(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記成長炉内の温度を前記所定の温度にまで昇温する工程の後、かつ前記炭化珪素単結晶を成長させる工程の前に、前記抵抗型ヒーターに前記第2の振幅を有する電圧を印加しつつ、前記成長炉内の圧力を低減させる工程を含む、請求項1に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
前記成長炉内の温度を前記所定の温度にまで昇温する工程および前記炭化珪素単結晶を成長させる工程の少なくともいずれかは、前記抵抗型ヒーターに対して単位時間当たりに電圧が印加される時間を変化させる工程を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
前記電圧印加部は、前記抵抗型ヒーターに対して単位時間当たりに電圧が印加される時間を変化させる印加時間切替部を含む、請求項5または6に記載の炭化珪素単結晶の製造装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、雰囲気ガスにヘリウムを含有させるだけでは、放電の発生を十分に抑制することが困難であった。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するために成されたものであり、その目的は、成長炉内における放電の発生を抑制することにより、炭化珪素単結晶の成長条件を安定させる炭化珪素単結晶の製造方法および製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る炭化珪素単結晶の製造方法は、成長炉を用いた昇華法による炭化珪素単結晶の製造方法であって以下の工程を有している。抵抗型ヒーターに第1の振幅を有する電圧を印加することにより、成長炉内の温度が所定の温度にまで昇温される。所定の温度において炭化珪素単結晶が成長する。成長炉内の温度を所定の温度にまで昇温する工程における成長炉内の圧力は、所定の温度において炭化珪素単結晶を成長させる工程における成長炉内の圧力よりも高くなっている。炭化珪素単結晶を成長させる工程では、抵抗型ヒーターに第1の振幅よりも小さい第2の振幅を有する電圧が印加される。
【0009】
本実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法によれば、成長炉内の温度を所定の温度にまで昇温する工程における成長炉内の圧力は、炭化珪素単結晶を成長させる工程における成長炉内の圧力よりも高くなっており、かつ炭化珪素単結晶を成長させる工程において抵抗型ヒーターに印加される電圧の振幅は、成長炉内の温度を所定の温度にまで昇温する工程において抵抗型ヒーターに印加される電圧の振幅よりも低くなっている。
【0010】
放電は成長炉内の圧力が低く、かつ成長炉内に配置されている抵抗型ヒーターに印加される電圧の最大値が高い場合に発生しやすい。本実施の形態の製造方法において、成長炉の圧力が小さくなる成長工程において抵抗型ヒーターに印加させる電圧の振幅が低減される。それゆえ、成長炉内における放電の発生を抑制することができるので、炭化珪素単結晶の成長条件を安定させることができる。
【0011】
上記の炭化珪素単結晶の製造方法において好ましくは、成長炉内の温度を所定の温度にまで昇温する工程の後、かつ炭化珪素単結晶を成長させる工程の前に、抵抗型ヒーターに第2の振幅を有する電圧を印加しつつ、成長炉内の圧力を低減させる工程を含む。
【0012】
上記の炭化珪素単結晶の製造方法によれば、炭化珪素単結晶を成長させる工程の前に、抵抗型ヒーターに印加される電圧が低減された後、当該電圧を維持しつつ成長炉内の圧力が低減される。そのため、成長炉内の圧力が低減された時においても放電が発生しにくい。
【0013】
上記の炭化珪素単結晶の製造方法において好ましくは、成長炉内に不活性ガスおよび体積比10%以上の窒素ガスを含む雰囲気ガスを導入する工程をさらに有する。
【0014】
上記の炭化珪素単結晶の製造方法によれば、成長炉内に不活性ガスおよび体積比10%以上の窒素ガスを含む雰囲気ガスが導入される。窒素ガスはアルゴンやヘリウムなどの不活性ガスと比較して電離しづらい。それゆえ、窒素ガスを導入することにより、成長炉内における放電の発生をさらに抑制することができる。
【0015】
上記の炭化珪素単結晶の製造方法において好ましくは、成長炉内の温度を所定の温度にまで昇温する工程および炭化珪素単結晶を成長させる工程の少なくともいずれかは、抵抗型ヒーターに対して単位時間当たりに電圧が印加される時間を変化させる工程を含む。
【0016】
上記の炭化珪素単結晶の製造方法によれば、単位時間当たりに電圧が印加される時間を変化させることにより、成長炉内の温度を精度良く制御することができる。
【0017】
本発明に係る炭化珪素単結晶の製造装置は、昇華法による炭化珪素単結晶の製造装置であって、成長炉と、電圧印加部と、圧力調整部とを有している。成長炉は抵抗型ヒーターを有している。電圧印加部は、抵抗型ヒーターに電圧を印加するためのものである。圧力調節部は、成長炉内の圧力を調整するためのものである。電圧印加部は、抵抗型ヒーターに印加される電圧の振幅を離散的に変化させるための電圧切替部を含む。
【0018】
本発明に係る炭化珪素単結晶の製造装置は、抵抗型ヒーターに印加される電圧の振幅を離散的に変化させるための電圧切替部を含んでいる。これにより、成長炉内の圧力に応じて抵抗型ヒーターに印加される電圧を変化させることができるため、成長炉内における放電の発生を抑制することができる。
【0019】
上記の炭化珪素単結晶の製造装置において好ましくは、電圧印加部は第1の振幅を有する電圧を発生させるための第1のトランスと、第1の振幅よりも小さい第2の振幅を有する電圧を発生させるための第2のトランスとを含む。
【0020】
これにより、簡易な構造で抵抗型ヒーターに印加される電圧を離散的に変化させることができる。
【0021】
上記の炭化珪素単結晶の製造装置において好ましくは、電圧印加部は、抵抗型ヒーターに対して単位時間当たりに電圧が印加される時間を変化させる印加時間切替部を含む。
【0022】
これにより、単位時間当たりに電圧が印加される時間を変化させることができるので、成長炉内の温度を精度良く制御することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、成長炉内における放電の発生を抑制することにより、炭化珪素単結晶の成長条件を安定させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0026】
図1を参照して、本実施の形態の炭化珪素単結晶の製造装置100について説明する。
図1に示すように、本実施の形態の炭化珪素単結晶の製造装置100は、成長炉1と、圧力調整部8と、電圧印加部9と、制御部10とを主に有している。成長炉1は、昇華法により炭化珪素単結晶を成長させるためのものである。成長炉1は、抵抗型ヒーター2を含んでいる。圧力調整部8は、成長炉1内の圧力を調整する部分である。圧力調整部8は、圧力コントローラー16と、ポンプ17と、He供給部18と、N
2供給部19とを有している。圧力コントローラー16は成長炉1内の圧力をコントロールする部分であり、ポンプ17と接続されている。ポンプ17は成長炉1内の雰囲気ガスを排出するためのものである。He供給部18は、成長炉1にHeを供給する部分である。N
2供給部19は、成長炉1内にN
2ガスを供給する部分である。圧力調整部8は、制御部10によって制御される。
【0027】
He供給部18やN
2供給部19により、成長炉1内に雰囲気ガスを導入することで成長炉1内の圧力を増加させることができる。成長炉1内に導入される雰囲気ガスは、たとえばヘリウムやアルゴンなどの不活性ガスである。雰囲気ガスとして当該不活性ガスと窒素ガスとを含むガスが用いられてもよい。好ましくは、雰囲気ガスとして不活性ガスおよび体積比10%以上の窒素ガスを含むガスが用いられる。また、ポンプ17により成長炉1内の雰囲気ガスを排出することで成長炉内の圧力を低減させることができる。
【0028】
電圧印加部9は、抵抗型ヒーター2に電圧を印加する部分である。電圧印加部9は、電圧発生部15と、第1のトランス13と、第2のトランス14と、電圧切替部12と、印加時間切替部11とを有している。電圧発生部15は、電圧を発生する部分であり、たとえば交流電圧を発生させることができる。電圧発生部15により発生された電圧は、第1のトランス13または第2のトランス14によって電圧値が変化される。電圧切替部12は、抵抗型ヒーター2に印加される電圧の振幅を離散的に変化させる部分である。具体的には、電圧切替部12は、第1のトランス13からの第1の振幅を有する電圧と第2のトランス14からの第1の振幅よりも小さい第2の振幅を有する電圧とを切替える部分である。印加時間切替部11は、抵抗型ヒーターに対して単位時間あたりに電圧が印加される時間を変化させる部分である。印加時間切替部11とは、たとえばサイリスタである。
【0029】
本実施の形態の炭化珪素単結晶の製造装置は温度センサー20を有している。温度センサー20は成長炉1内の温度を測定する部分である。温度センサー20によって測定された温度は制御部10に送られる。制御部10は、温度センサー20により測定された温度に応じて、どの程度の電圧を抵抗型ヒーター2に印加する必要があるかを計算し、その結果を電圧印加部9に送ることで抵抗型ヒーター2に印加される電圧を制御可能である。
【0030】
図2を参照して、本実施の形態の炭化珪素単結晶の製造装置100における成長炉1の構成について説明する。
図2に示すように、成長炉1は、抵抗型ヒーター2と、ルツボ3と、断熱材4と、チャンバー5と、ガス供給口6と、ガス排出口7とを主に有している。
【0031】
抵抗型ヒーター2は電圧が印加されることによりルツボ3を昇温させる部分である。抵抗型ヒーター2は、自身の抵抗によって発熱するヒーターのことである。本実施の形態の成長炉1において、抵抗型ヒーター2はルツボ3の側面を取り囲むように配置されている。また、抵抗型ヒーター2はルツボ3の底面側にも配置されている。抵抗型ヒーター2、ルツボ3は、たとえばカーボンから成る。
【0032】
ルツボ3は、内部に炭化珪素原料を収容している。炭化珪素原料は抵抗型ヒーター2によって加熱され昇華する。昇華した原料ガスは、ルツボ3内に設けられた種基板上において再結晶化する。これにより、種基板上に炭化珪素単結晶が成長する。
【0033】
断熱材4は、ルツボ3および抵抗型ヒーター2を取り囲むように配置されている。断熱材4は、たとえばカーボンフェルトから成る。
【0034】
チャンバー5は、ルツボ3と抵抗型ヒーター2と断熱材4とを内部に収容している。チャンバー5にはガス供給口6とガス排出口7とが設けられている。ガス供給口6からは、ヘリウムなどの希ガスやN
2ガスやこれらの混合ガスなどの雰囲気ガスをチャンバー5内に導入可能である。ガス排出口7からは、当該雰囲気ガスをチャンバー5外に排出可能である。
【0035】
図3〜
図8を参照して、本実施の形態の炭化珪素単結晶の製造方法について説明する。本実施の形態の炭化珪素単結晶の製造方法は、抵抗型ヒーターに電圧を印加することにより、成長炉内の温度を所定の温度にまで昇温する工程(以下、昇温工程とも称す)と、所定の温度において炭化珪素単結晶を成長させる工程(以下、成長工程とも称す)とを主に有している。
【0036】
図3(a)に示すように、時間0(昇温開始時)から時間T1まで成長炉1内の温度が上昇される。時間T1において成長炉1内の温度が所定の温度G1になる。所定の温度とは、たとえば2300℃である。成長炉1内の温度を所定の温度にまで昇温するために、抵抗型ヒーター2に電圧が印加される。
図3(b)に示すように、時間0から時間T1までの間、抵抗型ヒーター2に第1の振幅を有する一定の電圧V1が印加される。本実施の形態において、ルツボ3の側面側に配置された抵抗型ヒーター2およびルツボ3の底面側に配置された抵抗型ヒーター2の電圧には、共に25Vの電圧が印加されている。このときに抵抗型ヒーター2に流される電流は、共に800Aであり、電力は共に20kWである。
図3(c)に示すように、時間0から時間T1までの間、成長炉1内の圧力は一定値(P1)に保たれる。本実施の形態において、成長炉1内の圧力P1は30kPaである。
【0037】
成長炉1内の温度が所定の温度G1に到達した後、抵抗型ヒーター2に印加される電圧はV1からV2に低減される。その後、抵抗型ヒーター2には一定の電圧V2が印加しつづけられる。
【0038】
抵抗型ヒーター2に印加される電圧がV1からV2に低減された場合においても、成長炉1内の温度は一定に保たれる。成長炉1を昇温する間(時間0から時間T1まで)は、成長炉1の熱容量分と成長炉1からの放熱分との熱量を成長炉1に供給する必要がある。一方、成長炉1が所定の温度G1に到達した後(時間T1以降)は、成長炉1からの放熱分だけ成長炉1に熱量を供給すれば成長炉1の温度を維持することができる。それゆえ、時間T1以降に抵抗型ヒーター2に印加される電圧V2の振幅(第2の振幅)は、時間0からT1までの間、抵抗型ヒーター2に印加される電圧V1の振幅(第1の振幅)よりも小さくなる。本実施の形態において、ルツボ3の側面側に配置された抵抗型ヒーター2およびルツボ3の底面側に配置された抵抗型ヒーター2の電圧には、共に20Vの電圧が印加されている。このときに抵抗型ヒーター2に流される電流は、共に500Aであり、電力は共に10kWである。
【0039】
抵抗型ヒーター2に印加される電圧がV1からV2に低減された後、電圧は時間T1から時間T2の間、電圧V2に保たれることにより、成長炉1内の温度も時間T1から時間T2の間、温度G1に保たれる。時間T2になった後、成長炉1内の圧力がP1からP2に徐々に低減される。成長炉1内の圧力の低減は、たとえば成長炉1内の雰囲気ガスをポンプにより排出することにより行われる。時間T2から時間T3までの間に成長炉1内の圧力はP1からP2に変化する。時間T3における成長炉1内の圧力P2は1kPaである。
【0040】
圧力がP2になると(つまり時間T3になると)、ルツボ3内に収容された炭化珪素原料が昇華して、所定の温度G1において種基板面上に炭化珪素単結晶が成長を開始する。言い換えれば、成長炉1内の温度が所定の温度G1になり成長炉1内の圧力が所定の圧力P2になったとき、炭化珪素単結晶の昇華が実質的に開始する。なお、圧力がP2になる前に、炭化珪素原料の一部が昇華していても構わない。また、
図3(c)に示すように、成長工程における成長炉1内の圧力P2は、昇温工程における成長炉1内の圧力P1よりも低くなっている。
【0041】
本実施の形態では、成長炉1内の圧力をP1からP2に低減する工程は、成長炉1内の温度を所定の温度G1にまで昇温した後であって、炭化珪素珪素単結晶を成長させる工程の前に行われる。また、成長炉1内の圧力を低減させている間(時間T2から時間T3までの間)は、抵抗型ヒーターに第2の振幅を有する電圧V2が印加されつづけている。
【0042】
なお、成長炉1内の圧力は、成長炉1内に雰囲気ガスを導入したり、成長炉1から雰囲気ガスを排出することにより調整される。成長炉1内に導入される雰囲気ガスは、たとえばヘリウムやアルゴンなどの不活性ガスである。雰囲気ガスとして当該不活性ガスと窒素ガスとを含むガスが用いられてもよい。好ましくは、雰囲気ガスとして不活性ガスおよび体積比10%以上の窒素ガスを含むガスが用いられる。
【0043】
図4を参照して、昇温工程において、抵抗型ヒーター2に第1の振幅を有する電圧波形aが印加される。電圧波形aは、第1の振幅(V1)を有する交流波形である。また、成長工程において、抵抗型ヒーター2に第2の振幅を有する電圧波形bが印加される。電圧波形bは、第2の振幅(V2)を有する交流波形である。本実施の形態の製造方法において、昇温工程における電圧の振幅(第1の振幅)は、成長工程における電圧の振幅(第2の振幅)よりも小さい。
【0044】
図5および
図6を参照して、昇温工程において抵抗型ヒーター2に電圧が印加される方法について説明する。斜線で示された時間の間、抵抗型ヒーター2に電圧が印加される。特に、成長炉1を昇温する場合には、成長炉1全体の熱容量分と成長炉1からの放熱分との熱量を供給する必要がある。そのため、
図5に示すように全ての時間、抵抗型ヒーター2に電圧が印加されることにより、成長炉1が加熱される。
【0045】
図6を参照して、たとえばサイリスタなどの印加時間切替部11によって抵抗型ヒーター2に対して単位時間当たりに電圧が印加される時間を変化させてもよい。
図6において、斜線部で示した時間Dだけ抵抗型ヒーター2に電圧が印加される。たとえば、成長炉1の昇温速度を低下させる場合、成長炉1に供給する熱量を低減する必要がある。
図6に示すように、斜線部で示した時間Dだけ抵抗型ヒーター2に電圧を印加することにより、電圧の最大値を変化させずに電圧を印加する時間を変化させることで、成長炉1に供給する熱量を低減することができる。
【0046】
図7および
図8を参照して、成長工程において抵抗型ヒーター2に電圧が印加される方法について説明する。斜線で示された時間の間、抵抗型ヒーター2に電圧が印加される。成長工程においては、成長炉1内の温度を一定に保つ必要がある。成長炉1内の温度が所定の温度より下がった場合は、成長炉1の温度を維持するために成長炉1に熱量を供給する必要がある。この場合、
図7に示すように全ての時間、抵抗型ヒーター2に電圧が印加することにより、成長炉1が加熱される。
【0047】
図8を参照して、たとえばサイリスタなどの印加時間切替部11によって抵抗型ヒーター2に対して単位時間当たりに電圧が印加される時間を変化させてもよい。
図8において、斜線部で示した時間Dだけ抵抗型ヒーター2に電圧が印加される。成長炉1内の温度が所定の温度より上がった場合は、成長炉1の温度を維持するために成長炉1に供給する熱量を低減する必要がある。
図8に示すように、斜線部で示した時間Dだけ抵抗型ヒーター2に電圧を印加することにより、電圧の最大値を変化させずに電圧を印加する時間を変化させることで、成長炉1に供給する熱量を低減することができる。
【0048】
以上のように、本実施の形態の炭化珪素単結晶の製造方法において、昇温工程において抵抗型ヒーター2に印加される電圧の振幅(第1の振幅)は、成長工程において抵抗型ヒーター2に印加される電圧の振幅(第2の振幅)よりも大きい。また、昇温工程において、サイリスタなどによって抵抗型ヒーター2に対して単位時間当たりに電圧が印加される時間を変化させてもよい。さらに、成長工程において、サイリスタなどによって抵抗型ヒーター2に対して単位時間当たりに電圧が印加される時間を変化させてもよい。好ましくは、成長炉内の温度を所定の温度にまで昇温する工程および炭化珪素単結晶を成長させる工程の少なくともいずれかは、抵抗型ヒーター2に対して単位時間当たりに電圧が印加される時間を変化させる工程を含んでいる。
【0049】
次に、本実施の形態の炭化珪素単結晶の製造方法および製造装置の作用効果について説明する。
【0050】
本実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法は、昇温工程における成長炉1内の圧力は、成長工程における成長炉1内の圧力よりも高く、かつ昇温工程において抵抗型ヒーター2に印加させる電圧の振幅は、成長工程において抵抗型ヒーター2に印加させる電圧の振幅よりも大きい。
【0051】
放電は成長炉1内の圧力が低く、かつ成長炉1内に配置されている抵抗型ヒーター2に印加される電圧の最大値が高い場合に発生しやすい。本実施の形態の製造方法において、成長炉1の圧力が小さくなる成長工程において抵抗型ヒーター2に印加させる電圧の振幅が低減される。それゆえ、成長炉1内における放電の発生を抑制することができるので、炭化珪素単結晶の成長条件を安定させることができる。
【0052】
また、本実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法は、炭化珪素単結晶を成長させる工程の前に、抵抗型ヒーター2に印加される電圧が低減された後、当該電圧を印加しつつ成長炉1内の圧力が低減される。そのため、成長炉1内の圧力が低減された時においても放電が発生しにくい。また、成長炉1内の温度が安定した状態で炭化珪素単結晶の成長が開始されるので、炭化珪素の成長条件をさらに安定させることができる。
【0053】
さらに、本実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法において、成長炉1内に不活性ガスおよび体積比10%以上の窒素ガスを含む雰囲気ガスが導入される。窒素ガスはアルゴンやヘリウムなどの不活性ガスと比較して電離しづらい。それゆえ、窒素ガスを導入することにより、成長炉1内における放電の発生をさらに抑制することができる。
【0054】
さらに、本実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法において、成長炉1内の温度を所定の温度G1にまで昇温する工程および炭化珪素単結晶を成長させる工程の少なくともいずれかは、抵抗型ヒーター2に対して単位時間当たりに電圧が印加される時間を変化させる工程を含んでいる。単位時間当たりに電圧が印加される時間を変化させることにより、成長炉1内の温度を精度良く制御することができる。
【0055】
さらに、本実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造装置は、抵抗型ヒーター2に印加される電圧の振幅を離散的に変化させるための電圧切替部12を含んでいる。これにより、成長炉1内の圧力に応じて抵抗型ヒーター2に印加される電圧を変化させることができるため、成長炉1内における放電の発生を抑制することができる。
【0056】
さらに、本実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造装置は、第1の振幅を有する電圧を発生させるための第1のトランス13と第2の振幅を有する電圧を発生させるための第2のトランス14とを有している。これにより、簡易な構造で抵抗型ヒーター2に印加される電圧を離散的に変化させることができる。また、低い損失で電圧の振幅を変化させることができる。
【0057】
さらに、本実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造装置は、抵抗型ヒーター2に対して単位時間当たりに電圧が印加される時間を変化させる印加時間切替部11を有している。これにより、単位時間当たりに電圧が印加される時間を変化させることができるので、成長炉1内の温度を精度良く制御することができる。
【0058】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。