装着され、透光性合成樹脂からなる指示部41と、この指示部41の回転中心部外周を覆う遮光性合成樹脂からなる指針キャップ42とを備えている。
【0014】
指示部41は、表示パネル50の後述する表示部を指示するように線状に延び、また指針40の回転中心部には、背後に配置された指針用光源70から発せられる照明光を受光しその照明光を指示部41の先端側に反射導光する受光部43が形成されている。なお、指針40(指示部41)は、計測値(この場合、車両の速度)に基づいて表示パネル50上を回動するようになっている。
【0015】
表示パネル50は、
図3に示すように所定の間隙部51を有するように対向配置される一対の第1、第2のパネル体52、53を備え、この場合、第1のパネル体52の外形形状と第2のパネル体53の外形形状は、略同一形状となっている。
【0016】
間隙部51は、この場合、例えば数ミリ程度のクリアランス(空気層)として形成され、また第1、第2のパネル体52、53のうち、第1のパネル体52は指針40側(つまり指示部41と第2のパネル体53との間)に位置しているとともに第2のパネル体53は、ケース体60側(つまり第1のパネル体52とケース体60との間)に位置している。
【0017】
第1のパネル体52は、その母材となる透光性合成樹脂(または暗色系の半透光性合成樹脂)からなる第1の透光性基板52aの前面全体に、光透過性と光反射性とを有する第1のハーフミラー層(第1の半透光部)52bが蒸着等の手段を用いて施されている。例えば第1のハーフミラー層52bは、アルミニウム薄膜からなる反射膜として形成される。
【0018】
そして、第1のハーフミラー層52bの前面には、指示部41によって指示される速度数字や速度目盛等からなる表示部52cと、この表示部52cの背景を形成する遮光性の背景部52dとが設けられ、第1のハーフミラー層52bの前方側に設けられている表示部52cは、指示部41の回転軌道(作動範囲)に沿った円弧状の配列形状を有している。なお、表示部52cは、必要に応じて廃止してもよい。
【0019】
また、この場合、表示部52cの内側(つまり表示パネル50の中央部付近)には、指針キャップ42を取り巻くように、背景部52dの非形成領域となる略円形状の抜き部52eが設けられている。これに伴い、表示部52cと同様に第1のハーフミラー層52bの前方側に位置している背景部52dは、抜き部52eを包囲するようなリング状となっており、その内部に表示部52cが形成されている構成となる。
【0020】
なお、表示部52c並びに背景部52dは、表示部52cが例えば白色の透光性インクにより、背景部52dが例えば黒色の遮光性インクにより、それぞれ第1のハーフミラー層52bの前面に印刷形成される。
【0021】
そして、背景部52dが形成されない抜き部52e箇所においては、第1のハーフミラー層52bが部分的に露出しており、後述する光透過部を通じて導かれる光源80からの光を観察者側へと透過できるようになっている。ここで、前記光透過部と抜き部52eとの位置関係に着目すると、前記光透過部は、観察者側から表示パネル50を正視した際に、第1のハーフミラー層52bの直下(背後側)に位置していることになる。なお、
図2中、52fは、回転軸20と指針40との連結箇所に対応する貫通孔からなる第1の貫通部である。
【0022】
一方、第1のパネル体52と対をなす第2のパネル体53は、第1のパネル体52と同様に、その母材となる透光性合成樹脂(または暗色系の半透光性合成樹脂)からなる第2の透光性基板53aの前面全体に、光透過性と光反射性とを有する第2のハーフミラー層(第2の半透光部)53bが蒸着等の手段を用いて施されている。例えば第2のハーフミラー層53bは、アルミニウム薄膜からなる反射膜として形成される。
【0023】
そして、第2のハーフミラー層53bの背面には、光源80からの光を第2の透光性基板53aへと透過させる光透過層である光透過部53cと、光源80からの光を第2の透光性基板53aへと透過させない遮光層である遮光部53dとが設けられている。
【0024】
この場合、遮光部53dは、例えば黒色の遮光性インクにより、指針キャップ42の周囲(つまり表示パネル50の中央部付近)となる第2のハーフミラー層53bの背面箇所に印刷形成される。
【0025】
具体的には、遮光部53dは、表示パネル50の中央部付近から表示部52cの内側へと至る領域に対応する第2のハーフミラー層53bの背面箇所に略円形状にて形成され、また観察者側から表示パネル50を正視した際に、第2のハーフミラー層53bの背後側に位置する遮光部53dの周縁部分は背景部52dと重なっており、この遮光部53dの周縁部分の直下(背後側)となる回路基板10上に光源80が実装されている。
【0026】
つまり、観察者側から表示パネル50を正視した際に、
図2中、表示パネル50の中心点Pを中心として略円形状にて形成される遮光部53dの大きさは、中心点Pを中心として略円形状にて形成される抜き部52eの大きさよりも若干、大きくなっている。
【0027】
一方、光透過部53cは、遮光部53dを形成する遮光性インクを抜き印刷することにより、遮光部53dが形成されない略リング状の抜き印刷部分からなり、第2のハーフミラー層53bの背後側に位置している。また、この場合、光透過部53cは、観察者側から表示パネル50を正視した際に、
図3に示すように遮光部53dとこの遮光部53d内に形成された光透過部53cとは、表示部52cと重ならないように第2のハーフミラー層53bの背面に設けられている。
【0028】
なお、
図2中、53eは、回転軸20と指針40との連結箇所に対応する貫通孔からなる第2の貫通部であり、54は、各貫通部52f、53eの周囲であって、第1のパネル体52と第2のパネル体53との間に介在している第1のスペーサ部材であり、55は、両パネル体52、53の周縁であって、第1のパネル体52と第2のパネル体53との間に介在している第2のスペーサ部材である。
【0029】
ケース体60は、例えば白色の合成樹脂からなり、表示パネル50を保持する保持部材としての機能、指針用光源70や光源80を収納するハウジングとしての機能、指針用光源70からの照明光を前方側に反射する反射部材としての機能を有している。
【0030】
指針用光源70は、例えば赤色光を発するチップ型発光ダイオードからなり、指針40の前記回転中心部に対応する回路基板10上に複数個配置される。指針用光源70から発せられる照明光は、受光部43を通じて指示部41の先端側に反射導光され、これにより指示部41が赤色に発光する。
【0031】
光源80は、例えば白色光を発するチップ型発光ダイオードからなり、表示パネル50の背後側となる回路基板10上に複数個配置される。具体的には、光源80は、表示パネル50に設けられる遮光部53dの周縁部分の直下に位置している。
【0032】
見返し部材90は、例えば黒色の合成樹脂からなり、指針40と表示パネル50とを露出させるための開口窓部91を備えている。
【0033】
以上の各部により速度計Dが構成されている。このような構成において、光源80が点灯すると、光源80から発せられる光は、
図3中、光路L1として示すごとく光透過部53cと遮光部53dの非形成領域である第2のハーフミラー層53b箇所(つまり表示部52cや背景部52dに対応する第2のハーフミラー層53b箇所)へと導かれるとともに、
図3中、光路L2として示すごとく光透過部53cへと導かれる。
【0034】
このうち、前者の光透過部53cと遮光部53dの非形成領域である第2のハーフミラー層53b箇所へと導かれる光源80からの光は、光路L1として示すごとく第2のハーフミラー層53b→第2の透光性基板53a→間隙部51→第1の透光性基板52a→第1のハーフミラー層52b→表示部52cへと順次導かれ、これにより表示部52cが白色に発光表示される。
【0035】
一方、後者の光透過部53cへと導かれる光源80からの光は、光路L2として示すごとく光透過部53c→第2のハーフミラー層53b→第2の透光性基板53a→間隙部51→第1の透光性基板52aへと順次導かれ、その後、第1の透光性基板52aと第1のハーフミラー層52bとの境界である第1境界面F1にて透過する光と反射する光とに分かれる。
【0036】
そして、第1境界面F1を透過する光は、
図3中、光路L3として示すごとく抜き部52eを通じて露出している第1のハーフミラー層52b箇所を透過して観察者側へと出射され、これに伴い表示パネル50には、
図1に示すように背景部52dによって囲まれる第1のハーフミラー層52b箇所に、指針キャップ42を取り巻くようなリング状の第1の発光表示部S1が発光表示される。
【0037】
ここで、第1の発光表示部S1の発光表示幅は、光透過部53cの開口幅と略等しくなっているとともに、観察者側から表示パネル50を正視したときの第1の発光表示部S1の表示位置は第1境界面F1と同一面上の位置となる。
【0038】
他方、第1境界面F1にて反射される光は、
図3中、光路L4として示すごとく光が進むに従って回転軸20側へと近づくように第1の透光性基板52a→間隙部51→第2の透光性基板53aへと至り、その後、第2の透光性基板53aと第2のハーフミラー層53bとの境界である第2境界面F2にて再度、反射される。なお、第2境界面F2を透過する光は第2のハーフミラー層53bを通過した後、遮光部53dにて吸収される。
【0039】
そして、第2境界面F2にて再度、反射される光は、
図3中、光路L5として示すごとく光が進むに従ってさらに回転軸20側へと近づくように第2の透光性基板53a→間隙部51→第1の透光性基板52aへと順次至り、その後、第1境界面F1にて透過する光と反射する光とに分かれる。
【0040】
この光路L5において、第1境界面F1にて透過する光は、
図3中、光路L6として示すごとく抜き部52eを通じて露出している第1のハーフミラー層52b箇所を透過して観察者側へと出射され、これに伴い表示パネル50には、
図1に示すように第1の発光表示部S1の内側に、指針キャップ42を取り巻くようなリング状の発光表示像である第2の発光表示部S2が発光表示される。
【0041】
ここで、第2の発光表示部S2の発光表示幅は、光透過部53cの開口幅と略等しくなっているとともに、第2の発光表示部S2の大きさは第1の発光表示部S1の大きさよりも径小となっている。また、観察者側から表示パネル50を正視した際に、発光表示像である第2の発光表示部S2は、光路L4と光路L5の分だけ第1の発光表示部S1よりも奥まった位置に表示され、これにより表示パネル50の表示に立体感を与えることができる。
【0042】
なお、本実施形態の場合、光路L5において、第1境界面F1にて再度反射される光(
図3中、光路L7)は、その後、光の強度が消失するように、間隙部51の寸法や各ハーフミラー層52b、53bの光反射率(光透過率)が設定されているものとする。
【0043】
以上のように本実施形態では、表示部52cを有する表示パネル50と、表示部52cを照明する光源80とを有する表示装置としての速度計Dにおいて、表示パネル50は、間隙部51を有するように対向配置される第1、第2のパネル体52、53を備え、第1のパネル体52はその母材となる第1の透光性基板52aの前面に第1のハーフミラー層52bを有し、第2のパネル体53はその母材となる第2の透光性基板53aの背面に第2のハーフミラー層53bを有し、第1のパネル体52には、第1のハーフミラー層52bの前方側に表示部52cが設けられ、第2のパネル体53には、観察者側から表示パネル50を正視した際に、光源80からの光を第2の透光性基板53aへと透過させる光透過部53cと光源80からの光を第2の透光性基板53aへと透過させない遮光部53dとが表示部52cと重ならないように設けられ、遮光部53dは、第2のハーフミラー層53bの背後側に位置しているものである。
【0044】
従って、背景部52dの内側にてハーフミラー層52bが部分的に露出している露出領域と、間隙部51並びに一対の透光性基板52a、53aを挟んで対向配置される一対のハーフミラー層52b、53bと、第2のハーフミラー層53bの背後側に位置している遮光部53dの抜き印刷部分である光透過部53cとを利用して、光透過部53cを通過(透過)する光源80からの光を
図3中、光路L2〜L7にて示すごとく両ハーフミラー層52b、53b間にて繰り返し反射(多重反射)させることで、観察者側からは前記露出領域を通じて立体感(奥行き感)の付与された同心円状の発光表示部S1、S2が視認されることから、面白みや斬新さのある新規な見栄えを実現することができる。
【0045】
また本実施形態では、第1のパネル体52には、表示部52cの背景を形成する背景部52dが第1のハーフミラー層52bの前方側に設けられ、観察者側から表示パネル50を正視した際に、背景部52dが形成されない抜き部52eの背後側に光透過部53cが位置していることにより、光源80の点灯時には、背景部52dの形成領域には表示部52が発光表示され、且つ、背景部52dの内側となる背景部52dの非形成領域(つまり抜き部52e)には立体感のある発光表示部S1、S2が発光表示されることから、表示部52cの発光表示エリアと各発光表示部S1、S2の発光表示エリア(つまり前記露出領域)との区別が明瞭となり、表示品位の向上した表示装置を提供することができる。
【0046】
また本実施形態では、光透過部53cを透過する光源80からの光が、第1のハーフミラー層52bの前面に2回反射されることで、表示パネル50にリング状の2つの発光表示部S1、S2が発光表示される例について説明したが、例えば間隙部51の寸法や各ハーフミラー層52b、53bでの光反射率(光透過率)を適宜設定することで、表示パネル50に3個以上の発光表示部を形成することができることは言うまでもない。
【0047】
また本実施形態では、観察者側から表示パネル50を正視した際に、表示部52cが表示パネル50(第1のパネル体52)の周縁部分に位置しているとともに、光透過部53cが表示部52cの背景を形成する背景部52dと指針キャップ42との間に位置している例について説明したが、例えば本実施形態の変形例として
図4、
図5に示すように表示部52cと光透過部53cとの位置関係を逆(反対)にし、観察者側から表示パネル50を正視した際に、光透過部53cを表示パネル50(第1のパネル体52)の周縁部分に位置させるとともに、表示部52cを遮光部52dと指針キャップ42との間に位置させるようにしてもよい。この場合、詳細説明は省略するが、背景部52dの周囲にて露出している第1のハーフミラー層52b箇所に、表示部52cを取り囲むようにリング状の2つの発光表示部T1、T2が発光表示されることになる。
【0048】
また本実施形態では、各透光性基板52a、53aが平行状態をなすように配置され、第1の透光性基板52aの前面に第1のハーフミラ―層52bが設けられるとともに第2の透光性基板53aの背面に第2のハーフミラ―層53bが設けられる例について説明したが、例えば第1の透光性基板52aが間隙部51を介して第2の透光性基板53aと非平行状態をなすように傾斜配置され、この傾斜配置された第1の透光性基板52aの前面に第1のハーフミラ―層52bを設けてもよい。例えば前面が逆ハの字形状となっている第1の透光性基板52a上に逆ハの字形状からなる第1のハーフミラ―層52bを積層配置する構成等が考えられる。
【0049】
また本実施形態では、第1のハーフミラ―層52bが第1の透光性基板52aの前面に形成されるとともに第2のハーフミラ―層53bが第2の透光性基板53aの背面に形成される例について説明したが、例えば第1のハーフミラ―層52bを第1の透光性基板52aの背面に形成するとともに第2のハーフミラ―層53bを第2の透光性基板53aの前面に形成してもよいし、あるいは各ハーフミラ―層52b、53bを各透光性基板52a、53aの前面(または背面)にそれぞれ形成してもよい。
【0050】
また本実施形態の場合、光透過部53cは、遮光部53dが印刷形成されない抜き印刷部分としたものであったが、光透過部53cを前述した抜き印刷部分ではなく例えば膜厚を有する着色層(白色印刷層等)により設けてもよい。このように光透過部53cを前記着色層とする場合、第2の透光性基板53aの前面に遮光部53d並びに前記着色層(光透過部53c)を形成するとともに、遮光部53d並びに前記着色層(光透過部53c)を覆うように第2の透光性基板53a上に第2のハーフミラ―層53bを形成してもよい。
【0051】
なお、本実施形態では、光透過部53cがリング状にて形成されている例について説明したが、光透過部53cの形状は、リング状以外のあらゆる形状を採用することができ、例えば光透過部53cの形状を枠形状としてもよい。