特許第5799951号(P5799951)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5799951
(24)【登録日】2015年9月4日
(45)【発行日】2015年10月28日
(54)【発明の名称】移相器
(51)【国際特許分類】
   H03H 11/20 20060101AFI20151008BHJP
【FI】
   H03H11/20 A
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-511515(P2012-511515)
(86)(22)【出願日】2011年1月20日
(86)【国際出願番号】JP2011000272
(87)【国際公開番号】WO2011132348
(87)【国際公開日】20111027
【審査請求日】2013年12月12日
(31)【優先権主張番号】特願2010-96013(P2010-96013)
(32)【優先日】2010年4月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】岸本 修也
【審査官】 ▲高▼橋 徳浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−030463(JP,A)
【文献】 特開平03−291008(JP,A)
【文献】 特開昭60−070802(JP,A)
【文献】 特開2008−028681(JP,A)
【文献】 特開2006−295562(JP,A)
【文献】 特開2001−168668(JP,A)
【文献】 特開2005−142724(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H11/00−H03H11/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号に対して0度から90度の範囲で位相を付与する移相器であって、
入力信号に90度の位相を付与した信号と、位相を付与しない信号と、に分配して出力する90度分配器と、
前記90度分配器の0度側出力ポートと接続し、移相器の移相制御量に応じて振幅を変更した信号を出力する第1の利得可変増幅器と、
前記90度分配器の90度側出力ポートと接続し、前記移相制御量に応じて振幅を変更した信号を出力する第2の利得可変増幅器と、
前記第1の利得可変増幅器の出力信号と、前記第2の利得可変増幅器の出力信号と、を合成する合成器と、を備え、
前記90度分配器は、アイソレーションポートのインピーダンスが可変であり、前記アイソレーションポートを介してトランジスタと接続し、
前記トランジスタのソース・ドレイン間インピーダンスは、前記移相制御量が0度の場合には最大に設定され、前記移相制御量が90度の場合には最小に設定される、移相器。
【請求項2】
前記トランジスタのソース・ドレイン間インピーダンスは、前記移相制御量が0度より大きく90度より小さい場合、伝送線路の特性インピーダンスに設定されることを特徴とする請求項に記載の移相器。
【請求項3】
入力信号に対して0度から90度の範囲で位相を付与する移相器であって、
入力信号に90度の位相を付与した信号と、位相を付与しない信号と、に分配して出力する90度分配器と、
前記90度分配器の0度側出力ポートと接続し、移相器の移相制御量に応じて振幅を変更した信号を出力する第1の利得可変増幅器と、
前記90度分配器の90度側出力ポートと接続し、前記移相制御量に応じて振幅を変更した信号を出力する第2の利得可変増幅器と、
前記第1の利得可変増幅器の出力信号と、前記第2の利得可変増幅器の出力信号と、を合成する合成器と、を備え、
前記90度分配器は、アイソレーションポートのインピーダンスが可変であり、前記アイソレーションポートを介して第1のスイッチと接続し、
前記第1のスイッチは、前記移相制御量が0度の場合にはオープンと接続し、前記移相制御量が90度の場合には接地と接続する、移相器。
【請求項4】
前記第1の利得可変増幅器と前記90度分配器との間に配置した第2のスイッチと、
前記第2の利得可変増幅器と前記90度分配器との間に配置した第3のスイッチと、を備え、
前記第2のスイッチは、前記移相制御量が90度の場合にオープンとなり、
前記第3のスイッチは、前記移相制御量が0度の場合にオープンとなることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の移相器。
【請求項5】
入力信号に対して0度から360度の範囲で位相を付与する0度〜360度移相器であって、前記入力信号に180度の位相を付与した信号と、位相を付与しない信号と、に分配して出力する180度分配器と、
前記180度分配器からの出力が夫々入力される0度から90度の範囲で位相を付与するつの0〜90度移相器と、
前記2つの0〜90度移相器の出力を合成する合成器と、を備え、
前記2つの0〜90度移相器は請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の移相器である、0度〜360度移相器。
【請求項6】
入力信号に対して0度から360度の範囲で位相を付与する0度〜360度移相器であって、
入力信号に対して0度または180度の位相を付与する0度/180度移相器と、
前記0度/180度移相器と直列接続された2つの0〜90度移相器と、を備え、
前記2つの0〜90度移相器が請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の移相器である、0度〜360度移相器。
【請求項7】
入力信号に対して0度、90度、180度、270度のいずれかの位相を付与する90度ステップ移相器であって、
請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の移相器と、
入力信号に対して0度または180度の位相を付与する0度/180度移相器と、を直列に接続した90度ステップ移相器。
【請求項8】
請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の移相器と、アレイアンテナと、を備えた無線通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は移相器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の通信情報量の増大に伴い、大量の情報を高速に伝送できる高周波帯を利用した無線通信技術が注目を集めている。特に60GHz帯では無線機1台当たり2.5GHzの帯域までは免許を保有していなくても利用できるため、このような無線機を用いることによって1Gbps以上の速度により通信が可能となる。
【0003】
一般に高周波数帯では自由空間の伝搬損失が大きくなるため、通信距離を伸ばすために利得の高いアンテナが利用されている。利得の高いアンテナを用いる場合、放射パターンの半値幅が狭いためにアンテナのアラインメントが困難である。利得の高いアンテナを用いた通信において、無線信号の放射角を変化させながら通信を行い、最も受信電力の大きくなる放射角を探し出し、その放射角を用いることにより良好な通信が可能となる。アンテナのアライメントにずれが生じた場合、上述の処理を再度行うことにより自動的に最適な通信状態を継続できる。
【0004】
図15は、アンテナのアラインメントを自動的に行う無線通信装置を示す図である。無線通信装置63は、放射角の方向を変化させつつ無線信号を送出する。一方の無線通信装置64は、受信した無線信号のS/N(signal-noise ratio)を計測し、当該計測値を無線通信装置63に送信する。無線通信装置63は、通知された計測値を基に、S/Nが最大となる放射角を算出し、当該放射角により通信を行う。
【0005】
無線通信装置の放射角を制御する方法として、アレイアンテナを用いる制御方法がある。アレイアンテナとは、複数のアンテナ素子をアレイ状に配置したアンテナである。アレイアンテナを用いた制御では、個々のアンテナ素子から送出される無線信号の位相を制御することにより放射角を制御する。ここで、無線信号の位相制御には移相器が利用される。
【0006】
図16は移相器の一般的な構成を示すブロック図である。当該移相器は、180度分配器65と、0〜90度移相器66(66−1及び66−2)と、合成器67と、を備える。0〜90度移相器66は、90度分配器69(69−1及び69−2)と、利得可変増幅器70(70−1〜70−4)と、合成器71と、抵抗器68(68−1及び68−2)と、を備える。
【0007】
90度分配器69は、4端子回路により構成されている。90度分配器69のアイソレーションポートは、抵抗器68を介して設置される。抵抗器68の抵抗値は、伝送線路の特性インピーダンスと同じ大きさであることが望ましく、一般的には50Ωが接続される。
【0008】
図16に示す移相器に入力された信号は、180度分配器65及び2つの90度分配器69によって0度、90度、180度、270度の位相を持つ4つの無線信号に分配されて利得可変増幅器70(70−1〜70−4)に入力される。利得可変増幅器70−1〜70−4は、入力された信号の振幅を変化させる。合成器71(71−1及び71−2)は、利得可変増幅器70から入力される2つの信号を合成し、合成した信号を合成器67に出力する。同様に合成器67は、合成器71−1及び合成器71−2から入力された信号を合成する。
【0009】
ここで利得可変増幅器70−1〜70−4による振幅の変化率は、所望とする位相角度に応じて変化する。たとえば入力信号に対して90度に近い位相を設定したい場合、90度の位相を持つ信号が入力された利得可変増幅器70は当該信号を増幅させ、他の利得可変増幅器70は入力信号の振幅を減少させるように動作する。上述のような動作により、図16に示す移相器の位相制御量は0度〜360度の範囲内において任意の角度に設定される。
【0010】
ところが無線機の使用条件およびアンテナのアレイ数等によっては、必ずしも移相器の位相制御量を任意の角度に設定する必要はない。たとえば特許文献1には、90度ステップ毎に位相が制御される場合に用いられる移相器が提案されている。しかしながら、当該移相器を利用する場合、直交変調器がアンテナ数と同数必要となる。このため、当該移相器によっては、個々の直交変調器にかかるIQミスマッチ補正を行うことが困難となる。このため、特許文献1に記載の移相器によりベースバンド信号帯で位相を制御するよりも、無線信号帯で位相を制御する方が、処理が容易となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2009/101993号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、図16に示した移相器により無線信号帯で位相を制御する場合、以下の問題がある。上述の0〜90度移相器66では、90度分配器69は、アイソレーションポートを介して抵抗器68と接続する。そのため、0〜90度移相器66が0度または90度の移相制御を行う場合、すなわち90度分配器69が一方の出力ポートからのみ出力信号を供給すればよい場合にも抵抗の影響を受ける。これにより、入力電力の一部が不要に消費され、損失となってしまう。
【0013】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、90度ステップの移相制御を行う場合に、損失の少ない移相器を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明にかかる移相器の一態様は、入力信号に対して0度から90度の範囲で位相を付与する移相器であって、
入力信号に90度の位相を付与した信号と、位相を付与しない信号と、に分配して出力する90度分配器と、
前記90度分配器の0度側出力ポートと接続し、移相器の移相制御量に応じて振幅を変更した信号を出力する第1の利得可変増幅器と、
前記90度分配器の90度側出力ポートと接続し、前記移相制御量に応じて振幅を変更した信号を出力する第2の利得可変増幅器と、
前記第1の利得可変増幅器の出力信号と、前記第2の利得可変増幅器の出力信号と、を合成する合成器と、を備え、
前記90度分配器は、アイソレーションポートのインピーダンスが可変である、ものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、90度ステップの移相制御を行う場合に、損失の少ない移相器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態にかかる無線通信装置の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施の形態にかかる送信機の構成を示すブロック図である。
図3】実施の形態1にかかる移相器の構成を示すブロック図である。
図4】実施の形態1にかかる移相制御量と、トランジスタと、利得可変増幅器の振幅率の関係を示す図である。
図5】実施の形態1にかかる利得可変増幅器増幅率の比と、移相制御量と、の関係を示すグラフである。
図6】実施の形態1にかかる移相器において、増幅率の異なる信号を合成することにより移相制御量を変更できることを示す概念図である。
図7】実施の形態1にかかる移相器において、増幅率の異なる信号を合成することにより移相制御量を変更できることを示す概念図である。
図8】実施の形態1にかかる移相器において、移相制御量が0度である場合における0〜90度位相器の挿入損失を示すグラフである。
図9】実施の形態1にかかる移相器において、移相制御量が90度である場合における0〜90度位相器の挿入損失を示すグラフである。
図10】実施の形態2にかかる0〜90度移相器の構成を示すブロック図である。
図11】実施の形態3にかかる0〜90度移相器の構成を示すブロック図である。
図12】実施の形態4にかかる移相器の構成を示すブロック図である。
図13】実施の形態5にかかる移相器の構成を示すブロック図である。
図14】実施の形態1にかかる0〜90度移相器の構成を示すブロック図である。
図15】アンテナのアラインメントを自動的に行う無線通信装置の構成を示す概念図である。
図16】一般的な移相器の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施の形態1>
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態1にかかる移相器を備える無線通信装置の構成を示すブロック図である。無線通信装置は、送信ベースバンド信号生成ユニット1と、送信機2と、送信アンテナ3−1〜3−h(hは自然数)と、制御部4と、ローカル信号発信回路5と、受信ベースバンド信号処理ユニット6と、受信機7と、受信アンテナ8−1〜8−k(kは自然数)と、を備える。
【0018】
送信ベースバンド信号ユニット1は、制御部4から入力される制御信号に基づいて、入力された送信データからベースバンド信号であるI(In-phase)信号及びQ(Quadrature-phase)信号を生成し、送信機2へ出力する。
【0019】
送信機2は、入力された2つのベースバンド信号であるI信号及びQ信号をローカル信号発信回路5からのローカル信号に基づいて送信周波数までアップコンバートする。アップコンバートの際に、送信機2は、制御部4からの制御信号に基づいて送信信号の位相を制御する。その後、送信機2は、複数の送信アンテナ3−1〜3−hを介して位相制御がされた送信信号を送信する。
【0020】
図2を用いて送信機2の詳細構成を説明する。送信機2は、ローカル信号増幅器9と、直交変調器10と、移相器11−1〜11−h(hは自然数)と、送信増幅器12−1〜12−hと、を備える。
【0021】
ローカル信号増幅器9には、ローカル信号発信回路5からローカル信号が入力される。ローカル信号増幅器9は、入力されたローカル信号を適切な電力となるまで増幅する。ローカル信号増幅器9は、増幅した信号を直交変調器10に出力する。
【0022】
直交変調器10には、ベースバンド信号であるI信号及びQ信号が入力される。また、直交変調器10にはローカル信号増幅器9から増幅したローカル信号が入力される。直交変調器10は、ローカル信号に基づいてI信号及びQ信号が無線周波数帯の信号となるように周波数変換を行う。直交変調器10は、周波数変換を行った信号を送信アンテナの数(h)に応じて分配して入力する。送信アンテナ3−1〜3−hに入力された信号は、送信対象に対して送信される。
【0023】
次に、図1を用いて無線通信装置内の受信機能について説明する。受信機7は、受信アンテナ8−1〜8−k(kは自然数)を介して受信した受信信号を、ローカル信号発信回路5から入力されたローカル信号に基づいてベースバンド信号の周波数と等しくなるまでダウンコンバートする。ダウンコンバートの際に、受信機7は、制御部4からの制御信号に基づいて受信信号の位相を制御する。その後、受信機7は生成したベースバンド信号であるI信号及びQ信号を受信ベースバンド信号処理ユニット6へ出力する。
【0024】
受信ベースバンド信号処理ユニット6は、制御部4から入力される制御信号に基づいてベースバンド信号であるI信号及びQ信号から受信データを生成して出力する。また、受信ベースバンド信号処理ユニット6は算出した受信データを制御部4に出力する。制御部4は、入力された受信データを基に送信機2及び受信機7の最適移相量を算出する。制御部4は、算出した最適移相量を送信機2及び受信機7に対する制御信号として出力する。
【0025】
なお、上述の説明において、無線通信装置は送信アンテナ3−1〜3−hと、受信アンテナ8−1〜8−kとを夫々備えるとして説明したが、これに限られない。たとえば、無線通信装置は送信アンテナ及び受信アンテナを共通とするアンテナを備え、当該アンテナに接続される送信機2と、受信機7と、を切り換える構成であってもよい。
【0026】
また、上述の説明では、無線通信装置はI信号及びQ信号の用いる場合について説明したが、これに限られない。例えば、無線通信装置は任意の中間周波数帯の信号を用いる構成であってもよい。
【0027】
次に、本実施の形態にかかる移相器(11−1〜11−h)について説明する。図3は、本実施の形態にかかる移相器の構成を示すブロック図である。当該移相器は、0度〜90度移相器13(13−1及び13−2)と、180度分配器14と、合成器15と、を備える。
【0028】
0度〜90度移相器13は、電圧可変電源16(16−1、16−2)と、トランジスタ17(17−1、17−2)と、90度分配器18(18−1、18−2)と、利得可変増幅器19と、合成器20と、を備える。90度分配器18のアイソレーションポートはトランジスタ17を介して接地される。90度分配器18は、例えば方向結合器、ブランチライン回路等の4端子回路により構成される。
【0029】
180度分配器14は、入力された信号を180度の位相差を持つ2つの信号に分配する。180度分配器14は、分配した信号を90度分配器18−1及び18−2に供給する。90度分配器18−1は入力された信号を90度の位相差を持つ2つの信号に分配する。90度分配器18−1は、分配した信号を利得可変増幅器19−1及び19−2にそれぞれ供給する。同様に90度分配器18−2は入力された信号を90度の位相差を持つ2つの信号に分配する。90度分配器18−2は、分配した信号を利得可変増幅器19−3及び19−4にそれぞれ供給する。
【0030】
利得可変増幅器19−1〜19−4は、入力された信号の振幅を変化させる。ここで利得可変増幅器19−1〜19−4による振幅の変化率は、所望とする位相角度に応じて変化する。利得可変増幅器19−1及び19−2は、振幅を変化させた信号を合成器20−1に入力する。利得可変増幅器19−3及び19−4は、振幅を変化させた信号を合成器20−2に供給する。
【0031】
合成器20−1は、入力された2つの信号を合成する。合成器20−1は合成した信号を合成器15に出力する。同様に合成器20−2は、入力された2つの信号を合成する。合成器20−2は合成した信号を合成器15に出力する。合成器15は、入力された2つの信号を合成する。合成器15は、合成した信号を所望の位相を持つ信号として出力する。
【0032】
続いて、0〜90度移相器13の移相制御量が0度、90度、0度〜90度(0度、90度を除く)の場合の0〜90度移相器13の動作について説明する。移相制御量が0度である場合、トランジスタ17のソース・ドレイン間インピーダンスが最大となるように、制御部(図示せず)からの制御信号により電圧可変電源16の出力電圧が設定される。また、利得可変増幅器19−2の増幅率は最も高いレベルに設定される。
【0033】
移相制御量が90度である場合、トランジスタ17のソース・ドレイン間インピーダンスが最小となるように、制御部(図示せず)からの制御信号により電圧可変電源16の出力電圧が設定される。また、利得可変増幅器19−1の増幅率は最も高いレベルに設定される。
【0034】
次に移相制御量が0度及び90度のいずれでもない場合について説明する。この場合、トランジスタ17のソース・ドレイン間インピーダンスが伝送線路の特性インピーダンス、または系のインピーダンスに近づくように制御部(図示せず)からの制御信号によって電圧可変電源16の出力電圧が設定される。利得可変増幅器19−1及び利得可変増幅器19−2の増幅率は、移相制御量に応じて適切な増幅率に設定される。
【0035】
図4は、移相制御量と、トランジスタ17−1及び17−2のインピーダンスと、利得可変増幅器19−1〜19−4の関係を記載した表である。図3に示す移相器において、トランジスタ17のソース・ドレイン間インピーダンスを最大に設定する場合は"最大"と記し、最小の場合は"最小"と記した。また図3に示す移相器において、利得可変増幅器19の増幅率が最も低いレベルに設定する場合を"OFF"で記し、その他の場合を"ON"で示した。
【0036】
図5は、利得可変増幅器19−1と利得可変増幅器19−2の増幅率の比と、0〜90度移相器13の移相制御量との関係を示すグラフである。このように、増幅率の比を変更することにより0〜90度移相器13の移相制御量を変更することが出来る。また、図6、7に利得可変増幅器19−1と利得可変増幅器19−2の増幅率(利得可変増幅器19−1が分子)の比を変更することにより移相制御量を制御することにかかる概念図を示す。図6及び図7は、増幅率の異なる信号を合成することにより移相制御量を変更できることを示している。
【0037】
続いて、本実施の形態にかかる移相器の効果について説明する。上述のように0〜90度移相器13は、90度ステップの移相制御量(0度、90度)の場合にトランジスタ17のソース・ドレイン間インピーダンスを最小または最大に設定している。90度ステップの移相制御量の場合には、90度分配器70の一方の出力ポートからのみ出力信号が提供される。よって、トランジスタ17のソース・ドレイン間インピーダンスを適切に設定することにより伝送損失を低減できる。
【0038】
図8は、0〜90度移相器13の移相制御量が0度である場合における、0〜90度移相器13の挿入損失の計算結果を示すグラフである。実線21は本実施の形態にかかる移相器の挿入損失である。点線22は図16に示される移相器の挿入損失である。図8に示すように、本実施の形態にかかる移相器では、図16に示した移相器に比べて電力が高い。すなわち本実施の形態にかかる移相器によれば、挿入損失を低減できる。
【0039】
図9は、0〜90度移相器13の移相制御量が90度である場合における、0〜90度移相器13の挿入損失の計算結果を示すグラフである。実線23は本実施の形態にかかる移相器の挿入損失である。点線24は図9に示される移相器の挿入損失である。図9に示すように、本実施の形態にかかる移相器では、図16に示した移相器に比べて電力が高い。すなわち本実施の形態にかかる移相器によれば、挿入損失を低減できる。
【0040】
なお、本実施の形態において利得可変増幅器19を用いたが、必ずしもこれに限られず、入力信号の振幅を調節できる回路であればよい。
【0041】
<実施の形態2>
本実施の形態にかかる移相器は、0〜90度移相器内の90度分配器のアイソレーションポートがオープン、接地、及び抵抗のいずれかに接続することを特徴とする。本実施の形態にかかる移相器は、実施の形態1にかかる移相器(図3)から0〜90度移相器の構成のみが変更されている。そのため、以下に本実施の形態にかかる0〜90度移相器について説明する。
【0042】
図10は、本実施の形態にかかる0〜90度移相器の構成を示すブロック図である。当該0〜90度移相器は、90度分配器25と、利得可変増幅器26と、合成器27と、スイッチ28と、オープンポート29と、抵抗器ポート30と、接地ポート31と、を備える。
【0043】
スイッチ28の一端は、90度分配器25のアイソレーションポートと接続されている。またスイッチ28の他端は、移相制御量に応じてオープンポート29、抵抗器ポート30、及び接地ポート31のいずれか1つと接続する。抵抗器ポート30と接続する抵抗器は、伝送線路の特性インピーダンス、または系のインピーダンスと同じ値に設定されていることが望ましい。一般的には50Ωが接続される。
【0044】
0〜90移相器に入力された信号は、90度分配器25にて90°の位相差を持つ2つの信号に分配され、2つの利得可変増幅器26へ供給される。利得可変増幅器26に入力された信号は、その振幅が変更される。利得可変増幅器26は、振幅を変更した信号を合成器27に供給する。合成器27は、入力された2つの信号を合成する。合成器27は、合成した信号を0〜90度移相器の外部に出力する。
【0045】
続いて、本実施の形態にかかる0〜90度移相器の移相制御量が0度、90度、0度〜90度(0度、90度を除く)の場合の当該0〜90度移相器の動作について説明する。
【0046】
移相制御量が0度の場合、制御部(図示せず)からの制御信号に従い、90度分配器25のアイソレーションポートはスイッチ28を介してオープンポート29と接続する。また、移相制御量が0度の場合、利得可変増幅器26−2の増幅率は最も低いレベルに設定される。
【0047】
移相制御量が90度の場合、制御部(図示せず)からの制御信号に従い、90度分配器25のアイソレーションポートはスイッチ28を介して接地ポート31と接続する。また、移相制御量が90度の場合、利得可変増幅器26−1の増幅率は最も低いレベルに設定される。
【0048】
次に移相制御量が0度及び90度のいずれでもない場合について説明する。この場合、制御部(図示せず)からの制御信号に従い、90度分配器25のアイソレーションポートはスイッチ28を介して抵抗器ポート30と接続する。利得可変増幅器26−1と利得可変増幅器26−2の増幅率は、移相制御量に応じて適切に設定される。
【0049】
本実施の形態にかかる移相器によっても、移相制御量に応じて90度分配器25のアイソレーションポートに接続する抵抗値を適切に制御できる。これにより、伝送損失の低減が可能となる。
【0050】
<実施の形態3>
本実施の形態にかかる移相器は、90度分配器と、利得可変増幅器との間にスイッチが設けられていることを特徴とする。本実施の形態にかかる移相器は、実施の形態1、2にかかる移相器から0〜90度移相器の構成のみが変更されている。そのため、以下に本実施の形態にかかる0〜90度移相器について説明する。
【0051】
図11は、本実施の形態にかかる0〜90度移相器の構成を示すブロック図である。当該0〜90度移相器は、90度分配器25と、利得可変増幅器26と、合成器27と、スイッチ28と、オープンポート29と、抵抗器ポート30と、接地ポート31と、スイッチ32と、を備える。
【0052】
スイッチ32−1は、90度分配器25の0度出力ポートと、利得可変増幅器26−1と、の接続を制御するスイッチである。スイッチ32−1は、移相制御量が90度の場合にオープンとなる。スイッチ32−2は、90度分配器25の90度出力ポートと、利得可変増幅器26−2と、の接続を制御するスイッチである。スイッチ32−2は、移相制御量が0度の場合にオープンとなる。
【0053】
スイッチ28の一端は、90度分配器25のアイソレーションポートと接続されている。またスイッチ28の他端は、移相制御量に応じてオープンポート29、抵抗器ポート30、及び接地ポート31のいずれか1つと接続する。抵抗器ポート30と接続する抵抗器は、伝送線路の特性インピーダンス、または系のインピーダンスと同じ値に設定されていることが望ましい。一般的には50Ωが接続される。
【0054】
0〜90移相器に入力された信号は、90度分配器25にて90度の位相差をもつ2つの信号に分配され、スイッチ32を介して2つの利得可変増幅器26へ供給される。利得可変増幅器26に入力された信号は、その振幅が変更される。利得可変増幅器26は、振幅を変更した信号を合成器27に供給する。合成器27は、入力された2つの信号を合成する。合成器27は、合成した信号を0〜90度移相器の外部に出力する。
【0055】
続いて、本実施の形態にかかる0〜90度移相器の移相制御量が0度、90度、0度〜90度(0度、90度を除く)の場合の当該0〜90度移相器の動作について説明する。
【0056】
移相制御量が0度の場合、制御部(図示せず)からの制御信号に従い、90度分配器25のアイソレーションポートはスイッチ28を介してオープンポート29と接続する。スイッチ32−1は、接続状態となる。すなわち、90度分配器25と利得可変増幅器26−1の経路が接続される。一方、スイッチ32−2は、オープン状態となる。すなわち、90度分配器25と利得可変増幅器26−2の経路が切断される。
【0057】
移相制御量が90度の場合、制御部(図示せず)からの制御信号に従い、90度分配器25のアイソレーションポートはスイッチ28を介して接地ポート31と接続する。スイッチ32−2は、接続状態となる。すなわち、90度分配器25と利得可変増幅器26−2の経路が接続される。一方、スイッチ32−1は、オープン状態となる。すなわち、90度分配器25と利得可変増幅器26−1の経路が切断される。
【0058】
次に移相制御量が0度及び90度のいずれでもない場合について説明する。この場合、制御部(図示せず)からの制御信号に従い、90度分配器25のアイソレーションポートはスイッチ28を介して抵抗器ポート30と接続する。スイッチ32−1及び32−2は、接続状態となる。すなわち、90度分配器25と利得可変増幅器26−1の経路が接続される。また、90度分配器25と利得可変増幅器26−2の経路が接続される。利得可変増幅器26−1と利得可変増幅器26−2の増幅率は、移相制御量に応じて適切に設定される。
【0059】
本実施の形態にかかる移相器によっても、移相制御量に応じて90度分配器25のアイソレーションポートに接続する抵抗値を適切に制御できる。これにより、伝送損失の低減が可能となる。また、スイッチ32により90度分配器25と利得可変増幅器26との接続を制御するため、所望の移相制御量が0度または90度である場合の制御が確実となる。すなわち、移相制御量が0度の場合には、90度側の出力ポートが完全に遮断される。また移相制御量が90度の場合には、0度側の出力ポートが完全に遮断される。これにより、正確な移相制御が可能となる。
【0060】
<実施の形態4>
本実施の形態にかかる移相器は、0〜90度移相器と、0/180度移相器と、が直列に接続されて構成されていることを特徴とする。
【0061】
図12は、本実施の形態にかかる移相器の構成を示すブロック図である。当該移相器は、0度から360度の移相制御を行う移相器である。当該移相器は、0〜90度移相器33と、0/180度移相器34と、0〜90度移相器35と、を備える。0〜90度移相器33と、0/180度移相器34と、0〜90度移相器35と、は直列に接続されている。
【0062】
0〜90度移相器33は、電圧可変電源36と、トランジスタ37と、90度分配器38と、利得可変増幅器39と、合成器40と、を備える。0〜90度移相器35は、電圧可変電源44と、トランジスタ45と、90度分配器46と、利得可変増幅器47と、合成器48と、を備える。0〜90度移相器33が0度〜90度の移相制御を行う場合、0〜90度移相器35は0度または90度の移相制御のみを行う。同様に0〜90度移相器35が0度〜90度の移相制御を行う場合、0〜90度移相器33は0度または90度の移相制御のみを行う。0〜90度移相器33及び0〜90度移相器35は、実施の形態1において示した0〜90度移相器と同様の構成であるため、詳細な説明は省略する。
【0063】
0/180度移相器34は、180度分配器41と、利得可変増幅器42と、合成器43とを備える。0/180度移相器34は、入力信号に対して0度または180度の位相を付与した信号を出力する移相器である。
【0064】
0/180度移相器34内の180度分配器41には、0〜90度移相器33から信号が入力される。当該入力信号は、180度分配器41にて180度の位相差をもつ2つの信号に分配され、2つの利得可変増幅器42(42−1、42−2)に夫々供給される。利得可変増幅器42は、入力された信号の振幅を変更し、当該振幅を変更した信号を合成器43に供給する。合成器43は、2つの利得可変増幅器42(42−1、42−2)から入力された信号を合成する。合成器43は、当該合成信号を0〜90度移相器35に対して供給する。
【0065】
0/180度移相器34における移相制御量が0度である場合、180度分配器41の180度ポート側に接続された利得可変増幅器42−2の増幅率は最も低いレベルに設定される。0/180度移相器34における移相制御量が180度である場合、180度分配器41の0度ポート側に接続された利得可変増幅器42−1の増幅率は最も低いレベルに設定される。
【0066】
本実施の形態にかかる移相器によっても、移相制御量に応じて90度分配器38、46のアイソレーションポートに接続する抵抗値を適切に制御できる。これにより、伝送損失の低減が可能となる。
【0067】
なお、本実施の形態にかかる移相器において、0〜90度移相器33、0/180度移相器34、及び0〜90度移相器35の接続順序は任意である。また、180度分配器41は、例えばラットレース回路、マーチャンドバラン等により構成する。
【0068】
<実施の形態5>
本実施の形態にかかる移相器は、0/180度移相器と、0〜90度移相器から構成され、90度ステップの移相制御を行うことを特徴とする。
【0069】
図13は、本実施の形態にかかる移相器の構成を示すブロック図である。本実施の形態にかかる移相器は、0/180度移相器49と、0〜90度移相器50と、を備える。0/180度移相器49は、電圧可変電源51と、トランジスタ52と、90度分配器53と、利得可変増幅器54と、90度分配器55と、トランジスタ56と、電圧可変電源57と、を備える。トランジスタ52は、90度分配器53のアイソレーションポートと接続する。トランジスタ56は、90度分配器55のアイソレーションポートと接続する。
【0070】
0/180度移相器49に入力された信号は、90度分配器53にて90度の位相差をもつ2つの信号に分配され、2つの利得可変増幅器54(54−1、54−2)に供給される。
【0071】
利得可変増幅器54(54−1、54−2)は、入力された信号の振幅を調整する。利得可変増幅器54は振幅を調整した信号を90度分配器55に入力する。90度分配器55は、利得可変増幅器54から入力された2つの信号を、位相差90度を付けた合成信号に合成する。すなわち、90度分配器55は、利得可変増幅器54−1から入力された信号をそのまま出力する、または利得可変増幅器54−2から信号にさらに90度の位相を付与した信号を出力する。0/180度移相器49は、入力信号に対して0度または180度の移相制御を行う。
【0072】
0/180度移相器49の移相制御量が0度である場合、トランジスタ52及び56のソース・ドレイン間インピーダンスが最大となるように、制御部(図示せず)からの制御信号により電圧可変電源57の出力電圧が設定される。また、利得可変増幅器54−2の増幅率は最も低いレベルに設定される。
【0073】
0/180度移相器49の移相制御量が180度である場合、トランジスタ52及び56のソース・ドレイン間インピーダンスが最小となるように、制御部(図示せず)からの制御信号により電圧可変電源57の出力電圧が設定される。また、利得可変増幅器54−1の増幅率は最も低いレベルに設定される。
【0074】
0〜90度移相器50は、電圧可変電源58と、トランジスタ59と、90度分配器60と、利得可変増幅器61と、合成器62と、を備える。0〜90度移相器50は、入力信号に対して0度または90度の移相制御を行う。0〜90度移相器50の構成は、実施の形態1において示した0〜90度移相器と同様の構成であるため、詳細な説明は省略する。上述のように、0/180度移相器49の移相制御量は0度または180度となり、0〜90度移相器50の移相制御量は0度または90度となる。よって、本実施の形態にかかる移相器の移相制御量は90度ステップ(0度、90度、180度、270度)となる。
【0075】
本実施の形態にかかる移相器は、移相制御量が90度ステップに限られるが、上述の実施の形態1から4の回路構成と比較して単純な構成である。これにより、回路規模の縮小が図れる。
【0076】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0077】
なお、本発明の実施の形態1にかかる0〜90度移相器の最小構成を図14に示す。当該0〜90度移相器13は、電圧可変電源16と、トランジスタ17と、90度分配器18と、利得可変増幅器19(19−1、19−2)と、合成器20と、を備える。
【0078】
90度分配器18は、入力信号に90度の位相を付与した信号と、位相を付与しない信号と、に分配して利得可変増幅器19に出力する。利得可変増幅器19(19−1、19−2)は、移相制御量に応じて振幅を変更した信号を合成器20に出力する。合成器20は、2つの利得可変増幅器19から入力された信号を合成して出力する。ここで、90度分配器18のアイソレーションポートと接続したトランジスタのソース・ドレイン間インピーダンスは、適宜変更することが出来る。すなわち、アイソレーションポートに接続する抵抗値を適切に制御できる。これにより、伝送損失を低減できる。
【0079】
上記実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0080】
(付記1)
入力信号に対して0度から90度の範囲で位相を付与する移相器であって、
入力信号に90度の位相を付与した信号と、位相を付与しない信号と、に分配して出力する90度分配器と、
前記90度分配器の0度側出力ポートと接続し、移相器の移相制御量に応じて振幅を変更した信号を出力する第1の利得可変増幅器と、
前記90度分配器の90度側出力ポートと接続し、前記移相制御量に応じて振幅を変更した信号を出力する第2の利得可変増幅器と、
前記第1の利得可変増幅器の出力信号と、前記第2の利得可変増幅器の出力信号と、を合成する合成器と、を備え、
前記90度分配器は、アイソレーションポートのインピーダンスが可変である、移相器。
【0081】
(付記2)
前記90度分配器は、前記アイソレーションポートを介してトランジスタと接続し、前記移相制御量に応じて前記トランジスタのソース・ドレイン間インピーダンスが変更可能であることを特徴とする付記1に記載の移相器。
【0082】
(付記3)
前記トランジスタのソース・ドレイン間インピーダンスは、前記移相制御量が0度の場合には最大に設定され、前記移相制御量が90度の場合には最小に設定されることを特徴とする付記2に記載の移相器。
【0083】
(付記4)
前記トランジスタのソース・ドレイン間インピーダンスは、前記移相制御量が0度より大きく90度より小さい場合、伝送線路の特性インピーダンスに設定されることを特徴とする付記3に記載の移相器。
【0084】
(付記5)
前記90度分配器は、前記アイソレーションポートを介して第1のスイッチと接続し、
前記第1のスイッチは、前記移相制御量に応じてオープン、接地、及び抵抗のいずれかに接続することを特徴とする付記1に記載の移相器。
【0085】
(付記6)
前記第1のスイッチは、前記移相制御量が0度の場合にはオープンと接続し、前記移相制御量が90度の場合には接地と接続することを特徴とする付記5に記載の移相器。
【0086】
(付記7)
前記第1のスイッチは、前記移相制御量が0度より大きく90度より小さい場合、抵抗と接続することを特徴とする付記6に記載の移相器。
【0087】
(付記8)
前記第2の利得可変増幅器は、前記移相制御量が0度である場合、増幅率が最小に設定され、
前記第1の利得可変増幅器は、前記移相制御量が90度である場合、増幅率が最小に設定されることを特徴とする付記1乃至付記7のいずれか1項に記載の移相器。
【0088】
(付記9)
前記第1及び前記第2の利得可変増幅器は、前記移相制御量が0度より大きく90度より小さい場合、当該移相制御量に応じて増幅率が設定されることを特徴とする付記1乃至付記8のいずれか1項に記載の移相器。
【0089】
(付記10)
前記第1の利得可変増幅器と前記90度分配器との間に配置した第2のスイッチと、
前記第2の利得可変増幅器と前記90度分配器との間に配置した第3のスイッチと、を備え、
前記第2のスイッチは、前記移相制御量が90度の場合にオープンとなり、
前記第3のスイッチは、前記移相制御量が0度の場合にオープンとなることを特徴とする付記1乃至付記9のいずれか1項に記載の移相器。
【0090】
(付記11)
入力信号に対して0度から360度の範囲で位相を付与する0度〜360度移相器であって、前記入力信号に180度の位相を付与した信号と、位相を付与しない信号と、に分配して出力する180度分配器と、
前記180度分配器からの出力が夫々入力される0度から90度の範囲で位相を付与する移相器2つの0〜90度移相器と、
前記2つの0〜90度移相器の出力を合成する合成器と、を備え、
前記2つの0〜90度移相器は付記1乃至付記10のいずれか1項に記載の移相器である、0度〜360度移相器。
【0091】
(付記12)
入力信号に対して0度から360度の範囲で位相を付与する0度〜360度移相器であって、
入力信号に対して0度または180度の位相を付与する0度/180度移相器と、
前記0度/180度移相器と直列接続された2つの0〜90度移相器と、を備え、
前記2つの0〜90度移相器が付記1乃至付記10のいずれか1項に記載の移相器である、0度〜360度移相器。
【0092】
(付記13)
入力信号に対して0度、90度、180度、270度のいずれかの位相を付与する90度ステップ移相器であって、
付記1乃至付記10のいずれか1項に記載の移相器と、
入力信号に対して0度または180度の位相を付与する0度/180度移相器と、を直列に接続した90度ステップ移相器。
【0093】
(付記14)
前記0度/180度移相器は、
入力信号を90度の位相を付与した信号と、位相を付与しない信号と、に分配して出力する90度分配器と、
当該90度分配器から出力された信号の各々を所望の位相遅延量に応じて振幅させた2つの信号を合成する90度分配器と、を備え、
当該2つの90度分配器は、それぞれ4端子回路により構成され、アイソレーションポートのインピーダンスが可変であることを特徴とする付記13に記載の90度ステップ移相器。
【0094】
(付記15)
前記0度/180度移相器において、
前記90度分配器は、前記アイソレーションポートを介してトランジスタと接続し、前記移相制御量に応じて前記トランジスタのソース・ドレイン間インピーダンスが変更可能であることを特徴とする付記14に記載の90度ステップ移相器。
【0095】
(付記16)
前記0度/180度移相器において、
前記トランジスタのソース・ドレイン間インピーダンスは、移相器の移相制御量が0度または90度である場合には最大に設定され、前記移相器の移相制御量が180度または270度である場合には最小に設定されることを特徴とする付記15に記載の90度ステップ移相器。
【0096】
(付記17)
制御信号に基づき前記移相制御量を設定できることを特徴とする付記11または付記12に記載の0度〜360移相器。
【0097】
(付記18)
付記1乃至付記10のいずれか1項に記載の移相器と、アレイアンテナと、を備えた無線通信装置。
【0098】
(付記19)
付記1乃至付記10のいずれか1項に記載の移相器と、アレイアンテナと、を備えた無線受信装置。
【0099】
(付記20)
付記1乃至付記10のいずれか1項に記載の移相器と、アレイアンテナと、を備えた無線送信装置。
【0100】
この出願は、2010年4月19日に出願された日本出願特願2010−096013を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、たとえば無線信号を扱う無線通信装置内において用いられる移相器に利用可能である。
【符号の説明】
【0102】
1 送信ベースバンド信号生成ユニット
2 送信機
3−1〜3−h 送信アンテナ
4 制御部
5 ローカル信号発振回路
6 受信ベースバンド信号処理ユニット
7 受信機
8−1〜8−k 受信アンテナ
9 ローカル信号増幅器
10 直交変調器
11−1〜11−h 移相器
12−1〜12−h 送信アンテナ
13、33、35、50 0〜90度移相器
14、41 180度分配器
15、20、27、40、43、48、62 合成器
16、36、44、51、57、58 電圧可変電源
17、37、45、52、56、59 トランジスタ
18、25、38、46、53、55、60 90度分配器
19、26、39、42、47、54、61 利得可変増幅器
28、32 スイッチ
29 オープンポート
30 抵抗器ポート
31 接地ポート
34、49 0/180度移相器
63、64 無線通信装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16