(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
磁気熱量材料及び熱スイッチを備えた中空状の熱生成ディスクと、前記磁気熱量材料に磁場を印加する磁場印加部を備えた中空状の磁場印加ディスク、とを交互に複数積層し、前記熱生成ディスク及び前記磁場印加ディスクの少なくともいずれか一方を相対的に回転させることによって回転方向とは交差する方向に熱を輸送する磁気冷暖房装置において、
前記熱生成ディスク及び前記磁場印加ディスクの少なくともいずれか一方を回転させる駆動手段と、
前記駆動手段からの駆動力を複数の熱生成ディスクまたは複数の磁気印加ディスクを一体的にまたは複数のグループに分離して伝達する伝達手段と、
を有することを特徴とする磁気冷暖房装置。
前記複数のグループ内の磁気熱量材料の磁気熱量効果を発現する温度域は、各々のグループ間で異なることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の磁気冷暖房装置。
請求項1から8に記載の磁気冷暖房装置で生成した冷暖気は、車両の車室内の空調として、または、前記車両に搭載するバッテリ、インバータ、モータの温度調整用として用いることを特徴とする磁気冷暖房装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本実施形態に係る磁気冷暖房装置を説明する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る磁気冷暖房装置の外観図である。図に示すように、磁気冷暖房装置100は円柱状の外形を有している。
【0017】
磁気冷暖房装置100は、上部コア100Aと下部コア100Bの2つのコアから形成される。上部コア100Aと下部コア100Bはそれぞれ同一径を有する円筒形状を有している。
【0018】
上部コア100Aの外周部には上部コア100Aの全周に亘ってその底面から上面に伸びる同心円筒状の外周冷媒通路200Aを形成する。なお、外周冷媒通路200Aの上面と底面は塞がれている。上部コア100Aの上面側には外周冷媒通路200Aに冷媒である空気を流入させる流入口200AINを取り付ける。上部コア100Aの底面側には流入口200AINから流入した空気を流出させる流出口200AOUTを形成する。したがって、外周冷媒通路200Aでは流入口210AINから流入した空気が流出口200AOUTから流出する。
【0019】
本実施形態では、流入口200AINから流入し外周冷媒通路200Aを流れた空気は流出口200AOUTに至るまでに冷却される。なお、本実施形態では冷媒として空気を例示するが、熱伝達特性に優れていれば、空気以外の気体冷媒を用いても良い。
【0020】
上部コア100Aの上面の中央部には駆動手段としてアウターロータモータ300Mを取り付ける。アウターロータモータ300Mの外周部には円筒状のロータ310Aを取り付ける。ロータ310Aの下部には伝達手段としてクラッチ300Caを取り付ける。
【0021】
ロータ310Aの外周とその外周から一定距離離れた部分との間の領域には、ロータ310Aの外周に沿って上部コア100Aの底面から上面に伸びる同心円筒状の内周冷媒通路320Aを形成する。なお、内周冷媒通路320Aの上面と底面は外周冷媒通路200Aと同様に塞がれている。上部コア100Aの上面側には内周冷媒通路320Aに空気を流入させる流入口320AINを取り付ける。上部コア100Aの底面側には流入口320AINから流入した空気を流出させる流出口320AOUTを形成する。したがって、内周冷媒通路320Aでは流入口320AINから流入した空気が流出口320AOUTから流出する。
【0022】
本実施形態では、流入口320AINから流入し内周冷媒通路320Aを流れた空気は流出口320AOUTに至るまでに加温される。
【0023】
上記では、外周冷媒通路200Aの流入口200AINから流入した空気が、外周冷媒通路200A内で冷却される場合を例示した。しかし、外周冷媒通路200Aの流入口200AINから流入した空気が、外周冷媒通路200A内で加温されるようにしても良い。また、上記では、内周冷媒通路320Aの流入口330AINから流入した空気が、内周冷媒通路320A内で加温される場合を例示した。しかし、内周冷媒通路320Aの流入口330AINから流入した空気を、内周冷媒通路320A内で冷却するようにしても良い。
【0024】
下部コア100Bの外周部には、下部コア100Bの全周に亘ってその底面から上面に伸びる同心円筒状の外周冷媒通路200Bが形成してある。なお、外周冷媒通路200Bの上面及び底面は塞がれている。下部コア100Bの上面側には外周冷媒通路200Bに冷媒である空気を流入させる流入口200BINを取り付ける。下部コア100Bの底面側には流入口200BINから流入した空気を流出させる流出口200BOUTを形成する。したがって、外周冷媒通路200Bでは流入口210BINから流入した空気が流出口200BOUTから流出する。
【0025】
本実施形態では、流入口200BINから流入し外周冷媒通路200Bを流れた空気は流出口200BOUTに至るまでに冷却される。
【0026】
下部コア100Bの上面の中央部には、上部コア100Aのロータ310Aの下部に取り付けたクラッチ300Caに接続するクラッチ300Cbを取り付ける。クラッチ300Cbには円筒状のロータ310Bを取り付ける。
【0027】
ロータ310Bの外周とその外周から一定距離離れた部分との間の領域には、上部コア100Aと同様に、ロータ310Bの外周に沿って下部コア100Bの底面から上面に伸びる同心円筒状の内周冷媒通路320Bを形成する。なお、内周冷媒通路320Bの上面及び底面は外周冷媒通路200Bと同様に塞がれている。下部コア100Bの上面側には内周冷媒通路320Bに空気を流入させる流入口320BINを取り付ける。下部コア100Bの底面側には流入口320BINから流入した空気を流出させる流出口320BOUTを形成する。したがって、内周冷媒通路320Bでは流入口320BINから流入した空気が流出口320BOUTから流出する。
【0028】
本実施形態では、流入口320BINから流入し内周冷媒通路320Bを流れた空気は流出口320BOUTに至るまでに加温される。
【0029】
上記では、外周冷媒通路200Bの流入口200BINから流入した空気が、外周冷媒通路200B内で冷却され流出口200BOUTから流出する場合を例示した。しかし、外周冷媒通路200Bの流入口200BINから流入した空気が、外周冷媒通路200B内で加温されるようにしても良い。また、上記では、内周冷媒通路320Bの流入口330BINから流入した空気が、内周冷媒通路320B内で加温される場合を例示した。しかし、内周冷媒通路320Bの流入口330BINから流入した空気を、内周冷媒通路320B内で冷却するようにしても良い。本実施形態では、冷却された空気や暖められた空気を車両の車室内の空調として、または、車両に搭載するバッテリ、インバータ、モータの温度調整用として用いる。
【0030】
なお、
図1には示していないが、上部コア100Aの流入口200AIN、流入口320AIN、流出口200AOUT、流出口320AOUT及び下部コア100Bの流入口200BIN、流入口320BIN、流出口200BOUT、流出口320BOUTはそれぞれの通路を連通させる連通弁に接続される。また、流入口200AIN、流入口200BIN、流入口320AIN、流入口320BINには外部に設けたポンプから空気が供給される。本実施形態では連通弁として3方弁を用いる。連通弁とポンプの接続については後述する。
【0031】
図2は、
図1のA−A断面図である。図に示すように、磁気冷暖房装置100は、上部コア100Aと下部コア100Bとに分離されている。上部コア100Aと下部コア100Bの外周部には、外周冷媒通路200A、200Bが形成されている。
【0032】
上部コア100Aの上面の中央部にはアウターロータモータ300Mが取り付けられる。アウターロータモータ300Mの外周部には円筒状のロータ310Aが取り付けてある。ロータ310Aの下部にはクラッチ300Caを取り付ける。ロータ310Aはアウターロータモータ300Mによって図示矢印方向に回転される。
【0033】
下部コア100Aの上面の中央部には、上部コア100Aのロータ310Aの下部に取り付けたクラッチ300Caに接続するクラッチ300Cbを取り付ける。クラッチ300Cbには円筒状のロータ310Bが取り付けてある。クラッチ300Caと300Cbは電磁式のクラッチ300Cである。クラッチ300CがONすると、クラッチ300Caと300Cbが接続され、アウターロータモータ300Mの駆動力がロータ310Aからロータ310Bに伝達し、ロータ310Bがロータ310Aとともに回転する。
【0034】
ロータ310Aには、磁気熱量材料に磁場を印加する磁場印加部を備えた中空状の磁場印加ディスク400Aa、400Ba、400Ca、400Daを取り付けてある。また、ロータ310Bには、磁気熱量材料に磁場を印加する磁場印加部を備えた中空状の磁場印加ディスク400Ab、400Bb、400Cb、400Dbを取り付けてある。磁場印加部は磁場印加ディスク400Aa−400Da、400Ab−400Dbの表面と裏面の両面に形成してある。
【0035】
ロータ310Aの外周面と磁場印加ディスク400Aa−400Da、ロータ300Bの外周面と磁場印加ディスク400Ab−400Dbの内周面とは堅固に嵌め合わせられている。したがって、クラッチ300CがONしている状態で、アウターロータモータ300Mが回転すると、ロータ310A及び310Bがともに回転し、磁場印加ディスク400Aa−400Da、磁場印加ディスク400Ab−400Dbも一斉に回転する。一方、クラッチ300CがOFFしている状態では、ロータ310Aのみが回転し、磁場印加ディスク400Aa−400Daが回転する。このように、クラッチ300CをON、OFFさせることで、複数の磁気印加ディスクを一体化しまたは分離することができる。
【0036】
ロータ310Aには、磁場印加ディスク400Aa、400Ba、400Ca、400Daのそれぞれに微小間隔空けて挟まれるように、磁気熱量材料及び熱スイッチを備えた中空状の熱生成ディスク410Aa、410Ba、410Caが固定して取り付けてある。また、ロータ310Bには、磁場印加ディスク400Ab、400Bb、400Cb、400Dbのそれぞれに微小間隔空けて挟まれるように、磁気熱量材料及び熱スイッチを備えた中空状の熱生成ディスク410Ab、410Bb、410Cbが固定して取り付けてある。したがって、上部コア100Aと下部コア100Bにおいて、磁場印加ディスクと熱生成ディスクとは、微小間隔空けて交互に積層されることになる。
【0037】
磁気熱量材料は磁場を印加すると自身の温度が上昇し磁場を取り除くと自身の温度が下降する特性を有する(正の磁性体:なお、この逆の特性のものもある)。本実施形態では、磁気熱量材料として正の磁性体または負の磁性体のいずれか一方のみを用いる。しかしながら、正の磁性体と負の磁性体を混在させても良い。熱スイッチは配列されている磁気熱量材料と磁気熱量材料との間に設けてあり、磁気熱量材料間の熱の伝達と遮断を選択的に行う。本実施形態では、磁気熱量材料の磁気熱量効果を発現する温度域が、1つのグループを形成する熱生成ディスク410Aa、410Ba、410Caと他のグループを形成する熱生成ディスク410Ab、410Bb、410Cbとでは異なっている。上部コア100Aと下部コア100Bとでは、流れ込む空気の温度が異なるため、磁気熱量効果を発現する温度域を選定すれば、冷風と温風を効率的に生成できるからである。
【0038】
したがって、クラッチ300CがONしている状態で、アウターロータモータ300Mが回転すると、ロータ310A及び310Bがともに回転し、磁場印加ディスク400Aa−400Da、磁場印加ディスク400Ab−400Dbが一斉に回転する。すると、熱生成ディスク410Aa−410Ca及び熱生成ディスク410Ab−410Cbのそれぞれに繰り返し磁場が印加され、磁場印加ディスクの回転する方向と交差する方向に熱が移動する。
【0039】
本実施形態の場合は、熱生成ディスク410Aa−410Ca及び熱生成ディスク410Ab−410Cbの外周側から内周側に熱が移動する。したがって、熱生成ディスク410Aa−410Ca及び熱生成ディスク410Ab−410Cbの外周側は温度が低くなり、その内周側は温度が高くなる。なお、本実施形態とは反対に、熱生成ディスク410Aa−410Ca及び熱生成ディスク410Ab−410Cbの内周側から外周側に熱が移動するようにしても良い。この場合、熱生成ディスク410Aa−410Ca及び熱生成ディスク410Ab−410Cbの外周側は温度が高くなり、その内周側は温度が低くなる。
【0040】
図3は、磁場印加ディスクの構成図である。
図3では
図2に示した磁場印加ディスク400Aaの構成について説明する。他の磁場印加ディスク400Ba−400Da、400Ab−400Dbの構成も磁場印加ディスク400Aの構成と同一である。
【0041】
図3Aは、
図3Bの磁場印加ディスク400Aaの表面を示し、
図3Cはその裏面を示す。
図3Bに示すように、磁場印加ディスク400Aaは円板状に形成されている。
図3A、
図3Cに示すように、磁場印加ディスク400Aaの表面及び裏面は放射状に30度ずつ12分割された領域を有する。
【0042】
磁場印加ディスク400Aの表面には、
図4Aに示すように、12分割された各領域に、磁場印加部420Aa、420Ab、…、420Ak、420Alを形成してある。磁場印加ディスク400Aの裏面には、
図4Cに示すように、12分割された各領域に、磁場印加部420Ca、420Cb、…、420Ck、420Clを形成してある。
【0043】
磁場印加ディスク400Aの表面の磁場印加部420Aa−420Alと、その裏面の磁場印加部420Ca−420Clとは、表面と裏面の同一位置に永久磁石を配置してある。たとえば、
図4Aに示すように、磁場印加部420Aaと磁場印加部420Caとにおいて、磁場印加ディスク400Aの径方向の永久磁石の並びは同一である。磁場印加部420Abと420Cb、…、磁場印加部420Alと420Clにおいても同じである。
【0044】
また、磁場印加ディスク400Aの表面と裏面において、隣接する磁場印加部同士の永久磁石の配置は、1つの永久磁石の厚み分だけ、磁場印加ディスク400Aの径方向に相互にずらしてある。たとえば、磁場印加部420Aa、420Ab、420Acのそれぞれにおいて、磁場印加部420Abに隣接する磁場印加部420Aa、420Acでは、磁場印加部420Aa、420Acの永久磁石の配置を、磁場印加部420Abの永久磁石の配置に対して1つの永久磁石の厚み分だけ、磁場印加ディスク400Aの径方向にずらしてある。
【0045】
図4は、熱生成ディスクの構成図である。
図4では
図2に示した熱生成ディスク410Aaの構成について説明する。熱生成ディスク410Aa以外の熱生成ディスク410Ba−410Ca、410Ab−410Cbの構成も熱生成ディスク410Aaの構成と同一である。
【0046】
図4Aに示すように、熱生成ディスク410Aaはその外周部が外周冷媒通路200Aに臨んでいる。熱生成ディスク410Aaはその内周部が内周冷媒通路320Aに臨んでいる。熱生成ディスク410Aaの内周部はベアリング315を介してロータ310Aに取り付けられる。ロータ310Aは固定されている熱生成ディスク410Aaに対しベアリング315を介して自由に回転できる。
【0047】
図4A、
図4Bに示すように、熱生成ディスク410Aaの外周冷媒通路200Aに臨む位置(外周部)には低温側熱交換部450Aを備え、その内周冷媒通路320Aに臨む位置(内周部)には高温側熱交換部450Bを備える。
【0048】
図4Aに示すように、熱生成ディスク410Aaは放射状に30度ずつ12分割された領域を有する。各領域には、
図4Bに示すように、低温側熱交換部450Aと高温側熱交換部450Bとの間に、正の磁気熱量材料460A−460N及び熱スイッチ470A−470N+1が交互に一列に配置される。
図4の例では正の磁気熱量材料を示したが、負の磁気熱量材料を用いても良い。
【0049】
磁場印加ディスク400Aaと400Baは、
図2に示したように、熱生成ディスク410Aaを挟んで回転する。磁場印加ディスク400Aaと400Baが回転すると、熱生成ディスク410Aaに形成してある磁気熱量材料460A−460Nに磁気が印加及び除去されて発熱吸熱を繰り返す。磁気熱量材料460A−460N、低温側熱交換部450A、高温側熱交換部450Bの間に設けた熱スイッチ470A−470N+1は一定のタイミングで熱を伝達する。このため、磁気熱量材料460A−460Nで生成された熱が低温側熱交換部450Aから高温側熱交換部450Bに移動し、低温側熱交換部450Aの温度は低くなり、高温側熱交換部450Bの温度は高くなる。
【0050】
クラッチ300CをOFFさせた状態で、外部から空気を流入口200AIN、320AIN(
図1参照)に供給し、アウターロータモータ300Mによってロータ310Aを回転させる。熱生成ディスク410Aa−410Ca上の12分割されているすべての領域において、
図4Aに示すように、低温側熱交換部450Aから高温側熱交換部450Bに向かって熱が移動する。
【0051】
したがって、低温側熱交換部450Aの温度が高温側熱交換部450Bの温度よりも相対的に低くなり、低温側熱交換部450Aが臨む外周冷媒通路200Aに冷風が得られる。また、高温側熱交換部450Bの温度が低温側熱交換部450Aの温度よりも相対的に高くなり、高温側熱交換部450Bが臨む内周冷媒通路320Aに温風が得られる。これば、ロータ310Bを回転させた場合も同じである。
【0052】
本実施形態では、熱生成ディスク410Aa−410Caに用いる磁気熱量材料460A−460Nが磁気熱量効果を効果的に発揮する温度域と、熱生成ディスク410Ab−410Cbに用いる磁気熱量材料460A−460Nが磁気熱量効果を効果的に発揮する温度域とを、異なる温度域に設定している。
図1に示すように、上部コア100Aと下部コア100Bとではそれぞれの冷媒通路に流入する空気の温度が同一ではないからである。
【0053】
本実施形態では、上部コア100Aの流入口200AIN、流入口320AIN、流出口200AOUT、流出口320AOUT及び下部コア100Bの流入口200BIN、流入口320BIN、流出口200BOUT、流出口320BOUTを、連通弁(図示せず)で接続することによって、冷風又は温風の生成能力を調整する。
【0054】
たとえば、大きな冷房能力が必要なときには、上部コア100Aと下部コア100Bとの冷媒通路を直列に接続する。具体的には、上部コア100Aの流出口200AOUTと下部コア100Bの流入口200BINを接続し、上部コア100Aの流出口320AOUTと下部コア100Bの流入口200BINを直列に接続する。そして、クラッチ300CをONさせてアウターロータモータ300Mを動かすと、上部コア200Aと下部コア200Bとによって冷却された非常に冷たい空気が、下部コア100Bの流出口200BOUTから取り出すことができる。また、上部コア200Aと下部コア200Bとによって暖められた非常に温かい空気が、下部コア100Bの流出口320BOUTから取り出すことができる。
【0055】
あまり大きな冷房能力が必要ではないときには、上部コア100Aの冷媒通路と下部コア100Bの冷媒通路とを切り離す。上部コア100Aの流入口200AINから流入した空気を流出口200AOUTから取り出し、上部コア100Aの流入口320AINから流入した空気を流出口320AOUTから取り出す。クラッチ300CをOFFさせた状態でアウターロータモータ300Mを動かすと、上部コア200Aのみで冷却された空気が上部コア100Aの流出口200AOUTから取り出すことができる。また、上部コア200Aのみで暖められた空気が流出口320OUTから取り出すことができる。
【0056】
さらに、上部コア100Aの冷媒通路と下部コア100Bの冷媒通路とを切り離して、下部コア100Bの流入口200BINから流入した空気を流出口200BOUTから取り出し、下部コア100Bの流入口320BINから流入した空気を流出口320BOUTから取り出す。クラッチ300CをONさせた状態でアウターロータモータ300Mを動かすと、上部コア200A及び下部コア200Bで冷却された空気が流出口200AOUT及び200BOUTから取り出すことができ、上部コア200A及び下部コア200Bで暖められた空気が流出口320AOUT及び320BOUTから取り出すことができる。
【0057】
本実施形態に係る磁気冷暖房装置100は、要求される冷房能力、暖房能力によって、連通弁の接続状態を変えて様々な運転モードを実現する。運転モードの変更は、次の冷媒配管と連通弁の切換えによって実現する。
【0058】
図5は、本実施形態に係る磁気冷暖房装置の連通弁の詳細を示す。図に示すように、外周冷媒通路200Aに接続する流入口200AINは配管500Aを介してポンプ550P1に接続される。外周冷媒通路200Aに接続する流出口200AOUTは三方弁580V1を介して被空調部(本実施形態では車室内、車両に搭載するバッテリ、インバータ、モータ)に連通する。外周冷媒通路200Bに接続する流入口200BINは三方弁580V2に接続され、三方弁580V2は配管500Bを介してポンプ550P1に接続される。外周冷媒通路200Bに接続する流出口200BOUTは被空調部に連通する。
【0059】
また、図に示すように、内周冷媒通路320Aに接続する流入口320AINは配管500Cを介してポンプ550P2に接続される。内周冷媒通路200Bに接続する流出口320BOUTは三方弁580V3を介して被空調部に連通する。内周冷媒通路320Bに接続する流入口320BINは三方弁580V4に接続され、三方弁580V4は配管500Dを介してポンプ550P2に接続される。内周冷媒通路320Bに接続する流出口320BOUTは被空調部に連通する。
【0060】
図6は、本実施形態に係る磁気冷暖房装置100の空調風の供給先と空調風の供給先からの信号に基づく制御の概略を説明するためのブロック図である。
【0061】
磁気冷暖房装置100のコントローラ600は、車室710の空調に関する情報を取得する。車室710の空調に関する情報は、具体的には、温度設定器によって設定した車内の設定温度、車内の風量、車室内温度センサによって検出した車室内の温度などである。また、車両に搭載されているバッテリ720の温度を取得する。また、車両に搭載されているインバータ730の温度を取得する。さらに、車両を駆動するモータ740の温度を取得する。
【0062】
コントローラ600は、車内の設定温度、車内の風量、車室内の温度、バッテリ720の温度、インバータ730の温度、モータ740の温度を入力する。そして、アウターロータモータ300M(
図1、
図2参照)の運転周波数(回転数)、後述するポンプのON、OFFを制御するためのポンプ制御信号、後述する三方弁の位置を設定するための弁制御信号、クラッチ300C(
図1、
図2参照)のON、OFFを制御するためのクラッチ制御信号を磁気冷暖房装置100に出力する。
【0063】
磁気冷暖房装置100は、これらの制御信号に基づいて、アウターロータモータ300Mの回転数、ポンプのON、OFF、三方弁の位置、クラッチ300CのON、OFFを制御し、車室710、バッテリ720、インバータ730、モータ740に、要求されている熱量を持つ空調風を供給する。
【0064】
本実施形態に係る磁気冷暖房装置100は、磁気冷暖房装置100の動作を制御するコントローラによってその動作が制御される。
図7は、本実施形態に係る磁気冷暖房装置100の制御系のブロック図である。
【0065】
コントローラ600には、
図5に示した三方弁580V1、三方弁580V2、三方弁580V3、三方弁580V4が接続される。それぞれの三方弁の位置はコントローラ600によって制御される。
【0066】
コントローラ600には、クラッチ300C(300Ca、300Cb)及びアウターロータモータ300Mが接続される。クラッチ300CのON、OFF、アウターロータモータ300Mの回転数は、コントローラ600によって制御される。コントローラ600は、三方弁580V1、三方弁580V2、三方弁580V3、三方弁580V4の動作をクラッチ300Cの動作に連動させる。
【0067】
コントローラ600には、ポンプ550P1とポンプ550P2が接続される。ポンプ550P1とポンプ550P2のON、OFFはコントローラ600によって制御される。
【0068】
コントローラ600には、温度設定器610、車室内温度センサ620、外気温センサ630、日射センサ640、モータ温度センサ650、バッテリ温度センサ660、インバータ温度センサ670が接続される。
【0069】
温度設定器610は、たとえば車両の車室内に設けられ、乗員が車室内の温度を設定するために設けられる。車室内温度センサ620は車室内の温度を検出する。外気温センサ630は車室外の温度を検出する。日射センサ640は、車室内に差し込む太陽の日射量を検出する。モータ温度センサ650はモータ740の温度を検出する。バッテリ温度検出センサ660は、車両に搭載されているバッテリ720の温度を検出する。インバータ温度センサ670は、モータ740を駆動するインバータ730の温度を検出する。なお、モータ温度センサ650、バッテリ温度センサ660、インバータ温度センサ670を設けるのは、モータ740に異常が生じたときに、その異常をいち早く検出できるようにするためである。また、モータ740、バッテリ720、インバータ730の温度が上昇した場合に、これらに磁気冷暖房装置100から冷風を供給する。
【0070】
次に、コントローラ600の動作を
図8−
図12の動作フローチャートに基づいて説明する。
【0071】
図8に示すように、コントローラ600は、温度設定器610、車室内温度センサ620、外気温センサ630、日射センサ640、モータ温度センサ650、バッテリ温度センサ660、インバータ温度センサ670によって検出された情報を入力する。つまり、全てのセンサによって検出された情報を入力する(S100)。
【0072】
コントローラ600は、これらのセンサから入力した情報に基づいて、冷房負荷、または暖房負荷を演算し、その演算結果から、アウターロータモータ300Mの回転数と、磁気冷暖房装置100の動作モードを演算する(S110)。
【0073】
コントローラ600は、演算された回転数でアウターロータモータ300Mを運転する(S120)。
【0074】
コントローラ600は、演算された磁気冷暖房装置100の動作モードがモード1からモード3のうちのいずれのモードであるかを判断する(S130)。
【0075】
コントローラ600は、演算された磁気冷暖房装置100の運転モードがモード1であればモード1の制御をし(S140)、モード2であればモード2の制御をし(S150)、モード3であればモード3の制御をする(S160)。
【0076】
そして、コントローラ600は、演算された磁気冷暖房装置100の運転モードにしたがって、空調制御を実行する(S170)。
【0077】
図9は、コントローラ600におけるモード1の動作フローチャートである。モード1は、磁気冷暖房装置100に、
図14のモード1に示すように、上部コア100Aと下部コア100Bとを直列に接続して動作をさせるモードである。
【0078】
モード1は、
図14のモード1に示すような空気の流れを生じさせる動作モードである。上部コア100Aの流出口200AOUTと下部コア100Bの流入口200BINが連通され、流入口200AINから空気が供給されて外周冷媒通路200Aと200Bとで冷却され、冷却された空気は流出口200BOUTから外部に流れる。また、上部コア100Aの流出口320AOUTと下部コア100Bの流入口320BINが連通され、流入口320AINから空気が供給されて内周冷媒通路320Aと320Bとで加温され、加温された空気は流出口320BOUTから外部に流れる。
【0079】
このため、モード1では、上部コア100Aと下部コア100Bとで冷風と温風を作り出す。
【0080】
モード1の空気の流れを実現させるため、コントローラ600は、
図9のフローチャートに示すように各三方弁、クラッチ、ポンプの動作を制御する。
【0081】
コントローラ600は、クラッチ300CをONし、ポンプ550P1とポンプ550P2をONし、流入口200A1N、200BIN、320AIN、320BINに外部から取り入れた空気を供給する(S141)。
【0082】
コントローラ600は、三方弁580V1、580V2、580V3、580V4を駆動させ、
図13のモード1のように各三方弁の位置を設定する。つまり、上部コア100Aと下部コア100Bの外周冷媒通路200A、200Bを直列に接続し、上部コア100Aと下部コア100Bの内周冷媒通路320A、320Bを直列に接続する(S142)。
【0083】
図10は、コントローラ600におけるモード2の動作フローチャートである。モード2は、磁気冷暖房装置100に、
図14のモード2に示すように、上部コア100Aから下部コア100Bを切り離して上部コア100Aのみを動作させるモードである。
【0084】
モード2は、
図14のモード2に示すような空気の流れを生じさせる動作モードである。上部コア100Aの流出口200AOUTと下部コア100Bの流入口200BINとは切り離される。流入口200AINから供給された空気は外周冷媒通路200Aのみで冷却され、冷却された空気は流出口200AOUTから外部に流れる。また、上部コア100Aの流出口320AOUTと下部コア100Bの流入口320BINとは切り離される。流入口320AINから供給された空気は内周冷媒通路320Aのみで加温され、加温された空気は流出口320AOUTから外部に流れる。
【0085】
このため、モード2では、上部コア100Aのみで冷風と温風を作り出す。
【0086】
モード2の空気の流れを実現させるため、コントローラ600は、
図10のフローチャートに示すように各三方弁、クラッチ、ポンプの動作を制御する。
【0087】
コントローラ600は、クラッチ300CをOFFし、ポンプ550P1とポンプ550P2をONし、流入口200A1N、200BIN、320AIN、320BINに外部から取り入れた空気を供給する(S151)。
【0088】
コントローラ600は、三方弁580V1、580V2、580V3、580V4を駆動させ、
図13のモード2のように各三方弁の位置を設定する。つまり、上部コア100Aと下部コア100Bの外周冷媒通路200A、200Bを切り離し、上部コア100Aと下部コア100Bの内周冷媒通路320A、320Bを切り離す。(S152)。
【0089】
図11は、コントローラ600におけるモード3の動作フローチャートである。モード3は、磁気冷暖房装置100に、
図14のモード3に示すように、上部コア100Aから下部コア100Bを切り離して上部コア100Aと下部コア100Bを単独かつ並列に動作させるモードである。
【0090】
モード3は、
図14のモード3に示すような空気の流れを生じさせる動作モードである。上部コア100Aの流出口200AOUTと下部コア100Bの流入口200BINとは切り離される。流入口200AINから供給された空気は外周冷媒通路200Aのみで冷却され、冷却された空気は流出口200AOUTから外部に流れる。また、上部コア100Aの流出口320AOUTと下部コア100Bの流入口320BINとは切り離される。流入口320AINから供給された空気は内周冷媒通路320Aのみで加温され、加温された空気は流出口320AOUTから外部に流れる。さらに、下部コア100Bの流入口200BINから供給された空気は外周冷媒通路200Bのみで冷却され、冷却された空気は流出口200BOUTから外部に流れる。また、下部コア100Bの流入口320BINから供給された空気は内周冷媒通路320Bのみで加温され、加温された空気は流出口320BOUTから外部に流れる。
【0091】
このため、モード3では、上部コア100Aで冷風と温風を作り出すとともに、下部コア100Bでも冷風と温風を作り出す。
【0092】
モード3の空気の流れを実現させるため、コントローラ600は、
図11のフローチャートに示すように各三方弁、クラッチ、ポンプの動作を制御する。
【0093】
コントローラ600は、クラッチ300CをONし、ポンプ550P1とポンプ550P2をONし、流入口200A1N、200BIN、320AIN、320BINに外部から取り入れた空気を供給する(S161)。
【0094】
コントローラ600は、三方弁580V1、580V2、580V3、580V4を駆動させ、
図13のモード3のように各三方弁の位置を設定する。つまり、上部コア100Aと下部コア100Bの外周冷媒通路200A、200Bを切り離し、上部コア100Aと下部コア100Bの内周冷媒通路320A、320Bを切り離す。そして、上部コア100Aの流入口200AINから流入した空気が流出口200AOUTに、流入口320AINから流入した空気が流出口320AOUTに流通するようにする。さらに、下部コア100Bの流入口200BINから流入した空気が流出口200BOUTに、流入口320BINから流入した空気が流出口320BOUTに流通するようにする(S162)。
【0095】
図12は、コントローラにおける空調制御の動作フローチャートである。このフローチャートは、
図8の動作フローチャートのサブルーチンを示すフローチャートである。空調制御はコントローラ600によって次の手順で行われる。
【0096】
コントローラ600において、車内の設定温度及び風量を設定する(S171)。コントローラ600は、車室内温度センサ620(
図7参照)から車内の温度を入力し、バッテリ温度センサ660からバッテリ720(
図7参照)の温度を入力し、インバータ温度センサ670からインバータ730の温度を入力し、モータ温度センサ650からモータ740の温度を入力する(S172)。
【0097】
コントローラ600は、自身が持つ制御マップに基づいて、磁気冷暖房装置100の運転周波数(アウターロータモータ300Mの回転数)、クラッチ300CのON、OFF、三方弁580V1−580V4の位置を制御する(S173)。コントローラ600は、磁気冷暖房装置100の運転周波数(アウターロータモータ300Mの回転数)を決定して運転を開始する(S174)。
【0098】
コントローラ600は、磁気冷暖房装置100が安定状態になったかを判断する。具体的には、一定の時間、または、一定の回転数だけ、磁気冷暖房装置100を動作したかを判断する(S175)。安定状態になるまでは(S175:NO)、ステップS171からステップS175までの動作を繰り返す。
【0099】
一方、安定状態になったら(S175:YES)、コントローラ600は、磁気冷暖房装置100の熱輸送量および磁気冷暖房装置100の高温端と低温端との差を算出する(S176)。ステップS176で算出した、磁気冷暖房装置100の熱輸送量および磁気冷暖房装置100の高温端と低温端との差が目標の範囲内に至ったか否かを判断する(S177)。
【0100】
磁気冷暖房装置100の熱輸送量および磁気冷暖房装置100の高温端と低温端との差が目標の範囲内に入ったら(S177:YES)、以降の運転に用いる運転周波数(アウターロータモータ300Mの回転数)を決定する(S178)。一方、磁気冷暖房装置100の熱輸送量および磁気冷暖房装置100の高温端と低温端との差が目標の範囲内に入らなければ(S177:NO)、磁気冷暖房装置100の運転周波数(アウターロータモータ300Mの回転数)を変更して、ステップS176の処理に戻る(S179)。
【0101】
以上のように、本実施形態に係る磁気冷暖房装置によれば、要求される冷房能力に応じて冷風及び温風を効率的に生成できる。
【0102】
本実施形態に係る磁気冷暖房装置によれば、アウターロータモータ300Mの駆動力をクラッチ300Cによって、下部コア100Bに伝達させたり伝達させなかったりすることができるので、要求される冷暖房能力に応じた冷風及び温風を生成することができる。このため、省エネ運転が可能になる。
【0103】
本実施形態に係る磁気冷暖房装置によれば、クラッチ300Cを用いて下部コア100Bを断続させることができるので、簡単な構成と制御によって回転力を伝達できる。
【0104】
本実施形態に係る磁気冷暖房装置によれば、連通弁は、全てのグループの内周側および外周側の冷媒通路を連通させるか、一部のグループのみの内周側および外周側の冷媒通路を連通させるか、のいずれかのモードを有するので、不要な冷媒の流れを無くすことができ、冷媒の駆動エネルギーを削減できる。また、内周側および外周側の冷媒通路を連通させると、連通させない場合に比べて、熱交換を十分できるので、十分に冷えた低温、十分に温まった高温の冷媒流を得ることができる。
【0105】
本実施形態に係る磁気冷暖房装置によれば、全てのグループの内周側および外周側の冷媒通路を、直列に連通するか、並列に連通するので、全グループの内周及び外周の冷媒が熱交換をできる。
【0106】
本実施形態に係る磁気冷暖房装置によれば、連通弁の制御をクラッチと連動することで、速やかに、各種モードの動作を行える。
【0107】
本実施形態に係る磁気冷暖房装置によれば、連通弁に3方弁を使うことで、簡便な制御で、冷媒の流を制御できる。
【0108】
本実施形態に係る磁気冷暖房装置によれば、複数のグループ内の磁気熱量材料の磁気熱量効果を発現する温度域は、各々のグループ間で異なっているので、流入及び流出する冷媒の温度差を大きく取ったり、冷媒の温度を違えたりすることができるので、各種要求温度が違う複数の被冷却部に冷媒を供給できる。
【0109】
本実施形態に係る磁気冷暖房装置によれば、冷媒を空気とすることで、水等の冷媒を介さず、熱輸送ができる。
【0110】
本実施形態に係る磁気冷暖房装置によれば、簡単な構成を備え、かつ簡単な制御で動作できるので、車両用の各種装置の冷暖房を行うことができる。