特許第5799856号(P5799856)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5799856
(24)【登録日】2015年9月4日
(45)【発行日】2015年10月28日
(54)【発明の名称】アルミニウム含有膜の形成方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 1/00 20060101AFI20151008BHJP
   C01F 7/02 20060101ALI20151008BHJP
   C04B 41/82 20060101ALI20151008BHJP
   C23C 18/12 20060101ALI20151008BHJP
   B05D 3/04 20060101ALI20151008BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20151008BHJP
【FI】
   C09D1/00
   C01F7/02 D
   C04B41/82 A
   C23C18/12
   B05D3/04 Z
   B05D7/24 302Z
【請求項の数】2
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-46577(P2012-46577)
(22)【出願日】2012年3月2日
(65)【公開番号】特開2013-181119(P2013-181119A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2014年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【弁理士】
【氏名又は名称】衡田 直行
(74)【代理人】
【識別番号】100162145
【弁理士】
【氏名又は名称】村地 俊弥
(72)【発明者】
【氏名】中川 恭志
(72)【発明者】
【氏名】酒井 達也
【審査官】 牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−051407(JP,A)
【文献】 特開2007−210825(JP,A)
【文献】 特開2007−016272(JP,A)
【文献】 特開2007−287821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00〜 10/00
101/00〜201/10
B05D 3/04、7/24
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体上にアルミニウム含有膜形成用組成物を塗布して、塗布層を形成する塗布工程と、
前記塗布層について、空気雰囲気下で、加熱、電子線照射、紫外線照射、およびプラズマからなる群より選ばれる少なくとも1種の処理を行うことにより、酸化アルミニウム膜を形成する硬化工程と、を含むアルミニウム含有膜の形成方法であって、
上記アルミニウム含有膜形成用組成物が、下記一般式(1)で表される構造を有する有機アルミニウム化合物と有機溶媒を含有する組成物である、アルミニウム含有膜の形成方法
【化1】
(上記一般式(1)中、R〜Rは水素原子または炭化水素基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、R(nは1〜6の整数である。)同士は互いに連結して環状構造を有していてもよい。)
【請求項2】
前記基体は、基体本体の表面がアルミニウムまたは遷移金属を含有する膜で被覆されている、請求項に記載のアルミニウム含有膜の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルミニウム含有膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化アルミニウム(アルミナ)は、高い絶縁性と緻密性を有することから、DRAM(ダイナミックランダムアクセスメモリー)に代表される半導体デバイスにおいて保護膜、絶縁膜として多く用いられている。さらに、薄膜磁気ヘッドのギャップ層や保護膜、金属部品の保護膜、及びプラスチックフィルム上のガスバリア膜等の用途も検討されている。
一方、窒化アルミニウムは、高い熱伝導率と絶縁性を有することから、半導体デバイスにおける放熱基板として利用が検討されているほか、光学材料としての応用も期待されている。
従来より、酸化アルミニウムや窒化アルミニウムの形成方法としては、スパッタ法や化学蒸着法が幅広く用いられている。
例えば、特許文献1には、フッ素原子を含むガス中でアルミニウム含有ターゲットをスパッタする酸化アルミニウム膜の形成方法が提案されている。
また、特許文献2には、原子層エピタキシャル成長法により酸化アルミニウムと酸化チタンとが交互に積層された絶縁膜を成膜する成膜方法が提案されており、該酸化アルミニウム膜は、塩化アルミニウムと水とを原料ガスとして用いて生成されている。
また、特許文献3には、基体上に、非自燃性のアミノアルミニウム前駆体を用いてCVD法によって、アルミニウム含有膜(酸化アルミニウム膜、窒化アルミニウム膜またはアルミニウム酸窒化物膜)を形成する方法が提案されている。
しかしながら、これらのスパッタ法や化学蒸着法によるアルミニウム含有膜形成方法は真空チャンバーや高圧電流装置など高価な装置を必要とするため、高コストである。また、大口径の基体への適用が困難であるという問題があった。さらには、昨今の半導体デバイスの微細化に対して、狭トレンチ基体上への成膜に際し、膜中の欠陥の発生やステップカバレージ性の低下が生じる等の問題もあった。
【0003】
これに対して、原料となるアルミニウム含有化合物またはポリマーの溶液を基板に塗布し、熱処理などを施してアルミニウム含有膜を得る塗布法は、前記の成膜手法に比べて安価な装置で簡便に目的の膜を得ることができる。また、狭トレンチ基体上への成膜も埋め込み性やステップカバレージ性で有利になると考えられており、今後広く用いられることが期待されている。
塗布法の例として、特許文献4には、基材に、骨格にAl−N結合を持つ化合物、または該化合物の溶液を塗布し、酸素含有ガスを含む雰囲気中、50℃から1000℃の範囲中で加熱するアルミナ膜の製造方法が提案されており、骨格にAl−N結合を持つ化合物の溶液として、イミノアランを有機溶剤で溶解し、膜形成用の組成物として用いた例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−316631号公報
【特許文献2】特開2001−220294号公報
【特許文献3】特表2006−526705号公報
【特許文献4】特開2007−210825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の塗布法に用いられるアラン、またはアルキルアルミニウム等は反応性が低く、得られた酸化アルミニウム膜、または窒化アルミニウム膜の一部に金属アルミニウム、窒素、炭素成分等が残りやすいという問題があった。例えば、特許文献4に記載されたイミノアランは、オリゴマーであることから熱焼成時の反応性が低く、酸素雰囲気下で700℃という高温で焼成を行っているにも拘らず、得られた酸化アルミニウム膜中には窒素や炭素の含有が認められており、純粋な酸化アルミニウム膜を得るためには、酸素雰囲気下、800℃で3時間以上の焼成が必要である。
本発明の目的は、反応性が高く、従来の方法に比べてより容易に高純度の酸化アルミニウム膜、または窒化アルミニウム膜を得ることができるアルミニウム含有膜の形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の構造を有する有機アルミニウム化合物と有機溶媒を含有するアルミニウム含有膜形成用組成物を基体上に塗布して、塗布層を形成する塗布工程と、前記塗布層について、空気雰囲気下で、加熱、電子線照射、紫外線照射、およびプラズマからなる群より選ばれる少なくとも1種の処理を行うことにより、酸化アルミニウム膜を形成する硬化工程と、を含むアルミニウム含有膜の形成方法によれば、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[]を提供するものである。
[1] 基体上にアルミニウム含有膜形成用組成物を塗布して、塗布層を形成する塗布工程と、前記塗布層について、空気雰囲気下で、加熱、電子線照射、紫外線照射、およびプラズマからなる群より選ばれる少なくとも1種の処理を行うことにより、酸化アルミニウム膜を形成する硬化工程と、を含むアルミニウム含有膜の形成方法であって、上記アルミニウム含有膜形成用組成物が、下記一般式(1)で表される構造を有する有機アルミニウム化合物と有機溶媒を含有する組成物である、アルミニウム含有膜の形成方法
【化1】
(上記一般式(1)中、R〜Rは水素原子または炭化水素基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、R(nは1〜6の整数である。)同士は互いに連結して環状構造を有していてもよい。)
] 前記基体は、基体本体の表面がアルミニウムまたは遷移金属を含有する膜で被覆されている、前記[1]に記載のアルミニウム含有膜の形成方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明のアルミニウム含有膜の形成方法で用いるアルミニウム含有膜形成用組成物(以下、本発明のアルミニウム含有膜形成用組成物ともいう。)は、反応性が高く、従来の方法に比べてより容易に高純度の酸化アルミニウム膜(本発明の方法における形成の対象物;後述の実施例を参照)または窒化アルミニウム膜(後述の参考例を参照)を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のアルミニウム含有膜形成用組成物は、下記一般式(1)で表される構造を有する有機アルミニウム化合物と有機溶媒を含有する。
【化2】
(上記一般式(1)中、R〜Rは水素原子または炭化水素基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、R(nは1〜6の整数である。)同士が互いに連結して環状構造を有していてもよい。)
なお、本明細書において、構造式中の原子間の結合を示す線は共有結合に限定されない。
上記一般式(1)で表される構造を有する有機アルミニウム化合物の具体例としては、例えば、下記一般式(2)、または下記一般式(3)で表される有機アルミニウム化合物が挙げられる。
【化3】
(上記一般式(2)中、Rは水素原子、または炭化水素基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
上記一般式(2)中、Rは好ましくは水素原子、または炭素数1〜12の一価の炭化水素基であり、より好ましくは炭素数1〜4の一価の炭化水素基である。ここで、炭素数1〜12の一価の炭化水素基とは、例えば、炭素数1〜12の分岐鎖又は非分岐鎖のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基である。
中でも、加熱、電子線照射、紫外線照射、プラズマ等の処理を行う際の錯体の分解しやすさの観点から、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が好ましい。
【化4】
(上記一般式(3)中、Rは炭化水素基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
上記一般式(3)中、Rは好ましくは炭素数1〜12の二価の炭化水素基であり、より好ましくは炭素数1〜4の二価の炭化水素基である。ここで、炭素数1〜12の二価の炭化水素基とは、例えば、炭素数1〜12の分岐鎖又は非分岐鎖のアルキレン基、アルケニレン基、アラルキレン基、アリーレン基が挙げられる。
中でも、加熱、電子線照射、紫外線照射、プラズマ等の処理を行う際の錯体の分解しやすさの観点から、エチレン基、プロピレン基が好ましい。
【0009】
本発明のアルミニウム含有膜形成用組成物に含有される有機溶媒は、上記有機アルミニウム化合物を溶解し、かつ、これらと反応しないものであれば特に限定されない。例えば、炭化水素溶媒、エーテル溶媒、その他の極性溶媒等を用いることができる。
【0010】
上記炭化水素溶媒としては、例えばn−ペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘプタン、n−オクタン、シクロオクタン、デカン、シクロデカン、ジシクロペンタジエンの水素化物、ベンゼン、トルエン、キシレン、デュレン、インデン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、スクワラン等を挙げることができる。
【0011】
上記エーテル溶媒としては、例えばジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサン、アニソール、2−メチルアニソール、3−メチルアニソール、4−メチルアニソール、フェントール、2−メチルフェントール、3−メチルフェントール、4−メチルフェントール、ベラトロール、2−エトキシアニソール、1,4−ジメトキシベンゼン等を挙げることができる。
上記極性溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロホルム等を挙げることができる。
これらの有機溶媒は、単独でも、あるいは2種以上を混合して使用することもできる。
【0012】
これらの中でも、溶解性と形成される溶液の安定性の観点から、炭化水素溶媒、又は、炭化水素溶媒とエーテル溶媒との混合溶媒を用いるのが好ましい。その際、炭化水素溶媒としては、n−ペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘプタン、n−オクタン、n−デカン、ベンゼン、トルエン又はキシレンを使用することが好ましい。エーテル溶媒としては、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、アニソール、2−メチルアニソール、3−メチルアニソール、4−メチルアニソール、フェントール、ベラトロール、2−エトキシアニソール、1,4−ジメトキシベンゼンを使用することが好ましい。
【0013】
<アルミニウム含有膜の形成方法>
本発明のアルミニウム含有膜の形成方法としては、基体上に上述したアルミニウム含有膜形成用組成物を塗布して、塗布層を形成する塗布工程と、前記塗布層について、特定の雰囲気下で、加熱、電子線照射、紫外線照射、及びプラズマからなる群より選ばれる少なくとも1種処理を行うことにより、アルミニウム含有膜を形成する硬化工程とを含むアルミニウム含有膜の形成方法が挙げられる。
上記基体(後述の下地膜を有する場合は、基体本体)を構成する材料の材質、形状等に特に制限はない。基体の材質は、塗布層のアルミニウム含有膜への変換工程において、加熱処理を採用する場合にはその加熱処理に耐えられるものであることが好ましい。塗布層が形成される基体の形状は塊状、板状、フィルム形状等で特に制限されるものではない。塗膜が形成される基体の表面は平面でもよく、段差のある非平面でもよい。また、基体は表面に凹部を有していてもよい。なお、「凹部」とは、基体上に形成された配線溝または電極溝(トレンチ)と、配線接続孔(ホール)の両方を含む概念を有する。
基体の材質の具体例としては、例えばガラス、金属、プラスチック、セラミックス等を挙げることができる。ガラスとしては、例えば石英ガラス、ホウ珪酸ガラス、ソーダガラス、鉛ガラス等が使用でき、金属としては、例えば金、銀、銅、ニッケル、シリコン、アルミニウム、鉄等の他ステンレス鋼等が使用できる。プラスチックとしては、例えばポリイミド、ポリエーテルスルホン等を挙げることができる。
【0014】
前記基体は、基体本体の表面がアルミニウムまたは遷移金属を含有する膜(以下、「下地膜」ともいう。)で被覆されていてもよい。基体が該下地膜を有することにより、該基体上へのアルミニウム含有膜の成膜性をより良好にすることができる。
上記下地膜は、予め、基体本体に、アルミニウム、及び遷移金属からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属原子を含む有機金属化合物(ただし、上記一般式(1)で表される構造を有する有機アルミニウム化合物を除く。)を含有する溶液(以下、「下地膜形成用組成物」ともいう。)を塗布し、次いで加熱処理して形成される。
上記アルミニウム原子を含む有機金属化合物は、上記一般式(1)で表される構造を有する有機アルミニウム化合物を除くものであり、例えばアルミニウムアルコキシド、アルミニウムアルキレート、アルミニウムのβ−ジケトン錯体等を挙げることができる。
上記遷移金属としては、例えばチタン原子、パラジウム原子等が挙げられる。
上記チタン原子を含む有機金属化合物としては、例えば、チタニウムアルコキシド、アミノ基を有するチタニウム化合物、チタニウムのβ−ジケトン錯体、シクロペンタジエニル基を有するチタニウム化合物、ハロゲン原子を有するチタニウム化合物等を挙げることができる。
上記パラジウム原子を含む有機金属化合物としては、例えば、ハロゲン原子を有するパラジウム錯体、パラジウムのアセテート、パラジウムのβ−ジケトン錯体、パラジウムと共役カルボニル基を有する化合物との錯体、パラジウムのホスフィン錯体等を挙げることができる。
【0015】
上記アルミニウム原子を含む有機金属化合物として、アルミニウムアルコキシドとして、例えば、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウム−n−ブトキシド、アルミニウム−s−ブトキシド、アルミニウム−t−ブトキシド、アルミニウムエトキシエトキシエトキシド、アルミニウムフェノキシド等;
アルミニウムアルキレートとして、例えばアルミニウムアセテート、アルミニウムアクリレート、アルミウムメタクリレート、アルミニウムシクロヘキサンブチレート等;
アルミニウムのβ−ジケトン錯体として、例えばペンタン−2,4−ジケトアルミニウム、ヘキサフルオロペンタン−2,4−ジケトアルミニウム、2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジケトアルミニウム、ビス(エトキシブタン−1,3−ジケト)アルミニウムs−ブトキシド、(エトキシブタン−1,3−ジケト)アルミニウムジ−s−ブトキシド、(エトキシブタン−1,3−ジケト)アルミニウムジイソプロポキシド等を、それぞれ挙げることができる。
【0016】
上記チタン原子を含む有機金属化合物としては、例えば、下記一般式(4)〜(8)で表される化合物を挙げることができる。
【0017】
Ti(OR・・・(4)
(上記一般式(4)中、Rは、炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基、ハロゲン化アルキル基またはハロゲン化フェニル基である。)
【0018】
Ti(OR4−x・・・(5)
(上記一般式(5)中、Rは上記一般式(4)のRと同様である。Lは下記一般式(9)で表わされる基であり、RおよびR10は同一もしくは異なり、炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、またはハロゲン化フェニル基である。xは0〜3の整数である。)
【化5】
【0019】
Ti(OR11(X)4−y・・・(6)
(上記一般式(6)中、R11はアルキル基又はフェニル基である。Xはハロゲン原子である。yは0〜3の整数である。)
【0020】
Ti(NR12・・・(7)
(上記一般式(7)中、R12はアルキル基又はフェニル基である。)
【0021】
Ti(Cp)(Y)4−n・・・(8)
(上記一般式(8)中、Cpはシクロペンタジエニル基である。Yはハロゲン原子又はアルキル基である。nは1〜4の整数である。)
【0022】
上記一般式(4)、(5)中、R及びRは、好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、トリフルオロメチル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基である。
また、上記一般式(9)中、R及びR10は、好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、トルフルオロメチル基である。より好ましくは、メチル基、エチル基、i−プロピル基、t−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基、トルフルオロメチル基である。
【0023】
上記一般式(4)で表されるチタン化合物の具体例としては、例えばチタニウムメトキシド、チタニウムエトキシド、チタニウム−n−プロポキシド、チタニウム−n−ノニルオキシド、チタニウムステアリルオキシド、チタニウムイソプロポキシド、チタニウム−n−ブトキシド、チタニウムイソブトキシド、チタニウム−t−ブトキシド、チタニウムトリメチルシロキシド、チタニウム−2−エチルヘキソオキシド、チタニウムメトキシプロポキシド、チタニウムフェノキシド、チタニウムメチルフェノキシド、チタニウムフルオロメトキシドおよびチタニウムクロロフェノキシド等を挙げることができる。
【0024】
上記一般式(5)で表されるチタン化合物の具体例としては、例えばテトラキス(ペンタ−2,4−ジケト)チタニウム、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタ−3,5−ジケト)チタニウム、テトラキス(1−エトキシブタン−1,3−ジケト)チタニウム、テトラキス(1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロペンタ−2,4−ジケト)チタニウム、(2,2−ジメチルヘキサ−3,5−ジケト)チタニウム、ビス(ペンタ−2,4−ジケト)チタニウムジメトキシド、ビス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタ−3,5−ジケト)チタニウムジメトキシド、ビス(1−エトキシブタン−1,3−ジケト)チタニウムジメトキシド、ビス(1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロペンタ−2,4−ジケト)チタニウムジメトキシド、(2,2−ジメチルヘキサ−3,5−ジケト)チタニウムジメトキシド、ビス(ペンタ−2,4−ジケト)チタニウムジi−プロポキシド、ビス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタ−3,5−ジケト)チタニウムジi−プロポキシド、ビス(1−エトキシブタン−1,3−ジケト)チタニウムジi−プロポキシド、ビス(1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロペンタ−2,4−ジケト)チタニウムジi−プロポキシド、(2,2−ジメチルヘキサ−3,5−ジケト)チタニウムジi−プロポキシド等を挙げることができる。
【0025】
上記一般式(6)で表されるチタン化合物の具体例としては、例えばトリメトキシチタニウムクロライド、トリエトキシチタニウムクロライド、トリ−n−プロポキシチタニウムクロライド、トリ−i−プロポキシチタニウムクロライド、トリ−n−ブトキシチタニウムクロライド、トリ−t−ブトキシチタニウムクロライド、トリイソステアロイルチタニウムクロライド、ジメトキシチタニウムジクロライド、ジエトキシチタニウムジクロライド、ジ−n−プロポキシチタニウムジクロライド、ジ−i−プロポキシチタニウムジクロライド、ジ−n−ブトキシチタニウムジクロライド、ジ−t−ブトキシチタニウムジクロライド、ジイソステアロイルチタニウムジクロライド、メトキシチタニウムトリクロライド、エトキシチタニウムトリクロライド、n−プロポキシチタニウムトリクロライド、i−プロポキシチタニウムトリクロライド、n−ブトキシチタニウムトリクロライド、t−ブトキシチタニウムトリクロライド、イソステアロイルチタニウムトリクロライド、チタニウムテトラクロライド等を挙げることができる。
【0026】
上記一般式(7)で表されるチタン化合物の具体例としては、例えばテトラキス(ジメチルアミノ)チタニウム、テトラキス(ジエチルアミノ)チタニウム、テトラキス(ジ−t−ブトキシアミノ)チタニウム、テトラキス(ジ−i−プロポキシアミノ)チタニウム、テトラキス(ジフェニルアミノ)チタニウムを挙げることができる。
【0027】
上記一般式(8)で表されるチタン化合物の具体例としては、例えばジシクロペンタジエニルチタニウムジクロライド、ジシクロペンタジエニルチタニウムジブロマイド、シクロペンタジエニルチタニウムトリクロライド、シクロペンタジエニルチタニウムトリブロマイド、ジシクロペンタジエニルジメチルチタニウム、ジシクロペンタジエニルジエチルチタニウム、ジシクロペンタジエニルジ−t−ブチルチタニウム、ジシクロペンタジエニルフェニルチタニウムクロライド、ジシクロペンタジエニルメチルチタニウムクロライド等を挙げることができる。
【0028】
上記パラジウム原子を含む有機金属化合物としては、ハロゲン原子を有するパラジウム錯体として、例えばアリルパラジウムクロライド、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム等;
パラジウムのアセテートとして、例えばパラジウムアセテート等;
パラジウムのβ−ジケトン錯体として、例えばペンタン−2,4−ジオナトパラジウム、ヘキサフルオロペンタンジオナトパラジウム等;
パラジウムと共役カルボニル基を有する化合物との錯体として、例えばビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム等;
パラジウムのホスフィン錯体として、例えばビス[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムクロライド、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムアセテート、ジアセテートビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロ[1,2−ビス(ジフェニルホスフィン)エタン]パラジウム、トランス−ジクロロビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム、トランス−ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、トランス−ジクロロビス(トリ−o−トリルホスフィン)パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム等を、それぞれ挙げることができる。
これらのうち、チタニウムイソプロポキシド、アルミニウムイソプロポキシド、ビス(エトキシブタン−1,3−ジケト)チタニウムジイソプロポキシド、テトラ(ペンタン−2,4−ジケト)チタニウム、ペンタン−2,4−ジケトパラジウム、ヘキサフルオロペンタン−2,4−ジケトパラジウム、ペンタン−2,4−ジケトアルミニウム又はヘキサフルオロペンタン−2,4−ジケトアルミニウム等を、それぞれ挙げることができる。
【0029】
これらアルミニウム、及び遷移金属(チタン、パラジウム等)からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属原子を含む有機金属化合物の溶液に用いる溶媒としては、該有機金属化合物を溶解することができればいずれの溶媒も使用することができる。これら溶媒としては、例えばエーテル、エーテル基を有するエステル、炭化水素、アルコール、非プロトン性極性溶媒等及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。
上記エーテルとしては、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等;
上記エーテル基を有するエステルとして例えばエチレングリコルモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2−アセトキシ−1−メトキシプロパン等;
上記炭化水素として、例えばトルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、デカリン、テトラリン、デュレン等;
上記アルコールとして、例えばメタノール、エタノール、プロパノール等;
上記非プロトン性極性溶媒として、例えばN−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホアミド、γ−ブチロラクトン等を、それぞれ挙げることができる。
上記有機金属化合物の、溶液中の含有量は、好ましくは0.1〜10質量%であり、より好ましくは0.1〜5質量%である。なお、この溶媒は、水や酸素を取り除いたものを用いることが望ましい。
【0030】
これら下地膜形成用組成物の基体本体への塗布は、例えばスピンコート法、ロールコート法、カーテンコート法、ディップコート法、スプレー法、液滴吐出法等の適宜の方法により行うことができる。基体本体がトレンチ構造を有する場合、その開口幅が300nm以下であり、かつトレンチのアスペクト比が5以上の場合には、下地膜形成用組成物を基体本体へ塗布した後に、基体をしばらくの間、塗布の際の環境圧力よりも低い圧力下に置くことでトレンチ内部により均一に下地膜形成用組成物を塗布することができる。具体的手法としては、下地膜形成用組成物を、トレンチを有する基体本体上に塗布時の圧力(以下、「第一圧力」という。)よりも小さい圧力下(以下、「第二圧力」という。)に基体を保持する。第二圧力は、第一圧力に対して、好ましくは1〜70%であり、より好ましくは10〜40%である。例えば、塗布時の圧力が1.01×10Pa(常圧)であった場合の第二圧力としては、好ましくは1.01×10〜7.09×10Paであり、より好ましくは1.01×10〜4.05×10Paである。基体を第二圧力下に保持する時間としては、好ましくは10秒間〜10分間であり、より好ましくは10秒間〜1分間である。基体を第二圧力に保持した後、好ましくは不活性気体を用いて圧力を戻した後、次の加熱工程に供されることとなるが、この圧力を減少し、同圧力で保持した後、圧力を戻す一連の操作は、数回繰り返してもよい。第二圧力から第一圧力に戻すための昇圧時間としては、好ましくは3秒間〜5分間であり、より好ましくは5秒間〜1分間である。また、繰り返し回数としては、膜の均一性と作業性の双方の観点から10回以下が好ましく、作業性の観点から5回以下がさらに好ましい。こうして形成された下地膜は、次いで加熱される。加熱温度は好ましくは30〜350℃であり、より好ましくは40〜300℃である。加熱時間は、好ましくは5〜90分であり、より好ましくは10〜60分である。この塗布工程から加熱工程の終了までの膜の周囲の雰囲気は、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスからなることが好ましい。さらに必要に応じて水素等の還元性ガスや、酸素等の酸化性ガスを混入した雰囲気で実施してもよい。
これら下地膜の厚さは、加熱後の膜厚として、好ましくは0.001〜5μm、より好ましくは0.005〜0.5μmである。
【0031】
上述した基体上に、本発明のアルミニウム含有膜形成用組成物を塗布する方法としては、例えばスピンコート法、ロールコート法、カーテンコート法、ディップコート法、スプレー法、液滴吐出法等の適宜の方法を用いることができる。これらの塗布工程では、基体上の形状、大きさ等により、基体の隅々にまでアルミニウム体形成用組成物が行き亘るような塗布条件が採用される。例えば塗布法としてスピンコート法を採用する場合において、スピナーの回転数を、300〜2,500rpm、好ましくは500〜2,000rpmとすることができる。また、基体が凹部を有するものである場合には、下地膜形成用組成物の塗布において上述したような塗布後の環境圧力の変動を採用してもよい。
上記塗布工程の後、塗布したアルミニウム含有膜形成用組成物中に含有される溶媒等の低沸点成分を除去するために、加熱処理を行ってもよい。加熱する温度及び時間は、使用する溶媒の種類、沸点(蒸気圧)により異なるが、例えば100〜350℃で、5〜90分間とすることができる。このとき、系全体を減圧にすることで、溶媒の除去をより低温で行うこともできる。減圧下における加熱処理の条件は、好ましくは100〜250℃で、10〜60分間である。
【0032】
次いで、上述の方法によって形成された塗布層に対し、特定の雰囲気下で加熱、電子線照射、紫外線照射、及びプラズマからなる群より選ばれる少なくとも一種の処理を行うことによって、基体上にアルミニウム含有膜を形成することができる。
ここで、基体上に形成されるアルミニウム含有膜とは、酸化アルミニウム膜(本発明の方法における形成の対象物;後述の実施例を参照)、または、窒化アルミニウム膜(後述の参考例を参照)である。
また、上記加熱、電子線照射、紫外線照射、またはプラズマ処理を行う際の雰囲気を特定の雰囲気とすることで、基体上に任意のアルミニウム含有膜(酸化アルミニウム膜、窒化アルミニウム膜)を形成することができる。
具体的には、酸化性雰囲気下で加熱処理等を行うことにより、高純度の酸化アルミニウム膜を得ることができる。
上記酸化性雰囲気としては、例えば、酸化性ガス雰囲気、または空気雰囲気等が挙げられる。中でも、作業の容易性や経済性の観点から空気が好ましい。
上記酸化性ガスとしては、例えば、酸素、オゾン、酸素ラジカル、二酸化炭素、二酸化窒素、水蒸気等が挙げられる。中でも、経済性の観点から水蒸気が好ましい。
また、不活性ガス雰囲気下または還元性ガス雰囲気下で加熱処理等を行うことにより、高純度の窒化アルミニウム膜を得ることができる。
ここで、不活性ガスとは、例えば窒素、ヘリウム、アルゴン等が挙げられる。還元性ガスとは、水素、アンモニア等が挙げられる。中でも、高純度化の観点から、アンモニア雰囲気下で加熱等することが好ましい。
加熱処理を行う場合の温度は、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃〜600℃、特に好ましくは100℃〜500℃である。加熱時間は、好ましくは30秒間〜120分間、より好ましくは1〜90分間、特に好ましくは10〜60分間である。
なお、硬化工程の前に後述する膜形成工程を行い、塗布層の代わりに炭素とアルミニウムを含む膜に対して、上述した硬化工程を行ってもよい。
【0033】
またアルミニウム含有膜の他の形成方法としては、上記基体上に上記アルミニウム含有膜形成用組成物を塗布して、塗布層を形成する塗布工程と、前記塗布層を、加熱、電子線照射、紫外線照射、およびプラズマからなる群より選ばれる少なくとも1種の処理を行うことにより、炭素とアルミニウムを含む膜を形成する膜形成工程と、膜形成工程で得られた膜に、水熱処理を行うことにより、酸化アルミニウム膜を形成する後処理工程とを含むアルミニウム含有膜の形成方法が挙げられる。
膜形成工程を行うことで、基体上に少量の炭素と、アルミニウムを含む膜が形成される。
膜形成工程を行う際の雰囲気は特に限定されるものではなく、例えば、上述した酸化性雰囲気下、不活性ガス雰囲気下、または還元性ガス雰囲気下で行うことができる。中でも、不活性ガス雰囲気下が好ましい。また、不活性ガスの中でも窒素がより好ましい。
膜形成工程において、加熱処理を行う場合の温度は、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃〜600℃、特に好ましくは100℃〜500℃である。加熱時間は、好ましくは30秒間〜120分間、より好ましくは1〜90分間、特に好ましくは10〜60分間である。
膜形成工程によって得られた膜に、水熱処理を行うことによって、基体上に高純度の酸化アルミニウム膜を形成することができる。
ここで、水熱処理とは、高温高圧下(100℃および1気圧を超える気圧下)で反応性の高い水の存在下で行われる処理である。
具体的には、少量の炭素と、アルミニウムを含む膜が形成した基体を、オートクレーブ等により、100℃〜300℃、好ましくは130℃〜250℃の温度で2〜5時間加熱処理する。圧力条件については、1気圧を超える気圧、好ましくは2〜3気圧である。これにより、基体上に酸化アルミニウムからなるアルミニウム含有膜を形成することができる。
また、水熱処理を行う際に、触媒として塩基性化合物を添加してもよい。塩基性化合物としては、例えばアミン類、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。中でも、揮発性を有し、除去が容易であるという観点から、好ましくはアミン類、アンモニアであり、より好ましくはアンモニアである。
塩基性化合物としてアンモニアを用いる場合、アンモニアの含有量は、アルミニウム含有膜形成用組成物100質量部に対して、好ましくは0.0001質量部〜100質量部、より好ましくは0.1質量部〜50質量部である。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の操作は、特に記した場合を除き、すべて乾燥窒素雰囲気下で実施した。また、用いた溶媒は、すべて事前にモレキュラーシーブス4A(ユニオン昭和(株)製)で脱水し、かつ窒素ガスをバブリングすることにより脱気した。
なお、以下の文中の「%」は、特に断らない限り質量基準である。
[合成例1]
ジメチルアミンを2.0mol/Lの含有量で含むTHF溶液100ml(0.20mol)を3つ口フラスコに加えて、ここにTHFを200ml追加して希釈した。この希釈液を−40℃に冷却後、ここにn−ブチルリチウムを1.6mol/Lの含有量で含むヘキサン溶液125ml(0.20mol)を30分間かけて添加し、リチウムジメチルアミド溶液を得た。別のフラスコに塩化アルミニウム8.9g(0.067mol)を加えて、ここにTHF60mlとジエチルエーテル60mlを順に加え、塩化アルミニウムを溶解させ、塩化アルミニウム溶液を得た。前記リチウムジメチルアミド溶液を氷浴で冷却しながら、先に調製した塩化アルミニウム溶液を30分間かけて添加した。次いで、室温で3時間撹拌を行った後、減圧濃縮を行って溶剤を全て除去した。フラスコ内に残った固体をヘキサン200mlで抽出してからろ過し、ろ液を再度減圧濃縮することで、10.4gの黄白色の固体物質を得た。NMRと元素分析法による分析の結果、この物質は以下の構造を有する化合物であることが確認された。なお、収率は97%であった。
【化6】
(上記構造を有する化合物中、「Me」はメチル基を意味する。)
【0035】
[合成例2]
3つ口フラスコに水素化リチウムアルミニウム0.51g(0.014mol)とジエチルエーテル130mlを加えて、サスペンジョンを得た。このサスペンジョンに、ピロリジン4.92g(0.070mol)とジエチルエーテル50mlを混合してなる溶液を室温で加えた。添加後2時間室温で撹拌後、減圧濃縮を行って溶剤を一旦除去した。その後フラスコにTHF80mlを加え再溶解させた後、塩化アルミニウム0.60g(0.0046mol)とTHF16mlとジエチルエーテル8mlとを混合溶解させてなる液を室温で加えた。添加後6時間室温で撹拌後、減圧濃縮して溶剤を除去し、次にここへトルエン80mlを加えて抽出した。ろ過で不溶分を除去後、ろ液を減圧濃縮することで、黄白色の固体を3.5g得た。NMRと元素分析の結果、この物質は以下の構造を有する化合物であることが確認された。なお、収率は80%であった。
【化7】
【0036】
[合成例3]
磁気攪拌子を入れた200mLの三口フラスコ中に水素化リチウムアルミニウム3.80gを仕込んだ。三口フラスコの3つの接続口にはそれぞれ100mLの粉体添加用漏斗、窒素気流に接続した吸引栓三方コック、及びガラス栓を接続した。トリエチルアミンの塩化水素酸塩17.80gを粉体添加用漏斗に仕込んだ後に、三口フラスコを、吸引栓三方コックを介して窒素シール下においた。
上記の三口フラスコにガラス製シリンジを用いてヘキサン100mLを加えた。マグネチックスターラにより回転数1,000rpmで攪拌しながら、トリエチルアミンの塩化水素酸塩を10分間かけて三口フラスコ中に徐々に落とした後、更に2時間攪拌を継続した。
その後、ポリテトラフロロエチレン製のチューブの先端に脱脂綿(日本薬局方脱脂綿)を詰めたものを用いて、反応混合物を圧送により別容器に取り出し、次いでポリテトラフロロエチレン製の孔径0.1μmのメンブランフィルタ(Whatman Inc.製)により濾過した。濾液は300mLなす型フラスコで受け、濾過終了後に磁気攪拌子を入れ、吸引栓三方コックを装着した。
この吸引栓三方コックを、トラップを介して真空ポンプに接続し、マグネチックスターラによって回転数300rpmで攪拌しながら減圧にて溶媒を除去した。溶媒を除去した後、残存物をポリテトラフロロエチレン製の孔径0.1μmのメンブランフィルタ(Whatman Inc.製)を用いて濾過することにより、トリエチルアミンと水素化アルミニウムとの錯体10.25gを、無色透明の液体として得た。なお、収率は55%であった。
【0037】
[合成例4]
水素化リチウムアルミニウム5gをベンゼン(80ml)中に懸濁させ、5℃に冷却した後、予め2時間減圧乾燥を行ったメチルアミン塩酸塩およびエチルアミン塩酸塩の混合物を加えた。なお、ここで投入されたメチルアミン塩酸塩およびエチルアミン塩酸塩のモル比は、3:1とした。また、水素化リチウムアルミニウムに対するメチルアミン塩酸塩およびエチルアミン塩酸塩の混合物の量は、水素化リチウムアルミニウムとのモル比が1:1となるようにした。5℃で1時間撹拌の後、この懸濁液を80℃まで徐々に昇温した。その際、50℃付近で約1時間保持した。80℃で18時間還流した後、塩化リチウムおよび不溶性となった反応物を含む沈殿物を濾過で除去し、濾液からベンゼンを減圧除去することにより、メチルイミノアランとエチルイミノアランの混合物である白色固体を7.5g得た。なお、収率は94%であった。
【0038】
[下地膜形成用組成物の調製]
ビス(ペンタ−2,4−ジケト)チタニウム(IV)ジイソプロポキシド0.30g及びテトラキス(ジメチルアミノ)チタン64μLを20mLガラス容器にとり、ここへプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加えて、混合物の全量を18.00gとした。混合物を充分に攪拌した後、室温で2時間静置した。次いでこれをポリテトラフロロエチレン製の孔径0.1μmのメンブランフィルタ(Whatman Inc.製)を用いて濾過することにより、下地膜形成用組成物を得た。
【0039】
[アルミニウム含有膜形成用組成物の調製]
(1)アルミニウム含有膜形成用組成物Aの調製
合成例1で得られたアルミニウム錯体2.0gにデカン8.0gを加え、混合物を充分に攪拌した後、室温で2時間静置した。次いでこれをポリテトラフロロエチレン製の孔径0.1μmのメンブランフィルタ(Whatman Inc.製)を用いて濾過することにより、アルミニウム含有膜形成用組成物Aを得た。
(2)アルミニウム含有膜形成用組成物Bの調製
合成例2で得られたアルミニウム錯体2.0gに4−メチルアニソール8.0gを加え、混合物を充分に攪拌した後、室温で2時間静置した。次いでこれをポリテトラフロロエチレン製の孔径0.1μmのメンブランフィルタ(Whatman Inc.製)を用いて濾過することにより、アルミニウム含有膜形成用組成物Bを得た。
(3)アルミニウム含有膜形成用組成物Cの調製
合成例3で得られたアルミニウム錯体1.0gに4−メチルアニソール9.0gを加え、混合物を充分に攪拌した後、室温で2時間静置した。次いでこれをポリテトラフロロエチレン製の孔径0.1μmのメンブランフィルタ(Whatman Inc.製)を用いて濾過することにより、アルミニウム含有膜形成用組成物Cを得た。
(4)アルミニウム含有膜形成用組成物Dの調製
合成例4で得られたイミノアラン混合物1.0gにトルエン9.0gを加え、混合物を充分に攪拌した後、室温で2時間静置した。次いでこれをポリテトラフロロエチレン製の孔径0.1μmのメンブランフィルタ(Whatman Inc.製)を用いて濾過することにより、アルミニウム含有膜形成用組成物Dを得た。
【0040】
[アルミニウム含有膜の形成]
参考例1
(1)4インチのシリコン基板をスピンコーターに装着し、窒素ガス雰囲気下にて、上記下地膜形成用組成物1mLを滴下して、回転数3,000rpmで10秒間スピンさせた。この基板を150℃に設定したホットプレートに乗せ、2分間加熱した。下地膜の厚さは5nmであった。
(2)次いでこの基板を窒素雰囲気下でスピンコーターに再び装着し、上記アルミニウム含有膜形成用組成物Aを2.5g滴下し、回転数1400rpmで10秒間スピンさせた。この基板を150℃のホットプレートで5分間加熱した。
(3)その後基板を窒素雰囲気の炉内にて500℃で1時間加熱した。
こうして得られた膜の膜厚について断面SEM(走査型電子顕微鏡)で、また組成をRBS分析(ラザフォード後方散乱分析)で分析した結果を表1に示す。
【0041】
参考例2
参考例1の(1)および(2)と同様の手順を行って得られた基板を、アンモニアガス雰囲気(760torr)の炉内にて500℃で1時間加熱した。
こうして得られた膜の膜厚について断面SEM(走査型電子顕微鏡)で、また組成をRBS分析(ラザフォード後方散乱分析)で分析した結果を表1に示す。
[実施例
参考例1の(1)および(2)と同様の手順を行って得られた基板を、空気雰囲気の炉内にて500℃1時間加熱した。
こうして得られた膜の膜厚について断面SEM(走査型電子顕微鏡)で、また組成をRBS分析(ラザフォード後方散乱分析)で分析した結果を表1に示す。
参考例3
参考例1の(1)および(2)と同様の手順を行って得られた基板を、水蒸気雰囲気(760torr)の炉内にて500℃で1時間加熱した。
こうして得られた膜の膜厚について断面SEM(走査型電子顕微鏡)で、また組成をRBS分析(ラザフォード後方散乱分析)で分析した結果を表1に示す。
参考例4
参考例1の(1)および(2)と同様の手順を行って得られた基板を、10%NH水溶液100gが入った密閉耐圧容器内に入れ、170℃の雰囲気を有する炉へ導入することにより、容器内に発生したアンモニア蒸気および水蒸気を加圧下で3時間にわたってさらして、水熱処理を行った。
こうして得られた膜の膜厚について断面SEM(走査型電子顕微鏡)で、また組成をRBS分析(ラザフォード後方散乱分析)で分析した結果を表1に示す。
【0042】
参考例5
(1)4インチのシリコン基板を150℃に設定したホットプレートに乗せ、2分間加熱し表面に吸着した水分を除去した。
(2)次いでこの基板を窒素雰囲気下でスピンコーターに装着し、上記アルミニウム含有膜形成用組成物Bを2.5g滴下し、回転数1400rpmで10秒間スピンさせた。この基板を150℃のホットプレートで5分間加熱した。
(3)その後基板を窒素雰囲気の炉内にて500℃で1時間加熱した。
こうして得られた膜の膜厚について断面SEM(走査型電子顕微鏡)で、また組成をRBS分析(ラザフォード後方散乱分析)で分析した結果を表1に示す。
【0043】
参考例6
参考例5の(1)および(2)と同様の手順を行って得られた基板を、アンモニアガス雰囲気(760torr)の炉内にて500℃で1時間加熱した。
こうして得られた膜の膜厚について断面SEM(走査型電子顕微鏡)で、また組成をRBS分析(ラザフォード後方散乱分析)で分析した結果を表1に示す。
[実施例
参考例5の(1)および(2)と同様の手順を行って得られた基板を、空気雰囲気の炉内にて500℃で1時間加熱した。
こうして得られた膜の膜厚について断面SEM(走査型電子顕微鏡)で、また組成をRBS分析(ラザフォード後方散乱分析)で分析した結果を表1に示す。
参考例7
参考例5の(1)および(2)と同様の手順を行って得られた基板を、水蒸気雰囲気(760torr)の炉内にて500℃で1時間加熱した。
こうして得られた膜の膜厚について断面SEM(走査型電子顕微鏡)で、また組成をRBS分析(ラザフォード後方散乱分析)で分析した結果を表1に示す。
参考例8
参考例5の(1)および(2)と同様の手順を行って得られた基板を、10%NH水溶液100gが入った密閉耐圧容器内に入れ、170℃の雰囲気を有する炉へ導入することにより、容器内に発生したアンモニア蒸気および水蒸気を加圧下で3時間にわたってさらして、水熱処理を行った。
こうして得られた膜の膜厚について断面SEM(走査型電子顕微鏡)で、また組成をRBS分析(ラザフォード後方散乱分析)で分析した結果を表1に示す。
【0044】
[比較例1]
(1)4インチのシリコン基板をスピンコーターに装着し、窒素ガス雰囲気下にて、上記下地膜形成用組成物1mLを滴下して、回転数3,000rpmで10秒間スピンさせた。この基板を150℃に設定したホットプレートに乗せ、2分間加熱した。下地膜の厚さは5nmであった。
(2)次いでこの基板を窒素雰囲気下でスピンコーターに装着し、上記アルミニウム含有膜形成用組成物C2.5gを滴下し、回転数1400rpmで10秒間スピンさせた。この基板を150℃のホットプレートで5分間加熱した。
(3)その後基板を空気雰囲気の炉内にて500℃で1時間加熱した。
こうして得られた膜の膜厚について断面SEM(走査型電子顕微鏡)で、また組成をRBS分析(ラザフォード後方散乱分析)で分析した結果を表1に示す。
[比較例2]
比較例1の(1)および(2)と同様の手順を行って得られた基板を、10%NH水溶液100gが入った密閉耐圧容器内に入れ、170℃の雰囲気を有する炉へ導入することにより、容器内に発生したアンモニア蒸気および水蒸気を加圧下で3時間にわたってさらして、水熱処理を行った。
こうして得られた膜の膜厚について断面SEM(走査型電子顕微鏡)で、また組成をRBS分析(ラザフォード後方散乱分析)で分析した結果を表1に示す。
【0045】
[比較例3]
(1)4インチのシリコン基板を150℃に設定したホットプレートに乗せ、2分間加熱し表面に吸着した水分を除去した。
(2)次いでこの基板を窒素雰囲気下でスピンコーターに装着し、上記アルミニウム含有膜形成用組成物Dを2.5g滴下し、回転数1400rpmで10秒間スピンさせた。この基板を150℃のホットプレートで5分間加熱した。
(3)その後基板を空気雰囲気の炉内にて500℃で1時間加熱した。
こうして得られた膜の膜厚について断面SEM(走査型電子顕微鏡)で、また組成をRBS分析(ラザフォード後方散乱分析)で分析した結果を表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
表1の結果より、本発明のアルミニウム含有膜形成用組成物を用いた場合、窒素雰囲気(参考例)またはアンモニア雰囲気(参考例)下で加熱処理を行った場合には、窒化アルミニウム膜を得ることができる。一方、空気(実施例)または水蒸気雰囲気(参考例)下で加熱処理を行った場合、または水熱処理(参考例)を行った場合には、酸化アルミニウム膜を得ることができる。
特に実施例及びと、比較例1及び3とを比較すると、酸化力が比較的弱い空気中での加熱処理でも、純度の高い酸化アルミニウム膜が得られることが特筆すべき点であり、これは上記一般式(1)で表される構造を有する有機アルミニウム化合物の高い反応性に起因するものと考えられる。