(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5799807
(24)【登録日】2015年9月4日
(45)【発行日】2015年10月28日
(54)【発明の名称】移動通信システム、基地局装置、制御装置、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 16/32 20090101AFI20151008BHJP
H04W 16/16 20090101ALI20151008BHJP
H04W 16/08 20090101ALI20151008BHJP
H04W 52/08 20090101ALI20151008BHJP
【FI】
H04W16/32
H04W16/16
H04W16/08
H04W52/08
【請求項の数】37
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2011-534037(P2011-534037)
(86)(22)【出願日】2010年8月6日
(86)【国際出願番号】JP2010004975
(87)【国際公開番号】WO2011039925
(87)【国際公開日】20110407
【審査請求日】2013年7月5日
(31)【優先権主張番号】特願2009-229472(P2009-229472)
(32)【優先日】2009年10月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】網中 洋明
(72)【発明者】
【氏名】濱辺 孝二郎
【審査官】
望月 章俊
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2009/048088(WO,A1)
【文献】
特開2008−199223(JP,A)
【文献】
特開2008−278265(JP,A)
【文献】
特開2009−124671(JP,A)
【文献】
特開2000−92541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W4/00−H04W99/00
H04B7/24−H04B7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの第1の基地局と、
第2の基地局と、
前記第2の基地局に接続する移動局に対して前記第1の基地局から到達する無線信号の測定を指示し、前記移動局による測定結果を受領する制御手段と、
を備え、
前記第1の基地局は、自身が形成する第1のセルに関する無線パラメータ及び自身が測定した前記第2の基地局が形成する第2のセルに関する無線パラメータのうち少なくとも一方を含む第1の情報を送信し、
前記制御手段は、各第1の基地局から前記第1の情報を受領し、前記少なくとも1つの第1の基地局のうち前記移動局による測定対象とされる第1の基地局を決定する、
移動通信システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記移動局による測定結果に基づいて、前記測定対象とされた第1の基地局に対して前記第1のセルの調整を指示する、請求項1に記載の移動通信システム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記測定対象に決定された第1の基地局が使用する無線リソースを特定可能な情報を含む測定要求を前記移動局に送信する、請求項1又は2に記載の移動通信システム。
【請求項4】
前記移動局は、前記測定要求に基づいて特定される第1の基地局から到達するダウンリンク信号を測定する、請求項3に記載の移動通信システム。
【請求項5】
前記第1の情報は、前記第1のセルで使用される無線周波数を示す情報と前記第1のセルの識別情報のうち少なくとも一方をさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の移動通信システム。
【請求項6】
前記第1のセルに関する無線パラメータは、前記第1の基地局によるダウンリンク信号の送信電力を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の移動通信システム。
【請求項7】
前記第1のセルに関する無線パラメータは、前記第1の基地局が移動局から受信するアップリンク信号の干渉レベルを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の移動通信システム。
【請求項8】
前記第2のセルに関する無線パラメータは、前記第2の基地局から送信されるダウンリンク信号の受信電力を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の移動通信システム。
【請求項9】
前記第2のセルに関する無線パラメータは、前記第2の基地局から送信されるダウンリンク信号の受信可否を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の移動通信システム。
【請求項10】
前記第1の情報は、前記第1の基地局を管理する管理装置を経由して前記制御手段に到達する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の移動通信システム。
【請求項11】
前記制御手段は、前記第2の基地局に接続する少なくとも1つの移動局の位置情報を、前記第1の基地局の位置情報と照合することで、前記測定要求の送信先移動局を決定する、請求項3に記載の移動通信システム。
【請求項12】
前記少なくとも1つの第1の基地局及び前記第2の基地局は上位ネットワークに接続され、
前記制御手段は、前記上位ネットワークに配置される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の移動通信システム。
【請求項13】
前記第1の基地局は、予め定められた移動局のみが接続を許可される基地局である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の移動通信システム。
【請求項14】
基地局装置であって、
第1のセルにおいて移動局との間で無線通信を行う無線通信手段と、
上位ネットワークとの間で通信可能な上位ネットワーク通信手段と、
前記第1のセルの無線特性を設定するコンフィグレーション制御手段と、
を備え、
前記コンフィグレーション制御手段は、前記第1のセルに関する無線パラメータ及び周辺の基地局が形成する第2のセルに関する無線パラメータのうち少なくとも一方を含む第1の情報を前記上位ネットワークに送信できるよう構成され、
前記第1の情報は、前記上位ネットワークにおいて、前記基地局装置を含む少なくとも1つの第1の基地局の中から、移動局による測定対象とされる第1の基地局を決定するために使用される、
基地局装置。
【請求項15】
前記コンフィグレーション制御手段は、前記第1の情報に対する応答として前記上位ネットワークから供給されるコンフィグレーション情報を受信し、前記コンフィグレーション情報に従って前記第1のセルの無線特性を調整する、請求項14に記載の基地局装置。
【請求項16】
前記無線通信手段は、前記周辺の基地局からの無線信号を受信可能に構成され、
前記第2のセルに関する無線パラメータは、前記無線通信手段によって測定される、
請求項14又は15に記載の基地局装置。
【請求項17】
前記コンフィグレーション情報は、前記周辺の基地局に接続する移動局による前記第1のセルからのダウンリンク信号の測定結果に基づいて生成される、請求項15又は請求項15を引用する請求項16に記載の基地局装置。
【請求項18】
前記第1の情報は、前記第1のセルで使用される無線周波数を示す情報と前記第1のセルの識別情報のうち少なくとも一方をさらに含む、請求項14〜17のいずれか1項に記載の基地局装置。
【請求項19】
前記第1のセルに関する無線パラメータは、前記基地局装置によるダウンリンク信号の送信電力を含む、請求項14〜18のいずれか1項に記載の基地局装置。
【請求項20】
前記第1のセルに関する無線パラメータは、前記基地局装置が移動局から受信するアップリンク信号の干渉レベルを含む、請求項14〜19のいずれか1項に記載の基地局装置。
【請求項21】
前記第2のセルに関する無線パラメータは、前記周辺の基地局から送信されるダウンリンク信号の受信電力を含む、請求項14〜20のいずれか1項に記載の基地局装置。
【請求項22】
前記第2のセルに関する無線パラメータは、前記周辺の基地局から送信されるダウンリンク信号の受信可否を含む、請求項14〜21のいずれか1項に記載の基地局装置。
【請求項23】
少なくとも1つの第1の基地局から到達する無線信号の測定を第2の基地局に接続する移動局に対して指示し、前記移動局による測定結果を受領する制御装置であって、
前記少なくとも1つの第1の基地局の各々から第1の情報を受領し、前記少なくとも1つの第1の基地局のうち前記移動局による測定対象とされる第1の基地局を決定する制御手段を備え、
前記第1の情報は、前記第1の情報の送信元基地局が形成する第1のセルに関する無線パラメータ及び前記送信元基地局が測定した前記第2の基地局が形成する第2のセルに関する無線パラメータのうち少なくとも一方を含む、
制御装置。
【請求項24】
前記制御手段は、前記移動局による測定結果に基づいて、前記測定対象とされた第1の基地局に対して前記第1のセルの調整を指示する、請求項23に記載の制御装置。
【請求項25】
前記制御手段は、前記測定対象に決定された第1の基地局が使用する無線リソースを特定可能な情報を含む測定要求を前記移動局に送信する、請求項23又は24に記載の制御装置。
【請求項26】
前記第1の情報は、前記第1のセルで使用される無線周波数を示す情報と前記第1のセルの識別情報のうち少なくとも一方をさらに含む、請求項23〜25のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項27】
前記第1のセルに関する無線パラメータは、前記第1の基地局によるダウンリンク信号の送信電力、及び前記第1の基地局が移動局から受信するアップリンク信号の干渉レベルのうち少なくとも1つを含む、請求項23〜26のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項28】
前記第2のセルに関する無線パラメータは、前記第2の基地局から送信されるダウンリンク信号の受信電力、及び前記第2の基地局から送信されるダウンリンク信号の受信可否のうち少なくとも1つを含む、請求項23〜27のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項29】
前記第1の情報は、前記第1の基地局を管理する管理装置を経由して前記制御装置に到達する、請求項23〜28のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項30】
前記制御手段は、前記第2の基地局に接続する少なくとも1つの移動局の位置情報を、前記第1の基地局の位置情報と照合することで、前記測定要求の送信先移動局を決定する、請求項25に記載の制御装置。
【請求項31】
前記少なくとも1つの第1の基地局及び前記第2の基地局は上位ネットワークに接続され、
前記制御装置は、前記上位ネットワークに配置される、請求項23〜30のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項32】
第1のセルにおいて移動局との間で無線通信を行う基地局装置の制御方法であって、
前記第1のセルに関する無線パラメータ及び周辺の基地局が形成する第2のセルに関する無線パラメータのうち少なくとも一方を含む第1の情報を上位ネットワークに送信すること、
を備え、
前記第1の情報は、前記上位ネットワークにおいて、前記基地局装置を含む少なくとも1つの第1の基地局の中から、移動局による測定対象とされる第1の基地局を決定するために使用される、
基地局装置の制御方法。
【請求項33】
前記第1の情報に対する応答として前記上位ネットワークから供給されるコンフィグレーション情報を受信すること、及び
前記コンフィグレーション情報に従って前記第1のセルの無線特性を調整すること、
をさらに備える、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
少なくとも1つの第1の基地局から到達する無線信号の測定を第2の基地局に接続する移動局に対して指示し、前記移動局による測定結果を受領する制御装置の制御方法であって、
前記少なくとも1つの第1の基地局の各々から第1の情報を受領し、前記少なくとも1つの第1の基地局のうち前記移動局による測定対象とされる第1の基地局を決定することを備え、
前記第1の情報は、前記第1の情報の送信元基地局が形成する第1のセルに関する無線パラメータ及び前記送信元基地局が測定した前記第2の基地局が形成する第2のセルに関する無線パラメータのうち少なくとも一方を含む、
制御装置の制御方法。
【請求項35】
基地局装置に関する処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記基地局装置は、
第1のセルにおいて移動局との間で無線通信を行う無線通信手段と、
上位ネットワークとの間で通信可能な上位ネットワーク通信手段と、
を備え、
前記処理は、
前記第1のセルに関する無線パラメータ及び周辺の基地局が形成する第2のセルに関する無線パラメータのうち少なくとも一方を含む第1の情報を、前記上位ネットワーク通信手段を介して前記上位ネットワークに送信すること、
を備え、
前記第1の情報は、前記上位ネットワークにおいて、前記基地局装置を含む少なくとも1つの第1の基地局の中から、移動局による測定対象とされる第1の基地局を決定するために使用される、
プログラム。
【請求項36】
前記処理は、
前記第1の情報に対する応答として前記上位ネットワークから供給されるコンフィグレーション情報を、前記上位ネットワーク通信手段を介して受信すること、及び
前記コンフィグレーション情報に従って前記第1のセルの無線特性を調整すること、
をさらに備える、請求項35に記載のプログラム。
【請求項37】
第1の基地局から到達する無線信号の測定を第2の基地局に接続する移動局に対して指示し、前記移動局による測定結果を受領する処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記処理は、
前記少なくとも1つの第1の基地局の各々から第1の情報を受領し、前記少なくとも1つの第1の基地局のうち前記移動局による測定対象とされる第1の基地局を決定すること、
を備え、
前記第1の情報は、前記第1の情報の送信元基地局が形成する第1のセルに関する無線パラメータ及び前記送信元基地局が測定した前記第2の基地局が形成する第2のセルに関する無線パラメータのうち少なくとも一方を含む、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホーム基地局を含む移動通信システムに関し、特に、ホーム基地局又はホーム基地局が形成するセルのコンフィグレーションに関する。
【背景技術】
【0002】
3GPP (Third Generation Partnership Project)等の標準化機関では、利用者宅内、オフィス内などに設置可能な小型基地局の標準化が進められている。この小型基地局は、ユーザによって宅内や小規模オフィス等に設置され、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)や光ファイバ回線等のアクセス回線を通じてコアネットワークに接続される。このような小型基地局は、一般的に、フェムト基地局、フェムトセル基地局、又はホーム基地局と呼ばれている。また、小型基地局が形成するセルのサイズ(カバーエリア)は、従来のマクロセルに比べて極めて小さい。このため、小型基地局が形成するセルは、フェムトセル又はホームセル等と呼ばれている。3GPPは、このような小型基地局を Home Node B(HNB)及び Home evolved Node B(HeNB)と定義して標準化作業を進めている。HNBはUTRAN (UMTS (Universal Mobile Telecommunications System) Terrestrial Radio Access Network)向けの小型基地局であり、HeNBはLTE(Long Term Evolution)/ E-UTRAN (Evolved UTRAN) 向けの小型基地局である。
【0003】
本明細書では、上述したような小型基地局を「ホーム基地局」と呼び、ホーム基地局によって形成されるセルを「ホームセル」と呼ぶ。なお、3GPPで検討されているUTRAN、E-UTRAN向けのホーム基地局を指す場合には、3GPPでの呼称にならって、HNB若しくはHeNB、又はこれらを総称してH(e)NBと呼ぶ。また、H(e)NBによって形成されるホームセルを、「H(e)NBセル」と呼ぶ。
【0004】
3GPP Release 8では、H(e)NBは、ユーザによって管理される基地局として標準化されている(非特許文献1を参照)。しかしながら、ユーザが、H(e)NB及びH(e)NBセルのコンフィグレーション(無線周波数、スクランブリングコード/フィジカルセルID、ダウンリンク送信電力等)を適切に設定することは難しい。このため、H(e)NBセルのコンフィグレーションが適切に行われていないことに起因して、M(e)NBセルとH(e)NBセルとの干渉問題が発生することが懸念されている。ここで、M(e)NBセルとは、M(e)NB(マクロNodeB又はマクロeNodeB)が生成するマクロセルである。
【0005】
H(e)NBセルとM(e)NBセルとの干渉を抑制するため、H(e)NBは、H(e)NBセルを自律的に設定する機能(セルフコンフィグレーション、オートコンフィグレーション等と呼ばれる)を持つことが検討されている。ここで、無線パラメータとは、H(e)NBセルの無線通信特性を規定するパラメータであって、具体的には、周波数帯域、スクランブリングコード、パイロット信号(CPICH:Common Pilot Channel)の送信電力、移動局によるアップリンク送信電力の最大値等である。また、自律的なセルフコンフィグレーションを行うために、H(e)NBが周辺のM(e)NBセルからのダウンリンク信号を受信する機能(Network Listen Mode、Radio Environment Measurement等と呼ばれる)を持つことも検討されている。H(e)NBは、M(e)NBセルからの無線信号を測定し、測定結果を用いてH(e)NBセルの無線パラメータを最適化する。
【0006】
M(e)NBセルとH(e)NBセルとの干渉を抑制する他の解決手法として、ネットワークオペレータが管理するRNC(Radio Network Controller)等の制御装置からH(e)NBに対して、H(e)NBセルのコンフィグレーション情報を送信することが提案されている(非特許文献2を参照)。H(e)NBは、受信したコンフィグレーション情報に基づいてH(e)NBセルの無線パラメータを調整する。この解決手法は、上述したセルフコンフィグレーションと併用することが想定されている。セルフコンフィグレーションは、H(e)NBのセットアップ時に行われることが想定されるため、H(e)NBセルの設定がその後の周辺環境の変化に適切に追随できないおそれがある。したがって、H(e)NBセルが適切に設定されていない場合には、上位ネットワーク側からH(e)NBにコンフィグレーション情報を供給することによって、H(e)NBセルの再コンフィグレーションを促すことが必要となる。
【0007】
さらに、上述した他の解決方法では、H(e)NBセルの無線パラメータをより適切に設定するため、M(e)NBセルに接続する移動局(以下、MUE(Macro User Equipment)と呼ぶ)によるH(e)NBセルの測定結果を利用することも検討されている。
図18は、UTRANのHNB7にRNC9からコンフィグレーション情報を供給する場合を示している。MUE8は、MNB6が形成するMNBセル12に接続している。MUE8は、HNBセル11からのダウンリンク信号を測定し、RNC9に測定報告(MEASUREMENT REPORT)を送信する。RNC9は、MNB6及びMNBセル12を管理するRNCである。RNC9は、MUE8によるHNBセル11の測定結果に基づいて、HNBセル11に関するコンフィグレーション情報(CFG)を生成し、これをHNB7に供給する。HNB7は、RNC9から受け取ったコンフィグレーション情報に従って、HNBセル11の無線パラメータを調整する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】3GPP TR 25.820 v8.2.0 (2008-09)、"3G Home Node B (HNB) study item Technical Report"
【非特許文献2】3GPP寄書、R3-091894 "Study on Enhanced Interference Management Mechanisms for HNB"、 [online]、3GPP、[平成21年9月19日検索]、インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG3_Iu/TSGR3_65/Docs/R3-091894.zip>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図18に示したようにMUEによるHNBセルの測定結果に基づいてHNBセルのコンフィグレーションを行う場合には、MUEがどのHNBセルを測定すべきかを決定することが困難という問題がある。HNBセルに対して使用が許可された全ての無線リソースに亘ってMUEが数多くのHNBセルを測定したのでは、MUEの通信性能の劣化や消費電力の増大を招くおそれがある。このため、HNB独自のセルフコンフィグレーションでは適切に設定されていないH(e)NBセルを選択し、MUEによる測定は選択されたH(e)NBセルに対して限定的に行えることが望ましい。
【0010】
本発明は上述の問題点に対処するためになされたものである。本発明の目的の1つは、H(e)NB等のホーム基地局に対して供給されるコンフィグレーション情報を生成するためにマクロセルに在圏する移動局によるホームセルの測定結果を利用するアーキテクチャにおいて、移動局の通信性能劣化及び消費電力増大の抑制に寄与することが可能な移動通信システム、基地局装置、制御装置、制御方法、及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様にかかる移動通信システムは、少なくとも1つの第1の基地局、第2の基地局、及び制御部を有する。前記第1の基地局は、自身が形成する第1のセルに関する無線パラメータ及び自身が測定した前記第2の基地局が形成する第2のセルに関する無線パラメータのうち少なくとも一方を含む第1の情報を送信できるよう構成されている。また、前記制御部は、前記第2の基地局に接続する移動局に対して前記第1の基地局から到達する無線信号の測定を指示し、前記移動局による測定結果を受領する。さらに、前記制御部は、各第1の基地局から前記第1の情報を受領し、前記少なくとも1つの第1の基地局のうち前記移動局による測定対象とされる第1の基地局を決定する。
【0012】
本発明の第2の態様は、基地局装置に関する。当該基地局装置は、無線通信部、上位ネットワーク通信部、及びコンフィグレーション制御部を有する。前記無線通信部は、第1のセルにおいて移動局との間で無線通信を行う。前記上位ネットワーク通信部は、上位ネットワークとの間で通信可能である。前記コンフィグレーション制御部は、前記第1のセルに関する無線パラメータ及び周辺の基地局が形成する第2のセルに関する無線パラメータのうち少なくとも一方を含む第1の情報を前記上位ネットワークに送信可能である。
【0013】
本発明の第3の態様は、少なくとも1つの第1の基地局から到達する無線信号の測定を第2の基地局に接続する移動局に対して指示し、前記移動局による測定結果を受領する制御装置に関する。当該制御装置は前記少なくとも1つの第1の基地局の各々から第1の情報を受領し、前記少なくとも1つの第1の基地局のうち前記移動局による測定対象とされる第1の基地局を決定する制御部を有する。ここで、前記第1の情報は、前記第1の情報の送信元基地局が形成する第1のセルに関する無線パラメータ及び前記送信元基地局が測定した前記第2の基地局が形成する第2のセルに関する無線パラメータのうち少なくとも一方を含む。
【0014】
本発明の第4の態様は、第1のセルにおいて移動局との間で無線通信を行う基地局の制御方法に関する。当該方法は、前記第1のセルに関する無線パラメータ及び周辺の基地局が形成する第2のセルに関する無線パラメータのうち少なくとも一方を含む第1の情報を前記上位ネットワークに送信することを含む。
【0015】
本発明の第5の態様は、少なくとも1つの第1の基地局から到達する無線信号の測定を第2の基地局に接続する移動局に対して指示し、前記移動局による測定結果を受領する制御装置の制御方法に関する。当該方法は、前記少なくとも1つの第1の基地局の各々から第1の情報を受領し、前記少なくとも1つの第1の基地局のうち前記移動局による測定対象とされる第1の基地局を決定することを含む。ここで、前記第1の情報は、前記第1の情報の送信元基地局が形成する第1のセルに関する無線パラメータ及び前記送信元基地局が測定した前記第2の基地局が形成する第2のセルに関する無線パラメータのうち少なくとも一方を含む。
【0016】
本発明の第6の態様は、基地局に関する処理をコンピュータに実行させるプログラムに関する。前記基地局は、第1のセルにおいて移動局との間で無線通信を行う無線通信部と、上位ネットワークとの間で通信可能な上位ネットワーク通信部とを有する。当該プログラムに基づいてコンピュータが行う前記処理は、前記第1のセルに関する無線パラメータ及び周辺の基地局が形成する第2のセルに関する無線パラメータのうち少なくとも一方を含む第1の情報を、前記上位ネットワーク通信部を介して前記上位ネットワークに送信すること、を含む。
【0017】
本発明の第7の態様は第1の基地局から到達する無線信号の測定を第2の基地局に接続する移動局に対して指示し、前記移動局による測定結果を受領する処理をコンピュータに実行させるプログラムに関する。当該プログラムに基づいてコンピュータが行う前記処理は、前記少なくとも1つの第1の基地局の各々から第1の情報を受領し、前記少なくとも1つの第1の基地局のうち前記移動局による測定対象とされる第1の基地局を決定することを含む。ここで、前記第1の情報は、前記第1の情報の送信元基地局が形成する第1のセルに関する無線パラメータ及び前記送信元基地局が測定した前記第2の基地局が形成する第2のセルに関する無線パラメータのうち少なくとも一方を含む。
【発明の効果】
【0018】
上述した本発明の各態様によれば、ホーム基地局に対して供給されるコンフィグレーション情報を生成するためにマクロセルに在圏する移動局によるホームセルの測定結果を利用するアーキテクチャにおいて、移動局の通信性能劣化及び消費電力増大の抑制に寄与することが可能な移動通信システム、基地局装置、制御装置、制御方法、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1の実施の形態にかかる移動通信システムのネットワーク構成例を示す図である。
【
図2】発明の第1の実施の形態にかかる移動通信システムのネットワーク構成例(UTRANの場合)を示す図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態にかかる移動通信システムのネットワーク構成例(LTE/E-UTRANの場合)を示す図である。
【
図4】本発明の第1の実施の形態にかかる移動通信システムのネットワーク構成例(UTRANの場合)を示す図である。
【
図5】本発明の第2の実施の形態にかかる移動通信システムのネットワーク構成例(UTRANの場合)を示す図である。
【
図6】本発明の第2の実施の形態にかかる移動通信システムにおけるコンフィグレーション情報の供給手順を示すシーケンス図である。
【
図7】本発明の第2の実施の形態におけるホーム基地局の構成例を示すブロック図である。
【
図8】本発明の第2の実施の形態にかかる移動通信システムにおけるRNCの構成例を示すブロック図である。
【
図9】本発明の第2の実施の形態における移動局の構成例を示すブロック図である。
【
図10】本発明の第2の実施の形態におけるホーム基地局の動作手順の具体例を示すフローチャートである。
【
図11】本発明の第2の実施の形態におけるRNCの動作手順の具体例を示すフローチャートである。
【
図12】本発明の第2の実施の形態における移動局の動作手順の具体例を示すフローチャートである。
【
図13】本発明の第3の実施の形態にかかる移動通信システムのネットワーク構成例(UTRANの場合)を示す図である。
【
図14】本発明の第3の実施の形態にかかる移動通信システムにおけるコンフィグレーション情報の供給手順を示すシーケンス図である。
【
図15】本発明の第3の実施の形態におけるホーム基地局の動作手順の具体例を示すフローチャートである。
【
図16】本発明の第3の実施の形態におけるRNCの動作手順の具体例を示すフローチャートである。
【
図17】本発明の第4の実施の形態にかかる移動通信システムにおけるコンフィグレーション情報の供給手順を示すシーケンス図である。
【
図18】背景技術にかかる移動通信システムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面において、同一要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略される。
【0021】
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態にかかる移動通信ステムのネットワーク構成例を示す図である。なお、
図1では、説明の簡略化のためにホーム基地局1を1つのみ図示しているが、複数のホーム基地局がマクロセル12内に配置される形態が一般的である。また、ホームセル11に接続する移動局(不図示)及びマクロセル12に接続する移動局8も複数台存在する形態が一般的である。
【0022】
ホーム基地局1は、移動局との間で双方向の無線通信を行う。また、ホーム基地局1は、ネットワークオペレータ(移動体通信事業者)のコアネットワークを含む上位ネットワーク(不図示)に接続されており、移動局と上位ネットワークとの間でトラフィックを中継する。ホームセル11は、ホーム基地局1によって形成されるセルである。ホーム基地局1は、後述する制御装置5から受信したコンフィグレーション情報(CFG)に従ってホームセル11の無線パラメータを調整する。ここで調整される無線パラメータは、ホームセル11で使用する周波数帯域、スクランブリングコード、ダウンリンク信号の送信電力、移動局によるアップリンク送信電力の最大値などである。
【0023】
マクロ基地局6は、ホームセル11に比べてセルサイズの大きいマクロセル12を形成し、移動局(MUE)8との間で双方向の無線通信を行う。マクロ基地局6も、上位ネットワーク(不図示)に接続されており、MUE8と上位ネットワークとの間でトラフィックを中継する。
【0024】
制御装置5は、MUE8に対して測定要求(MEASUREMENT REQUEST)を送信することによって、ホームセル11から到達するダウンリンク信号の測定をMUE8に指示する。制御装置5は、ホームセル11の測定結果を含む測定報告(MEASUREMENT REPORT)をMUE8から受信する。制御装置5は、MUE8からの測定報告に基づいてホームセル11のコンフィグレーション情報(CFG)を生成し、これをホーム基地局1に送信する。
【0025】
さらに、本実施の形態にかかるホーム基地局1及び制御装置5は、MUE8が測定を行うべきホームセル11の選択を可能とするため、以下に述べる動作を行う。ホーム基地局1は、「セル情報」を制御装置5に送る。制御装置5は、受信したセル情報に基づいて、複数のホームセル11のうちMUE8による測定対象とすべき少なくとも1つのセルを決定する。そして、制御装置5は、測定対象とされたホームセル11を特定可能な情報を含む測定要求をMUE8に送信する。これにより、MUE8は、測定対象のホームセル11が使用する無線リソースに限定して測定を行うことができる。したがって、MUE8の通信性能劣化及び消費電力増大を抑制できる。
【0026】
なお、制御装置5は、無線設定が適切に行われていないことが疑われるホームセル11(ホーム基地局1)を判定し、このセルをMUE8による測定対象として選択すればよい。このため、ホーム基地局1から制御装置5に送られるセル情報は、ホームセル11とマクロセル12の間における干渉レベルの判定に利用可能な情報を含んでいればよい。
【0027】
具体的に述べると、ホーム基地局1から制御装置5に送られるセル情報は、「ホームセル11の情報」又は「マクロセル12の測定情報」のうち少なくとも一方を含んでいればよい。ここで、ホームセル11の情報は、ホームセル11に関する無線パラメータ(ホーム基地局1からのダウンリンク信号の送信電力、ホーム基地局1におけるアップリンク信号の干渉レベルなど)を含む。また、マクロセル12の測定情報は、ホーム基地局1によって測定されたマクロセル12に関する無線パラメータ(マクロセル12からのダウンリンク信号の受信電力、マクロセル12からのダウンリンク信号の受信可否など)を含む。
【0028】
ところで、制御装置5の配置は、ネットワークアーキテクチャの設計思想に基づいて適宜決定されるものである。例えば、本実施の形態の移動通信システムがUMTSである場合、
図2に示すように、制御装置5の機能をRNC152に配置してもよい。
図2は、本実施の形態にかかる移動通信システムをUMTSに適用した場合の構成例を示す図である。
図2の例では、ホーム基地局(HNB)1は、IP(Internet Protocol)ネットワーク153及びHNB-GW151を介してコアネットワーク150に接続されている。また、マクロ基地局(MNB)6は、RNC152を介してコアネットワーク150に接続されている。HNB-GW151は、コアネットワーク150とホーム基地局(HNB)1の間に配置され、これらの間でユーザデータ及びCFG2を含む制御データを中継する。RNC152は、コアネットワーク150とNMB6の間に配置され、これらの間でユーザデータ及び制御データを中継する。また、RNC152は、マクロセル12の無線リソース管理、マクロセル12に在圏する移動局8−2のセル間移動の制御を行う。
【0029】
また、本実施の形態の移動通信システムがEPS(Evolved Packet System)である場合、
図3に示すように、制御装置5の機能をマクロ基地局(マクロeNB(MeNB))6と一体的に配置してもよい。
図3は、EPSに適用した場合の本実施の形態にかかる移動通信システムの構成例を示す図である。
【0030】
また、
図4に示すように、コアネットワーク150内の管理サーバ154に制御装置5の機能を配置してもよい。
図4は、UMTSの場合を示しているが、EPS等の他の移動通信システムの場合も同様である。
【0031】
また、制御装置5が有する機能は、移動通信システム内に分離して内に配置されてもよい。例えば、
図4の例において、HNB1からのセル情報の受信およびコンフィグレーション情報の生成機能を管理サーバ154に配置し、MUE8への測定要求の送信および測定報告の受信機能をRNC152に配置してもよい。
【0032】
以下の第2〜第4の実施の形態では、MUE8による測定対象とされるホームセル11(ホーム基地局1)の選択手法の具体例について詳しく説明する。なお、第2〜第4の実施の形態ではUMTS/UTRANの場合について具体的に説明するが、EPS(Evolved Packet System)/E-UTRAN等の他のシステムにもこれらの実施の形態を適用可能であることは勿論である。
【0033】
<第2の実施の形態>
本実施の形態にかかる移動通信システムの構成例を
図5に示す。本実施の形態では、ホーム基地局(HNB)2は、ホームセル(HNBセル)11の情報を含む「HNBセル情報」をRNC252に送信する、また、RNC252は、上述した制御装置5の動作を実行する。以下では、
図6を参照して、本実施の形態の動作を説明する。
【0034】
図6は、本実施の形態におけるHNB2へのコンフィグレーション情報の供給手順を示すシーケンス図である。ステップS101では、HNB2は、ホームセル11の情報を含む「HNBセル情報」をRNC252に送信する。HNBセル情報に含まれる無線パラメータの具体例は、HNB2からのダウンリンク信号の送信電力、HNB2が受信するアップリンク信号の干渉レベル等である。このうち、HNB2からのダウンリンク信号の送信電力は、HNBセル11からMUE8への干渉の評価に使用できる。HNB2の送信電力が大きい場合、MNB6からマクロセル(MNBセル)12に属する移動局(MUE8等)に到達するダウンリンク信号への干渉要因となるためである。一方、HNB2が受信するアップリンク信号の干渉レベルは、MUE8からHNBセル11への干渉の評価に使用できる。
【0035】
ステップS102では、RNC252は、HNB2から受信したHNBセル情報に基づいて、MUE8による測定対象とすべきHNBセル11(HNB2)を決定する。例えば、HNBセル情報が「HNB2からのダウンリンク信号の送信電力」を含む場合、送信電力が所定の基準値を超えている場合に当該HNBセル11を測定対象とすればよい。この場合には、HNBセル11から周辺セル(MNBセル12を含む)に対して許容範囲を超える干渉が生じているおそれがあるためである。また、HNBセル情報が「HNB2が受信するアップリンク信号の干渉レベル」を含む場合、HNB2が受けている干渉レベルが所定の基準値を超えている場合に当該HNBセル11を測定対象とすればよい。この場合には、周辺セル(MNBセル12を含む)からHNBセル11に対して許容範囲を超える干渉が生じているおそれがあるためである。
【0036】
ステップS103では、RNC252は、測定対象に選んだHNBセル11(又はHNB2)の指定を含むHNBセル測定要求をMUE8に送信する。この要求は、例えば、RRC(Radio Resource Control)メッセージの1つである"Measurement Control"を用いて送信すればよい。測定対象HNBの指定は、HNBセルの無線周波数、スクランブリングコード、セルIDのうち少なくとも1つを用いて行えばよい。また、HNBセル測定要求は、HNBセルの測定のためにMNB6からの送信が停止される期間を示す情報を含んでもよい。これにより、MUE8は、MNB6からのダウンリンク信号の影響を除いた正確な測定を行うことができる。
【0037】
なお、RNC252は、測定対象のHNB2の近傍に位置するMUE8を選択して測定要求を送信するとよい。HNB2及びMUE8の位置判定にはGPS(Global Positioning System)を利用すればよい。具体的には、HNB2及びMUE8にGPS(Global Positioning System)受信機を持たせ、コアネットワーク150に配置されたサーバ(不図示)又はRNC252においてHNB2及びMUE8の位置情報を収集すればよい。そして、HNB2の位置情報とMUE8の位置情報を照合することによって、測定対象のHNB2の近傍に位置するMUE8を選択すればよい。
【0038】
図6に戻り説明を続ける。ステップS104では、MUE8は、HNBセル測定要求で指定されたHNB2からのダウンリンク信号の測定を行う。ステップS105では、MUE8は、HNBセル11の測定結果をRNC252に報告する。この測定報告は、例えば、RRC(Radio Resource Control)メッセージの1つである"Measurement Report"を用いて行えばよい。
【0039】
ステップS106では、RNC252は、HNBセル測定報告に基づいて、測定対象とされたHNB2に送信するコンフィグレーション情報(CFG)を生成する。具体的には、HNBセル11からMNBセル12への干渉が大き過ぎる場合には、HNB2のダウンリンク送信電力を低下させる指示を含むCFGを生成すればよい。これとは逆に、MNBセル12からHNBセル11への干渉が大き過ぎる場合には、HNB2のダウンリンク送信電力の増加を許容する指示を含むCFGを生成すればよい。
【0040】
ステップS107では、RNC252は、測定対象とされたHNB2に対してコンフィグレーション情報(CFG)を送信する。一例として、コンフィグレーション情報(CFG)は、コアネットワーク150、HNB-GW151、IPネットワーク153、及びIPネットワーク153とHNB2との間のアクセス回線を経由して、HNB2に送信されてもよい。また、コンフィグレーション情報(CFG)は、MNB6からダウンリンク無線チャネルによってMNBセル12内に報知されてもよい。また、コンフィグレーション情報(CFG)の送信のために、これら2つの送信経路を併用してもよい。
【0041】
最後に、ステップS108では、HNB2は、RNC252から到達したコンフィグレーション情報(CFG)に従って自身のHNBセル11を調整する。
【0042】
続いて以下では、
図7〜9を参照して、HNB2、RNC252、及びMUE8の構成例について順に説明する。
図7は、HNB2の構成の一例を示すブロック図である。
図7において、無線通信部101は、送信データ処理部102から供給される送信シンボル列の直交変調、周波数変換、信号増幅等の各処理を行ってダウンリンク信号を生成し、これを移動局に送信する。また、無線通信部101は、移動局から送信されたアップリンク信号を受信する。
【0043】
送信データ処理部102は、移動局に向けて送信される送信データを通信部104から取得し、誤り訂正符号化、レートマッチング、インタリービング等を行なってトランスポートチャネルを生成する。さらに、送信データ処理部102は、トランスポートチャネルのデータ系列にTPC(Transmit Power Control)ビット等の制御情報を付加して無線フレームを生成する。また、送信データ処理部102は、拡散処理、シンボルマッピングを行って送信シンボル列を生成する。
【0044】
また、送信データ処理部102は、コアネットワーク150からコンフィグレーション情報(CFG)を受信した場合、これをコンフィグレーション制御部105に転送する。
【0045】
受信データ処理部103は、無線通信部101により受信されたアップリンク信号の逆拡散、RAKE合成、デインタリービング、チャネル復号、エラー訂正等の各処理を行って受信データを復元する。得られた受信データは、通信部104を経由してHNB-GW151およびコアネットワーク150に転送される。
【0046】
なお、無線通信部101は、MNB7等の周辺基地局からのダウンリンク信号を受信する機能(Network Listen Mode)を有していてもよい。この場合、無線通信部101は、MNB7から送信されるダウンリンク信号の受信、受信品質の測定を行う。また、受信データ処理部103は、無線通信部101の動作モードが周辺基地局からのダウンリンク信号を受信するモード(Network Listen Mode)である場合、セルコンフィグレーション情報(CFG)を受信データから取得してもよい。
【0047】
コンフィグレーション制御部105は、HNBセル情報を生成し、受信データ処理部103及び通信部104を介してHNBセル情報をコアネットワーク150に送信する。また、コンフィグレーション制御部105は、送信データ処理部102又は受信データ処理部103によって受信されたコンフィグレーション情報(CFG)に従って、HNBセル11の無線パラメータを調整する。
【0048】
図8は、RNC252の構成例を示すブロック図である。通信部2521は、MNB6との間でユーザデータ及び制御データを送受信する。送信データ処理部2522は、MUE8およびMNB6に向けて送信される送信データを通信部2524から取得する。また、送信データ処理部2522は、コンフィグレーション制御部2525からコンフィグレーション情報(CFG)を受け取った場合、通信部2521およびMNB6を経由して、コンフィグレーション情報(CFG)をMNBセル12内に報知する。
【0049】
受信データ処理部2523は、通信部2521から受信したデータを、通信部2524を経由してコアネットワーク150に転送する。また、受信データ処理部2523は、コンフィグレーション制御部2525からコンフィグレーション情報(CFG)を受け取った場合、通信部2524及びコアネットワーク150を経由して、これを宛先のHNB2へ送信する。
【0050】
コンフィグレーション制御部2525は、HNB2からHNBセル情報を受信し、当該情報に基づいて送信元のHNB2をMUE8による測定対象とするか否かを決定する。コンフィグレーション制御部2525は、測定対象に選んだHNBセル11(又はHNB2)の指定を含むHNBセル測定要求を、送信データ処理部2522及び通信部2521を経由してMUE8に送信する。コンフィグレーション制御部2525は、MUE8から受け取ったHNBセル測定報告に基づいて、測定対象とされたHNB2に送信するコンフィグレーション情報(CFG)を生成する。また、コンフィグレーション制御部2525は、生成したコンフィグレーション情報(CFG)を、MUE8による測定対象とされたHNB2に対して送信する。
【0051】
図9は、本実施の形態のMUE8の構成例を示すブロック図である。なお、
図9は、周辺のHNBセルの測定に関連する部分を図示しており、その他の構成部分は省略されている。
図9において、無線通信部801は、MNB6との間で無線通信を行う。
【0052】
受信処理部802は、MNB6からのデータを受信し、受信データがHNBセル測定要求である場合はこれを測定制御部804に転送する。また、受信処理部802は、測定制御部804からの測定指示に応じて指定されたMNBセル11の測定を行い、測定結果を測定制御部804に報告する。
【0053】
測定制御部804は、HNBセル測定要求を受信した場合、指定されたMNBセル11の測定を受信処理部802に指示する。また、測定制御部804は、ホームセル11の測定結果を受信処理部802から受け取り、これをRNC552へ送信するように送信データ制御部803に指示する。
【0054】
送信データ制御部803は、測定制御部804からの指示に従って、上りデータ送信の開始または停止を実行する。送信処理部805は、アップリンク信号を生成し、無線通信部801を経由してMNB6に送信する。
【0055】
続いて以下では、HNB2、RNC252、及びMUE8の各々の動作をフローチャートに従って説明する。
図10は、HNB2の動作の具体例を示すフローチャートである。ステップS201では、HNB2は、自身が生成するHNBセル11に関するHNBセル情報を生成する。ステップS202では、HNB2は、生成したHNBセル情報を上位ネットワーク(IPネットワーク153、HNB-GW152、コアネットワーク150)に送信する。ステップS203では、HNB2は、RNC252からコンフィグレーション情報(CFG)を受信したかを判定する。CFGを受信した場合(ステップS203でYES)、HNB2は、受信したCFGに従って自身のHNBセル11の無線パラメータを調整する(ステップS204)。
【0056】
図11は、RNC252の動作の具体例を示すフローチャートである。ステップS301では、RNC252は、HNB2からHNBセル情報を受信したかを判定する。HNBセル情報を受信した場合(ステップS301でYES)、RNC252は、受信したHNBセル情報に基づいて測定対象HNBの選択を行う(ステップS302)。ステップS303では、測定対象に選ばれたHNBセル11(又はHNB2)の指定を含むHNBセル測定要求をMUE8に送信する。ステップS304では、MUE8からHNBセル測定報告を受信したかを判定する。HNBセル測定報告を受信した場合(ステップS304でYES)、MUE8から受信した測定報告に基づいて、測定対象HNBセル11に関するコンフィグレーション情報(CFG)を生成する(ステップS305)。最後に、ステップS306では、生成したCFGを測定対象とされたHNB2に送信する。
【0057】
図12は、MUE8の動作の具体例を示すフローチャートである。ステップS401では、RNC252からのHNBセル測定要求をMNB6を経由して受信したかを判定する。HNBセル測定要求を受信した場合(ステップS401でYES)、MUE8は、測定要求にて指定されたHNBセル11から到達するダウンリンク信号を測定する。ステップS403では、HNBセル測定結果をMNB6経由でRNC252に送信する。
【0058】
以上に述べたように、本実施の形態では、HNB2からRNC252(制御装置5)に送信される「HNBセル情報」を参照することで、RNC252は、無線パラメータ設定が適切でないことが疑われるHNBセル11(又はHNB2)を判定できる。これにより、MUE8による測定対象とするセルを絞り込むことができる。
【0059】
<第3の実施の形態>
本実施の形態にかかる移動通信システムの構成例を
図13に示す。本実施の形態では、ホーム基地局(HNB)3は、自身が測定したマクロセル(MNBセル)12の測定情報を含む「MNBセル測定情報」をRNC352に送信する、また、RNC352は、上述した制御装置5の動作を実行する。以下では、
図14を参照して、本実施の形態の動作を説明する。
【0060】
図14は、本実施の形態におけるHNB3へのコンフィグレーション情報の供給手順を示すシーケンス図である。ステップS500では、HNB3は、周辺のMNBセル12の測定を行う。ステップS501では、HNB3は、MNBセル12の測定結果を含む「MNBセル測定情報」をRNC352に送信する。MNBセル測定情報に含まれる無線パラメータの具体例は、MNBセル12からのダウンリンク信号の受信電力、MNBセル12からのダウンリンク信号の受信可否などである。これらは、MUE8からHNBセル11への干渉の評価と、HNBセル11からMUE8への干渉の評価に使用できる。
【0061】
ステップS502では、RNC352は、HNB3から受信したMNBセル測定情報に基づいて、MUE8による測定対象とすべきHNBセル11(HNB3)を決定する。例えば、MNBセル測定情報が「MNBセル12からのダウンリンク信号の受信電力」を含む場合、受信電力が所定の基準値を超えている場合に当該HNBセル11を測定対象とすればよい。この場合には、MNBセル12からHNBセル11に対して許容範囲を超える干渉が生じているおそれがあるためである。
また、MNBセル測定情報が「MNBセル12からのダウンリンク信号の受信可否」を含む場合、MNBセル12からのダウンリンク信号を受信できない場合に当該HNBセル11を測定対象とすればよい。ダウンリンク信号を受信できない場合とは、パイロット信号(CPICH)の受信レベルが閾値以下である場合、又はSIB(System Information Block)を受信できない場合などである。これらの場合には、HNBセル11から周辺セル(MNBセル12を含む)に対して許容範囲を超える干渉が生じているおそれがあるためである。
【0062】
図14のステップS103〜S108は、
図6に示したステップS103〜S108と同様である。
【0063】
続いて以下では、HNB3及びRNC352の動作をフローチャートに従って説明する。なお、本実施の形態MUE8によるMNBセル11の測定動作は、上述した第2の実施の形態と同様であるから重複説明を省略する。
【0064】
図15は、HNB3の動作の具体例を示すフローチャートである。ステップS600では、HNB3は、MNBセル12の測定を行う。ステップS601では、HNB3は、ステップS600での測定結果を含むMNBセル測定情報を生成する。ステップS602では、HNB3は、生成したMNBセル測定情報を上位ネットワーク(IPネットワーク153、HNB-GW152、コアネットワーク150)に送信する。
図15のステップS203及びS204で行われる動作は、
図10に示したステップS203及びS204と同様である。
【0065】
次に、
図16は、RNC352の動作の具体例を示すフローチャートである。ステップS701では、RNC352は、HNB3からMNBセル測定情報を受信したかを判定する。ステップS702では、RNC352は、受信したMNBセル測定情報に基づいて測定対象HNBの選択を行う。
図16のステップS303〜S306は、
図11に示したステップS303〜S306と同様である。
【0066】
以上に述べたように、本実施の形態では、HNB3からRNC352(制御装置5)に送信される「MNBセル測定情報」を参照することで、RNC352は、無線パラメータ設定が適切でないことが疑われるHNBセル11(又はHNB3)を判定できる。これにより、MUE8による測定対象とするセルを絞り込むことができる。
【0067】
<第4の実施の形態>
本実施の形態では、上述した第2及び第3の実施の形態の組み合わせについて説明する。つまり、本実施の形態では、ホーム基地局(HNB)4は、「HNBセル情報」および「MNBセル測定情報」をともにRNC452に送信する、RNC452は、「HNBセル情報」および「MNBセル測定情報」の双方を考慮して、測定対象HNBを判定する。以下では、
図17を参照して、本実施の形態の動作を説明する。
【0068】
図17は、本実施の形態におけるHNB4へのコンフィグレーション情報の供給手順を示すシーケンス図である。ステップS800では、HNB4は、MNB6によって形成されるMNBセル12の測定を行う。ステップS801では、HNB4は、自身が形成すHNBセル11に関する「HNBセル情報」と、MNBセル12の測定結果を含む「MNBセル測定情報」とをRNC452に送信する。
【0069】
ステップS802では、RNC452は、HNB4から受信したHNBセル情報およびMNBセル測定情報に基づいて、MUE8による測定対象とすべきHNBセル11(HNB4)を決定する。
図17のステップS103〜S108は、
図6に示したステップS103〜S108と同様である。
【0070】
なお、ステップS802において、RNC452は、HNBセル情報に基づく測定対象セルの判定結果とMNBセル測定情報に基づく測定対象HNBセルの判定結果とを用いて、最終的な測定対象HNBセルを判定すればよい。なお、HNBセル情報に基づく測定対象セルの判定手順は、第2の実施の形態において
図6のステップS102に関して述べた通りである。また、MNBセル測定情報に基づく測定対象HNBセルの判定手順は、第3の実施の形態において
図14のステップS502に関して述べた通りである。
【0071】
1つの例では、RNC452は、HNBセル情報に基づく測定対象セルの判定結果とMNBセル測定情報に基づく測定対象HNBセルの判定結果にともに含まれるHNBセル11を測定対象とすればよい。これにより、測定多少セルの絞り込みが可能となるため、MUE8の測定負荷をさらに軽減することができる。
【0072】
また、他の例では、RNC452は、HNBセル情報に基づく測定対象セルの判定結果とMNBセル測定情報に基づく測定対象HNBセルの判定結果のうち少なく一方に含まれるHNBセル11を全て測定対象とすればよい。これにより、無線パラメータ調整が適切でない疑いのあるHNBセル11を網羅的に調査することができ、セル間干渉を抑制してシステム全体の通信品質の向上に寄与できる。
【0073】
<その他の実施の形態>
第2〜第4の実施の形態では、UMTSの場合について具体的に説明した。しかしながら、これらの実施の形態で説明した測定対象ホームセルの選択手法と、ホーム基地局へのコンフィグレーション情報の供給手法は、EPSなど他のシステムにも当然に適用可能である。
【0074】
上述した第1〜第4の実施の形態で述べた各装置(制御装置5、管理サーバ154、ホーム基地局1〜4、移動局8、並びにRNC152、252、352及びび452)で行われる処理は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、MPU(Micro Processing Unit)若しくはCPU(Central Processing Unit)又はこれらの組み合わせを含むコンピュータ・システムを用いて実現することができる。具体的には、シーケンス図又はフローチャートを用いて説明した各装置の処理手順に関する命令群を含むプログラムをコンピュータ・システムに実行させればよい。
【0075】
これらのプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R、CD−R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0076】
さらに、本発明は上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、既に述べた本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは勿論である。
【0077】
この出願は、2009年10月1日に出願された日本出願特願2009−229472を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0078】
1 ホーム基地局
2〜4 ホーム基地局(HNB)
5 制御装置
6 マクロ基地局(M(e)NB)
8 マクロ移動局(MUE)
11 ホームセル
12 マクロセル
150 コアネットワーク
151 H(e)NBゲートウェイ(H(e)NB-GW)
152、252、353、452 RNC
153 IPネットワーク
154 管理サーバ