特許第5799897号(P5799897)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5799897通信装置および整合回路の印加電圧調整方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5799897
(24)【登録日】2015年9月4日
(45)【発行日】2015年10月28日
(54)【発明の名称】通信装置および整合回路の印加電圧調整方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/18 20060101AFI20151008BHJP
   H03H 7/38 20060101ALI20151008BHJP
   H03H 11/28 20060101ALI20151008BHJP
【FI】
   H04B1/18 C
   H03H7/38 Z
   H03H11/28
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-132982(P2012-132982)
(22)【出願日】2012年6月12日
(65)【公開番号】特開2013-258541(P2013-258541A)
(43)【公開日】2013年12月26日
【審査請求日】2015年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社日本自動車部品総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】特許業務法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】高岡 彰
(72)【発明者】
【氏名】渡部 宣哉
(72)【発明者】
【氏名】関澤 高俊
(72)【発明者】
【氏名】松本 宗範
【審査官】 石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−021768(JP,A)
【文献】 特開昭56−069915(JP,A)
【文献】 特開2007−074271(JP,A)
【文献】 特開平04−358423(JP,A)
【文献】 特開2001−267950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/18− 1/24
H04B 1/38− 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧回路(50)より出力される印加電圧に応じて容量値が変化する可変容量素子(21)を有する整合回路(20)と、前記電圧回路(50)より出力される印加電圧を制御する制御部(40)を備えた通信装置であって、
前記制御部(40)は、前記電圧回路(50)より出力される印加電圧を変化させて前記可変容量素子に接続された容量測定器(2)に前記可変容量素子の前記印加電圧の変化前後の各容量値(C1、C2)を計測させる容量値計測手段と、
前記可変容量素子の前記印加電圧の変化前後の各容量値(C1、C2)および変化前後の各印加電圧値(V1、V2)を用いて前記可変容量素子(21)の容量値の初期ばらつきを補正するための電圧補正値(α)を算出する電圧補正値算出手段と、
前記電圧補正値(α)を用いて前記可変容量素子(21)の容量値の初期ばらつきを打ち消すような前記可変容量素子(21)の補正電圧を算出する補正電圧算出手段と、
前記電圧回路(50)から前記補正電圧が出力されるように前記電圧回路(50)より出力される印加電圧を調整する電圧回路制御手段と、を備えたことを特徴とする通信回路。
【請求項2】
前記制御部(40)は、前記可変容量素子の前記印加電圧の変化前後の各容量値(C1、C2)および変化前後の各印加電圧値(V1、V2)を前記可変容量素子(21)の標準的なC−V特性を表す近似式に代入して前記電圧補正値(α)を算出することを特徴とする請求項1に記載の通信回路。
【請求項3】
前記電圧回路(50)から前記補正電圧が出力されるようにするためのデータを記憶する記憶手段(40a)を備え、
前記電圧回路制御手段は、前記記憶手段(40a)に記憶された前記データに基づいて前記電圧回路(50)より出力される印加電圧を調整することを特徴とする請求項1または2に記載の通信回路。
【請求項4】
前記可変容量素子の電圧印加端子には、当該可変容量素子の容量値を測定するためのテストピン(P1、P2)が接続されていることを特徴とする請求項1または2に記載の通信回路。
【請求項5】
電圧回路(50)より出力される印加電圧に応じて容量値が変化する可変容量素子(21)を有する整合回路の印加電圧調整方法であって、
前記電圧回路(50)より出力される印加電圧を変化させて前記可変容量素子に接続された容量測定器(2)に前記可変容量素子の前記印加電圧の変化前後の各容量値(C1、C2)を計測させる第1のステップと、
前記可変容量素子の前記印加電圧の変化前後の各容量値(C1、C2)および変化前後の各印加電圧値(V1、V2)を用いて前記可変容量素子(21)の容量値の初期ばらつきを補正するための電圧補正値(α)を算出する第2のステップと、
前記電圧補正値(α)を用いて前記可変容量素子(21)の容量値の初期ばらつきを打ち消すような前記可変容量素子(21)の補正電圧を算出する第3のステップと、
前記電圧回路(50)から前記補正電圧が出力されるように前記電圧回路(50)より出力される印加電圧を調整する第4のステップと、を備えたことを特徴とする整合回路の印加電圧調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変容量素子を有する整合回路を備えた通信装置および可変容量素子を有する整合回路の印加電圧調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、局部発振信号を出力する局部発振器と、受信回路の出力信号の電圧値を検出する電圧検出回路を備え、整合回路のインピーダンス調整時に、局部発振器から出力される局部発振信号が、印加電圧値に応じて容量値が変化する可変容量素子を有する整合回路に入力されるようにスイッチを切り替えるとともに、電圧検出回路により検出される受信回路の出力信号の電圧値が予め定められた基準電圧値に近づくように整合回路のインピーダンスを自動で制御するようにした無線通信装置がある(例えば、特許文献1参照)。このような装置は、製品出荷後でも、常時、整合回路のインピーダンス調整を行うことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−228834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載された装置のように、局部発振器から出力される局部発振信号が、可変容量素子を有する整合回路に入力されるようにスイッチを切り替えて整合回路のインピーダンスを自動で制御するような構成では、局部発振器、電圧検出回路、スイッチ等を備える必要があり、構成が複雑で、また、部品点数が多いため回路規模が大きく、高コストとなってしまう。
【0005】
このような整合回路のインピーダンス調整においては、上記特許文献1に記載された装置のように、常時、整合回路のインピーダンス調整を行うといったことまでできなくても、製品出荷前に、整合回路のインピーダンス調整を精度よくできればよいという場合も少なくない。
【0006】
この場合、より簡素な構成で、かつ、簡単な操作で、可変容量素子に印加する印加電圧を最適電圧に設定するようにして整合回路のインピーダンスを調整できるようにするのが好ましい。
【0007】
そこで、整合回路に含まれる可変容量素子に印加する最適な印加電圧(最適電圧)を特定しておき、可変容量素子に最適電圧が印加されるように電圧を調整するようにして整合回路のインピーダンス調整を行うといった方法が考えられる。
【0008】
しかし、このような方法では、整合回路に含まれる可変容量素子に印加する電圧を最適電圧に設定できたとしても、可変容量素子は個体差による容量値のばらつき(初期ばらつき)が大きいため、整合回路のインピーダンスを精度良く調整するのは難しいといった問題がある。
本発明は上記問題に鑑みたもので、より簡素な構成で、かつ、簡単な操作で、可変容量素子の容量値の初期ばらつきによる影響が抑制されるように可変容量素子の印加電圧調整を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、電圧回路(50)より出力される印加電圧に応じて容量値が変化する可変容量素子(21)を有する整合回路(20)と、電圧回路(50)より出力される印加電圧を制御する制御部(40)を備えた通信装置であって、制御部(40)は、電圧回路(50)より出力される印加電圧を変化させて可変容量素子(21)に接続された容量測定器(2)に可変容量素子(21)の印加電圧の変化前後の各容量値(C1、C2)を計測させる容量値計測手段と、可変容量素子(21)の印加電圧の変化前後の各容量値(C1、C2)および変化前後の各印加電圧値(V1、V2)を用いて可変容量素子(21)の容量値の初期ばらつきを補正するための電圧補正値(α)を算出する電圧補正値算出手段と、電圧補正値(α)を用いて可変容量素子(21)の容量値の初期ばらつきを打ち消すような可変容量素子(21)の補正電圧を算出する補正電圧算出手段と、電圧回路(50)から補正電圧が出力されるように電圧回路(50)より出力される印加電圧を調整する電圧回路制御手段と、を備えたことを特徴としている。
【0010】
このような構成によれば、制御部(40)は、電圧回路(50)より出力される印加電圧を変化させて可変容量素子(21)に接続された容量測定器(2)に可変容量素子(21)の印加電圧の変化前後の各容量値(C1、C2)を計測させ、可変容量素子(21)の印加電圧の変化前後の各容量値(C1、C2)および変化前後の各印加電圧値(V1、V2)を用いて可変容量素子(21)の容量値の初期ばらつきを補正するための電圧補正値(α)を算出し、電圧補正値(α)を用いて可変容量素子(21)の容量値の初期ばらつきを打ち消すような可変容量素子(21)の補正電圧を算出し、電圧回路(50)から補正電圧が出力されるように電圧回路(50)より出力される印加電圧を調整するので、例えば、可変容量素子を有する整合回路20に局部発振信号を入力することなく整合回路20の調整を行うことができ、より簡素な構成で、かつ、簡単な操作で、可変容量素子の容量値の初期ばらつきによる影響が抑制されるように可変容量素子の印加電圧調整を行うことができる。
【0011】
また、請求項5に記載の発明のように、請求項1に記載された発明は、整合回路の印加電圧調整方法として捉えることもできる。
【0012】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る整合回路を有する通信回路の構成を示す図である。
図2】バリキャップダイオードのC−V特性の一例を示す図である。
図3】バリキャップダイオードのC−V特性のばらつきの様子を示した図である。
図4】通信回路1のインピーダンス調整方法の手順を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態に係る可変容量素子を有する整合回路を備えた通信回路の構成を図1に示す。本通信装置1は、電圧回路50より出力される印加電圧に応じて容量値が変化するバリキャップダイオード21を有する整合回路20と、電圧回路50より出力される印加電圧を制御する制御部40を備えている。なお、図1中には、バリキャップダイオード21の容量を測定する容量測定器2および制御ボード3も示されている。
【0015】
本通信回路1は、アンテナ10、整合回路20、受信IC30、制御部40および電圧回路50を備えている。
【0016】
整合回路20は、電波を受信するアンテナ10と受信IC30との間のインピーダンス整合を行うものである。整合回路20は、可変容量素子としてのバリキャップダイオード21、コンデンサ22〜24、インダクタ25を備えている。
【0017】
また、バリキャップダイオード21のアノード端子およびカソード端子には、当該バリキャップダイオード21の容量値を測定するための容量測定器2の各測定端子を接続するためのテストピン(P1、P2)が接続されている
の各端子と、容量測定器2の測定端子を接続するためのテストピンP1、P2が設けられている。
【0018】
バリキャップダイオード21の容量値は、電圧回路50より出力される印加電圧に応じて変化する。本実施形態では、電圧回路50より出力される電圧値を最適電圧に設定することで、整合回路20のインピーダンス調整を行うようになっている。
【0019】
受信IC30は、整合回路20を介してアンテナ10より入力される受信信号の増幅、復調等を行い、受信信号に含まれる各種データを抽出する。
【0020】
制御部40は、CPU、I/O、通信部等を備えたマイクロコンピュータとして構成されている。また、制御部40は、各種データを記憶するメモリ40aを有している。制御部40は、メモリ40aに記憶されたプログラムに従って各種処理を実施する。
【0021】
電圧回路50は、整合回路20のバリキャップダイオード21に印加する印加電圧を出力するものである。電圧回路50は、制御部40よりパラレル出力されるデジタル信号をアナログ信号に変換するD/A変換回路51および抵抗52を備えている。
【0022】
電圧回路50から制御部40よりパラレル出力されるデジタル信号に応じた印加電圧が出力され、整合回路20のバリキャップダイオード21に印加されるようになっている。
【0023】
容量測定器2は、バリキャップダイオード21の容量値を測定するための測定器である。容量測定器2の測定端子がバリキャップダイオード21のカソードに接続されたテストピンP1と、バリキャップダイオード21のアノードに接続されたテストピンP2に接続されるようになっている。
【0024】
また、容量測定器2は、制御ボード3を介して通信回路1の制御部40と接続されるようになっている。
【0025】
容量測定器2と通信回路1の制御部40の間は、制御ボード3を介して接続されており、この制御ボード3を介して双方向通信を行うことが可能となっている。容量測定器2は、制御部40からの要求に応じて容量値の測定を行うとともに、測定結果を制御ボード3を介して制御部40に送信する。
【0026】
制御ボード3は、容量測定器2と制御部40の間の通信制御を行うためのものである。また、制御ボード3には、直流安定化電源(図示せず)から通信回路1への電源供給の開始または停止を指示する電源スイッチ、整合回路20のインピーダンス調整の開始を指示する調整開始スイッチ等の操作スイッチが設けられている。
【0027】
次に、バリキャップダイオード21のC−V特性について説明する。図2に、バリキャップダイオード21のC−V特性の一例を示す。図中のX軸は、印加電圧(逆電圧)V(V)、Y軸は、容量C(pF)となっている。なお、図中のC−V特性は、1メガヘルツ(MHz)の周波数帯域のものであり、ティピカル値として示されている。
【0028】
図に示すように、印加電圧(逆電圧)Vが大きくなるにつれて、バリキャップダイオード21の容量Cは小さくなっている。ここで、印加電圧をXとすると、バリキャップダイオード21の容量Cは、数式1に示すようなXの関数として表すことができる。
【0029】
【数1】
本実施形態では、バリキャップダイオード21を有する整合回路20に局部発振信号を入力して整合回路20の調整を行うのではなく、電圧回路50より出力される印加電圧を変化させ、バリキャップダイオード21に接続された容量測定器2にバリキャップダイオード21の印加電圧の変化前後の各容量値を計測させ、バリキャップダイオード21のC−V特性を利用して、計測した各容量値からバリキャップダイオード21の容量値の初期ばらつきを補正するための電圧補正値を算出し、この電圧補正値を用いてバリキャップダイオード21の容量値の初期ばらつきを打ち消すようなバリキャップダイオード21の補正電圧を算出し、電圧回路50から補正電圧が出力されるように電圧回路50より出力される印加電圧を制御する。
【0030】
バリキャップダイオード21は、アノード、カソード間に印加する逆バイアス電圧の値により、容量値を変化させることが可能なダイオードである。バリキャップダイオード21は、個体差により10%程度の容量値のばらつきを有している。この容量値のばらつきの主因は、バリキャップダイオード21の製造ばらつきによるものと考えられる。
【0031】
複数のバリキャップダイオード21を用いてC−V特性のばらつきについて検証したところ、図3の点線で示すように、C−V特性がX軸のプラス方向あるいはマイナス方向にシフトするようにばらつくことが確認できた。
【0032】
本実施形態では、バリキャップダイオード21の印加電圧値の実測値をx、バリキャップダイオード21の容量値の初期ばらつきを補正するための電圧補正値をαとして、この電圧補正値αを算出する。
【0033】
ここで、数式1で示したXを、X=x−αと置換すると、数式1で示した関数は、数式2のように表すことができる。
【0034】
【数2】
また、バリキャップダイオード21の印加電圧を第1の電圧V1に設定し、このとき、容量測定器2により測定された測定容量をC1とし、バリキャップダイオード21の印加電圧を第2の電圧V2に設定し、このとき、容量測定器2により測定された測定容量をC2とすると、数式3の関係が成り立つ。
【0035】
【数3】
一方で、図1に示したバリキャップダイオード21の標準的なC−V特性は、数式4に示す近似式で表される。
【0036】
【数4】
数式2において、第1の電圧V1=1.6ボルト(V)に設定したときに、容量測定器2によりC1=15.94ピコファラド(pF)と測定され、第2の電圧V2=3.0ボルト(V)に設定したときに、容量測定器2によりC2=14.26ピコファラド(pF)と測定されたものとすると、数式2、数式3より、次に示す数式5の関係が成立する。
【0037】
【数5】
この場合、数式5より、電圧補正値αは、数式6のように算出される。
【0038】
【数6】
次に、バリキャップダイオード21の単体の容量値を算出する。数式4、数式6より、次に示す数式7の関係が成立する。
【0039】
【数7】
次に、バリキャップダイオード21に印加する最適電圧を特定する。本実施形態では、数式7を用いて、バリキャップダイオード21に印加する最適電圧を特定する。整合回路20におけるバリキャップダイオード21の容量値の設定値は、アンテナ10により異なる。
【0040】
例えば、バリキャップダイオード21の容量値の設定値を3(pF)にしたい場合には、数式7において、f=3(pF)、電圧補正値α=−0.05として、バリキャップダイオード21のに印加する最適電圧x(V)を算出することができる。
【0041】
このように、本実施形態では、電圧補正値αを用いてバリキャップダイオード21の容量値の初期ばらつきを打ち消すようなバリキャップダイオード21の最適電圧(補正電圧)を算出し、電圧回路50から最適電圧(補正電圧)が出力されるように電圧回路50より出力される印加電圧を制御する。
【0042】
ところで、バリキャップダイオード21の単体の容量値は、数式7を用いて算出することができる。例えば、第1の電圧V1=1.6(V)の場合、x=1.6(V)、α=−0.05として、バリキャップダイオード21の単体の容量値は4.46(pF)と算出することができる。また、第2の電圧V2=3.0(V)の場合、x=3.0(V)、α=−0.05として、バリキャップダイオード21の単体の容量値は2.78(pF)と算出することができる。
【0043】
なお、バリキャップダイオード21を基板から取り外して単体の容量値を計測したところ、第1の電圧V1=1.6(V)の場合の単体の容量値は4.41(pF)、第2の電圧V2=3.0(V)の場合のバリキャップダイオード21の単体の容量値は2.74(pF)となった。
【0044】
ちなみに、上記したようにバリキャップダイオード21が、コンデンサ22〜24、インダクタ25とともに基板に実装された状態で、バリキャップダイオード21の容量値を計測した場合、第1の電圧V1=1.6(V)の場合では、C1=15.94(pF)、第2の電圧V2=3.0(V)の場合では、C2=14.26(pF)となり、バリキャップダイオード21の単体の容量値と大きく異なる容量値が計測される。
【0045】
しかし、バリキャップダイオード21を基板に実装した状態でも、上記したように、バリキャップダイオード21の印加電圧の変化前後の各容量値C1、C2および変化前後の各印加電圧値V1、V2を用いてバリキャップダイオード21の容量値の初期ばらつきを補正するための電圧補正値αを算出することで、第1の電圧V1=1.6(V)の場合の算出誤差は0.05(pF)、第2の電圧V2=3.0(V)の場合の算出誤差は0.04(pF)となり、バリキャップダイオード21の容量値を高精度で算出できることが確認された。
【0046】
次に、図4に従って、通信回路1のインピーダンス調整方法について説明する。なお、容量測定器2と制御ボード3の間と、制御ボード3と制御部40との間は、既に通信線を介して接続されているものとする。
【0047】
まず、作業者は、テストピンP1、P2と容量測定器2の測定端子を接続する(S100)。
【0048】
次に、電圧回路50の出力電圧を第1の電圧V1=1.6Vに設定し、容量測定器2により測定された測定容量C1をメモリ40aに記憶させる(S102)。本実施形態では、作業者により制御ボード3に設けられた電源スイッチが操作されると、直流安定化電源(図示せず)から通信回路1への電源供給が開始され、更に、調整開始スイッチが操作されると、電圧回路50から制御部40よりパラレル出力されるデジタル信号に応じた印加電圧(第1の電圧)V1=1.6Vが出力され、この第1の電圧V1が整合回路20のバリキャップダイオード21に印加される。また、電圧回路50は、容量測定器2にバリキャップダイオード21の容量の測定を指示し、この指示に応じて容量測定器2により測定された測定容量C1が制御ボード3を介して制御部40に入力される。制御部40は、この測定容量C1をメモリ40aに記憶させる。
【0049】
次に、電圧回路50の出力電圧を第2の電圧V2=3.0Vに設定し、容量測定器2により測定された測定容量C2をメモリ40aに記憶させる(S104)。本実施形態では、電圧回路50から制御部40よりパラレル出力されるデジタル信号に応じた印加電圧(第2の電圧)V2=3.0Vが出力されるようになっており、この第2の電圧V2が整合回路20のバリキャップダイオード21に印加される。また、電圧回路50は、容量測定器2にバリキャップダイオード21の容量の測定を指示し、この指示に応じて容量測定器2により測定された測定容量C2が制御ボード3を介して制御部40に入力される。制御部40は、この測定容量C2をメモリ40aに記憶させる。
【0050】
次に、電圧補正値αを算出する(S106)。具体的には、制御部40により数式2〜6を用いて電圧補正値αが算出される。
【0051】
次に、バリキャップダイオード21の単体の容量値を算出する(S108)。具体的には、制御部40により数式7を用いてバリキャップダイオード21の単体の容量値が算出される。
【0052】
次に、最適電圧(補正電圧)を特定する(S110)。具体的には、制御部40により数式7を用いてバリキャップダイオード21の容量値が所望の容量値となるような最適電圧(補正電圧)が算出される。
【0053】
次に、電圧回路50から最適電圧が出力されるようにする(S112)。具体的には、電圧回路50から最適電圧(補正電圧)が出力されるように制御部40から電圧回路50へ出力するデジタル信号を特定し、このデジタル信号を電圧回路50へ出力するとともにメモリ40aに記憶させ、印加電圧の調整を終了する。
【0054】
なお、このようにして印加電圧の調整が終了すると、次回以降、制御部40は、動作開始時に、メモリ40aに記憶されたデジタル信号を読み出して、このデジタル信号を電圧回路50へ出力し、電圧回路50から最適電圧(補正電圧)が出力されるようになる。
【0055】
上記した構成によれば、制御部40は、電圧回路50より出力される印加電圧を変化させてバリキャップダイオード21に接続された容量測定器2にバリキャップダイオード21の印加電圧の変化前後の各容量値C1、C2を計測させ、バリキャップダイオード21の印加電圧の変化前後の各容量値C1、C2および変化前後の各印加電圧値V1、V2を用いてバリキャップダイオード21の容量値の初期ばらつきを補正するための電圧補正値αを算出し、電圧補正値αを用いてバリキャップダイオード21の容量値の初期ばらつきを打ち消すようなバリキャップダイオード21の補正電圧を算出し、電圧回路50から補正電圧が出力されるように電圧回路50より出力される印加電圧を調整するので、例えば、可変容量素子を有する整合回路20に局部発振信号を入力することなく整合回路20の調整を行うことができ、より簡素な構成で、かつ、簡単な操作で、可変容量素子の容量値の初期ばらつきによる影響が抑制されるように可変容量素子の印加電圧調整を行うことができる。
【0056】
なお、制御部40は、バリキャップダイオード21の印加電圧の変化前後の各容量値C1、C2および変化前後の各印加電圧値V1、V2をバリキャップダイオード21の標準的なC−V特性を表す近似式に代入して電圧補正値αを算出することができる。
【0057】
また、電圧回路50から補正電圧が出力されるようにするためのデータを記憶するメモリ40aを備え、メモリ40aに記憶されたデータに基づいて電圧回路50より出力される印加電圧が調整されるので、電圧回路50から補正電圧が出力されるようにするためのデータがメモリ40aに記憶された後は、安定して電圧回路50から補正電圧が出力されるようにすることができる。
【0058】
また、バリキャップダイオード21の電圧印加端子には、当該バリキャップダイオード21の容量値を測定するためのテストピンP1、P2が接続されているので、これらのテストピンP1、P2を用いて容量測定器2の測定端子を容易に接続することができる。
【0059】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々なる形態で実施することができる。
【0060】
例えば、上記実施形態では、整合回路20として、図1中に示したような構成を示したが、この図に示した構成に限定されるものではない。
【0061】
また、上記実施家形態では、制御部40が、電圧回路50より出力される印加電圧を変化させてバリキャップダイオード21に接続された容量測定器2にバリキャップダイオード21の印加電圧の変化前後の各容量値C1、C2を計測させ、バリキャップダイオード21の印加電圧の変化前後の各容量値C1、C2および変化前後の各印加電圧値V1、V2を用いてバリキャップダイオード21の容量値の初期ばらつきを補正するための電圧補正値αを算出し、電圧補正値αを用いてバリキャップダイオード21の容量値の初期ばらつきを打ち消すようなバリキャップダイオード21の補正電圧を算出し、電圧回路50から補正電圧が出力されるように電圧回路50より出力される印加電圧を調整する例を示したが、このような方法に限定されるものではなく、例えば、バリキャップダイオード21に接続された容量測定器2にバリキャップダイオード21の印加電圧の変化前後の各容量値C1、C2を計測する作業を作業者の作業で行うなど、一部または全てを作業者の作業操作で行うようにしてもよい。この場合、例えば、制御部40にパーソナルコンピュータを接続し、このパーソナルコンピュータを用いて電圧補正値α、補正電圧等の算出や、制御部40に対する補正電圧の指示等を行うようにすればよい。このように、通信回路としてだけでなく、整合回路の印加電圧調整方法として捉えることもできる。
【0062】
また、上記実施形態では、第1の電圧としてV1=1.6(V)、第2の電圧としてV2=3.0(V)をバリキャップダイオード21に印加して、バリキャップダイオード21の各容量値(C1、C2)を計測する例を示したが、このような電圧値に限定されるものではない。
【0063】
また、上記実施形態では、バリキャップダイオード21を可変容量素子として使用したが、バリキャップダイオードに限定されるものではない。
【0064】
なお、上記実施形態における構成と特許請求の範囲の構成との対応関係について説明すると、S102、S104が容量値計測手段および第1のステップに相当し、S106が電圧補正値算出手段および第2のステップに相当し、S110が補正電圧算出手段および第3のステップに相当し、S112が電圧回路制御手段および第4のステップに相当し、メモリ40aが記憶手段に相当する。
【符号の説明】
【0065】
1 通信回路
2 容量測定器
3 制御ボード
10 アンテナ
20 整合回路
21 バリキャップダイオード
30 受信IC
40 制御部
50 電圧回路
図1
図2
図3
図4