(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第3センサ部に備えられる前記静電容量部の容量値は、前記第1、第2センサ部に備えられる前記静電容量部の容量値より大きいことを特徴とする請求項2に記載の加速度センサ。
前記第1の弾性部材と前記第2の弾性部材とは同一の構造であり、更に、前記第1センサ部と前記第2センサ部とは同一の構造であることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の加速度センサ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した3軸加速度センサに用いられるバネは、XYZの各方向に作用する加速度に応じて変動するように錘部を保持するとともに、錘部が変動する方向に係わらず作用する加速度の大きさに応じて同様に変動する態様となる特性が必要となる。例えば、3軸加速度センサに用いられるバネは、3方向に対するバネ定数がほぼ同一となるような特性を有する。しかしながら、このような構成の加速度センサでは、例えばバネや錘部に対する製造工程の不具合、例えばバネや錘部を形成するエッチングにおいて生じるバネの太さや錘部の膜厚のバラツキにより、錘部の重心がずれ、錘部にねじれや回転が生じたような状態となる虞がある。このため、設定された検出方向に作用する加速度の他に、他の方向の加速度に対しても出力を生ずるような、いわゆる他軸感度が生じ検出精度が低下する、あるいは歩留まりが低下するという問題点があった。
【0006】
また、3軸加速度センサでは、上記したように各方向に作用する加速度を大きさに応じて同様に検出することが要求されるために対称な構造とすることが望まれる。例えば、上記した特許文献2に示される3軸加速度センサでは、錘部を平面視した形状が略正方形状に構成されている。つまり、このような3軸加速度センサでは、良好な検出精度とするために錘部の形状の自由度が大きく制約される。
【0007】
一方で、上記した1軸加速度センサを複数用いて3軸加速度センサを構成することが考えられる。例えば、1軸加速度をXYZの各方向に対応して設ける構成として、複数の加速度センサを同一平面上に並べて配置した構成が考えられる。しかしながら、このような構成では装置の大型化を招くこととなる。
【0008】
本願に開示される技術は、上記の課題に鑑み提案されたものである。装置の小型化に寄与し形状の自由度を高めつつ、加速度の検出精度の向上が図れる加速度センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願に開示される技術に係る加速度センサは、基板と、基板に一端が固定され、基板に沿う第1方向と基板に直交する第3方向との2方向の加速度に対して撓動する第1の弾性部材と、基板に一端が固定され、基板に沿い第1方向に直交する第2方向と第3方向との2方向の加速度に対して撓動する第2の弾性部材と、第1及び第2の弾性部材のそれぞれの他端に連結され基板から遊離して揺動可能に支持される複数の錘部と、第1乃至第3方向のそれぞれの加速度を錘部の揺動に応じて検出する第1乃至第3センサ部とを備える。
【0010】
この加速度センサは、第1及び第3方向に可撓性を有する第1の弾性部材と、第2及び第3方向に可撓性を有する第2の弾性部材とを有する。複数の錘部は、このような2方向に対する可撓性を有する第1及び第2の弾性部材のどちらかにより基板から遊離して揺動可能に支持される。そして、第1乃至第3センサ部は、錘部の揺動に応じて第1乃至第3方向の加速度を検出する。
このような第1及び第2弾性部材は、3軸加速度センサに用いられるような3方向に対して伸縮し撓動する特性を有しておらず、基板に沿う2方向(第1方向及び第2方向)のうちのどちらか一方向に対する剛性を有している。従って、製造工程の不具合により錘部の重心がずれ、錘部にねじれや回転が生じたような状態となる虞がなく、検出精度の向上を図った加速度センサが構成できる。また、製造工程における加速度センサの特性のバラツキが抑制されるため、歩留まりの向上を図ることができる。
【0011】
また、この加速度センサでは、錘部を第1及び第2の弾性部材のどちらかにより支持して2方向に揺動可能とする構成となっている。このような構成では、3軸加速度センサに用いる錘部に対して要求されるような構造上の制限、例えば3方向に作用する加速度を同様に検出するために平面視正方形状とする形状の制限をなくして形状の自由度を高めることができる。
また、3つの1軸加速度センサで3軸加速度センサを構成する場合に比べると、本発明の加速度センサによれば第1の弾性部材又は第2の弾性部材のどちらかを備える2つの2軸加速度センサを用いて3軸加速度センサと同等の機能が実現可能であり、デバイスの数を減らして装置の小型化が図れる。
【0012】
また、本願に開示される技術に係る加速度センサにおいて、第1乃至第3センサ部は、各々、基板に設けられる固定電極と錘部に設けられる可動電極とを有する静電容量部を備え、第1センサ部は、静電容量部に備えられる固定電極及び可動電極が第2方向に沿う平板状に形成され、第2センサ部は、静電容量部に備えられる固定電極及び可動電極が第1方向に沿う平板状に形成され、第3センサ部は、静電容量部に備えられる固定電極及び可動電極が基板に沿う平板状に形成されてもよい。このような構成では、各方向の加速度を検出する第1乃至第3センサ部の各々に、各方向に応じた平板状の固定電極及び可動電極を備えた静電容量型の加速度センサが構成できる。
【0013】
また、本願に開示される技術に係る加速度センサにおいて、静電容量部の固定電極と可動電極との距離の変動に応じた静電容量の変化に基づいて第3方向に作用する加速度を検出する第3センサ部を複数備え、第3方向の加速度を複数の第3センサ部の出力を合成した値に基づいて検出してもよい。
このような構成では、加速度センサが備える第3センサ部のすべてが第3方向の加速度の検出に寄与するため、3つの1軸加速度センサで3軸加速度センサを構成する場合と比較すると、小型化に優れた構造とできる。
【0014】
また、本願に開示される技術に係る加速度センサにおいて、第1の弾性部材は、第2方向へのバネ定数が第1及び第3方向へのバネ定数より大きくされてなり、第2の弾性部材は、第1方向へのバネ定数が第2及び第3方向へのバネ定数より大きくされてもよい。この加速度センサでは、任意の2方向の加速度に対して撓動する第1及び第2の弾性部材を容易に構成できる。
【0015】
また、本願に開示される技術に係る加速度センサにおいて、第3センサ部に備えられる静電容量部の容量値は、第1、第2センサ部に備えられる静電容量部の容量値より大きくしてもよい。このような条件に基づいた構成とすることで、本願発明の加速度センサを容易に構成することができる。
【0016】
また、本願に開示される技術に係る加速度センサにおいて、第1乃至第3方向のそれぞれの加速度に対する感度が略同一となるように構成することで、汎用性を高めた加速度センサが構成できる。
【0017】
また、本願に開示される技術に係る加速度センサにおいて、第1の弾性部材と第2の弾性部材とは同一の構造であり、更に、第1センサ部と第2センサ部とは同一の構造としてもよい。このような構成では、装置の小型化に寄与し形状の自由度を高めつつ、加速度の検出精度の向上が図れる加速度センサの製造工程の簡略化が図れる。
【0018】
また、本願に開示される技術に係る加速度センサにおいて、第1の弾性部材は、第1方向に沿う第1辺と第2方向に沿う第2辺とが交互に繋がり第2方向に蛇行して延びるバネであり、第1の弾性部材の両端を結ぶ距離が第1辺の長さに比べて長く、第2の弾性部材は、第1方向に沿う第1辺と第2方向に沿う第2辺とが交互に繋がり第1方向に蛇行して延びるバネであり、第2の弾性部材の両端を結ぶ距離が第2辺の長さに比べて長くしてもよい。このような構成では、2方向の加速度に対して撓動する第1及び第2の弾性部材を容易に構成できる。
【発明の効果】
【0019】
本願に開示される技術によれば、装置の小型化に寄与し形状の自由度を高めつつ、加速度の検出精度の向上が図れる加速度センサを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した一実施形態について添付図面を参照しながら説明する。なお、添付図面は、説明の便宜上、実際の寸法・縮尺とは異なって図示されている部分がある。
図1は、本実施形態に係る静電容量型の加速度センサをMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて製造したチップの概略構成を示している。同
図1に示すように、加速度センサ10は、平面視略長方形板状に形成された基板12を備える。加速度センサ10は、基板12の長辺に沿った方向に並設される2つのチップ領域の各々に第1のセンサ21と第2のセンサ31とが形成されている。なお、以下の説明では、同
図1に示すように、加速度センサ10の長辺に沿った方向(第1及び第2のセンサ21,31が並設される方向)をX方向、X方向に対して直角で加速度センサ10の短辺に沿った方向をY方向、X方向とY方向との両方に直角となる方向(基板12の基板平面に対して垂直な方向)をZ方向と称し、説明する。
【0022】
第1のセンサ21は、枠部23と、錘部24と、一対のバネ部26と、第1及び第2固定電極28,29とを備える。
図2(a)に示すように、枠部23は、平面視形状が四角枠状に形成され、その囲われた内側部分に錘部24が設けられている。錘部24は、平面視略正方形状をなす板状に形成されている。錘部24は、Z方向に貫通する貫通孔24Aが複数形成され、該貫通孔24Aが錘部24に対してマトリックス状に形成されている。ちなみに、この貫通孔24Aは、錘部24がZ方向に移動する際の抵抗を減らす通気孔としての機能や後述する犠牲層をエッチングする際のエッチング液の導入口として機能するものである。
【0023】
また、第1のセンサ21は、Y方向の両側部分にバネ部26が各々設けられている。バネ部26は、X方向の略中央部に設けられた梁部41と、梁部41におけるX方向の両側に設けられた一対のバネ43とを備える。梁部41は、平面視略長方形状の板状に形成され、長辺がY方向に沿って設けられている。錘部24と梁部41とは、各バネ43を介して連結されている。バネ43は、平面視形状が蛇行した形状をなしており、一端側の固定端43Aが梁部41の側面に固定され、他端側の可動端43Bが錘部24に接続されている。なお、詳細については後述するが、バネ43の蛇行した形状は、互いになす角度が直角となる短辺と長辺とが交互に繋がり、短辺がX方向に沿って設けられ長辺がY方向に沿って設けられるつづら折れ形状に形成されている。また、バネ43は、梁部41に固定される固定端43Aと、錘部24に接続される可動端43Bとの距離が長辺よりも長くなるように構成されており、X方向に対する剛性を高めて伸縮が規制される構造となっている。
【0024】
図2(b)は
図2(a)のA−A線端面図、
図2(c)は
図2(a)のB−B線端面図である。
図2(b)に示すように、梁部41は、基板12上に立設されたアンカー部45と一体形成され固定されている。このため、
図2(c)に示すように、錘部24は、固定された梁部41に対しバネ43を介して支持されることによって、基板12の上に浮いたような状態で保持されている。また、錘部24と錘部24を囲む枠部23とは互いに離間している。
【0025】
図2(a)に示すように、第1及び第2固定電極28,29は、第1のセンサ21の略中央部に設けられている。第1のセンサ21は、一対の第1及び第2固定電極28,29を複数組(本実施形態では6組)備える。第1及び第2固定電極28,29は、主面がZ方向に沿った略長方形板状に形成され、長辺がX方向に沿って設けられている。第1及び第2固定電極28,29は、互いの主面が対向するようにY方向に沿って交互に設けられている。第1固定電極28は、X方向の一端側(図における上側の3つは左側、下側の3つは右側)にスルーホール28Aが設けられ基板12の上に形成された配線(図示略)と電気的に接続されている。また、第2固定電極29は、第1固定電極28とは反対のX方向の一端側(図における上側3つは右側、下側3つは左側)にスルーホール29Aが設けられ基板12上に形成された配線(図示略)と電気的に接続されている。また、
図2(b)に示すように、第1及び第2固定電極28,29は、スルーホール28A,29Aが設けられた端部を除く部分が基板12と離間するように形成されている。なお、第1及び第2固定電極28,29は、端部を含む全体が基板12に接続された構成としてもよい。
【0026】
図2(b)に示すように、基板12は、コア基板51と、コア基板51の上面を覆うように形成された絶縁層53と、絶縁層53の上に形成された第3固定電極55とを備える。梁部41と一体形成されたアンカー部45はパッド58と接続されており、錘部24が配線(図示略)を介して外部端子と電気的に接続されている。第1のセンサ21は、
図3に示すように、錘部24を可動電極として、錘部24と第1及び第2固定電極28,29とで平行平板コンデンサC1,C2が構成される。平行平板コンデンサC1,C2は、第1のセンサ21に対しY方向に作用する加速度に応じて静電容量が変化する。例えば、Y方向の一方(図中の上方)に錘部24が変動するのにともなって平行平板コンデンサC1の静電容量が減少する一方で、平行平板コンデンサC2の静電容量が増加する。このような錘部24と第1及び第2固定電極28,29との間の距離の変動にともなって変化する平行平板コンデンサの静電容量を測定することによってY方向に対する加速度を検出することが可能となる。
【0027】
例えば、錘部24に接続される測定点61における電圧を上記した外部端子から処理回路に出力しコンデンサC1,C2の電位差(静電容量の差)を検出して加速度を算出する。なお、
図3に示すように、第1のセンサ21は、静電容量の差の出力を大きくし感度を向上させるためにコンデンサC1,C2の各々を含むブリッジ回路が構成されている。また、このブリッジ回路を構成することで、非検出方向となるX方向に対する各コンデンサC1,C2の静電容量の変化を相殺し、いわゆる他軸感度の低減を図ることができる。また、第1のセンサ21は、加速度が加わらない無負荷時の測定点61におけるオフセット電圧をキャンセルするための補正回路を備えてもよい。
【0028】
また、
図2(b)に示す第3固定電極55は、錘部24とZ方向で対向するように絶縁層53の上面の全域に広がって形成されている。第1のセンサ21は、錘部24と第3固定電極55とでZ方向で対向する平行平板コンデンサが構成される。この平行平板コンデンサは、第1のセンサ21に対しZ方向に作用する加速度に応じて静電容量が変化する。第1のセンサ21では、錘部24と第3固定電極55との間の距離の変動にともなって変化する平行平板コンデンサの静電容量を測定することによってZ方向に対する加速度が検出される。
【0029】
第1のセンサ21は、上記したようにY方向及びZ方向に作用する加速度を検出する一方で、バネ43(
図2(a)参照)がX方向に対する伸縮が規制される構造となっており、錘部24がX方向に撓動しないようになっている。従って、第1のセンサ21は、Y方向及びZ方向の加速度が検出可能な2軸加速度センサとして構成されている。
図1に示すように、加速度センサ10が備える第2のセンサ31は、第1のセンサ21と同様の構成となっており、枠部23と、錘部24と、一対のバネ部26と、第1及び第2固定電極28,29と、第3固定電極(図示略)とを備える。第2のセンサ31は、Z方向を回転軸として第1のセンサ21を90度回転した構造となっている。つまり、第2のセンサ31は、X方向及びZ方向に作用する加速度を検出する一方で、バネ部26のバネ43がY方向に対する伸縮が規制され、錘部24がY方向に撓動しないようになっている。従って、第2のセンサ31は、X方向及びZ方向の加速度が検出可能な2軸加速度センサとして構成されている。
【0030】
このように構成された加速度センサ10では、第1及び第2のセンサ21,31の出力に基づいて3方向に対する加速度が検出される。また、加速度センサ10では、Z方向に対する加速度を第1及び第2のセンサ21,31の各々の錘部24と第3固定電極55との距離の変動に応じた静電容量の変化を測定し検出する。即ち、加速度センサ10は、Z方向に対する加速度を第1及び第2のセンサ21,31の両方の出力を合成した値を用いて検出する構成となっている。
【0031】
次に、バネ43の構造について説明する。
図4(a)に示すバネ100は、バネ43の一例である。バネ100は、上述したように、互いになす角度が直角となる短辺111と長辺112とが交互に繋がる形状に構成されている。なお、以下の説明では、
図4(a)〜(c)に示すように、短辺111の長さをL1、長辺112の長さをL2と称し、説明する。また、
図4(a)〜(c)に示す方向はバネ100,100A,100Bが伸縮する方向を示している。
【0032】
バネ100は、長さL2が長さL1に比べて長く、錘部24(
図2(a)参照)と梁部41(
図2(a)参照)の各々に接続される両端の距離L3が長さL2よりも長くなるように構成されている。ここで、バネ100において、Y方向で往復する回数、換言すればY方向の一端側で折り返す回数(以下、「折りたたみ回数」という)をnとする。
図4(a)に示すバネ100では、折りたたみ回数nは15回となる。バネ100は、折りたたみ回数nと、X,Y,Zの各方向に対応するバネ定数Kx,Ky,Kzが相関する関係にある。そこで、本発明者らは、バネ100の折りたたみ回数nに対するバネ定数Kx,Ky,Kzの変化について検討・シミュレーション等を重ねた結果、本発明をなすに至った。具体的には、
図4(a)に示すように、例えば、Z方向と直交する平面においてバネ100が占有する領域S(図中のハッチングで囲む部分)の面積を一定として、折りたたみ回数nを変更しながらバネ定数Kx,Ky,Kzの検討を行った。
【0033】
図5は、折りたたみ回数nに対するバネ定数Kx,Ky,Kzの値を示すグラフである。
図5に示すように、X方向のバネ定数Kxは、折りたたみ回数nの増加にともなって増加する。図中の実線で示すグラフは、バネ定数Kxを試算した結果を示しており、折りたたみ回数nの増加にともなってX方向に対する剛性が高まり伸縮が規制されていくことがわかる。
【0034】
一方で、Y方向のバネ定数Kyは、折りたたみ回数nの増加にともなって減少する。図中の破線で示すグラフは、バネ定数Kyを試算した結果を示しており、折りたたみ回数nの増加にともなってY方向に対する剛性が低くなり撓動し易くなっていくことがわかる。同様に、Z方向のバネ定数Kzは、折りたたみ回数nの増加にともなって減少する。図中の一点鎖線で示すグラフは、バネ定数Kzの試算結果を示し折りたたみ回数nの増加にともなってZ方向に撓動し易くなっていくことがわかる。
【0035】
以上の内容を踏まえ、
図5に示すグラフを用いて、バネ定数Kx,Ky,Kzによりバネ100を3種類に分類する。例えば、各バネ定数Kx,Ky,Kzが近似した値となる折りたたみ回数nを基準値n1(例えばn1=10)とし、折りたたみ回数nが基準値n1よりも小さくなるバネ100を第1種類とする。この第1種類に分類されるバネ100は、例えば、
図4(b)に示されるように折りたたみ回数nを5回として構成されたバネ100Aである。このバネ100Aは、バネ100Aの両端の距離L3が長さL2よりも短い。バネ100Aは、X方向に対して変位し易く、Y,Z方向に対する伸縮が規制される特性を有する。つまり、このようなバネ100Aは、1方向に対して伸縮する特性を有するものであり、例えば特開平11−344507号公報(特許文献1)に示されるような1軸加速度センサに用いられるバネである。
【0036】
次に、折りたたみ回数nを基準値n1として各バネ定数Kx,Ky,Kzがほぼ同一となるバネ100を第2種類とする。この第2種類に分類されるバネ100は、例えば、
図4(c)に示されるように折りたたみ回数nを10回として構成されたバネ100Bである。このバネ100Bは、バネ100Bの両端の距離L3が長さL2とほぼ等しく、X,Y,Zの各方向に対して変位する。つまり、この種のバネ100Bは、3方向に対して伸縮あるいは撓動する特性を有するものであり、例えば特表2005−534016号公報(特許文献2)に示されるような3軸加速度センサに用いられるバネである。
【0037】
そして、本実施形態の
図4(a)に示されるバネ100は、折りたたみ回数nが基準値n1に比べて大きい第3種類に分類されるバネであり、2方向に対する撓動性を備えるものである。詳述すると、バネ100は、短辺111と長辺112とが繋がり蛇行して延びるX方向に対する剛性が高く伸縮し難い。また、バネ100は、蛇行して延びるX方向に対して直交するY方向に対する撓動性を有している。また、バネ100は、バネ100が占有する領域Sを設定した平面に対して垂直なZ方向に対する撓動性を有している。従って、このような特性のバネ100(バネ43)を備える第1のセンサ21では、Y方向及びZ方向に作用する加速度が検出される一方で、錘部24がX方向に変動しないためX方向に対する他軸感度を抑制でき検出精度の向上を図ることが可能となる。
【0038】
次に、このように構成された加速度センサ10の感度について説明する。
加速度センサ10は、Z方向に対する加速度を第1及び第2のセンサ21,31の両方の出力を用いて検出する構成となっている。ここで、対向する電極の面積をS、電極の距離をd、誘電率をεとすると、静電容量Cは、次式で表される。
C=εS/d・・・・・・・・・(1)
錘部24は、平面方向がZ方向と直交する方向となる平板状に形成されており、Z方向に対する加速度を検出する可動電極の面積Sを他の方向(X方向、Y方向)に比べて大きくすることができる。そのため、本実施形態の第1及び第2のセンサ21,31は、Z方向に作用する加速度を検出するために設けられる静電容量の大きさが他の2方向に対して大きくすることができる。
【0039】
また、上記式(1)を用いて距離の変化量Δdに対する静電容量の変化量ΔCの大きさは次式で表される。
ΔC/Δd=εS/d
2・・・・(2)
また、錘部24に作用する力は、運動方程式、弾性の法則から次式で表される。
F=ma=kΔd(m:錘部24の質量、a:加速度、k:バネ定数)・・(3)
上記式(2)、(3)から静電容量の変化量ΔCは次式で表される。
ΔC=(εS/d
2*m/k)a=(C/k*m/d)a・・・・・・(4)
【0040】
従って、上記式(4)より、本実施形態のような静電容量型の加速度センサ10の加速度aに対する感度(静電容量の変化量)を上げるには、重りとしての錘部24の質量mを増加させる、あるいは錘部24と第1〜第3固定電極28,29,55の各々とで構成されるコンデンサの静電容量Cを増加させる、あるいはバネ定数Kx,Ky,Kzを小さくすることが考えられる。質量mは錘部24の大きさと相関する関係にある。静電容量Cは、Z方向においては錘部24のZ方向と直交する方向の面積Sと相関する関係にある。加速度センサ10は、
図2(a)に示すように、平面視で見た場合には錘部24が平面の大部分の領域を占めている。これに対し、例えば1軸加速度センサ(上記の特開平11−344507号公報(特許文献1)に開示される加速度センサ等)をXYZの各方向に対応して設ける構成として、複数の加速度センサを同一平面上に並べて配置した構成が考えられる。しかしながら、このような構成では、平面視で見た場合には、Z軸方向に寄与する錘部が平面の一部の領域のみを占めることとなる。つまり、本実施形態の加速度センサ10は、すべてのセンサ(第1及び第2のセンサ21,31)がZ方向の加速度の検出に寄与するため、Z方向に対して同一の感度となる3軸加速度センサを構成する場合を比較すると小型化に優れた構造となっている。
【0041】
また、静電容量型の加速度センサの感度は、一般的にXYZの各方向に対する感度が等しくなることが好ましい。上記式(4)に示すように、各方向に対する感度を同程度とするために各方向の静電容量Cとバネ定数kとの比を等しくすることが考えられる。例えば、上記した加速度センサ10において、X方向の加速度を検出する第2のセンサ31の錘部24と第1及び第2固定電極28,29との電極間の静電容量をCx、バネ43のX方向に対するバネ定数をkxとする。また、Y方向の加速度を検出する第1のセンサ21の錘部24と第1及び第2固定電極28,29との電極間の静電容量をCy、バネ43のY方向に対するバネ定数をkyとする。なお、本実施形態では第1及び第2のセンサ21,31が同一構造であるため、静電容量CxとCy、バネ定数kxとkyは各々で同値となる。また、第1及び第2のセンサ21,31のZ方向の加速度を検出する錘部24と第3固定電極55との電極間の静電容量の各々を静電容量Cz1,Cz2、各センサ21,31のバネ43のZ方向に対するバネ定数の各々をkz1,kz2とする。なお、本実施形態では第1及び第2のセンサ21,31が同一構造であるため、静電容量Cz1,Cz2が同値となる。同様に、バネ定数kz1,kz2は同値となる。
【0042】
そして、この場合における各方向の静電容量Cとバネ定数kとの比を等しくするためには、次式を満たすことが好ましい。
2*Cx/k
x=2*Cy/ky=(Cz1/kz1+Cz2/kz2)・・・・(5)
従って、上記式(5)の値を指標として設計することで、互い直交する3軸の各々の方向の加速度に対する感度を同等とすることができ、本実施形態の加速度センサ10を容易に構成することが可能となる。なお、
図3に示すように、本実施形態の第1及び第2のセンサ21,31の各々は、コンデンサC1,C2を含むブリッジ回路が構成され、各コンデンサC1,C2の静電容量の差を用いて加速度を算出する。従って、各センサ21,31の各方向に対する感度は、例えば、コンデンサC1,C2のうち一方のコンデンサの容量を2倍した値と相関することとなる。上記した式(5)は、このような静電容量型の加速度センサにおいて用いられるブリッジ回路を加味したものとなっている。
【0043】
次に、第1のセンサ21の製造方法の一例について説明する。なお、第2のセンサ31の製造方法については第1のセンサ21と同様であるため説明を省略する。
まず、
図6(a)に示すコア基板200を準備する。コア基板200は、例えば単結晶シリコンからなるウェハである。第1のセンサ21は、コア基板200上に多数のセンサ素子を形成し、その後にダイシングを行って複数の第1のセンサ21に個片化することにより製造される。
【0044】
コア基板200の表面に絶縁層210を形成する。絶縁層210は、例えば、窒化シリコン(SiNx)や、二酸化シリコンの膜の上に窒化シリコンを積層した膜を熱酸化法や堆積法を用いて形成する。次いで、絶縁層210の表面に、例えばフォトリソグラフィー技術を用いて任意にパターニングされた第3固定電極212、パッド214及び図示しない配線を形成する。第3固定電極212及び配線(図示略)等は、ポリシリコンなど、後述する犠牲層215のエッチングに対して耐性がある材料を用いる。なお、LSI技術で一般的に用いられるアルミニウムを第3固定電極212及び図示しない配線に用いる場合は、当該アルミニウムの上に窒化シリコン膜を積層したり、前述した絶縁層210を複数層の積層膜で構成してその中に形成するなどして、犠牲層215のエッチングに対して耐性を上げることが好ましい。以上のように、絶縁層210、第3固定電極212及び配線(図示略)を複数層で構成してもよい。また、第3固定電極212及び配線(図示略)は、導電性を有する複数層で構成してもよい。
【0045】
次いで、
図6(b)に示すように、絶縁層210及び第3固定電極212を覆うように犠牲層215を形成する。犠牲層215は、例えば化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法により二酸化シリコンを成膜して形成する。犠牲層215の厚さは例えば2μm(マイクロメートル)である。次いで、
図6(c)に示すように、犠牲層215に対しパッド214の表面の一部が露出するようにコンタクトホール216を形成する。コンタクトホール216は、例えばフォトリソグラフィー技術を用いて形成する。
【0046】
次いで、
図7(a)に示すように、犠牲層215の上に電極層217を形成する。コンタクトホール216内には電極層217の一部が充填される。電極層217は、例えばCVD法によりポリシリコンを成膜して形成する。電極層217の厚さは例えば5〜10μmである。次いで、
図7(b)に示すように、電極層217に対してエッチングを施し、貫通孔219及び第1及び第2固定電極220,221を形成する。電極層217に対するエッチングは、例えば、フォトリソグラフィー技術を用いて任意のパターニングで形成されたレジスト(図示略)を電極層217の上に形成し、そのレジストの開口部から露出する領域に対しDeep−RIE(Reactive Ion Etching)法を用いて異方性エッチングをする。なお、図示しないがバネ43は、例えば、上記した第1及び第2固定電極220,221と同一工程にて形成される。
【0047】
次いで、
図7(c)に示すように、犠牲層215をエッチングする。犠牲層215のエッチングは、例えば、電極層217に形成された貫通孔219等からエッチング液(例えばバッファードフッ酸(BHF))を導入してエッチングする。このようにして、
図1に示す第1のセンサ21が形成される。
【0048】
以上、上記した実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)加速度センサ10が備える第1のセンサ21は、バネ43がY,Z方向の加速度に応じて伸縮しX方向の加速度に対する伸縮が規制されることで、加速度に応じて変動する錘部24と第1〜第3固定電極28,29,55との静電容量の変化からY,Z方向の加速度が検出される。つまり、第1のセンサ21は、バネ43がX方向に対する剛性を有しており、2軸加速度センサとして構成されている。加速度センサ10は、第2のセンサ31が第1のセンサ21と同様の構成となっており、第2のセンサ31によりX,Z方向の加速度が検出されることによって、3軸加速度センサとして構成されている。このような構成では、各センサ21,31のバネ43が1方向に対する剛性を有しており、製造工程の不具合により錘部24の重心がずれ回転が生じたような状態となる虞がなく、検出精度の向上を図った加速度センサ10が構成できる。
【0049】
(2)加速度センサ10は、Z方向に対する加速度を第1及び第2のセンサ21,31の両方の出力を用いて検出する構成となっている。これにより、加速度センサ10は、すべてのセンサ(第1及び第2のセンサ21,31)がZ方向の加速度の検出に寄与するため、3つの1軸加速度センサで3軸加速度センサを構成する場合と比較すると、小型化に優れた構造となっている。
【0050】
(3)バネ43は、可動端43Bが固定端43Aに対して第1のセンサ21を平面視した場合に外側に位置する構成となっている。このような構成では、錘部24に作用する回転モーメントの影響が低減され、第1のセンサ21の検出精度の向上を図ることができる。
【0051】
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内での種々の改良、変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、上記実施形態では、第1のセンサ21を平面視略正方形状に形成したが、これに限定されない。例えば、
図8に示す第1及び第2センサ301,302は、平面視略長方形状に形成されている。第1及び第2センサ301,302は、長辺がX方向に沿って延びる平面視略長方形状に形成されている。第1センサ301のバネ311は、上記実施形態の第1のセンサ21のバネ43に比べてX方向の長さが長くY方向の長さが短くなっている。また、第2センサ302のバネ312は、上記実施形態の第2のセンサ31のバネ43に比べてX方向の長さが長くY方向の長さが短くなっている。このような構成においてもバネ311,312が1方向に対する剛性を有しており、第1及び第2センサ301,302が2軸加速度センサとして構成される。つまり、本実施形態の第1及び第2のセンサ21,31の構成によれば、構造上の制限を少なくでき形状の自由度を高めることができる。
【0052】
また、上記実施形態では特に言及していないが、
図8に示す第1及び第2センサ301,302では、錘部24と各部材とのスティクションを防止するためのストッパー320が設けられている。ストッパー320は、基板12(
図1参照)に立設し錘部24をZ方向に貫通する柱状に形成されている。ストッパー320が錘部24と係合することにより、錘部24が他の部材、例えば第1固定電極28に貼り付くのを防止することができる。また、図示しないが、ストッパー320の錘部24と対向する面には、凸部が設けられており、ストッパー320と錘部24との接触面積を少なくして効果的にスティクションを防止する構成となっている。また、このような凸部を、他の部材、例えばアンカー部45の錘部24と対向する面に設けてストッパー320として機能させてもよい。また、スティクションを防止する機構は、ストッパー320に限らず、例えば任意の部材の端面を疎水性とする表面加工を施してもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、錘部24を可動電極として用いたが、錘部24と一体、又は別体の可動電極を設けてもよい。
また、上記したバネ43のような2方向に対して伸縮あるいは撓動する特性を有する弾性部材を用いてセンサ10に作用する加速度の検出が可能であれば、静電容量以外の機構を用いて加速度を検出してもよい。
また、各部材の形状・構成等は一例であり、適宜変更してもよい。例えば、第1のセンサ21と第2のセンサ31は異なる構造でもよい。
【0054】
ちなみに、加速度センサ10は、加速度センサの一例として、錘部24は、錘部及び可動電極の一例として、第1〜第3固定電極28,29,55は、固定電極の一例として、バネ43は、第1及び第2の弾性部材の一例として、長辺112及び短辺111は、第1辺及び第2辺の一例として、バネ定数Kx,Ky,Kzは、バネ定数の一例として挙げられる。
【0055】
次に、上記実施形態の内容から導き出される技術的思想について記載する。
(イ)
前記第3センサ部は、前記第1センサ部を有する第1センサに対応する第1静電容量部と、前記第2センサ部を有する第2センサに対応する第2静電容量部とを備え、
2*{(前記第1センサ部に備えられる前記静電容量部の容量値)/(前記第1の弾性部材の前記第1方向のバネ定数)}、
2*{(前記第2センサ部に備えられる前記静電容量部の容量値)/(前記第2の弾性部材の前記第2方向のバネ定数)}、及び
{(前記第3センサ部に備えられる前記第1静電容量部の容量値)/(前記第1の弾性部材の前記第3方向のバネ定数)+(前記第3センサ部に備えられる前記第2静電容量部の容量値)/(前記第2の弾性部材の前記第3方向のバネ定数)}、
は、互いに同値に設計されることを特徴とする請求項2に記載の加速度センサ。
【0056】
このような構成は、上記実施形態における式(5)を用いて説明した内容に対応し、第3センサ部は、第1センサに対応する第1静電容量部と、第2センサに対応する第2静電容量部とを備え、2*{(第1センサ部に備えられる静電容量部の容量値)/(第1の弾性部材の第1方向のバネ定数)}、2*{(第2センサ部に備えられる静電容量部の容量値)/(第2の弾性部材の第2方向のバネ定数)}、及び{(第3センサ部に備えられる第1静電容量部の容量値)/(第1の弾性部材の第3方向のバネ定数)+(第3センサ部に備えられる第2静電容量部の容量値)/(第2の弾性部材の第3方向のバネ定数)}、が互いに同値に設計される。このような条件に基づいた構成とすることで、互い直交する3軸の各々の方向の加速度に対する感度を同等とする加速度センサを容易に構成することができる。