特許第5799802号(P5799802)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5799802難燃性樹脂シート及びそれを用いたフラットケーブル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5799802
(24)【登録日】2015年9月4日
(45)【発行日】2015年10月28日
(54)【発明の名称】難燃性樹脂シート及びそれを用いたフラットケーブル
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/12 20060101AFI20151008BHJP
   H01B 17/56 20060101ALI20151008BHJP
   H01B 7/08 20060101ALI20151008BHJP
   H01B 7/295 20060101ALI20151008BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20151008BHJP
   C08K 5/16 20060101ALI20151008BHJP
   C08K 5/49 20060101ALI20151008BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20151008BHJP
【FI】
   C08L71/12
   H01B17/56 A
   H01B7/08
   H01B7/34 B
   C08L101/00
   C08K5/16
   C08K5/49
   C08J5/18CER
   C08J5/18CEZ
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-503278(P2011-503278)
(86)(22)【出願日】2010年8月19日
(86)【国際出願番号】JP2010063962
(87)【国際公開番号】WO2011043129
(87)【国際公開日】20110414
【審査請求日】2013年4月15日
(31)【優先権主張番号】特願2009-232268(P2009-232268)
(32)【優先日】2009年10月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116366
【弁理士】
【氏名又は名称】二島 英明
(72)【発明者】
【氏名】福田 豊
(72)【発明者】
【氏名】早味 宏
(72)【発明者】
【氏名】細水 康平
(72)【発明者】
【氏名】勝又 茂彰
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−120680(JP,A)
【文献】 特開2003−082245(JP,A)
【文献】 特開2003−113318(JP,A)
【文献】 特開2004−161929(JP,A)
【文献】 特開2008−198399(JP,A)
【文献】 特開2002−313146(JP,A)
【文献】 特開2006−286318(JP,A)
【文献】 特開2009−301766(JP,A)
【文献】 特開平08−245891(JP,A)
【文献】 特開2001−139798(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 5/00−5/59
C08J 5/18
H01B 7/00−7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフェニレンエーテル5質量%以上75質量%以下、熱可塑性エラストマー5質量%以上40質量%以下、及びポリオレフィン樹脂20質量%以上90質量%以下を含有する樹脂成分と、前記樹脂成分100質量部に対してリン系難燃剤、窒素系難燃剤の一方又は両方を20〜100質量部含有する難燃性樹脂シートであって、
前記ポリオレフィン樹脂は、エチレンエチルアクリレート共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、酸変性ポリエチレン、酸変性ポリプロピレン、アイオノマー、及びエチレンメタクリル酸共重合体からなる群より選ばれた1種以上であり、
前記熱可塑性エラストマーは、スチレン系熱可塑性エラストマーである、難燃性樹脂シート。
【請求項2】
25℃における引張弾性率が10MPa以上300MPa以下である、請求項1に記載の難燃性樹脂シート。
【請求項3】
厚みが0.2mm以下である、請求項1又は2に記載の難燃性樹脂シート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の難燃性樹脂シートを被覆材として用いたフラットケーブル。
【請求項5】
導体、該導体の両面を被覆する第1絶縁層、該第1絶縁層の少なくとも片面の外側に設けられた第2絶縁層、及び該第2絶縁層の外側に設けられたシールド層を有するフラットケーブルであって、前記第2絶縁層として、請求項1〜3のいずれか1項に記載の難燃性樹脂シートを用いたフラットケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットケーブルの被覆材、特に低誘電層として好適に用いることができる難燃性樹脂シート、及びそれを用いたフレキシブルフラットケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の内部配線用の電線として多心平型のフレキシブルフラットケーブルが使用されている。フラットケーブルは、2枚の絶縁フィルムの間に複数本の導体を並列して挟み、絶縁フィルム同士を熱融着して一体化することにより製造されている。この絶縁フィルムは、一般に、導体に接する接着剤層とその外側の樹脂フィルムを有している。樹脂フィルムとしては、機械的特性、電気的特性に優れた二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが汎用されている。
【0003】
フラットケーブルは液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等の電子機器の高速伝送用の配線ケーブルとしても用いられている。この場合、ノイズ対策のために、絶縁層の外側にシールド層(金属層)を設けた構成としている。また高速伝送特性を出すためには特性インピーダンスを高速デジタル信号の送信用・受信用ICのインピーダンスと同じ100Ωに設定する必要がある。特性インピーダンスのファクターである静電容量を制御するために絶縁層の誘電率を低くする必要があり、接着剤層、樹脂フィルムの他に低誘電層を使用している。
【0004】
このようなフラットケーブルとして、特許文献1には、導体の両側に接着層付き発泡絶縁体をラミネート加工し、その外側に導電性接着層付き金属層を設けたフレキシブルフラットケーブルが開示されている。発泡絶縁体は従来の絶縁体よりも誘電率が低いため静電容量を制御することができる。
【0005】
特許文献2には、導体と、該導体の両面を被覆する絶縁層と、該絶縁層の外側に設けられた低誘電層と、該低誘電層の外側に設けられたシールド層を備え、該低誘電層がポリオレフィン樹脂からなる樹脂組成物を主成分とするフラットケーブルが開示されている。また特許文献3には、特許文献2と同様の構成で、ポリカーボネート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等を低誘電層として用いたフラットケーブルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−31033号公報
【特許文献2】特開2008−47505号公報
【特許文献3】特開2008−198592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
フラットケーブルには柔軟性や折り曲げ加工性が要求される。そのため低誘電層にも柔軟性、折り曲げ加工性が必要である。特許文献1で使用している発泡絶縁体は強度が弱いために折り曲げ加工時に座屈して電気特性が悪化する場合がある。
【0008】
またフラットケーブルには高度な難燃性が要求される用途があり、米国UL規格の垂直難燃試験(VW−1試験)のような難燃性が規定されている。難燃性の規格を満足させるためには低誘電層中に難燃剤を含有させる必要があり、難燃剤として臭素系難燃剤、塩素系難燃剤等のハロゲン系難燃剤、又はリン系難燃剤、窒素系難燃剤等のノンハロゲン系難燃剤を使用する。
【0009】
特許文献2の低誘電層に使用しているポリオレフィン系樹脂は難燃性が低く、燃焼性の規格を満足させるためには多量の難燃剤を添加する必要がある。特にノンハロゲン系難燃剤を使用する場合はハロゲン系難燃剤を使用する場合に比べてさらに多量の難燃剤の添加が必要であり、その結果低誘電層の柔軟性が低下する。
【0010】
さらに、フラットケーブルの特性インピーダンスを所望の値とするためには、導体幅、絶縁フィルム厚さ、シールド構造等に応じて低誘電層の厚みを変える必要がある。この場合、低誘電層を薄くすることも必要となり薄肉押出加工可能な低誘電層が求められる。特許文献3の低誘電層に使用しているポリカーボネート等の樹脂は難燃性は充分であるが、硬い材料であるため薄肉押出加工が困難で、薄いフィルムを得ることができない。
【0011】
そこで本発明は、誘電率を低くできると共に柔軟性、難燃性及び薄肉加工性に優れる難燃性樹脂シート、及びそれを用いたフラットケーブルを提供することを課題とする。このフラットケーブルは特に高速伝送用のケーブルとして好適に用いることができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ポリフェニレンエーテル5質量%以上75質量%以下、熱可塑性エラストマー5質量%以上40質量%以下及びポリオレフィン樹脂20質量%以上90質量%以下を含有する樹脂成分と、前記樹脂成分100質量部に対してリン系難燃剤、窒素系難燃剤の一方又は両方を20〜100質量部含有する難燃性樹脂シートであって、 前記ポリオレフィン樹脂は、エチレンエチルアクリレート共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、酸変性ポリエチレン、酸変性ポリプロピレン、アイオノマー、及びエチレンメタクリル酸共重合体からなる群より選ばれた1種以上であり、前記熱可塑性エラストマーは、スチレン系熱可塑性エラストマーである、難燃性樹脂シートである。
【0013】
ポリフェニレンエーテルを含有することで、難燃性樹脂シートの誘電率を低くできると共に難燃性を向上できる。ポリオレフィン樹脂を含有することで、柔軟性を得ることが出来ると共に薄肉加工性を向上することができる。また熱可塑性エラストマーを含有することで、柔軟性、押出加工性を高めることが出来ると共に、上記ポリフェニレンエーテルとポリオレフィン樹脂との相溶性を高めることができ、機械特性を向上できる。さらにリン系難燃剤又は窒素系難燃剤を使用することで難燃性を向上できる。従って、この難燃性樹脂シートは高速伝送用フラットケーブルの低誘電層として好適に用いることができる。
【0014】
前記ポリオレフィン樹脂は、エチレンエチルアクリレート共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、酸変性ポリエチレン、酸変性ポリプロピレン、アイオノマー、及びエチレンメタクリル酸共重合体からなる群より選ばれた1種以上であると好ましいこれらの樹脂は柔軟性に優れている。
【0015】
前記熱可塑性エラストマーは、スチレン系熱可塑性エラストマーであると好ましいスチレン系熱可塑性エラストマーは、柔軟性及び押出加工性に優れている。
【0016】
前記難燃性樹脂シートの25℃における引張弾性率が10MPa以上300MPa以下であると好ましい引張弾性率が300MPaよりも大きいと柔軟性が低下する。また引張弾性率が10MPaよりも小さい場合は機械強度が悪くなる。なお引張弾性率は、短冊状に切断したサンプルで引張試験を行い、応力−伸び曲線から求めることができる。
【0017】
前記難燃性樹脂シートの厚みが0.2mm以下であると好ましい厚みが薄くなることでこの難燃性樹脂シートを使用したフラットケーブル等の柔軟性を上げることができ、本発明では上記のような樹脂成分を使用することでこのように薄い膜を押出成形することが可能となった。
【0018】
また本発明は、上記の難燃性樹脂シートを被覆材として用いたフラットケーブルを提供するこのフラットケーブルは難燃性及び柔軟性に優れている。
【0019】
また本発明は、前記フラットケーブルの一態様として、導体、該導体の両面を被覆する第1絶縁層、該第1絶縁層の少なくとも片面の外側に設けられた第2絶縁層、及び該第2絶縁層の外側に設けられたシールド層を有するフラットケーブルであって、前記第2絶縁層として上記の難燃性樹脂シートを用いたフラットケーブルを提供するなお第1絶縁層は、接着層とフィルム層のように複数の層で構成していても良い。このフラットケーブルは難燃性、柔軟性に優れていると共に、特性インピーダンスを所望の値に調整可能であり高速伝送用のケーブルとして好適に使用することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、誘電率を低くできると共に柔軟性、難燃性及び薄肉加工性に優れる難燃性樹脂シート、及びこの難燃性樹脂シートを被覆材として用いたフラットケーブルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明のフラットケーブルを示す図である。
図2】本発明のフラットケーブルを示す図であり、図1のA−A’断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
まず、本発明の難燃性樹脂シートを構成する各種材料について説明する。ポリフェニレンエーテルは、メタノールとフェノールを原料として合成される2,6−キシレノールを酸化重合させて得られるエンジニアリングプラスチックである。またポリフェニレンエーテルの成形加工性を向上させるため、ポリフェニレンエーテルにポリスチレンを溶融ブレンドした材料が変性ポリフェニレンエーテル樹脂として各種市販されている。本発明に用いるポリフェニレンエーテル系樹脂としては、上記のポリフェニレンエーテル樹脂単体、及びポリスチレンを溶融ブレンドしたポリフェニレンエーテル樹脂のいずれも使用することができる。また無水マレイン酸等のカルボン酸を導入したものを適宜ブレンドして使用することもできる。
【0023】
熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系エラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、オレフィン系エラストマー等を使用することができる。この中でも、ポリフェニレンエーテルとポリオレフィン樹脂との相溶性を高め、機械特性や押出加工性を向上できる点でスチレン系エラストマーが好ましい。スチレン系エラストマーとしては、スチレン・エチレンブテン・スチレン共重合体、スチレン・エチレンプロピレン・スチレン共重合体、スチレン・エチレン・エチレンプロピレン・スチレン共重合体、スチレン・ブチレン・スチレン共重合体等が挙げられ、これらの水素添加ポリマーや部分水素添加ポリマーを例示できる。また無水マレイン酸等のカルボン酸を導入したものを適宜ブレンドして使用することもできる。
【0024】
本発明に使用するポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンエチルアクリレート共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、酸変性ポリエチレン、酸変性ポリプロピレン、アイオノマー、エチレンメタクリル酸共重合体等が例示できる。これらの中でもエチレンエチルアクリレート共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、酸変性ポリエチレン、酸変性ポリプロピレン、アイオノマー、及びエチレンメタクリル酸共重合体は柔軟性に優れていることから好ましい。
【0025】
ポリフェニレンエーテルは樹脂成分全体に対して5質量%以上75質量%以下、熱可塑性エラストマーは樹脂成分全体に対して5質量%以上40質量%以下、ポリオレフィン樹脂は、樹脂成分全体に対して20質量%以上90質量%となるように上記の3成分を混合する。ポリフェニレンエーテルの量が上記の量よりも少ない場合には難燃性樹脂シートの難燃性が低下する。熱可塑性エラストマーの量が上記の量よりも少ない場合には、難燃性樹脂シートの柔軟性が低下する。またポリオレフィン樹脂の量が上記の量よりも少ない場合は押出加工性が低下し、薄肉のシートを得ることが困難となる。
【0026】
本発明に使用する窒素系難燃剤としては、メラミン樹脂、メラミンシアヌレート、トリアジン、イソシアヌレート、尿素、グアニジン等を例示できる。窒素系難燃剤は使用後に焼却処理してもハロゲン化水素等の有毒ガスが発生せず、環境負荷の低減を図ることができる。窒素系難燃剤としてメラミンシアヌレートを使用すると混合時の熱安定性や難燃性向上効果の面で好ましい。メラミンシアヌレートはシランカップリング剤やチタネート系カップリング剤で表面処理して使用することも可能である。
【0027】
本発明に使用するリン系難燃剤としては、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン−10−オキサイド等の環状有機リン化合物、トリフェニルホスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニル)ホスフェート等のリン酸エステル、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸アルミニウム、次亜リン酸アルミニウム等が例示される。本発明の趣旨に鑑み、ハロゲンフリーのリン系難燃剤が好ましい。
【0028】
前記窒素系難燃剤及びリン系難燃剤の含有量は、両者の合計で樹脂成分100質量部に対して5〜100質量部とする。5質量部を下回ると難燃性が不充分であり、また100質量部を超えると機械特性や押出加工性が低下するからである。窒素系難燃剤、リン系難燃剤をそれぞれ単独で用いても良いし、両者を併用しても良い。
【0029】
難燃性樹脂シートには、必要に応じて酸化防止剤、老化防止剤、滑剤、加工安定剤、着色剤、重金属不活性化材、発泡剤、多官能性モノマー等を適宜混合することができる。これらの材料を短軸押出型混合機、加圧ニーダー、バンバリーミキサー等の既知の溶融混合機を用いて混合した後、押出成形加工等の方法で難燃性樹脂シートを作製する。
【0030】
難燃性樹脂シートの厚みは使用する部分に応じて適宜選択することができる。後述するように、難燃性樹脂シートをフラットケーブルの低誘電層として用いる場合には特性インピーダンスを所望の値とするためにシールド構造、導体幅、絶縁フィルム厚さ等に応じて必要な厚みを設計して使用する。また難燃性樹脂シートの厚みが薄いほどフラットケーブルの柔軟性を向上できる。本発明の難燃性樹脂シートは押出加工性に優れているので種々の設計に合わせた厚みとすることができる。特に0.2mm以下と薄い厚みであっても押出加工が可能である。
【0031】
次に本発明のフラットケーブルについて説明する。図1は本発明の難燃性樹脂シートを用いたフラットケーブルの一例を示す図であり、図2図1のA−A’断面図である。図2に示すように、平角形状の導体1の両面を、接着層2及び樹脂フィルム3からなる第1絶縁層4が被覆している。第1絶縁層4の外側には第2絶縁層5が設けられている。第2絶縁層5は、フレキシブルフラットケーブルの特性インピーダンスを調整するためのものであり、本実施形態では、第1絶縁層4(樹脂フィルム3)と第2絶縁層5の間に粘着剤層7を設けて両者を接着している。
【0032】
さらに、フラットケーブルの外側にはシールド層6を設けている。またフラットケーブルの端部においてシールド層6の内側に導電層9を設けている。シールド層6と導電層9とは電気的に接続しており、導電層9はコネクタを介してグランド線に接続される。シールド層6と第2絶縁層5の間には易接着層8を設けて両者の接着力を高めている。シールド層6は電磁干渉とノイズを低減させるためのものである。なお図1に示すように、フラットケーブルの端部では、電子機器に設けられた接続端子と導体1とを接続できるように第1絶縁層4を片面だけに設けて導体1を露出させる構成としている。
【0033】
なお、本発明の難燃性樹脂シートは、フラットケーブルを構成するその他の層として使用することもできる。例えば、樹脂フィルム3として使用することができる。また導体との接着力が不要であるフラットケーブルの場合は、接着層2の代わりに難燃性樹脂シートを用い、難燃性樹脂シートと樹脂フィルム3とを積層したものを、第1絶縁層として使用することもできる。
【0034】
導体1としては、銅、錫メッキ軟銅、ニッケルメッキ軟銅等の導電性金属を使用することができる。導体は平角形状が好ましく、その厚みは使用する電流量に対応するが、フラットケーブルの柔軟性を考慮すると15μm〜50μmが好ましい。
【0035】
接着層2としてはポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等を単独で、又は難燃剤等と混合して使用することができる。接着層の厚みは20μm〜50μmが好ましい。
【0036】
樹脂フィルム3としては柔軟性に優れた樹脂材料が使用され、例えばポリエステル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリイミド樹脂等が例示される。ポリエステル樹脂としてはポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンナフタレート樹脂、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート樹脂、ポリシクロヘキサンジメチルナフタレートポリアリレート樹脂等が挙げられる。これらの樹脂のうち、電気的特性、機械的特性、コスト等の観点からポリエチレンテレフタレート樹脂が樹脂フィルムとして好適に使用される。また樹脂フィルムの厚みは12〜50μmとすることが好ましい。
【0037】
シールド層6としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド等の樹脂フィルムに銀等の金属を蒸着し、さらに金属蒸着面側に導電性接着剤層を設けたシールドフィルムが使用できる。
【0038】
粘着剤層7には、アクリル系樹脂、天然ゴム、ポリイソプレン系ゴム、ニトリルゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ブチルゴム、酢酸ビニル樹脂、ポリメタクリレート樹脂、ポリビニルブチラート、エポキシ系樹脂、シリコーン樹脂等を使用することができる。粘着剤層の厚みは5μm〜60μmとする。
【0039】
易接着層8には、ウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリメチルメタクリレート樹脂、ゴム系樹脂等を使用することができる。易接着層の厚みは0.1μm〜5μmとする。
【0040】
導電層9としては銅、錫メッキ軟銅、ニッケルメッキ軟銅などを使用することができる。
【0041】
フラットケーブルを製造する際は、複数の導体1の外側に、2枚の第1絶縁層4を樹脂フィルム3が外側となるように相対峙させて、既知の熱ラミネータや熱プレス装置を用いて加熱加圧処理を行って導体1と接着層2及び接着層2同士を接着させる。この際、フラットケーブル端部となる部分においては、第1絶縁層4の一部に穴を開けておくことで端部の導体1を露出させることができる。熱ラミネート又は熱プレスを連続して行うことで長尺のフラットケーブルが得られる。その後一定の長さに切断して任意の長さにする。
【0042】
さらに第1絶縁層4の外側に、粘着剤層7を介して第2絶縁層5を載置する。第2絶縁層の外側に導電層を設け、外周をシールドテープ(シールド層)で被覆して、シールド層を有するフラットケーブルが得られる。
【実施例】
【0043】
次に、本発明を実施例、比較例に基づいて説明する。なお実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0044】
(実施例、比較例)
(難燃性樹脂シートの作製)
表1に示す配合処方で各成分を二軸混合機で溶融混合した後ストランド状に溶融押出し、次いで、溶融ストランドを冷却切断してペレットを作製した。このペレットをTダイ押出機でシート状に押出成形して厚み150μmのシートを作製した。
【0045】
(難燃性樹脂シートの弾性率測定)
得られたシートを幅10mmに切断し、JIS K7127に基づいて引張速度10mm/min、チャック間距離100mmで引張試験を行い、弾性率を測定した。
【0046】
(難燃性樹脂シートの誘電率測定)
誘電率測定器(日本ヒューレットパッカード(株)製、商品名4276A LCZメーター)を用いて得られたシートの誘電率を測定した。
【0047】
(フラットケーブルの作製)
導体である錫メッキ軟銅箔(厚さ35μm、幅0.3mm)50本を0.5mmピッチで平行に並べた。ポリエチレンテレフタレート(厚み12μm)フィルムに、ポリエステル系接着剤(厚み30μm)を塗布した絶縁フィルム(第1絶縁層)2枚で導体を挟み込み、130℃に加熱した熱ラミネータを用いて加熱加圧処理を行って、導体の両面を絶縁フィルムで被覆した後、任意の長さに切断した。
【0048】
難燃性樹脂シートの片面に2液硬化性ウレタン樹脂(東洋インキ(株)製、主剤:EL510、硬化剤:CAT−RT810)を塗布して厚み3μmの易接着層を形成し、もう一方の面にアクリル系粘着剤(綜研化学(株)製、SKダイン1201)塗布して厚み20μmの粘着剤層を形成した。粘着層側が樹脂フィルムに接するようにして難燃性樹脂シートを上記のフラットケーブルに貼り付け、さらに外側にシールドテープ(厚さ9μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに銀を蒸着し、銀蒸着面に導電性接着剤を厚さ20μmで塗布したもの)を巻き付け、全体を100℃5秒間プレスして一体化させた。難燃性樹脂シートは実施例1、4では絶縁フィルムの両面に、実施例2、3、5、6及び7では片面に設けた。
【0049】
(難燃性評価)
作製したフラットケーブルに対して、UL規格1581のVW−1に規定される垂直燃焼試験を行った。より具体的には、フラットケーブルを10本準備し、着火後、10本中1本以上燃焼したもの、燃焼落下物によりフラットケーブルの下方に配置した脱脂綿が燃焼したもの、またはフラットケーブルの上部に取り付けたクラフト紙が燃焼したものを不合格とし、その他を合格とした。以上の結果を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
(脚注)
(1)ポリフェニレンエーテル:旭化成(株)製、ザイロン540Z
(2)ポリフェニレンエーテル:旭化成(株)製、ザイロンX9108
(3)ポリフェニレンエーテル:旭化成(株)製、ザイロンX9102
(4)スチレン系熱可塑性エラストマー:旭化成(株)製、タフテックH1041
(5)スチレン系熱可塑性エラストマー:JSR(株)製、ダイナロン4600P
(6)エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA):三井・デュポンポリケミカル(株)製、エバフレックスEV360
(7)エチレンエチルアクリレート共重合体(EEA):日本ユニカー(株)製、NUC−6220
(8)酸変性ポリエチレン:三井化学(株)製、アドマーNF548
(9)アイオノマー:三井・デュポンポリケミカル(株)製、ハイミラン1705
(10)エチレンメタクリル酸共重合体(EMAA):三井・デュポンポリケミカル(株)製、ニュクレルAN4213C
(11)リン酸エステル:大八化学(株)製、PX200
(12)メラミンシアヌレート:日産化学(株)製MC6000
【0052】
ポリフェニレンエーテル、熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン樹脂の3成分を樹脂成分として使用し、さらに難燃剤を添加した実施例1〜7のシートは厚み150μmのシートを良好に押出成形可能であり、また弾性率、難燃性も必要特性を満たしていた。
【0053】
樹脂成分としてポリフェニレンエーテル、熱可塑性エラストマーのみを使用した比較例1の配合では、厚み150μmでの押出成形ができず、薄肉加工性が悪いことがわかる。またリン系難燃剤、窒素系難燃剤のいずれも添加していない比較例2の配合では難燃性を満たしていなかった。
【符号の説明】
【0054】
1 導体
2 接着層
3 樹脂フィルム
4 第1絶縁層
5 第2絶縁層
6 シールド層
7 粘着剤層
8 易接着層
9 導電層
図1
図2