特許第5799811号(P5799811)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5799811
(24)【登録日】2015年9月4日
(45)【発行日】2015年10月28日
(54)【発明の名称】リード型圧電振動デバイス
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/10 20060101AFI20151008BHJP
   H03H 9/02 20060101ALI20151008BHJP
   H01L 41/18 20060101ALI20151008BHJP
   H01L 41/09 20060101ALI20151008BHJP
【FI】
   H03H9/10
   H03H9/02 B
   H01L41/18 101A
   H01L41/08 L
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2011-544332(P2011-544332)
(86)(22)【出願日】2010年12月3日
(86)【国際出願番号】JP2010071684
(87)【国際公開番号】WO2011068200
(87)【国際公開日】20110609
【審査請求日】2013年6月26日
(31)【優先権主張番号】特願2009-276718(P2009-276718)
(32)【優先日】2009年12月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000149734
【氏名又は名称】株式会社大真空
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 達也
(72)【発明者】
【氏名】古賀 忠孝
(72)【発明者】
【氏名】岸本 光市
【審査官】 畑中 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−015188(JP,A)
【文献】 特開昭64−000809(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/023685(WO,A1)
【文献】 特開2008−131162(JP,A)
【文献】 特開2008−028590(JP,A)
【文献】 特開2001−009587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/10
H03H 9/02
H01L 41/09
H01L 41/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リード型圧電振動デバイスにおいて、
圧電振動片と、前記圧電振動片を支持するリード端子とが設けられ、
前記圧電振動片に、前記リード端子と電気的に接続する端子電極が形成され、
前記リード端子に、前記圧電振動片と電気的に接続する接合層が形成され、
前記接合層には、SnとCuとからなる金属化合物が予め含有され、当該接合層は、Cuからなる第1接合層と、前記第1接合層上にCuとSnとからなる第2接合層とから構成され、
前記圧電振動片と前記リード端子とが、前記端子電極と前記接合層とによって電気機械的に接合され、
前記端子電極と前記接合層との接合によって、前記端子電極と前記接合層とからSn−Cu金属間化合物を含む接合材が形成され
前記リード端子の前記第1接合層付近と、前記圧電振動片と前記リード端子との間の最も狭いギャップおよびその付近とに、前記Sn−Cu金属間化合物が偏在することを特徴とするリード型圧電振動デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載のリード型圧電振動デバイスにおいて、
前記圧電振動片と前記リード端子との間の最も狭いギャップは、3〜20μmであることを特徴とするリード型圧電振動デバイス。
【請求項3】
請求項1または2に記載のリード型圧電振動デバイスにおいて、
前記端子電極の最上層に、CuからなるCu層が形成されたことを特徴とするリード型圧電振動デバイス。
【請求項4】
請求項3に記載のリード型圧電振動デバイスにおいて、
前記端子電極には、Cr層とCr−Sn層とが形成され、前記Cr層と前記Cr−Sn層との間に、Snの拡散を遮断するためのバリア層が形成されたことを特徴とするリード型圧電振動デバイス。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちいずれか1つに記載のリード型圧電振動デバイスにおいて、
前記接合材には、Snが含まれ、
前記圧電振動片の励振電極は、前記励振電極よりも濡れ性が低い薄膜を介して前記端子電極に接続されたことを特徴とするリード型圧電振動デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リード型圧電振動デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
リード型圧電振動デバイスは、圧電振動片と、圧電振動片を保持する一対のリード端子と、リード端子を植設し、圧電振動片を搭載するベースと、ベースに搭載した圧電振動片を気密封止する蓋とが設けられてなる。このリード端子圧電振動デバイスでは、ベースと蓋とからパッケージが構成され、ベースと蓋とが接合されて、気密封止された内部空間が形成される。内部空間では、水晶振動片が、半田などを用いてリード端子に電気機械的に接合される(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−37003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のリード端子圧電振動デバイスでは、リフロー時(ベースと蓋との接合時や、当該リード端子圧電振動デバイスをプリント基板などの外部基板上に載せる時など)に発生する熱によって、半田が溶融し、圧電振動片がリード端子から外れて倒れてしまうといった問題があった。
【0005】
特に、鉛フリー材料からなる半田(以下、鉛フリー半田とする)を用いる場合、鉛フリー半田の耐熱性が低く、鉛フリー半田のみではリフロー時に圧電振動片がリード端子から外れて倒れる。
【0006】
そこで、現在、樹脂接着剤を用いて、リフロー時に圧電振動片がリード端子から外れるのを防止して、リード端子圧電振動デバイスの信頼性を確保する技術があるが、この場合、樹脂接着剤に起因するガスが発生し、このガス発生により圧電振動デバイスの特性を低下させるという別の問題が生じる。
【0007】
そこで、上記課題を解決するために、本発明は、リフロー時であっても圧電振動片がリード端子から外れるのを抑え、耐熱性に優れた良好な特性を有するリード型圧電振動デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明にかかるリード型圧電振動デバイスは、圧電振動片と、前記圧電振動片を支持するリード端子とが設けられ、前記圧電振動片に、前記リード端子と電気的に接続する端子電極が形成され、前記リード端子に、前記圧電振動片と電気的に接続する接合層が形成され、前記接合層には、SnとCuとからなる金属化合物が予め含有され、当該接合層は、Cuからなる第1接合層と、前記第1接合層上にCuとSnとからなる第2接合層とから構成され、前記圧電振動片と前記リード端子とが、前記端子電極と前記接合層とによって電気機械的に接合され、前記端子電極と前記接合層との接合によって、前記端子電極と前記接合層とからSn−Cu金属間化合物を含む接合材が形成され、前記リード端子の前記第1接合層付近と、前記圧電振動片と前記リード端子との間の最も狭いギャップおよびその付近とに、前記Sn−Cu金属間化合物が偏在することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、鉛フリー半田などと比べて溶融温度が高い前記Sn−Cu金属間化合物を含む前記接合材によって、前記端子電極と前記接合層との接合を行うので、前記接合材の耐熱性を向上させることが可能となる。よって、リフロー時であっても少なくとも前記Sn−Cu金属間化合物によって前記リード端子に前記圧電振動片を支持することが可能となる。そのため、本発明によれば、リフロー時であっても、前記Sn−Cu金属間化合物を含む前記接合材によって前記圧電振動片が前記リード端子から外れるのを抑えることが可能となる。また、本発明によれば、前記圧電振動片を前記リード端子に支持させるために、従来技術のように樹脂接着剤を用いないので、本リード型圧電振動デバイスの特性低下を抑制することができる。
【0011】
また、前記リード端子の前記第1接合層付近と、前記圧電振動片と前記リード端子との間の最も狭いギャップおよびその付近とに、前記Sn−Cu金属間化合物が偏在するので、偏在する前記Sn−Cu金属間化合物によりリフロー時の環境温度に耐えて前記圧電振動片と前記リード端子とを電気機械的に接合することが可能となる。
この場合、前記接合層は、Cuからなる前記第1接合層と、前記第1接合層上にCuとSnとからなる前記第2接合層とから構成されるので、接合時(加熱時)に前記第2接合層のSnに対して前記第1接合層からCuが供給される。その結果、新たな前記Sn−Cu金属間化合物の生成が促進され、前記接合材の耐熱性を向上させることが可能となる。また、この場合、前記接合層は、CuとSnとを含んでいるので、前記端子電極と前記接合層との接合の際に、前記接合層中に分散しているCuとSnとが結合し(例えばCu6Sn5やCu3Sn)、かつ、CuとSnとからなる前記Sn−Cu金属間化合物が偏在する。また、接合層のCuとSnとが既に結合している場合(前記Sn−Cu金属化合物が既に存在している場合)、このCuとSnとからなる前記Sn−Cu金属間化合物が偏在する。
【0012】
前記構成において、前記圧電振動片と前記リード端子との間の最も狭いギャップは3〜20μmであってもよい。
【0013】
この場合、前記最も狭いギャップが3〜20μmであるので、前記Sn−Cu金属間化合物が、前記最も狭いギャップの部分に良好な状態で偏在し、さらに前記接合材の形状は接合に良好なフィレットを維持することが可能となる。よって、本構成によれば、前記圧電振動片と前記リード端子とを前記Sn−Cu金属間化合物を含む接合材を介して強く接合させることが可能となり、当該リード型圧電振動デバイスの小型化に好適である。これに対して、前記最も狭いギャップが3μm未満の場合、このギャップの部分が脆くなり、前記接合材の強度が低下する。また、前記最も狭いギャップが20μmを越える場合、前記圧電振動片に形成される前記接合材のフィレットが小さくなり、前記圧電振動片と前記リード端子との接合強度が低下する。また、前記接合材における前記Sn−Cu金属間化合物の生成量が相対的に少なくなることがあり、耐熱性が低下する。
【0018】
前記構成において、前記端子電極の最上層に、CuからなるCu層が形成されてもよい。
【0019】
この場合、前記端子電極の最上層に、CuからなるCu層が形成されるので、前記端子電極と前記接合層との接合の際に、前記接合層のSnが前記端子電極のCu層に拡散していき、前記接合層の前記Snと前記端子電極のCu層のCuとによって、リフロー時の環境温度に対して耐熱性を有する前記Sn−Cu金属間化合物を形成することが可能となる。
【0020】
前記構成において、前記端子電極には、Cr層とCr−Sn層とが形成され、前記Cr層と前記Cr−Sn層との間に、Snの拡散を遮断するためのバリア層が形成されてもよい。
【0021】
この場合、前記端子電極には、前記Cr層と前記Cr−Sn層との間に前記バリア層が形成されているので、前記端子電極と前記接合層との接合の際に、前記接合層のSnが前記端子電極のCr層に拡散するのを前記バリア層によって防ぐことが可能となる。その結果、前記接合層や端子電極のSnによって前記端子電極の下層となる前記Cr層が喰われることが無くなり、前記Cr層が前記Snに喰われることによって前記圧電振動片から前記端子電極が剥がれるのを抑えることが可能となる。
【0022】
前記構成において、前記接合材には、Snが含まれ、前記圧電振動片の励振電極は、前記励振電極よりも濡れ性が低い薄膜を介して前記端子電極に接続されてもよい。
【0023】
この場合、前記接合材のSnが前記端子電極から前記薄膜を介して前記励振電極を浸食するのを抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、リフロー時であっても圧電振動片がリード端子から外れて倒れるのを抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本実施の形態にかかる、内部空間を公開した水晶振動子の概略側面図である。
図2図2は、本実施の形態にかかる水晶振動片の引出電極および端子電極のパターンを示した水晶振動片の概略一部拡大平面図である。
図3図3は、本実施の形態にかかるリード端子の、図1に示すA−A線断面図である。
図4図4は、本実施の形態にかかる水晶振動片とリード端子との接続状態を示した、図1に示すB−B線拡大断面図である。
図5図5は、本実施の形態にかかる水晶振動片とリード端子との接続状態を示した概略側面図である。
図6図6は、本実験例にかかる水晶振動片とリード端子との接続状態を示したSEM画像である。
図7図7は、他の実施の形態にかかる水晶振動片とリード端子との接続状態を示した、図4に対応する拡大断面図である。
図8図8は、他の実施の形態にかかる水晶振動片とリード端子との接続状態を示した、図4に対応する拡大断面図である。
図9図9は、他の実施の形態にかかる水晶振動片の表側主面に形成された引出電極および端子電極のパターンを示した水晶振動片の概略斜視図である。
図10図10は、他の実施の形態にかかる水晶振動片の裏側主面に形成された引出電極および端子電極のパターンを示した水晶振動片の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施の形態では、リード型圧電振動デバイスとしてリード型水晶振動子に本発明を適用した場合を示す。
【0027】
本実施の形態にかかるリード型水晶振動子(以下、水晶振動子1とする)には、図1に示すように、音叉型水晶振動片(本発明でいう圧電振動片であり、以下、水晶振動片2とする)と、水晶振動片2を支持する一対のリード端子31,32と、リード端子31,32を植設し、水晶振動片2を搭載するベース3と、ベース3に搭載した水晶振動片2を気密封止する蓋4とが設けられている。
【0028】
水晶振動子1では、ベース3と蓋4とからパッケージが構成され、ベース3と蓋4とが接合されて、気密封止された内部空間11が形成される。内部空間11では、水晶振動片2がリード端子31,32のみに電気機械的に接合されている。本実施の形態では、水晶振動片2はベース3に直接接していない。
【0029】
次に、この水晶振動子1の各構成について図1〜3を用いて説明する。
【0030】
−水晶振動片2−
水晶振動片2は、異方性材料の水晶素板(図示省略)からフォトリソグラフィー技術を用いてウェットエッチング形成された水晶Z板であり、この水晶振動片2は量産に好適である。
【0031】
水晶振動片2は、図1,2に示すように、基部21と、振動部である2本の脚部22,23とから構成されている。2本の脚部22,23は、基部21の一端から同一方向に突出して成形されている。この水晶振動片2では、水晶振動片2を湿式でエッチング成形する際、水晶の結晶方向(X,Y方向)へのエッチングスピードが異なるため、その側面24が主面25に対して傾斜している(図示省略)。なお、この水晶振動片2の加工は、上記のフォトリソグラフィー技術を用いたウェットエッチング以外に、周知のワイヤーソーを用いた機械加工により行ってもよい。
【0032】
各脚部22,23には、異電位で構成された一対の励振電極51,52と、外部電極(本実施の形態では一対のリード端子31,32)に電気的に接続する一対の端子電極61,62と、励振電極51,52を端子電極61,62にそれぞれ引き出す一対の引出電極71,72とが設けられている。
【0033】
励振電極51は、脚部22の両主面25と脚部23の両側面24とに形成され、励振電極52は、脚部23の両主面25と脚部22の両側面24とに形成されている。これら励振電極51,52は、金属蒸着によって、各脚部22,23上にCrからなるCr層が形成され、Cr層上にCrとSnとからなるCr−Sn層が形成され、Cr−Sn層上にSnとからなるSn層が形成され、Sn層上にAgからなるAg層が形成された薄膜で構成される。
【0034】
引出電極71,72は、励振電極51,52から引出し形成された電極パターンであり、励振電極51,52と同時に基部21および脚部22,23に形成される電極パターンと、励振電極51,52と同時に形成されない電極パターンとから構成されている。
【0035】
励振電極51,52と同時に形成される電極パターンの引出電極71,72は、各脚部22,23の両主面25および両側面24と、基部21の両主面25および両側面24とに形成されている。これら励振電極51,52と同時に形成される電極パターンの引出電極71,72は、金属蒸着によって、各脚部22,23および基部21上にCrからなるCr層が形成され、Cr層上にCrとSnとからなるCr−Sn層が形成され、Cr−Sn層上にSnとからなるSn層が形成され、Sn層上にAgからなるAg層が形成された薄膜73で構成される。薄膜73は、励振電極51,52と同一の厚さを有する。
【0036】
励振電極51,52と同時に形成されない電極パターンの引出電極71,72は、金属蒸着によって基部21上にCrからなるCr層が形成された薄膜74である。薄膜74の一部は、図2に示すように薄膜73上に形成される。
【0037】
端子電極61は、基部21の一主面25に形成され、端子電極62は、基部21の他主面25に形成され、これら端子電極61,62は、基部21の両主面25に対向せずに形成されている。端子電極61,62は、金属蒸着によって、基部21の両主面25上にCrからなるCr層が形成され、Cr層上にCrとSnとからなるCr−Sn層が形成され、Cr−Sn層上にSnとからなるSn層が形成され、Sn層上にAgからなるAg層が形成された薄膜63と、金属蒸着によって薄膜63と基部21との上にCrからなるCr層が形成された薄膜64とから構成される。端子電極61,62の薄膜63は、励振電極51,52や引出電極71,72の薄膜73と同時に基部21に形成され、励振電極51,52や引出電極71,72の薄膜73と同一の厚さを有する。端子電極61,62の薄膜64は、引出電極71,72の薄膜74と同時に基部21に形成され、引出電極71,72の薄膜74と同一の厚さを有する。
【0038】
また、各脚部22,23の先端部26には、図1に示すように、周波数調整用錘としての錘薄膜8がそれぞれ形成されている。錘薄膜8は、励振電極51,52とそれぞれ電気的に接続されている。錘薄膜8は、金属蒸着によって、各脚部22,23上にCrからなるCr層が形成され、Cr層上にCrとSnとからなるCr−Sn層が形成され、Cr−Sn層上にSnとからなるSn層が形成され、Sn層上にAgからなるAg層が形成された薄膜で構成される。錘薄膜8は、励振電極51,52と同時に各脚部22,23上に形成され、励振電極51,52と同一の厚さを有する。
【0039】
−リード端子31,32−
一対のリード端子31,32は、図1に示すように金属材料からなる細長い円柱形状に成形され、断面形状は図3に示すように円形となっている。リード端子31,32は、図3に示すように、コバールからなる芯部33と、芯部33を覆うようにその外周に形成され、水晶振動片2(端子電極61,62)と電気機械的に接合する接合層とから構成される。接合層は、Cuからなる第1接合層34と、第1接合層34を覆うようにその外周に形成された第2接合層35とから構成される。本実施の形態では、芯部33の径が0.25nmとされ、第1接合層34の厚みが5μmとされ、第2接合層35の厚みが10μmとされる。なお、リード端子31,32のうち、ベース3と蓋4とによって気密封止された部分をインナーリードとし、外部機器などに電気的に接続する部分をアウターリードとする。
【0040】
第2接合層35は、図3に示すように、SnとCuとからなる金属化合物37を含有したSn36からなる鉛フリーのSn−Cu層であり、第1接合層34上にメッキ形成されている。
【0041】
また、第2接合層35は、Cuリッチな状態(7〜13%Cu)となっている。そのため、ベース3と蓋4とを圧着した状態でベース3と蓋4とを接合する際に、ベース3と蓋4との圧着をスムーズに行うことができ、内部空間11が気密状態となる。これに対して、第2接合層35のCu含有率が13%を超えた場合、ベース3と蓋4との圧着をスムーズに行うことができず、内部空間11が気密不良となる。また、第2接合層35のCu含有率が7%未満の場合、金属間化合物(下記の金属間化合物91参照)の生成が行われ難くなり、接合材7の耐熱性が低下する。
【0042】
−ベース3−
ベース3は、図1に示すように、42アロイ(鉄ニッケル合金)等からなり、全体として低背の長円柱形状に成形されている。このベース3の表面には、下地層としてCuメッキが形成され、その上層にSn−Cuメッキが電解メッキ法等により形成される。
【0043】
ベース3の中心部には、リード端子31,32を植設する孔部39が形成されている。この孔部39にリード端子31,32を通した状態で絶縁ガラス38を充填させ、絶縁ガラス38を硬化させることによって、リード端子31,32を絶縁ガラス38を介してベース3に植設する。このように、ベース3では、リード端子31,32を絶縁ガラス38を介してベース3の中心部に植設するため、リード端子31,32は、ベース3に対して電気的に独立する。またリード端子31,32にも第1接合層34に対応するCuメッキが形成され、その上層にSn−Cuメッキが電解メッキ法等により形成される。なお、当該Sn−Cuメッキでは、メッキ形成時からSnとCuからなる金属間化合物37が存在している。
【0044】
−蓋−
蓋4は、例えば洋白(Cu,Ni,Zn合金)からなり、下面を開口し中空を有する長円柱形状に成形されている。蓋4の表面には、Niからなる腐食防止用の膜(図示省略)がメッキなどの手法により形成されている。
【0045】
以上の構成からなる水晶振動子1では、水晶振動片2をリード端子31,32のみに電気機械的に接合し、リード端子31,32に電気機械的に接合した水晶振動片2を覆うように、ベース3に蓋4を配し、ベース3と蓋4とを圧着した状態で抵抗溶接などによりベース3と蓋4とを接合して水晶振動片2を気密封止する。この時の水晶振動片2とリード端子31,32との接合について、以下に説明する。
【0046】
−水晶振動片2とリード端子31,32との接合−
水晶振動片2とリード端子31,32とは、水晶振動片2の端子電極61,62の一部と、リード端子31,32の第1接合層34の一部および第2接合層35とによって電気機械的に接合され、この接合によって、端子電極61,62と第1接合層34と第2接合層35とからSn−Cu合金(Sn−Cu金属間化合物91)を含む接合材9が形成され、第2接合層35中の金属間化合物37が、水晶振動片2(具体的には端子電極61,62の最下層となるCr層)とリード端子31,32(具体的には第1接合層34)との間の最も狭いギャップに集まる(偏在する)。具体的には、図2に示す水晶振動片2の端子電極61,62のSnと、図3に示すリード端子31,32の第2接合層35のCu,Snとが、図4,5に示すように金属間接合され、Sn−Cu金属間化合物91を含む接合材9が形成される。この接合材9を介した水晶振動片2とリード端子31,32との間の最も狭いギャップは、3〜20μmとされる。
【0047】
この水晶振動片2とリード端子31,32との接合の工程を説明すると、ベース3に植設したリード端子31,32に、水晶振動片2をソフトビームで接着し、水晶振動片2をリード端子31,32に電気的に接合する。その後、窒素ガス雰囲気下で200〜230度で数時間熱処理を行い、図4,5に示す水晶振動片2とリード端子31,32との接合状態となる接合材9を形成する。
【0048】
接合材9は、リフロー時の環境温度(例えば、260℃以上)よりも高い融点を有する。この接合材9では、リード端子31,32の第1接合層34付近と、水晶振動片2とリード端子31,32との間の最も狭いギャップおよびその付近とに、Sn−Cu金属間化合物91が偏在する。接合材9のそれ以外(Sn−Cu金属間化合物91が生成された部位以外)の部位に、Cuと金属間接合しなかったSn92が偏在する。具体的に、Sn92は、リード端子31,32の第1接合層34の外周に形成されたSn−Cu金属間化合物91の外方と、水晶振動片2とリード端子31,32との間であって最も狭いギャップ付近以外の位置とに偏在する。
【0049】
上記の水晶振動片2とリード端子31,32との接合によって形成された接合材9の実験例を図6に示す。
【0050】
図6に示す実験例では、水晶振動片2とリード端子31,32とを接合している接合材9のうち、色の薄い部分がSn92に対応し、色の濃い部分がSn−Cu金属間化合物91に対応する。なお、図6に示す実験例では、水晶振動片2とリード端子31,32との間の最も狭いギャップは、約12〜13μmである。
【0051】
本実施の形態にかかる水晶振動子1によれば、鉛フリー半田などと比べて溶融温度が高い金属間化合物(Sn−Cu金属間化合物91)を含む接合材9によって、少なくとも端子電極61,62と接合層(第1接合層34,第2接合層35)との接合を行うので、接合材9の耐熱性を向上させることができる。よって、リフロー時であっても少なくともSn−Cu金属間化合物91によってリード端子31,32に水晶振動片2を支持することができる。そのため、本実施の形態によれば、リフロー時であっても、Sn−Cu金属間化合物91を含む接合材9によって水晶振動片2がリード端子31,32から外れるのを抑えることができる。また、本実施の形態によれば、水晶振動片2をリード端子31,32に支持させるために、従来技術のように樹脂接着剤を用いないので、水晶振動子1の特性低下を抑制することができる。
【0052】
ところで、本実施の形態と異なり、導電性接着剤を用いてリード端子31,32に水晶振動片2を接合した場合、リフロー時であっても水晶振動片2がリード端子31,32から外れるのを抑えることはできる。しかしながら、導電性接着剤を用いてリード端子31,32に水晶振動片2を接合した場合、導電性接着剤からガスが発生するため、このガスが原因となって水晶振動片2の振動特性を劣化させる。そのため、リード端子31,32と水晶振動片2とを接合させる手段として導電性接着剤を用いることは、好ましくない。
【0053】
また、水晶振動片2とリード端子31,32との間の最も狭いギャップおよびその付近に、金属間化合物(Sn−Cu金属間化合物91)が偏在するので、Sn−Cu金属間化合物91によりリフロー時の環境温度に耐えて水晶振動片2とリード端子31,32とを電気機械的に接合することができる。
【0054】
また、水晶振動片2とリード端子31,32との間の最も狭いギャップが3〜20μmであるので、Sn−Cu金属間化合物91が、最も狭いギャップの部分に良好な状態で偏在し、さらに接合材9の形状は接合に良好なフィレットを維持することができる。よって、本実施の形態によれば、水晶振動片2とリード端子31,32とをSn−Cu金属間化合物91を含む接合材9を介して強く接合させることができ、当該水晶振動子1の小型化に好適である。これに対して、最も狭いギャップが3μm未満の場合、このギャップの部分が脆くなり、接合材9の強度が低下する。また、最も狭いギャップが20μmを越える場合、水晶振動片2に形成される接合材9のフィレットが小さくなり、水晶振動片2とリード端子31,32との接合強度が低下する。また、接合材9におけるSn−Cu金属間化合物91の生成量が相対的に少なくなることがあり、耐熱性が低下する。
【0055】
また、接合層(第1接合層34,第2接合層35)は、CuとSnとを含んでいるので、端子電極61,62と接合層との接合の際に、接合層中に分散しているCuとSnとが結合し(例えばCu6Sn5やCu3Sn)、CuとSnとからなるSn−Cu金属間化合物91が偏在する。また、接合層のCuとSnとが既に結合している場合(Sn−Cu金属間化合物91が第2接合層35に既に存在している場合)、このCuとSnとからなるSn−Cu金属間化合物91が偏在する。
【0056】
また、接合層は、Cuからなる第1接合層34と、第1接合層34上にCuとSnとからなる第2接合層35とから構成されるので、接合時(加熱時)に第2接合層35のSnに対して第1接合層34からCuが供給される。その結果、新たな金属間化合物(Sn−Cu金属間化合物91)の生成が促進され、接合材9の耐熱性を向上させることができる。
【0057】
また、端子電極61,62の最上層に、CuからなるCu層が形成されるので、端子電極61,62と接合層(第1接合層34,第2接合層35)との接合の際に、接合層のSnが端子電極61,62のCu層に拡散していき、接合層のSnと端子電極61,62のCu層のCuとによって、リフロー時の環境温度に対して耐熱性を有するSn−Cu金属間化合物91を形成することができる。
【0058】
なお、本実施の形態にかかる水晶振動片2の脚部22,23の両主面25には、水晶振動片2の小型化により劣化する直列共振抵抗値(本実施の形態ではCI値)を改善させるために、凹部が形成され、励振電極51,52の一部は、凹部の内部にそれぞれ形成されてもよい。この場合、水晶振動片2を小型化しても脚部22,23の振動損失が抑制され、CI値を低く抑えることができる。
【0059】
また、本実施の形態にかかる励振電極51,52は、Cr層、Cr−Sn層、Sn層、Ag層の順に積層した薄膜で構成しているが、これに限定されるものではなく、CrからなるCr層、AuからなるAu層の順に積層した薄膜であってもよい。またCrからなるCr層、CrおよびAgからなるCr−Ag層、AgからなるAg層の順に積層した薄膜であってもよい。
【0060】
また、本実施の形態にかかる引出電極71,72は、2つのパターンの薄膜で構成しているが、これに限定されるものではなく、1つのパターンの薄膜で構成してもよい。また、引出電極71,72は、Cr層、Cr−Sn層、Sn層、Ag層の順に積層した薄膜や、Cr層からなる薄膜によって構成しているが、これに限定されるものではなく、CrからなるCr層、AuからなるAu層の順に積層した薄膜であってもよい。
【0061】
また、本実施の形態では、接合層を第1接合層34と第2接合層35とから構成しているが、CuとSnとからなる層であれば、これに限定されることはなく他の形態であってもよい。
【0062】
また、本実施の形態では、水晶振動片2の端子電極61,62にCrを用いているが、これに限定されるものではなく、Crの代わりにNiを用いてもよい。
【0063】
また、本実施の形態では、Cr層,Cr−Sn層,Sn層,Ag層をベース3の基部21上に順に積層して端子電極61,62を形成しているが、これに限定されるものではなく、Ag層の代わりに、Ag層にCuを含有させたAg−Cu層を用いてもよい。
【0064】
また、本実施の形態にかかる端子電極61,62は、2つのパターンの薄膜で構成しているが、これに限定されるものではなく、1つのパターンの薄膜(例えば薄膜63)で構成してもよい。
【0065】
また、本実施の形態では、Cr層,Cr−Sn層,Sn層,Ag層をベース3の基部21上に順に積層して端子電極61,62の薄膜63を形成しているが、これに限定されるものではなく、Ag層の上にさらにCuからなるCu層を積層してもよい。
【0066】
この場合、端子電極61,62の上層にCu層が形成されるので、端子電極61,62と接合層(第1接合層34,第2接合層35)との接合の際に、接合層のSn36が端子電極61,62のCu層に拡散していき、接合層のSnと端子電極61,62のCu層のCuとによって、耐熱性を有する金属間化合物(Sn−Cu金属間化合物91)を形成することができる。この構成による水晶振動片2とリード端子31,32との接合状態の模式図を図7に示す。図7に示す接合状態と、図4に示す接合状態とを比較すると、図7に示す接合状態の接合材9の方が、水晶振動片2とリード端子31,32との間の最も狭いギャップおよびその付近に、Sn−Cu金属間化合物91が偏在することが分かる。そのため、図7に示す接合状態の接合材9の方が、図4に示す接合状態の接合材に比べて耐熱性に勝り、より好ましい。
【0067】
また、本実施の形態では、Cr層,Cr−Sn層,Sn層,Ag層をベース3の基部21上に順に積層して端子電極61,62の薄膜63を形成しているが、これに限定されるものではなく、Cr層とCr−Sn層との間に、Snの拡散を遮断するためのバリア層が形成されてもよい。バリア層としては、例えば、CrとAgとからなるCr−Ag層が好適である。この構成によれば、リード端子31,32と水晶振動片2とを金属間接合した後、水晶振動片2とSn−Cu金属間化合物91との間にAgが存在する。
【0068】
この場合、端子電極61,62には、Cr層とCr−Sn層との間にバリア層が形成されるので、端子電極61,62とリード端子31,32の接合層(第1接合層34,第2接合層35)との接合の際に、接合層のSn36が端子電極61,62のCr層に拡散するのをバリア層によって防ぐことができる。その結果、接合層のSn36や端子電極61,62のSnによって水晶振動片2から端子電極61,62の最下層となるCr層が喰われることが無くなり、Cr層がSnが喰われることによって水晶振動片2から端子電極61,62が剥がれるのを抑えることができる。この構成による水晶振動片2とリード端子31,32との接合状態の模式図を図8に示す。図8に示す接合状態と、図4に示す接合状態とを比較すると、図8に示す接合状態の接合材9の方が、水晶振動片2とリード端子31,32との間の最も狭いギャップおよびその付近に、Sn−Cu金属間化合物91が偏在することが分かる。そのため、図8に示す接合状態の接合材9の方が、図4に示す接合状態の接合材に比べて耐熱性に勝り、より好ましい。
【0069】
また、本実施の形態では、水晶振動片2とリード端子31,32との間の最も狭いギャップを、水晶振動片2の端子電極61,62の最下層となるCr層とリード端子31,32の第1接合層34との間の最も狭いギャップとしているが、これに限定されるものではなく、金属化合物(本実施の形態ではSn−Cu)が生成されない水晶振動片2とリード端子31,32との間のことをいう。
【0070】
また、本実施の形態にかかる接合材9に、さらにNiやCoが含有されることが望ましい。この場合、接合材9を生成後に熱履歴がかかっても(リフロー試験や、経年熱履歴等)、NiやCoの存在により、接合材9のSnが端子電極61,62と反応して端子電極61,62を浸食するのを防ぐことができ、その結果、接合材9が水晶振動片2から剥がれるのを抑制することができる。具体的な形態として、例えば、接合材9を生成する前の端子電極61,62の最上層にNiやCoの金属層を形成することが挙げられる。なお、このNiやCoは最上層でなくても端子電極61,62に内在する構成(例えば、端子電極61,62の中間層として構成)であってもよい。
【0071】
また、本実施の形態にかかる接合材9に、さらにAuやAgが含有されることが望ましい。この場合、接合材9を生成後に熱履歴がかかっても(リフロー試験や、経年熱履歴等)、AuやAgと、接合材9のSnとが先に反応し、Snが端子電極61,62を構成する金属材料と反応するのを抑制することができ、その結果、接合材9が水晶振動片2から剥がれるのを抑制することができる。具体的な形態として、例えば、接合材9を生成する前の端子電極61,62の最上層にAuやAgを形成することや、リード端子31,32の表面にAuやAgを形成することが挙げられる。なお、当該AuやAgは、メッキ、真空蒸着により形成したり、AuペーストやAgペーストを塗布することにより形成することができる。
【0072】
また、本実施の形態にかかる接合材9の表面に、AuやAgやCuの金属層を形成することが望ましい。この場合、接合材9を生成後に熱履歴がかかっても(リフロー試験や、経年熱履歴等)、AuやAgやCuと、接合材9のSnとが先に反応し、Snが端子電極61,62と反応するのを抑制することができる。その結果、接合材9が水晶振動片2から剥がれるのを抑制することができる。具体的な形態として、例えば、接合材9を生成後に、接合材9上にAuやAgやCuの金属層を形成することが挙げられる。当該AuやAgやCuは、メッキ、真空蒸着により形成したり、これら金属を含有するペーストを塗布することにより形成することができる。
【0073】
また、本実施の形態にかかる端子電極61,62に関して、基部21の両主面25上にCr層、Cr−Sn層、Sn層、およびAg層が順に形成されているが、これに限定されるものではなく、基部21の両主面25上にCr層、Cr−Ag層、Ag層、およびCu層が順に形成されてもよく、また、基部21の両主面25上にCr層、Cr−Ag層、Ag層、Cu層、およびAg層が順に形成されてもよい。この場合、端子電極61,62にSnが含まれないので、Snによる不具合(例えば、Snによる浸食)を解消することができる。
【0074】
また、本実施の形態にかかる水晶振動片2のパターンは、これに限定されるものではなく、他のパターンであってもよく、例えば図9,10に示すパターンであってもよい。
【0075】
励振電極51は、引き出し電極71によって端子電極61に引き出され、引き出し電極71は、表側の主面25に形成された薄膜74と側面24に形成された薄膜75とを介して、端子電極61に接続されている。ここでいう薄膜74,75とは、同一構成からなり、励振電極51や引き出し電極71に比べて濡れ性が低い材料が用いられ、具体的に図9,10に示す形態ではCrが用いられている。ここでいう濡れ性が低いとは、励振電極51や引き出し電極71と比べて濡れ性が低いといった相対的なことである。
【0076】
また、薄膜74,75は、図9,10に示すように、引き出し電極71と端子電極61とにそれぞれ一部を重ねて主面25や側面24に形成されている。
【0077】
励振電極52、引き出し電極72、および端子電極62は、図10に示すように、裏側の主面25および側面24に形成され、上記の励振電極51、引き出し電極71、端子電極61と対称の構成からなり、また、同様の材料からなる。そのため、ここでの説明は省略する。なお、引き出し電極72と端子電極62との接続に、薄膜74,75が用いられている。
【0078】
図9,10に示すようなパターンでは、薄膜74,75が基部21に形成されることで、接合材9のSnが端子電極61,62から薄膜74,75を介して励振電極51,52(引き出し電極71,72を含む)を浸食するのを抑制することができる。
【0079】
ところで、例えば機械加工によって水晶振動片2を製造する工程には、ベース3に搭載する前に水晶振動片2の脚部22,23先端を研削して脚部22,23の重量バランスを整えながら周波数の粗調整を行う自動バランサー工程が含まれる。この自動バランサー工程を実施する際、Crを主成分とした傷に強い側面24の薄膜75のみに治具の電極端子を接触させるので、AgやAuを主成分とした導電性の高い端子電極61,62や励振電極51,52や引き出し電極71,72などを傷つけることがない。その結果、ベース3のリード端子31,32に水晶振動片2を固着する際に、無傷で導通性能の優れた端子電極61,62を接合することができる。
【0080】
なお、本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0081】
また、この出願は、2009年12月4日に日本で出願された特願2009−276718号に基づく優先権を請求する。これに言及することにより、その全ての内容は本出願に組み込まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、水晶を用いた圧電振動デバイスに好適である。
【符号の説明】
【0083】
1 水晶振動子
11 内部空間
2 水晶振動片
21 基部
22,23 脚部
24 側面
25 主面
26 先端部
3 ベース
31,32リード端子
33 芯部
34 第1接合層
35 第2接合層
36 Sn
37 金属化合物
38 絶縁ガラス
39 孔部
4 蓋
51,52 励振電極
61,62 端子電極
63 薄膜
64 薄膜
71,72 引出電極
73 薄膜
74 薄膜
75 薄膜
8 錘薄膜
9 接合材
91 Sn−Cu金属間化合物
92 Sn
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10