特許第5799788号(P5799788)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5799788
(24)【登録日】2015年9月4日
(45)【発行日】2015年10月28日
(54)【発明の名称】内燃機関とその制御方法
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20151008BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20151008BHJP
【FI】
   F01N3/08 B
   F01N3/24 P
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-271269(P2011-271269)
(22)【出願日】2011年12月12日
(65)【公開番号】特開2013-122209(P2013-122209A)
(43)【公開日】2013年6月20日
【審査請求日】2014年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100068685
【弁理士】
【氏名又は名称】斎下 和彦
(72)【発明者】
【氏名】長岡 大治
(72)【発明者】
【氏名】是永 智宏
(72)【発明者】
【氏名】遊座 裕之
(72)【発明者】
【氏名】中田 輝男
【審査官】 山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−291088(JP,A)
【文献】 特開2010−180780(JP,A)
【文献】 特開2007−315339(JP,A)
【文献】 特開2010−38020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00−3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気通路に触媒装置を含む排ガスの後処理装置を設け、該触媒装置の上流側で排ガスに添加剤を供給する添加弁を設けると共に、
該添加弁と前記触媒装置の間に設けた前記排気通路を開閉する弁装置に、該弁装置を開弁しているときに、排ガスと排ガスに添加された添加剤を攪拌しながら通過させる攪拌部を備えることを特徴とする内燃機関。
【請求項2】
前記弁装置をバタフライ弁で形成し、
前記攪拌部を、前記バタフライ弁を全開したときに排気通路の全体に拡がる攪拌板で形成すると共に、該攪拌板に設けた流通口に、前記バタフライ弁の弁開度によって排ガスと排ガスに添加された添加剤の攪拌度を変化させる攪拌羽根を備えることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
前記弁装置を排気ブレーキ装置の排気ブレーキバルブで形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関。
【請求項4】
前記触媒装置を尿素選択型触媒装置で形成し、前記添加弁を尿素水噴射弁で形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の内燃機関。
【請求項5】
内燃機関の排気通路に触媒装置を含む排ガスの後処理装置を設け、該触媒装置の上流側で排ガスに添加剤を供給する添加弁を設けると共に、該添加弁と前記触媒装置の間に前記排気通路を開閉する弁装置を備える内燃機関の制御方法において、
前記弁装置を閉弁すると、排ガスを遮蔽し、
前記弁装置を開弁すると、前記弁装置に設けた攪拌部で排ガスと排ガスに添加された添加剤を攪拌しながら通過させることを特徴とする内燃機関の制御方法。
【請求項6】
高排ガス流量時は前記弁装置を全開し、低排ガス流量時は前記弁装置を全開よりも閉側にし、内燃機関に燃料が供給されていないときは、全閉することを特徴とする請求項5に記載の内燃機関の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガスに添加された添加剤の攪拌と蒸発を促進し、且つ高排ガス流量時には排ガスの一様度を向上させ、低排ガス流量時には触媒を保温することができる内燃機関とその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
排ガスを処理する後処理装置に設けられる尿素SCR(選択的還元)触媒では、NOx(酸化窒素化合物)還元の為に尿素水を噴射し、アンモニアに加水分解して還元剤として使用する。その尿素水は尿素インジェクタ(尿素噴射弁)で排気管内に噴射するが、そのままでは攪拌、そして蒸発が進まずNOx浄化率が低い。
【0003】
そこで、通常は排ガスを拡散して一様度(触媒への流れの一様度合いの尺度)を向上させる為に、及び尿素水の蒸発促進の為に、ミキサー(スワラーともいう)を使用した装置がある(例えば、特許文献1参照)。しかし、通常ミキサーを使用すると、一様度は排ガス量が多くなると低下する傾向がある。理想的には、排ガス量に応じて拡散効果を変化させれば、排ガス量が多くても一様度は低下しないが、通常のミキサーは可変構造では無いので難しい。また、別途ミキサーを設置すると、装置の設置分のコストが増加する。
【0004】
一方、排ガスの流れを工夫した配管を用いた装置もある。しかし、排気管のレイアウトなどで排ガスの流れを工夫して排ガス流の拡散や蒸発効果を得ようとすると、レイアウト自体に制約が出る、又は、スペースを余計に必要とする可能性がある。
【0005】
上記の問題の他にも、尿素水自体が持つ問題として、尿素水が特定の温度下で固形物質として析出するというものがある。特に、この固形物質は流速の低下した箇所に堆積し易く、ミキサーを設けると流れの淀んだ箇所に固形物質が溜まり、排気管を閉塞する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−077957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的は、低コストで、排ガスに添加された添加剤の攪拌と蒸発を促進することができ、且つ、高排ガス流量時では排ガスの一様度を向上することができ、低排ガス流量時では、触媒装置を保温することができる内燃機関とその制御方法を提供することである。また、添加剤の固形化も防止することができる内燃機関とその制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を解決するための本発明の内燃機関は、排気通路に触媒装置を含む排ガスの後処理装置を設け、該触媒装置の上流側で排ガスに添加剤を供給する添加弁を設けると共に、該添加弁と前記触媒装置の間に設けて、前記排気通路を開閉する弁装置に、該弁装置を開弁しているときに、排ガスと排ガスに添加された添加剤を攪拌しながら通過させる攪拌部を備えて構成される。
【0009】
この構成によれば、排ガス中に添加剤が添加された排ガスを攪拌して、その添加剤を拡散することができる。また、攪拌部を通過した排ガスの、触媒装置への流れの一様度を向
上することができる。特に、添加剤として尿素水を排ガスに添加したときに、尿素水を攪拌して、蒸発を促進することができるので、NOxの浄化率を向上することができる。
【0010】
また、上記の内燃機関において、前記弁装置をバタフライ弁で形成し、前記攪拌部を、前記バタフライ弁を全開したときに排気通路の全体に拡がる攪拌板で形成すると共に、該攪拌板に設けた流通口に、前記バタフライ弁の弁開度によって排ガスと排ガスに添加された添加剤の攪拌度を変化させる攪拌羽根を備えると、攪拌部の攪拌羽根が弁装置の開度によって攪拌度が変わるので、排ガスの流量の変化に合せて攪拌効果を変化させることができる。
【0011】
加えて、上記の内燃機関において、前記弁装置を排気ブレーキ装置の排気ブレーキバルブで形成すると、排気ブレーキバルブに上記に記載の攪拌部を追加するだけでよく、装置スペースの増加が無く、設置位置の設計自由度を高くでき、僅かなコストアップで尿素水やHC添加を攪拌し、またそれらの添加剤の蒸発も促進することができる。また、排ガスの排出量(走行状況)に合せて弁の開度が変化するので、高排ガス流量時では一様度の低下を防止することができ、低排ガス流量時では排ガスの流量を減少させて触媒を保温することができる。加えて、攪拌部が排気ブレーキバルブと連動して可動動作するので、流速の低い箇所も変化して、添加剤の固形化を防ぐことができ、また、固形化が生じても、排気バルブの動作時にはがれ落ちて排出することができる。
【0012】
その上、上記の内燃機関において、前記触媒装置を尿素選択型触媒装置で形成し、前記添加弁を尿素噴射弁で形成すると、尿素水が弁装置の上下面の攪拌部の攪拌羽根で攪拌され、且つ蒸発が促進されて、尿素SCR装置に供給されるため、NOxの浄化率を向上することができる。また、弁装置を全閉すると尿素SCR装置を保温することができるので、尿素水が固形物質として析出することを防ぐと共に、弁装置の開閉動作で、攪拌部に結晶化して体積した尿素水をふるい落とすことができる。これにより、尿素SCR装置と攪拌部での尿素水の結晶化の進行を防ぐことができる。
【0013】
また、上記の問題を解決するための内燃機関の制御方法は、内燃機関の排気通路に触媒装置を含む排ガスの後処理装置を設け、該触媒装置の上流側で排ガスに添加剤を供給する添加弁を設けると共に、該添加弁と前記触媒装置の間に前記排気通路を開閉する弁装置を備える内燃機関の制御方法において、前記弁装置を閉弁すると、排ガスを遮蔽し、前記弁装置を開弁すると、前記弁装置に設けた攪拌部で排ガスと排ガスに添加された添加剤を攪拌しながら通過させることを特徴とする方法である。
【0014】
この方法によれば、弁装置を開くと、尿素水や添加HCを攪拌することができ、さらにそれら添加剤の蒸発を促進することができる。また、弁装置を閉じると、触媒に排ガスが流れないので、触媒の冷却を防止して、触媒を保温することができる。
【0015】
さらに、上記の内燃機関の制御方法において、高排ガス流量時は前記弁装置を全開し、低排ガス流量時は前記弁装置を全開よりも閉側にし、内燃機関に燃料が供給されていないときは、全閉すると、高排ガス流量時は高い拡散効果、低排ガス流量時は低い拡散効果として高負荷時の一様度を向上することができる。減速時は、触媒を流れるガス量を低減させて、触媒の冷却を防止することができる。アイドリング時は開閉の中間状態とすると、排ガス流は攪拌部を通るので、添加剤の攪拌、蒸発が促進される。なお、圧力損失は上昇するがアイドリング状態では元々排気圧力はほとんど上昇していないので、問題はなく、アイドリング時に触媒を保温することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、低コストで、排ガスに添加された添加剤の攪拌と蒸発を促進すること
ができ、且つ、高排ガス流量時では排ガスの一様度を向上することができ、低排ガス流量時では、触媒装置を保温することができる。また、排ガスに添加された添加剤の固形化も防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る第1の実施の形態の内燃機関の排気システムを示した概略図である。
図2図1に示す排気スロットルを示した斜視図である。
図3図2のIII−IIIで示す断面図であり、排気スロットルの全開状態を示した断面図である。
図4図2のIII−IIIで示す断面図であり、排気スロットルの全閉状態を示した断面図である。
図5図2のIII−IIIで示す断面図であり、排気スロットルの全開と全閉の中間の開度状態を示した断面図である。
図6】本発明に係る第2の実施の形態の内燃機関を示した概略図である。
図7】本発明に係る実施の形態の内燃機関の制御方法を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施の形態の内燃機関とその制御方法について、図面を参照しながら説明する。この実施の形態は、ディーゼルエンジンを例に説明するが、ディーゼルエンジンに限定せずに、ガソリンエンジンにも適用することができ、その気筒数や、気筒の配列は限定しない。なお、図面に関しては、構成が分かり易いように寸法を変化させており、各部材、各部品の板厚や幅や長さなどの比率も必ずしも実際に製造するものの比率とは一致させていない。
【0019】
まず、本発明に係る第1の実施の形態の内燃機関について、図1を参照しながら説明する。エンジン(内燃機関)に、燃料の燃焼により発生する排ガスGaを処理する後処理装置1を備える。この後処理装置1は、排気管2にDPF(ディーゼル微粒子捕集フィルタ)3と尿素SCR触媒(尿素選択的還元触媒)4を備える。また、尿素SCR触媒4の上流側に尿素インジェクタ(尿素噴射弁)5を備える。
【0020】
加えて、尿素SCR触媒4の上流側で、且つ尿素インジェクタ5の下流側に排気スロットル(弁装置)6を備える。さらに、エンジンは、ECU(制御装置)7と排気量センサ8を備える。このECU7は、排気量センサ8の検知する排ガス流量により、尿素インジェクタ5の噴射制御、排気スロットル6の開閉制御を行う。この制御においては、排ガス流量を算出することができればよく、排気量センサ8に換えて、別のセンサを用いてもよく、また、エンジンに吸入される吸気空気量と燃料噴射量から排ガス流量を算出する方法を用いてもよい。
【0021】
排気スロットル6は、リンク機構6a、エアチャンバー6b、及びスロットル弁10を備える。この排気スロットル6は、スロットル弁10を全閉すると排気管2を遮蔽して、排ガスGaを排気スロットル6の上流側に滞留させ、全閉状態から開くことで、排ガスGaを尿素SCR触媒4へ流すことができればよく、上記の構成に限定しない。
【0022】
次に、本発明の特徴であるスロットル弁10について、図2を参照しながら説明する。スロットル弁10は、バタフライ弁11と回転軸12を備えると共に、バタフライ弁11の両面にミキサー部(攪拌部)13を備え、ミキサー部13を、ミキサー板(攪拌板)14、流通口15、及び複数のフィン(攪拌羽根)16a〜16cから構成する。
【0023】
この実施の形態では、スロットル弁10の排気管2内を開閉する弁体として、バタフライ弁11を用いたが、排気管2内を開閉することができれば、バタフライ弁に限定しないが、全開したときにミキサー部13を設けることができるものが好ましい。また、その開度を、少なくとも全開と全閉に固定できればよいが、全開、全閉、及びそれらの中間の開度に固定できるものが好ましく、また、開度を任意の位置に設定でき、且つその開度を固定できるものがより好ましい。
【0024】
また、排ガス流量に対して、スロットル弁10を閉じた時の圧力損失の増加で尿素SCR触媒4や、図示しないターボチャージャーなどの破損を防止するために、開度閾値が定められており、実際には完全に排気管2を閉じることができないが、ここではその状態を全閉状態として説明する。
【0025】
ミキサー部13は、バタフライ弁11の開閉時に排気管2と干渉しないように、且つ可能な限り広い面積を得られるように、且つ圧力損失の上昇が少ないような形状が望ましく、また、フィン16a〜16c(以下、フィン16に統一する)の形状はバタフライ弁11の開度に応じて攪拌度が変わるような形状が好ましい。つまり、このミキサー部13は、バタフライ弁11の閉じ量が小さい時(排ガス流量が高いとき)にミキサー効果が大きく、閉じ量が大きい時(排ガス流量が低いとき)にミキサー効果が小さいことが好ましい。
【0026】
このミキサー部13についての一例を説明する。ミキサー板14をバタフライ弁11の両面に設け、バタフライ弁11が全開したときに、排気通路の全体に拡がるように形成し、排ガスの流量を減少しないように広い開口面積を有する流通口15を設ける。
【0027】
好ましくはバタフライ弁11が全開したときに、両面合せて排気管2の断面と略同形状になるように形成するとよい。ミキサー板14を排気管2の断面と同様の形状に形成すると、開閉時に排気管2と干渉することがない。また、バタフライ弁11の排ガスの遮蔽面に対して、ミキサー板14の面が斜めになるよう配置すると、より排気管2との干渉を防止することができ、且つ排気スロットル10の全開時に流通口15の開口面積を大きくすることができる。
【0028】
フィン16を、断面が三日月状の板で形成する。このフィン16の形状は限定せず、バタフライ弁11の開度によって、拡散効果が変化するような形状であればよく、より好ましくは、バタフライ弁11の全開時に、排ガスの流れに対して角度を持ち、また、バタフライ弁11が全開と全閉の中間の開度のときに、排ガスの流れに対して略平行になるような形状であればよい。
【0029】
この実施の形態のエンジンの動作を、図3〜5に示す排気スロットル10の動作を参照しながら説明する。ここで、エンジンの図示しないシリンダ内で燃焼が起こり、排ガスGaが排気管2を流れるとき(車両の通常走行中)では、排ガスが発生し、排気バルブから排出されている。排気管2を流れる排ガスGaは、排気管2の中心部の流れが排気管2の内壁近傍よりも強くなっている。また、スロットル弁10の上流に設けた尿素インジェクタ5より、尿素水Urを添加された排ガスGaは攪拌されていない状態であり、尿素水Urは拡散していない状態である。
【0030】
そこで、車両の通常走行中は、図3に示すように、高排ガス流量時は全開にし、低排ガス流量時は全開の開度よりも小さい開度にする。このように、排ガス量センサ8の検知する排ガス流量に応じて、スロットル弁10の開度を変化させることにより、高排ガス流量時には、フィン16によるミキサー効果を大きく、低排ガス流量時には、ミキサー効果を小さくすることができる。
【0031】
フィン16の傾きは排ガスの流れる方向に対して、角度αを有するように設けられている。この傾きαは、排気スロットル10の全開時に最大となり、開度の減少に比例して小さくなる。エンジン1の通常走行中では、この傾きαを10°〜80°になるように、フィン16の形状や取り付けを調節するとよい。
【0032】
排気スロットル10が全開の時は、バタフライ弁11自体の流路抵抗はなくなるが、ミキサー部13のフィン16が排ガスGaの流れに対して角度αを持たせているので、その分の抵抗増加が発生する。よって、フィン16の排ガスGaに対する傾きαを設定する場合に、この抵抗増加の許容範囲内で、最大のミキサー効果となるように構成することが望ましい。
【0033】
エンジンが燃料カット時で、シリンダ内で燃焼が起きずに排気管2内を排ガスGaが流れないとき(車両の減速時)では、図4に示すように、スロットル弁10を閉弁状態として、尿素SCR触媒4を流れるガス量を低減させて、尿素SCR触媒4の冷却を防止することができる。この時、燃料カット状態なので排ガスGaが発生しないので、尿素インジェクタ5から尿素水を噴射しないよう制御する。
【0034】
車両の減速時に、スロットル弁10を全閉すると、比較的低温のガスが尿素SCR触媒4を通過することを防ぎ、その際に尿素SCR触媒4が冷却されてしまうことを防ぐことができる。これにより、尿素SCR触媒4を保温することができる。この動作は車両のアイドリングストップ時にも適用することができる。
【0035】
車両の駐停車や信号待ちなど停止時にエンジンが回転している状態であるアイドリング時では、スロットル弁10の開度を、図5に示すように、全開と全閉との中間の開度とする。このとき、フィン16の傾きは排ガスGaの流れる方向に対して、略並行となるようにするとよい。排ガスGaはスロットル弁10のミキサー部13を通るので、ミキサー部13のフィン16より排ガスGaと添加された尿素水Urの攪拌、蒸発を促進することができる。
【0036】
圧力損失は全開状態と比べると上昇するが、アイドリング状態では元々排気圧力は殆ど上昇しておらず、問題ない。また、アイドル状態では、排ガスGaの温度が通常走行時と比較すると低温になるので、中間の開度にすることで、尿素SCR触媒4へ流れる排ガス量が減少するので、尿素SCR触媒4も保温することができる。
【0037】
上記の動作は、開度を自在に変化させることが可能なスロットル弁10を用いた場合の動作であるが、開度を自在に変化させることができない場合は、通常走行時は全開状態、アイドリング時は全開又は全閉状態として、効果によって使い分けるとよい。
【0038】
上記の動作によれば、排気スロットル6の上流で尿素水Urを添加された排ガスGaを、スロットル弁11に設けたミキサー部13で攪拌して、尿素水Urの蒸発を促進することができるので、尿素SCR触媒4でのNOxの浄化率を向上することができる。
【0039】
また、排ガスGaの流量の変化に合せて、ミキサー効果を変化させることができるので、特に、排ガス流量が高流量のときに、フィン16を排ガスGaの流れに対して角度αを持たせると、高流量時にミキサー効果(攪拌効果)を強めて、特に高流量時に一様度が低下することを防止することができる。これにより、排ガス流量が高いときでも、一様度を低下させずに、排ガスGaを拡散することができる。
【0040】
加えて、排ガス流量によってスロットル弁10が開閉するので、ミキサー部13へ尿素
水Urが結晶化して体積する問題を解決することができる。仮に尿素水Urが結晶化して体積しても、スロットル弁10の動作時にふるい落とすことが出来るので、結晶化の進行を防止することができる。
【0041】
さらに、比較的排気温度の低い、低排ガス流量時では、全閉する、又は開度を小さくすることで尿素SCR触媒4への排ガス流量を低減することができるので、尿素SCR触媒4を保温することができる。これにより、尿素SCR触媒4で尿素水Urが結晶化して、堆積することを防止することができる。
【0042】
上記の排気スロットル6は、排ガスGaにHC(軽油)を添加する場合でも同様の効果を得ることができる。例えば、後処理装置1にdeNOx触媒と、そのdeNOx触媒の上流側にHC添加弁を備え、deNOx触媒の上流側で、HC添加弁の下流側に上記の排気スロットル6を設けると、排ガスに添加したHCを攪拌して、蒸発を促進することができるので、LNT触媒のリッチ還元、Sパージ(SOx放出制御)時の還元、及びPMの再生率を向上することができる。
【0043】
次に、本発明に係る第2の実施の形態のエンジンについて、図6を参照しながら説明する。エンジン(内燃機関)20は、エンジン本体21に排気通路22と吸気通路23とを備え、排気通路22に上記の記載の後処理装置1を設ける。排気通路22と後処理装置1との間にターボチャージャーやEGR装置(排気再循環装置)を設けてもよい。また、吸気通路23に吸入空気量(MAF値)を検出するMAFセンサ(吸気量センサ)24を備える。
【0044】
上記に記載の排気スロットル6は、排気ブレーキシステム(エキゾーストリターダーともいう)30と接続され、排気ブレーキバルブとして動作し、排気スロットル6を閉じると、排気管2及び排気通路22の排気圧力が高くなり、エンジン本体21のポンピングロスを通常より大きくして回転速度を抑制することができる。
【0045】
この排気ブレーキシステム30は、エアバルブ機構31がエアタンク32からの圧縮空気をエアチャンバー6bに送り、リンク機構6aを介して、排気スロットル6を排気ブレーキバルブとして開閉させる、電気空気式排気ブレーキである。
【0046】
また、排気ブレーキシステム30は、操作部33を備え、アクセルペダル34、ブレーキスイッチ35、クラッチスイッチ36、及びアクセルスイッチ37を備える。アクセルペダル34、又は図示しないクラッチペダルの両ペダルを踏んでいない状態のとき、つまり、アクセルスイッチ37又はクラッチスイッチ36がONになっていない状態をECU7が検知したときにのみ、排気ブレーキシステム30を稼働するように構成されている。
【0047】
トラックなどの商用車であれば、元々排気ブレーキシステム30を搭載していることが多く、その元々搭載している排気ブレーキシステム30のスロットル弁10に上記に記載のフィン16を有するミキサー部13を設けるだけでよく、僅かな製造コストの増加で前述した作用効果を得ることができる。一方、乗用車は通常排気ブレーキシステム30を搭載していないが、前述した触媒保温効果による触媒温度上昇効果により、触媒の貴金属量を低減することができるので、乗用車に新たに本発明の排気ブレーキシステム30を搭載しても、総合的に増加するコストが僅かである。
【0048】
次に、このエンジン20の制御方法を、図7に示すフローチャートを参照しながら説明する。この制御方法に基づいて、ECU7が各装置を制御する方法である。先ず、車両の走行状態が通常走行時か否かを判断するステップS1を行う。ここでいう通常走行時とは、エンジン本体21で燃料が噴射され、燃焼している状態のことをいう。
【0049】
この車両の走行状態を判断する方法としては、アクセルペダル34などの操作部33の操作信号から判断する方法がある。通常、アクセルペダル34の開度によって、ECU7は燃料の噴射量を算出しているので、このステップS1をアクセルペダル34の開度で判断する方法を用いてもよい。また、ECU7に接続された各種センサの値から判断することもできる。
【0050】
車両の走行状態が通常走行時と判断されると、次に、排ガス流量を算出するステップS2を行う。このステップS2では、アクセルペダル34の開度からECU7が決定する指示燃料噴射量と、MAFセンサ24の検出する空気吸気量から排ガス流量を算出している。このステップS2では、この排ガス流量を算出することができればよく、上記の方法に限定せず、例えば、前述の排気量センサ、ラムダセンサ、又はA/Fセンサなどから排ガス流量を算出してもよい。
【0051】
次に、排ガス量に応じた開度で排気スロットル6を開くステップS3を行う。このステップS3では、図3で説明したように、排気スロットル6のスロットル弁10を開く。排ガス流量に対応したスロットル弁10の開度を、ECU7に予め記憶させておいた、排ガス流量とスロットル弁10の開度をベースとする開度マップM1を参照して、選択している。
【0052】
この開度マップM1は、排ガス流量が高流量時は開き量が大きく、低流量時は開き量が小さくなるように、且つその範囲内で最適なミキサー効果を得ることができるように定められたマップである。ステップS3で排ガス流量に応じた開度でスロットル弁10を開くと、図7に示すように、再度スタートへと戻る。
【0053】
一方、ステップS1で、車両の走行状態が通常走行時ではないと判断されると、次に、車両の走行状態が減速時か否かを判断するステップS4を行う。このステップS4では、ステップS1と同様の方法で判断することができる。
【0054】
車両の走行状態が減速時と判断されると、次に、排気スロットル6を全閉するステップS5を行う。このステップS5では、図4で説明したように、排気スロットル6のスロットル弁10を全閉すると、排ガスGaの流れが遮断され、エンジン本体21に排気圧力がかかり、ポンピングロスを上昇させて、回転速度を抑制することができる。このステップS5で排気スロットル6を全閉すると、図7に示すように、再度スタートへと戻る。
【0055】
一方、ステップS4で車両の走行状態が減速時でないと判断されると、車両の走行状態がアイドル時か否かを判断するステップS6を行う。このステップS6もステップS1とステップS4と同様の方法で判断することができる。
【0056】
このステップS6では、エンジン30がアイドリングしているか否かを判断しているステップであり、車両がアイドリングストップシステムを備え、車両の一時停車などではエンジン30を停止させるよう構成すると、このステップS6を省略することができる。
【0057】
車両の走行状態がアイドル時であると判断されると、次に、排気スロットル6を全開と全閉の中間の開度に固定するステップS7を行う。このステップS7では、図5で説明したように、スロットル弁10を中間の開度に固定する。ステップS7が完了すると、図7に示すように、再度スタートへと戻る。また、ステップS6で、車両の走行状態がアイドル時でないと判断された場合も同様にスタートへと戻る。この制御方法は、車両が完全に停止するまで、同様に行う。
【0058】
上記の制御方法によれば、排ガス流量に応じて排気スロットル6のスロットル弁10の開度を変えることで得られる作用効果に加えて、排気スロットル6が排気ブレーキシステム30の排気ブレーキバルブとして動作するので、流速の低い箇所も変化するので尿素水の固形化も生じにくい。又、固形化が生じたとしても、排気スロットル6の動作時に剥がれ落ちて排出されるので、従来のミキサーに比べ、尿素水の固形化に伴う問題を解決する事ができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の内燃機関は、従来の排気ブレーキシステムの弁体に排ガスと排ガスに添加された添加剤を攪拌することができる攪拌部を設けるだけで、排ガス流量の高流量時には、添加剤の攪拌と蒸発を促進し、且つ、排ガスの一様度を向上することができ、一方、排ガス流量の低流量時には、比較的低温な排ガスが触媒に流れ込むことを防止して、触媒を保温することができるので、特に排気ブレーキを搭載したトラックなどの車両に利用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 排気システム
2 排気管
3 DPF
4 尿素SCR触媒(触媒装置)
5 尿素インジェクタ(添加弁)
6 排気スロットル(弁装置)
7 ECU(制御装置)
10 スロットル弁
11 バタフライ弁
13 攪拌部
16a〜16c フィン
20 エンジン(内燃機関)
30 排気ブレーキシステム
高排ガス流量時は前記弁装置を全開し、低排ガス流量時は前記弁装置を全開よりも閉側にし、内燃機関に燃料が供給されていないときは、全閉することを特徴とする請求項5に記載の内燃機関の制御方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7